IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高山リード株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-織機用筬 図1
  • 特開-織機用筬 図2
  • 特開-織機用筬 図3
  • 特開-織機用筬 図4
  • 特開-織機用筬 図5
  • 特開-織機用筬 図6
  • 特開-織機用筬 図7
  • 特開-織機用筬 図8
  • 特開-織機用筬 図9
  • 特開-織機用筬 図10
  • 特開-織機用筬 図11
  • 特開-織機用筬 図12
  • 特開-織機用筬 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116374
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】織機用筬
(51)【国際特許分類】
   D03D 49/62 20060101AFI20220803BHJP
   D03J 1/14 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
D03D49/62 Z
D03J1/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019111628
(22)【出願日】2019-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000169570
【氏名又は名称】高山リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【弁理士】
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】宮向 智利
【テーマコード(参考)】
4L043
4L050
【Fターム(参考)】
4L043AA01
4L043BB06
4L050AA11
4L050CC17
(57)【要約】
【課題】
織機における経糸準備工程において、経糸の結び玉を容易に筬羽間に引き通すことができると共に、筬羽の強度に対する影響を小さくした織機用筬を提供することである。
【解決手段】
細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲する屈曲部を有する薄板形状の第二筬羽と、最大開口状態の経糸よりも上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲する屈曲部を有する薄板形状の第三筬羽よりなり、第一筬羽、第二筬羽、又は第三筬羽は、異なる筬羽が隣接するように列設された織機用筬である。屈曲部は隣接する筬羽との間隔が広くなるため、経糸の結び玉を引き通しやすい。また、屈曲部は開口する経糸の上方に形成されるため、経糸に悪影響を与えない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠(122)に、及び前記筬羽の下端部を下枠(124)に固定して一体化した筬を用いて、緯糸(108)を織前(112)に筬打ちするための織機用筬であって、
細長薄平板形状の第一筬羽(114)と、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を前記織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽(116)を交互に列設した
ことを特徴とする織機用筬。
【請求項2】
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠(122)に、及び前記筬羽の下端部を下枠(124)に固定して一体化した筬を用いて、緯糸(108)を織前(112)に筬打ちするための織機用筬であって、
細長薄平板形状の第一筬羽(114)と、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を反織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽(316)を交互に列設した
ことを特徴とする織機用筬。
【請求項3】
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠(122)に、及び前記筬羽の下端部を下枠(124)に固定して一体化した筬を用いて、緯糸(108)を織前(112)に筬打ちするための織機用筬であって、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽(116)と、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を反織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽(316)を交互に列設した
ことを特徴とする織機用筬。
【請求項4】
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠(122)に、及び前記筬羽の下端部を下枠(124)に固定して一体化した筬を用いて、緯糸(108)を織前(112)に筬打ちするための織機用筬であって、
細長薄平板形状の第一筬羽(114)と、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽(116)と、
最大開口状態の経糸(102)よりも前記上枠(122)側の筬羽部分を反織前(112)側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽(316)よりなり、
前記第一筬羽(114)、前記第二筬羽(116)、又は前記第三筬羽(316)は、異なる筬羽が隣接するように列設される
ことを特徴とする織機用筬。
【請求項5】
前記第二筬羽(116)は、前記織前(112)側に向かって先すぼまり形状に形成された横向き凹部(126C)を有する
ことを特徴とする請求項1、3、又は4の何れかに記載した織機用筬である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機用の筬、特に太糸を製織する織機用筬に関する。
詳細には、織機上において新たな経糸をつないで製織準備をするに適した太糸織機用筬に関する。
