(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116433
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220803BHJP
G02B 30/27 20200101ALI20220803BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220803BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220803BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B30/27
B60K35/00 A
G02B5/00
G02B5/00 B
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012593
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
(72)【発明者】
【氏名】関谷 俊
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA16
2H042AA19
2H042AA26
2H199BA08
2H199BA42
2H199BB02
2H199BB04
2H199BB19
2H199BB53
2H199BB59
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA20
2H199DA29
2H199DA33
2H199DA36
2H199DA42
2H199DA43
2H199DA46
3D344AA21
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】情報内容に応じた適切な表示態様を実現する。
【解決手段】照明光4aを発するLED21と、前側偏光板104Fの前側、若しくは、前側のガラス基板102Fの前側でかつ前側偏光板104Fの後側に設けられ、ベースフィルム151とベースフィルム151の前側に設けられ所定の凹凸形状を備えたUVレジン層152とを含む、レンチキュラレンズ150と、を有し、レンチキュラレンズ150は、少なくとも他の部位よりも前後方向寸法が小さくなるように欠損させた欠損部LKを備え、液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、少なくとも欠損部LKに対応する領域を含む所定領域を、視差ゼロの2次元画像による第1コンテンツを表示する2次元表示領域25Bとし、2次元表示領域25B以外を、視差のある3次元画像による、第1コンテンツとは異なる第2コンテンツを表示する3次元表示領域25Aとした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される表示装置であって、
液晶層を封入する前側・後側一対のガラス基板を備えた液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルよりも後側に設けられ、当該液晶表示パネルを透過照明する照明光を発する光源と、
前記前側のガラス基板の前記前側に設けられた前側偏光板と、
前記後側のガラス基板の前記後側に設けられた後側偏光板と、
前記前側偏光板の前記前側、若しくは、前記前側のガラス基板の前記前側でかつ前記前側偏光板の前記後側に設けられ、ベースフィルムと前記ベースフィルムの前側に設けられ所定の凹凸形状を備えたUVレジン層とを含む、レンチキュラレンズと、を有し、
前記レンチキュラレンズは、
少なくとも他の部位よりも前後方向寸法が小さくなるように欠損させた欠損部を備え、
前記液晶表示パネルの表示領域のうち、少なくとも前記欠損部に対応する領域を含む所定領域を、視差ゼロの2次元画像による第1コンテンツを表示する2次元表示領域とし、前記2次元表示領域以外を、視差のある3次元画像による、前記第1コンテンツとは異なる第2コンテンツを表示する3次元表示領域としたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1コンテンツは、
前記車両に係わる速度、走行距離、電源電圧を含む車両状態量に係わる情報、若しくは、法規に定められた高重要度の情報、であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記欠損部では、
前記ベースフィルム及び前記UVレジン層の両方が欠損されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記欠損部では、
