(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116571
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】入浴装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20220803BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61H33/00 310C
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012797
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000182373
【氏名又は名称】酒井医療株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八子 陽
(72)【発明者】
【氏名】上原 大樹
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132FB00
2D132FC01
2D132FD04
2D132FK01
4C094AA01
4C094BB04
4C094BC02
4C094CC02
4C094DD14
4C094GG05
(57)【要約】
【課題】入浴スペースの保温性の低下および入浴スペースの外側への入浴用水の飛散を抑制しつつ、入浴スペースに対する車椅子の出し入れを速やかに行うことが可能な入浴装置を提供する。
【解決手段】入浴装置は、車椅子が進入可能な入浴スペースを有し、入浴スペースを囲み、車椅子を入浴スペースに進入させる進入口を有するカバーと、カバーに対して着脱可能な進入口カーテンと、を備え、進入口カーテンは、カバーに取り付けられることにより、進入口のうち、車椅子が入浴スペースに進入するときに通る通路領域を塞ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子が進入可能な入浴スペースを有する入浴装置であって、
前記入浴スペースを囲み、前記車椅子を前記入浴スペースに進入させる進入口を有するカバーと、
前記カバーに対して着脱可能な進入口カーテンと、を備え、
前記進入口カーテンは、前記カバーに取り付けられることにより、前記進入口のうち、前記車椅子が前記入浴スペースに進入するときに通る通路領域を塞ぐことを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記カバーは、カーテン係止部を有し、
前記カーテン係止部は、前記カバーのうち、前記進入口の縁に沿う枠部に設けられ、
前記進入口カーテンは、前記カーテン係止部に取り付けられ、
前記カーテン係止部は、前記枠部のうち、前記進入口を上下方向と直交する幅方向に挟む一方側部分および他方側部分にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の入浴装置。
【請求項3】
前記進入口カーテンは、前記通路領域を塞ぐカーテン本体と、前記カーテン係止部に取り付けられる被係止部と、を有し、
前記被係止部は、前記カーテン本体の前記幅方向の両端にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の入浴装置。
【請求項4】
前記カーテン係止部は、前記枠部の表面から突出するピンであり、
前記被係止部は、前記ピンに係合する輪状の紐であることを特徴とする請求項3に記載の入浴装置。
【請求項5】
前記車椅子が前記入浴スペースの予め定められた入浴位置まで進入した状態では、前記車椅子のうち後方に向かって斜め上方に傾くバックレスト部の一部が前記入浴スペースから外側に突出し、
前記カーテン係止部は、前記車椅子が前記入浴位置まで進入した位置にある状態で、前記カーテン係止部に前記被係止部が取り付けられたときに、前記カーテン本体が前記バックレスト部を含みより下側の領域を塞ぐ位置に配置されることを特徴とする請求項3または4に記載の入浴装置。
【請求項6】
前記カーテン係止部は、前記カーテン係止部に前記被係止部が取り付けられたときに、前記カーテン本体の上側部分が弛む位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載の入浴装置。
【請求項7】
前記進入口カーテンは、前記カーテン本体よりも硬い芯材を有し、
前記芯材は、前記カーテン本体のうち、前記上下方向に延びる一対の辺にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の入浴装置。
【請求項8】
前記入浴スペースにおいて入浴用水を噴射するシャワー用のノズルを備え、
