IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラドコフ・アレクセイの特許一覧 ▶ グラドコワ・ニナの特許一覧

<>
  • 特開-細胞培養容器 図1
  • 特開-細胞培養容器 図2
  • 特開-細胞培養容器 図3
  • 特開-細胞培養容器 図4
  • 特開-細胞培養容器 図5
  • 特開-細胞培養容器 図6
  • 特開-細胞培養容器 図7
  • 特開-細胞培養容器 図8
  • 特開-細胞培養容器 図9
  • 特開-細胞培養容器 図10
  • 特開-細胞培養容器 図11
  • 特開-細胞培養容器 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116432
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】細胞培養容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012592
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】519092200
【氏名又は名称】グラドコフ・アレクセイ
(71)【出願人】
【識別番号】519092211
【氏名又は名称】グラドコワ・ニナ
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】グラドコフ・アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】グラドコワ・ニナ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029GB06
(57)【要約】
【課題】細胞の定着及び増殖を容易に観察することができ、所定面積の培養面を有して多量の細胞を増殖させることができる細胞培養容器を提供する。
【解決手段】細胞培養容器10Aは、キャップ12によって開閉される注入口18を有する頂壁13と、頂壁13から長さ方向の反対側に位置する底壁14と、頂底壁13,14の間に延びる所定面積の周壁15とを備えている。周壁15は、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ平坦に延びていて細胞培養容器10Aの収容スペース16(内部)において培養される細胞の培養状態を観察可能な所定面積の第1~第4観察窓部22a~22dと、第1~第n観察窓部22a~22dの間に位置して周壁15の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶとともに、周壁15の周り方向へ円弧を画いて延びる所定面積の第1~第8湾曲部23a~23dとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に細胞培養液が注入されて培養中の細胞の培養状態を観察しつつ該細胞を培養する細胞培養容器において、
前記細胞培養容器が、キャップによって開閉される注入口を有する頂壁と、前記頂壁から長さ方向の反対側に位置する底壁と、前記頂底壁の間に延びる所定面積の周壁とを備え、
前記周壁が、前記頂壁と前記底壁との間に位置して長さ方向へ平坦に延びていて前記細胞培養容器の内部において培養される細胞の培養状態を観察可能な所定面積の観察窓部を有することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項2】
前記周壁が、該周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶ複数の第1~第n観察窓部と、前記第1~第n観察窓部の間に位置して前記周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶとともに、該周壁の周り方向へ円弧を画いて延びる所定面積の複数の第1~第n湾曲部とを有する請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記第1~第n観察窓部が、前記周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、それら観察窓部の間に位置する前記第1~第n湾曲部が、前記周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、前記周壁では、一方の観察窓部の外面から該一方の観察窓部に対向して該周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の内面を観察可能である請求項2に記載の細胞培養容器。
【請求項4】
前記第1~第n湾曲部の内周面には、径方向外方へ凹む複数の凹部と径方向内方へ凸となる複数の凸部とのうちの少なくとも一方が形成されている請求項2又は請求項3に記載の細胞培養容器。
【請求項5】
前記第1~第n湾曲部の内周面には、長さ方向又は周り方向の少なくとも一方へに延びる複数の凸条と複数の凹溝とのうちの少なくとも一方が形成されている請求項2又は請求項3に記載の細胞培養容器。
【請求項6】
前記キャップが、所定面積の頂端壁と、前記頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、前記キャップの頂端壁には、一端部を中心として前記キャップの径方向へ旋回可能な旋回プレートが設置され、前記細胞培養容器では、前記旋回プレートが径方向外方へ旋回して該旋回プレートの他端部が接地したときに、横臥するように載置された該細胞培養容器が径方向外方へ旋回した旋回プレートによって前記頂壁から前記底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される請求項1ないし請求項5いずれかに記載の細胞培養容器。
【請求項7】
前記旋回プレートが、一方の観察窓部の側から該一方の観察窓部に対向して前記周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の側に向かって径方向外方へ旋回する請求項6に記載の細胞培養容器。
【請求項8】
前記キャップが、所定面積の頂端壁と、前記頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、前記キャップの頂端壁には、該キャップの径方向へスライド可能なスライドプレートが設置され、前記細胞培養容器では、前記スライドプレートが径方向外方へスライドして該スライドプレートの先端部が接地したときに、横臥するように載置された該細胞培養容器が径方向外方へスライドしたスライドプレートによって前記頂壁から前記底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される請求項1ないし請求項5いずれかに記載の細胞培養容器。
【請求項9】
前記スライドプレートが、一方の観察窓部から該一方の観察窓部に対向して前記周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部に向かって径方向外方へスライドする請求項8に記載の細胞培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に細胞培養液が注入されて培養中の細胞の培養状態を観察しつつ該細胞を培養する細胞培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生体環境に近い人工的な環境下において生体から分離した細胞を培養し、培養した細胞を用いて各種疾患の治療が行われている。そのような細胞の一例としては、足場となる箇所に定着して増殖する繊維芽細胞や間葉系細胞、間葉系幹細胞等の定着性細胞がある。定着性細胞は、培養面を有する細胞培養容器を利用して増殖させる。細胞培養容器の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の細胞培養容器は、一端に開口部を有して内部に細胞を収容可能な容器本体と、開口部に取り付けられて開口部を開閉するキャップとを備えている。容器本体は、透明な合成樹脂又はガラスから作られ、所定面積の略矩形の底面(培養面)を有する。容器本体に生体から分離した細胞と培養液とを注入し、容器本体の底面に細胞を定着させて細胞を増殖させる。細胞を培養する過程では、容器本体の底面に細胞が定着したかを観察するとともに、定着した細胞が増殖かつ活性化したかを観察する。
