(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116392
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】予備電源の放電試験方法および監視装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20220803BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20220803BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G01R31/00
G08B23/00 530B
G08B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012537
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石川 長志
(72)【発明者】
【氏名】魚住 広樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 匠
【テーマコード(参考)】
2G036
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA34
2G036BA37
2G036BB08
5C087CC12
5C087DD04
5C087EE08
5C087FF14
5G405CA11
5G405CA37
5G405EA27
5G405EA31
(57)【要約】
【課題】予備電源装置の定時間放電試験において、ヒューマンエラーにより放電抵抗が接続されていない状態のままで試験が実施されるのを防止する。
【解決手段】電池内蔵の予備電源装置から放電抵抗へ所定の電流を所定の試験時間の間流すことで予備電源装置が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法において、試験開始後前記試験時間よりも短い所定時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧と試験開始時の測定電圧との差電圧が予め設定された所定電圧以上あるか否か判定する第1電圧判定工程と、試験開始後前記試験時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧が予め設定された所定の電圧値以上あるか否か判定する第2電圧判定工程とを有し、前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定した場合に放電試験を終了するようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を内蔵した予備電源装置から放電抵抗へ所定の電流を所定の試験時間の間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法であって、
試験開始後前記試験時間よりも短い所定時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧と試験開始時の測定電圧との差電圧が予め設定された所定電圧以上あるか否か判定する第1電圧判定工程と、
試験開始後前記試験時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧が予め設定された所定の電圧値以上あるか否か判定する第2電圧判定工程と、
を有し、
前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定した場合に放電試験を強制終了し、
前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧以上であると判定した場合に放電試験を継続して、前記第2電圧判定工程において前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも高いと判定した場合に電池は正常であることを出力する一方、前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも低いと判定した場合に電池は異常であることを出力して試験を終了することを特徴とする予備電源の放電試験方法。
【請求項2】
前記予備電源装置は監視装置に設けられている予備電源装置であり、前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定して放電試験を強制終了した場合に、試験終了の原因として前記放電抵抗の未接続を前記監視装置の表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の予備電源の放電試験方法。
【請求項3】
停電からの電源復旧時または予備電源試験終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出工程と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時工程と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する時間判定工程と、
前記時間判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を開始することを特徴とする請求項1または2に記載の予備電源の放電試験方法。
【請求項4】
