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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116397
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】免震装置と鋼管柱との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220803BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012543
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521043995
【氏名又は名称】株式会社バリューメーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】御所園 武
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陸朗
(72)【発明者】
【氏名】調 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】逸見 慎一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AB04
2E139AC19
2E139CA02
2E139CA21
2E139CB20
2E139CC02
3J048AA03
3J048BA08
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供する。
【解決手段】免震装置4Aと鋼管柱51との接合構造は、上部フランジプレート42、及び上部フランジプレート42の下に接合される積層ゴム部43を有する免震装置4Aと、免震装置4Aの上方に設けられ、下端に柱ベースプレート54が溶接された鋼管柱51と、を備え、柱ベースプレート54は、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さ40mm以上の鋼材で形成され、積層ゴム部43の直径D2または対角寸法は、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく、柱ベースプレート54と上部フランジプレート42がボルト接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置と鋼管柱との接合構造であって、
上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、
前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、
前記鋼管柱は横断面が一様な、内部にコンクリートは充填されていない角管状、または円形状の鋼管であり、
前記柱ベースプレートは、上面にリブプレートは立設されていなく、前記上部フランジプレートの厚さ以上の鋼材で形成され、
前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする免震装置と鋼管柱との接合構造。
【請求項2】
免震装置と鋼管柱との接合構造であって、
上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、
前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、
前記柱ベースプレートは、前記上部フランジプレートの厚さの1.5倍以上の厚さで、かつ厚さ40mm以上の鋼材で形成され、
前記積層ゴム部の直径または対角寸法は、前記鋼管柱の外形寸法より200mm以上大きく、
前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする免震装置と鋼管柱との接合構造。
【請求項3】
前記免震装置は、
前記積層ゴム部の下に接合される下部フランジプレートを備え、当該下部フランジプレートが下方に位置する免震基礎部に接合されている積層ゴム支承であるか、または、
前記積層ゴム部の下に接合される滑り材を備え、当該滑り材が、下方に位置する免震基礎部の上面に接合された滑り板に当接するように設けられている弾性滑り支承であることを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置と鋼管柱との接合構造。
【請求項4】
免震装置と鋼管柱との接合構造であって、
上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、
前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、
前記柱ベースプレートは、鋳鋼により製造されて、当該柱ベースプレートから上方に立ち上がるようにリブプレートが一体に形成され、
前記リブプレートは前記鋼管柱に接合され、
前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする免震装置と鋼管柱との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置と鋼管柱との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置を備えた建築構造物において、免震装置は、建築構造物の躯体を構成する柱の柱脚部の下方に配置されている。
例えば、特許文献1には、柱脚部を構成する鋼管(束材)の下端部にベースプレート(上ベースプレート)が溶接により接合され、免震装置の上部フランジプレート(上フランジ)がベースプレートに対してボルト及びナットによって接合された構成が開示されている。
また、特許文献2には、ベースプレート(下ダイアフラム)が鋼管の下部に接合され、免震装置の上部フランジプレート(上フランジ)とベースプレートとがボルト及びナットによって直接接合された構成が開示されている。
このような構成において、特に特許文献2のように、鋼管と免震装置の各々の横断面の形状や大きさが異なる場合には、鋼管に作用する荷重、応力を、免震装置にスムーズに伝達できない可能性がある。
これに対し、特許文献3には、コンクリート充填鋼管柱を構成する鋼管(筒体)と、鋼管の下端に設けられたベースプレートと、ベースプレートが接合される上部フランジプレート(上部プレート)を有する免震装置と、を備え、ベースプレートの上面に補強リブが設けられている構成が開示されている。補強リブにより、鋼管に作用する荷重、応力は、免震装置の全面にわたり、分散されて伝達される。
