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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116572
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】入浴装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220803BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61H33/00 310C
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012798
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000182373
【氏名又は名称】酒井医療株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八子 陽
(72)【発明者】
【氏名】上原 大樹
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132FB00
2D132FC01
2D132FK01
4C094AA01
4C094BB04
4C094BC02
4C094CC02
4C094GG05
(57)【要約】
【課題】ネックカーテンを入浴者の体形に合った適切な位置に配置する。
【解決手段】入浴装置は、進入口を有するカバーと、進入口の縁に沿う枠部に取り付けられるネックカーテンと、を備え、ネックカーテンは、枠部に沿う形状の縁部を有し、枠部に縁部が取り付けられることにより、進入口から外側に突出する入浴者の首回りを覆い、枠部は、アーチ部と、第1サイド部と、第2サイド部と、を有し、アーチ部は、進入口の上側の縁を規定し、第1サイド部は、進入口の右側の縁を規定し、第2サイド部は、進入口の左側の縁を規定し、縁部は、アーチ部に沿う上縁部と、第1サイド部に沿う第1縁部と、第2サイド部に沿う第2縁部と、を有し、ネックカーテンは、縁部の一部に芯材を有し、芯材は、上縁部に設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子が進入可能な入浴スペースを有する入浴装置であって、
前記入浴スペースを囲み、前記車椅子を前記入浴スペースに進入させる進入口を有するカバーと、
前記カバーのうち前記進入口の縁に沿う枠部に取り付けられるネックカーテンと、を備え、
前記ネックカーテンは、前記枠部に沿う形状の縁部を有し、前記枠部に前記縁部が取り付けられることにより、前記進入口から外側に突出する入浴者の首回りを覆い、
前記枠部は、アーチ部と、第1サイド部と、第2サイド部と、を有し、
前記アーチ部は、前記進入口の上側の縁を規定し、
前記第1サイド部は、前記進入口の上側の縁に繋がる右側の縁を規定し、
前記第2サイド部は、前記進入口の上側の縁に繋がる左側の縁を規定し、
前記縁部は、前記アーチ部に沿う上縁部と、前記第1サイド部に沿う第1縁部と、前記第2サイド部に沿う第2縁部と、を有し、
前記ネックカーテンは、前記縁部の一部に芯材を有し、
前記芯材は、前記上縁部に設けられることを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記上縁部、前記第1縁部および前記第2縁部は、それぞれ、前記枠部に対して個別に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の入浴装置。
【請求項3】
前記第1サイド部および前記第2サイド部は、それぞれ、カーテン係止部を有し、
前記第1縁部および前記第2縁部は、それぞれ、被係止部を有し、
前記第1縁部の前記被係止部は、前記第1サイド部の前記カーテン係止部に対して取り付けおよび取り外し可能であり、
前記第2縁部の前記被係止部は、前記第2サイド部の前記カーテン係止部に対して取り付けおよび取り外し可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の入浴装置。
【請求項4】
前記カーテン係止部は、前記枠部の表面から突出するピンであり、
