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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116546
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】形状計測装置及び観察システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20220803BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220803BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220803BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220803BHJP
   G06T 7/564 20170101ALI20220803BHJP
   G06T 7/571 20170101ALI20220803BHJP
【FI】
G01B11/24 K
H01J37/22 502H
H01J37/147 B
H01J37/22 502J
G06T1/00 315
G06T7/564
G06T7/571
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012764
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳和
【テーマコード(参考)】
2F065
5B057
5C101
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065FF02
2F065FF10
2F065FF66
2F065GG07
2F065GG17
2F065GG18
2F065GG24
2F065HH13
2F065HH15
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ07
2F065JJ26
2F065PP13
2F065QQ04
2F065QQ24
5B057CD14
5B057DB03
5B057DC16
5C101AA03
5C101FF53
5C101HH36
5C101HH37
5C101HH61
5C101HH66
5L096AA09
5L096EA37
5L096FA06
5L096FA66
(57)【要約】
【課題】試料の三次元形状を精度良く計測する。特に、上方へ突出した誤認部分(突出ノイズ)を除去する。
【解決手段】試料18の上方から、第1計測部22により、試料18の三次元形状が計測される。試料18の側方から、第2計測部24により、試料18のシルエット像が取得される。補正部51は、シルエット像に含まれる輪郭を基準輪郭として抽出する。補正部51は、三次元形状から切り出された各断面に含まれる輪郭の内で、基準輪郭を超える誤認部分を突出ノイズとして特定し、それを除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向から試料の三次元形状を計測する第1計測手段と、
前記第1方向に交差する第2方向から前記試料のシルエット像を取得する第2計測手段と、
前記シルエット像に基づいて前記三次元形状を補正する補正手段と、
を含むことを特徴とする形状計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の形状計測装置において、
前記第1方向は垂直方向であり、
前記第1計測手段は前記試料の上方から前記試料を計測し、
前記第2方向は水平方向であり、
前記第2計測手段は前記試料の側方から前記シルエット像を取得する、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の形状計測装置において、
前記補正手段は、
前記シルエット像に含まれる試料輪郭を基準輪郭として抽出する抽出手段と、
前記基準輪郭に基づいて前記三次元形状におけるはみ出し部分を除去する除去手段と、
を含む、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項4】
請求項3記載の形状計測装置において、
前記除去手段は、
前記三次元形状から前記シルエット像と比較される複数の断面を特定し、
前記各断面に含まれる試料輪郭の中で前記基準輪郭を超える部分を前記はみ出し部分として特定する、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項5】
請求項3記載の形状計測装置において、
前記第2計測手段は、前記第1方向に交差する複数の第2方向から複数のシルエット像を取得し、
前記除去手段は、前記複数のシルエット像に基づいて前記三次元形状におけるはみ出し部分を除去する、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項6】