【0003】
特許文献3に開示されたような補強リブは、一般的に、鋼管やベースプレートに溶接により接合される。何らかの部材をベースプレートに溶接する際には、熱歪みによる変形がベースプレートに生じることがある。ベースプレートに変形が生じると、免震装置の上部フランジプレート上にベースプレートを重ねたときに、ベースプレートと上部プレートとの間に隙間が生じ、鋼管から免震装置等へ鉛直荷重が偏在して伝達されてしまう。また、鋼管を建方する際の精度や施工効率にも悪影響を及ぼすことがある。そこで、ベースプレートにフェーシング加工等を施し、ベースプレートの表面を平滑に仕上げることが、一般に行われている。しかし、これには手間が掛かり、施工の容易化の妨げとなってしまう。したがって、応力を効率的に伝達しつつも、ベースプレートに対する溶接の量を低減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-153571号公報
【特許文献2】特開2015-96685号公報
【特許文献3】特開2011-52432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の免震装置と鋼管柱との接合構造は、免震装置と鋼管柱との接合構造であって、上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、前記鋼管柱は横断面が一様な、内部にコンクリートは充填されていない角管状、または円形状の鋼管であり、前記柱ベースプレートは、上面にリブプレートは立設されていなく、前記上部フランジプレートの厚さ以上の鋼材で形成され、前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、柱ベースプレートが、上部フランジプレートの厚さ以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート自体の面外剛性が高められる。このため、応力を効率的に伝達可能で、強固な構造を実現することができる。
また、柱ベースプレートにはリブプレートが設けられていないため、リブプレートを溶接する必要がない。また、柱ベースプレートと上部フランジプレートはボルト接合されている。このため、柱ベースプレートに溶接により接合されるのは、鋼管柱のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレートに対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレートにフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置上に鋼管柱の柱脚部を接合して鋼管柱を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【0007】
また、本発明の免震装置と鋼管柱との接合構造は、上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、前記柱ベースプレートは、前記上部フランジプレートの厚さの1.5倍以上の厚さで、かつ厚さ40mm以上の鋼材で形成され、前記積層ゴム部の直径または対角寸法は、前記鋼管柱の外形寸法より200mm以上大きく、前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、柱ベースプレートが、上部フランジプレートの厚さの1.5倍以上の厚さで、かつ厚さ40mm以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート自体の面外剛性が高められる。なおかつ、免震装置の積層ゴム部の直径または対角寸法が鋼管柱の外径寸法よりも200mm以上大きいため、免震装置に作用する応力は、柱ベースプレートによって広い範囲で、略均等に平均化される。このため、柱ベースプレートに水平方向の力が作用しても、鋼管柱に作用する荷重を免震装置の積層ゴム部で安定して受けることができる。このように、上記のような構成を備えることで、応力を効率的に伝達可能で、強固な構造を実現することができる。
上記のような構成のみで応力を効率的に伝達可能であるため、柱ベースプレートと鋼管柱の柱脚部との間に、補強のためのリブプレートを溶接する必要がない。また、柱ベースプレートと上部フランジプレートはボルト接合されている。このため、柱ベースプレートに溶接により接合されるのは、鋼管柱のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレートに対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレートにフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置上に鋼管柱の柱脚部を接合して鋼管柱を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の免震装置と鋼管柱との接合構造は、前記免震装置が、前記積層ゴム部の下に接合される下部フランジプレートを備え、当該下部フランジプレートが下方に位置する免震基礎部に接合されている積層ゴム支承であるか、または、前記積層ゴム部の下に接合される滑り材を備え、当該滑り材が、下方に位置する免震基礎部の上面に接合された滑り板に当接するように設けられている弾性滑り支承である。
このような構成によれば、鋼管柱から、免震装置としての積層ゴム支承又は弾性滑り支承に、スムーズに応力を伝達させることができる。その結果、施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【0009】
本発明の免震装置と鋼管柱との接合構造は、免震装置と鋼管柱との接合構造であって、上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、前記柱ベースプレートは、鋳鋼により製造されて、当該柱ベースプレートから上方に立ち上がるようにリブプレートが一体に形成され、前記リブプレートは前記鋼管柱に接合され、前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、柱ベースプレートにリブプレートが一体に形成されているので、柱ベースプレート自体の面外剛性が高められる。これにより、鋼管柱と免震装置と強固に接合することができ、免震装置と鋼管柱との接合部分において、局所的に過大な変形が発生するのを抑え、応力を効率的に伝達させることができる。