電池を内蔵した予備電源装置と、前記予備電源装置の電圧を測定する電圧測定手段と、前記予備電源装置から放電抵抗へ所定の電流を所定の試験時間の間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否かの試験を実行可能な予備電源試験装置と、を備えた監視装置であって、
前記予備電源試験装置は、
試験開始後前記試験時間よりも短い所定時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧と試験開始時の測定電圧との差電圧が予め設定された所定電圧以上あるか否か判定する第1電圧判定手段と、
試験開始後前記試験時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧が予め設定された所定の電圧値以上あるか否か判定する第2電圧判定手段と、を備え、
前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定された場合に放電抵抗が未接続状態または断線状態であると判断して放電試験を強制終了し、
前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧以上であると判定した場合に放電抵抗が接続されていると判断して放電試験を継続し、前記第2電圧判定手段によって前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも高いと判定した場合に電池は正常であることを出力する一方、前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも低いと判定した場合に電池は異常であることを出力して試験を終了することを特徴とする監視装置。
【請求項5】
表示装置と、表示すべき情報があることを報知する情報報知ランプと、情報を表示することを指令するための操作ボタンと、備え、
前記予備電源試験装置は、前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定して放電試験を強制終了した場合に、前記放電試験の強制終了時に前記表示装置に終了の原因が前記放電抵抗の未接続であることを表示させるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災受信機あるいは火災監視制御盤のような監視装置に設けられている電池を内蔵した予備電源が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法および予備電源試験装置を備えた監視装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器からの検出信号を受信して火災を警報する火災受信機や火災監視制御盤を備えた防災監視システムにおいては、商用交流電源で動作する主電源装置とは別に、停電時にバックアップするための二次電池(バッテリ)を内蔵した予備電源装置が設けられている。
【0003】
火災受信機の予備電源装置に使用されている二次電池は、通常の監視状態にあっては、商用交流電源の整流平滑で得られた直流電圧で充電状態におかれているが、長期間使用している間に、二次電池の劣化等が進み充電容量が不足した状態になるおそれがあることから、定期的にまた必要に応じて予備電源装置の試験が実施されている。なお、予備電源試験は、火災受信機に設けられている予備電源試験スイッチを操作することで実施するように構成されることが多い。
火災受信機の予備電源装置の放電試験に関する従来の発明としては、例えば特許文献1~3に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-35156号公報
【特許文献2】実開昭64-5178号公報
【特許文献3】特開2019-78636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、予備電源装置を備えた火災受信機は、工場での組み立て製造時に、二次電池の放電試験のための放電抵抗が結線され、その確認試験が実施された後に放電抵抗が結線された状態のまま出荷される。しかし、受信機設置後に、例えば受信機の保守点検で回路基板などの交換が必要であると判断されることがあり、その交換の際には、放電抵抗の切り離しを行い、基板交換後に再度結線を行う必要があるが、この結線を忘れてしまい未接続状態のままだったり、あるいは、結線作業の際に接続線を破損してしまい断線状態となってしまったりすることがある。
【0006】
一方、受信機には、設置時(運用開始時)に必要な受信機の各機能の自動試験を行う機能が搭載されており、予備電源装置の二次電池(以下、予備電池と称する)の放電試験もその一つであり、回路基板を交換した場合、再運用開始前に試験が実施される。しかしながら、従来の受信機は、放電試験の際に、予備電池から充電回路を切り離し、ダミー負荷として放電抵抗を接続して放電後の予備電池の電圧を測定することにより試験を実施するため、上記のように放電抵抗が未接続状態または断線状態のままで測定されてしまい、確実な放電試験が実施されてないおそれがあるという課題があることが明らかになった。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、10分間のような所定時間の間放電抵抗を介して予備電池の放電を行う定時間電池試験(放電試験)において、ヒューマンエラーにより放電抵抗が接続されていない状態のままで試験が実施されるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