前記ベースフィルム及び前記UVレジン層のうち前記UVレジン層のみが欠損されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記UVレジン層のうち前記欠損部に臨む端面を、前記前後方向寸法が漸減する傾斜形状としたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記ベースフィルムの後面のうち、前記UVレジン層の前記傾斜形状の端面に対応した領域に、吸光部を設けたことを特徴とする請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記液晶表示パネルの表示領域のうち、前記レンチキュラレンズの前記欠損部に対応する第1領域と、前記レンチキュラレンズの前記欠損部以外の部分に対応する第2領域のうち前記第1領域側の一部と、を前記2次元表示領域としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の表示装置と、
車両に備えられた投影部材と、
前記表示装置から出射された光を前記投影部材に向けて反射させることにより、前記車両の前方風景と重なる虚像として視認可能な重畳画像を生成する反射部と、を有するヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して所望の表示を行う表示装置及びこれを用いたヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の表示装置が知られている。この表示装置では、3次元表示を行う画像表示器において、中央部に立体映像用のレンチキュラレンズ板を装着する一方、その左・右若しくは上・下の周辺部にはレンチキュラレンズ板を装着しない構成が開示されている。これにより、例えばレンチキュラレンズ等を用いることによるモアレの発生、単色表示時のサブピクセルの画素間引きによる解像度感の悪化、等の弊害を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の表示装置では、中央部に3次元画像による立体的な表示が行われ、その上下左右の周辺部に2次元画像による平面的な表示が行われる。しかしながら、例えば車両に搭載される車両用の表示装置の場合、運転者にとって、視野の中央部であるか周辺部であるかよりも、3次元画像で表示すべき高重要度の情報であるのか、2次元画像の表示でも十分足りる程度の情報であるのか、という表示情報の内容のほうが大事である。例えば、高重要度の情報であれば、中央部以外に表示されるものであっても立体的に表示されるべきであり、2次元画像で足りる程度の情報であれば、中央寄りに表示されるものであっても平面的な表示で十分である。上記従来技術においては、そのような、表示する情報内容に応じた配慮が特になされていないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、情報内容に応じた適切な表示態様を実現できる表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動車2に搭載される表示装置20であって、液晶層101を封入する前側・後側一対のガラス基板102F,102Rを備えた液晶表示パネル25と、前記液晶表示パネル25よりも後側に設けられ、当該液晶表示パネル25を透過照明する照明光4aを発するLED21と、前記前側のガラス基板102Fの前記前側に設けられた前側偏光板104Fと、前記後側のガラス基板102Rの前記後側に設けられた後側偏光板104Rと、前記前側偏光板104Fの前記前側、若しくは、前記前側のガラス基板102Fの前記前側でかつ前記前側偏光板104Fの前記後側に設けられ、ベースフィルム151と前記ベースフィルム151の前側に設けられ所定の凹凸形状を備えたUVレジン層152とを含む、レンチキュラレンズ150と、を有し、前記レンチキュラレンズ150は、少なくとも他の部位よりも前後方向寸法が小さくなるように欠損させた欠損部LKを備え、前記液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、少なくとも前記欠損部LKに対応する領域を含む所定領域を、視差ゼロの2次元画像による第1コンテンツを表示する2次元表示領域25Bとし、前記2次元表示領域25B以外を、視差のある3次元画像による、前記第1コンテンツとは異なる第2コンテンツを表示する3次元表示領域25Aとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、情報内容に応じた適切な表示態様を実現できる表示装置及びヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による表示装置を備えたヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の前部の説明図。
【
図2】
図1に示した表示装置を備えたヘッドアップディスプレイ装置の全体概略構造を表す断面図。
【
図3】
図2に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図4】
図3に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す横断面図。
【
図5】
図3に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図6】
図4及び
図5に示したレンチキュラレンズの詳細形状を表す斜視図。
【
図7】ベースフィルムは欠損させずに残す変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図8】
