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特開2022-116480水中貯蔵装置及びそれを用いた飲食物の水中貯蔵方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116480
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】水中貯蔵装置及びそれを用いた飲食物の水中貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B65G1/00 551A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012657
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】519370083
【氏名又は名称】株式会社海底熟成研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚徳
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA02
3F022CC05
3F022EE05
3F022MM08
(57)【要約】
【課題】飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させるための技術を提供する。
【解決手段】本開示の水中貯蔵装置1は、所定の飲食物を水中に貯蔵するための水中貯蔵装置である。そして、この水中貯蔵装置は、飲食物が収容されたボトル10を複数収納する収納ケース2と、ボトル10のコルク12を取り囲むように配置されることで、該コルクを密封する密封手段3と、を備える。密封手段は、コルクを密封する密封部材30と、複数の該密封部材を剛に連結するプレート40と、を有し、収納ケースに収納された複数のボトルのコルクを密封する複数の密封部材がプレートによって連結されることで、収納ケースに収納された複数のボトルのコルクが纏めて密封される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の飲食物を水中に貯蔵するための水中貯蔵装置であって、
前記飲食物が収容された収容容器を複数収納する収納ケースと、
前記収容容器において前記飲食物を該収容容器の中に収容するために設けられた収容口を閉塞する閉塞栓を取り囲むように配置されることで、該閉塞栓を密封する密封手段と、
を備え、
前記密封手段は、前記閉塞栓を密封する密封部材と、複数の該密封部材を剛に連結する剛性部材と、を有し、前記収納ケースに収納された複数の前記収容容器の前記閉塞栓を密封する複数の前記密封部材が前記剛性部材によって連結されることで、前記収納ケースに収納された複数の前記収容容器の前記閉塞栓が纏めて密封される、
水中貯蔵装置。
【請求項2】
前記収納ケースは、前記密封手段を係止可能に構成された開口部を有し、
前記密封手段は、前記開口部に係合可能に構成された係合部を有し、
前記係合部が前記開口部に係止されることで、前記密封手段が前記収納ケースに固定される、
請求項1に記載の水中貯蔵装置。
【請求項3】
前記剛性部材は、
前記収容容器の前記収容口近傍が挿入される第1挿入孔と、前記密封部材が固定される固定部と、を有する一組の保持構造が複数形成されたプレートにより構成され、
前記プレートの一方の平面である下面の側から前記第1挿入孔に挿入された前記収容容器が、前記プレートの他方の平面である上面の側に固定された前記密封部材により保持される、
請求項1に記載の水中貯蔵装置。
【請求項4】
前記収納ケースは、前記密封手段を係止可能に構成された開口部を有し、
前記密封手段の前記プレートの側面が前記開口部に係合することで、前記密封手段が前記収納ケースに固定される、
請求項3に記載の水中貯蔵装置。
【請求項5】
前記密封部材は、
カップ状に構成され、その内面に雌ねじが形成されたキャップ部と、
所定のフランジ形状に対して凸に形成された突起を有し、該突起の側面に雄ねじが形成されたベース部と、
前記ベース部の前記雄ねじが前記キャップ部の前記雌ねじに締結されることで生じる締結力によって変形することで、前記収容容器の前記閉塞栓を密封するシール部と、を有する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の水中貯蔵装置。
【請求項6】
前記キャップ部は、その内面に、前記カップ状の開口側に形成された前記雌ねじ、及び該カップ状の底面側に形成され前記収容容器の前記収容口近傍が挿入される第2挿入孔により構成される段付き孔を有し、
前記ベース部は、前記収容容器の前記収容口近傍が挿入される第3挿入孔を有し、
前記シール部は、
リング状に形成され、前記ベース部における前記雄ねじの前記第3挿入孔の側と、前記収容容器における前記収容口近傍の外面と、の間で、その上面が前記キャップ部に当接し、その下面が前記ベース部に当接するように配置され、
前記締結力によって変形することで、その上面が、前記キャップ部の前記段付き孔において前記雌ねじと前記第2挿入孔とを繋ぐ肩部に密着し、その内側面が、前記収容容器における前記収容口近傍の外面に密着することで、前記キャップ部の前記第2挿入孔により構成される空間であって前記収容容器の前記閉塞栓を取り囲む空間を密封する、
請求項5に記載の水中貯蔵装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の水中貯蔵装置を用いて、所定の飲食物を水中に貯蔵する方法であって、
前記収容容器を前記収納ケースに収納するステップと、
前記密封手段において、前記ベース部を前記剛性部材に固定するステップと、
前記ベース部と前記剛性部材とが一体化された前記密封手段の部分構成に対して、一組の前記収容容器及び前記シール部を所定の位置に配置するステップと、
前記キャップ部を前記ベース部に締結するステップと、