【特許文献1】特開2015-171344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示の細胞培養容器は、その略矩形の頂面から略矩形の底面(培養面)を観察することができ、観察に適している反面、その培養面が底面のみに限られ、培養面の面積が小さく、細胞を多量に増殖させることができず、細胞を効率よく培養することができない。この細胞培養容器を利用して細胞を多量に増殖させるには、容器サイズを大きくする必要があるとともに、多数の容器を用いる必要があるが、容器サイズには限界があり、多数の容器を用いる場合、その培養過程における管理が困難になる。
【0004】
本発明の目的は、細胞の定着及び増殖を容易に観察することができ、所定面積の培養面を有して多量の細胞を増殖させることができるとともに、細胞を効率よく培養することができる細胞培養容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の前提は、内部に細胞培養液が注入されて培養中の細胞の培養状態を観察しつつ該細胞を培養する細胞培養容器である。
【0006】
前記前提における本発明の特徴としては、細胞培養容器が、キャップによって開閉される注入口を有する頂壁と、頂壁から長さ方向の反対側に位置する底壁と、頂底壁の間に延びる所定面積の周壁とを備え、周壁が、頂壁と底壁との間に位置して長さ方向へ平坦に延びていて細胞培養容器の内部において培養される細胞の培養状態を観察可能な所定面積の観察窓部を有することにある。
【0007】
本発明の一例としては、周壁が、周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶ複数の第1~第n観察窓部と、第1~第n観察窓部の間に位置して周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶとともに、周壁の周り方向へ円弧を画いて延びる所定面積の複数の第1~第n湾曲部とを有する。
【0008】
本発明の他の一例としては、第1~第n観察窓部が、周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、それら観察窓部の間に位置する第1~第n湾曲部が、周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、周壁では、一方の観察窓部の外面から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の内面を観察可能である。
【0009】
本発明の他の一例として、第1~第n湾曲部の内周面には、径方向外方へ凹む複数の凹部と径方向内方へ凸となる複数の凸部とのうちの少なくとも一方が形成されている。
【0010】
本発明の他の一例として、第1~第n湾曲部の内周面には、長さ方向又は周り方向の少なくとも一方へに延びる複数の凸条と複数の凹溝とのうちの少なくとも一方が形成されている。
【0011】
本発明の他の一例としては、キャップが、所定面積の頂端壁と、頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、キャップの頂端壁には、一端部を中心としてキャップの径方向へ旋回可能な旋回プレートが設置され、細胞培養容器では、旋回プレートが径方向外方へ旋回して旋回プレートの他端部が接地したときに、横臥するように載置された細胞培養容器が径方向外方へ旋回した旋回プレートによって頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される。
【0012】
本発明の他の一例としては、旋回プレートが、一方の観察窓部の側から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の側に向かって径方向外方へ旋回する。
【0013】
本発明の他の一例としては、キャップが、所定面積の頂端壁と、頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、キャップの頂端壁には、キャップの径方向へスライド可能なスライドプレートが設置され、細胞培養容器では、スライドプレートが径方向外方へスライドしてスライドプレートの先端部が接地したときに、横臥するように載置された細胞培養容器が径方向外方へスライドしたスライドプレートによって頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される。
【0014】
本発明の他の一例としては、スライドプレートが、一方の観察窓部から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部に向かって径方向外方へスライドする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る細胞培養容器によれば、頂壁と底壁との間に位置して長さ方向へ平坦に延びていて細胞培養容器の内部において培養される細胞の培養状態を観察可能な所定面積の観察窓部が周壁に形成されているから、培養中の細胞の培養状態を観察窓部から観察することができ、周壁への細胞の定着及び増殖を容易に観察することができる。細胞培養容器は、観察窓部を含む所定面積の周壁(培養面)に細胞を定着させるとともに周壁(培養面)において細胞を増殖させるから、所定面積の培養面(周壁)を有して多量の細胞を増殖させることができ、細胞を効率よく培養することができる。
【0016】
周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶ複数の第1~第n観察窓部と、第1~第n観察窓部の間に位置して周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並ぶとともに、周壁の周り方向へ円弧を画いて延びる所定面積の複数の第1~第n湾曲部とを有する細胞培養容器は、複数の第1~第n観察窓部を利用して培養中の細胞の培養状態をそれら観察窓部から観察することができ、第1~第n観察窓部及び第1~第n観察窓部(周壁)への細胞の定着及び増殖を容易に観察することができる。細胞培養容器は、第1~第n観察窓部及び第1~第n観察窓部からなる周壁(培養面)に細胞を定着させるとともに周壁(培養面)において細胞を増殖させるから、所定面積の培養面(周壁)を有して多量の細胞を増殖させることができ、細胞を効率よく培養することができる。
【0017】
第1~第n観察窓部が周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、それら観察窓部の間に位置する第1~第n湾曲部が周壁において径方向へ対向するように対を成して形成され、一方の観察窓部の外面から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の内面を観察可能である細胞培養容器は、一方の観察窓部の外面から他方の観察窓部の内面を観察することができるから、周壁(培養面)への細胞の定着及び増殖を容易に観察することができ、第1~第n観察窓部のうちの一方の観察窓部から他方の観察窓部を観察することで定着かつ増殖する培養中の細胞の培養状態を正確に観察かつ把握することができる。