前記ノズルは、前記入浴用水が前記進入口カーテンにかかる位置に配置されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の入浴装置。
【請求項9】
前記進入口カーテンは、前記進入口から外側に突出する入浴者の首回りの少なくとも一部を覆う部分を一体的に有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子が進入可能な入浴スペースを有する入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子に座る人を入浴させるための入浴装置が知られている。このような入浴装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の入浴装置は、浴槽本体と扉とを有する。特許文献1では、浴槽本体と扉とで囲まれたスペースが入浴スペースとなる。また、扉を開けることにより、車椅子を入浴スペースに進入させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、入浴装置の使用中に停電および災害などの異常事態が発生した場合、入浴者を入浴スペースから速やかに脱出させる必要がある。しかし、特許文献1のように扉が存在する構成では、入浴装置の使用中に異常事態が発生したとき、扉を開けなければならないので、入浴者を脱出させる作業に時間がかかる。
【0006】
ここで、入浴装置の扉を省略することにより、入浴スペースに対する車椅子の出し入れを短時間で行うことができる。このため、入浴装置の使用中に異常事態が発生したとき、入浴者を入浴スペースから速やかに脱出させることができる。
【0007】
しかし、入浴装置の扉を省略した場合には、入浴スペースの保温性が低下するという不都合が生じる。また、入浴者にかける湯および水などの入浴用水が入浴スペースの外側に飛散し易くなるという不都合が生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、入浴スペースの保温性の低下および入浴スペースの外側への入浴用水の飛散を抑制しつつ、入浴スペースに対する車椅子の出し入れを速やかに行うことが可能な入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一局面による入浴装置は、車椅子が進入可能な入浴スペースを有する入浴装置であって、入浴スペースを囲み、車椅子を入浴スペースに進入させる進入口を有するカバーと、カバーに対して着脱可能な進入口カーテンと、を備える。進入口カーテンは、カバーに取り付けられることにより、進入口のうち、車椅子が入浴スペースに進入するときに通る通路領域を塞ぐ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成では、入浴スペースの保温性の低下および入浴スペースの外側への入浴用水の飛散を抑制しつつ、入浴スペースに対する車椅子の出し入れを速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による入浴装置が使用されているときの状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による入浴装置に車椅子が進入するときの状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による入浴装置から進入口カーテンが取り外された状態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による入浴装置の入浴スペースに設けられる背面ノズルの配置位置を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による入浴装置の進入口を後方から見た図である。
【
図6】本発明の一実施形態による入浴装置の進入口カーテン単体の図である。
【
図7】第1変形例による進入口カーテンの図である。
【
図8】第2変形例による進入口カーテンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図4に示すように、本発明の一実施形態による入浴装置100は、入浴者Pが車椅子Cに座った状態で使用可能である。入浴装置100は、車椅子Cが進入可能な入浴スペースBS(
図4参照)を有する。また、入浴装置100は、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる進入口ETを有する。入浴スペースBSでは、湯および水などの入浴用水が車椅子Cに座る入浴者Pにかけられる。
【0013】