前記密封手段によって複数の前記閉塞栓が纏めて密封された複数の前記収容容器が収納された前記収納ケースを水中に沈めるステップと、を有する。
【請求項8】
前記キャップ部を前記ベース部に締結するステップは、
締結トルクに関するデータを外部に通信可能に構成された所定の工具を用いて、前記キャップ部を前記ベース部に締結する第1ステップと、
前記第1ステップにおける締結トルクに関する第1データを、前記工具から所定の情報処理装置に送信する第2ステップと、
前記情報処理装置によって、前記第1データが記憶される第3ステップと、
前記情報処理装置によって、前記第1データに基づく締結トルクが、前記水中貯蔵装置が設置される水中環境に応じて予め設定されたトルク範囲に属しているか否かが判定される第4ステップと、
前記情報処理装置によって、前記第4ステップにおける判定結果が所定のユーザ端末に送信される第5ステップと、を含む、
請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中貯蔵装置及びそれを用いた飲食物の水中貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品や飲料などの飲食物を海底で貯蔵することで、その飲食物を熟成させる技術が知られている。そして、海底のような水中環境下での飲食物の貯蔵では、地上で飲食物を貯蔵する場合と比べて飲食物に様々な作用が加わるため、その飲食物の熟成において地上とは異なる効果が得られることが期待されている。
【0003】
ここで、上記の飲食物として酒類を例にすると、清酒やワイン等の酒類は、酸化しやすく、また、その貯蔵場所の環境の変化(日光の照射、温度や湿度の変化等)が味と香に大きな影響を及ぼしてしまうことが知られている。そして、このような酒類の熟成において、従来から地上で行われている工程では、該酒類が収容された容器内部の酒を定期的に手動又は機械的に攪拌することで熟成を促進させる場合がある。また、攪拌による熟成の促進においては、酒類が収容された容器を海底に貯蔵することで該容器に潮流による振動を与え、自然の力で容器内部の酒を攪拌させ熟成を促進させる場合がある。
【0004】
そして、例えば、特許文献1には、水中地面に設置される水中貯蔵庫において、水流の強い流れから内容物を保護しつつ適切な振動を内容物に伝える技術が開示されている。この技術によれば、貯蔵本体を囲繞する遮蔽壁材を構成要素とする遮蔽壁の存在により、貯蔵本体に収容する食品組成物等が収納された包装用容器や養殖に供する水生生物に強い水流が直接当たることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-137473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品や飲料などの飲食物が収容された収容容器に潮流等による振動を与え、自然の力で容器内部の飲食物を攪拌させ熟成を促進させる場合、強い振動が該容器に加わり収容容器間で衝突が起こるなどして、水中に貯蔵された収容容器が破損してしまう虞がある。ここで、特許文献1に記載の技術によれば、水中地面に設置される遮蔽壁の存在により、食品組成物等が収納された包装用容器の破損や流出が抑制され得る。しかしながら、当該技術では、貯蔵本体に別部材の遮蔽壁が設けられるため、水中に沈める構造物の構成が比較的複雑になってしまう。また、このような構成を有する構造物を水中に沈める際には、その作業性が悪化してしまう虞がある。
【0007】
また、飲食物が収容された収容容器を水中に貯蔵するためには、該容器内に水が混入しないように対策を行う必要がある。特に、収容容器が、海底等の水深が深い水中に貯蔵される場合には、水圧の影響により該容器内に水が混入し易くなり、仮に容器内の飲食物に水が混入してしまった場合には、飲食物を好適に熟成させることができないばかりか、該飲食物の商品価値が損なわれてしまう。そこで、例えば、収容容器の口部分をロウ付けにより封止することが考えられる。しかしながら、海底等の水圧が高い水中環境において容器内に水が混入しないようにロウ付けする技術は、素材の配合にノウハウを要し、また、厳密に封止するための作業工程が多くなる傾向にある。そのため、作業性が良く、且つ好適に防水できる技術が望まれていた。このように、飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させるための技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の水中貯蔵装置は、所定の飲食物を水中に貯蔵するための水中貯蔵装置である。そして、この水中貯蔵装置は、前記飲食物が収容された収容容器を複数収納する収納ケースと、前記収容容器において前記飲食物を該収容容器の中に収容するために設けられた収容口を閉塞する閉塞栓を取り囲むように配置されることで、該閉塞栓を密封する密封手段と、を備える。前記密封手段は、前記閉塞栓を密封する密封部材と、複数の該密封部材を剛に連結する剛性部材と、を有し、前記収納ケースに収納された複数の前記収容容器の前記閉塞栓を密封する複数の前記密封部材が前記剛性部材によって連結されることで、前記収納ケースに収納された複数の前記収容容器の前記閉塞栓が纏めて密封される。
【0010】
