(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116507
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】防炎性シーリング材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220803BHJP
C03C 27/08 20060101ALI20220803BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C09K3/10 Q
C09K3/10 F
C03C27/08 Z
E04F13/08 101Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012695
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】平橋 恵
(72)【発明者】
【氏名】濱田 有紀子
【テーマコード(参考)】
2E110
4G061
4H017
【Fターム(参考)】
2E110GB17Z
4G061AA09
4G061AA25
4G061BA01
4G061CD02
4G061CD25
4H017AA04
4H017AA22
4H017AB14
4H017AC01
4H017AD06
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】柔軟性を確保しながら、防炎性能を従来レベル以上に向上するようにした防炎性シーリング材を提供する。
【解決手段】二酸化ケイ素を80質量%以上、かつ酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含む無機粉体を含有する、ポリサルファイド系の防炎性シーリング材である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素を80質量%以上、かつ酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含む無機粉体を含有する防炎性シーリング材。
【請求項2】
前記無機粉体のモース硬度が7以上、軟化温度が1200℃以上である請求項1に記載の防炎性シーリング材。
【請求項3】
前記無機粉体の平均粒子径が0.1~100μmである請求項1または2に記載の防炎性シーリング材。
【請求項4】
複層ガラス用2次シーリング材に使用する請求項1~3のいずれかに記載の防炎性シーリング材。
【請求項5】
25℃から1000℃までの熱重量分析により求められる重量残存率が40%以上である請求項1~4のいずれかに記載の防炎性シーリング材。
【請求項6】
厚さ2mmの矩形シートの角に着火したとき、炎の最大高さが3cm以下である請求項1~5のいずれかに記載の防炎性シーリング材。
【請求項7】
ポリサルファイドを含有する請求項1~6のいずれかに記載の防炎性シーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防炎性シーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築材料の接合部や複層ガラス間のシールに水密や気密の目的でシーリング材が用いられる。このようなシーリング材として、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系およびポリウレタン系等が知られている。しかし、これらは火災などに際し、高温下に曝されるとほとんど燃え落ちて防火性を発揮することができない。例えば、特許文献1および特許文献2は、難燃特性を有するシーリング材およびシーリング材組成物を提案するが、火災の大きさを小さくしたり、燃焼した後にその形状をとどめたりするという防火性を必ずしも満たすものではなかった。
【0003】
一方、耐火および遮音を目的とするモルタル、石こう、水ガラスなどの無機質系のシーリング材は、いったん硬化すると、建造物の振動に追従できなくなり、短期間でひび割れや界面破壊を生じ易く、シーリング材としての効果を奏しなくなるという欠点がある。
【0004】
シーリング材に難燃性を付与させるには、無機フィラー系難燃剤と呼ばれる、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等を中心とした無機化合物が配合される。しかし、これら無機化合物はベースポリマーや可塑剤とのなじみが悪く、粘度が著しく増加したり、滑らかなペーストにならないことによって、シーリング材の作業性を低下させることが多いため、難燃特性および作業性の両立が困難である。
【0005】
しかし、近年、シーリング材の本来の柔軟性を確保しながら、難燃特性、とりわけ防炎性に優れたシーリング材の開発が求められており、その開発が急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-107691号公報