【0018】
径方向外方へ凹む複数の凹部と径方向内方へ凸となる複数の凸部とのうちの少なくとも一方が第1~第n湾曲部の内周面に形成されている細胞培養容器は、複数の凹部と複数の凸部とのうちの少なくとも一方を第1~第n湾曲部の内周面に形成することで、第1~第n湾曲部の内周面の表面積を大きくすることができ、表面積を大きくした第1~第n湾曲部(培養面)において多量の細胞を増殖させることができるとともに、細胞を効率よく培養することができる。
【0019】
長さ方向又は周り方向の少なくとも一方へに延びる複数の凸条と複数の凹溝とのうちの少なくとも一方が第1~第n湾曲部の内周面に形成されている細胞培養容器は、長さ方向又は周り方向の少なくとも一方へに延びる複数の凸条と複数の凹溝とのうちの少なくとも一方を第1~第n湾曲部の内周面に形成することで、第1~第n湾曲部の内周面の表面積を大きくすることができ、表面積を大きくした第1~第n湾曲部(培養面)において多量の細胞を増殖させることができるとともに、細胞を効率よく培養することができる。
【0020】
キャップが所定面積の頂端壁と頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、一端部を中心としてキャップの径方向へ旋回可能な旋回プレートがキャップの頂端壁に設置され、旋回プレートが径方向外方へ旋回して旋回プレートの他端部が接地したときに、横臥するように載置された細胞培養容器が径方向外方へ旋回した旋回プレートによって頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される細胞培養容器は、横臥した細胞培養容器の頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態を旋回プレートによって保持することで、細胞及び細胞培養液が底壁の側に集中し、注入された細胞培養液が底壁の側に偏って細胞培養液の圧力が底壁の側で大きくなり、それによって細胞の活性を高めることができ、細胞を確実かつ効率的に増殖させることができる。
【0021】
旋回プレートが一方の観察窓部の側から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部の側に向かって径方向外方へ旋回する細胞培養容器は、横臥した細胞培養容器の頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態を旋回プレートによって保持しつつ、傾斜した細胞培養容器の一方の観察窓部の外面から他方の観察窓部の内面を観察することができ、第1~第n観察窓部のうちの一方の観察窓部から他方の観察窓部を観察することで定着かつ増殖する培養中の細胞の培養状態を正確に観察かつ把握することができるとともに、傾斜した細胞培養容器を利用することで細胞を確実かつ効率的に増殖させることができる。
【0022】
キャップが所定面積の頂端壁と頂端壁の外周縁から長さ方向へ延びていて内周面にネジが作られた周側壁とを有し、キャップの径方向へスライド可能なスライドプレートがキャップの頂端壁に設置され、スライドプレートが径方向外方へスライドしてスライドプレートの先端部が接地したときに、横臥するように載置された細胞培養容器が径方向外方へスライドしたスライドプレートによって頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される細胞培養容器は、横臥した細胞培養容器の頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態をスライドプレートによって保持することで、細胞及び細胞培養液が底壁の側に集中し、注入された細胞培養液が底壁の側に偏って細胞培養液の圧力が底壁の側で大きくなり、それによって細胞の活性を高めることができ、細胞を確実かつ効率的に増殖させることができる。
【0023】
スライドプレートが一方の観察窓部から一方の観察窓部に対向して周壁の径方向の対向側に位置する他方の観察窓部に向かって径方向外方へスライドする細胞培養容器は、横臥した細胞培養容器の頂壁から底壁に向かって下り勾配に傾斜した状態をスライドプレートによって保持しつつ、傾斜した細胞培養容器の一方の観察窓部の外面から他方の観察窓部の内面を観察することができ、第1~第n観察窓部のうちの一方の観察窓部から他方の観察窓部を観察することで定着かつ増殖する培養中の細胞の培養状態を正確に観察かつ把握することができるとともに、傾斜した細胞培養容器を利用することで細胞を確実かつ効率的に増殖させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一例として示す細胞培養容器の斜視図。
図2図1の細胞培養容器の正面図及び側面図。
図3】第1~第4湾曲部の内周面に形成された凹部及び凸部の一例を示す図。
図4】一例として示すキャップの拡大斜視図。
図5図4のキャップの拡大側面図。
図6】旋回プレートによって傾斜した状態で示す細胞培養容器の側面図。
図7】他の一例として示すキャップの拡大斜視図。
図8図7のキャップの拡大側面図。
図9】スライドプレートによって傾斜した状態で示す細胞培養容器の側面図。
図10】他の一例として示す細胞培養容器の斜視図。
図11図10の細胞培養容器の正面図及び側面図。
図12】第1~第8湾曲部の内周面に形成された凸条及び凹溝の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一例として示す細胞培養容器10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる細胞培養容器の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、図2は、図1の細胞培養容器10Aの正面図及び側面図であり、図3は、第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17に形成された凹部24及び凸部25の一例を示す図である。図1,2では、キャップ12に設置された旋回プレート29及びスライドプレート33の図示を省略している。図1では、長さ方向を矢印A、周り方向を矢印Bで示し、径方向を矢印Cで示す。
【0026】
細胞培養容器10A(細胞培養容器10Bを含む)は、その収容スペース16(内部)に細胞培養液が注入されるとともに生体から分離した細胞が収容され、培養中の細胞の培養状態を観察しつつ細胞を培養する。細胞培養容器10Aは、容器本体11及びキャップ12(蓋体)を備えている。容器本体11及びキャップ12は、無色透明な合成樹脂、無色透明なガラス、無色透明な石英のいずれかから作られている。合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等を使用することができる。
【0027】
容器本体11は、径方向へ延びる所定面積の頂壁13と、頂壁13から長さ方向の反対側に位置して径方向へ延びる所定面積の底壁14と、頂底壁13,14の間に位置して長さ方向へ延びる所定面積の周壁15とを備えている。容器本体11には、頂底壁13,14と周壁15とに囲繞された長さ方向へ長い筒状の所定容積の収容スペース16(内部)が形成されている。容器本体11の内周面17には、表面親水化処理が施されている。
【0028】