図7に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図9】UVレジン層も一部のみ欠損させそれ以外は残す変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図10】
図9に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図12】UVレジン層の端部を傾斜形状とする変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図13】
図12に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図14】ベースフィルムの後方側に吸光部を設ける変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す断面図。
【
図15】ベースフィルムの後方側に吸光部を設ける他の変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す断面図。
【
図16】ベースフィルムの後方側に吸光部を設けるさらに他の変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す断面図。
【
図17】3次元表示領域と2次元表示領域との切替部分にマージンを設ける変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図18】
図17に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図19】前側偏光板の前側にレンチキュラレンズを設ける変形例における液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す前面図。
【
図20】
図19に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す縦断面図。
【
図21】
図19に示した液晶表示パネルの詳細構造を模式的に表す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えば自動車等の車両に搭載され得るヘッドアップディスプレイ装置に本発明の表示装置を適用した場合の実施形態である。
【0010】
本実施形態の表示装置を備えたヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の前部の説明図を
図1に示し、本実施形態の表示装置を備えたヘッドアップディスプレイ装置の全体概略構造を表す断面図を
図2に示す。なお、以下では、表示装置の構成の理解を容易にするために、自動車の前方側を「前(Fr.)」、その反対側を「後(Re.)」、自動車の左側を「左(L)」、右側を「右(R)」、自動車の上側を「上(U)」)、自動車の下側を「下(D)」として各部材を適宜説明する(各図中の矢印表記参照)。
【0011】
<自動車におけるHUDの配置>
図1において、ヘッドアップディスプレイ装置1(HUD1)は、自動車2のインストルメントパネル3内部に配置される。HUD1は、表示光(照明光)4を、投影部材であるウインドシールド5によって運転者6(視認者)方向に反射させる。これにより、運転者6は、自動車2の前方風景と重なる虚像7を視認することができる。
【0012】
<HUDの全体構成>
図2において、HUD1は、本実施形態による表示装置20と、反射鏡ユニット30(反射部)と、ケース40と、を主に有する。
【0013】
表示装置20は、LED21(光源)と、コンデンサレンズ(集光レンズ)22と、集光レンズ24と、液晶表示パネル25と、反射板27と、表示装置用ケース28と、ヒートシンク29と、を有する。
【0014】
LED21は、液晶表示パネル25よりも後側において光源基板21aに搭載されており、ヒートシンク29と熱的に接触して配置される。LED21は、液晶表示パネル25を透過照明するための表示光4(照明光4a)を発する。
【0015】
反射板27は、LED21から液晶表示パネル25までの間の表示光4の光路上に配置され、表示光4のS偏光(入射面に対して垂直な面を振動するS波)を液晶表示パネル25に向けて反射し、P偏光(入射面に対して平行な面を振動するP波)を透過する。反射板27は、透過性を有する樹脂材料(例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))である。
【0016】
コンデンサレンズ22は、LED21から発せられ反射板27で反射した表示光4(反射光4b、反射板27におけるS偏光)を光線密度が略均一である平行光となるように集光する。
集光レンズ24は、例えば縦方向の曲率と横方向の曲率とが異なるトロイダル面を有する凸レンズである。集光レンズ24は、反射光4bを液晶表示パネル25に向けて集光する。
【0017】
表示装置用ケース28は、コンデンサレンズ22、集光レンズ24、及び液晶表示パネル25を、曲げ部28aよりも前側で固定して支持し、収容する。表示装置用ケース28は、LED21を、曲げ部28aよりも後側で固定して支持し、収容する。