【特許文献2】特表2019-527750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、柔軟性を確保しながら、防炎性能を従来レベル以上に向上するようにした防炎性シーリング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防炎性シーリング材は、二酸化ケイ素を80質量%以上、かつ酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含む無機粉体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防炎性シーリング材は、二酸化ケイ素を80質量%以上、かつ酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含む無機粉体を含むようにしたので、シーリング材本来の柔軟性を確保しながら、防炎性能を従来レベル以上に向上することができる。また、難燃特性および作業性を両立することができる。
【0010】
前記無機粉体は、モース硬度が7以上、軟化温度が1200℃以上であるとよい。また前記無機粉体の平均粒子径は0.1~100μmであるとよい。防炎性シーリング材は、ポリサルファイドを含有するとよく、複層ガラス用2次シーリング材に使用することができる。また、防炎性シーリング材は、25℃から1000℃までの熱重量分析により求められる重量残存率が40%以上であるとよい。さらに、厚さ2mmの矩形シートの角に着火したとき、炎の最大高さが3cm以下であるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例および比較例で作成したシーリング材の熱重量測定の結果を示すグラフである。
【
図2】実施例1で作成したシーリング材の着火試験の観察写真である。
【
図3】比較例1で作成したシーリング材の着火試験の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防炎性シーリング材は、二酸化ケイ素を80質量%以上、かつ酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含む無機粉体(以下、「特定無機粉体」という。)を含有することを特徴とする。この特定無機粉体を含有することにより、シーリング材本来の柔軟性を確保しながら、防炎性能を従来レベル以上に向上することができる。
【0013】
特定無機粉体は、二酸化ケイ素の含有量が80質量%以上、好ましくは80~90質量%である。二酸化ケイ素の含有量をこのような範囲内にすることにより、シーリング材が燃えたとき炎を小さくすること、および/または、燃焼した後にシーリング材の形状をとどめること、ができる。特定無機粉体は、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で10質量%以上、好ましくは10~20質量%含む。なお、酸化アルミニウム、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムのすべてを含まなくてもよく、これらから選ばれる1つ以上を含み、かつそれらの合計が10質量%以上であればよい。酸化アルミニウム、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムを合計で10質量%以上含むことにより、防炎性能をより優れたものにすることができる。
【0014】
特定無機粉体は、上述した二酸化ケイ素の含有量、並びに酸化アルミニウム、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムの合計含有量を満たす限り、天然鉱物、天然岩石、合成無機物のいずれでもよく、例えば、石英、水晶、鱗珪石(トリジマイト)、方珪石(クリストバライト)、シリカゲル、珪藻土、珪砂、鋳物砂、段戸珪石、黒雲母(バイオタイト)、曹長石(アルバイト)、微斜長石(マイクロクリン)などから適宜、選択することができる。特定無機粉体は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カリウムおよび酸化ナトリウム以外の無機物を含有してもよい。
【0015】
特定無機粉体のモース硬度は、好ましくは7以上、より好ましくは7~8であるとよい。モース硬度をこのような範囲内にすることにより、靭性を高くし、耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性等の特性を優れたものにすることができる。
【0016】
特定無機粉体の軟化温度は、好ましくは1200℃以上、より好ましくは1200~1300℃であるとよい。軟化温度をこのような範囲内にすることにより、耐熱性をより優れたものにすることができる。
【0017】
特定無機粉体の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは1~50μmであるとよい。特定無機粉体の平均粒子径をこのような範囲内にすることにより、耐熱性をより優れたものにすることができる。
【0018】
特定無機粉体を含有する防炎性シーリング材は、ベースポリマーとして、通常のシーリング材に使用されるものを用いることができる。好適なベースポリマーは、例えば、ポリサルファイド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、および変成シリコーン樹脂等を挙げることができる。より好ましくはポリサルファイドがよく、複層ガラス用2次シーリング材にするのに有利である。また、防炎性シーリング材は、ベースポリマーを含む主剤、およびその硬化剤からなる二液型、または一液型のいずれでもよい。さらに、湿気硬化型、加熱硬化型のいずれでもよい。
【0019】