頂壁13は、容器本体11の収容スペース16に細胞培養液や細胞を注入するとともに収容スペース16から細胞培養液や細胞を排出する円形の注入口18(開口)と、注入口18を囲繞する首部19と、首部19が繋がる肩部20とを有する。頂壁13は、周壁15の後記する第1~第4観察窓部22a~22dの頂縁が繋がる第1~第4直状外周縁と、周壁15の後記する第1~第4湾曲部23a~23dの頂縁が繋がる第1~第4湾曲外周縁とを有する。首部19の外周面には、ネジ(雄ネジ又は雌ネジ)が作られているとともに、径方向外方へ延出するフランジ21が作られている。注入口18(開口)は、キャップ12(蓋体)によって開閉される。底壁14は、周壁15の第1~第4観察窓部22a~22dの底縁が繋がる第1~第4直状外端縁と、周壁15の第1~第4湾曲部23a~23dの底縁が繋がる第1~第4湾曲外端縁とを有する。
【0029】
周壁15は、頂底壁13,14と略直交し、その頂縁が頂壁13(肩部20)の外周縁(第1~第4直状外周縁及び第1~第4湾曲外周縁)に連接され、その底縁が底壁14の外周縁(第1~第4直状外周縁及び第1~第4湾曲外周縁)に連接されている。周壁15には、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ平坦に延びる所定面積の複数の第1~第4観察窓部22a~22d(第1~第n観察窓部)が形成されているとともに、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ延びる所定面積の複数の第1~第4湾曲部23a~23d(第1~第n湾曲部)が形成されている。第1~第4観察窓部22a~22dからは、収容スペース16において培養される細胞の培養状態を観察可能である。
【0030】
第1~第4観察窓部22a~22d(第1~第n観察窓部)は、第1~第4湾曲部23a~23dの間に位置して周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並んでいる。第1~第4観察窓部22a~22dでは、第1観察窓部22aが第4湾曲部23dと第1湾曲部23aとの間に位置し、第2観察窓部22bが第1湾曲部23aと第2湾曲部23bとの間に位置しているとともに、第3観察窓部22cが第2湾曲部23bと第3湾曲部23cとの間に位置し、第4観察窓部22dが第3湾曲部23cと第4湾曲部23dとの間に位置している。
【0031】
第1~第4観察窓部22a~22dは、その平面形状が同形同大であって長さ方向へ長い平坦な略四角形に成形されている。第1~第4観察窓部22a~22dは、周壁15において径方向へ対向するように対を成して形成されている。第1~第4観察窓部22a~22dでは、第1観察窓部22aに対して第3観察窓部22cが径方向に対向し、第1観察窓部22aと第3観察窓部22cとが径方向へ対を成し、第2観察窓部22bに対して第4観察窓部22dが径方向に対向し、第2観察窓部22bと第4観察窓部22dとが径方向へ対を成している。
【0032】
第1~第4湾曲部23a~23d(第1~第n湾曲部)は、第1~第4観察窓部22a~22dの間に位置して周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並んでいる。第1~第4湾曲部23a~23dでは、第1湾曲部23aが第1観察窓部22aと第2観察窓部22bとの間に位置し、第2湾曲部23bが第2観察窓部22bと第3観察窓部22cとの間に位置しているとともに、第3湾曲部23cが第3観察窓部22cと第4観察窓部22dとの間に位置し、第4湾曲部23dが第4観察窓部22dと第1観察窓部22aとの間に位置している。
【0033】
第1~第4湾曲部23a~23dは、その平面形状が同形同大であって周壁15の周り方向へ円弧を画いて延びている。第1湾曲部23aは、第1観察窓部22aと第2観察窓部22bとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第2湾曲部23bは、第2観察窓部22bと第3観察窓部2cとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。第3湾曲部23cは、第3観察窓部22cと第4観察窓部22dとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第4湾曲部23dは、第4観察窓部22dと第1観察窓部22aとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。
【0034】
第1~第4湾曲部23a~23dは、周壁15において径方向へ対向するように対を成して形成されている。第1~第4湾曲部23a~23dでは、第1湾曲部23aに対して第3湾曲部23cが径方向に対向し、第1湾曲部23aと第3湾曲部23cとが径方向へ対を成し、第2湾曲部23bに対して第4湾曲部23dが径方向に対向し、第2湾曲部23bと第4湾曲部23dとが径方向へ対を成している。第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17には、図3に示すように、径方向外方へ凹む複数の凹部24と径方向内方へ凸となる複数の凸部25とが形成されている。第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17に凹部24及び凸部25を形成することで、第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17が平坦な場合と比較し、第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17の表面積が増加する。
【0035】
第1~第4湾曲部23a~23dは、その周り方向の長さが第1~第4観察窓部22a~22dの周り方向の長さより長く、その面積が第1~第4観察窓部22a~22dの面積よりも大きい。尚、複数の凹部24と複数の凸部25とのうちのいずれか一方が第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17に形成されていてもよい。又、長さ方向又は周り方向のいずれか一方へに延びる複数の凸条と複数の凹溝とのうちの少なくとも一方が第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17に形成されていてもよい。
【0036】
細胞培養容器10Aの周壁15では、第1観察窓部22a(一方の観察窓部)の外面から第1観察窓部22a(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第3観察窓部22c(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第3観察窓部22c(一方の観察窓部)の外面から第3観察窓部22c(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第1観察窓部22a(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。更に、第2観察窓部22b(一方の観察窓部)の外面から第2観察窓部22b(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第4観察窓部22d(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第4観察窓部22d(一方の観察窓部)の外面から第4観察窓部22d(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第2観察窓部22b(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。