上記の水中貯蔵装置では、収納ケースに収納され、密封手段によって複数の閉塞栓が纏めて密封された複数の収容容器が水中に貯蔵されることで、該収容容器に収容された所定の飲食物が熟成される。ここで、上記の飲食物とは、比較的長い期間(数ヶ月~数年)熟成可能な発酵食品等であって、例えば、ワインや清酒、醤油、味噌などである。そして、上記の密封手段が有する剛性部材は、収容容器の閉塞栓を取り囲むように配置される密封部材を剛に連結し、これに伴って、密封手段によって纏めて密封される複数の収容容器は、該収容容器同士が接触しない程度の間隔をもって固定される。そうすると、例えば、水中貯蔵装置が海底に貯蔵された場合に、密封手段や収容容器が潮流による外力を受けたとしても、収納ケースに収納された収容容器同士が接触してしまう事態が抑制される。これによれば、水中で貯蔵中の収容容器の破損や流出が抑制され、以て、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。また、このように収容容器が固定されると、収容容器を水中貯蔵する際の作業工程において、複数の収容容器を1本ずつワイヤー等で固定する必要がなくなり、飲食物を水中貯蔵する際の作業性が向上する。なお、本開示の水中貯蔵装置では、上記の構成において、前記密封手段が前記収納ケースに固定されてもよい。詳しくは、前記収納ケースは、前記密封手段を係止可能に構成された開口部を有し、前記密封手段は、前記開口部に係合可能に構成された係合部を有し、前記係合部が前記開口部に係止されることで、前記密封手段が前記収納ケースに固定される。これによれば、密封手段によって纏められた複数の収容容器が、収納ケースの中で移動してしまう事態が抑制される。そうすると、複数の収容容器が収納された収納ケースを水中に沈下する工程や、該収納ケースを水中で貯蔵する工程において、収容容器の破損や流出が抑制され、以て、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【0011】
ここで、本開示の水中貯蔵装置では、上記の構成において、前記密封部材は、カップ状に構成され、その内面に雌ねじが形成されたキャップ部と、所定のフランジ形状に対して凸に形成された突起を有し、該突起の側面に雄ねじが形成されたベース部と、前記ベース部の前記雄ねじが前記キャップ部の前記雌ねじに締結されることで生じる締結力によって変形することで、前記収容容器の前記閉塞栓を密封するシール部と、を有してもよい。このような構成では、上記のねじの締結で生じる締結力によってシール部が変形し、その変形したシール部が収容容器やキャップ部、ベース部に密着することで、密封部材と収容容器及びその閉塞栓とによって画定される空間であって閉塞栓を取り囲む空間が密封される。そうすると、閉塞栓を取り囲むように配置される密封部材によって、好適に防水することができ、海底等の水圧が高い水中環境においても、容器内に水が混入してしまう事態を抑制することができる。また、このような密封構造によれば、収容容器の閉塞栓を取り囲むように1本1本ロウ付けする場合と比較して、その作業性を改善することができる。
【0012】
また、本開示は、上述したキャップ部、ベース部、及びシール部を有する密封部材を備えた水中貯蔵装置を用いて、所定の飲食物を水中に貯蔵する、飲食物の水中貯蔵方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の飲食物の水中貯蔵方法は、前記収容容器を前記収納ケースに収納するステップと、前記密封手段において、前記ベース部を前記剛性部材に固定するステップと、前記ベース部と前記剛性部材とが一体化された前記密封手段の部分構成に対して、一組の前記収容容器及び前記シール部を所定の位置に配置するステップと、前記キャップ部を前記ベース部に締結するステップと、前記密封手段によって複数の前記閉塞栓が纏めて密封された複数の前記収容容器が収納された前記収納ケースを水中に沈めるステップと、を有する。そして、前記キャップ部を前記ベース部に締結するステップは、締結トルクに関するデータを外部に通信可能に構成された所定の工具を用いて、前記キャップ部を前記ベース部に締結する第1ステップと、前記第1ステップにおける締結トルクに関する第1データを、前記工具から所定の情報処理装置に送信する第2ステップと、前記情報処理装置によって、前記第1データが記憶される第3ステップと、前記情報処理装置によって、前記第1データに基づく締結トルクが、前記水中貯蔵装置が設置される水中環境に応じて予め設定されたトルク範囲に属しているか否かが判定される第4ステップと、前記情報処理装置によって、前記第4ステップにおける判定結果が所定のユーザ端末に送信される第5ステップと、を含んでもよい。これによれば、キャップ部をベース部に締結する締結トルクが好適に管理されるため、密封手段による防水構造が作業者によらず実現できる。また、水中貯蔵された各収容容器についての第1データが情報処理装置に保存されることで、該データがユーザ端末に保存される場合と比較してデータの改ざんを可及的に抑制できる。そのため、仮に、予期せぬ事態等により収容容器内に水が混入してしまったとしても、その原因を解明し易くなる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における水中貯蔵装置の概略構成を示す図である。
図2】プレートへの密封部材およびワインボトルの固定方法を説明するための図である。
図3】収納ケースへの密封手段の固定方法の一例を示す図である。
図4】密封部材によるコルクの密封構造について説明するための図である。
図5】ワインボトルを水中貯蔵する際の作業工程として、複数のワインボトルが収納された収納ケースを水中に沈下して海底に設置された海底構造物に配置する工程を説明するための図である。
図6】第2実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。
図7】第2実施形態における、情報処理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
図8】第2実施形態における情報処理システムの動作の流れを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態における水中貯蔵装置の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における水中貯蔵装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る水中貯蔵装置1は、所定の飲食物を水中に貯蔵するための水中貯蔵装置である。ここで、本実施形態では、上記の飲食物としてワインを例にして説明する。また、水中貯蔵装置1を海底に沈下する例について説明する。水中貯蔵装置1は、ワイン(本開示の飲食物)が収容されたワインボトル10(本開示の収容容器)を複数収納する収納ケース2と、ワインボトル10の注ぎ口11(本開示の収容口)を閉塞するコルク12(本開示の閉塞栓)を取り囲むように配置されることで、該コルク12を密封する密封手段3と、を備える。
