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特開2022-116509筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116509
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20220803BHJP
   C09D 11/18 20060101ALI20220803BHJP
   C09C 1/56 20060101ALI20220803BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20220803BHJP
   C09B 69/04 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
C09D11/17
C09D11/18
C09C1/56
B43K7/00
C09B69/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012701
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】藤井 武
【テーマコード(参考)】
2C350
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA08
2C350NA01
2C350NA02
4J037AA02
4J037CB16
4J037FF22
4J039AD07
4J039BA04
4J039BC13
4J039BC33
4J039BE03
4J039BE05
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA19
4J039EA35
4J039EA44
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料を含んでなることで、耐水性、耐アルコール性、耐光性に優れ、さらに安定造塩することで、インキ経時安定性に優れた筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を得ることである。
【解決手段】ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤を含んでなることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤を含んでなることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
【請求項2】
前記ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~50質量%を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤の溶解度パラメーター(SP値)が、9~15(cal/cm1/2であることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤の沸点が、170℃以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項5】
前記筆記具用油性インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする筆記具。
【請求項7】
インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具用油性インキ組成物において、発色性に優れることから着色剤として染料を含有させることが行われており、着色剤として、塩基性染料、酸性染料、直接染料など様々な染料やそれを加工したタイプの染料を用いた筆記具用油性インキ組成物が多数提案されている。
【0003】
このような筆記具用油性インキ組成物としては、様々な染料を用いているが、トリアリルメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を用いたものとしては、特開平9-165542号公報「油性黒色インキ」、特開平9-71745号公報「油性黒色インキ」、塩基性染料を母体とした造塩染料を用いたものとしては、特開平8-134393号公報「油性ボールペン用黒インキ組成物」等に、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】「特開平9-165542号公報」
【特許文献2】「特開平9-71745号公報」
【特許文献3】「特開平8-134393号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3では、顔料とは異なり、筆跡が水やアルコールで濡れると、再溶解してしまい、染料が滲み出してしまう。そのため、書かれた文字の判読が困難になったり、未使用の筆記媒体に染料が写って染着したりするという不具合を生じてしまう。さらに、光の照射(日光)によって、染料が化学反応を起こし、分解されるため、筆跡の耐光性が劣り、退色してしまう。
さらに、染料の析出などによって、インキ経時安定に影響しやすく、特に界面活性剤などを含有することで、界面活性剤と染料が反応し析出物が発生することもあり、インキ経時安定性が懸念される問題があった。
【0006】
本発明の目的は、耐水性、耐アルコール性、耐光性(堅牢性)に優れ、インキ経時安定性に優れた筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために
「1.ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤を含んでなることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
2.前記ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~50質量%を含んでなることを特徴とする第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記有機溶剤の溶解度パラメーター(SP値)が、9~15(cal/cm1/2であることを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.前記有機溶剤の沸点が、170℃以上であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.前記筆記具用油性インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
6.第1項~第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする筆記具。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料を含んでなることで、耐水性、耐アルコール性、耐光性(堅牢性)に優れ、さらに安定造塩することで、インキ経時安定性に優れた筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を得ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