請求項1記載の形状計測装置において、
前記第1計測手段は、
前記第1方向から前記試料を撮像して複数の焦点面に対応した複数の試料画像を取得する第1撮像器と、
前記複数の試料画像に基づいて前記三次元形状を演算する画像処理部と、
を含み、
前記第2計測手段は、
前記第2方向において前記試料の一方側に設けられ、前記試料を撮像して前記シルエット像を取得する第2撮像器と、
前記第2方向において前記試料の他方側に設けられたバックライトと、
を含む、
ことを特徴とする形状計測装置。
【請求項7】
請求項1記載の形状計測装置と、
前記試料を搭載し前記試料の位置及び姿勢を変更するステージ、前記試料及び前記ステージを収容する試料室、並びに、前記ステージの動作を制御するステージ制御部を有し、前記試料に対して電子線を照射することにより前記試料を観察する観察装置と、
を含み、
前記ステージ制御部は、前記補正手段による補正後の三次元形状に基づいて、前記試料室内での前記ステージの動作を制御する、
ことを特徴とする観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状計測装置及び観察システムに関し、特に、観察装置により観察される試料の三次元形状を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
観察システムは、例えば、走査電子顕微鏡及び形状計測装置により構成される(例えば、特許文献1を参照)。形状計測装置は走査電子顕微鏡による試料の観測に先立って、試料(又はそれを含む試料ユニット)の三次元形状を計測する装置である。
【0003】
走査電子顕微鏡は、試料を含む試料ユニットを搭載したステージ及びそれを収容する試料室を有する。試料の三次元形状が事前に正しく特定されていれば、試料室内の構造物(対物レンズ、反射電子検出器、二次電子検出器、等)への試料の衝突を避けつつ、対物レンズに対して試料を近付けることが可能となる。試料における観察位置や分析位置を特定する必要から、又は、他の目的から、試料の三次元形状が取得されることもある。
【0004】
試料の三次元形状を計測する方法として、合焦法(focusing method)、レーザー計測法等が知られている。合焦法では、複数の焦点面(focal planes)に対応した複数の試料画像が取得され、それらに基づいて試料の三次元形状が演算される。レーザー計測法では、試料に対してレーザー光が照射及び走査され、これにより得られる一連の反射光に基づいて試料の三次元形状が計測される。
【0005】
試料は、様々な材料により構成される。試料を構成する材料の中には、光を反射し易い光沢をもった金属、透明性をもった材料、等が含まれる。試料を保持するホルダは、一般に、研磨された金属により構成される。試料表面やホルダ表面で照明光が強く乱反射してギラギラ輝く部分が生じることもある。試料やホルダの性状に起因して、誤った形状計測や形状計測精度の低下が生じる。
【0006】
観察システムにおいて、試料の三次元形状に誤認部分が含まれている場合、その三次元形状に基づいて試料の位置及び姿勢を制御すると、試料室内において試料が構造物に衝突してしまう。誤認部分が上方に突出した部分(突出ノイズ)である場合、試料を対物レンズに近付けられなくなる。
【0007】
なお、特許文献2,3には、複数の方向から取得された複数の試料像に基づいて試料の三次元形状を計測する装置が開示されている。特許文献1,2,3には、第1方向から第1形状計測法を適用して得られた結果と第2方向から第2形状計測法を適用して得られた結果とを突き合わせることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-126721号公報
【特許文献2】特開2005-292027号公報
【特許文献3】特開2013-190249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、試料の三次元形状の計測精度を高めることにある。あるいは、本発明の目的は、試料の三次元形状に含まれる突出ノイズを除去して三次元形状を適正化することにある。あるいは、本発明の目的は、観察装置の試料室内において試料と構造物の衝突を回避しつつ、試料を対物レンズに近付けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る形状計測装置は、第1方向から試料の三次元形状を計測する第1計測手段と、前記第1方向に交差する第2方向から前記試料のシルエット像を取得する第2計測手段と、前記シルエット像に基づいて前記三次元形状を補正する補正手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る観察システムは、上記の形状計測装置と、前記試料を搭載し前記試料の位置及び姿勢を変更するステージ、前記試料及び前記ステージを収容する試料室、並びに、前記ステージの動作を制御するステージ制御を有し、前記試料に対して電子線を照射することにより前記試料を観察する観察装置と、を含み、前記ステージ制御部は、前記補正手段による補正後の三次元形状に基づいて、前記試料室内での前記ステージの動作を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料の三次元形状の計測精度を高められる。