前記被係止部は、前記カーテン係止部に係合可能な輪状の紐であることを特徴とする請求項3に記載の入浴装置。
【請求項5】
前記アーチ部は、前記カーテン係止部を有し、
前記上縁部は、前記被係止部を有することを特徴とする請求項4に記載の入浴装置。
【請求項6】
前記ネックカーテンは、第1カーテンと、第2カーテンと、によって構成され、
前記第1カーテンは、前記第1縁部を有する部分であり、
前記第2カーテンは、前記第2縁部を有する部分であり、
前記ネックカーテンは、前記第1カーテンおよび前記第2カーテンが互いに重なる重畳部分を有し、
前記重畳部分は、前記進入口を塞ぐ位置に配置されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の入浴装置。
【請求項7】
前記第1カーテンおよび前記第2カーテンは、それぞれの前記上縁部が互いに縫い合わされることによって一体化されることを特徴とする請求項6に記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介助が必要な人を入浴させるための入浴装置が知られている。このような入浴装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の入浴装置は、ストレッチャーに横たわる人を対象とする。特許文献1の入浴装置は、入出口を有する入浴用筐体を備える。入浴用筐体の内側スペースが入浴スペースとなる。入浴装置を使用するとき、介助者は、入浴者が横たわるストレッチャーを入浴スペースに進入させる。そして、入浴者の頭部が入出口から外側に突出した状態で、入浴装置が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-041581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
介助が必要な人(ストレッチャーに横たわる人および車椅子に座る人など)を入浴させるための入浴装置には、入浴者の首回りを覆うネックカーテンが設けられる。入浴者の首回りをネックカーテンで覆うことにより、入浴者の顔に飛沫がかかることを抑制できる。
【0006】
ここで、入浴者の体形は様々である。入浴者が大人の場合もあれば子供の場合もある。また、入浴者が円背者の場合もある。しかし、一般的に、入浴装置に取り付け可能なネックカーテンは1種類であり、入浴者の体形ごとに準備されていない。したがって、ネックカーテンを入浴者の体形に合った適切な位置に配置できない(入浴者の首回りを良好に覆うことができない)という不都合が生じ得る。
【0007】
なお、ネックカーテンを入浴者の体形に合った適切な位置に配置できなければ、入浴者の顔に飛沫がかかる場合がある。また、ネックカーテンが入浴者の顔に触れて入浴者に不快感を与える場合がある。
【0008】
また、ネックカーテンを1枚の生地で構成した場合には、入浴スペースの保温性が低下するという不都合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、入浴スペースの保温性が低下することを抑制しつつ、ネックカーテンを入浴者の体形に合った適切な位置に配置することが可能な入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一局面による入浴装置は、車椅子が進入可能な入浴スペースを有する入浴装置であって、入浴スペースを囲み、車椅子を入浴スペースに進入させる進入口を有するカバーと、カバーのうち進入口の縁に沿う枠部に取り付けられるネックカーテンと、を備える。ネックカーテンは、枠部に沿う形状の縁部を有し、枠部に縁部が取り付けられることにより、進入口から外側に突出する入浴者の首回りを覆う。枠部は、アーチ部と、第1サイド部と、第2サイド部と、を有する。アーチ部は、進入口の上側の縁を規定し、第1サイド部は、進入口の上側の縁に繋がる右側の縁を規定し、第2サイド部は、進入口の上側の縁に繋がる左側の縁を規定する。縁部は、アーチ部に沿う上縁部と、第1サイド部に沿う第1縁部と、第2サイド部に沿う第2縁部と、を有する。ネックカーテンは、縁部の一部に芯材を有する。