電池を内蔵した予備電源装置から放電抵抗へ所定の電流を所定の試験時間の間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法において、
試験開始後前記試験時間よりも短い所定時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧と試験開始時の測定電圧との差電圧が予め設定された所定電圧以上あるか否か判定する第1電圧判定工程と、
試験開始後前記試験時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧が予め設定された所定の電圧値以上あるか否か判定する第2電圧判定工程と、
を有し、
前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定した場合に放電試験を強制終了し、
前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧以上であると判定した場合に放電試験を継続して前記第2電圧判定工程において、前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも高いと判定した場合に電池は正常であることを出力する一方、前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも低いと判定した場合に電池は異常であることを出力して試験を終了するようにしたものである。
【0009】
放電抵抗が接続されていない状態で電池試験が実施されると、放電抵抗に電流が流れないため、ある程度時間が経過しても予備電池の電圧がほとんど低下することがない。上記のような工程を有する放電試験方法によれば、試験開始後に予備電池の電圧低下量が大きい場合には放電抵抗が正常に接続されていると判定して放電試験を継続し、試験開始後に予備電池の電圧低下量が小さい場合には放電抵抗が未接続状態または断線状態であると判定して放電試験を終了するため、所定時間の間放電抵抗を介して予備電池の放電を行う定時間電池試験(放電試験)において、ヒューマンエラーにより放電抵抗が接続されていない状態で試験が実施されるのを防止することができる。また、それによって、誤った試験結果が表示されてしまうのを防止することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記予備電源装置は監視装置に設けられている予備電源装置であり、前記第1電圧判定工程において前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定して放電試験強制を終了した場合に、試験終了の原因として前記放電抵抗の未接続を前記監視装置の表示部に表示するようにする。
かかる方法によれば、試験終了の原因として放電抵抗の未接続を表示するため、監視者は試験が途中で終了した場合にその理由を容易に把握することができる。
また、前記所定時間は、例えば前記試験時間の2分の1であるようにする。
このようによれば、放電抵抗の未接続を確実に判定することができる。
【0011】
また、望ましくは、停電からの電源復旧時または予備電源試験終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出工程と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時工程と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する時間判定工程と、
前記時間判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を開始するようにする。
かかる方法によれば、予備電池の放電試験開始の際に、電源復旧または前回放電試験からの経過時間が、当該電池の充電に要する時間よりも短い場合には放電試験が開始されないため、比較的短い時間に繰り返し放電試験が実施されることによって、電池の劣化が進んでしまうのを防止しつつ予備電池の定時間放電試験を実施することができる。
【0012】
本出願の他の発明は、電池を内蔵した予備電源装置と、前記予備電源装置の電圧を測定する電圧測定手段と、前記予備電源装置から放電抵抗へ所定の電流を所定の試験時間の間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否かの試験を実行可能な予備電源試験装置と、を備えた監視装置において、
前記予備電源試験装置は、
試験開始後前記試験時間よりも短い所定時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧と試験開始時の測定電圧との差電圧が予め設定された所定電圧以上あるか否か判定する第1電圧判定手段と、
試験開始後前記試験時間を経過した時点での前記予備電源装置の測定電圧が予め設定された所定の電圧値以上あるか否か判定する第2電圧判定手段と、を備え、
前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定された場合に放電抵抗が未接続状態または断線状態であると判断して放電試験を強制終了し、
前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧以上であると判定した場合に放電抵抗が接続されていると判断して放電試験を継続し、前記第2電圧判定手段によって前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも高いと判定した場合に電池は正常であることを出力する一方、前記測定電圧が前記所定の電圧値よりも低いと判定した場合に電池は異常であることを出力して試験を終了するように構成したものである。