あるいは、本発明によれば、試料の三次元形状に含まれる突出ノイズを除去して三次元形状を適正化できる。あるいは、本発明によれば、観察装置の試料室内において試料と構造物の衝突を回避しつつ、試料を対物レンズに近付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る観察システムを示すブロック図である。
図2】演算制御部での一連の処理を示すブロック図である。
図3】合焦法に基づく三次元形状の演算を説明するための図である。
図4】シルエット像の処理を示す図である。
図5】三次元形状における複数の断面を示す図である。
図6】基準輪郭に基づく突出ノイズ(はみ出し部分)の除去を示す図である。
図7】複数の水平方向からの複数のシルエット像の取得を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る形状計測装置は、第1計測手段、第2計測手段、及び、補正手段を有する。第1計測手段は、第1方向から試料の三次元形状を計測する。第2計測手段は、第1方向に交差する第2方向から試料のシルエット像を取得する。補正手段は、シルエット像に基づいて三次元形状を補正する。
【0016】
上記構成によれば、第1計測手段により計測された試料の三次元形状が、第2計測手段により取得された試料のシルエット像により補正される。シルエット像によれば、試料表面での照明光の反射の影響を受けない。また、シルエット像によれば、透明性を有する試料であっても試料の輪郭を比較的に容易に特定し得る。第1方向と第2方向は交差関係にあるので、第1方向において形状誤認(特に突出形状の誤認)が生じても、第2方向から取得されたシルエット像に基づいて当該形状誤認を容易に識別できる。
【0017】
実施形態において、第1方向は垂直方向であり、第1計測手段は試料の上方から試料を計測する。第2方向は水平方向であり、第2計測手段は試料の側方から前記シルエット像を取得する。
【0018】
一般に、観察装置において、試料は、上方から観察される。試料は、垂直方向の形状変化としての凹凸を有し又は垂直方向の厚みを有する。よって、試料の観察に先立って、試料の上方から試料の三次元形状の計測を行うことが望まれる。試料の上方から三次元形状の計測を行った場合、垂直方向において形状誤認が生じ易くなる。そこで、試料の側方からシルエット像が取得され、シルエット像に基づいて三次元形状が補正される。
【0019】
実施形態において、補正手段は、抽出手段、及び、除去手段を有する。抽出手段は、シルエット像に含まれる試料輪郭を基準輪郭として抽出する。除去手段は、基準輪郭に基づいて三次元形状におけるはみ出し部分を除去する。基準輪郭それ自体がはみ出し部分を特定する判定ラインとして用いられてもよいし、基準輪郭に基づいて基準輪郭の外側又は内側に判定ラインが設定されてもよい。一般に、はみ出し部分は、判定ラインから外れた部分であり、実施形態においては、上方へ突出した部分(ノイズ部分)である。
【0020】
実施形態において、除去手段は、三次元形状からシルエット像と比較される複数の断面を特定し、各断面に含まれる試料輪郭の中で基準輪郭を超える部分をはみ出し部分として特定する。各断面とシルエット像は空間的に平行な関係を有する。換言すれば、第2計測手段が有する撮像中心軸に対してシルエット像は直交し、各断面も直交する。各断面が厚みを有していてもよい。断面単位ではみ出し部分が特定され、それが除去される。
【0021】
実施形態において、第2計測手段は、第1方向に交差する複数の第2方向から複数のシルエット像を取得する。除去手段は、複数のシルエット像に基づいて三次元形状におけるはみ出し部分を除去する。この構成によれば、三次元形状の補正精度を高められる。
【0022】
実施形態において、第1計測手段は、第1撮像器及び画像処理部を有する。第2計測手段は、第2撮像器及びバックライトを有する。第1撮像器は、第1方向から試料を撮像して複数の焦点面に対応した複数の試料画像を取得する。画像処理部は、複数の試料画像に基づいて三次元形状を演算する。第2撮像器は、第2方向において試料の一方側に設けられ、試料を撮像してシルエット像を取得する。バックライトは、第2方向において試料の他方側に設けられる。
【0023】