【0037】
尚、容器本体11の内周面17(第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17)には、ゼラチンや細胞外基質、ポリカチオン類が塗布されていてもよい。細胞外基質には、コラーゲンやラミニン、フィブロネクチン等を使用することができ、ポリカチオン類には、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリオルチニン等を使用することができる。容器本体11の内周面17(培養面)にゼラチンや細胞外基質、ポリカチオン類を塗布することで、容器本体11の内周面17における細胞の付着性を向上させることができる。
【0038】
キャップ12は、所定面積の頂端壁26と、頂端壁26の外周縁から長さ方向へ延びる周側壁27とを有する。周側壁27の内周面には、ネジ(雄ネジ又は雌ネジ)が作られている。周側壁27の内周面に作られたネジに首部19の外周面に作られたネジを螺着することで、容器本体11の注入口18(開口)を塞ぐことができる。
【0039】
図4は、一例として示すキャップ12の拡大斜視図であり、図5は、図4のキャップ12の拡大側面図である。図6は、旋回プレート29によって傾斜した状態で示す細胞培養容器10Aの側面図である。図4,5では、旋回プレート29の旋回前及び旋回後を示す。キャップ12の頂端壁26には、径方向へ延びる設置溝28が形成されている。頂端壁26の設置溝28には、旋回プレート29が設置されている。
【0040】
旋回プレート29は、径方向へ長い四角形に成形され、一端部30と一端部30の反対側に位置する他端部31とを有する。旋回プレート29では、その一端部30が設置溝28の端部に軸を介して回転可能に連結されている。旋回プレート29は、図4,5に示すように、一端部30を中心として他端部31が頂端壁26(キャップ12)の径方向外方と径方向内方とへ旋回する。旋回プレート29の他端部31は、第1観察窓部22a(一方の観察窓部)の側から第1観察窓部22a(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第3観察窓部22c(他方の観察窓部)の側に向かって径方向外方へ旋回する。
【0041】
旋回プレート29の他端部31が径方向外方へ旋回した状態では、旋回プレート29がキャップ12の上方へ向かって登り勾配に傾斜し、旋回プレート29の他端部31が容器本体11の周壁15の外側に位置する。旋回プレート29の他端部31が頂端壁26の径方向内方へ旋回した状態では、旋回プレート29が頂端壁26の設置溝28に位置し、旋回プレート29の外面が頂端壁26の頂面と面一になり、旋回プレート29が設置溝28に収容される。
【0042】
キャップ12に設置された旋回プレート29の他端部31を径方向外方へ旋回させ、細胞培養容器10A(細胞培養容器10Bを含む)(容器本体11)を所定の箇所に横臥するように載置すると、旋回プレート29の他端部31が接地し、細胞培養容器10A(容器本体11)の頂壁13が旋回プレート29によって上方へ持ち上げられ、細胞培養容器10A(容器本体11)の底壁14及び底壁14の側の第3観察窓部22cが設置し、図6に示すように、横臥するように載置された細胞培養容器10A(容器本体11)が径方向外方へ旋回した旋回プレート29によって頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される。
【0043】
図7は、他の一例として示すキャップ12の拡大斜視図であり、図8は、図7のキャップ12の拡大側面図である。図9は、スライドプレート33によって傾斜した状態で示す細胞培養容器の側面図である。図7,8では、スライドプレート33のスライド前及びスライド後を示す。キャップ12の頂端壁26には、径方向へ延びるスライド溝32が形成されている。頂端壁26のスライド溝32には、スライドプレート33が設置されている。スライド溝32の両側部には、図示はしていないが、スライドレール(スライド凹部)が形成されている。
【0044】
スライドプレート33は、径方向へ長い四角形に成形され、基端部34と、基端部34の反対側に位置する先端部35と、基端部34及び先端部35の間に延びる両側縁部36とを有する。スライドプレート33は、その両側縁部36がスライド溝32のスライドレール(スライド凹部)に摺動可能に嵌入している。スライドプレート33は、図7,8に示すように、キャップ12のスライドレール(スライド凹部)において径方向外方と径方向内方とへスライドする。スライドプレート33の先端部35は、第1観察窓部22a(一方の観察窓部)の側から第1観察窓部22a(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第3観察窓部22c(他方の観察窓部)の側に向かって径方向外方へスライドする。
【0045】
スライドプレート33がキャップ12のスライドレール(スライド凹部)において径方向外方へスライドした状態では、スライドプレート22が頂端壁26の外周縁から径方向外方へ延出し、スライドプレート33の先端部35が容器本体11の周壁15の外側(径方向外側)に位置する。スライドプレート33がキャップ12のスライドレール(スライド凹部)において径方向内方へスライドした状態では、スライドプレート33の全域がスライド溝32に位置し、スライドプレート33の外面が頂端壁26の頂面と面一になり、スライドプレート33がスライド溝32に収容される。
【0046】
キャップ12に設置されたスライドプレート33を径方向外方へスライドさせ、細胞培養容器10A(細胞培養容器10Bを含む)(容器本体11)を所定の箇所に横臥するように載置すると、スライドプレート33の先端部35が接地し、細胞培養容器10A(容器本体11)の頂壁13がスライドプレート33によって上方へ持ち上げられ、細胞培養容器10A(容器本体11)の底壁14及び底壁14の側の第3観察窓部22cが設置し、図9に示すように、横臥するように載置された細胞培養容器10A(容器本体11)が径方向外方へ旋回したスライドプレート33によって頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される。尚、細胞培養容器10A(細胞培養容器10Bを含む)では、キャップ12に旋回プレート29やスライドプレート33が設置されていなくてもよい。
【0047】
図10は、他の一例として示す細胞培養容器10Bの斜視図であり、図11は、図10の細胞培養容器10Bの正面図及び側面図である。図12は、第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成された凸条及び凹溝の一例を示す図である。図10,11では、キャップ12に設置された旋回プレート29及びスライドプレート33の図示を省略している。図10では、長さ方向を矢印A、周り方向を矢印Bで示し、径方向を矢印Cで示す。
【0048】
細胞培養容器10Bは、容器本体11及びキャップ12(蓋体)を備えている。容器本体11及びキャップ12は、細胞培養容器10Aのそれらと同様に、無色透明な合成樹脂、無色透明なガラス、無色透明な石英のいずれかから作られている。容器本体11は、径方向へ延びる所定面積の頂壁13と、頂壁13から長さ方向の反対側に位置して径方向へ延びる所定面積の底壁14と、頂底壁13,14の間に位置して長さ方向へ延びる所定面積の周壁15とを備えている。容器本体11には、頂底壁13,14と周壁15とに囲繞された長さ方向へ長い筒状の所定容積の収容スペース16(内部)が形成されている。容器本体11の内周面17には、表面親水化処理が施されている。