主剤の組成は、例えば、ベースポリマー100質量部に対し、特定無機粉体として好ましくは80~150質量部、より好ましくは100~120質量部であるとよい。このようにベースポリマーに対し、特定無機粉体を多く配合することにより、シーリング材が燃えたとき炎を小さくすること、および/または、燃焼した後にシーリング材の形状をとどめること、ができる。
【0020】
主剤は、ベースポリマーおよび特定無機粉体の他、ベースポリマーに応じて通常使用される配合材を配合することができる。例えば、ポリサルファイドがベースポリマーのとき、主剤の配合材として、例えば、可塑剤、充填剤、接着促進剤、等を配合するとよい。
【0021】
可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸アルキル(C7-C9)ベンジル、フタル酸1-ベンジル2-(1-イソブチリルオキシ-2,2,4-トリメチルペンタン-3-イルなどのフタル酸エステル、塩素化パラフィン、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールモノベンゾエート、アルキレングリコールジベンゾエート、安息香酸系ポリエステル、水添ターフェニル、ハロゲン末端硫黄含有重合体などが挙げられる。可塑剤は、好ましくは、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ハロゲン末端硫黄含有重合体である。
【0022】
可塑剤の配合量は、硬化物の強度や伸び、さらには硬化前の粘度の設計によって設定されるが、ポリサルファイド100質量部に対して1~100質量部であることが好ましい。可塑剤の配合量は、より好ましくは、ポリサルファイド100質量部に対して、1~50質量部であり、さらにより好ましくは、1~40質量部である。
【0023】
充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ケイ酸塩、硫酸塩などの無機充填剤やカーボンブラックなどが挙げられ、炭酸カルシウムが好ましい。
【0024】
充填剤の配合量は、ポリサルファイド100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましい。充填剤の配合量は、より好ましくは、ポリサルファイド100質量部に対して、1~300質量部であり、さらにより好ましくは、10~200質量部であり、もっと好ましくは、100~180質量部である。
【0025】
接着促進剤としては加水分解性シリル基と反応性有機官能基とを含有するシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。ポリサルファイドポリマー“チオコールLP-3”と3―グリドキシプロピルトリメトキシシランを反応させて合成した末端トリメトキシシラン変性ポリサルファイドポリマーもシランカップリング剤として用いることができる。これらシランカップリング剤は2種以上を用いてもよい。
【0026】
防炎性シーリング材を構成する硬化剤の組成は、主剤の組成、特にベースポリマーの種類、性状に応じ、適宜、決めることができる。例えば、ポリサルファイドがベースポリマーのとき、硬化剤の配合材として、例えば、無機酸化剤、有機過酸化物、有機酸化剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着付与剤、ゴム・エラストマー、殺カビ剤、腐食防止剤、顔料、マスキング剤、等を配合するとよい。
【0027】
硬化剤に含まれる酸化剤として、従来の液状ポリサルファイドポリマーの硬化剤に用いられる物質が使用でき、無機酸化剤、有機過酸化物、有機酸化剤などが挙げられる。
【0028】
無機酸化剤としては、二酸化マンガン、二酸化鉛、過酸化亜鉛、過酸化カルシウム,二酸化鉄、過酸化バリウム、二酸化テルル、二酸化セレン、二酸化スズ、四酸化三鉛、過酸化ストロンチウム,過酸化リチウム、などの無機過酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄(II)、酸化鉛、酸化鉄(III)、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化カルシウム、酸化銅、酸化バリウムなどの無機酸化物、クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム,二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過炭酸ナトリウムなどが挙げられる。この中でも、二酸化マンガン、二酸化鉛が好ましく、特に、二酸化マンガンが好ましい。
【0029】
有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイドなどが挙げられる。特にクメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエートが特に硬度発現に優れており好ましい有機過酸化物である。上記有機過酸化物は2種類以上用いてもよい。
【0030】
有機酸化剤としては、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、パラキノンジオキシムなどが挙げられる。
【0031】
酸化剤の配合量は、ポリサルファイド100質量部に対して1~50質量部であることが好ましい。酸化剤の配合量は、ポリサルファイド100質量部に対して、より好ましくは1~30質量部であり、さらにより好ましくは、1~20質量部であり、もっと好ましくは、5~15質量部である。