【0017】
収納ケース2には、ビール瓶等を収納可能に構成された周知の瓶ケースを用いることができ、該収納ケース2に収納される複数のワインボトル10を仕切るための仕切り板が設けられている。ここで、収納ケース2の側面には、スロット状の開口が設けられており、これにより、収納ケース2が水中に貯蔵されたときに該収納ケース2内に通水される。そうすると、収納ケース2に収納されたワインボトル10に、潮流による振動を与えることができる。また、海水で生息するフジツボなどを自然にワインボトル10に固着させることができ、海底で貯蔵されたワインの特別感やビンテージ感を演出することができる。
【0018】
密封手段3は、ワインボトル10のコルク12を密封する密封部材30と、複数の該密封部材30を剛に連結するプレート40(本開示の剛性部材)と、を有する。そして、図1に示すように、収納ケース2に収納される複数のワインボトル10のコルク12を密封する複数の密封部材30がプレート40によって連結されることで、収納ケース2に収納される複数のワインボトル10のコルク12が纏めて密封される。これについて、図2に基づいて以下に詳しく説明する。
【0019】
図2は、プレート40への密封部材30およびワインボトル10の固定方法を説明するための図である。なお、図2では、説明のため1組の密封部材30およびワインボトル10のみを図示している。密封手段3およびワインボトル10を真上から見た平面図である図2(a)に示すように、プレート40には、ワインボトル10の注ぎ口近傍11aが挿入される第1挿入孔41aと、密封部材30が固定される雌ねじ41b(本開示の固定部)と、を有する一組の保持構造41が複数形成される。また、プレート40には、水を通すための通水孔42が形成される。
【0020】
そして、密封手段3およびワインボトル10を正面から見た正面図である図2(b)に示すように、プレート40の一方の平面である下面40bの側から第1挿入孔41aに挿入されるワインボトル10が、プレート40の他方の平面である上面40aの側に固定される密封部材30により保持される。ここで、図2(c)に示すように、密封部材30には、ボルト穴と座面とを有する締結部30aが設けられており、該締結部30aとプレート40の雌ねじ41bとが締結ボルト5によって締結されることで、密封部材30がプレート40に固定されることになる。また、ワインボトル10は、密封部材30によるコルク12の密封構造に伴って該密封部材30に保持されることになるが、その詳細については後述する。
【0021】
そして、図2に示した固定方法が複数のワインボトル10に適用されることで、収納ケース2に収納される複数のワインボトル10のコルク12が、密封手段3によって纏めて密封されることになる。ここで、上記の保持構造41は、収納ケース2に収納されるワインボトル10同士が接触しない程度の間隔をもってプレート40に形成される。また、ワインボトル10を保持する密封部材30が固定されるプレート40は、所定の剛性(例えば、海底における潮流による外力を受けても変形しない程度の剛性)を実現可能な形状、材料(例えば、耐食ステンレス鋼やチタン合金などの海水に対する耐食性を有する金属や、ポリフェニレンスルフィドなどの比較的剛性が高いエンジニアリングプラスチック)によって構成される。そうすると、水中貯蔵装置1が海底に貯蔵されたときに、密封手段3やワインボトル10が潮流による外力を受けたとしても、収納ケース2に収納されたワインボトル10同士が接触してしまう事態が抑制される。これによれば、海底で貯蔵中のワインボトル10の破損や流出が抑制され、以て、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【0022】
また、上述したようにして保持される複数のワインボトル10は、プレート40によって所定の間隔で並んで固定される。そのため、ワインボトル10を水中貯蔵する際の作業工程において、複数のボトルを1本ずつワイヤー等で固定する必要がなくなり、飲食物を水中貯蔵する際の作業性が向上する。
【0023】
なお、本実施形態では、プレート40によって密封部材30が連結される例について説明したが、本開示の剛性部材をこれに限定する意図はなく、密封部材30を固定することができ且つ複数の密封部材30を剛に連結することができるものであれば、例えば、梁による骨組みにより構成される構造体であってもよく、その態様は問わない。
【0024】
ここで、以上に述べた水中貯蔵装置1においては、密封手段3が収納ケース2に固定されてもよい。これについて、図3に基づいて以下に詳しく説明する。
【0025】
図3は、収納ケース2への密封手段3の固定方法の一例を示す図である。図3(a)に示すように、収納ケース2は、ワインボトル10の収納口となる開口部20を有する。そして、密封手段3のプレート40の側面40cが開口部20に係合することで、図3(b)に示すように、密封手段3が収納ケース2に固定される。詳しくは、矩形に構成される開口部20の縦横長さが、矩形に構成されるプレート40の縦横長さよりも小さくなっていて、該開口部20に該プレート40が嵌め込まれると、収納ケース2の弾性によりプレート40が締められる所謂しまりばめによって、開口部20の内面20aがプレート40の側面40cを押さえ込むことで、密封手段3が収納ケース2に固定される。
【0026】
これによれば、密封手段3によって纏められた複数のワインボトル10が、収納ケース2の中で移動してしまう事態が抑制される。そうすると、複数のワインボトル10が収納された収納ケース2を海底に沈下する工程や、該収納ケース2を海底で貯蔵する工程において、ワインボトル10の破損や流出が抑制され、以て、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【0027】