【0018】
ヒートシンク29は、表示装置用ケース28の後端部28bに固定される。ヒートシンク29は、平板形状の多数の放熱フィン29aを有する。放熱フィン29aは、LED21が発した熱をヘッドアップディスプレイ装置1の外に放出する。
【0019】
反射鏡ユニット30は、凹面鏡31と、保持部材32と、ステッピングモータ33と、を有する。反射鏡ユニット30は、液晶表示パネル25から出射された表示光4をウインドシールド5に向けて反射することで、自動車2の前方風景と重なる上記虚像7として視認可能な重畳画像を生成する。
【0020】
凹面鏡31は、樹脂(例えばポリカーボネート)からなる基板と、この基板に蒸着され反射面31aとなる金属(例えばアルミニウム)と、からなる。反射面31aは、凹面であり、液晶表示パネル25が発した表示光4(この例では反射光4b)を拡大し、反射する。保持部材32は、樹脂(例えばABS)からなり、凹面鏡31と両面粘着テープで接着される。
【0021】
保持部材32は、歯車34と、軸部35と、を有する。軸部35は、ケース40に軸支される。ステッピングモータ33は、保持部材32の歯車34と噛み合う歯車37を有する。ステッピングモータ33は、保持部材32を介して回動可能な状態で凹面鏡31を支持することにより、表示光4の投射方向を調整する。ステッピングモータ33は、運転者6の操作等に基づいて、表示光4(反射光4b)が目の位置に反射されるように(虚像7を視認できるように)凹面鏡31の角度を調整する。
【0022】
ケース40は、表示装置20の前側部分及び反射鏡ユニット30を収容する。ケース40は、カバー41と、遮光壁42と、を有する。カバー41は、湾曲形状の透光性樹脂(例えばアクリル)からなり、表示光4を出射させる。遮光壁42は、太陽光等の外光を遮光し、外光が液晶表示パネル25に入射し虚像7が見えにくくなる現象(ウォッシュアウト)を防止する。
【0023】
<液晶表示パネルの詳細構造>
本実施形態の要部である、液晶表示パネル25の詳細構造を
図3、
図4、及び
図5に示す。
【0024】
図3、
図4、及び
図5において、液晶表示パネル25は、外縁側に位置し、表示に使用されない略四角枠形状の非表示領域25aと、非表示領域25aの内側に位置し、表示に使用される略四角形形状の表示領域25bと、を有する。液晶表示パネル25は、例えば、HUD1に適したTFT(Thin Film Transistor)方式のノーマリーブラック方式(電圧非印加時、黒表示)の液晶表示パネルである。液晶表示パネル25は、液晶層101を封入する、前側・後側一対のガラス基板102F,102Rを備えている。一対のガラス基板102F,102Rには、ITO(Indium Tin Oxide)等により図示しない透明電極が形成されている。
【0025】
前側のガラス基板102Fの前面には、接着材ADを介し、表示光4(反射光4b)を広げるレンチキュラレンズ150が貼り付けられている。レンチキュラレンズ150の前側には、前側偏光板104Fが設けられている。後側のガラス基板102Rの後側には、後側偏光板104Rが設けられている。偏光板104F,104Rは、反射板27で反射した表示光4(反射光4b、反射板27におけるS偏光)の振動軸と平行な偏光軸を有する。
【0026】
レンチキュラレンズ150は、ベースフィルム151と、ベースフィルム151の前側に設けられ、所定の凹凸形状を備えたUVレジン層152と、を有している。UVレジン層152は、枠状の樹脂部材153の内周面に取り付けられている。
【0027】
このとき、レンチキュラレンズ150は、少なくとも他の部位よりも前後方向寸法が小さくなるように欠損させた欠損部LKを備えている。この例では、上記の前後方向寸法は0であり、すなわち、欠損部LKにおいては、UVレジン層152及びベースフィルム151の両方が欠損され(削除された形であり)、一切設けられていない。この結果、欠損部LKは、言い換えれば空気層となっている。
そして、欠損部LKを備えたレンチキュラレンズ150の上記構造に対応して、液晶表示パネル25の上記表示領域25bのうち欠損部LKに対応する領域(所定領域)が、視差ゼロの2次元画像によるコンテンツ(第1コンテンツ)が表示される2次元表示領域25Bとなっている。この第1コンテンツとしては、自動車2に係わる速度、走行距離、電源電圧を含む車両状態量に係わる情報や、法規に定められた重要度の高い情報、等があげられる。また、表示領域25bのうち2次元表示領域25B以外は、視差のある3次元画像によるコンテンツ(第2コンテンツ)が表示される3次元表示領域25Aとなっている。
【0028】
また、レンチキュラレンズ150のUVレジン層152は、複数の(
図4に示す例では16個)のシリンドリカルレンズ部162によって構成されており、集光レンズ24によって集光された表示光4を縦方向及び横方向に広げる。レンチキュラレンズ150の詳細形状を表す斜視図を
図6に示す。なお、
図6では、図示の煩雑を防止するために、レンチキュラレンズ150のUVレジン層152が11個のシリンドリカルレンズ部162によって構成される場合を例示している。