さらに詳細には、織機上において新たな経糸をつなぎ、当該つなぎ目の筬羽間の引通しが容易に行えるようにした太糸織機用筬に関する。なお、本明細書に於ける「太糸」は、通常は、細い糸用の筬羽の間を通過出来るが、結び玉が大きくなって通常の筬羽の間の隙間を通過させることが困難な糸を意味し、例えば、直径1mm以上の太糸や断面が扁平形状をしたフラットヤーン糸を含んでいる。また、太糸とは、スパン糸では大凡10番手以下、フィラメント糸では大凡1000tex以上をいうが、これらに限定されない。本明細書において、第一筬羽、第二筬羽等、数を表す用語を用いるが、形状の違いによる筬羽を区別するために用いるものであって、技術的範囲を解釈する場合、筬羽として理解すべきものである。
【背景技術】
【0002】
第一の従来技術として、本出願人の出願に係る、上チャンネルに固定される上固定端と、下チャンネルに固定される下固定端と、その中間に位置して織前に打ち込まれる打込部とを備えた多数のオサ羽を含んで形成され、前記多数のオサ羽には、上固定端と打込部との間が直線状で打込部と下固定端との間が後方に偏倚しかつその偏倚部と打込部との間を繋ぐ前縁が段を有しない斜辺または湾曲辺である下側偏倚オサ羽と、下固定端と打込部との間が直線状で打込部と上固定端との間が後方に偏倚しかつその偏倚部と打込部との間を繋ぐ前縁が段を有しない斜辺または湾曲辺である上側偏倚オサ羽とが含まれており、上記下側偏倚オサ羽と上側偏倚オサ羽とが隣接して配置されていることを特徴とする、織機用オサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-36162(図6、段落番号0008~0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
織機の概略を図13を参照して説明すれば、経糸ビーム10から引き出した経糸12は、バックレスとローラ14によって大凡水平に案内された後、綜絖16に続いて筬18に引き通され、織前22に達している。織前22に連なる織布24は、ブレストビーム26を経由した後、クロスローラ28に巻き取られる。織物のなかには、太糸ではあるが、経糸12の全長において、大凡一定の太さの糸も存在する。例えば、フラットヤーン織物である。同一品種の織物の場合、経糸交換の省力化のため、織機上において先に使用していた経糸12の末端部分12Eと、新しく装着した経糸ビーム10から引き出した経糸12の先端部分12Tをつなぎ合わせて用いる。例えば、大凡×印で示す位置において経糸12を切断して末端部分12Eとし、新たに装着されて満巻きの経糸ビーム10から引き出した新たな経糸12の先端部分12Tとがノッターを用いて自動的に結ばれ、結び玉kが形成される。ノッターによる結び玉kは、図13(B)に示すように、二本の糸が玉結びされて結び玉kが形成されるので、結び玉kの大きさは、経糸12の太さよりも大幅に太くなり、図13(B)の例では経糸の太さが約1mmのところ、結び玉kの部分dは、約2.5倍の約2.5mmとなっている。更に、結び玉kから延びる結び玉端eの長さを考慮すると、結び玉k部分の実質的な太さは、経糸直径の三倍を超えることは避けられない。
この場合、経糸12の結び玉kは、経糸12の太さよりも大幅に太くなることから、従来の一般的な薄板直線状の筬羽を所定の間隔で列設した筬である場合、筬羽を左右に開いて筬羽の間隔を大きくして結び玉kを通過させる必要があり、筬羽を傷つけないように繊細な注意力をもって筬羽を変形させつつ当該結び玉kを引き通さなければならず、作業効率が低いものであった。
これを解決するため、第一の従来技術を採用することが考えられる。第一の従来技術において、経糸はコブ状の節のあるネップヤーンや、太さの変化する糸等を用いることを前提とするため、経糸開口を正面から見て、筬羽の経糸と交差する部位を織機の後方へずらすことにより、隣り合う筬羽の間隔を広くすることにより、太い経糸部分が通過しやすいようにすると共に、筬打ち部分においては、隣接する筬羽が所定の間隔で横方向に列設されるように構成されている。換言すれば、第一の従来技術においては、隣接する筬羽において、正面から見て開口する経糸と交差する筬羽部分が反織前側に屈曲している必要がある。筬羽は、通常、0.2mm程度の厚みを有すると共に、100mm程度の長さを有する細長薄板形状を呈している。細長薄板形状である場合、基本的には経糸方向には強度を有するが、緯糸方向には0.2mm程度の厚みであるため、強度が低い。ましてや、第一の従来技術のように、筬羽が反織前側の経糸方向に屈曲形成されている場合、一層、緯糸方向の強度が低下し、高速稼働する織機においては、製織動作中に緯糸(織機の幅)方向に振動し、横入れや筬打ちに悪影響を与える恐れがある。当該悪影響を解決するため、第一の従来技術における筬羽の屈曲長さを短くすることが考えられるが、第一の従来技術は製織中に太糸部を筬羽間に通過させる技術思想であるため、経糸開口を正面から見て、製織中に経糸と交差する部分を屈曲させねばならず、短くするにも限界がある。
【0005】
本発明の目的は、織機における経糸準備工程において、経糸の結び玉を容易に筬羽間に引き通すことができると共に、筬羽の強度に対する影響を極力小さくした織機用筬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明に係る第1の発明は以下のように構成されている。
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、 最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬である。
【0007】
本発明に係る第2の発明は以下のように構成されている。
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬である。
【0008】
本発明に係る第3の発明は以下のように構成されている。
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬である。
【0009】
本発明に係る第4の発明は以下のように構成されている。
筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽よりなり、前記第一筬羽、前記第二筬羽、又は前記第三筬羽は、異なる筬羽が隣接するように列設されることを特徴とする織機用筬である。