芯材は、上縁部に設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成では、ネックカーテンを入浴者の体形に合った適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による入浴装置が使用されているときの状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による入浴装置に車椅子が進入するときの状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による入浴装置の進入口が開放された状態(ネックカーテンが取り外された状態)を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による入浴装置の入浴者の身長が高い場合の入浴者とネックカーテンとの位置関係を示す図(第1縁部および第2縁部がそれぞれ第1サイド部および第2サイド部に取り付けられた状態の図)である。
図5】本発明の一実施形態による入浴装置の進入口を後方から見た図である。
図6】本発明の一実施形態による入浴装置のネックカーテン単体の図である。
図7】本発明の一実施形態による入浴装置の入浴者の身長が低い場合の入浴者とネックカーテンとの位置関係を示す図(第1縁部および第2縁部がそれぞれ第1サイド部および第2サイド部から取り外された状態の図)である。
図8】変形例によるネックカーテンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図4に示すように、本発明の一実施形態による入浴装置100は、入浴者Pが車椅子Cに座った状態で使用可能である。入浴装置100は、車椅子Cが進入可能な入浴スペースBS(図4参照)を有する。また、入浴装置100は、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる進入口ETを有する。入浴スペースBSでは、湯および水などの入浴用水が車椅子Cに座る入浴者Pにかけられる。
【0014】
以下の説明では、入浴スペースBSへの進入方向と平行な方向を前後方向とし、入浴スペースBSへの進入時に進む方向を前方として前後を定義する。また、入浴装置100が載置される平坦な床面と直交する方向を上下方向とし、当該床面に対して入浴装置100が載置される側を上として上下を定義する。前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向とし、後方から前方に向かって右側となる側を右、左側となる側を左と定義する。
【0015】
入浴装置100を使用するとき、入浴者Pの介助を担う介助者(図示せず)は、車椅子Cを入浴スペースBSの予め定められた入浴位置まで進入させる。そして、車椅子Cが入浴位置まで進入した状態で、入浴装置100が使用される。車椅子Cが入浴位置まで進入した状態を図1および図4に示す。
【0016】
車椅子Cが入浴位置まで進入した状態では、車椅子Cのうち後方に向かって斜め上方に傾くバックレスト部BRの一部(上部)が入浴スペースBSから外側に突出する。バックレスト部BRの上部には、入浴者Pの頭部がのせられる。したがって、入浴装置100の使用中、入浴者Pの頭部が入浴スペースBSから外側に突出した状態となる(図1および図4参照)。
【0017】
図示しないが、入浴スペースBSには、ストッパーが設置される。入浴装置100を使用するとき、介助者は、車椅子Cの前輪がストッパーに当たるまで、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる。車椅子Cの前輪がストッパーに当たったときの車椅子Cの位置が通常の入浴位置である。なお、入浴装置100を使用するとき、車椅子Cの位置を通常の入浴位置に保持しておく必要はない。たとえば、入浴者Pの体形に合わせて、車椅子Cの位置を通常の入浴位置よりも後方にずらすことができる。
【0018】
入浴装置100は、ドーム型のカバー1を備える。カバー1は、本体カバー11および上側カバー12を含む。本体カバー11は、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂で構成される樹脂成型品である。本体カバー11は、ブロー成形などの樹脂成型にて形成できる。上側カバー12は、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂からなり、真空成形などの樹脂成型にて形成できる。