ここで、リブプレートは、鋳鋼によって柱ベースプレートと一体に形成されている。また、柱ベースプレートと上部フランジプレートはボルト接合されている。このため、柱ベースプレートに溶接により接合されるのは、鋼管柱のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレートに対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレートにフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置上に鋼管柱の柱脚部を接合して鋼管柱を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図である。
図2】本発明の第一実施形態の変形例に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図である。
図4】本発明の第二実施形態における、鋳鋼によって一体に形成された柱ベースプレートとリブプレートとを示す斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、鋼管柱の外形寸法と、免震ゴム部の直径との差を示す図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例における解析モデルを示す図である。
図7】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、地震時軸力が作用したときの変位を示す図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、解析モデルへの荷重の入力範囲を示す図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、地震時に曲げモーメントによる荷重が作用したときの変位を示す図である。
図10】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、解析モデルへの荷重の入力範囲を示す図である。
図11】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、免震ゴム部の直径を900mmとした場合の解析モデルに生じたX方向の曲げモーメントの分布を示す図である。
図12】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、免震ゴム部の直径を900mmとした場合の解析モデルに生じたY方向の曲げモーメントの分布を示す図である。
図13】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、免震ゴム部の直径を1000mmとした場合の解析モデルに生じたX方向の曲げモーメントの分布を示す図である。
図14】本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造の検討例において、免震ゴム部の直径を1000mmとした場合の解析モデルに生じたY方向の曲げモーメントの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による免震装置と鋼管柱との接合構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図を図1に示す。
図1に示されるように、免震建物1Aは、下部構造体2と、上部構造体3と、免震装置4Aと、を備えている。下部構造体2は、地盤中に構築された基礎杭(図示無し)、基礎梁(図示無し)等を適宜備えている。
上部構造体3は、下部構造体2上に設けられている。上部構造体3は、下部構造体2により支持されている。上部構造体3は、複数本のコンクリート充填鋼管柱5(図1には1本のみを図示している)と、水平方向で隣り合うコンクリート充填鋼管柱5同士の間に架設された梁32(図1には、上部構造体3において最下部の梁32のみを図示している)と、を備えている。
【0013】
コンクリート充填鋼管柱5は、基礎杭(図示無し)の杭頂部に形成された免震基礎部21上に配置されている。コンクリート充填鋼管柱5は、柱の横断面が柱脚部側に向かって拡大していく拡幅部はなく、柱の横断面は一様であり、ほぼ同一形状で上下方向に延びている。コンクリート充填鋼管柱5は、鋼管柱51と、柱ベースプレート54と、を備えている。鋼管柱51は、鋼管部53と、コンクリート部52と、を備えている。
鋼管部53は、上下方向に延びる筒状をなしている。本実施形態において、鋼管部53は、例えば平断面視矩形の角管状をなしている。コンクリート部52は、鋼管部53内に充填されている。
柱ベースプレート54は、鋼管部53の下方に設置されている。柱ベースプレート54は、水平面に沿って配置された鋼板からなる。柱ベースプレート54は、当該柱ベースプレートの上面にリブプレートは立設されていなく、鋼管部53の下端に溶接されている。柱ベースプレート54は、後述する免震装置4Aの上部フランジプレート42上に重ねて配置されている。
【0014】
免震装置4Aは、下部構造体2と上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5の間に設けられている。免震装置4Aは、下部構造体2の免震基礎部21と、上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5との間に配置されている。
本実施形態における免震装置4Aは、積層ゴム支承40Aであり、下部フランジプレート41と、上部フランジプレート42と、積層ゴム部43と、を備えている。
下部フランジプレート41、及び上部フランジプレート42は、上下方向に間隔をあけて配置されている。下部フランジプレート41、及び上部フランジプレート42は、それぞれ水平面内に沿って配置された鋼板からなる。本実施形態において、下部フランジプレート41、及び上部フランジプレート42は、それぞれ平面視矩形状をなしている。下部フランジプレート41は、下部構造体2の免震基礎部21の上面に設けられた免震基礎ベースプレート44に重ねて配置されている。
【0015】