以下の説明では、入浴スペースBSへの進入方向と平行な方向を前後方向とし、入浴スペースBSへの進入時に進む方向を前方として前後を定義する。また、入浴装置100が載置される平坦な床面と直交する方向を上下方向とし、当該床面に対して入浴装置100が載置される側を上として上下を定義する。前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向とし、後方から前方に向かって右側となる側を右、左側となる側を左と定義する。
【0014】
入浴装置100を使用するとき、入浴者Pの介助を担う介助者(図示せず)は、車椅子Cを入浴スペースBSの予め定められた入浴位置まで進入させる。そして、車椅子Cが入浴位置まで進入した状態で、入浴装置100が使用される。車椅子Cが入浴位置まで進入した状態を
図1および
図4に示す。
【0015】
車椅子Cが入浴位置まで進入した状態では、車椅子Cのうち後方に向かって斜め上方に傾くバックレスト部BRの一部(上部)が入浴スペースBSから外側に突出する。バックレスト部BRの上部には、入浴者Pの頭部がのせられる。したがって、入浴装置100の使用中、入浴者Pの頭部が入浴スペースBSから外側に突出した状態となる(
図1および
図4参照)。
【0016】
図示しないが、入浴スペースBSには、ストッパーが設置される。入浴装置100を使用するとき、介助者は、車椅子Cの前輪がストッパーに当たるまで、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる。車椅子Cの前輪がストッパーに当たったときの車椅子Cの位置が通常の入浴位置である。なお、入浴装置100を使用するとき、車椅子Cの位置を通常の入浴位置に保持しておく必要はない。たとえば、入浴者Pの体形に合わせて、車椅子Cの位置を通常の入浴位置よりも後方にずらすことができる。
【0017】
入浴装置100は、ドーム型のカバー1を備える。カバー1は、本体カバー11および上側カバー12を含む。本体カバー11は、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂で構成される樹脂成型品である。本体カバー11は、ブロー成形などの樹脂成型にて形成できる。上側カバー12は、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂からなり、真空成形などの樹脂成型にて形成できる。
【0018】
本体カバー11は、後方カバー111と、右側カバー112と、左側カバー113と、前方カバー114と、を有する。後方カバー111、右側カバー112、左側カバー113および前方カバー114は、互いに連結される。なお、本体カバー11は、上側部分を有しない。すなわち、本体カバー11は、上側に開口を有する。上側カバー12は、本体カバー11の上側の開口に取り付けられる。本体カバー11の上側の開口は、上側カバー12によって塞がれる。
【0019】
なお、カバー11が単一の部材によって構成されてもよい。また、カバー11が5つ以上の部材から構成されてもよい。また、上側カバー12が2つ以上の部材から構成されてもよい。
【0020】
上側カバー12は、たとえば、介助口12Aを2つ有する。介助口12Aは、入浴者Pを介助する介助者が入浴スペースBSに手を入れるための開口である。なお、上側カバー12は透明である。このため、入浴装置100の上方から入浴者Pの状態を観察しながら、入浴者Pを介助できる。
【0021】
なお、図示しないが、上側カバー12には、介助口12Aを外側から塞ぐシートが着脱可能に取り付けられる。これにより、介助口12Aから入浴用水が飛散することを抑制できる。また、上側カバー12で介助口12Aを塞ぐことにより、入浴スペースBSの保温性が低下することを抑制できる。
【0022】
カバー1は、入浴スペースBSを囲む。言い換えると、入浴スペースBSは、カバー1で囲まれたスペースである。なお、カバー1は、床となる部分を有しない。すなわち、入浴スペースBSは、床無しのスペースであり、湯および水などを溜める浴槽ではない。
【0023】
カバー1は、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる進入口ETを後方に有する。具体的には、カバー1は、下枠の無いアーチ状の枠部10を後方に有する。枠部10は、カバー1のうち進入口ETの縁に沿う部分である。枠部10が下枠の無いアーチ状であるため、車椅子Cを進入口ETから入浴スペースBSに進入させるとき、車椅子Cを持ち上げる必要はない。車椅子Cを入浴スペースBSに進入させるときには、車椅子Cを押すだけでよい。
【0024】
なお、後方から見て、枠部10のうち上側の部分(上に凸の円弧部分)は、後方カバー111によって構成される。枠部10のうち右下側の部分は、右側カバー112の一部によって構成され、枠部10のうち左下側の部分は、左側カバー113の一部によって構成される。ただし、この構成に限定されない。枠部10が単一の部材によって構成されてもよい。また、枠部10が4つ以上の部材から構成されてもよい。