【0013】
上記のような構成を有する監視装置によれば、試験開始後に予備電池の電圧低下量が大きい場合には放電抵抗が正常に接続されていると判定して放電試験を継続し、試験開始後に予備電池の電圧低下量が小さい場合には放電抵抗が未接続状態または断線状態であると判定して放電試験を終了するため、所定時間の間放電抵抗を介して予備電池の放電を行う定時間電池試験(放電試験)において、ヒューマンエラーにより放電抵抗が接続されていない状態で試験が実施されるのを防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、表示装置と、表示すべき情報があることを報知する情報報知ランプと、情報を表示することを指令するための操作ボタンと、備え、
前記予備電源試験装置は、前記第1電圧判定手段によって前記差電圧が前記所定電圧よりも小さいと判定して放電試験を強制終了した場合に、前記放電試験の強制終了時に前記表示装置に終了の原因が前記放電抵抗の未接続であることを表示させるように構成する。
かかる構成によれば、試験終了の原因として放電抵抗の未接続を表示するため、監視者は試験が途中で終了した場合にその理由を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の予備電源の放電試験方法および監視装置によれば、10分間のような所定時間の間放電抵抗を介して予備電池の放電を行う定時間電池試験(放電試験)において、ヒューマンエラーにより放電抵抗が接続されていない状態のままで試験が開始されるのを防止する試験が実施されるのを防止することができる。また、それによって、誤った試験結果が表示されてしまうのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る予備電源試験装置を備えた火災受信機の一構成例を示す正面図である。
【
図2】実施形態の火災受信機内に設けられている予備電源試験装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る予備電源試験装置による放電試験処理の手順の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る予備電源試験装置を備えた火災受信機の前面パネルの構成例が示されている。
図1の火災受信機10は、建物の防災センターや中央管理室に設置され、建物内に設置された感知器や発信機からの火災信号を受信し、地区音響装置を鳴動させて火災の発生を音響で知らせるとともに、当該火災受信機10の前面パネルに設けられているランブ等の表示により火災発生を報知する機能を有する。また、火災受信機10の筐体内には、予備電源装置および該予備電源装置の試験を行う予備電源試験装置が設けられている。
【0018】
火災受信機10の前面パネルには、
図1に示すように、交流電源の投入や火災発報、発信機信号の入力など火災受信機の動作状態を各種ランプの点灯で表示する主操作部11と、火災発報した回線や感知器線断線が発生した回線を表示する火報回線用の地区表示部12、火災が発生した場所や防排煙端末等の作動した場所を表示する防排煙回線用の地区表示部13、火災の発生等を知らせるスピーカ14、受信機の音響やベル(地区音響)を停止させるための押釦を備えた音響操作部15、受信機の動作モードや後述の電池試験が実施された際の結果等の情報を表示するLCD(液晶パネル)などからなる情報表示部16、表示内容を変更するためのシフトボタンなどを有する表示操作部17、受信機の火災内容・異常内容などを情報表示部16に表示させて確認するため情報ボタン18aおよび情報ランプ18bを有する情報操作部18などを備える。
【0019】
上記情報操作部18においては、監視者へ知らせる要因があると情報ランプ18bが点滅し、情報ボタン18aを押すことで情報表示部16に火災情報及び異常情報等が表示される。また、火災受信機10の前面パネルの下部には開閉可能な子扉10aが設けられ、該子扉10aの内側に、後述の電池試験の開始を指令する電池試験スイッチボタン19Aや火災試験の開始を指令する火災試験スイッチボタン19B、試験からの復旧を指令する試験復旧ボタン19C、火災状態からの復旧を指令する復旧ボタン19Dなどを有する内部操作部19が設けられている。
【0020】
上記表示操作部17には、表示内容を順送りするためのシフトボタン(△)、逆送りするためのシフトボタン(▽)、表示モードを元に戻すための「戻り」ボタン、表示モードを決定するための「決定」ボタン17Dが設けられている。
また、図示しないが、上記操作部(11、17、18)からの指令入力を受けて各表示部(12、13、16)やスピーカ14を駆動する制御基板が火災受信機10の筐体の内部に設置されている。さらに、商用交流電源の停電時に上記制御基板等へ電源を供給する予備電源装置と、該予備電源装置の試験を行う予備電源試験装置が火災受信機10の筐体の内部に設けられており、予備電源装置には、予備電池の放電試験のために、ダミー負荷として放電抵抗が設けられている。
【0021】
図2に、本実施形態の火災受信機内に設けられている予備電源試験装置の構成例を示す。
図2に示すように、本実施形態における予備電源試験装置は、火災受信機10の筐体内に設けられている電池試験制御基板20と、予備電源装置30の電圧を検出する電圧測定部22と、計時用のタイマー23とを備える。
【0022】