免震基礎ベースプレート44の下面には、下方に向かって突出する複数本のアンカースタッド44sが設けられている。複数本のアンカースタッド44sは、免震基礎部21中に埋設されている。下部フランジプレート41、及び免震基礎ベースプレート44は、複数本のアンカーボルト45によって、免震基礎部21に接合されている。複数本のアンカーボルト45は、上方から見て、積層ゴム部43の径方向外側で、周方向に等間隔をあけて配置されている。各アンカーボルト45は、下部フランジプレート41、免震基礎ベースプレート44を貫通し、免震基礎部21中に挿入され、埋設されて、免震基礎部21に定着されている。
積層ゴム部43は、下部フランジプレート41と上部フランジプレート42との間に配置されている。積層ゴム部43は、上部フランジプレート42の下に接合されている。積層ゴム部43は、下部フランジプレート41の上に接合されている。積層ゴム部43は、鋼板43aと、ゴム系材料等から形成される粘弾性体43bとを上下方向に複数層に積層することで形成されている。本実施形態において、積層ゴム部43は、上方から見て円形に形成されている。積層ゴム部43は、上方から見て矩形状に形成してもよい。
【0016】
コンクリート充填鋼管柱5の柱ベースプレート54と、免震装置4Aの上部フランジプレート42とは、複数本のボルト55を介してボルト接合されている。
本実施形態では、後述の検討例(番号RB90、RB100)に基づき、免震装置と鋼管柱との接合構造を構成する柱ベースプレート54の厚さT1と上部フランジプレート42の厚さT2の関係、及び積層ゴム部43の直径または対角寸法D2と、鋼管柱51の外形寸法D1の関係について、下記のように設定した。
検討例(RB100)では、上部フランジプレート42が厚さ32mmで、鋼管柱51の外形寸法D1よりも積層ゴム部43の直径または対角寸法D2が400mm大きい場合、柱ベースプレート54の厚さT1を上部フランジプレート42の厚さT2の約3.0倍の95mmにすると、柱ベースプレート54を補強することなく、柱ベースプレート54の内部応力を所定の管理値以下に収めることができた。よって、鋼管柱51の外形寸法D1よりも積層ゴム部43の直径または対角寸法D2を200mm大きくした場合には、柱ベースプレート54の内部応力も検討例の50%程度になると推定される。また、柱ベースプレート54の厚さT1は、鋼管柱51の外形寸法D1よりも積層ゴム部43の直径または対角寸法D2が200mm大きい場合の内部応力の推定値に対応するように、検討例による厚さ95mmの0.5倍の47.5mm確保出来れば、柱ベースプレート54の内部応力を所定の管理値以下にできると推定される。
よって、本実施形態では、柱ベースプレート54の厚さT1の下限値として、積層ゴム部43の直径または対角寸法D2が鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きい場合、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さで、かつ厚さ40mm以上の鋼材で形成する必要があると設定した。
【0017】
具体的には、本実施形態では、柱ベースプレート54の厚さT1は、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上に設定されている。柱ベースプレート54の厚さT1は、40mm以上に設定されている。例えば、上部フランジプレート42の厚さT2が32mmである場合、柱ベースプレート54の厚さT1は、例えば48mm以上に設定される。
柱ベースプレート54の厚さT1は、上部フランジプレート42の厚さT2の2倍以上に設定するのが、より好ましい。すなわち、上記のように、上部フランジプレート42の厚さT2が32mmである場合、柱ベースプレート54の厚さT1は、例えば64mm以上に設定されるのがより望ましい。柱ベースプレート54の厚さT1は、上部フランジプレート42の厚さT2の3倍以上に設定するのが、更に好ましい。
柱ベースプレート54の厚さT1は、過度に大きいと、重量増、コスト増等に繋がるため、例えば100mm以下に設定するのが好ましい。
また、積層ゴム部43の直径D2は、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく形成されている。ここで、積層ゴム部43が上方から見て矩形状である場合には、積層ゴム部43の対角寸法を、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく形成する。
特に、上記のように、積層ゴム部43の直径D2と、鋼管柱51の外形寸法D1との差分値は、柱ベースプレート54の厚さT1に密接に関連している。このため、例えば積層ゴム部43の直径D2を、鋼管柱51の外形寸法D1より400mm以上大きくした場合においては、柱ベースプレート54の厚さT1を上部フランジプレート42の厚さT2の3.0倍以上とするのがより好ましい。
このような構成によれば、柱ベースプレート54が、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さT1=40mm以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート54自体の面外剛性が高められる。しかも、免震装置4Aの積層ゴム部43の直径D2または対角寸法が鋼管柱51の外形寸法D1よりも200mm以上大きいため、鋼管柱51の柱脚部51bよりも外側に突出する柱ベースプレート54の少なくとも一部の下側に、免震装置4Aの積層ゴム部43が位置することになる。これにより、柱ベースプレート54に水平方向の力が作用しても、鋼管柱51に作用する荷重を免震装置4Aの積層ゴム部43で安定して受けることができる。
上記のように、本発明によれば、柱ベースプレート付きの鋼管柱と免震装置の接合構造では、柱ベースプレート(鋳鉄を除く)と鋼管柱の外周面には補強材等を設けないことで、柱ベースプレートや鋼管柱に対する溶接量を減らすことができ、柱ベースプレートや鋼管柱への入熱量を減らすことができる。よって、鋼管柱に柱ベースプレートを溶接する必要はあるが、柱ベースプレートに生じることがある、溶接等の矯正を最小限にすることができる。その結果、本発明の鋼管柱と免震装置の接合構造では、高品真で、工期短縮が可能となる。
【0018】