【0032】
硬化促進剤としては、アルデヒド・アンモニア及びアルデヒド・アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系などの加硫促進剤が挙げられる。硬化促進剤は、好ましくは、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤である。より好ましくは、ジフェニルグアニジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドである。
【0033】
硬化促進剤の配合量は、シーリング材の硬化速度や、さらには使用温度によって設定されるが、ポリサルファイド100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましい。硬化促進剤の配合量は、より好ましくは0.1~5質量部であり、さらにより好ましくは、0.1~3質量部である。
【0034】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、ニッケル塩及びニッケル錯塩系が挙げられる。具体的には、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3(3,4,5,6-テトラ-ヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンソトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2,2’-チオビス(4-t-オクチルフェノレート)]-2-エチルヘキシルアミン-ニッケルなどが挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が上げられる。具体的には、1,3,5‐トリス[[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシフェニル]メチル]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、1,1,3‐トリス(5‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐2‐メチルフェニル)ブタン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタン、2,2‐ビス[[[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン‐1,3‐ジオール1,3‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン), 4,4′,4′′‐[(2,4,6‐トリメチルベンゼン‐1,3,5‐トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール)などが挙げられる。
【0036】
粘着付与剤としては、フェノール樹脂、クマロン・インデン樹脂、クマロン樹脂、ナフテン系油、ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン誘導体、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、水添テルペン樹脂、α-ピネン樹脂、アルキルフェノール・アセチレン系樹脂、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド系樹脂、スチレン樹脂、C6系石油樹脂、C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、C6/C9共重合系石油樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド系樹脂などが挙げられる。
【0037】
ゴム・エラストマーとしては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどが挙げられる。
【0038】
防炎性シーリング材は、25℃から1000℃までの熱重量分析により求められる重量残存率が、好ましくは40%以上、より好ましくは40%~50%であるとよい。1000℃の重量残存率をこのような範囲にすることにより、防炎性シーリング材が、例え燃焼した後でも、その形状をとどめ防炎性に寄与することができる。
【0039】
防炎性シーリング材は、厚さ2mmの矩形シートの角に着火したとき、炎の最大高さが、好ましくは3cm以下、より好ましくは0cm~1cmであるとよい。炎の最大高さをこのような範囲にすることにより、防炎性能をより優れたものにすることができる。また、防炎性シーリング材の矩形シート(厚さ2mm)の角に着火した後、好ましくは60秒以内に自然消火するとよい。
【0040】
防炎性シーリング材は、複層ガラス用2次シーリング材に好適に使用することができる。複層ガラスは、2枚の板ガラス間の周縁部に、乾燥剤およびアルミスペース等を、1次シーリング材を介在させて挟持し、更にそれらの外縁を2次シーリング材で封止している。防炎性シーリング材を2次シーリング材に用いた複層ガラスは、着火後の炎が大きくならず防炎性に優れ、例え防炎性シーリング材が燃焼した後でも、その形状をとどめるので、複層ガラスの構造を保持し、防火性能をより高くすることができる。