【0025】
入浴スペースBSには、シャワー用のノズル2が設けられる。ノズル2は、配管(図示せず)に接続される。配管には、給湯ユニット200(
図1参照)が接続される。給湯ユニット200は、入浴用水を配管に供給する。ノズル2は、入浴スペースBSにおいて、給湯ユニット200から供給される入浴用水を噴射する。これにより、入浴者Pに対し、入浴用水がかけられる。
【0026】
ノズル2は、右側カバー112および左側カバー113に複数ずつ取り付けられる。複数のノズル2のうち符号20を付したノズル2は、入浴者Pの背面(背中および腰など)にかける入浴用水を噴射する。以下の説明では、符号20を付すノズル2を背面ノズル20と呼び、他のノズル2と区別する。
【0027】
背面ノズル20は、右側カバー112および左側カバー113に2つずつ取り付けられる。ただし、背面ノズル20の個数は特に限定されない。右側カバー112および左側カバー113のそれぞれに対する背面ノズル20の設置数が1つずつでもよいし、3つ以上ずつでもよい。
【0028】
背面ノズル20は、他のノズル2よりも後方に位置する。具体的には、背面ノズル20は、車椅子Cが入浴位置まで進入した状態において、車椅子Cの座面Sよりも後方に位置する(
図4参照)。すなわち、背面ノズル20は、入浴者Pの腰よりも後方に位置する。また、背面ノズル20は、直進棒流ではなく広角に入浴用水を噴射する。背面ノズル20の噴射角は、たとえば、約60°~約70°(たとえば、約65°)である。このため、背面ノズル20から噴射される入浴用水は広範囲に広がる。
【0029】
これにより、背面ノズル20から噴射される入浴用水は車椅子Cのバックレスト部BRに向かう。その結果、入浴用水はバックレスト部BRに当たる。ここで、バックレスト部BRはメッシュ状である。このため、入浴者Pが車椅子Cに座った状態でも、背面ノズル20から噴射される入浴用水を入浴者Pの背中および腰にかけることができる。
【0030】
なお、右側カバー112および左側カバー113にそれぞれ取り付けられる複数のノズル2のうち、背面ノズル20とは別のノズル2は、肩、肘、腰、膝および足などに向けて入浴用水を噴射する。
【0031】
図示しないが、入浴装置100は、入浴スペースBSの上側に配置されるノズルをさらに備える。入浴スペースBSの上側のノズルは、入浴者Pの胸、腹および膝などに向けて入浴用水を噴射する。また、入浴装置100は、入浴スペースBSの下側に配置されるノズルをさらに備える。入浴スペースBSの下側のノズルは、入浴者Pの陰部および臀部に向けて入浴用水を噴射する。ここで、車椅子Cの座面Sは、穴もしくはU字状の切り欠きを有する。このため、入浴者Pが車椅子Cに座った状態でも、入浴スペースBSの下側ノズルから噴射される入浴用水を入浴者Pの陰部および臀部にかけることができる。
【0032】
ここで、入浴装置100は、進入口カーテン3を備える。進入口カーテン3は、カバー1に取り付けられる。具体的には、進入口カーテン3は、枠部10に取り付けられる。進入口カーテン3は、カバー1(枠部10)に対して着脱可能である。枠部10に取り付けられた進入口カーテン3を
図5に示す。また、進入口カーテン3単体を
図6に示す。
図5では、他の部材と区別すため、進入口カーテン3にハッチングを施す。
【0033】
進入口カーテン3は、カバー1(枠部10)に取り付けられることにより、進入口ETのうち、車椅子Cが入浴スペースBSに進入するときに通る通路領域を塞ぐ。このため、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させるとき、進入口カーテン3はカバー1から取り外される。車椅子Cを入浴スペースBSに進入させた後、進入口カーテン3がカバー1に取り付けられる。これにより、車椅子Cの通路領域が進入口カーテン3で塞がれる。
【0034】
そして、車椅子Cの通路領域が進入口カーテン3で塞がれた状態で、入浴装置100が使用される(入浴者Pに対して入浴用水が噴射される)。入浴装置100の使用後、入浴スペースBSから車椅子Cを退出させるとき、進入口カーテン3がカバー1から取り外され、車椅子Cの通路領域が開放される。これにより、入浴スペースBSから車椅子Cを退出させることができる。
【0035】
このように、入浴装置100の使用時、車椅子Cの通路領域を進入口カーテン3で塞ぐことにより、入浴スペースBSの保温性が低下することを抑制できる。また、入浴用水が入浴スペースBSから外側に飛散することを抑制できる。これにより、車椅子Cの通路領域に対して開閉する扉(カバー)を設置する必要はない。当該扉を省略できるので、入浴スペースBSに対する車椅子Cの出し入れを速やかに行うことができる。たとえば、停電および災害などの異常事態が発生したとき、速やかに、入浴者Pを入浴スペースBSから脱出させることができる。