【0049】
頂壁13は、容器本体11の収容スペース16に細胞培養液や細胞を注入するとともに収容スペース16から細胞培養液や細胞を排出する円形の注入口18(開口)と、注入口18を囲繞する首部19と、首部19が繋がる肩部20とを有する。頂壁13は、周壁15の後記する第1~第8観察窓部22a~22hの頂縁が繋がる第1~第8直状外周縁と、周壁15の後記する第1~第8湾曲部23a~23hの頂縁が繋がる第1~第8湾曲外周縁とを有する。首部19の外周面には、ネジ(雄ネジ又は雌ネジ)が作られているとともに、径方向外方へ延出するフランジ21が作られている。注入口18(開口)は、キャップ12(蓋体)によって開閉される。底壁14は、周壁15の第1~第8観察窓部22a~22hの底縁が繋がる第1~第8直状外端縁と、周壁15の第1~第8湾曲部23a~23hの底縁が繋がる第1~第8湾曲外端縁とを有する。
【0050】
周壁15は、頂底壁13,14と略直交し、その頂縁が頂壁13(肩部20)の外周縁(第1~第8直状外周縁及び第1~第8湾曲外周縁)に連接され、その底縁が底壁14の外周縁(第1~第8直状外周縁及び第1~第8湾曲外周縁)に連接されている。周壁15には、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ平坦に延びる所定面積の複数の第1~第8観察窓部22a~22h(第1~第n観察窓部)が形成されているとともに、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ延びる所定面積の複数の第1~第8湾曲部23a~23h(第1~第n湾曲部)が形成されている。第1~第8観察窓部22a~22hからは、収容スペース16において培養される細胞の培養状態を観察可能である。
【0051】
第1~第8観察窓部22a~22h(第1~第n観察窓部)は、第1~第8湾曲部23a~23hの間に位置して周壁15の周り方向へ等間隔離間して断続的に並んでいる。第1~第8観察窓部22a~22hでは、第1観察窓部22aが第8湾曲部23hと第1湾曲部23aとの間に位置し、第2観察窓部22bが第1湾曲部23aと第2湾曲部23bとの間に位置しているとともに、第3観察窓部22cが第2湾曲部23bと第3湾曲部23cとの間に位置し、第4観察窓部22dが第3湾曲部23cと第4湾曲部23dとの間に位置している。第5観察窓部22eが第4湾曲部23dと第5湾曲部23eとの間に位置し、第6観察窓部23fが第5湾曲部23eと第6湾曲部23fとの間に位置しているとともに、第7観察窓部22gが第6湾曲部23fと第7湾曲部23gとの間に位置し、第8観察窓部22hが第7湾曲部23gと第8湾曲部23hとの間に位置している。
【0052】
第1~第8観察窓部22a~22hは、その平面形状が同形同大であって長さ方向へ長い平坦な略四角形に成形されている。第1~第8観察窓部22a~22hは、周壁15において径方向へ対向するように対を成して形成されている。第1~第8観察窓部22a~22hでは、第1観察窓部22aに対して第5観察窓部22eが径方向に対向し、第1観察窓部22aと第5観察窓部22eとが径方向へ対を成し、第2観察窓部22bに対して第6観察窓部22fが径方向に対向し、第2観察窓部22bと第6観察窓部22fとが径方向へ対を成している。第3観察窓部22cに対して第7観察窓部22gが径方向に対向し、第3観察窓部22cと第7観察窓部22gとが径方向へ対を成し、第4観察窓部22dに対して第8観察窓部22hが径方向に対向し、第4観察窓部22dと第8観察窓部22hとが径方向へ対を成している。
【0053】
第1~第8湾曲部23a~23h(第1~第n湾曲部)は、第1~第8観察窓部22a~22hの間に位置して周壁の周り方向へ等間隔離間して断続的に並んでいる。第1~第8湾曲部23a~23hでは、第1湾曲部23aが第1観察窓部22aと第2観察窓部22bとの間に位置し、第2湾曲部23bが第2観察窓部22bと第3観察窓部22cとの間に位置しているとともに、第3湾曲部23cが第3観察窓部22cと第4観察窓部22dとの間に位置し、第4湾曲部23dが第4観察窓部22dと第5観察窓部22eとの間に位置している。第5湾曲部23eが第5観察窓部22eと第6観察窓部22fとの間に位置し、第6湾曲部23fが第6観察窓部22fと第7観察窓部22gとの間に位置しているとともに、第7湾曲部23gが第7観察窓部22gと第8観察窓部22hとの間に位置し、第8湾曲部23hが第8観察窓部22hと第1観察窓部22aとの間に位置している。
【0054】
第1~第8湾曲部23a~23hは、その平面形状が同形同大であって周壁15の周り方向へ円弧を画いて延びている。第1湾曲部23aは、第1観察窓部22aと第2観察窓部ああbとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第2湾曲部23bは、第2観察窓部22bと第3観察窓部22cとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。第3湾曲部23cは、第3観察窓部22cと第4観察窓部22dとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第4湾曲部23dは、第4観察窓部22dと第5観察窓部22eとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。第5湾曲部23eは、第5観察窓部22eと第6観察窓部22fとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第6湾曲部23fは、第6観察窓部22fと第7観察窓部22gとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。第7湾曲部23gは、第7観察窓部22gと第8観察窓部22hとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画き、第8湾曲部23hは、第8観察窓部22hと第1観察窓部22aとの間において周壁15の周り方向へ円弧を画いている。
【0055】
第1~第8湾曲部23a~23hは、周壁15において径方向へ対向するように対を成して形成されている。第1~第8湾曲部23a~23hでは、第1湾曲部23aに対して第5湾曲部23eが径方向に対向し、第1湾曲部23aと第5湾曲部23eとが径方向へ対を成し、第2湾曲部23bに対して第6湾曲部23fが径方向に対向し、第2湾曲部23bと第6湾曲部23fとが径方向へ対を成している。第3湾曲部23cに対して第7湾曲部23gが径方向に対向し、第3湾曲部23cと第7湾曲部23gとが径方向へ対を成し、第4湾曲部23dに対して第8湾曲部23hが径方向に対向し、第4湾曲部23dと第8湾曲部23hとが径方向へ対を成している。第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17には、図12に示すように、長さ方向へ一連に延びる複数の凸条37と長さ方向へ一連に延びる複数の凹溝38とが形成されている。第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に凸条37及び凹溝38を形成することで、第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17が平坦な場合と比較し、第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17の表面積が増加する。
【0056】