なお、プレート40に代えて、例えば、上述した梁による骨組みにより構成される構造体が用いられる場合においても、該構造体が開口部20の内面20aにより押さえ込まれることで、該構造体が収納ケース2に固定され得る。
【0028】
また、図3では、開口部20の内面20aがプレート40の側面40cを押さえ込むことで、密封手段3が収納ケース2に固定される例について説明したが、プレート40と収納ケース2とがボルトで締結されることで、密封手段3が収納ケース2に固定されてもよい。この場合、プレート40の側面40cに雌ねじが形成され、収納ケース2の外面から該収納ケース2を挟んで該雌ねじにボルトを締結することで、密封手段3を収納ケース2に固定することができる。
【0029】
次に、密封部材30によるコルク12の密封構造について、図4に基づいて以下に説明する。本開示の水中貯蔵装置では、密封部材が収容容器(ワインボトル10)の収容口を閉塞する閉塞栓(コルク12)を取り囲むように配置されることで、該閉塞栓(コルク12)が密封される。例えば、飲料水のPETボトルのように、注ぎ口がねじ式のキャップによって閉塞される容器は、該容器が水中に貯蔵されるとそのままでは水圧により該容器内に水が混入する虞がある。また、ワインボトル10のように、注ぎ口11がコルク12によって閉塞される容器であっても、該容器が海底等の水深が深い水中に貯蔵される場合には、水圧の影響によりコルク12が移動し、そのままでは該容器内に水が混入する虞がある。ここで、従来技術によれば、収容容器の収容口を閉塞する閉塞栓を取り囲むようにロウ付けすることで、該閉塞栓を密封する方法が開示されているが、海底等の水圧が高い水中環境において容器内に水が混入しないようにロウ付けする技術は、素材の配合にノウハウを要し、また、厳密に封止するための作業工程が多くなる傾向にある。そこで、本開示では、閉塞栓を取り囲むように配置される新たな構造を有する密封部材によって、作業性が良く、且つ好適に防水できる技術を提供する。
【0030】
図4は、密封部材30によるコルク12の密封構造について説明するための図である。なお、図4では、説明のためプレート40の図示を省略している。本実施形態の密封部材30は、図4(a)に示すように、カップ状に構成されたキャップ部31と、フランジ形状32bに対して凸に形成された突起の側面に雄ねじ32aが形成されたベース部32と、変形によってワインボトル10のコルク12を密封するシール部33と、を有する。
【0031】
そして、図4(b)に示すように、キャップ部31は、その内面に、カップ状の開口側に形成された雌ねじ31a、および該カップ状の底面側に形成されワインボトル10の注ぎ口近傍11aが挿入される第2挿入孔31bにより構成される段付き孔を有する。また、ベース部32は、ワインボトル10の注ぎ口近傍11aが挿入される第3挿入孔32cを有する。そして、このように構成される密封部材30において、ベース部32の雄ねじ32aがキャップ部31の雌ねじ31aに締結される。なお、キャップ部31の外面には、図4(a)に示すように、六角部31dが形成されていて、所定の工具を該六角部31dに装着することで、キャップ部31とベース部32とを締結することができる。
【0032】
ここで、シール部33は、リング状に形成され、ベース部32における雄ねじ32aの第3挿入孔32cの側と、該第3挿入孔32cに挿入されたワインボトル10における注ぎ口近傍11aの外面と、の間に配置される。このとき、リング状のシール部33の上面(上記の如く配置された状態における、ワインボトル10の注ぎ口11の側の面)が、キャップ部31に当接するように配置される。詳しくは、シール部33の上面は、キャップ部31の上記段付き孔において雌ねじ31aと第2挿入孔31bとを繋ぐ肩部31cに当接する。また、リング状のシール部33の下面はベース部32に当接する。
【0033】
このようにシール部33が配置された状態においては、該シール部33は、ベース部32の雄ねじ32aがキャップ部31の雌ねじ31aに締結されることで生じる締結力によって変形することになる。ここで、シール部33は、例えば、ボリカーボネイトのように、所定の弾性率と強度とを有する材料によって形成される。そうすると、上記の締結力によって変形したシール部33は、その上面がキャップ部31の肩部31cに密着し、その内側面がワインボトル10における注ぎ口近傍11aの外面に密着することになる。なお、シール部33は、ボリカーボネイトにガラス繊維を含んで形成されてもよい。これによれば、より大きな締結力に対して、シール部33が破損し難くなる。
【0034】
一方で、水中において、ワインボトル10の注ぎ口11へ水が浸入する経路について考えると、ベース部32の第3挿入孔32cからワインボトル10の外面に沿って浸入する第1経路と、キャップ部31とベース部32とのねじの噛合い部を通ってキャップ部31の第2挿入孔31bに浸入する第2経路と、が考えられる。これに対して、本実施形態における密封構造によれば、シール部33の内側面がワインボトル10における注ぎ口近傍11aの外面に密着することによって、上記の第1経路から水が浸入してしまう事態が抑制される。更に、シール部33の上面がキャップ部31の肩部31cに密着することによって、上記の第2経路から水が浸入してしまう事態が抑制される。これにより、キャップ部31の第2挿入孔31bにより構成される空間であって、ワインボトル10の注ぎ口11を閉塞するコルク12を取り囲む空間(図4(b)に示す密封空間)を密封することができる。そうすると、閉塞栓を取り囲むように配置される密封部材によって、好適に防水することができ、海底等の水圧が高い水中環境においても、容器内に水が混入してしまう事態を抑制することができる。
【0035】