【0010】
本発明の特徴は、筆記具用油性インキ組成物に、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤を含んでなることを特徴とする。
【0011】
筆記具用油性インキ組成物に、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤を含んでなることで、筆跡が水やアルコールで濡れてしまったり、光の照射(日光)を浴びても、筆跡視認が可能であり、さらに造塩安定化しているため、インキ経時安定性に優れることが可能となる。
【0012】
(造塩染料)
本発明では、着色剤としてダイレクトブラックとアミンとの造塩染料を用いるが、ダイレクトブラックは、水やアルコールに濡れた場合でも、再溶解しづらく、筆跡視認が可能であり、光の照射(日光)を浴びても、化学分解されづらく、筆跡視認が可能である。さらに、該ダイレクトブラックをアミンで、造塩結合させて、安定させることで、インキ経時安定性を保つことが可能とし、耐水性、耐アルコール性、耐光性(堅牢性)を安定して保つことが可能である。
さらに、ダイレクトブラックは芳香環を有する化合物を有しており、筆記先端部での潤滑効果が得られるため、インキがスムーズに吐出でき、インキ消費量を多くすることで、筆跡の耐光性に有利に働き、さらに筆跡カスレも抑制し、筆記性を向上しやすく、特にボールペンとした場合は効果的である。
【0013】
また、ダイレクトブラックについては、ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、同154、同168、同195などが挙げられるが、耐水性、耐アルコール性、耐光性を考慮すれば、アゾ染料(-N=N-)が好ましく、より考慮すれば、ダイレクトブラック19、同154が好ましく、アミンとの造塩安定性を考慮して、耐水性、耐アルコール性、耐光性を安定して保つことを考慮すれば、(-N=N-)が多く有するダイレクトブラック19が好ましい。
【0014】
また、アミンとしては、ダイレクトブラックとの造塩結合の安定性を考慮すれば、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環族アミン、アルコキシアルキルアミン、グアニジン誘導体のアミンなどの有機アミンが好ましい。
【0015】
着色剤の総含有量は、インキ組成物全量に対し、5~60質量%が好ましい。これは5質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、60質量%を越えると、インキ中での溶解性に影響しやすいためで、より考慮すれば、7~50質量%が好ましく、さらに考慮すれば、10~40質量%である。
【0016】
(有機溶剤)
また、有機溶剤については、溶解度パラメーター(SP値)が、9~15(cal/cm1/2であることが好ましい。これは、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料の溶解安定性を良好とし、本発明の効果を得るためで、より考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~13(cal/cm1/2であることが好ましく、さらに、考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~12(cal/cm1/2であることが好ましく、10~12(cal/cm1/2であることが好ましい。
本発明でいう溶媒の溶解度パラメーター(SP値)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、Polymer HandBook(Second Edition)第IV章 Solubility Parameter Valuesに記載があり、その値を用いた。単位は(cal/cm1/2であり、25℃における値を指す。
なお、データの記載がないものについては、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1967)に記載の方法で計算することができる。
【0017】
また、有機溶剤の沸点については、沸点が170℃以上とすることが好ましい。これは、170℃未満だと、有機溶剤が蒸発しやすく、インキ経時安定性に影響が生じやすく、インキ粘度が増加しやすいためであり、より考慮すれば、220℃以上とすることが好ましい。一方、沸点が300℃を超えると、筆跡の乾燥性に影響を生じやすいため、沸点が300℃以下とすることが好ましく、より考慮すれば、280℃以下とすることが好ましい。
【0018】
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10~70質量%が好ましく、より好ましくは20~60質量%である。
【0019】
また、有機溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール溶剤、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2―プロパノール、イソブタノール、t-ブタノールなどの脂肪族アルコール溶剤などの有機溶剤が例示できる。
ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料や、後述する界面活性剤との溶解安定性を考慮すれば、アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤、多価アルコール溶剤を用いることが好ましく、より考慮すれば、アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0020】
アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤については、アルキレングリコールアルキルエーテルのアルキレングリコール部位の炭素数については、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との溶解安定しやすく、インキ経時安定性を考慮すれば、前記炭素数は2~10が好ましく、より考慮すれば、2~8であり、2~6が好ましい。さらに、後述する界面活性剤との相性が良好であり、書き出し性能、書き味を向上しやすいことを考慮すれば、前記炭素数は1~8が好ましく、より考慮すれば、1~6が好ましく、さらに4~6が好ましい。
これらの中でも、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との溶解性を考慮し、インキ経時安定性、書き出し性能、書き味を考慮すれば、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤、ブチレングリコールモノアルキルエーテル構造を有する溶剤、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルの中から選択することが好ましく、より考慮すれば、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤、ブチレングリコールモノアルキルエーテル構造を有する溶剤の中から選択することが好ましく、さらにトリエチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤が好ましい。