【0010】
本発明に係る第5の発明は以下のように構成されている。
前記第二筬羽は、織前側に向かって先すぼまり形状に形成された横向き凹部を有することを特徴とする第1、第3、又は第4の発明の何れかに記載した織機用筬である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明において、第一筬羽は細長薄平板形状であるので、従来の筬羽と同様の形状である、第二筬羽は、薄板形状であると共に、経糸開口の正面から見て最大開口時の経糸よりも上方において織前側へ屈曲されている。よって、細長薄平板形状の第一筬羽と織前側へ屈曲された屈曲部との間は、通常の筬羽間隔よりも、筬羽間隔が大きくなり、太い結び玉が通過し易い。そして本第一の発明において、屈曲部は最大開口時の経糸よりも上方に形成されているので、屈曲部の長さを短くすることができる。よって、筬打ち運動による屈曲部に作用する外力も小さくなり、筬羽の強度に対する影響を軽減することができ、経糸の結び玉を筬羽間を容易に引き通すことができると共に、筬羽の強度に対する影響を極力小さくすることができ、本願発明の目的を達成できる利点がある。さらに、屈曲方向が織前側であるので、開口装置との干渉を考慮する必要がない利点がある。また、経糸の結び玉を開口装置側から織前側へ移動させるのであるが、当該結び玉が屈曲部によって構成された横向き凹部に入り込ませるように引き抜くことにより、容易に屈曲部の筬羽間を通過させることができ、結び玉の通過を容易に行うことができる利点がある。なお、屈曲部を下糸の下方の経糸と重ならない位置に形成することが考えられるが、織機によっては織前の下方に装置、例えば、レピア織機にあってはレピアガイドが配置される場合があるので不適である。
【0012】
第2の発明においては、第1の発明と同様に、第一筬羽は細長薄平板形状であるので、従来の筬羽と同様の形状である。第三筬羽は、薄板形状であると共に、経糸開口の正面から見て最大開口時の経糸よりも上方において反織前側へ屈曲されている。第2の発明において、第一筬羽と第二筬羽の屈曲部の間隔は、通常の筬羽間隔よりも、筬羽間隔が大きくなり、太い結び玉が通過し易い。また、第三筬羽の屈曲部は最大開口時の経糸よりも上方に形成されているので、屈曲部の長さは短くなる。よって、屈曲部の長さを短くできるので、筬羽の強度に対する影響を極力軽減することができ、本願発明の目的を達成できる利点がある。
【0013】
第3の発明において、第二筬羽は、薄板形状であると共に、横方向から見て最大開口時の経糸よりも上方において織前側へ屈曲されている。第三筬羽は、薄板形状であると共に、経糸開口の正面から見て最大開口時の経糸よりも上方において反織前側へ屈曲されている。第三の発明において、第二筬羽の屈曲部と第三筬羽の屈曲部の間隔は、通常の筬羽間隔よりも、筬羽間隔が大きくなり、太い結び玉が通過し易い。また、第二筬羽、及び第三筬羽とも、屈曲部は最大開口時の経糸よりも上方に形成されているので、屈曲部の長さは短くなる。よって、屈曲部の長さを短くできるので、筬羽の強度に対する影響を極力軽減することができ、本願発明の目的を達成できる利点がある。さらに、第二筬羽と第三筬羽とが向き合っているので、屈曲部によって形成される筬羽の間隔が大きくなり、結び玉を通過させやすい利点がある。また、経糸の結び玉を開口装置側から織前側へ移動させる際、第二筬羽の屈曲部において当該結び玉が織り前側に先すぼまりの横向き凹部に入り込むように引き抜くことにより、容易に屈曲部、したがって筬羽間隔が広い位置を通過させることができ、結び玉の通過を容易に行うことができる利点がある。また、第二筬羽と第三筬羽を同一に形成し、向かい合わせtに所定の間隔で列設して構成すする場合、安価に製造できる利点がある。
【0014】
第4の発明においては、第一筬羽は細長薄平板形状であるので従来の筬羽と同様の形状である。第二筬羽は、薄板形状であると共に、経糸開口の正面から見て最大開口時の経糸よりも上方において織前側へ屈曲されている。第三筬羽は、薄板形状であると共に、経糸開口の正面から見て最大開口時の経糸よりも上方において反織前側へ屈曲されている。本第4の発明において、第一筬羽、第二筬羽、及び第三筬羽は、隣接する筬羽が異なるように構成されている。換言すれば、第一筬羽と第二筬羽の屈曲部との間の間隔は、通常の筬羽の間隔よりも大きな間隔となる。同様に第一筬羽と第三筬羽の屈曲部との筬羽間隔は通常の筬羽の間隔よりも大きな間隔となる。第二筬羽の屈曲部と第三筬羽の屈曲部との間は更に大きな間隔となる。よって、それら大きな間隔においては太い結び玉部が通過し易い。第二筬羽、及び第三筬羽とも、屈曲部は最大開口時の経糸よりも上方に形成されているので、屈曲部の長さは短くできる。よって、屈曲部の長さを短くできるので、筬羽の強度に対する影響を極力軽減することができ、本願発明の目的を達成できる利点がある。さらに、第二筬羽と第三筬羽とが向き合っている部位においては、屈曲部によって形成される筬羽間隔が大きくなり、結び玉を通過させやすい利点がある。また、第二筬羽の屈曲部においては、経糸の結び玉を織前側へ移動させる際、当該結び玉が横向き凹部に入り込むように引き抜くことにより、筬羽間隔が大きい屈曲部を容易に通過させることができ、結び玉の通過を容易に行うことができる利点がある。
【0015】
第5の発明においては、第1及び第3~第4の発明と同様に、筬羽の屈曲部が開口した経糸よりも上方に形成されているので、筬羽の強度に対する影響を極力軽減することができる。また、屈曲部は筬羽間の隙間が大きくなるので、経糸の結び玉を通過させ易く、さらに、第二筬羽は、織前側に向かって先すぼまり形状に形成された横向き凹部を有するので、結び玉が横向き凹部によって案内されるので、より一層結び玉を通過させやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明にかかる実施例1の織機用筬であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は(A)中のA―A線断面図、(D)は(A)中のB―B線断面図である。
図2図2は、本発明にかかる実施例1の織機用筬に用いる第一筬羽であり、(A)は正面図、(B)は左側面図(右側面図も同一)、(C)は平面図(底面図も同一)である。