電池試験制御基板20には、電池試験の開始を指令する電池試験ボタン19Aや情報操作部18の情報ボタン18aおよび表示操作部17のシフトボタン17A,17B、「戻り」ボタン17C、「決定」ボタン17Dからの指令信号が入力され、電池試験制御基板20はこれらの入力手段からの信号に応じて上記情報表示部16の表示駆動制御および情報ランプ18bの点灯駆動制御を行うように構成されている。
なお、電池試験制御基板20には、主電源/予備電源切替装置や電池充電/電池接続監視装置などの公知の装置(回路)が搭載されている(図示省略)。
【0023】
図3には、火災受信機10の筐体内に設けられている予備電源試験装置による10分間放電試験方法の手順の一実施例のフローチャートが示されている。なお、放電試験は、予備電源から放電抵抗に所定の電流を所定時間(例えば10分)流すことで実行される。
図3に示す放電試験処理においては、放電抵抗が接続されていれば放電試験の開始で放電抵抗に電流が流れることで電池電圧が下がる一方、放電抵抗が接続されていないと放電試験を行なっても電池電圧が下がらないことに着眼して、放電抵抗の接続の有無を判定するようにしている。以下、
図3に示す放電試験処理について説明する。
【0024】
図3に示す放電試験処理は、子扉10aの内側の内部操作部19(
図1参照)に設けられている電池試験スイッチボタン19Aと前面パネルに設けられている決定スイッチボタン17Dが同時に押圧(オン操作)されることで開始される。
上記操作がなされると、先ず前回の停電時に主電源から予備電源へ切り替えられた後、電源復旧時に予備電源から主電源に戻った時(切り替えられた時)から今回の放電試験操作がなされる時までの経過時間、または前回の放電試験終了時から今回の放電試験操作開始時までの経過時間が、前回の放電試験終了時に算出された予備電源装置内の電池の満充電に必要な時間よりも長くなっているか否か判定する(ステップS1)。
【0025】
なお、電池の満充電に必要な時間については、10分間放電試験の終了時の測定電圧をVd、前回10分間放電試験の終了時の測定電圧をVeとし、劣化していない電池の充電電圧がVf(例えば28.8V)で満充電に要する時間がTc(例えば48時間)であるとすると、放電試験を行なった電池の充電に必要な時間T(h)は、次式
T(h)=(Vf-Ve)÷(Vf-Vd)/Tc
を用いて算出することができる。試験の終了時の測定電圧をVdがVfに近ければ近いほど、(Vc-Vd)の値が小さくなるので、充電必要時間は短くなる。
【0026】
上記ステップS1で、電池の充電に必要な時間を経過していない(No)と判定すると、10分間放電試験を開始せずにステップS11へ移行して、その旨および次回の10分間放電試験が実施可能になるまでの残り時間(充電必要時間-経過時間)を演算して、火災受信機10の前面パネルに設けられている情報表示部16に表示する。なお、充電必要時間の算出は、ステップS11の直前に行なっても良いし、後述のステップS10の後等に行うようにしても良い。
一方、ステップS1で、経過時間が電池の満充電に必要な時間よりも長くなっている(Yes)と判定すると、ステップS2へ進んで、「電池試験」を示すランプを点灯して10分間放電試験を開始した後、電圧測定部22により測定した予備電池の電圧値を読み込む(ステップS3)。
【0027】
そして、測定された電池電圧が、予め設定されている所定値Va(例えば12.0V)以上であるか否か判定する(ステップS4)。ここで、電池電圧が所定値Va以上でない(No)と判定すると、情報表示部16に電池充電異常終了を表示する。また、表示する情報があることを示す情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して10分間放電試験を強制終了する。その後、情報ボタン18aが押されると、情報表示部16に異常(終了)の原因(この場合は電池不良)が表示される。
【0028】
また、ステップS4で、電池電圧が所定値Va以上である(Yes)と判定すると、ステップS5へ進んで、火災受信機10の前面パネルの情報表示部16に経過時間(または残り時間)と測定電圧を表示する。
その後、ステップS6へ進んで、電池試験スイッチボタンB1が押圧(オン操作)されていないか否か判定する。そして、試験スイッチがオン操作されていない(Yes)と判定すると、ステップS7へ進んで、試験開始から例えば5分経過したか否か判定し、経過していない(No)と判定すると、ステップS3へ戻って上記処理を繰り返す。
【0029】
一方、ステップS7で、5分経過した(Yes)と判定すると、ステップS8へ進んで5分経過後の電池電圧と試験開始前電池電圧との差電圧ΔVが、予め設定されている所定電圧Vc(例えば1.0V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定値Vc未満(No)つまり電池の放電試験を開始して5分経過してもΔVがあまり増加していないと判定した場合には、放電抵抗が接続されていないものとして、放電試験を強制終了し、情報表示部16に強制終了の原因(放電抵抗未接続)が表示される。放電試験を強制終了すると、強制終了したことが情報表示部16の情報報知ランプが点灯もしくは点滅されることで表示され、その後に、情報ボタン18aが押されると、情報表示部16に終了の原因(放電抵抗未接続)が表示されるようにしても良い。
【0030】
また、ステップS8で、5分経過後の電池電圧と試験開始前電池電圧との差電圧ΔVが所定電圧Vc以上である(Yes)と判定した場合つまり放電によりある程度電池電圧が低下した場合には試験を継続する。そして、ステップS9へ進み、試験開始から10分経過したか否か判定し、経過していない(No)と判定すると、ステップS3へ戻って上記処理を繰り返す。
【0031】