【0019】
本体カバー11は、後方カバー101と、右側カバー102と、左側カバー103と、前方カバー104と、を有する。後方カバー101、右側カバー102、左側カバー103および前方カバー104は、互いに連結される。なお、本体カバー11は、上側部分を有しない。すなわち、本体カバー11は、上側に開口を有する。上側カバー12は、本体カバー11の上側の開口に取り付けられる。本体カバー11の上側の開口は、上側カバー12によって塞がれる。
【0020】
なお、カバー11が単一の部材によって構成されてもよい。また、カバー11が5つ以上の部材から構成されてもよい。また、上側カバー12が2つ以上の部材から構成されてもよい。
【0021】
上側カバー12は、たとえば、介助口12Aを2つ有する。介助口12Aは、入浴者Pを介助する介助者が入浴スペースBSに手を入れるための開口である。なお、上側カバー12は透明である。このため、入浴装置100の上方から入浴者Pの状態を観察しながら、入浴者Pを介助できる。
【0022】
なお、図示しないが、上側カバー12には、介助口12Aを外側から塞ぐシートが着脱可能に取り付けられる。これにより、介助口12Aから入浴用水が飛散することを抑制できる。また、上側カバー12で介助口12Aを塞ぐことにより、入浴スペースBSの保温性が低下することを抑制できる。
【0023】
カバー1は、入浴スペースBSを囲む。言い換えると、入浴スペースBSは、カバー1で囲まれたスペースである。なお、カバー1は、床となる部分を有しない。すなわち、入浴スペースBSは、床無しのスペースであり、湯および水などを溜める浴槽ではない。
【0024】
カバー1は、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させる進入口ETを後方に有する。具体的には、カバー1は、下枠の無いアーチ状の枠部10を後方に有する。枠部10は、カバー1のうち進入口ETの縁に沿う部分である。枠部10が下枠の無いアーチ状であるため、車椅子Cを進入口ETから入浴スペースBSに進入させるとき、車椅子Cを持ち上げる必要はない。車椅子Cを入浴スペースBSに進入させるときには、車椅子Cを押すだけでよい。
【0025】
なお、入浴装置100の後方から見て、枠部10のうち上側の部分(上に凸の円弧部分)は、後方カバー101によって構成される。枠部10のうち右下側の部分は、右側カバー102の一部によって構成され、枠部10のうち左下側の部分は、左側カバー103の一部によって構成される。ただし、この構成に限定されない。枠部10が単一の部材によって構成されてもよい。また、枠部10が4つ以上の部材から構成されてもよい。
【0026】
また、枠部10は、入浴装置100の側方から見て、前方に向かって斜め上方に傾斜する(図2参照)。具体的には、進入口ETは、上側領域10Uと下側領域10Lとに分類される。入浴装置100の側方から見て、枠部10のうち、進入口ETの上側領域10Uを規定する部分が前方に向かって斜め上方に傾斜する。なお、入浴装置100の使用中、入浴者Pの頭部は、入浴スペースBSから上側領域10Uを介して外側に突出する。
【0027】
入浴スペースBSには、シャワー用のノズル2が設けられる。ノズル2は、配管(図示せず)に接続される。配管には、給湯ユニット200(図1参照)が接続される。給湯ユニット200は、入浴用水を配管に供給する。ノズル2は、入浴スペースBSにおいて、給湯ユニット200から供給される入浴用水を噴射する。これにより、入浴者Pに対し、入浴用水がかけられる。
【0028】
ノズル2は、右側カバー102および左側カバー103に複数ずつ取り付けられる。なお、ノズル2の個数は特に限定されない。
【0029】
右側カバー102および左側カバー103の各ノズル2のうち、符号21を付したノズル2は、入浴者Pの背面(背中および腰など)にかける入浴用水を噴射する。ノズル21は、他のノズル2よりも後方に位置する。具体的には、ノズル21は、車椅子Cが入浴位置まで進入した状態において、車椅子Cの座面Sよりも後方に位置する(図4参照)。すなわち、ノズル21は、入浴者Pの腰よりも後方に位置する。また、ノズル21は、直進棒流ではなく広角に入浴用水を噴射する。ノズル21の噴射角は、たとえば、約60°~約70°(たとえば、約65°)である。このため、ノズル21から噴射される入浴用水は広範囲に広がる。