図3図3は、本発明にかかる実施例1の織機用筬に用いる第二筬羽であり、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図、(E)は平面図、(F)は底面図、(G)は(A)中A―A線断面図、及び(H)は(B)中B-B線断面図である。
図4図4は、本発明にかかる実施例1の織機用筬の作用説明図であり、(A)は経糸開口正面から見た場合の経糸と筬との関係図、(B)は(A)中A―A線断面図、(B)は(A)中B―B線底面図である。
図5図5は、本発明にかかる実施例2の織機用筬であり、(A)は正面図、(B)は第三筬羽の正面図、(C)は第三筬羽の背面図、(D)は第三筬羽の左側面図、(E)は第三筬羽の右側面図、(F)は第三筬羽の平面図、(G)は第三筬羽の底面図、(H)は(A)中A-A線断面図、(I)は(C)中B―B線断面図である。
図6図6は、本発明にかかる実施例2の織機用筬の作用説明図であり、(A)は正面図、(B)は(A)中のA―A線断面図、(C)は(A)中のB―B線断面図である。
図7図7は、本発明にかかる実施例3の織機用筬の正面図である。
図8図8は、本発明にかかる実施例3の織機用筬の説明図である。
図9図9は、本発明にかかる実施例4の織機用筬であり、(A)は正面図、(B)は(A)中のA―A線断面図、(C)は(A)中のB―B線断面図である。
図10図10は、本発明にかかる実施例5の織機用筬の正面図である。
図11図11は、本発明にかかる実施例6の織機用筬の正面図である。
図12図12は、本発明にかかる実施例7の織機用筬の正面図である。
図13図13は、経糸の自動繋ぎ機を説明するための織機の説明図であり、(A)は織機概要図、(B)はノッターによる結び玉である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る織機用筬は、筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬であることが好ましい。
また、筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬であることが好ましい。
さらに、筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽を交互に列設したことを特徴とする織機用筬であることが好ましい。
さらにまた、筬羽を所定の間隔で列設すると共に、前記筬羽の上端部を上枠に、及び前記筬羽の下端部を下枠に固定して一体化した筬を用いて、緯糸を織前に筬打ちするための織機用筬であって、細長薄平板形状の第一筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を織前側に屈曲させた薄板形状の第二筬羽と、最大開口状態の経糸よりも前記上枠側の筬羽部分を反織前側に屈曲させた薄板形状の第三筬羽よりなり、前記第一筬羽、前記第二筬羽、又は前記第三筬羽は、異なる筬羽が隣接するように列設されることを特徴とする織機用筬であることが好ましい。
さらに、前記第二筬羽は、織前側に向かって先すぼまり形状に形成された横向き凹部を有することを特徴とする第1及び第3~第4の発明の何れかに記載した織機用筬であることが好ましい。
【実施例0018】
まず図1図4を参照して実施例1の第一織機用筬100を説明する。
第一織機用筬100は、経糸102(上経糸102U、下経糸102B)によって形成された経糸開口106に、レピア、流体ジェット、グリッパ等によって緯入れされた緯糸108を、所定のタイミングで揺動することにより、織布104の織前112に筬打ちする機能を有する。本実施例1において、第一織機用筬100は、第一筬羽114、第二筬羽116、親羽根118、上枠122、及び下枠124によって構成されている。
【0019】
次に第一筬羽114を主に図2を参照しつつ説明する。
第一筬羽114は、経糸102を案内すると共に緯糸を筬打ちする機能を有する。本実施例1において、第一筬羽114は、第一厚みT1が約0.2mm、第一高さ(長さ)L1が約100mm、第一筬羽下部114L、第一筬羽中間部114M、及び第一筬羽上部114Uの第一幅W1が約5mmの細長薄平板形状の通常形状の筬羽であって、通常、ステンレスによって成形されているが材質は問わない。第一筬羽114の経糸102と摺接する角部は丸みを付されている。第一筬羽114の第一筬羽下部114Lの下端部は下枠124内に挿入され、第一筬羽上部114Uの上端部は上枠122内に挿入される。
【0020】
次に第二筬羽116を主に図3を参照しつつ説明する。
第二筬羽116は、通常の筬打ち機能、及び第一筬羽114との距離を通常の筬羽間の距離よりも大きな距離になるようにする機能を有する。本実施例1において、第二筬羽116は、第二厚みT2が約0.2mm、第二高さ(長さ)L2が約100mm、第二筬羽下部116L、第二筬羽中間部116M、及び第二筬羽上部116Uの第二幅W2が約5mmの薄平板形状であると共に、第二筬羽上部116Uの下部が織前112側に屈曲した第二筬羽屈曲部126を有する部分屈曲薄平板形状であって、通常、ステンレスによって成形されているが材質は問わない。換言すれば、第二筬羽116の第二厚みT2は、第一筬羽114の第一厚みT1、第二高さL2は第一筬羽114の第一高さL1、第二幅W2は第一筬羽114の第一幅W1と同一である。第二筬羽116の経糸102と摺接する角部は丸みを付されている。第二筬羽116の第二筬羽下部116Lの下端部は下枠124内に挿入され、第二筬羽上部116Uの上端部は上枠122内に挿入される。これによって、第二筬羽116は、第二筬羽上部116Uににおいて構成される第二筬羽屈曲部126と、第二筬羽下部116Lと第二筬羽中間部116Mによって構成される第二筬羽真直部128によって構成される。
【0021】
次に第二筬羽屈曲部126の形状を説明する。
第二筬羽屈曲部126は、第二筬羽下向き傾斜部126US、第二筬羽偏倚部126M、及び第二筬羽上向き傾斜部126LSを含んでいる。
第二筬羽下向き傾斜部126USは、第二筬羽上部116Uの下端部に連なり、織前112側に向かって下向きに傾斜する部分である。換言すれば、第二筬羽下向き傾斜部126USは、大凡垂立する第二筬羽上部116Uに対し、所定の角度で傾斜する部分である。
第二筬羽上向き傾斜部126LSは、第二筬羽中間部116Mの上端部に連なり、織前112に向かって上向きに傾斜する部分である。換言すれば、第二筬羽上向き傾斜部126LSは、大凡垂立する第二筬羽中間部116Mに対し、所定の角度で傾斜する部分である。