【0021】
また、アルキレングリコールアルキルエーテルのアルキルエーテル部位の炭素数については、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との溶解安定性しやすく、インキ経時安定性を考慮すれば、前記炭素数は1~8が好ましく、より考慮すれば、3~6が好ましく、1~3が好ましい。さらに、後述する界面活性剤との相性が良好であり、書き出し性能、書き味を向上しやすいことを考慮すれば、前記炭素数は1~8が好ましく、より考慮すれば、1~6が好ましく、さらに1~3が好ましい。
これらの中でも、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との溶解性を考慮し、インキ経時安定性、書き出し性能、書き味を考慮すれば、アルキレングリコールモノメチルエーテル溶剤、アルキレングリコールモノブチルエーテル溶剤、アルキレングリコールモノフェニルエーテル溶剤の中から選択することが好ましく、より考慮すれば、アルキレングリコールモノメチルエーテル溶剤、アルキレングリコールモノフェニルエーテル溶剤が好ましく、さらにアルキレングリコールモノメチルエーテル溶剤が好ましい。
【0022】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル構造を有するもの、ブチレングリコールモノエチルエーテル構造を有するもの等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル構造を有するもの、ジブチレングリコールジエチルエーテル構造を有するもの等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
前記アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤の含有量は、筆記具用油性インキ組成物中の全溶剤の含有量に対して50%以上とし、主溶剤として用いることが好ましい。これは、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料や、後述する界面活性剤との溶解安定することで、本発明の効果を発揮しやすくなるためである。より上記を考慮すれば、アルキレングリコールアルキルエーテル類の含有量は、全溶剤の含有量に対して70%以上が好ましく、90%以上が好ましい。
【0024】
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10~80質量%が好ましく、より好ましくは30~80質量%である。
【0025】
本発明では、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料以外の着色剤として、染料、顔料等、適宜選択して用いても良く、染料、顔料を併用しても良い。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との相性による経時安定性を考慮すれば、造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料との塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましい。上記のような造塩染料は、溶解度パラメーター(SP値)9~15(cal/cm1/2の有機溶剤に対して、溶解安定しやすく、書き出し性能、書き味を向上しやすいため好ましく、より考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~13(cal/cm1/2であることが好まししく、さらに、考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~12(cal/cm1/2であることが好ましく、10~12(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0026】
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
着色剤としては、顔料を用いることが好ましい、これは、顔料を用いることで、ボールペンの場合は、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗を抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。
【0028】
着色剤の総含有量は、インキ組成物全量に対し、5~45質量%が好ましい。これは5質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、45質量%を越えると、インキ中での溶解性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、7~35質量%が好ましく、さらに考慮すれば、10~30質量%である。
【0029】
(界面活性剤)
本発明によるインキ組成物は、界面活性剤を含んでなることが好ましい。これは、界面活性剤が、インキ組成物中に含まれる成分(着色剤、樹脂など)によって筆記先端部に形成される被膜を柔らかくし、書き出し性能を向上しやすく、さらに潤滑性を向上して、書き味を向上しやすいため、インキをスムーズに吐出でき、インキ消費量を多くすることで、筆跡の堅牢性(耐水性、耐アルコール性、耐光性)が有利に働きやすい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などあるが、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、非イオン性であることによって、インキ組成物中に含まれる成分(ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、樹脂など)による析出物が発生しづらいため、経時安定性を改良することができるためである。
【0030】
ノニオン系界面活性剤については、経時安定性を考慮すれば、HLB値が16以下であることが好ましく、1~14であることがより好ましく、4~10であることが特に好ましい。また、書き出し性能、書き味を向上すること考慮すれば、HLB値が10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。経時安定性と書き出し性能をバランス良く両立させることを考慮すれば、HLB値が1~10であることが好ましく、4~10であることが好ましい。なお、HLB値は、グリフィン法などから求めることができる。
【0031】
ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、ペン先が外部に常時露出した状態である。このような場合、筆記先端部が乾燥しやすい。上記HLB値を有する界面活性剤は、そのような問題も改良することができるので、それを用いることはより好ましい。
【0032】
