(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116420
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】消臭性積層不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/498 20120101AFI20220803BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20220803BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220803BHJP
D04H 5/03 20120101ALI20220803BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20220803BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
D04H1/498
D04H1/425
D04H3/16
D04H5/03
D01F8/06
D01F8/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012575
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 直人
【テーマコード(参考)】
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
4L041BA21
4L041BC10
4L041BC20
4L041CA06
4L041CA36
4L041CB03
4L041CB04
4L041DD01
4L047AA08
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB07
4L047BA04
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB10
4L047CC03
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】水洗耐性に優れた消臭性積層不織布を得る。
【解決手段】芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成された芯鞘複合連続繊維を構成繊維とする連続繊維層と、コットンを含む短繊維を構成繊維とする短繊維層とが積層された消臭性積層不織布である。連続繊維層と短繊維層とは、構成繊維同士が三次元的に交絡して積層一体化されている。連続繊維層の構成繊維である芯鞘複合連続繊維の鞘部が抗菌剤を0.5質量%以上2質量%以下含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成された芯鞘複合連続繊維を構成繊維とする連続繊維層と、コットンを含む短繊維を構成繊維とする短繊維層とが積層された積層不織布であって、
連続繊維層と短繊維層とは、構成繊維同士が三次元的に交絡して積層一体化されており、
連続繊維層の構成繊維である芯鞘複合連続繊維の鞘部が抗菌剤を0.5質量%以上2質量%以下含有することを特徴とする消臭性積層不織布。
【請求項2】
抗菌剤が銀系無機抗菌剤であることを特徴とする請求項1記載の消臭性積層不織布。
【請求項3】
芯鞘複合連続繊維の単繊維繊度が、5デシテックス以上10デシテックス以下であることを特徴とする請求項1または2記載の消臭性積層不織布。
【請求項4】
芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成され、鞘部に抗菌剤を0.5質量%以上2質量%以下含有した芯鞘複合連続繊維を構成繊維とする連続繊維層を準備し、
コットンを含む短繊維を構成繊維とする短繊維層を準備し、
前記連続繊維層と短繊維層とを積層して積層体を形成し、
この積層体を構成する繊維同士を三次元的に交絡させて、前記連続繊維層と短繊維層とを一体化させることを特徴とする消臭性積層不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性能を有した消臭性積層不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭性能を発揮させるなどの目的のために抗菌機能を有するようにした不織布が知られている(特許文献1、特許文献2)。このような抗菌機能を有する不織布としては、不織布に抗菌剤を含浸したもの、すなわちこれらの抗菌剤を不織布に浸透させてその構成繊維の表面に付着させたものが、広く一般的である。
【0003】
特許文献1では、積層不織布に抗菌成分とともに撥水性被膜形成成分を含浸することで、拭き取り後の拭き取り対象(タイル裏面)の水洗耐性を向上させている。しかし、特許文献1では積層不織布自体の水洗耐性には言及されておらず、その性能は不明である。また特許文献2では、積層不織布に界面活性剤およびキトサンを含浸することで、湿潤状態の積層不織布の防カビ性を向上させている。しかし、この特許文献2においても、積層不織布自体の水洗耐性には言及されておらず、その性能は不明である。
【0004】
すなわち、抗菌機能を有する公知の積層不織布は、基本的には複数回の使用を前提としていない。しかし、サステナビリティの観点から、抗菌機能を有しかつ使い捨て前提ではないようにした簡易ワイパーの需要が、年々高まっている。すなわち、一度使用した後も、ワイパーを水洗することで再度使用可能になることが望ましいとされるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4962806号公報