上記構成において、第1計測手段は、合焦法に基づいて試料の三次元形状を計測する手段である。第2計測手段は、バックライトを利用して試料のシルエット像を取得する手段である。第1計測手段が試料の上方から試料を照らす照明器を有していてもよい。その場合、試料表面での照明光の反射により、上方に突出した突出ノイズが生じ易くなるが、突出ノイズはシルエット像に基づいて除去される。三次元形状に下方に窪んだ谷ノイズが含まれることもある。そのようなノイズが第3計測手段により特定され、それが補正手段により除去又は修正されてもよい。試料室内での試料の衝突を回避しつつ対物レンズへ試料を近付けることを前提とした場合、突出ノイズの除去が特に効果的となる。
【0024】
シルエット像の中に、三次元形状よりも突出した部分(計測漏れ部分)が含まれる場合、当該部分の突出量に応じて三次元形状の全部又は一部を垂直方向にかさ上げしてもよい。これは、試料室内での衝突の回避を優先して、形状補正を行うものである。
【0025】
実施形態に係る観察システムは、上記の形状計測装置、及び、観察装置により構成される。観察装置は、試料を搭載し試料の位置及び姿勢を変更するステージ、試料及びステージを収容する試料室、並びに、ステージの動作を制御するステージ制御部を有する。観察装置は、試料に対して電子線を照射することにより試料を観察する。ステージ制御部は、補正手段による補正後の三次元形状に基づいて、試料室内でのステージの動作を制御する。
【0026】
観察装置の概念には、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、光学顕微鏡等が含まれる。第1計測、第2計測及び形状補正を実行するプログラムが、可搬型記憶媒体又はネットワークを介して、情報処理装置へインストールされてもよい。情報処理装置の概念には、コンピュータ、形状計測装置、観察システム等が含まれる。
【0027】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る観察システムが示されている。観察システムは、試料を観察するシステムである。観察システムにおいて、試料が分析又は加工されてもよい。様々な試料が観察対象となる。例えば、光沢をもった金属、透明性を有する材料、複雑な形状をもった試料、等が観察対象となり得る。
【0028】
観察システムは、図示の構成例において、形状計測装置10及び観察装置12により構成される。観察装置12は、具体的には、走査電子顕微鏡(SEM)である。観察装置12として、試料分析装置、試料加工装置、等が設けられてもよい。それらの装置も試料を観察する機能を備えている。
【0029】
観察装置12は鏡筒及び試料室を有する。試料室の上方に鏡筒が設置されている。鏡筒において、電子ビームが生成される。鏡筒には、対物レンズが含まれる。試料室内には、ステージが設置されている。ステージには、試料を保持したホルダが固定される。ステージの制御により、試料の位置及び姿勢が変更される。ステージの制御はステージ制御部52によって行われる。試料室内には、対物レンズの下端部が入り込んでおり、また、複数の検出器(二次電子検出器、反射電子検出器、等)が配置されている。試料の上方から電子ビームが試料に照射される。電子ビームの二次元走査により、試料の二次元画像が生成される。
【0030】
試料室内において、構造物への試料の衝突を回避しつつ、試料の位置及び姿勢を適正に定めるために、特に、試料と対物レンズとの接触を避けつつ、試料を対物レンズに近付けるために、試料の観測に先立って、試料の三次元形状が計測される。そのための装置が形状計測装置10である。試料における観測点や分析点を特定するために、試料の三次元形状が計測されてもよい。
【0031】
形状計測装置10は、図示の構成例において、回転台14を有し、回転台14に対してホルダ16が固定されている。ホルダ16により試料18が保持されている。試料18が形状計測対象であり、観察対象である。ホルダ16と試料18とにより、可搬体である試料ユニットが構成される。試料の三次元形状の計測後、形状計測装置から試料ユニットが取り外され、試料ユニットが観察装置12内のステージ上にセットされる。回転台14は、必要に応じて、垂直軸である第1軸Aを回転中心として、試料ユニットを回転させるものである。
【0032】
形状計測装置10は、第1計測部22、第2計測部24、及び、補正部51を有する。第1計測部22は、合焦法に基づいて試料18の三次元形状を演算する。第1計測部22は、カメラモジュール28、昇降機構30、及び、第1画像処理部48を有する。昇降機構30は、カメラモジュール28を保持し、その高さを調整する機構である。
【0033】
第1画像処理部48は、合焦法に基づいて、複数の試料画像から試料の三次元形状を生成する。実際には、第1画像処理部48により、三次元形状を表す三次元形状データが生成される。
【0034】