【0036】
以下に、進入口カーテン3について、より詳細に説明する。
【0037】
進入口カーテン3は、生地からなる。たとえば、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を進入口カーテン3の素材として用いることができる。進入口カーテン3は、カーテン本体31と、係止紐32と、を有する。係止紐32は、「被係止部」および「紐」に相当する。
【0038】
カーテン本体31は、進入口カーテン3のうち進入口ET(車椅子Cの通路領域)を実際に塞ぐ部分である。カーテン本体31は、4辺を有する略矩形状である。すなわち、カーテン本体31は、隅部Rを4つ有する。各隅部Rは、円弧状に成形される。
【0039】
カーテン本体31は、カーテン本体31の短手方向が上下方向となり、カーテン本体31の長手方向が上下方向と直交する幅方向(左右方向)となるようカバー1に取り付けられる。なお、
図5および
図6に示すカーテン本体31のサイズおよび形状は一例であり、進入口ETの開口サイズおよび開口形状に応じて変更可能である。
【0040】
係止紐32は、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂で形成される。ただし、カーテン本体31とは異なる素材で係止紐32を形成してもよい。係止紐32は、輪状の紐である。たとえば、係止紐32は、紐を輪状となるようカーテン本体31に縫い付けることで得られる。
【0041】
変形例として、カーテン本体31に対して穿孔加工を施すことで得られる孔部を「被係止部」として機能させてもよい。また、「被係止部」として機能可能な器具(フックなど)をカーテン本体31に取り付けてもよい。
【0042】
係止紐32は、カーテン本体31の4辺のうち、所定辺の両端の各隅部Rに1つずつ設けられる。なお、所定辺は、カーテン本体31の4辺のうち、カーテン本体31がカバー1(枠部10)に取り付けられた状態では上辺となる辺(幅方向に延びる辺)である。すなわち、係止紐32は、カーテン本体31の幅方向の両端にそれぞれ設けられる。
【0043】
進入口カーテン3をカバー1(枠部10)に取り付けるため、カバー1には係止ピン4が設けられる。係止ピン4は、枠部10に設けられる。係止ピン4は、枠部10の表面から突出するピンである。たとえば、枠部10には、インサートナットが埋め込まれる。係止ピン4は、インサートナットにねじ込まれる。
【0044】
係止ピン4は、キノコ型の形状を有する。すなわち、枠部10の表面から突出する係止ピン4の突出部分のうち、先端部分は他の部分よりも大きい外径を有する。なお、係止ピン4の突出部分の形状は特に限定されない。たとえば、係止ピン4の突出部分の形状がフック状であってもよい。
【0045】
係止ピン4の個数は複数(たとえば、5つ)である。複数の係止ピン4は、後方から見て、アーチ状の枠部10のカーブに沿って間隔を隔てて並ぶ。複数の係止ピン4のうち2つは、進入口カーテン3の取り付けに用いられる。進入口カーテン3の取り付けに用いられる2つの係止ピン4は、他の係止ピン4よりも下側に位置する。以下の説明では、進入口カーテン3の取り付けに用いられる2つの係止ピン4に符号40を付して下側係止ピン40と呼び、他の係止ピン4と区別する。
【0046】
下側係止ピン40は「カーテン係止部」および「ピン」に相当する。下側係止ピン40は、後方から見て、アーチ状の枠部10のうち、進入口ETを幅方向に挟む一方側部分10a(右側部分)および他方側部分10b(左側部分)にそれぞれ配置される。2つの下側係止ピン40の上下方向の配置位置は、互いに同じである。
【0047】
進入口カーテン3は、下側係止ピン40に取り付けられる。具体的には、進入口カーテン3の幅方向の両端がそれぞれ下側係止ピン40に取り付けられる。そして、進入口カーテン3は、下側係止ピン40に対する取付個所から自重で垂れ下がる。なお、進入口カーテン3が下側係止ピン40に取り付けられた状態において、入浴装置100が載置されている床面に進入口カーテン3(カーテン本体31)の下辺が接触してもよいし、進入口カーテン3(カーテン本体31)の下辺と当該床面の間に若干の隙間が設けられてもよい。
【0048】
カバー1の枠部10に下側係止ピン40を設け、下側係止ピン40に進入口カーテン3を取り付けることにより、容易に、進入口ETの一部(車椅子Cの通路領域)を進入口カーテン3で塞ぐことができる。さらに、枠部10の一方側部分10aおよび他方側部分10bにそれぞれ下側係止ピン40が設けられる構成では、進入口カーテン3の幅方向の両端をそれぞれ互いに異なる下側係止ピン40に取り付けるだけで、進入口カーテン3を幅方向に広げることができるので、介助者にとっては利便性がよい。なお、枠部10の一方側部分10aおよび他方側部分10bにそれぞれ下側係止ピン40を設けることにより、進入口ETを幅方向に横切る取付器具(カーテンレールなど)を設ける必要がない。したがって、構成を簡略化できる。