第二筬羽偏倚部126Mは、第二筬羽上向き傾斜部126LSの上端部に連なり、かつ第二筬羽下向き傾斜部126USの下端部に連なり、第二筬羽中間部116Mに対し短い長さで平行に延在する部分である。
第二筬羽上向き傾斜部126LSは、第二筬羽中間部116Mの上端部に連なり、織前112に向かって上向きに傾斜する部分である。換言すれば、第二筬羽上向き傾斜部126LSは、大凡垂立する第二筬羽中間部116Mに対し、所定の角度で傾斜する部分である。換言すれば、第二筬羽上向き傾斜部126LSは、織前112に向かって上向きに傾斜する部分である。
換言すれば、第二筬羽屈曲部126は織前112側へ横向き台形状に突出する屈曲部である。第二筬羽116は、第二筬羽屈曲部126によって、その上部に織前112側へ先すぼまりの第二横向凹部126Cが形成される。なお、第二筬羽屈曲部126は、第二筬羽中間部116Mが殆ど存在しない横向き山形であってもよい。
【0022】
次に第二筬羽真直部128を説明する。
第二筬羽真直部128は、第一筬羽114と実質的に同一の断面形状に構成され、第二筬羽屈曲部126側に筬打ち部BPが位置することになる。
【0023】
第二筬羽116は、背面図が図3(B)に示すように、同図(A)の正面図とは線対称の形状になり、左右側面図は同図(C)(D)に示すように、第二厚みT2で表される縦長薄板形状であり、平面図及び底面図は、同図(E)(F)に示すように、第二筬羽真直部128から織前112側へ第二筬羽屈曲部126が突出する薄板形状であり、第二筬羽屈曲部126の断面は、同図(G)に示すように第一筬羽114の断面と同一の扁平薄板断面であり、第二筬羽真直部128の断面は、同図(H)に示すように、第一筬羽114の断面と同一の扁平薄板断面である。
【0024】
次に、親羽根118を説明する。
親羽根118は、高さ(長さ)、及び幅が第一筬羽114の第一高さL1、第一幅W1、及び第二筬羽116の第二高さL2、第二幅W2と同一であって、厚みが第一筬羽の第一厚みT1、及び第二筬羽116の第二厚みT2よりも大幅に厚い平板であり、通常、ステンレスによって形成されているが、材質は問わない。なお、第一筬羽114、及び第二筬羽116によって十分な強度が得られる場合、親羽根118を採用しなくとも良い。
【0025】
次に上枠122を説明する。
上枠122は、親羽根118、第一筬羽114、及び第二筬羽116の上端部が収納され、接着剤等によってそれらと一体化され、第一織機用筬100の強度部材となる機能を有する。本実施例1において、上枠122は正面視において長手方向に延在する長方形の上溝122Gを有する下向きチャンネル形状にアルミニュウムによって形成されている。しかし、上枠122は、十分な強度を確保できれば、材質は問わない。
【0026】
次に下枠124を説明する。
下枠124は、親羽根118、第一筬羽114、及び第二筬羽116の下端部が収納され、接着剤等によってそれらと一体化され、第一織機用筬100の強度部材となる機能を有する。本実施例1において、下枠124は正面視において長手方向に延在する長方形の下溝124Gを有する上向きチャンネル形状にアルミニュウムによって形成されている。しかし、下枠124は、十分な強度を確保できれば、材質は問わない。
【0027】
次に第一筬羽114、第二筬羽116、親羽根118、上枠122、及び下枠124が組み立てられた第一織機用筬100を主に図1を参照しつつ説明する。
本実施例1において、第一筬羽114、第二筬羽116、及び親羽根118の上端部が上枠122の上溝122Gに挿入され、それらの下端部は下枠124の下溝124Gに
挿入され、それぞれ接着剤によってそれぞれ固定され、一体化されている。
親羽根118は、上枠122と下枠124の左右端部にそれぞれ配置されている。
第一筬羽114と第二筬羽116は、それぞれ交互に一定間隔(ピッチ)p1において配置されている。換言すれば、異なる種類の第一筬羽114と第二筬羽116が隣接して配置されている。第一筬羽114と第二筬羽116間の間隔である基準隙間134は、所定の直径の線材によって形成された上巻き線132U、下巻き線132L間に第一筬羽114と第二筬羽116を配置することにより、巻き線の直径によって規制している。これらが組み合わされた第一織機用筬100は、正面視した場合、第一筬羽114の第一筬羽下部114L及び第一筬羽中間部114Mと、第二筬羽116の第二筬羽下部116L及び第二筬羽中間部116Mは重なりあい、第一筬羽中間部114M、及び第二筬羽中間部116Mの所定部分が筬打ち部BPになる。第二筬羽116の第二筬羽屈曲部126は第一筬羽114の第一筬羽上部114Uに対し織前112側に偏倚され、第一筬羽114の織前112側端縁と第二筬羽116の第二筬羽偏倚部126Mにおける反織前112端縁との間に屈曲部隙間138が形成される程度に屈曲されることが好ましい。しかし、屈曲部隙間138が形成されない程度の屈曲も採用することができる。
【0028】
次に第二筬羽屈曲部126と経糸102(上経糸102U)との関係を主に図1(A)を参照しつつ説明する。
第二筬羽屈曲部126は、最大開口時の上経糸102Uの位置よりも上方に位置する。これによって、上経糸102Uが第二筬羽屈曲部126と摺接することがないため、経糸102を損傷させ、又は切断させることがない。特に、織布104の左端部、及び右端部に位置する上経糸102Uは織前112の織り縮みによって斜行することから、第二筬羽屈曲部126が上経糸102Uと摺接する場合には経糸102に悪影響を与える恐れがあるが、上経糸102Uの上方に位置することから、経糸102に悪影響を与えることがない利点を有する。なお、当然のことながら、経糸102の開口量は、製織する織布に応じて変更される。よって、如何なる製織の場合であっても、上経糸102Uと第二筬羽屈曲部126が接触しない(経糸開口を正面視した場合、上経糸102Uが第二筬羽屈曲部126と重ならない)位置に設定される。上経糸102Uと第二筬羽屈曲部126が接触しない位置とは、実質的に上経糸102Uと第二筬羽屈曲部126が接触しない位置を含む概念である。すなわち、上経糸102Uが第二筬羽上向き傾斜部126LSと接触しない位置は勿論、上経糸102Uと第二筬羽上向き傾斜部126LSとが接触した場合であっても、実質的に上経糸102Uに悪影響が発生しない場合を含む概念である。