【特許文献2】特開2004-8317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、水洗耐性に優れるようにすることで再度の使用を可能とした消臭性積層不織布を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明の消臭性積層不織布は、
芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成された芯鞘複合連続繊維を構成繊維とする連続繊維層と、コットンを含む短繊維を構成繊維とする短繊維層とが積層された積層不織布であって、
連続繊維層と短繊維層とは、構成繊維同士が三次元的に交絡して積層一体化されており、
連続繊維層の構成繊維である芯鞘複合連続繊維の鞘部が抗菌剤を0.5質量%以上2質量%以下含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の消臭性積層不織布によれば、抗菌剤が銀系無機抗菌剤であることが好適である。
【0009】
また本発明の消臭性積層不織布によれば、芯鞘複合連続繊維の単繊維繊度が、5デシテックス以上10デシテックス以下であることが好適である。
【0010】
本発明の消臭性積層不織布の製造方法は、
芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成され、鞘部に抗菌剤を0.5質量%以上2質量%以下含有した芯鞘複合連続繊維を構成繊維とする連続繊維層を準備し、
コットンを含む短繊維を構成繊維とする短繊維層を準備し、
前記連続繊維層と短繊維層とを積層して積層体を形成し、
この積層体を構成する繊維同士を三次元的に交絡させて、前記連続繊維層と短繊維層とを一体化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連続繊維層の芯鞘複合連続繊維の鞘部に抗菌剤が含有されているために、この抗菌剤にもとづく消臭機能を有し、かつ抗菌材剤は鞘部に含有されたものであるため、すなわちポリオレフィン系重合体への練り込みによって鞘部に含まれた構成であるため、積層不織布を水洗しても消臭剤が不織布外へ大きく流出することがなく、このために水洗耐性に優れた積層不織布を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の消臭性積層不織布は、連続繊維層と短繊維層とが積層されたものである。
【0013】
連続繊維層を構成する連続繊維は、芯鞘複合連続繊維であって、芯部がポリエステル系重合体により形成されるとともに、鞘部が前記ポリエステル系重合体よりも低融点のポリオレフィン系重合体により形成されている。鞘部を構成するポリオレフィン系重合体には、抗菌剤が、0.5質量%以上2質量%以下含まれている。
【0014】
芯部を構成するポリエステル系重合体としては、酸成分としてのテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン-2,6ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、アルコール成分としてのエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等のジオール化合物とで合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルが挙げられる。上記ポリエステルに、パラオキシ安息香酸、5-ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフエノールAなどが添加あるいは共重合されていてもよい。
【0015】
芯部よりも低融点の鞘部を構成するポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数が2~16の脂肪族α-モノオレフイン、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-オクタデセンのホモポリオレフィンまたは共重合ポリオレフィンなどが挙げられる。脂肪族α-モノオレフインは、他のオレフィンおよび、または少量(重合体の質量全体の約10質量%まで)の他のエチレン系不飽和モノマー、たとえばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン-1,3、スチレン、α-メチルスチレンのようなエチレン系不飽和モノマーと共重合されていてもよい。特にポリオレフィン系重合体がポリエチレンである場合は、重合体の質量全体の約10質量%までの、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1または類似の高級α-オレフィンと共重合させたものが好ましい。
【0016】
ポリエステル系重合体およびポリオレフィン系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの任意の添加剤が添加されていてもよい。
【0017】