【0049】
また、カーテン本体31に係止紐32が取り付けられた進入口カーテン3を用いることによって、容易に、進入口カーテン3を下側係止ピン40に取り付けることができる。具体的には、2つの係止紐32がそれぞれ互いに異なる下側係止ピン40に係合される。これにより、進入口カーテン3が下側係止ピン40に取り付けられた状態となる。このように、下側係止ピン40と係止紐32との組み合わせでは、容易かつ速やかに、進入口カーテン3の着脱作業を行うことができる。
【0050】
また、係止紐32はカーテン本体31の幅方向の両端にそれぞれ設けられるので、各係止紐32を互いに異なる下側係止ピン40に係合させるだけで、進入口ETの一部(車椅子Cの通路領域)を塞ぐように進入口カーテン3を幅方向に広げることができる。
【0051】
また、この構成では、2つの係止紐32のうち1つを下側係止ピン40から外すことにより、車椅子Cの通路領域を開放することができる。すなわち、入浴スペースBSに対して車椅子Cを出し入れするとき、2つの係止紐32の両方を各下側係止ピン40から外す必要はない。これにより、より速やかに、入浴スペースBSに対する車椅子Cの出し入れを行うことができる。
【0052】
なお、変形例として、対象物を挟んで保持するクリップ機能を有する部材を「カーテン係止部」として用いてもよい。変形例の構成では、係止紐32などの「被係合部」が不要となり、進入口カーテン3のコストダウンを図ることができる。
【0053】
ここで、車椅子Cが入浴位置まで進入した位置にあり、かつ、下側係止ピン40に係止紐32が取り付けられた状態では、進入口ETのうち、入浴スペースBSから外側に突出した車椅子Cのバックレスト部BRよりも下側の領域が進入口カーテン3によって塞がれる。具体的には、下側係止ピン40は、車椅子Cが入浴位置まで進入した位置にある状態で、下側係止ピン40に係止紐32が取り付けられたときに、カーテン本体31がバックレスト部BRを含みより下側の領域を塞ぐ位置に配置される。
【0054】
これにより、入浴装置100の使用中にバックレスト部BRの一部が入浴スペースBSから外側に突出する構成において、バックレスト部BRの下側の領域から入浴用水が飛散することを抑制できる。たとえば、車椅子Cの後方に介助者が居る場合には、当該介助者の足などに入浴用水の飛沫がかかることを抑制できる。
【0055】
また、カーテン本体31の幅方向の幅は、進入口ETの幅方向の幅よりも大きい。このため、カーテン本体31を幅方向に強く張らなくても、カーテン本体31で進入口ETの一部(車椅子Cの通路領域)を塞ぐことができる。
【0056】
カーテン本体31を幅方向に強く張る必要がないため、2つの下側係止ピン40のうち一方と他方との幅方向の間隔は、下側係止ピン40に係止紐32が取り付けられた状態において、カーテン本体31の上側部分(上辺部分およびその周辺部分)が弛むように設定される。言い換えると、下側係止ピン40は、下側係止ピン40に係止紐32が取り付けられたときに、カーテン本体31の上側部分が弛む位置に配置される。これにより、車椅子Cが通常の入浴位置に保持されているとき、カーテン本体31の上側部分はバックレスト部BRに接触しない。
【0057】
カーテン本体31の上側部分を弛ませることにより、カバー1に進入口カーテン3が取り付けられた状態において、車椅子Cを通常の入浴位置から後方にずらすことができる。言い換えると、車椅子Cに座る入浴者Pの体形(身長など)に合わせて、車椅子Cの位置を微調整することができる。仮に、カーテン本体31が幅方向に強く張られていれば、車椅子Cを後方にずらそうとしたとき、幅方向に強く張られたカーテン本体31の上側部分にバックレスト部BRが当たり、車椅子Cの移動が規制されてしまう。
【0058】
たとえば、入浴者Pの身長が比較的低い子供などの場合には、入浴者の身長が比較的高い場合に比べて、入浴者Pの頭部が前方に入り込み、入浴用水の飛沫が入浴者Pの顔にかかり易くなる。また、入浴者Pが円背者である場合には、入浴者Pが円背者でない場合よりも、入浴者Pの顔がカバー1の枠部10に近づくので、入浴者Pの顔とカバー1(枠部10)との間隔が狭くなる。すなわち、車椅子Cを通常の入浴位置に停止させた状態で入浴装置100を使用すると、入浴者Pの体形によっては、入浴者Pに不快感を与える可能性がある。
【0059】
このような場合、車椅子Cをより後方にずらすことができれば、利便性が良い。このため、カーテン本体31の上側部分は意図的に弛まされる。これにより、入浴者Pの体形に合わせて、車椅子Cの位置を後方にずらすことができる。なお、車椅子Cの位置が後方にずらされることにより、カーテン本体31の上側部分にバックレスト部BRが接触する場合がある。