【0029】
次に、主に図4を参照しつつ本実施例1の作用、効果を説明する。
図4(C)に示すように、第一織機用筬100の筬打ち部BPを通る断面図において、第一筬羽114の第一筬羽中間部114Mと第二筬羽116中間部116Mは、同一断面形状を有し、同一のピッチp1において、一列に横方向に列設されることにより、これら第一筬羽114と第二筬羽116とは、所定長の基準隙間134をもって列設されている。基準隙間134の長さは、基準長d0である。換言すれば、第一筬羽114と第二筬羽116の間には、基準長d0の空間が存在する。
図4(B)に示すように、第二筬羽屈曲部126においては、第一筬羽上部114Uと第二筬羽116上部116Uたる第二筬羽偏倚部126Mは、中間部におけるピッチp1と同一のピッチp1によって所定の間隔で列設されているが、第二筬羽屈曲部126、詳しくは第二筬羽偏倚部126Mと第一筬羽上部114Uは、経糸102の伸長方向において織前112側へずれていることから、それらの間の第一隙間1341は、基準長d0よりも大きな第一長d1の長さを有することになる。この第一隙間1341は、隣接する第一筬羽114と第二筬羽116との間では同一の寸法になる。したがって、第一隙間1341は、第二筬羽偏倚部126Mと第一筬羽上部114Uとの間が最も大きく、第二筬羽下向き傾斜部126US、又は第二筬羽上向き傾斜部126LSと第一筬羽114の第一筬羽上部114Uとの間は徐々に広くなる。
第一筬羽114と第二筬羽116の第二筬羽屈曲部126との間に形成される第一隙間1341の長さ第一長d1は、通常の基準長d0よりも大きいことから、通常の経糸102よりも太くなっている経糸102の結び玉kの引き通しが容易になる。
【0030】
ノッターでつないだ経糸102の結び玉kを第一織機用筬100を通過させる場合、経糸102を緩速度で織前112側へ移動させ、経糸102を弛緩させた状態において、第一織機用筬100よりも織前112側の経糸102の面状に整列された状態を維持するよう掌間で保持し、結び玉kが第二横向凹部126Cに進行するように織前112側へ引く。この織前112側への経糸102の移動によって、結び玉kは第二筬羽屈曲部126の側方を通って第一織機用筬100を通過させられる。特に、第二筬羽屈曲部126は、第二筬羽下向き傾斜部126USと第二筬羽上向き傾斜部126LSによって、織前112側に近づくほど互いに近づくように横向き先すぼまり形、換言すれば、横向き先すぼまり形の第二横向凹部126Cが形成されていることから、結び玉kを通すため、経糸102を織前112側へ引くことによって、第二横向凹部126Cを構成する第二筬羽下向き傾斜部126USと第二筬羽上向き傾斜部126LSによって、結び玉kが自ずと第二筬羽偏倚部126Mへ案内される。換言すれば、結び玉kを通すために経糸102を織前112側へ引くという自然な動作によって、結び玉kが最も第一長d1が大きい第二筬羽偏倚部126Mへ案内されるので、容易に経糸102の結び玉を通過させることができる利点がある。
【実施例0031】
次に実施例2の第二織機用筬200を図5及び図6を参照しつつ説明する。
第二織機用筬200は、第一筬羽114と、第二筬羽116に代わる第三筬羽316を組み合わせて構成した織機用筬である。実施例1と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成を説明する。なお、第三筬羽316は、第二筬羽116の向きを逆向きにすることにより構成できる。
【0032】
次に第三筬羽316を図5を参照しつつ説明する。
第三筬羽316は、通常の筬打ち機能、及び第一筬羽114との距離を通常の筬羽間の距離よりも大きな距離になるようにする機能を有する。本実施例2において、第三筬羽316は、第三厚みT3が約0.2mm、第三高さ(長さ)L3が約100mm、第三筬羽下部316L、第三筬羽中間部316M、及び第三筬羽上部316Uの第三幅W3が約5mmの薄平板形状であると共に、第三筬羽上部316Uの下部が反織前112側に屈曲された第三筬羽屈曲部326を有する部分屈曲薄平板形状であって、通常、ステンレスによって成形されているが材質は問わない。換言すれば、第三筬羽316の第三厚みT3は、第一筬羽114の第一厚みT1、第三高さL3は第一筬羽114の第一高さL1、第三幅W3は第一筬羽114の第一幅W1と同一である。第三筬羽316の経糸102と摺接する角部は丸みを付されている。第三筬羽316の第三筬羽下部316Lの下端部は下枠124内に挿入され、第三筬羽上部316Uの上端部は上枠122内に挿入される。これによって、第三筬羽316は、第三筬羽上部316Uによって構成される第三筬羽屈曲部326と、第三筬羽下部316Lと第三筬羽中間部316Mによって構成される第三筬羽真直部328によって構成される。
【0033】
次に第三筬羽屈曲部326の形状を説明する。
第三筬羽屈曲部326は、第三筬羽上向き傾斜部326US、第三筬羽偏倚部326M、及び第三筬羽下向き傾斜部326LSを含んでいる。
第三筬羽上向き傾斜部326USは、第三筬羽偏倚部326Mの上端部に連なり、織前112側に向かって上向きに傾斜する部分である。換言すれば、第三筬羽上向き傾斜部326USは、大凡垂立する第三筬羽上部316Uに対し、所定の角度で織前112側へ上向きに傾斜する部分である。
第三筬羽下向き傾斜部326LSは、第三筬羽偏倚部326Mの下端部に連なり、織前112に向かって下向きに傾斜する部分である。換言すれば、第三筬羽下向き傾斜部326LSは、大凡垂立する第三筬羽上部316Uに対し、所定の角度で織前112側へ下向きに傾斜する部分である。換言すれば、第三筬羽下向き傾斜部326LSは、織前112に向かって下向きに傾斜する下向き傾斜部326LSである。
第三筬羽偏倚部326Mは、第三筬羽上向き傾斜部326USの下端部に連なり、第三筬羽中間部316Mよりも織前112に対し反対側に位置し、短い長さで平行に延在する部分である。
換言すれば、第三筬羽屈曲部326は反織前112側へ横向き台形状に突出する屈曲部である。第三筬羽316は、第三筬羽屈曲部326によって、その上部に反織前112側へ先すぼまりの第三横向凹部326Cが形成される。なお、第三筬羽屈曲部326は、第三筬羽偏倚部326Mが殆ど存在しない横向き山形であってもよい。
【0034】
次に第三筬羽真直部328を説明する。