更に、本実施形態における密封構造によれば、ワインボトル10の注ぎ口11を閉塞するコルク12を取り囲むように1本1本ロウ付けする場合と比較して、その作業性を改善することができる。本実施形態では、上述したようにしてシール部33を配置して、予め定められた所定の工具を用いて、キャップ部31の六角部31dを所定のトルクで締結すれば、好適な防水構造が作業者によらず実現できる。言い換えれば、上述したような比較的簡単な作業手順が予め定められることで、作業性が良く、且つ好適に防水できる技術が提供され得る。
【0036】
また、ワインボトル10は、上述した密封構造に伴って密封部材30に保持されることになる。そして、複数のワインボトル10を保持する複数の密封部材30がプレート40によって連結される。そうすると、複数のワインボトル10が纏めて固定されることになり、飲食物を水中貯蔵する際の作業性が向上する。
【0037】
以上に述べた水中貯蔵装置1によれば、飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【0038】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、所定の飲食物を水中に貯蔵するための水中貯蔵装置について説明した。本実施形態では、第1実施形態の説明で述べた水中貯蔵装置を用いて、所定の飲食物を水中に貯蔵する方法について説明する。なお、本実施形態でも、第1実施形態と同様にワインを海底に貯蔵する例について説明する。
【0039】
本実施形態における飲食物の水中貯蔵方法は、ワインボトル10を収納ケース2に収納するステップと、密封手段3において、ベース部32をプレート40に固定するステップと、ベース部32とプレート40とが一体化された密封手段の部分構成に対して、一組のワインボトル10及びシール部33を所定の位置に配置するステップと、キャップ部31をベース部32に締結するステップと、密封手段3によって複数のコルク12が纏めて密封された複数のワインボトル10が収納された収納ケース2を水中に沈めるステップと、を有する。
【0040】
ここで、ベース部32をプレート40に固定するステップは、上記の図2の説明で述べたため省略する。また、ベース部32とプレート40とが一体化された密封手段の部分構成に対して、一組のワインボトル10及びシール部33を所定の位置に配置するステップは、上記の図4の説明で述べたため省略する。そして、密封手段3によって複数のコルク12が纏めて密封された複数のワインボトル10が収納された収納ケース2を水中に沈めるステップについて、図5に基づいて以下に説明する。なお、キャップ部31をベース部32に締結するステップについては後述する。
【0041】
図5は、ワインボトル10を水中貯蔵する際の作業工程として、複数のワインボトル10が収納された収納ケース2を水中に沈下して海底に設置された海底構造物に配置する工程を説明するための図である。収納ケース2を水中に沈めるステップでは、先ず、複数の収納ケース2がコンテナ51に格納される。このように複数の収納ケース2が纏めて格納されることで、水中で収納ケース2が移動してしまう事態が抑制される。また、コンテナ51は、例えば、梁による骨組みにより構成される構造体であって、該構成により、水中でコンテナ51内が通水される。そして、このようなコンテナ51は、船舶からクレーン等により吊り下げられながら水中に沈下される。
【0042】
ここで、第1実施形態の説明で述べたように、収納ケース2の開口部20は、プレート40によって蓋をされるが、収納ケース2が水中に沈められる途中で、プレート40の下面40bに沈下速度に応じた流体抵抗が生じ、プレート40を有する密封手段3、およびこれに保持されるワインボトル10が、収納ケース2から浮かび上がる虞がある。そこで、本実施形態の水中貯蔵装置1では、第1実施形態の説明で述べたように、プレート40に通水孔42が形成される。これにより、プレート40の下面40bに当たる流体を、通水孔42を介して上面40aの側に導くことができ、収納ケース2の沈下中に密封手段3やワインボトル10が浮いてしまう事態が抑制される。
【0043】
そして、水中に沈下されたコンテナ51は、海底に設置された海底構造物52に格納される。ここで、海底構造物52は、自重(海底構造物52の重量は、例えば500kg)と、アンカー53(例えば、重量2トンの重量物)およびロープ54(例えば、その径が20mmの定置網用のロープ)による固定構造と、により海底に固定される。なお、図5には図示していないが、海底構造物52の上面、下面、および側面は通水可能なフェンスにより囲まれる。これにより、コンテナ51が流出してしまう事態が抑制される。また、海底構造物52の上面のフェンスは、開閉可能に構成されるとともに錠により固定可能に構成されることで、水中貯蔵装置1の盗難防止が図られる。
【0044】
次に、キャップ部31をベース部32に締結するステップについて説明する。このステップは、締結トルクに関するデータを外部に通信可能に構成された所定の工具を用いて、キャップ部31をベース部32に締結する第1ステップと、第1ステップにおける締結トルクに関する第1データを、前記工具から所定の情報処理装置に送信する第2ステップと、前記情報処理装置によって、第1データが記憶される第3ステップと、前記情報処理装置によって、第1データに基づく締結トルクが、水中貯蔵装置1が設置される水中環境に応じて予め設定されたトルク範囲に属しているか否かが判定される第4ステップと、前記情報処理装置によって、第4ステップにおける判定結果が所定のユーザ端末に送信される第5ステップと、を含む。そして、これらステップは、所定の情報処理システムによって実現される。以下に、本実施形態に係る飲食物の水中貯蔵方法における情報処理システムについて説明する。
【0045】
第2実施形態における情報処理システムの概要について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る情報処理システム100は、ネットワーク200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、を含んで構成される。