【実施例0041】
以下、実施例を参照して本発明の防炎性シーリング材を更に具体的に説明するが,本発明がそれらの実施例に限定されるものではない。
主剤および硬化剤を調製し、よく混練りすることにより、4種類の硬化型組成物(実施例1、比較例1~3)を得、防炎性シーリング材としての特性を評価した。
【0042】
主剤の調製
表1の「主剤の組成」に記載した成分を秤量し、ミキサーを用いて混合することにより、防炎性シーリング材の主剤を得た。なお、各成分の配合量は、液状ポリサルファイドポリマー100質量部に対する質量部で表した。
【表1】
【0043】
表1に記載した各成分は以下のとおりである。
・液状ポリサルファイドポリマー、チオコール「LP-23」(東レ・ファインケミカル社製)
・安息香酸エステル系ポリエステル、モノサイザーPB-10(DIC社製)
・3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製SH-6040)
・沈降炭酸カルシウム、白艶華CCR(白石工業社製)
・重質炭酸カルシウム、ホワイトンSSB赤(備北粉化工業社製)、二酸化ケイ素を含有しない。
・特定無機粉体、二酸化ケイ素を84質量%含有する無機粉体、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムを合計で13質量%含有、モース硬度が7、軟化温度が1200℃、平均粒径が10μm
・水酸化アルミニウム、BF013-928(日本軽金属社製)、二酸化ケイ素を含有しない。
・水酸化マグネシウム、KISUMA5A(協和化学工業社製)、二酸化ケイ素を含有しない。
【0044】
硬化剤の調製
表2に記載した成分を秤量し、三本ロールミルを用いて混練することにより、防炎性シーリング材の硬化剤を得た。なお、各成分の配合量は、表1に記載の液状ポリサルファイドポリマー100質量部に対する質量部で表した。
【表2】
表2に記載した各成分は以下のとおりである。
・二酸化マンガン(Honeywell社製 TypeFA)
・安息香酸エステル系ポリエステル、モノサイザーPB-10(DIC社製)
・フタル酸系可塑剤(ヴァルトリス スペシャリティ ケミカルズ社製 サンチサイザー278)
・テトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業社製 ノクセラーTT)
・重質炭酸カルシウム(日東粉化工業社製 NCC#410)
・カーボンブラック、SRF級カーボンブラック(旭カーボン社製 旭#50)
【0045】
上記により得られた主剤と硬化剤を手練りでよく混練して、その混合物からなる硬化型組成物(防炎性シーリング材)を調製した。この硬化型組成物を使用し、以下の方法で、作業性、ワークライフ、タックフリータイム、A形硬度(7日後)、1000℃の重量残存率、炎の最大高さおよび着炎60秒後の消火状態を測定した。
【0046】
作業性
上記により得られた主剤の状態が滑らかなペーストであれば「〇」、ダマがありざらついたペーストであれば「×」として、表1の「作業性」の欄に記載した。
【0047】
ワークライフ
上記により得られた主剤と硬化剤とを手練りでよく混練し、得られたペーストを爪楊枝で持ち上げたときに、角が立って戻らなくなるまでの時間を計測し、表1の「ワークライフ」の欄に記載した。
【0048】
タックフリータイム
上記により得られた主剤と硬化剤を手練りでよく混練し、得られたペーストをポリエチレン製カートリッジノズルで触れたときに、付着しなくなるまでの時間を計測し、表1の「タックフリータイム」の欄に記載した。
【0049】
A形硬度(7日後)
硬化型組成物を使用して、10mm厚の試験片を作製した。この試験片を23℃50%RHの雰囲気下で養生し、主剤および硬化剤を混合したときから7日後の硬化物について、JIS K6253(2012)記載のタイプAデュロメータにて硬度測定を行った。得られた結果を、表1の「A形硬度(7日後)」の欄に記載した。
【0050】
1000℃の重量残存率
硬化型組成物を使用して、約2mm厚のサンプルを作製し、70℃の条件で2時間の状態調節を行った。得られたサンプルを用い、熱重量分析計(TGA Q50、日本サーマルコンサルティング社製)を使用し、サンプルを窒素ガス雰囲気下で20℃/分の昇温速度で25℃から1000℃まで加熱した間の重量変化率を測定し、1000℃の重量残存率を求めた。得られた結果を、表1の「1000℃の重量残存率」の欄に記載した。また、
図1に、実施例および比較例の各シーリング材の重量変化の熱重量測定の結果を示した。
【0051】
炎の最大高さおよび着炎60秒後の消火状態
主剤と硬化剤を手練りでよく混練し、得られた硬化型組成物を使用して、縦2.5cm、横3.5cm、厚さ2mmの矩形シートを作製した。この矩形シートの縦辺と横辺の角を上方に向け、その角にバーナーで着炎させて、炎の状態を観察した。炎の高さの最大値を測定し、その結果を、表1の「炎の最大高さ」の欄に記載した。また、着炎60秒以内に自然消火したときは「〇」、着炎60秒以内に自然消火しなかったときは「×」として、表1の「着炎60秒後の消火状態」の欄に記載した。また、
図2に、実施例1で作成したシーリング材の着火試験の観察写真、
図3に、比較例1で作成したシーリング材の着火試験の観察写真をそれぞれ示した。なお、
図2,3において、白抜き数字は、矩形シートの上辺からの高さ(cm)を表す。