第1~第8湾曲部23a~23hは、その周り方向の長さが第1~第8観察窓部22a~22hの周り方向の長さより短く、その面積が第1~第8観察窓部22a~22hの面積よりも小さい。尚、長さ方向へ一連に延びる複数の凸条37と複数の凹溝38とのうちのいずれか一方が第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成されていてもよい。又、周り方向へ一連に延びる複数の凸条37と複数の凹溝38とのうちの少なくとも一方が第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成されていてもよく、長さ方向と周り方向とへ一連に延びる複数の凸条37と複数の凹溝38とのうちの少なくとも一方が第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成されていてもよい。更に、複数の凹部24と複数の凸部25とのうちの少なくとも一方が第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成されていてもよい。
【0057】
細胞培養容器10Bの周壁15では、第1観察窓部22a(一方の観察窓部)の外面から第1観察窓部22a(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第5観察窓部22e(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第5観察窓部22e(一方の観察窓部)の外面から第5観察窓部22e(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第1観察窓部22a(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。第2観察窓部22b(一方の観察窓部)の外面から第2観察窓部22b(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第6観察窓部22f(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第6観察窓部22f(一方の観察窓部)の外面から第6観察窓部22f(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第2観察窓部22b(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。
【0058】
第3観察窓部22c(一方の観察窓部)の外面から第3観察窓部22c(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第7観察窓部22g(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第7観察窓部22g(一方の観察窓部)の外面から第7観察窓部22g(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第3観察窓部22c(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。第4観察窓部22d(一方の観察窓部)の外面から第4観察窓部22d(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第8観察窓部22h(他方の観察窓部)の内面を観察可能であり、第8観察窓部22h(一方の観察窓部)の外面から第8観察窓部22h(一方の観察窓部)に対向して周壁15の径方向の対向側に位置する第4観察窓部22d(他方の観察窓部)の内面を観察可能である。尚、容器本体11の内周面17(第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17)には、ゼラチンや細胞外基質、ポリカチオン類が塗布されていてもよい。
【0059】
キャップ12は、細胞培養容器10Aのそれと同一である。キャップ12の頂端壁26の設置溝28には、旋回プレート29が設置され(図4参照)、又は、キャップ12の頂端壁26のスライド溝32には、スライドプレート33が設置されている(図7参照)。尚、細胞培養容器10Bでは、キャップ12に旋回プレート29やスライドプレート33が設置されていなくてもよい。
【0060】
細胞培養容器10Bでは、キャップ12に設置された旋回プレート29の他端部31を径方向外方へ旋回させ、細胞培養容器10B(容器本体11)を所定の箇所に横臥するように載置すると、旋回プレート29の他端部31が接地し、細胞培養容器10B(容器本体11)の頂壁13が旋回プレート29によって上方へ持ち上げられ、細胞培養容器10B(容器本体11)の底壁14及び底壁14の側の第5観察窓部22eが設置し、細胞培養容器10B(容器本体11)が径方向外方へ旋回した旋回プレート29によって頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される(図6参照)。
【0061】
細胞培養容器10Bでは、キャップ12に設置されたスライドプレート33を径方向外方へスライドさせ、細胞培養容器10B(容器本体11)を所定の箇所に横臥するように載置すると、スライドプレート33の先端部35が接地し、細胞培養容器10B(容器本体11)の頂壁13がスライドプレート33によって上方へ持ち上げられ、細胞培養容器10B(容器本体11)の底壁13及び底壁13の側の第5観察窓部22Eが設置し、細胞培養容器10B(容器本体11)が径方向外方へ旋回したスライドプレート33によって頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態に保持される(図9参照)。
【0062】
細胞培養容器10A及び細胞培養容器10Bを利用して細胞を培養する手順の一例は、以下のとおりである。キャップ12を容器本体11の首部19から取り外し、その収容スペース16(内部)に細胞培養液を注入するとともに生体から分離した細胞を収容し、キャップ12を容器本体11の首部19に螺着する。細胞培養液には、ペニシリン(約100U/ml)、アムホテリシン(約100ng/ml)、ストレプトマイシン(約100mkg/ml)、L-グルタミン(約2~4ml)、20%ウシ胎児血清を添加したミネラル塩溶液およびアミノ酸が含まれる。尚、細胞培養液には、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)、Grasgow Minimum Essential Medium(GMEM)、RPMI640等を使用することもできる。細胞培養液には、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、セレニウム、2-メルカプトエタノール、L&#8212;アラニル-L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラチン酸、グリシン、L-プロリン、L-セリン等を添加することもできる。
【0063】
細胞培養容器10A,10Bを横臥させた状態で例えば体温と略同一の温度(約35~37℃)に保持しつつ、12~48時間静的に放置(動かすことなく静かに放置)する。細胞培養容器10Aの第3観察窓部22c又は第4観察窓部22dを下にした状態で細胞培養容器10Aを水平に保持し、又は、細胞培養容器10Aの第3観察窓部22cを下にした状態で旋回プレート29又はスライドプレート33によって細胞培養容器10Aを頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜させた状態に保持する。細胞培養容器10Bの第5観察窓部22eや第6観察窓部22f、第7観察窓部22g、第8観察窓部22hのいずれかを下にした状態で細胞培養容器10Bを水平に保持し、又は、細胞培養容器10Bの第5観察窓部22eを下にした状態で旋回プレート29又はスライドプレート33によって細胞培養容器10Bを頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜させた状態に保持する。細胞培養容器10A,10Bの傾斜角度は、2~5°の範囲にあり、好ましくは、2~3°の範囲にある。