【0046】
ネットワーク200は、例えば、IPネットワークである。ネットワーク200は、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、無線による通信であれば、ユーザ端末400は、無線LANアクセスポイント(不図示)にアクセスし、LANやWANを介してサーバ300と通信してもよい。また、ネットワーク200は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0047】
サーバ300は、ネットワーク200を介して、ユーザ端末400と接続される。なお、図1において、説明を簡単にするために、サーバ300は1台、ユーザ端末400は4台示してあるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0048】
サーバ300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、その他電子機器であってもよい。すなわち、サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0049】
また、サーバ300は、本実施形態に係る情報処理システム100専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0050】
ユーザ端末400は、情報処理システム100を利用するユーザが保有する電子機器であればよく、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等、その他端末機器であってもよい。
【0051】
次に、図7に基づいて、主にサーバ300の構成要素の詳細な説明を行う。図7は、第2実施形態における、情報処理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。
【0052】
サーバ300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0053】
ここで、通信部301は、サーバ300をネットワーク200に接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。サーバ300は、通信部301を介して、ユーザ端末400やその他の外部装置と通信可能に接続される。
【0054】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。また、記憶部302は、ユーザ端末400等から送信されたデータを記憶する。なお、サーバ300は、通信部301を介してユーザ端末400等から送信されたデータを取得する。
【0055】
制御部303は、サーバ300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、取得部3031と、判定部3032と、通知部3033と、の3つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0056】
取得部3031は、キャップ部31をベース部32に締結する作業ユーザが、所定の工具を用いて締結作業を行ったとき(第1ステップ)の、その締結トルクに関するデータを取得する。ここで、上記の工具とは、締結トルクに関するデータを外部に通信可能に構成された工具であって、例えば、無線式データ送信型のトルクレンチである。そうすると、取得部3031は、上記の工具から送信された第1ステップにおける締結トルクに関する第1データを、通信部301を介して取得する。そして、取得部3031は、取得した第1データを記憶部302に記憶させる。
【0057】
ここで、ワインボトル10のコルク12を密封し、水中で該コルク12を好適に防水するためには、シール部33を破損させることなく変形させる必要がある。したがって、キャップ部31をベース部32に締結する締結トルクが管理される。そこで、本実施形態では、キャップ部31をベース部32に締結する締結トルクの目標値として、目標トルク範囲が、水中貯蔵装置1が設置される水中環境に応じて予め設定される。例えば、サーバ300の記憶部302には、水中貯蔵装置1が設置される水深に応じた目標トルク範囲が、データベースとして登録される。そうすると、サーバ300は、作業ユーザのユーザ端末400に目標トルク範囲を送信することができる。
【0058】
ここで、ユーザ端末400は、機能部として通信部401、入出力部402、記憶部403を有している。通信部401は、ユーザ端末400をネットワーク200に接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部402は、通信部401を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部401を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部403は、サーバ300の記憶部302と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0059】
入出力部402は、更に、表示部4021、操作入力部4022を有している。表示部4021は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部4022は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。
【0060】