上述したような免震装置4Aと鋼管柱51との接合構造によれば、上部フランジプレート42、及び上部フランジプレート42の下に接合される積層ゴム部43を有する免震装置4Aと、免震装置4Aの上方に設けられ、下端に柱ベースプレート54が溶接された鋼管柱51と、を備え、柱ベースプレート54は、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さT1=40mm以上の鋼材で形成され、積層ゴム部43の直径D2または対角寸法は、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく、柱ベースプレート54と上部フランジプレート42がボルト接合されている。
このような構成によれば、柱ベースプレート54が、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さT1=40mm以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート54自体の面外剛性が高められる。なおかつ、免震装置4Aの積層ゴム部43の直径D2または対角寸法D2が鋼管柱51の外径寸法D1よりも200mm以上大きいため、免震装置4Aに作用する応力は、柱ベースプレート54によって広い範囲で、略均等に平均化される。このため、柱ベースプレート54に水平方向の力が作用しても、鋼管柱51に作用する荷重を免震装置4Aの積層ゴム部43で安定して受けることができる。このように、上記のような構成を備えることで、応力を効率的に伝達可能で、強固な構造を実現することができる。
上記のような構成のみで応力を効率的に伝達可能であるため、柱ベースプレート54と鋼管柱51の柱脚部51bとの間に、補強のためのリブプレートを溶接する必要がない。また、柱ベースプレート54と上部フランジプレート42はボルト接合されている。このため、柱ベースプレート54に溶接により接合されるのは、鋼管柱51のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレート54に対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレート54に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレート54にフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレート54に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱51を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置4A上に鋼管柱51の柱脚部51bを接合して鋼管柱51を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置4Aと鋼管柱51との接合構造を提供することが可能となる。
【0019】
また、免震装置4Aが、積層ゴム部43の下に接合される下部フランジプレート41を備え、下部フランジプレート41が下方に位置する免震基礎部21に接合されている積層ゴム支承40Aである。
このような構成によれば、鋼管柱51から、免震装置4Aとしての積層ゴム支承40Aに、スムーズに応力を伝達させることができる。その結果、施工が容易な免震装置4Aと鋼管柱51との接合構造を提供することが可能となる。
【0020】
(第一実施形態の変形例)
なお、本発明の免震装置と鋼管柱との接合構造は、図面を参照して説明した上述の第一実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第一実施形態では、免震装置4Aとして、積層ゴム支承40Aを備えるようにしたが、これに代えて、弾性滑り支承40Bを採用することもできる。
本発明の第一実施形態の変形例に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図を図2に示す。
図2に示されるように、免震建物1Bは、下部構造体2と、上部構造体3と、免震装置4Bと、を備えている。
免震装置4Bは、下部構造体2と上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5の間に設けられている。免震装置4Bは、下部構造体2の免震基礎部21Bと、上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5との間に配置されている。
本実施形態における免震装置4Bは、弾性滑り支承40Bであり、上部フランジプレート42と、積層ゴム部43と、滑り材47と、を備えている。
滑り材47、及び上部フランジプレート42は、上下方向に間隔をあけて配置されている。滑り材47は、水平面内に沿って配置されている。本実施形態において、滑り材47は、平面視矩形状をなしている。滑り材47は、積層ゴム部43の下に接合されている。滑り材47は、下部構造体2の免震基礎部21の上面に接合された滑り板49に重ねて配置されている。滑り材47は、滑り板49に当接するように設けられている。滑り材47は、滑り板49上で、水平方向に滑り変位可能とされている。
【0021】
本変形例では、上記実施形態と同様、柱ベースプレート54の厚さT1は、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上に設定されている。柱ベースプレート54の厚さT1は、40mm以上に設定されている。
また、積層ゴム部43の直径D2は、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく形成されている。ここで、積層ゴム部43が上方から見て矩形状である場合には、積層ゴム部43の対角寸法を、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく形成する。
【0022】
上述したような免震装置4Bと鋼管柱51との接合構造によれば、上部フランジプレート42、及び上部フランジプレート42の下に接合される積層ゴム部43を有する免震装置4Bと、免震装置4Bの上方に設けられ、下端に柱ベースプレート54が溶接された鋼管柱51と、を備え、柱ベースプレート54は、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さT1=40mm以上の鋼材で形成され、積層ゴム部43の直径D2または対角寸法は、鋼管柱51の外形寸法D1より200mm以上大きく、柱ベースプレート54と上部フランジプレート42がボルト接合されている。