芯部のポリエステル系重合体と鞘部のポリオレフィン系重合体との組合せとしては、上記の重合体のうちから、融点差が50℃以上であるもの同士を選択することが好ましい。すなわち、芯部を構成するポリエステル系重合体の融点よりも鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点が50℃以上低いものを選択することが好ましい。積層不織布の連続繊維層を構成する連続繊維同士は、熱エンボス構造の熱圧着部を有することにより一体化して不織布として形態を保持する。熱圧着部は、熱エンボス加工により形成されるものである。この熱圧着部においては、鞘部は溶融または軟化して接着に寄与するが、芯部は、熱の影響を受けて溶融するのではなく繊維形態を維持して、不織布の引裂強力などの強力の向上に寄与する。つまり、芯部と鞘部との融点に好ましくは50℃以上の差を設けることにより、熱圧着部において、鞘部を溶融または軟化させ、一方、芯部は繊維形態を維持させることができる。すなわち、熱エンボス加工の際に、芯部に熱の影響を受けさせずに、かつ鞘部を確実に溶融させて、熱圧着部での熱接着固定をすることができる。
【0018】
連続繊維における芯鞘複合比率(質量比)は、芯部/鞘部=80/20~50/50が好ましい。芯部の比率を鞘部と同等以上にすることにより、連続繊維は、機械的物性に優れ、実用的な強度が維持できる。なお、芯部の比率が80質量%を超えると、接着成分となる鞘部の比率が低くなるため、熱圧着部での接着強力が低下する傾向となりやすい。
【0019】
連続繊維の単繊維繊度は、5デシテックス以上10デシテックス以下であることが好ましい。単繊維繊度がこの範囲内であることにより、短繊維層の構成繊維と良好に三次元的に交絡することができる。すなわち、連続繊維の単繊維繊度が5デシテックスを下回ると、短繊維層の構成繊維との交絡が不十分になりやすく積層不織布の剥離強度が低下しやすくなる。逆に、連続繊維の単繊維繊度が10デシテックスを上回ると、交絡処理の際の機械的衝撃、たとえば水流交絡処理の際の高圧水流ジェットにより、短繊維層の構成繊維が連続繊維層から抜け落ちるという問題が発生しやすくなる。
【0020】
連続繊維により構成される連続繊維層の目付は、10g/m2以上であることが好ましい。目付が10g/m2以上であることにより、ワイパーとしての実用的な強度を確保することができる。目付の上限は、連続繊維層の構成繊維と短繊維層の構成繊維とが良好に交絡一体化すること、交絡一体化の手段である高圧水流が繊維層を貫通して良好に作用することを考慮すると、30g/m2であることが好ましい。
【0021】
鞘部は、消臭機能を発揮するための抗菌剤を含有する。抗菌剤の種類は、特に限定せず、得られる積層不織布の用途に応じて適宜選択すればよい。なお、芯鞘複合連続繊維を溶融紡糸するときの温度に耐える抗菌剤であることが必要である。このような抗菌剤の具体例としては、たとえば、リン酸カルシウム銀担持体、リン酸ジルコニウム銀担持体、酸化チタン銀担持体、シリカ銀担持体、ケイ酸系ガラス銀担持体、ゼオライト銀担持体、ゼオライト銅担持体、酸化亜鉛、有機カルボン酸系化合物、トリアゾール系化合物などを挙げることができる。なかでも、経時による変色が生じにくいことから銀系無機抗菌剤を好ましく用いることができる。抗菌剤の含有量は、ポリエステル系重合体に対して0.5質量%以上2質量%以下であることが必要である。含有量が0.5質量%を下回ると、積層不織布に所要の消臭性能を発現させることができない。逆に、含有量が2質量%を上回ると、紡糸工程の安定的な操業に支障が出る。すなわち、溶融ポリマーが繊維化する過程で抗菌剤が異物として振る舞い、配向結晶化の阻害ひいては糸切れなどの欠点を発生させることになる。なお、より好ましい抗菌剤の含有量は、1質量%以上2質量%以下である。
【0022】
連続繊維層に抗菌剤を添加するための公知の方法として、前述の含浸処理や、連続繊維層の表面に抗菌剤を塗布するというものがある。しかし、この方法では後に行う交絡処理の際の機械的衝撃、たとえば水流交絡処理の際の高圧水流ジェットにより、連続繊維層表面の抗菌剤が同表面から脱落するという問題が発生する。これに対し、本発明においては、抗菌剤をポリエステル系重合体に練り込んでともに溶融紡糸するという方法を取ることがきわめて望ましい。この方法によれば、上記の問題を回避することができる。
【0023】
短繊維層は、コットンを含む短繊維を構成繊維とする。コットンを含むことで、各種用途に好適に適用することができる。たとえば積層不織布をワイパーとして用いる場合には、短繊維層がコットンを含むことで、その性能を十分に発揮することができる。同様に、コットン以外の他のセルロース系繊維、たとえばレーヨンを、含有することも好ましい。コットンや他のセルロース系繊維以外の短繊維としては、天然繊維や、化学繊維などを挙げることができる。積層不織布を上述のワイパーとして用いる場合には、その性能を十分に発揮するために、短繊維層はコットン100%の層や、コットンと他のセルロース系繊維とが混合した層であることが特に好適である。しかし、問題が生じない範囲で、上記した、コットンや他のセルロース系繊維以外の短繊維を適当量混合していても差し支えない。短繊維がコットン以外の繊維である場合には、コットン以外の繊維が有する機能を発揮させることができる。コットン以外の繊維の単繊維繊度は、交絡性を考慮して、1~6デシテックスであることが好ましい。なお、コットンの単繊維繊度は、一般に約1~4デシテックスである。
【0024】
短繊維層の目付は、特に限定せず、得られる消臭性積層不織布の用途に応じて適宜選択すればよいが、交絡性を考慮すると、たとえば10~100g/m2程度がよい。
【0025】
連続繊維層と短繊維層とは、積層された両層の構成繊維同士が三次元的に交絡することで、一体化されている。この三次元的な交絡は、短繊維層の構成繊維が連続繊維層に入り込む状態で達成されるものである。
【0026】