第三筬羽真直部328は、第一筬羽114と実質的に同一の断面形状に構成され、第三筬羽屈曲部326の反対側に筬打ち部BPが位置することになる。
【0035】
第三筬羽316は、背面図が図5(C)に示すように、同図(B)の正面図とは線対称の形状になり、左右側面図は同図(D)(E)に示すように、第三厚みT3で表される縦長薄板形状であり、平面図及び底面図は、同図(F)(G)に示すように、第三筬羽真直部328から反織前112側へ第三筬羽屈曲部326が突出する薄板形状になり、第三筬羽屈曲部326の断面は、同図(H)に示すように第一筬羽114の断面と同一の扁平薄板断面であり、第三筬羽真直部328の断面は、同図(I)に示すように、第一筬羽114の断面と同一の扁平薄板断面である。
【0036】
次に第一筬羽114、第三筬羽316、親羽根118、上枠122、及び下枠124によって構成された第二織機用筬200を主に図6を参照しつつ説明する。
本実施例2において、第一筬羽114、第三筬羽316、及び親羽根118の上端部が実施例1と同様に、上枠122の上溝122Gに挿入され、それらの下端部は下枠124の下溝124Gに挿入され、接着剤等によってそれぞれ固定され、一体化されている。
実施例1と同様に、第一筬羽114と第三筬羽316は、それぞれ交互に一定間隔(ピッチ)p2において配置されている。換言すれば、異なる種類の第一筬羽114と第三筬羽316が隣接して配置されている。第一筬羽114と第三筬羽316間の間隔は、所定の直径の線材によって形成された上巻き線132U、下巻き線132Lによって規制されている。これらが組み合わされた第二織機用筬200は、経糸開口106を正面視した場合、第一筬羽114の第一筬羽下部114L及び第一筬羽中間部114Mと、第三筬羽316の第三筬羽下部316L及び第三筬羽中間部316Mが重なりあい、第一筬羽中間部114M、及び第三筬羽中間部316Mの所定部分が筬打ち部BPになる。第三筬羽316の第三筬羽屈曲部326は第一筬羽114の第一筬羽上部114Uに対し反織前112側に偏倚され、第一筬羽114の織前112側と反対側端縁と第三筬羽316の第三筬羽偏倚部326Mにおける織前112側端縁との間に第三屈曲部隙間238が形成される程度に屈曲されることが好ましい。しかし、第三屈曲部隙間238が形成されない程度の屈曲も採用することができる。
【0037】
次に第三筬羽屈曲部326と経糸102(上経糸102U)との関係を主に図6(A)を参照しつつ説明する。
第三筬羽屈曲部326は、最大開口時の上経糸102Uの位置よりも上方に位置する。これによって、上経糸102Uが第三筬羽屈曲部326と摺接することがないため、経糸102を損傷させ、又は切断させることがない利点を有する。なお、上経糸102Uと第三筬羽屈曲部326が接触しない位置とは、実質的に上経糸102Uと第三筬羽屈曲部326が接触しない位置を含む概念である。すなわち、上経糸102Uが第三筬羽下向き傾斜部326LSと接触しない位置は勿論、上経糸102Uと第三筬羽下向き傾斜部326LSとが接触した場合であっても、実質的に上経糸102Uに悪影響が発生しない場合を含む概念である。換言すれば、経糸開口106を正面視した場合、第三筬羽下向き傾斜部326LSと上経糸102Uが実質的に重ならないように設定されている。
【0038】
次に、主に図6を参照しつつ本実施例2の作用、効果を説明する。
図6(C)に示すように、第二織機用筬200の筬打ち部BPを通る断面図において、第一筬羽114の第一筬羽中間部114Mと第三筬羽中間部316Mは、同一断面形状を有し、同一のピッチp2において、一列に横方向に列設されることにより、第二基準隙間234が形成され、当該第二基準隙間234は、所定の基準長d0を有している。換言すれば、第一筬羽114と第三筬羽316の間には、基準長d0の第二基準隙間234が存在する。
図6(B)に示すように、第三筬羽屈曲部326において、第一筬羽上部114Uと第三筬羽上部316Uたる第三筬羽屈曲部326は、ピッチp21によって所定の間隔で列設されているが、第三筬羽屈曲部326、詳しくは第三筬羽偏倚部326Mと第一筬羽上部114Uは、経糸102の伸長方向における反織前112方向にずれていることから、それらの間の第二隙間2341は、基準長d0よりも大きな第二長d2の長さである。この第二隙間2341は、隣接する第一筬羽114と第三筬羽316との間では同一の寸法になる。したがって、第二隙間2341は、第三筬羽偏倚部326Mと第一筬羽上部114Uとの間が最も大きく、第三筬羽上向き傾斜部326US、又は第三筬羽下向き傾斜部326LSと第一筬羽114の第一筬羽上部114Uとの間は徐々に広くなる。
第一筬羽114と第三筬羽屈曲部326の第三筬羽偏倚部326Mとの間に形成される第二隙間2341の長さ第二長d2は、通常の基準長d0よりも大きいことから、通常の経糸102よりも太くなっている経糸102の結び玉kが引き通しやすくなる。
【実施例0039】
次に実施例3の第三織機用筬300を図7及び図8を参照しつつ説明する。
第三織機用筬300は、実施例1において説明した第二筬羽116と実施例2において説明した第三筬羽316の組み合わせである。換言すれば、織前112側へ突出する第二筬羽屈曲部126を有する第二筬羽116と、反織前112側へ突出する第三筬羽屈曲部326を有する第三筬羽316が、交互に所定の第三ピッチp3において配置され、第二筬羽116と第三筬羽316との間には基準長d0の隙間が形成されている。第二筬羽屈曲部126と第三筬羽屈曲部326は、向かい合わせに配置され、経糸開口106の正面視において、第二横向凹部126Cと第三横向凹部326Cが向かい合うことにより、リング型の第三隙間338が形成される。
【0040】
次に第二筬羽屈曲部126、及び第三筬羽屈曲部326と経糸102(上経糸102U)との関係を主に図7を参照しつつ説明する。
第二筬羽屈曲部126、及び第三筬羽屈曲部326は、最大開口時の上経糸102Uの位置よりも上方に位置する。これによって、上経糸102Uが第二筬羽屈曲部126、及び第三筬羽屈曲部326と実質的に摺接することがないため、経糸102を損傷させ、又は切断させることがない。
【0041】
次に、主に図8を参照しつつ本実施例3の第三織機用筬300の作用、効果を説明する。