図6に示すように、各シリンドリカルレンズ部162は、凸状の断面形状、詳細には左右方向において略半円状に突出する断面形状を備えている。またこのときの上記半円形状の軸線方向は、上下方向となっている。なお、実際は、1個のシリンドリカルレンズ部162の左右方向(図のL-R方向)の幅は、好適には、約50μmから150μmであり、1個のシリンドリカルレンズ部162の高さ(シリンドリカルレンズ部162の前後方向寸法x)は、約3μmから20μmである。
【0029】
図3及び
図4に戻り、この例では、前側偏光板104Fは、UVレジン層152の前側に、接着材ADを介し貼り付けられている。詳細には、前側偏光板104Fは、UVレジン層152のうち表示領域25bに対応する第2部位152bには貼り付けられず、UVレジン層152のうち非表示領域25aに対応する第1部位152aに貼り付けられている。接着材ADとしては、例えば、透明光学粘着材すなわちOCA(Optical Clear Adhesive)を用いることができる。
【0030】
なお、前側偏光板104Fは、UVレジン層152のうち非表示領域25aに対応する第1部位152aの全周ではなく一部(例えば、対向する2辺箇所のみ)に貼り付けられていればよい。また、第1部位152aは、非表示領域25aの表示領域25b側には形成されず外周側のみに形成されてもよい。UVレジン層152の第1部位152aにおけるシリンドリカルレンズ部162の前後方向寸法xは、第2部位152bにおけるシリンドリカルレンズ部162と前側偏光板104Fとが接するように、設定されている。なお、前側偏光板104Fが、第2部位152bと第1部位152aとの両方に貼り付けられていてもよい。
【0031】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の表示装置20においては、LED21から出射された照明光4aにより液晶表示パネル25が照明される。液晶表示パネル25では、前・後一対のガラス基板102F,102Rに液晶層101が封入されている。前側のガラス基板102Fの前側には前側偏光板104Fが設けられ、後側のガラス基板102Rの後側には後側偏光板104Rが設けられている。前側のガラス基板102Fの前側かつ前側偏光板104Fの後側に、レンチキュラレンズ150が設けられている。レンチキュラレンズ150は欠損部LKを備えており、この欠損部LKでは、少なくともレンチキュラレンズ150の他の部位よりも前後方向寸法が小さくなっている。
そして、本実施形態においては、液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、欠損部LKに対応する領域が2次元表示領域25Bとされ、それ以外は3次元表示領域25Aとなっている。2次元表示領域25Bは、視差ゼロの2次元画像による第1コンテンツを表示する領域であり、3次元表示領域25Aは、視差のある3次元画像による第2コンテンツを表示する領域である。言い換えれば、コンテンツの内容に応じて、液晶パネルが、レンチキュラレンズ150の欠損部LKに対応する2次元表示領域25Bと、それ以外の3次元表示領域25Aと、に区分される。
以上の結果、本実施形態によれば、2次元画像でも足りる第1コンテンツを、レンチキュラレンズ150の欠損部LKに対応する2次元表示領域25Bにおいて平面的に表示する一方、3次元画像が必須である第2コンテンツは、2次元表示領域25B以外の3次元表示領域25Aにおいて立体的に表示することができる。これにより、表示される情報内容に応じた適切な表示態様を実現することができる。
【0032】
また、自動車2の速度、走行距離、電源電圧等の車両状態量や、法規に定められた高重要度の情報は、情報の確実な視認性が最優先事項であって、情報が立体的である必然性はない。本実施形態においては特に、これに対応して、それら車両状態量及び法規関連の高重要度情報を第1コンテンツに含めることで、2次元表示領域25Bにおいて平面的に表示させることができる。
【0033】
また、本実施形態では特に、レンチキュラレンズ150の欠損部LKにおいて、ベースフィルム151及びUVレジン層152の両方が欠損されている。これにより、前述のモアレの発生、解像度感の悪化等を確実に抑制することができる
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0035】
(1)ベースフィルムは欠損させずに残す場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記
図3及び
図5にそれぞれ対応する
図7及び
図8に示す。
【0036】
図7及び
図8において、本変形例における液晶表示パネル25では、上記
図5において欠損部LKにおいてベースフィルム151及びUVレジン層152の両方が欠損されていたのに代えて、UVレジン層152のみが欠損されている。すなわち、欠損部LKには、ベースフィルム151の所定部分151pは残されている。UVレジン層152が欠損される結果、レンチキュラレンズ150の欠損部LKにおける前後方向寸法t1は、それ以外の部位での前後方向寸法t0よりも小さくなっている。
【0037】