このような構成によれば、柱ベースプレート54が、上部フランジプレート42の厚さT2の1.5倍以上の厚さT1で、かつ厚さT1=40mm以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート54自体の面外剛性が高められる。なおかつ、免震装置4Bの積層ゴム部43の直径D2または対角寸法D2が鋼管柱51の外形寸法D1よりも200mm以上大きいため、免震装置4Bに作用する応力は、柱ベースプレート54によって広い範囲で、略均等に平均化される。このため、柱ベースプレート54に水平方向の力が作用しても、鋼管柱51に作用する荷重を免震装置4Bの積層ゴム部43で安定して受けることができる。このように、上記のような構成を備えることで、応力を効率的に伝達可能で、強固な構造を実現することができる。
上記のような構成のみで応力を効率的に伝達可能であるため、柱ベースプレート54と鋼管柱51の柱脚部51bとの間に、補強のためのリブプレートを溶接する必要がない。また、柱ベースプレート54と上部フランジプレート42はボルト接合されている。このため、柱ベースプレート54に溶接により接合されるのは、鋼管柱51のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレート54に対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレート54に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレート54にフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレート54に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱51を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置4B上に鋼管柱51の柱脚部51bを接合して鋼管柱51を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置4Bと鋼管柱51との接合構造を提供することが可能となる。
【0023】
また、免震装置4Bが、積層ゴム部43の下に接合される滑り材47を備え、滑り材47が、下方に位置する免震基礎部21の上面に接合された滑り板49に当接するように設けられている弾性滑り支承40Bである。
このような構成によれば、鋼管柱51から、免震装置4Bとしての弾性滑り支承40Bに、スムーズに応力を伝達させることができる。その結果、施工が容易な免震装置4Bと鋼管柱51との接合構造を提供することが可能となる。
【0024】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る鋼管柱と免震装置との接合構造を示す立断面図を図3に示す。図4は、本発明の第二実施形態における、鋳鋼によって一体に形成された柱ベースプレートとリブプレートとを示す斜視図である。
図3に示されるように、免震建物1Cは、下部構造体2と、上部構造体3と、免震装置4Cと、を備えている。
上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5Cは、柱の横断面が柱脚部側に向かって拡大していく拡幅部はなく、柱の横断面が一様な鋼管柱51Cと、柱ベースプレート61と、を備えている。鋼管柱51Cは、鋼管部53と、コンクリート部52と、を備えている。
柱ベースプレート61は、鋼管部53の下方に設置されている。柱ベースプレート61は、水平面に沿って配置された鋼板からなる。柱ベースプレート61は、免震装置4Cの上部フランジプレート42上に重ねて配置されている。図3図4に示すように、柱ベースプレート61の上面には、リブプレート62が設けられている。リブプレート62は、柱ベースプレート61の上面から上方に立ち上がるように形成されている。リブプレート62は、鋼管柱51Cの柱脚部51bにおいて、鋼管部53の外側に配置されている。リブプレート62は、鋼管部53の周方向に間隔をあけて複数枚が設けられている。本実施形態において、複数のリブプレート62は、上方から見て矩形状を成した鋼管部53の四方の外側面53sに対向するよう配置されている。図4に示すように、このような柱ベースプレート61と、リブプレート62とは、鋳鋼により製造されている。すなわち、柱ベースプレート61と、リブプレート62とは、鋳造により、予め一体に形成された柱ベース部材60を形成している。
図3に示すように、柱ベース部材60は、柱ベースプレート61が鋼管部53の下端に溶接され、各リブプレート62が鋼管部53の各外側面53sに溶接により接合されている。
【0025】
免震装置4Cは、下部構造体2と上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5Cの間に設けられている。免震装置4Cは、下部構造体2の免震基礎部21と、上部構造体3のコンクリート充填鋼管柱5Cとの間に配置されている。本実施形態における免震装置4Cは、積層ゴム支承40Cであり、下部フランジプレート41と、上部フランジプレート42と、積層ゴム部43と、を備えている。
コンクリート充填鋼管柱5Cの柱ベースプレート61と、免震装置4Cの上部フランジプレート42とは、複数本のボルト55を介してボルト接合されている。
【0026】
上述したような免震装置4Cと鋼管柱51Cとの接合構造は、上部フランジプレート42、及び上部フランジプレート42の下に接合される積層ゴム部43を有する免震装置4Cと、免震装置4Cの上方に設けられ、下端に柱ベースプレート61が溶接された鋼管柱51Cと、を備え、柱ベースプレート61は、鋳鋼により製造されて、柱ベースプレート61から上方に立ち上がるようにリブプレート62が一体に形成され、リブプレート62は鋼管柱51Cに接合され、柱ベースプレート61と上部フランジプレート42がボルト接合されている。
このような構成によれば、柱ベースプレート61にリブプレート62が一体に形成されているので、柱ベースプレート61自体の面外剛性が高められる。これにより、鋼管柱51Cと免震装置4Cと強固に接合することができ、免震装置4Cと鋼管柱51Cとの接合部分において、局所的に過大な変形が発生するのを抑え、応力を効率的に伝達させることができる。