【0030】
これにより、ノズル21から噴射される入浴用水は車椅子Cのバックレスト部BRに向かう。その結果、入浴用水はバックレスト部BRに当たる。ここで、バックレスト部BRはメッシュ状である。このため、入浴者Pが車椅子Cに座った状態でも、ノズル21から噴射される入浴用水を入浴者Pの背中および腰にかけることができる。
【0031】
また、右側カバー102および左側カバー103の各ノズル2のうち、符号22を付したノズル2は、肩、肘、腰、膝および足などに向けて入浴用水を噴射する。ノズル22は、直進棒流ではなく広角に入浴用水を噴射する。ノズル22の噴射角は、たとえば、約60°~約70°(たとえば、約65°)である。すわなち、ノズル22から噴射される入浴用水は広範囲に広がる。
【0032】
ここで、一部のノズル22は、車椅子Cが入浴位置まで進入した状態において、車椅子Cに座る入浴者Pの肩口およびその周辺に配置される。このため、ノズル22から噴射される入浴用水の飛沫が入浴者Pの顔に向かう可能性がある。したがって、入浴者Pの首回りは、後述するネックカーテン5で覆われる。入浴者Pの首回りをネックカーテン5で覆うことにより、入浴者Pの顔に飛沫がかかることを抑制できる。ネックカーテン5については、後に詳細に説明する。
【0033】
図示しないが、入浴装置100は、入浴スペースBSの上側に配置されるノズルをさらに備える。入浴スペースBSの上側のノズルは、入浴者Pの胸、腹および膝などに向けて入浴用水を噴射する。また、入浴装置100は、入浴スペースBSの下側に配置されるノズルをさらに備える。入浴スペースBSの下側のノズルは、入浴者Pの陰部および臀部に向けて入浴用水を噴射する。ここで、車椅子Cの座面Sは、穴もしくはU字状の切り欠きを有する。このため、入浴者Pが車椅子Cに座った状態でも、入浴スペースBSの下側ノズルから噴射される入浴用水を入浴者Pの陰部および臀部にかけることができる。
【0034】
また、入浴装置100は、進入口カーテン3(図1参照)を備える。進入口カーテン3は、カバー1の枠部10に取り付けられる。進入口カーテン3は、枠部10に対して着脱可能である。具体的には、枠部10は、係止ピン4を有する。進入口カーテン3は、係止ピン4に係合される。係止ピン4については、後に詳細に説明する。
【0035】
進入口カーテン3は、カバー1(枠部10)に取り付けられることにより、進入口ETのうち、車椅子Cが入浴スペースBSに進入するときに通る通路領域を塞ぐ。すなわち、進入口カーテン3は、進入口ETのうち下側領域10Lを塞ぐ。したがって、車椅子Cを入浴スペースBSに進入させるとき、進入口カーテン3はカバー1から取り外される。車椅子Cを入浴スペースBSに進入させた後、進入口カーテン3がカバー1に取り付けられる。これにより、車椅子Cの通路領域が進入口カーテン3で塞がれる。
【0036】
そして、車椅子Cの通路領域が進入口カーテン3で塞がれた状態で、入浴装置100が使用される(入浴者Pに対して入浴用水が噴射される)。入浴装置100の使用後、入浴スペースBSから車椅子Cを退出させるとき、進入口カーテン3がカバー1から取り外され、車椅子Cの通路領域が開放される。これにより、入浴スペースBSから車椅子Cを退出させることができる。
【0037】
以下、図5および図6を参照し、ネックカーテン5について詳細に説明する。
【0038】
入浴装置100は、ネックカーテン5を備える。ネックカーテン5は、カバー1の枠部10に取り付けられる。詳細は後述するが、ネックカーテン5は、第1カーテン51と、第2カーテン52と、によって構成される。そして、ネックカーテン5は、両開きカーテンのような形態を有する。
【0039】
ネックカーテン5は、車椅子Cが入浴位置まで進入した位置にある状態において、進入口ETのうち、少なくとも上側領域10Uを塞ぐ。上側領域10Uは、車椅子Cが入浴位置まで進入した位置にある状態において、入浴スペースBSから外側に突出するバックレスト部BRの上側の領域である。入浴装置100の使用中、ネックカーテン5は、進入口ETから外側に突出する入浴者Pの首回りを覆う。これにより、入浴者Pの顔に飛沫がかかることを抑制できる。