三次元的な交絡のための処理方法としては、水流交絡処理やニードルパンチ処理などを挙げることができる。このうち、得られる積層不織布の柔軟性が良好であり、表面が滑らかであり、取り扱い性が良好であること等の理由によって、水流交絡処理が好ましい。
【0027】
本発明の消臭性積層不織布は、抗菌剤が連続繊維層の繊維表面に付着しているのではなく、繊維を構成する重合体に含まれているため、付着の場合のような構成繊維からの抜け落ちの発生がなく、このため所要の水洗耐性を有する。ここにいう水洗耐性とは、水洗を行っても抗菌剤による消臭性能が大きく低下しないことをいう。水洗耐性を有することにより、水洗いを施したうえで、繰り返して使用することができる。
【実施例0028】
以下の実施例、比較例における各特性値は、以下のようにして求めた。
(1)目付[g/m2]
不織ウエブや積層不織布の試験片(縦10cm×横10cm)を用意した。試験片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して、不織ウエブや積層不織布の目付(g/m2)とした。
【0029】
(2)消臭性
積層不織布の試験片(縦10cm×横10cm)を用意した。試験片の連続繊維層側に1mLのアンモニア水(NH3:9.5~10.5w/v%)を含浸させ、シャーレで蓋をした。所定時間経過後のアンモニア臭の残留具合を嗅覚調査して、下記の基準で消臭性の評価を行った。
3:鼻を刺激するほどのアンモニア臭を感じる。
2:鼻を刺激するほどではないがアンモニア臭を感じる。
1:アンモニア臭をほとんど感じない。
0:アンモニア臭を全く感じない。
【0030】
(3)水洗耐性
1L用のビーカーに水1Lを用意した。(2)の消臭性の評価を35minにわたって1回行った試験片をビーカーの底に沈め、ガラス棒で50回かき回した後、試験片を取り出し自然乾燥させ、35minにわたる2回目の試験片として、(2)の評価を再度行った。2回目の評価値が1回目の評価値と同等に近いほど、消臭性能の低下が少なく水洗耐性が高いとした。
【0031】
実施例1
連続繊維層を構成する連続繊維不織ウエブとして、芯部が融点260℃のポリエチレンテレフタレートにて形成され、鞘部が融点130℃のポリエチレンであって、抗菌剤としてゼオライト銀担持体(シナネンゼオミック社製 商品名「ぜオミックAJ10D」)を2質量%含むものにて形成された、単繊維繊度が7.3デシテックスの芯鞘複合連続繊維を構成繊維とするものを用いた。この連続繊維不織ウエブは、部分的に熱圧着されて構成繊維同士が一体化されたものであった。その目付は15g/m2であった。
【0032】
一方、短繊維層を構成する短繊維として、単繊維繊度が1.7デシテックスのコットンの晒し綿を用いた。この晒し綿をパラレルカード機に通して目付15g/m2の短繊維不織ウエブを作製した。
【0033】
次いで、短繊維不織ウエブと連続繊維不織ウエブとを積層し、この2層構造の積層体を100メッシュの金網上に静置した。
【0034】
0.1mm径の噴射孔が0.6mm間隔で配置された水流交絡処理機を用いて、前記2層構造の積層体に水流を噴射して水流交絡処理を施し、それによって積層体を一体化させて不織布化した。水流の噴射条件は、短繊維不織ウエブ側から、4MPaの水圧で1回、8Mpaの水圧で1回とした。その後、得られた積層不織布の過剰な水分を除去するため、連続熱風乾燥機によって110℃で乾燥処理を施した。得られた消臭性積層不織布の目付は、33g/m2であった。
【0035】
この消臭性積層不織布についての、消臭性と水洗耐性との試験結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
実施例2
実施例1と比べて、連続繊維層の鞘部における抗菌剤の含有量を1質量%に変更した。そして、それ以外は実施例1と同様の条件で、積層不織布を得た。その目付は33g/m2であった。
【0038】
この実施例2の積層不織布についての、消臭性と水洗耐性との試験結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
実施例1と比べて、連続繊維層の鞘部は、抗菌剤を含まずにポリエチレンのみから形成されたものとした。そして、それ以外は実施例1と同様の条件で、積層不織布を得た。その目付は33g/m2であった。
【0040】
この比較例1の積層不織布についての、消臭性と水洗耐性との試験結果を表1に示す。
【0041】
比較例2
比較例1と同様に、連続繊維層の鞘部は、抗菌剤を含まずにポリエチレンのみから形成されたものとした。そして、積層処理前の連続繊維不織ウエブ単体に、ゼオライト銅担持体が水に分散してなる水分散体(シナネンゼオミック社製 商品名「WCA10NS」)を、抗菌剤であるゼオライト銅担持体の付着量が10質量%の量となるように塗布して、連続繊維不織ウエブを得た。そして、それ以降は実施例1と同様の条件で、積層不織布を得た。その目付は33g/m2であった。
【0042】
この比較例2の積層不織布についての、消臭性と水洗耐性との試験結果を表1に示す。
【0043】
表1に示すように、実施例1の消臭性積層不織布は、満足な消臭性、水洗耐性を有するものであった。実施例2の積層不織布は、水洗耐性は満足なものであったが、抗菌剤の含有量が少なかったため、実施例1に比べて消臭性にやや劣るものであった。
【0044】
これに対し、比較例1の積層不織布は、抗菌剤を含有しなかったため、消臭性を有しないものであった。比較例2の積層不織布は、抗菌剤を塗布したものであり、水流交絡処理の際の高圧水流ジェットにより連続繊維層表面の抗菌剤が連続繊維層表面から一部抜け落ちたため、消臭性は劣るものであった。また同様の理由で、水洗耐性も劣るものであった。