ここで、リブプレート62は、鋳鋼によって柱ベースプレート61と一体に形成されている。また、柱ベースプレート61と上部フランジプレート42はボルト接合されている。このため、柱ベースプレート61に溶接により接合されるのは、鋼管柱51Cのみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレート61に対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレート61に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレート61にフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレート61に熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱51Cを建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置4C上に鋼管柱51Cの柱脚部51bを接合して鋼管柱51Cを建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置4Cと鋼管柱51Cとの接合構造を提供することが可能となる。
【0027】
(第二実施形態の変形例)
なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様、免震装置4Cとして、積層ゴム支承40Cに代えて、弾性滑り支承を採用することもできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0028】
(検討例)
上記第一実施形態で示したような構成について、検討を行ったので、その結果を以下に示す。
本検討において使用した、天然ゴム系積層ゴム支承(番号RB90)の諸元を、次に表1として示す。
【表1】
柱ベースプレート54としては、直径が1250mmで、厚さが95mmのものを使用することを前提に、設計用板厚T1を90mmとした。また、本検討では、上部フランジプレート42の厚さは32mmである。
柱ベースプレートの、長期の許容応力度と、短期の許容応力度は、それぞれ次のようになる。
fb=F/1.3=250N/mm(長期)
fb=1.5×F/1.3=375N/mm(短期)
また、本検討例においては、鋼管部53内にコンクリートを充填しない構成とした。
このような状況下において、免震装置の基準面圧に対して、柱ベースプレート54の応力が長期許容応力度以下となることを確認する。
【0029】
柱ベースプレート54は、4辺固定板として検討する。鋼管部53において、水平面内で互いに直交する2辺の長さLx、Lyは、それぞれ600mmとした。積層ゴム部43の直径は、上記のように900mmであり、鋼管柱51の外形寸法よりも200mm以上大きくなっている。具体的には、これらの差は、900-600=300(=150×2、図5参照)mmとなっている。コンクリートが充填されていない鋼管部53に作用する荷重は、免震装置の基準面圧(W=10N/mm)とした。
すると、鋼管部53に作用するX方向の荷重Wxは、
Wx=(Lx/Lx+Ly)×W=0.5×W=5N/mm
となる。
X方向の曲げモーメントMxは、
Mx=1/12×Wx×Lx=1/12×5×600=150000Nmm
となり、断面係数Zは、
Z=1/6×B×Te=1/6×1.0×90=1350mm
となる。ここで、Bは、柱ベースプレート54の単位幅1.0mmであり、Teは、柱ベースプレート54の厚さである。
曲げ応力度σbは、
σb=Mx/Z=150000/1350=111N/mm
であり、柱ベースプレートの許容応力度fbは、長期の場合においては上記のように250N/mmとなるので、
σb/fb=111/250=0.44
となる。したがって、σb/fbが1.0未満であることが確認された。
【0030】
続いて、柱ベースプレート54を片持ち梁として検討した。
積層ゴム部43の直径と、鋼管柱51の外形寸法との差は、上記のように300mmであるため、図5に示すように、鋼管柱51の外形寸法よりも積層ゴム部の半径が150mm大きい。したがって、曲げモーメントMは、
M=1/2×10.0×150=112500Nmm
となる。Z=1350mmであるので、曲げ応力度σbは、
σb=Mx/Z=112500/1350=83.3N/mm
となる。柱ベースプレートの許容応力度fbは、長期の場合においては上記のように250N/mmとなるので、
σb/fb=83.3/250=0.33
となる。したがって、σb/fbが1.0未満であることが確認された。
【0031】
次いで、免震装置4Aの変形がレベル2地震荷重相当時の440mmのときの軸力と曲げモーメントによる応力に対し、短期許容応力度以内であることを確認する。
図6に示すように、解析モデルは、柱ベースプレート54を板要素でモデル化し、上部の柱位置をピン支持とした。
図7に示すように、コンクリートが充填されていない鋼管柱51から免震装置4Aに作用する、地震時軸力による荷重Nを、N=10801.1kNとし、水平動315°方向+上下動したとすると、下部フランジプレート41と上部フランジプレート42の重なり面積は、256548mmとなり、応力度σは、
σ=42.1N/mm
となる。
解析モデルへの荷重の入力は、図8に示すような荷重範囲Aとした。
【0032】
柱ベースプレート54に生じる曲げモーメントによる引張側のボルト張力T、圧縮側の支承面圧Rによる応力を検討した。
図9に示すような各位置T(i=1~4)におけるボルト張力Tは、構造計算処理より以下の通りである。
=53kN
=1/2×688/760×T1=24kN
=1/2×490/760×T1=17kN
=1/2×220/760×T1=8kN
支承面圧の合力Rは、以下のようになる。
R=T×2T×2T×2T=151kN
【0033】
解析モデルへの荷重の入力は、図10に示すような範囲Bとした。
支承面圧の合力Rは、次式のように表される。
【数1】
ここで、A(i=1~5)は、図10に示される紙面横方向の位置の各々での面積であり、σ(i=1~5)は、A(i=1~5)の各々の位置に対応する応力度である。本検討においては、
=40000mm
=35000mm
=30000mm
=25000mm
=15000mm
σ=0.25N/mm
σ=0.75N/mm
σ=1.25N/mm
σ=1.75N/mm
σ=2.25N/mm
とした。
【0034】