【0040】
ネックカーテン5は、生地からなる。たとえば、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂をネックカーテン5の素材として使用できる。ネックカーテン5は、アーチ状の枠部10に沿う形状の縁部50を有する。
【0041】
具体的には、図5に示すように、枠部10は、アーチ部110と、第1サイド部111と、第2サイド部112と、を有する。図5では、枠部10とネックカーテン5とを区別するため、ネックカーテン5にドット柄を付す。アーチ部110は、入浴装置100の後方から見て、上に凸の円弧状である。アーチ部110は、進入口ETの上側の縁(上に凸の円弧状の縁)を規定する部分である。
【0042】
また、第1サイド部111は、入浴装置100の後方から見て、アーチ部110の右側下端から下方に延びる。第2サイド部112は、入浴装置100の後方から見て、アーチ部110の左側下端から下方に延びる。第1サイド部111は、進入口ETの上側の縁に繋がる右側の縁(上下方向に延びる縁)を規定する部分である。第2サイド部112は、進入口ETの上側の縁に繋がる左側の縁(上下方向に延びる縁)を規定する部分である。
【0043】
ネックカーテン5の縁部50は、図6に示すように、上縁部510と、第1縁部511と、第2縁部512と、を有する。上縁部510は、アーチ部110に沿う形状を有する部分である。第1縁部511は、第1サイド部111に沿う形状を有する部分である。第2縁部512は、第2サイド部112に沿う形状を有する部分である。
【0044】
また、ネックカーテン5は、縁部50の一部に芯材500を有する。芯材500は、ネックカーテン5のカーテン本体よりも硬い。たとえば、発泡ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を芯材500の素材として用いることができる。
【0045】
芯材500は、上縁部510に設けられる。具体的には、芯材500は、上縁部510の全領域にわたって設けられる。芯材500は、カーテン本体と同じ撥水性生地で覆われる。そして、芯材500は、上縁部510に縫い付けられる。図6では、芯材500の設置位置を明確にするため、便宜上、芯材500にドット柄を付す。実際には、芯材500はネックカーテン5の素材生地で覆われるため、目視できない。
【0046】
ここで、芯材500は、上縁部510に設けられるが、第1縁部511および第2縁部512には設けられない。このため、ネックカーテン5のうち、第1サイド部111および第2サイド部112に取り付けられる部分は柔軟性がある。これにより、以下のような効果が得られる。
【0047】
たとえば、図4に示すように、入浴者Pが大人であり身長(座高)が高い場合、入浴者Pの頭部の全て(肩口から上)が進入口ETから外側に突出する。この場合には、ネックカーテン5のうち、上縁部510、第1縁部511および第2縁部512の全てを枠部10に取り付ければよい。
【0048】
一方で、図7に示すように、入浴者Pの身長が低い場合(たとえば、入浴者Pが子供の場合)には、入浴者Pの身長が高い場合に比べて、入浴者Pの頭部が前方にずれる。場合によっては、入浴者Pの頭部の一部が入浴スペースBSに入り込む。
【0049】
このような場合、ネックカーテン5のうち、上縁部510をアーチ部110に取り付ける一方で、第1縁部511の第1サイド部111に対する取り付けおよび第2縁部512の第2サイド部112に対する取り付けを行わなければよい。ここで、第1縁部511および第2縁部512には、芯材500が設けられない。
【0050】
これにより、ネックカーテン5の下側部分(アーチ部110に対する取付個所よりも下側の部分)が垂れ下がり、ネックカーテン5の下側部分が入浴スペースBSに入り込む(図7参照)。ネックカーテン5のうち入浴スペースBSに入り込んだ下側部分は、身長の低い入浴者Pの首回りを覆う。その結果、入浴者Pの身長が低くても、入浴者Pの顔に飛沫がかかることを抑制できる。また、入浴者Pが円背者であっても、入浴者Pの顔に飛沫がかかることを抑制できる。このように、第1縁部511および第2縁部512に芯材500を設けない構成(上縁部510にのみ芯材500を設ける構成)では、容易に、ネックカーテン5を入浴者Pの体形に合った位置に配置できる。