本変形例においては、レンチキュラレンズ150の欠損部LKにおいてUVレジン層152のみを欠損させベースフィルム151を残す。これにより、欠損部LKとそれ以外の部分との境界部位BDにおいて生じる前後方向寸法の偏差t0-t1を低減することができる。この結果、当該境界部位BD近傍における表示品位の劣化を抑制することができる。尚、本変形例ではベースフィルム151を完全に残していたが、ベースフィルム151も欠損部LKのサイズよりも小さいサイズで欠損させてもよい。
【0038】
(2)UVレジン層も一部のみ欠損させそれ以外は残す場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記実施形態における
図3、
図5、及び
図6にそれぞれ対応する
図9、
図10、及び
図11に示す。
【0039】
図9、
図10、及び
図11において、本変形例における液晶表示パネル25では、上記
図8において欠損部LKにおいてUVレジン層152が全部欠損されていたのに代えて、UVレジン層152の前後方向の一部分は欠損されるが残りの部分は残されている。すなわち、レンチキュラレンズ150の欠損部LKにおいて、UVレジン層152は段付き部152pとなっている。
【0040】
このようなUVレジン層152の欠損態様の結果、レンチキュラレンズ150の欠損部LKにおける前後方向寸法t2は、それ以外の部位での前後方向寸法t0よりも小さくなっているが、
図8に示した前後方向寸法t1よりは大きくなっている。
本変形例においても、上記変形例(2)と同様の効果を得る。
【0041】
(3)UVレジン層の端部を傾斜形状とする場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記
図7及び
図8にそれぞれ対応する
図12及び
図13に示す。
【0042】
図12及び
図13において、本変形例における液晶表示パネル25では、UVレジン層152のうち欠損部LKに臨む端面152qが、前後方向の寸法が漸減する傾斜形状となっている。すなわち、UVレジン層152は、
図13に示す端部152q1から上方(UVレジン層152が無くなる方向)に向かって徐々に前後方向寸法が小さくなっていき、端部152q2において前後方向寸法が0となる。このような端面形状とすることにより、欠損部LKとそれ以外の部分との境界部位BDの近傍において、前後方向寸法の大きさを緩やかに変化させることができる。この結果、液晶表示パネル25において、上述の端部152q1から端部152q2までに対応する遷移領域25xが介在することによって2次元表示領域25B側と3次元表示領域25A側との表示品位の差を徐々に設けることができるので、運転者6に視覚上の違和感を与えないようにすることができる。
【0043】
(4)ベースフィルムの後方側に吸光部を設ける場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記
図13に対応する
図14に示す。
【0044】
図14において、本変形例における液晶表示パネル25では、ベースフィルム151の後面のうち、前述のUVレジン層152における傾斜形状の端面152qに対応した領域(この例では、端部152q2に対応した点を含む上下方向所定範囲の領域)に、光吸収機能を備えた吸光部BKが設けられている。なお、端部152q1の後方に対応した点を含むように吸光部BKを下方(UVレジン層152が有る方向)へ延ばしてもよい。
この例では吸光部BKは、適宜の黒色ベタ塗り印刷によって形成されている。これにより、UVレジン層152の上記端面152qにおける迷光発生による、表示品位の劣化を抑制することができる。
【0045】
なお、
図15に示すように、吸光部BKに代え、濃淡が徐々に変化するグラデーションによる彩色とした吸光部GRを設けてもよい。この場合、図示のように、端部152q2の後方に位置する点が最も濃い色(黒色)となり、そこから上方又は下方に離れるにつれて徐々に色が薄くなっているようにすればよい。この場合、
図14の例に比べて吸光部の有無を分かりにくくすることができるので、運転者6に対し自然な表示を視認させることができる。
【0046】
また、上記のようなUVレジン層152の傾斜形状の端面でなく、
図8に示したような直角端面を備えたUVレジン層152を有する構成に対し、上記吸光部BKや吸光部GRを適用してもよい。この場合、例えば
図16に示すように、UVレジン層152における直角端面152sに対応した領域(この例では、直角端面152sの後方に位置する点を含む上下方向所定範囲の領域)に吸光部BKが設けられている。なお、吸光部BKに代えてグラデーションによる上記吸光部GRを設けてもよい。
【0047】
(5)3次元表示領域と2次元表示領域との切替部分にマージンを設けた場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記
図3及び
図5にそれぞれ対応する
図17及び
図18に示す。
【0048】
図17及び
図18において、本変形例における液晶表示パネル25では、上述した各例の液晶表示パネル25に比べて、3次元表示領域25Aと2次元表示領域25Bの境界が、