図8(C)に示すように、第三織機用筬300の筬打ち部BPを通る断面図において、第二筬羽116の第二筬羽中間部116Mと第三筬羽316の第三筬羽中間部316Mは、同一断面形状を有し、同一のピッチp3において、一列に横方向に列設されている。第二筬羽116と第三筬羽316の間に形成される第三基準隙間334は、基準長d0である。換言すれば、第二筬羽116と第三筬羽316の間には、基準長d0の空間が存在する。
図8(B)に示すように、第二筬羽屈曲部126と第三筬羽屈曲部326においては、第二筬羽116の第二筬羽上部116Uたる第二筬羽屈曲部126と第三筬羽上部316Uたる第三筬羽屈曲部326は、中間部におけるピッチp3と同一のピッチp3によって所定の間隔で横方向に列設されているが、第二筬羽屈曲部126と第三筬羽屈曲部326、詳しくは第二筬羽偏倚部126Mと第三筬羽偏倚部326Mは、経糸102の伸長方向に偏倚していることから、それらの間の第三隙間3341は、基準長d0よりも大きな第三長d3の長さを有することになる。この第三隙間3341は、隣接する第二筬羽116と第三筬羽316との間では同一の寸法になる。したがって、第三隙間3341は、第二筬羽偏倚部126Mと第三筬羽偏倚部326Mとの間が第三長さd3として最も大きい。したがって、経糸102の結び玉kは第三隙間3341を通ることができるので、容易に経糸102の結び玉kを通過させることが出来る利点がある。さらに、第二筬羽屈曲部126は、第二筬羽下向き傾斜部126USと第二筬羽上向き傾斜部126LSによって、横向き台形状であって、織前112側に先すぼまりの第二横向凹部126Cに形成されていることから、結び玉kを通すため、経糸102を織前112側へ引くことによって、第二横向凹部126Cを構成する第二筬羽下向き傾斜部126USと第二筬羽上向き傾斜部126LSによって、結び玉kが自ずと第二筬羽偏倚部126Mへ案内される。換言すれば、結び玉kを通すために経糸102を織前112側へ引くという自然な動作によって、結び玉kが最も隙間が大きい第二筬羽偏倚部126Mへ案内されるので、容易に経糸102の結び玉kを通過させることができる利点がある。
【実施例0042】
次に実施例4に係る第四織機用筬400を図9を参照しつつ説明する。
第四織機用筬400は、第一筬羽114、第二筬羽116、及び第三筬羽316を隣接する筬羽が異なる筬羽になるように配置した例の一例であり、第一筬羽114、第二筬羽116、及び第三筬羽316が所定のピッチp4において、横方向に列設されている。この構成によって、第一筬羽114と第二筬羽116の第二筬羽屈曲部126の第二筬羽偏倚部126Mの間には第一隙間1341が形成され、第一隙間1341は第一長d1である。第一筬羽114と第三筬羽316の第三筬羽屈曲部326の第三筬羽偏倚部326Mの間には第二隙間2341が形成され、第二隙間2341は第二長d2である。実施例1、又は実施例2の説明において詳述したように、第一長d1、及び第二長d2は、通常の基準長dよりも大きいので、経糸102の結び玉kを通過させやすい効果がある。また、第二筬羽116の第二筬羽屈曲部126の第二横向凹部126Cの作用によって、実施例1において説明したように、結び玉kの引通しが容易になる利点がある。
本実施例4の他、第一筬羽114、第二筬羽116、及び第三筬羽316を隣接する筬羽が異なる筬羽になるように配置する配置としては、第一筬羽114、第二筬羽116、及び第三筬羽316の順、第一筬羽114、第三筬羽316及び第二筬羽116の順等が可能である。
【実施例0043】
次に実施例5に係る第五織機用筬500を図10を参照しつつ説明する。
第五織機用筬500は、基本的構成は実施例1の第一織機用筬100と同様に、第一筬羽114と、織前112側へ屈曲して形成された第五筬羽屈曲部526を有する第四筬羽416とが交互に配置されている。第四筬羽416の形状は第二筬羽116とほぼ同一であるが、第四筬羽偏倚部426Mの長さが第二筬羽116の第二筬羽偏倚部126Mよりも幾分長く形成されている。これにより、第四横向凹部426Cが大きくなり、経糸102の結び玉kを一層容易に通過させることができる利点がある。
【実施例0044】
次に実施例6に係る第六織機用筬600を図11を参照しつつ説明する。
第六織機用筬600は、実施例2と同様に、第一筬羽114と、反織前112側へ屈曲する第五筬羽屈曲部526を有する第五筬羽516が交互に配置されている。第五筬羽偏倚部526Mの長さが第三筬羽316の第三筬羽偏倚部326Mよりも幾分長く形成されている。これにより、第五横向凹部526Cが大きくなり、経糸102の結び玉kを一層容易に通過させることができる利点がある。
【実施例0045】
次に実施例7に係る第七織機用筬700を図12を参照しつつ説明する。
第七織機用筬700は、実施例3と同様に、織前112側へ屈曲する第四筬羽屈曲部426を有する第四筬羽416と、反織前112側へ突出する第五筬羽屈曲部526を有する第五筬羽516とが交互に配置されている。第四筬羽屈曲部426の第四筬羽偏倚部426Mと第五筬羽偏倚部526Mの長さは、前述したように、第二筬羽116及び第三筬羽316のそれよりも幾分長く形成されている。これにより、第七隙間738が大きくなり、経糸102の結び玉kを一層容易に通過させることができる利点がある。
【符号の説明】
【0046】
100 織機用筬
200 第二織機用筬
300 第三織機用筬
400 第四織機用筬
500 第五織機用筬
600 第六織機用筬
700 第七織機用筬
102 経糸
102U 上経糸
102B 下経糸
104 織布
106 経糸開口
108 緯糸
112 織前
114 第一筬羽
114L 第一筬羽下部
114M 第一筬羽中間部
114L 第一筬羽下部
116 第二筬羽
116U 第二筬羽上部
116M 第二筬羽中間部
116L 第二筬羽下部
118 親羽根
122 上枠
122G 上溝
124 下枠
124G 下溝
126 第二筬羽屈曲部
126US 第二筬羽下向き傾斜部
126M 第二筬羽偏倚部
126LS 第二筬羽上向き傾斜部
126C 第二横向凹部
128 第二筬羽真直部
132U 上巻き線
132L 下巻き線
134 基準隙間
1341 第一隙間
138 屈曲部隙間
316 第三筬羽
416 第四筬羽
516 第五筬羽
BP 筬打ち部
d 基準長
d1 第一長
d2 第二長
d3 第三長
k 結び玉
p1 ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13