【0051】
ネックカーテン5を枠部10に取り付けるため、枠部10に係止ピン4が設けられる。係止ピン4は「カーテン係止部」に相当する。係止ピン4は、枠部10の表面から突出するピンである。たとえば、枠部10には、インサートナットが埋め込まれる。係止ピン4は、インサートナットにねじ込まれる。
【0052】
係止ピン4は、キノコ型の形状を有する。すなわち、枠部10の表面から突出する係止ピン4の突出部分のうち、先端部分は他の部分よりも大きい外径を有する。なお、係止ピン4の突出部分の形状は特に限定されない。たとえば、係止ピン4の突出部分の形状がフック状であってもよい。
【0053】
係止ピン4の個数は複数(たとえば、5つ)である。複数の係止ピン4は、入浴装置100の後方から見て、アーチ状の枠部10のカーブに沿って間隔を隔てて並ぶ。アーチ部110は、たとえば、3つの係止ピン4を有する。また、たとえば、第1サイド部111および第2サイド部112は、それぞれ、1つの係止ピン4を有する。
【0054】
以下の説明では、アーチ部110に設けられる3つの係止ピン4に符号4Uを付して上側係止ピン4Uと呼ぶ。第1サイド部111および第2サイド部112にそれぞれ設けられる2つの係止ピン4に符号4Lを付して下側係止ピン4Lと呼ぶ。
【0055】
なお、下側係止ピン4Lは、進入口カーテン3の枠部10に対する取り付けにも使用される。すなわち、進入口カーテン3は、第1サイド部111および第2サイド部112に取り付けられる。進入口カーテン3を下側係止ピン4Lに取り付けることにより、進入口ETの下側領域10L(車椅子Cの通路領域)が進入口カーテン3で塞がれる。
【0056】
ネックカーテン5のうち、上縁部510は、アーチ部110の3つの上側係止ピン4Uに取り付けられる。第1縁部511は、第1サイド部111の下側係止ピン4Lに取り付けられ、第2縁部512は、第2サイド部112の下側係止ピン4Lに取り付けられる。すなわち、上縁部510、第1縁部511および第2縁部512は、それぞれ、枠部10に対して個別に取り付けられる。これにより、容易に、枠部10に上縁部510だけが取り付けられた状態(第1縁部511および第2縁部512が垂れ下がった状態)にすることができる。すなわち、容易に、入浴者Pの体形に合わせて、ネックカーテン5の位置を調整できる。
【0057】
ネックカーテン5を枠部10に取り付けるため、縁部50は係止紐53を有する。係止紐53は「被係止部」に相当する。係止紐53は、係止ピン4に係合可能な輪状の紐である。係止紐53は、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂で形成される。ただし、ネックカーテン5の本体とは異なる素材で係止紐53を形成してもよい。係止紐53は、紐を輪状となるよう縁部50に縫い付けることで得られる。
【0058】
変形例として、係止紐53の代わりに、縁部50に対して穿孔加工を施すことで得られる孔部を形成してもよい。係止紐53と同様の機能を有する器具(フックなど)を縁部50に取り付けてもよい。
【0059】
ネックカーテン5の第1縁部511および第2縁部512は、それぞれ、係止紐53を1つずつ有する。第1縁部511の係止紐53は、第1サイド部111の下側係止ピン4Lに対して取り付けおよび取り外し可能である。第2縁部512の係止紐53は、第2サイド部112の下側係止ピン4Lに対して取り付けおよび取り外し可能である。これにより、枠部10に対する第1縁部511および第2縁部512のそれぞれの着脱作業を容易に行うことができる。特に、係止ピン4と係止紐53との組み合わせでは、着脱作業の作業工程が少ない(係止ピン4に対する輪状の紐の挿抜だけでよい)ので、より一層、枠部10に対する第1縁部511および第2縁部512のそれぞれの着脱作業が容易となる。
【0060】
また、ネックカーテン5の上縁部510は、たとえば、係止紐53を3つ有する。上縁部510の係止紐53の個数は、上側係止ピン4Uの個数と同数である。上縁部510の3つの係止紐53は、それぞれ、3つの上側係止ピン4Uに取り付けられる。この構成では、アーチ部110に対する上縁部510の取り付け作業が容易になり、アーチ部110からの上縁部510の取り外し作業も容易になる。また、上側係止ピン4Uは下側係止ピン4Lと同じ部品である。このため、部品の共通化によるコストダウンを図ることができる。