図17に示す所定のマージンY分、下方へずらされている。詳細には、表示領域25bにおいて、レンチキュラレンズ150の欠損部LKに対応する第1領域Iと、レンチキュラレンズ150の欠損部LK以外の部分に対応する第2領域IIのうち第1領域I側の一部と、が2次元表示領域25Bとなり、第2領域IIのうち残りの部分が3次元表示領域25Aとなっている。
【0049】
本変形例においても、上記実施形態と同様、液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、少なくとも欠損部LKに対応する領域を含む所定領域が2次元表示領域25Bとされ、それ以外は3次元表示領域25Aとなっている。これにより、2次元画像でも足りる第1コンテンツを2次元表示領域25Bにおいて平面的に表示する一方、3次元画像が必須である第2コンテンツは3次元表示領域25Aにおいて立体的に表示することができる。
【0050】
特に本変形例では、液晶表示パネル25の表示領域25bは、欠損部LKに対応する第1領域Iに加え、欠損部LKには対応しない第2領域IIのうち第1領域I側の一部においても、2次元画像による第1コンテンツを表示する2次元表示領域25Bとされる。すなわち、第2領域IIのうちマージンYに相当する一部分を2次元表示領域25Bとし、残りを3次元表示領域25Aとする。これにより、液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、欠損部LKとそれ以外の部分との境界部位BDに対応する部分、言い換えれば第1領域Iと第2領域IIとの境界部分においても表示を行うことができる。しがたって、液晶表示パネル25上で表示できない部分をなくすことができる。また、第2領域IIのうちマージンYに相当する一部分を2次元表示領域25Bとすることで、3次元表示領域25Aと2次元表示領域25Bとの境界で生じる表示の違和感を抑制することができる。
【0051】
(6)前側偏光板の前側にレンチキュラレンズを設ける場合
本変形例の表示装置20の要部である液晶表示パネル25の全体概略構造を、上記
図3、
図5、
図4にそれぞれ対応する
図19、
図20、及び
図21に示す。
【0052】
図19、
図20、及び
図21において、本変形例における液晶表示パネル25では、上述のように前側のガラス基板102Fの前側かつ前側偏光板104Fの後側にレンチキュラレンズ150が設けられるのに代えて、レンチキュラレンズ150は前側偏光板104Fの前側に設けられている。前述と同様、レンチキュラレンズ150は欠損部LKを備えており、この欠損部LKでは、少なくともレンチキュラレンズ150の他の部位よりも前後方向寸法が小さくなっている(この例では前後方向寸法は0(ゼロ)となっている)。
【0053】
そして、本変形例においても、液晶表示パネル25の表示領域25bのうち、欠損部LKに対応する領域が2次元表示領域25Bとされ、それ以外は3次元表示領域25Aとなっている。この結果、上記実施形態と同様、2次元画像でも足りる第1コンテンツを欠損部LKに対応する2次元表示領域25Bにおいて平面的に表示する一方、3次元画像が必須である第2コンテンツは3次元表示領域25Aにおいて立体的に表示することができる。これにより、表示される情報内容に応じた適切な表示態様を実現することができる。
【0054】
(7)その他
なお、上記においては、本発明の表示装置を、自動車に搭載され得るヘッドアップディスプレイ装置に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、メータ等を含む他の自動車用表示装置や、さらには自動車用にも限られず、二輪車、船舶、農業機械、建設機械等の他の車両の表示装置に適用することもでき、この場合も同様の効果を得る。
【符号の説明】
【0055】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)
2 自動車
4 表示光(照明光)
4a 照明光
4b 反射光
5 ウインドシールド(投影部材)
6 運転者
7 虚像
20 表示装置
21 LED(光源)
21a 光源基板
22 コンデンサレンズ
24 集光レンズ
25 液晶表示パネル
25A 3次元表示領域
25a 非表示領域
25B 2次元表示領域
25b 表示領域
25x 遷移領域
27 反射板
28 表示装置用ケース
28a 曲げ部
28b 後端部
29 ヒートシンク
29a 放熱フィン
30 反射鏡ユニット(反射部)
31 凹面鏡
31a 反射面
32 保持部材
33 ステッピングモータ
34 歯車
35 軸部
37 歯車
40 ケース
41 カバー
42 遮光壁
101 液晶層
102F 前側のガラス基板
102R 後側のガラス基板
104F 前側偏光板
104R 後側偏光板
150 レンチキュラレンズ
151 ベースフィルム
151p ベースフィルムの所定部分
152 UVレジン層
152p 段付き部
152q 欠損部に臨む端面
152s 直角端面
153 樹脂部材
162 シリンドリカルレンズ部
AD 接着材
BD 境界部位
BK 吸光部
GR 吸光部
I 第1領域
II 第2領域
LK 欠損部
t0 欠損部以外の部位での前後方向寸法
t1 欠損部における前後方向寸法
t2 欠損部における前後方向寸法
x シリンドリカルレンズ部の前後方向寸法
Y マージン