また、ノニオン系界面活性剤としては、脂肪酸エステル類、ポリアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリン、アルキルアルカノールアミド、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、アセチレン結合を有する界面活性剤などが挙げられる。その中でも、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との相性も良く、上記のような書き出し性能、書き味、および経時安定性を考慮すれば、脂肪酸エステル類、ポリアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリン、アルキルアルカノールアミドの中から1種以上を選択することが好ましい。特に書き出し性能を向上することを考慮すれば、脂肪酸エステル類を用いることが好ましい。これらは、単独または2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
上記のようなノニオン系界面活性剤は、溶解度パラメーター(SP値)9~15(cal/cm1/2の有機溶剤に対して、溶解安定しやすく、書き出し性能、書き味を向上しやすいため好ましく、より考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~13(cal/cm1/2であることが好まししく、さらに、考慮すれば、溶解度パラメーター(SP値)が、9~12(cal/cm1/2であることが好ましく、10~12(cal/cm1/2であることが好ましい。
【0033】
また、脂肪酸エステル類としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。このうち、書き出し性能を改良されやすいことを考慮すれば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの中から1種以上を選択することが好ましく、さらに、環状骨格を有している構造であるソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましく、さらに、水酸基を複数有する脂肪酸エステルは、筆記先端部に形成される被膜の水分を適切に保持できるので、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの中から1種以上を選択することが好ましい。
【0034】
また、書き出し性能を考慮すれば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル類のアルキル基に含まれる炭素数が1~20であることが好ましく、より考慮すれば、ソルビタン脂肪酸エステル類のアルキル基に含まれる炭素数が10~20であることが好ましく、12~18であることが好ましい。
【0035】
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的に、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノココエート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートやそれらの複合物などのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートやそれらの複合物などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、具体的には、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖リノール酸エステル、ショ糖リノレン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであり、前記脂肪酸として、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0036】
ノニオン系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~15質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の書き出し性能、書き味が得られにくく、15質量%を越えると、インキ経時が不安定になりやすい傾向があるためである。その傾向を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.5~10質量%が好ましく、0.5~5質量%が、最も好ましい。
【0037】
また、ノニオン系界面活性剤以外として、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、アセチレン結合を有する界面活性剤などの界面活性剤を併用して用いても良い。
【0038】
(樹脂)
また、インキ漏れ抑制をより向上するためには、樹脂をインキ粘度調整剤として、用いることが好ましい、樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、有機溶剤との安定性を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることが好ましい。さらに、筆跡に形成された樹脂膜によって、耐水性、耐アルコール性、耐光性(堅牢性)を付与しやすく、特に紫外線を遮りやすく、耐光性を付与しやすいため、好ましい。
【0039】
ポリビニルブチラール樹脂は、より高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成しやすい。これは、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いると、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすいため、インキをスムーズに吐出でき、インキ消費量を多くすることで、筆跡の堅牢性が有利に働きやすい。さらに、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いると、形成する被膜によって、インキ漏れをより向上しやすくなるため、好ましく、また、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
【0040】
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol%未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、本発明の効果が得られにくく、さらに、吸湿性による書き出し性能を考慮すると、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためで、より考慮すれば、水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂が、好ましく、さらに、書き味を向上しやすいため、インキをスムーズに吐出でき、インキ消費量を多くすることで、筆跡の堅牢性に有利に働きやすいため、好ましい。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30~36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