【0061】
なお、上縁部510には、芯材500が設けられる。このため、上側係止ピン4Uに対して上縁部510の係止紐53が係合された状態において、上縁部510が大きく波打つことを抑制できる。すなわち、アーチ部110の表面と上縁部510との間に大きな隙間が生じることを抑制できる。これにより、アーチ部110の表面と上縁部510との隙間から飛沫が飛散することを抑制できる。また、入浴スペースBSの保温性が低下することを抑制できる。
【0062】
変形例として、対象物を挟んで保持するクリップ機能を有する部材を「カーテン係止部」として用いてもよい。変形例の構成では、係止紐53などの「被係合部」が不要となるので、ネックカーテン5のコストダウンを図ることができる。
【0063】
ここで、ネックカーテン5は、第1カーテン51と、第2カーテン52と、によって構成される。ただし、ネックカーテン5の構成は特に限定されない。たとえば、ネックカーテン5が単一の生地から切り出されてもよい。
【0064】
第1カーテン51は、ネックカーテン5のうち第1縁部511を有する部分である。第2カーテン52は、ネックカーテン5のうち第2縁部512を有する部分である。第1カーテン51の左側部分および第2カーテン52の右側部分は、互いに重ねられる。すなわち、ネックカーテン5は、第1カーテン51および第2カーテン52が互いに重なる重畳部分5Aを有する。
【0065】
第1カーテン51と第2カーテン52とでネックカーテン5を構成することにより、ネックカーテン5が両開きカーテンのような形態となる。すなわち、第1カーテン51を右側に寄せ、第2カーテン52を左側に寄せることにより、ネックカーテン5を左右に分けることができる。ネックカーテン5を左右に分けると、第1カーテン51と第2カーテン52とが重なっていた部分が開口される。
【0066】
重畳部分5Aは、進入口ETを塞ぐ位置に配置される。具体的には、重畳部分5Aは、進入口ETのうち、入浴者Pの頭部が突出する領域に配置される。これにより、入浴装置100の使用中、第1カーテン51と第2カーテン52とが重なっていた部分(ネックカーテン5が左右に分けられることで生じる開口)から入浴者Pの頭部を突出させることができる。すなわち、容易に、入浴者Pの首回りをネックカーテン5で覆うことができる。
【0067】
また、第1カーテン51および第2カーテン52は、それぞれの上縁部510が互いに縫い合わされることによって一体化される。第1カーテン51および第2カーテン52のそれぞれの上縁部510とは異なる部分は、互いに縫い合わされない。この構成では、第1カーテン51と第2カーテン52とを一体化しても、ネックカーテン5を両開きカーテンのような形態にできる。
【0068】
ここで、ネックカーテン5の変形例について説明する。図8に示すように、変形例によるネックカーテン5は、上記実施形態と同様、第1カーテン51および第2カーテン52を有する。ただし、変形例では、第1カーテン51および第2カーテン52は互いに縫い合わされない。なお、図8では、第1カーテン51および第2カーテン52を互いに離して図示する。
【0069】
変形例による第1カーテン51および第2カーテン52は、カバー1の枠部10に取り付けられることにより、枠部10の上側の部分から垂れ下がる。また、第1カーテン51の左側部分および第2カーテン52の右側部分は、互いに重ねられる。変形例によるネックカーテン5のその他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0070】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 カバー
4 係止ピン(カーテン係止部、ピン)
5 ネックカーテン
5A 重畳部分
10 枠部
50 縁部
51 第1カーテン
52 第2カーテン
53 係止紐(被係止部、紐)
100 入浴装置
110 アーチ部
111 第1サイド部
112 第2サイド部
500 芯材
510 上縁部
511 第1縁部
512 第2縁部
BS 入浴スペース
C 車椅子
ET 進入口
P 入浴者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8