【0060】
また、進入口カーテン3は、板状の芯材33を有する。芯材33は、棒状であってもよい。芯材33は、進入口カーテン3よりも硬い。たとえば、発泡ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を芯材33の素材として用いることができる。
【0061】
芯材33は、カーテン本体31のうち、進入口ETに進入口カーテン3が取り付けられた状態において、上下方向に延びる一対の辺にそれぞれ設けられる。芯材33は、カーテン本体と同じ生地で覆われる。そして、芯材33は、カーテン本体31の上下方向に延びる一対の辺にそれぞれ縫い付けられる。
図6では、芯材33を破線で示す。
【0062】
カーテン本体31に芯材33が縫い付けられた進入口カーテン3を用いることにより、係止紐32を下側係止ピン40に取り付けるだけで(カーテン本体31の下側部分を固定しなくても)、進入口カーテン3がなびいたりめくれたりすることを抑制できる。これにより、カーテン本体31の下側部分を固定するための対策をとる必要がない。また、進入口カーテン3がなびいたりめくれたりすることを抑制できるので、入浴スペースBSの保温性の低下および入浴用水の入浴スペースBSから外側への飛散をより抑制できる。
【0063】
また、背面ノズル20は、車椅子Cの座面S(入浴者Pの腰)よりも後方に位置し、広範囲に入浴用水を噴射するので、結果として、進入口カーテン3に入浴用水がかかる。たとえば、バックレスト部BRで跳ね返った入浴用水の飛沫も進入口カーテン3にかかる。すなわち、背面ノズル20は、噴射した入浴用水が進入口カーテン3にかかる位置に配置される。これにより、進入口カーテン3に入浴用水をかけることができる。その結果、擬似的な入浴用水の壁を構築できるので、保温効果が高まる。
【0064】
なお、入浴装置100は、ネックカーテン5をさらに備える。ネックカーテン5は、カバー1の枠部10に取り付けられる。具体的には、ネックカーテン5は、枠部10のうち上側の部分に取り付けられる。ネックカーテン5は、枠部10の上側の部分から垂れ下がり、進入口ETから外側に突出する入浴者Pの首回りを覆う。ネックカーテン5を
図1に図示する。便宜上、他の図面には、ネックカーテン5を図示しない。
【0065】
進入口カーテン3は、進入口ETのうち、入浴スペースBSから外側に突出するバックレスト部BRの下側領域(車椅子Cの通路領域)を塞ぐ。一方で、ネックカーテン5は、進入口ETのうち、入浴スペースBSから外側に突出するバックレスト部BRの上側領域を塞ぐ。ここで、入浴装置100の使用中、入浴者Pの頭部はバックレスト部BRの上部にのせられる。このため、入浴者Pの頭部周辺にネックカーテン5が配置された状態となる。これにより、入浴者Pの顔に入浴用水がかかることを抑制できる。
【0066】
ここで、
図7および
図8を参照し、進入口カーテン3の変形例(第1変形例および第2変形例)について説明する。変形例では、進入口カーテン3は、進入口ETから外側に突出する入浴者の首回りの少なくとも一部を覆う部分300(以下、ネックカーテン部300と称する)を一体的に有する。すなわち、進入口カーテン3は、ネックカーテン5として機能する部分300を一体的に有する。変形例では、ネックカーテン5が省略される。
【0067】
ネックカーテン部300は、両開きカーテンのような形態を有する。すなわち、ネックカーテン部300は、第1カーテン部301および第2カーテン部302を有する。そして、第1カーテン部301の左側部分および第2カーテン部302の右側部分は、進入口ETの左右方向の略中央で互いに重なる。
【0068】
第1変形例では、
図7に示すように、第1カーテン部301および第2カーテン部302部が互いに縫い合わされる。
図7では、縫い合わせ個所を二点鎖線で示す。進入口カーテン3は、第2カーテン部302を一体的に有する。言い換えると、進入口カーテン3および第2カーテン部302は、単一の生地から切り出される。第1カーテン部301は、進入口カーテン3の第2カーテン部302に後付けされる。
【0069】
第2変形例では、
図8に示すように、第1変形例と同様、進入口カーテン3は、第2カーテン部302を一体的に有する。ただし、第1カーテン部301および第2カーテン部302は互いに縫い合わされない。
図8では、第1カーテン部301を図示しない。
【0070】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 カバー
3 進入口カーテン
10 枠部
10a 一方側部分
10b 他方側部分
20 背面ノズル(ノズル)
31 カーテン本体
32 係止紐(被係止部、紐)
33 芯材
40 下側係止ピン(カーテン係止部、ピン)
100 入浴装置
BR バックレスト部
BS 入浴スペース
C 車椅子
ET 進入口