【0041】
また、樹脂として、曳糸性付与剤を適宜用いてもよい。特に、ポリビニルピロリドン樹脂を含んだ場合では、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との相性も良好であり、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキの発生を抑制しやすい効果が得られるため、ポリビニルピロリドン樹脂を含有することが好ましい。
【0042】
前記樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%より少ないと、所望の潤滑性やインキ漏れ抑制性能が劣りやすく、40質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、1~40質量%が好ましい。さらに、考慮すれば3質量%以上が好ましく、30質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、3~30質量%が好ましく、より考慮すれば、5~25質量%が好ましい。
【0043】
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性を考慮すれば、有機アミン(ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料のアミンを除く)を用いることが好ましい。前記有機アミンと、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料との安定性を考慮すれば、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これは、油性インキ中での反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなり、1級アミンは、前記ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料やその他の成分と反応しやすく、インキ経時安定性に影響が出やすい。そのため、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましく、より考慮すれば、3級アミンを用いることが好ましい。
【0044】
また、有機アミンとしては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン等が挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミン、アルカノールアミンが好ましい。
【0045】
さらに、前記有機アミンの全アミン価は、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、70~300(mgKOH/g)とすることが好ましい。これは、300(mgKOH/g)を超えると、反応性が強いため、上記成分と反応し易いため、インキ経時安定性が劣りやすい。また、全アミン価が、70(mgKOH/g)未満であると、界面活性剤の安定性に影響が出やすい。より上記成分との安定性を考慮すれば、100~300(mgKOH/g)の範囲が好ましく、より安定性を考慮すれば、150~300(mgKOH/g)が好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
【0046】
また、その他として、粘度調整剤として、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0047】
本発明の筆記具用油性インキ組成物のインキ粘度の粘度は、特に限定されるものではないが、粘度が過度に高いと、書き出し性能、書き味、インキ追従性が劣りやすいため、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度は、30,000mPa・s以下であることが好ましい。また、粘度が過度に低いと、インキ漏れを抑制しにくいため、500mPa・s以上とすることが好ましく、1,000mPa・s以上とすることがより好ましい。インキ漏れ抑制、書き味、インキ追従性能、書き出し性能をより向上することを考慮すれば、インキ組成物の粘度は500~25,000mPa・sであることが好ましく、1,000~25,000mPa・sであることがより好ましく、800~25,000mPa・sであることがより好ましい。さらに、書き出し性能、書き味の観点から、1,000~20,000mPa・sであることがより好ましく、2,000~20,000mPa・sであることがより好ましい。
【0048】
(ボールペン)
また、ボールペンチップについては、ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~25μmとするのが好ましい。これは、上記範囲であれば、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料を用いた場合において、濃い筆跡としつつ、書き出し性能や、筆跡のカスレ、泣きボテなどの筆記性を良好に保ちやすく、さらに、インキ吐出量を確保して、インキ消費量を多くすることで、濃い筆跡が得られ、筆跡の堅牢性を有利に働きやすくなるためである。より考慮すれば、前記縦軸方向の移動量を5~20μmとするのが好ましく、7~18μmとするのが好ましい。
本発明において、ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量については、筆記開始前の初期状態のボールペンのボールペンチップの形態とする。
【0049】
ボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1~12nmとすることが好ましい。これは、上記範囲であると、書き出し性能、書き味、筆跡のカスレ、泣きボテなどの筆記性を良好に保ちやすいためで、さらにボール表面に十分にインキが載りやすく、インキがスムーズに吐出でき、インキ消費量を多くすることで、濃い筆跡が得られ、筆跡の堅牢性を有利に働きやすくなるためである。前記算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、よりボール表面にインキが載りやすいため、好ましく、より考慮すれば、2~8nmが好ましい。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI38、00N)で求めることができる。
【0050】
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
【0051】
また、ボ-ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性、コストを考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
【0052】
(実施例)