【0064】
細胞培養容器10A,10Bに収容(注入)された細胞は、時間の経過とともに細胞培養容器10A,10Bの容器本体11の内周面17(第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17、第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17)に定着しつつ、細胞培養液によって培養され、容器本体11の内周面17(第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17、第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17)において次第に増殖(分化)してコロニーを形成する。
【0065】
細胞培養容器10Aの第1観察窓部22aの外面(又は第2観察窓部22bの外面)から第3観察窓部22cの内面(又は第4観察窓部22dの内面)を肉眼で観察し、又は、第1観察窓部22aの外面(又は第2観察窓部22bの外面)から第3観察窓部22cの内面(又は第4観察窓部22dの内面)を電子顕微鏡(ディスプレイ)で観察し、細胞の定着や細胞の増殖(変形)を観測する。
【0066】
細胞培養容器10Bの第1観察窓部22aの外面(又は第2観察窓部22b、第3観察窓部22c、第4観察窓部22dの外面)から第5観察窓部22eの内面(又は第6観察窓部22f、第7観察窓部22g、第8観察窓部22hの内面)を肉眼で観察し、又は、第1観察窓部22aの外面(又は第第2観察窓部22b、第3観察窓部22c、第4観察窓部22dの外面)から第5観察窓部22eの内面(又は第6観察窓部22f、第7観察窓部22g、第8観察窓部22hの内面)を電子顕微鏡(ディスプレイ)で観察し、細胞の定着や細胞の増殖(変形)を観測する。
【0067】
細胞培養容器10A,10Bにおいて細胞が十分に増殖し、細胞の培養が完了した場合、細胞培養容器10A,10Bに注入されている細胞培養液を細胞培養容器10A,10Bから排出し、細胞培養容器10A,10Bの収容スペース16(内部)をりん酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、トリプシン液を細胞培養容器10A,10Bの収容スペース16に注入する。収容スペース16にトリプシン液を注入すると、容器本体11の内周面17(第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17、第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17)に定着・増殖した細胞がトリプシン液によって容器本体11の内周面17から剥離し、トリプシン液の水面に浮上し、浮上した細胞をピペットを利用して吸引する。
【0068】
細胞培養容器10A,10Bは、頂壁13と底壁14との間に位置して長さ方向へ平坦に延びていて細胞培養容器10A,10Bの内部において培養される細胞の培養状態を観察可能な所定面積の第1~第4観察窓部22a~22dや第1~第8観察窓部22a~22h(第1~第n観察窓部)が周壁15に形成されているから、それら第1~第4観察窓部22a~22dや第1~第8観察窓部22a~22hを利用して培養中の細胞の培養状態をそれら観察窓部22a~22d,22a~22hから観察することができ、容器本体11の内周面17(第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17、第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17)への細胞の定着及び増殖を容易に観察することができる。
【0069】
細胞培養容器10A,10Bは、第1~第4観察窓部22a~22d及び第1~第4湾曲部23a~23dや第1~第8観察窓部22a~22h及び第1~第8湾曲部23a~23h(第1~第n観察窓部及び第1~第n観察窓部)からなる容器本体11の内周面17(培養面)に細胞を定着させるとともに容器本体11の内周面17(培養面)において細胞を増殖させるから、所定面積の培養面(周壁)を有して多量の細胞を増殖させることができ、細胞を効率よく培養することができる。
【0070】
細胞培養容器10A,10Bは、横臥した細胞培養容器10A,10Bの頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態を旋回プレート29やスライドプレート33によって保持しつつ、傾斜した細胞培養容器10A,10Bの一方の観察窓部の外面から他方の観察窓部の内面を観察することができ、第1~第4観察窓部22a~22dや第1~第8観察窓部22a~22hのうちの一方の観察窓部から他方の観察窓部を観察することで定着かつ増殖する培養中の細胞の培養状態を正確に観察かつ把握することができる。細胞培養容器10A,10Bは、横臥した細胞培養容器10A,10Bの頂壁13から底壁14に向かって下り勾配に傾斜した状態を旋回プレート29やスライドプレート33によって保持することで、細胞及び細胞培養液が底壁14の側に集中し、注入された細胞培養液が底壁14の側に偏って細胞培養液の圧力が底壁14の側で大きくなり、それによって細胞の活性を高めることができ、細胞を確実かつ効率的に増殖させることができる。
【0071】
細胞培養容器10Aは、径方向外方へ凹む複数の凹部24と径方向内方へ凸となる複数の凸部25とが第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17に形成され、第1~第4湾曲部23a~23dの内周面17の表面積を大きくすることができ、表面積を大きくした第1~第4湾曲部23a~23d(培養面)において多量の細胞を増殖させることができるとともに、細胞を効率よく培養することができる。細胞培養容器10Bは、長さ方向へに延びる複数の凸条37と長さ方向へに延びる複数の凹溝38とが第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17に形成され、第1~第8湾曲部23a~23hの内周面17の表面積を大きくすることができ、表面積を大きくした第1~第8湾曲部23a~23h(培養面)において多量の細胞を増殖させることができるとともに、細胞を効率よく培養することができる。
【符号の説明】
【0072】
10A 細胞培養容器
10B 細胞培養容器
11 容器本体
12 キャップ(蓋体)
13 頂壁
14 底壁
15 周壁
16 収容スペース(内部)
17 内周面
18 注入口(開口)
19 首部
20 肩部
21 フランジ
22a~22h 第1~第8観察窓部
23a~23h 第1~第8湾曲部
24 凹部
25 凸部
26 頂端壁
27 周側壁
28 設置溝
29 旋回プレート
30 一端部
31 他端部
32 スライド溝
33 スライドプレート
34 基端部
35 先端部
36 両側縁部
37 凸条
38 凹溝


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12