このように、積層ゴム支承40Aの直径を900mmとした場合、柱ベースプレート54における地震時軸力と地震時曲げモーメントとの組み合わせによるX方向及びY方向の応力図は、図11図12に示すようになることが確認された。
地震時軸力と地震時曲げモーメントとの組み合わせ応力は、図11に示すように鋼管柱の鋼管縁部分で最大値M=481.53kNmを示したが、縁部以外では局所的な応力分布はなく、ほぼ一様に面外曲げモーメントが発生していることが確認された。
よって、FEM解析で得られた柱ベースプレートの面外曲げモーメント分布に基づくと、以下のように、解析値と鋼材の許容曲げ強度を比較すると、本検討例では柱ベースプレートをリブプレート等で補強しなくても、所定の設計管理下の応力状態であった。
単位幅(m)当り 最大値M=481.53kNm(図11を参照)
Z=1/6×1000×90=1350000mm
σb=481.53×90/1350000=356.7N/mm
σb/fb=356.7/375=0.95<1.0
となる。したがって、σb/fbが1.0未満であり、所定の設計管理下の応力状態であり、柱ベースプレートに補強は不要である。
上記のように、天然ゴム系積層ゴム支承(番号RB90)を用いた検討では、上部フランジプレート42の厚さ32mmに対して、柱ベースプレート54の厚さ90mmは約2.8倍大きく、積層ゴム部43の対角寸法(900mm)は鋼管柱51の外形寸法(600mm)より300mm以上大きくすると、地震時軸力と地震時曲げモーメントを組み合わせた柱ベースプレートの面外曲げ応力は許容応力度以下となった。
【0035】
また、積層ゴム支承40Aの直径を1000mmとした場合についても、上記と同様の検討を行った。本検討において使用した、天然ゴム系積層ゴム支承(番号RB100)の諸元を、次に表2として示す。
【表2】
柱ベースプレート54としては、直径が1350mmで、設計用板厚T1を95mmとした。また、本検討では、上部フランジプレート42の厚さは32mmである。
鋼管部53において、水平面内で互いに直交する2辺の長さLx、Lyは、それぞれ600mmとした。積層ゴム部43の直径は、上記のように1000mmであり、鋼管柱51の外形寸法よりも400mm大きくした。
【0036】
結果、柱ベースプレート54における地震時軸力と地震時曲げモーメントとの組み合わせによるX方向及びY方向の応力図は、図13図14に示すようになることが確認された。
地震時軸力と地震時曲げモーメントとの組み合わせ応力は、図13に示すようにコンクリートが充填されていない鋼管柱の鋼管縁部分で最大値M=533.6kNmを示したが、縁部以外では局所的な応力分布はなく、ほぼ一様に面外曲げモーメントが発生していることが確認された。
上記のように、天然ゴム系積層ゴム支承(番号RB100)を用いた検討では、上部フランジプレート42の厚さ32mmに対して、柱ベースプレート54の厚さ95mmは約3.0倍大きく、積層ゴム部43の対角寸法(1000mm)を鋼管柱51の外形寸法(600mm)より400mm以上大きくすると、天然ゴム系積層ゴム支承(番号RB90)によるFEM解析値と鋼材の許容曲げ強度の比較検証結果と同様に、地震時軸力と地震時曲げモーメントを組み合わせた柱ベースプレートの面外曲げ応力は許容応力度以下となった。よって、本検討の場合でも、柱ベースプレートの内部応力を所定の設計管理下とすることが可能であり、柱ベースプレートに補強は不要であることが確認された。
【0037】
(その他の変形例)
上記の実施形態では、鋼管柱は角管状のコンクリート充填鋼管柱であったが、鋼管柱は円形状でも良く、さらに、鋼管柱はコンクリートが充填されていない鋼管柱であても良い。また、鋼管柱は横断面が一様であったが、柱の横断面が柱脚部側に向かって拡大していく拡幅部を有する鋼管柱でも良い。
すなわち、他の変形例として免震装置と鋼管柱との接合構造として、図5に示す第1実施形態の検討例のように、コンクリートが充填されていない構成が、考えられる。
具体的には、上部フランジプレート、及び前記上部フランジプレートの下に接合される積層ゴム部を有する前記免震装置と、前記免震装置の上方に設けられ、下端に柱ベースプレートが溶接された前記鋼管柱と、を備え、前記鋼管柱は横断面が一様な、内部にコンクリートは充填されていない角管状、または円形状の鋼管であり、前記柱ベースプレートは、上面にリブプレートは立設されていなく、前記上部フランジプレートの厚さ以上の鋼材で形成され、前記柱ベースプレートと前記上部フランジプレートがボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、柱ベースプレートが、上部フランジプレートの厚さ以上の鋼材で形成されているので、柱ベースプレート自体の面外剛性が高められる。このため、応力を効率的に伝達可能で、強固な構造を実現することができる。
また、柱ベースプレートにはリブプレートが設けられていないため、リブプレートを溶接する必要がない。また、柱ベースプレートと上部フランジプレートはボルト接合されている。このため、柱ベースプレートに溶接により接合されるのは、鋼管柱のみとするような構成を実現することができる。このように、柱ベースプレートに対する溶接の量を低減することができるので、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減する。したがって、柱ベースプレートにフェーシング加工を行う必要が低減する。
更に、柱ベースプレートに熱歪みによる変形が生じる可能性が低減するので、鋼管柱を建方する際の精度調整も容易となる。したがって、免震装置上に鋼管柱の柱脚部を接合して鋼管柱を建方する際の施工を効率良く行うことができる。
その結果、応力を効率的に伝達可能で、かつ施工が容易な免震装置と鋼管柱との接合構造を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
4A、4B、4C 免震装置 51、51C 鋼管柱
21、21B 免震基礎部 54 柱ベースプレート
40A、40C 積層ゴム支承 55 ボルト
40C 積層ゴム支承 61 柱ベースプレート
40B 弾性滑り支承 62 リブプレート
41 下部フランジプレート D1 鋼管柱の外形寸法
42 上部フランジプレート D2 積層ゴム部の直径または対角寸法
43 積層ゴム部 T1 柱ベースプレートの厚さ
47 滑り材 T2 上部フランジプレートの厚さ
49 滑り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14