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、ダイレクトブラックとアミンとの造塩染料、アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂を採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度5sec-1、インキ粘度=3300mPa・sであった。
【0053】
実施例1(インキ配合)
着色剤(ダイレクトブラック19とアミンとの造塩染料)30.0質量%
アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤(溶解度パラメーター(SP値):10.5(cal/cm1/2、沸点:249℃) 65.2質量%
ノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル) 2.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂 2.5質量%
ポリビニルピロリドン樹脂 0.3質量%
【0054】
実施例2~30
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~30の筆記具用油性インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
【0055】
比較例1~3
表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1~3の筆記具用油性インキ組成物を得た。表に評価結果を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0056】
試験および評価
実施例1~30および比較例1~3で作製した筆記具用油性インキ組成物(0.4g)を、インキ収容筒に、ボール径がφ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペン用チップ(チップ内にボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧したコイルスプリングを有する、ボールの縦軸方向の移動量:10μm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):3nm)を装着した油性ボールペン用レフィルに充填し、油性ボールペンを作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
【0057】
なお、実施例1と同様の方法で、実施例28~30の、20℃の環境下、剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)におけるインキ粘度を測定したところ、実施例28:5000mPa・s、実施例29:10000mPa・s、実施例30:11000mPa・sであった。
【0058】
耐水性試験:筆記用紙に、らせん筆記した筆跡を乾燥後に、水に24時間浸し、筆跡の状態を観察した。
筆跡が良好であるもの ・・・◎
筆跡が薄くなったが、判別できるもの・・・○
筆跡が視認できないもの ・・・×
【0059】
耐アルコール試験:筆記用紙に、らせん筆記した筆跡を乾燥後に、エタノール(50%水溶液)に10分浸し、筆跡の状態を観察した。
筆跡が良好であるもの ・・・◎
筆跡が薄くなったが、判別できるもの・・・○
筆跡が視認できないもの ・・・×
【0060】
耐光性試験:筆記用紙に筆記角度70°、筆記荷重150gの条件にて、筆記速度4.5m/minの速度で、らせん筆記試験を行い、1時間放置した後、キセノンフェードメーターX15F(スガ試験機株式会社製)を用いて、ブルースケールが3級退色するまで照射し、筆跡を観察した。
退色しない ・・・◎
退色は見られるが、判別できるのもの・・・○
退色が目立つもの ・・・×
【0061】
インキ経時試験:50℃環境下、1ヶ月後にチップ本体内のインキを顕微鏡観察した。
析出物がなく、良好のもの ・・・◎
析出物が微少に発生したもの ・・・○
析出物が発生したが、実用上問題のないもの ・・・△
析出物が発生し、カスレや筆記不良などの原因になるもの・・・×
【0062】
書き出し性能試験:手書き筆記した後、チップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に24時間放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定した。
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、1mm未満であるもの ・・・◎◎
筆跡カスレの長さが、1mm以上、5mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、5mm以上、15mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、15mm以上、30mm未満であるもの・・・△
筆跡カスレの長さが、30mm以上であるもの ・・・×
【0063】
実施例1~30では、耐水性、耐アルコール性、耐光性、インキ経時、書き出し性能試験ともに良好な性能が得られた。さらに、実施例1~30を手書き筆記したところ、書き味は、滑らかであり、良好であった。
実施例1の油性インキを用いて、ボールペン用チップ仕様を、ボールの縦軸方向の移動量:15μm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):6nmに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、油性ボールペンを作成して、同様の試験および評価を行ったところ、実施例1と同等レベルの評価となり、全ての試験で良好であった。
【0064】
比較例1~3では、着色剤として、ダイレクトブラックと有機アミンとの造塩染料を用いなかったため、耐水性、耐アルコール性、耐光性、インキ経時試験が劣ってしまった。
【0065】
また、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具(出没式ボールペン)を用いた場合では、書き出し性能において、筆跡カスレの影響が出やすいため、本発明のような筆記具用油性インキ組成物を用いると効果的である。
【0066】
また、書き出し性能(筆跡カスレ)、インキ漏れ抑制を向上するためには、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
【0067】
また、本実施例では、便宜上、軸筒内に、筆記具用インキ組成物を直に収容した油性ボールペン用レフィルを収容した油性ボールペンを例示しているが、本発明の筆記具は、軸筒をインキ収容筒とし、軸筒内に、筆記具用インキ組成物を直に収容した直詰め式のボールペン、マーキングペン、サインペンとした筆記具であってもよい。
また、本実施例では便宜上、線材を切削によって形成したボールペンチップを例示しているが、パイプ材を押圧加工によって形成するボールペンチップであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、筆記具として利用でき、さらに詳細としては、キャップ式、出没式等の筆記具としてボールペンとして広く利用することができる。