カメラモジュール28は、カメラ32、レンズ34、及び、照明器36を有する。カメラ32は例えばCCDカメラである。レンズ34は、焦点距離によっても倍率が変化しないテレセントリックレンズ(telecentric lens)である。レンズ34による焦点距離の段階的な変更により、又は、カメラモジュール28の高さの段階的な変更により、複数の焦点面に対応した複数の試料画像が取得される。照明器36は、試料18に対して照明光を照射するものである。照明器36は、例えば、リング状に配列された複数の白色LEDにより構成される。上記の第1軸Aは、カメラモジュール28の撮像中心軸に一致している。
【0035】
第2計測部24は、カメラモジュール38、及び、第2画像処理部50を有する。カメラモジュール38の撮像中心軸が水平軸としての第2軸Bに一致している。カメラモジュール38は、カメラ42、レンズ44、及び、バックライト46を有する。第2軸B上において、試料18の一方側にカメラ42及びレンズ44が配置され、試料18の他方側にバックライト46が配置されている。
【0036】
カメラ42は例えばCCDカメラである。レンズ44として、テレセントリックレンズが用いられてもよい。バックライト46は、例えば、複数の白色LED及び光散乱層を含む。カメラ42により試料18のシルエット像が取得される。必要に応じて、第1軸Aを回転中心として、カメラモジュール38を旋回させる機構が設けられる。
【0037】
第2画像処理部50は、シルエット像に対して二値化処理を適用し、二値化シルエット像を生成する。シルエット像に対して、平滑化処理、切り出し処理、等が適用されてもよい。
【0038】
演算制御部26は、実施形態において、プロセッサにより構成される。プロセッサの例として、プログラムを実行するCPUが挙げられる。演算制御部26は、第1画像処理部48、第2画像処理部50、及び、補正部51を有する。補正部51は、試料18の三次元形状を試料18のシルエット像に基づいて補正するものである。実施形態においては、後に詳述するように、三次元形状に含まれる1又は複数の突出ノイズ(上方に突出したはみ出し部分)が除去される。
【0039】
ステージ制御部52は、補正後の三次元形状に基づいて、ステージの位置及び姿勢を制御する。具体的には、ステージ制御部52は、試料ユニットが試料室内の構造物に衝突しないように、試料ユニットの位置及び姿勢を調整する。例えば、試料が構造物に衝突しないように、試料室内で試料を上昇させて、対物レンズに対して試料が近付けられる。
【0040】
図2には、演算制御部内での一連の処理が示されている。演算制御部には、既に説明したように、第1画像処理部48、第2画像処理部50、及び、補正部51が含まれる。第1画像処理部48は、合焦法に基づいて、複数の試料画像から試料の三次元形状を演算する(符号100を参照)。これにより試料の三次元形状データ102が生成される。第2画像処理部50では、シルエット像に対して二値化処理が適用される(符号104を参照)。これにより二値化シルエット像が生成される。
【0041】
補正部51について詳述する。メモリには試料の三次元形状データが記憶される(符号108を参照)。三次元形状データから、シルエット像と所定の空間的関係を有する断面データ列が切り出される(符号110を参照)。すなわち、試料の三次元形状から複数の断面が切り出される。シルエット像は、空間的に見て、水平軸としての第2軸に直交する像である。断面列は、空間的に見て、第2軸に直交しつつ第2軸上に並ぶ複数の断面からなる。個々の断面が厚みを有していてもよい。三次元形状の全体が切り出し対象となる。各断面には試料像が含まれ、試料像の輪郭が抽出される(符号112を参照)。輪郭は、試料像における上縁に相当する。
【0042】
一方、二値化シルエット像には二値化試料像が含まれ、その輪郭が基準輪郭として抽出される(符号115を参照)。実施形態では、基準輪郭が判定ラインとして用いられる。基準輪郭に沿ってその上側又は下側に判定ラインが設けられてもよい。断面ごとに、試料像の輪郭の内で、安定ラインつまり基準輪郭を超える突出部分が特定される(符号114を参照)。突出部分は判定ラインからはみ出している誤認部分であり、端的に言えば、突出ノイズである。突出ノイズが除去される(符号116を参照)。
【0043】
断面ごとに突出ノイズ除去処理を行うことにより、試料の三次元形状が補正される。メモリ上に補正後の三次元形状データが生成される。補正後の三次元形状データがステージ制御部に送られる。試料を保持しているホルダに突出ノイズが生じている場合においても上記処理によりその突出ノイズが除去される。
【0044】
複数の水平方向から複数のシルエット像を取得し、個々のシルエット像ごとに上記処理を実行してもよい。これについては後に図7を用いて説明する。なお、試料の上方からレーザー計測を行って試料の三次元形状を取得する場合においても、取得された三次元形状を、試料の側方から取得されたシルエット像により補正し得る。
【0045】
図3には、カメラモジュール28によって取得される複数の試料画像が示されている。符号53は試料を示している。図示の例では、z方向における複数の位置z1,z2,z3,z4に複数の焦点面が定められ、それらに対応する複数の試料画像が取得されている。符号56で示すように、複数の試料画像に対して合焦法を適用することにより試料の三次元形状58が生成される。