ステップS9で、10分経過した(Yes)と判定すると、ステップS10へ進んで、10分経過後の電池電圧が、予め設定されている所定値Vb(例えば20.4V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定値Vb以上である(Yes)と判定した場合には、放電試験を正常終了する。そして、情報表示部16に終了の状態(予備電池正常)が表示される。
また、ステップS10で10分経過後の電池電圧が所定値Vb以上でない(No)と判定すると、放電試験を終了し、情報表示部16に終了の状態(予備電池異常)が表示される。放電試験を異常終了すると、異常終了したことが例えば情報表示部16の情報報知ランプが点灯もしくは点滅されることで表示し、その後に、情報ボタン18aが押されると、情報表示部16に終了の原因(予備電池異常)が表示されるようにしても良い。
【0032】
一方、ステップS6で、試験スイッチがオン操作された(No)つまり10分間電池試験開始後に試験スイッチがオン操作されたと判定すると、ステップS12へ進んで放電試験を開始してから5分を経過したか否か判定する。
ここで、5分を経過した(Yes)と判定すると、ステップS13へ進んで、5分経過後の電池電圧と試験開始前電池電圧との差電圧ΔVが、予め設定されている所定電圧Vc(例えば1.0V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定電圧Vc未満(No)と判定した場合には、放電抵抗が接続されていないものとして、放電試験を強制終了し、情報表示部16に強制終了の原因(放電抵抗未接続)が表示される。
放電試験を強制終了すると、強制終了したことが情報表示部16の情報報知ランプが点灯もしくは点滅されることで表示し、その後に、情報ボタン18aが押されると、情報表示部16に終了の原因(放電抵抗未接続)が表示されるようにしても良い。
【0033】
一方、ステップS12で、5分を経過していない(No)と判定すると、ステップS13をスキップしてステップS14へ移行し、5分経過後の電池電圧が、予め設定されている所定値Vb(例えば20.4V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定値Vb以上である(Yes)と判定した場合には、放電試験を正常終了する。そして、情報表示部16に終了の状態(予備電池正常)が表示される。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に終了の状態(放電試験正常)が表示される。また、表示操作部17のシフトボタンを押すと、満充電に必要な時間を表示させることができる。
【0034】
また、ステップS14で、電池電圧が所定値Vb(例えば20.4V)以上でない(No)と判定すると、10分間電池試験を終了し、情報表示部16に終了の状態(予備電池異常)が表示される。また、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に異常(終了)の原因(予備電池異常)が表示される。
上記のように、ステップS12~S14の処理は、10分間電池試験開始後に再度試験スイッチがオン操作された場合には、10分の経過を待たずに、直ちに予備電池の正常または異常を区別して電池試験を強制終了するものであり、この強制終了処理においても放電抵抗が接続されていない状態を判別して結果を表示できるようになっている。
【0035】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ステップS10で電池電圧が所定値Vb(例えば20.4V)以上でない(No)と判定すると、直ちに電池試験を異常終了しているが、電池電圧が所定値Vb以上でない(No)と判定したら、電池電圧が所定値Va(例えば12.0V)以上か否か判定し、その判定回数が所定回数(例えば2回)に達していない場合には通常の異常終了をさせ、判定回数が所定回数に達した場合には予備電池不良として異常終了させるようにしても良い。
【0036】
また、前記実施形態では、予備電源装置(電池)の測定値電圧と、劣化していない電池の充電電圧及びその充電電圧で満充電に必要な時間に基づいて、放電試験開始時の必要充電時間を算出したが、これに限定されるものではない。例えば、必要充電時間の起算時(放電試験終了時又は停電時又は満充電時)から放電試験開始時の放電量から必要充電時間を算出しても良い。具体的には、予備電源装置(電池試験制御基板20)に、電池の出力側の電流値を測定する電流計を設け、放電電流と放電時間の積により放電容量を算出し、充電流値から必要な充電時間を算出しても良い。
【0037】
さらに、前記実施形態では、電池試験スイッチボタン19Aと「決定」ボタン17Dを押すことで放電試験を開始するように構成したものを説明したが、電池試験スイッチボタン19Aを押すことで放電試験を開始するように構成してもよい。
また、以上の説明では、本発明の予備電源試験装置を火災受信機の予備電源試験装置に適用した場合を例にとって説明したが、火災監視制御盤などの監視装置に設けられている予備電源の試験装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 火災受信機(監視装置)
11 主操作部
12 火報回線用の地区表示部
13 防排煙回線用の地区表示部
14 スピーカ
15 音響操作部
16 情報表示部(表示装置)
17 表示操作部
18 情報操作部
18a 情報ボタン(操作ボタン)
18b 情報ランプ(情報報知ランプ)
19 内部操作部
19A 電池試験スイッチボタン(操作ボタン)