そして、判定部3032は、第1データに基づく締結トルクが、上述した目標トルク範囲に属しているか否かを判定する。そして、通知部3033が、上記の判定結果を作業ユーザのユーザ端末400に送信する。ここで、判定部3032が否定した場合、即ち、第1データに基づく締結トルクが目標トルク範囲に属していない場合には、通知部3033は、その旨の警告を通知するとともに、シール部33を交換して再度第1ステップを実行するよう指示を通知することができる。なお、上記の作業ユーザは、実際にキャップ部31をベース部32に締結する作業者を監督する監督者であってもよい。また、このような監督者は、実際の作業場で監督する現場監督者と、該作業場とは異なる場所から遠隔で監督する遠隔監督者と、を含んでもよい。この場合、例えば、現場監督者が、ユーザ端末400に通知された情報に基づいて作業者に指示を与え、遠隔監督者は、現場監督者が装着するスマートグラス等を介して現場の映像と音声を取得することで、現場監督者を補助することができる。
【0061】
ここで、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れについて説明する。図8は、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れを例示する図である。図8では、本実施形態における情報処理システム100における各構成要素間の動作の流れ、および各構成要素が実行する処理を説明する。
【0062】
本実施形態では、先ず、作業ユーザによって、ユーザ端末400に水中貯蔵装置1の設置環境(水中貯蔵装置1が設置される水中環境)が入力される(S101)。ここで、入力される水中貯蔵装置1の設置環境とは、例えば、水中貯蔵装置1が設置される水深データである。そして、入力されたデータはサーバ300に送信され、サーバ300が該データを取得する(S102)。
【0063】
次に、サーバ300によって、上述した目標トルク範囲が算出される(S103)。サーバ300の記憶部302には、水中貯蔵装置1が設置される水深に応じた目標トルク範囲が、データベースとして登録されていて、サーバ300は、S102の処理で取得した水深データと、該データベースと、に基づいて、目標トルク範囲を算出する。例えば、水深と目標トルク範囲との相関を実験等に基づいて予め求め、その相関をマップまたは関数として記憶部302に予め記憶させる。そして、サーバ300が、このマップまたは関数を用いて目標トルク範囲を算出する。このようにして算出された目標トルク範囲は、サーバ300からユーザ端末400に送信され(S104)、ユーザ端末400は、取得した目標トルク範囲を表示部4021に表示させる(S105)。これにより、作業ユーザは、目標トルク範囲を把握して、キャップ部31をベース部32に締結する作業を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、ユーザ端末400に予めインストールされた所定のアプリにより、ワインボトル10毎の締結・非締結を管理するユーザインタフェースが提供される。例えば、ユーザ端末400の表示部4021には、収納ケース2に収納される複数のワインボトル10のIDが(ワインボトル10の配置画像等とともに)表示される。そして、作業ユーザは、各ワインボトル10のキャップ部31をベース部32に締結する前に、上記のユーザインタフェースでこれから締結しようとするワインボトル10を選択する。そうすると、作業ユーザによって所定のワインボトル10のキャップ部31が締結され、その第1データが上記の工具からサーバ300に送信されるのに併せて、収納ケース2に収納される複数のワインボトル10の中で今回締結されたワインボトル10のIDが、ユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0065】
サーバ300は、このようにして第1データを取得し(S106)、取得した第1データを記憶部302に記憶させる。本実施形態では、サーバ300は、各ワインボトル10のIDと対応づけて第1データを記憶する。そうすると、サーバ300には、水中貯蔵されている複数のワインボトル10夫々について、締結トルクに関する第1データが保存されることになる。
【0066】
更に、サーバ300は、第1データに基づく締結トルクが、S103の処理で算出した目標トルク範囲に属しているか否かを判定する(S107)。そして、サーバ300は、上記の判定結果をユーザ端末400に送信する(S108)。そうすると、ユーザ端末400に判定結果が表示される(S109)。
【0067】
以上に述べた処理によれば、キャップ部31をベース部32に締結する締結トルクが好適に管理されるため、密封手段3による防水構造が作業者によらず実現できる。また、水中貯蔵された各ワインボトル10についての第1データがサーバ300に保存されることで、該データがユーザ端末400に保存される場合と比較してデータの改ざんを可及的に抑制できる。そのため、仮に、予期せぬ事態等によりワインボトル10内に水が混入してしまったとしても、その原因を解明し易くなる。
【0068】
以上に述べた飲食物の水中貯蔵方法によれば、飲食物を水中貯蔵する際の作業性を向上させ、且つ、海底等の水中環境下において飲食物を好適に熟成させることができる。
【0069】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、ワインが収容されたワインボトル10を水中に貯蔵する例について説明したが、本開示の水中貯蔵装置を用いて水中貯蔵される飲食物は、味噌のような固形物であってもよい。このように、水中で熟成される飲食物が固形物である場合にも、上記の実施形態と同様に、該飲食物が収容された複数の収容容器が収納ケースに収納される。このとき、収容容器の収容口を閉塞する閉塞栓は、PETボトル等に用いられるねじ式のキャップであってもよく、この場合、このねじ式キャップを取り囲むように密封手段が配置されることで、閉塞栓を密封することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・・水中貯蔵装置
2・・・・・収納ケース
3・・・・・密封手段
10・・・・ワインボトル
12・・・・コルク
30・・・・密封部材
40・・・・プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8