【0046】
図4には、試料のシルエット像60が示されている。シルエット像60は、ある水平方向から見た試料の輪郭を表す投影像である。シルエット像60によれば、照明光の反射、散乱に起因する問題が生じ難い。また、透明性を有する試料であってもその輪郭を明確に特定し得る。図示の例では、シルエット像60は、試料像60A及びホルダ像60Bからなる。シルエット像60に対して二値化処理が適用され、これにより二値化シルエット像62が生成される。それは、試料像62A及びホルダ像62Bからなる。
【0047】
図5には、試料の三次元形状64からの断面列の切り出しが模式的に示されている。シルエット像62は第2軸に対して直交する像である。複数の断面66a,66b,66cは、第2軸B上に並んでおり且つそれぞれ第2軸Bに対して直交している。各断面66a,66b,66cは1ボクセル分の厚みを有し、又は、複数ボクセル分の厚みを有する。三次元形状の全部が補正処理の対象とされる。
【0048】
図6の左側には二値化シルエット像62が示されている。二値化シルエット像に含まれる輪郭が基準輪郭として抽出される(符号65を参照)。図6の右側には、三次元形状から切り出された特定の断面が示されている。その断面において輪郭66が抽出される(実線を参照)。輪郭66が基準輪郭62C(破線を参照)と比較される。輪郭66の中で、基準輪郭62Cからその上側にはみ出ている誤認部分が突出ノイズa,b,cとして特定される。そして、突出ノイズa,b,cが除去される。つまり、誤認により生じた部分が削除されて、三次元形状が適正化、優良化される。
【0049】
上記の補正処理により、照明光の反射、散乱に起因する形状誤認や試料が透明であることに起因する形状誤認に対処することが可能となる。シルエット像に基づく補正処理においては、窪み状の誤認部分に対して補填を行うのは難しいが、試料室内における衝突を防止する上では、突出ノイズ除去が効果的である。なお、基準輪郭が断面内の輪郭よりも顕著に突出している部分を有する場合、当該部分を三次元形状に反映させてもよい。その場合、三次元形状の全体又は一部をz方向にかさ上げしてもよい。
【0050】
図7には、変形例が示されている。図7は、試料18を上方から見た図である。試料18は、ホルダ16上に載置されている。カメラモジュール38は、カメラ42、レンズ44及びバックライト46により構成される。カメラモジュール38の撮像中心軸が第2軸Bである。この変形例では、第1軸回りのホルダ16の回転により、又は、第1軸回りのカメラモジュール38の旋回により(符号70を参照)、複数のシルエット像72,74,76が取得される。すなわち、試料18から見て複数の水平方向から複数のシルエット像72,74,76が取得される。例えば、所定角度ごとにシルエット像72,74,76が取得されてもよい。
【0051】
試料18を上方から観察することにより生成された三次元形状が、複数の水平方向から試料18を観察することにより生成された複数のシルエット像72,74,76に基づいて、補正される。具体的には、三次元形状に対して、個々のシルエット像72,74,76に基づく突出ノイズ除去処理が適用される。これにより、三次元形状の補正精度を高められる。
【0052】
第1計測部内のカメラモジュール(図7には図示されていない)が有する座標系と第2計測部内のカメラモジュール38が有する座標系とを合わせるために、例えば、ホルダ16にマーカー78を設けてもよい。第1計測部において計測されたマーカー78の座標と、第2計測部において計測されたマーカー78の座標とが整合するように、2つの座標系が調整される。標準試料を用いて2つの座標系を合わせてもよい。
【0053】
上記実施形態において、第1計測部が有するカメラモジュールと、第2計測部が有するカメラモジュールとを物理的に同一のカメラモジュールとして構成してもよい。その場合には、カメラモジュールの位置及び姿勢を変更する機構が設けられる。また、その場合、カメラモジュールとして、前側照明器及びバックライトを備えたものが用いられる。上記実施形態において、上方から撮像された試料画像を走査電子顕微鏡に転送し、それを観察位置特定用のナビゲーション画像として用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 形状計測装置、12 走査電子顕微鏡、16 ホルダ、18 試料、22 第1計測部、24 第2計測部、26 演算制御部、28 カメラモジュール、32 カメラ、34 レンズ、36 照明器、38 カメラモジュール、42 カメラ、44 レンズ、46 バックライト、48 第1画像処理部、50 第2画像処理部、51 補正部、52ステージ制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7