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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116574
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】入浴装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220803BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61H33/00 T
A61H33/00 310G
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012800
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000182373
【氏名又は名称】酒井医療株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八子 陽
(72)【発明者】
【氏名】上原 大樹
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132FA07
2D132FH01
2D132FH04
2D132FK01
4C094AA01
4C094BB04
4C094BB16
4C094CC04
4C094DD14
4C094EE20
4C094FF09
4C094FF17
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】入浴者から洗い流された汚れのノズルへの付着を防ぐ。
【解決手段】入浴装置は入浴スペースを備え、車椅子が進入可能である。入浴装置はドームと下部ノズルを備える。ドームは入浴スペースを囲み、車椅子の進入口を備える。下部ノズルは、ドーム内に配置され、進入口から進入した車椅子に乗せられた入浴者に向けて、液体を噴射する。車椅子の進入方向と平行な方向を方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、下部ノズルは、チルトされた車椅子の座面部の後側の端よりも前側、かつ、座面部よりも下に配置されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車椅子が進入可能な入浴装置であって、
前記入浴スペースを囲み、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備えるドームと、
前記ドーム内に配置され、前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する下部ノズルと、
を備え、
前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、
前記下部ノズルは、前記座面部の前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた前記車椅子において、チルトされた前記座面部の前記後側の端よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置されている入浴装置。
【請求項2】
前記下部ノズルに供給する液体の量を調整するバルブを備える請求項1に記載の入浴装置。
【請求項3】
前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の前記前側への進入を防ぐストッパーを備え、
前記下部ノズルは、前記ストッパーよりも前記後側に配置されている請求項1又は2に記載の入浴装置。
【請求項4】
前記下部ノズルは、チルトされた前記座面部に対して、前記下部ノズルの中心軸が垂直となる角度で傾いている請求項1乃至3の何れか1項に記載の入浴装置。
【請求項5】
前記下部ノズルは、複数配置され、
前記下部ノズルとして、少なくとも、第1下部ノズルと第2下部ノズルを含み、
前記第1下部ノズルは、前記第2下部ノズルよりも、前記後側に配置されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の入浴装置。
【請求項6】
前記車椅子の車輪と接し、一定以上の前記車椅子の進入を防ぐストッパーを備え、
前記第1下部ノズルは、前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接している状態で、チルトされた前記座面部の前記後側の端が前記第1下部ノズルの前記噴射角度に基づく第1噴射範囲に入り、かつ、予め定められた肛門想定位置も前記第1噴射範囲に入る位置に設けられる請求項5に記載の入浴装置。
【請求項7】
前記第2下部ノズルは、前記車椅子の車輪が前記ストッパーに接している状態で、前記肛門想定位置が前記第2下部ノズルの前記噴射角度に基づく第2噴射範囲に入り、かつ、チルトされた前記座面部の前記前側の端が前記第2噴射範囲に入らない位置に設けられる請求項6に記載の入浴装置。
【請求項8】
前記下部ノズルの向きは調整可能、又は、固定されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の入浴装置。
【請求項9】
前記座面部がチルトする車椅子を備え、
チルトするとき、前記車椅子の座面部は、水平状態から前記前側が引き上げられる請求項1乃至8の何れか1項に記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に乗せられた入浴者を洗う入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被介助者(被介護者)を浴槽に入れて体を洗うことがある。しかし、入浴者の持ち上げのような作業が必要であり、労力が大きい。また、入浴者ごとに浴槽のお湯を交換する必要もある。そこで、車椅子に入浴者を乗せ、温水をかけ流して体を洗える装置もある。介助者(介護者)の作業負担を減らすことができる。特許文献1には、温水をかけて洗う洗浄装置の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1には、壁材により箱状の収容槽を設けるとともに、該収容槽の前面壁を開閉可能とし、上面壁に患者の頭部が露出する窓孔を設け、給湯装置に接続された導水管を前記収容槽内に配管し、該導水管の所定個所に収容槽内に向かって開口するノズルを設けた身体洗浄装置が記載されている。入浴者ごとに浴槽の湯の出し入れせずに、迅速に洗浄(入浴)できるようにしようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-308355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車椅子に乗せた入浴者を洗浄する場合、液体(例えば、お湯)がノズルから入浴者に噴射される。そして、臀部、及び、陰部に向けて液体を噴射するノズルを設けることがある。このノズルによって、臀部、及び、陰部を洗うことができる。液体を臀部、及び、陰部に確実、十分に吹き付けるため、従来、臀部陰部用のノズルは、車椅子に乗せられた入浴者の臀部、及び、陰部の直下に設けられている。特許文献1記載の身体洗浄装置でも、ノズルが入浴者の臀部、及び、陰部の直下に設けられている(特許文献1:図11、符号79参照)。しかし、ノズルを臀部、及び、陰部の直下に設けると、洗い流された汚れ(例えば、便)がノズルに垂れ落ちるという問題がある。汚れのノズルへの付着は、衛生的に好ましくない。また、ノズルが汚れを噴射する(吹き飛ばす)可能性もある。直下のノズルの汚れを取り除くため、一人入浴するごとに、装置内の洗浄、除菌作業を行えば、次の入浴までの待ち時間が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、入浴者から洗い流された汚れのノズルへの付着を防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る入浴装置は、入浴スペースを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部を有する車椅子が進入可能な入浴装置である。入浴装置は、ドーム、及び、下部ノズルを備える。前記ドームは前記入浴スペースを囲む。前記ドームは、前記入浴スペースへの前記車椅子の進入口を備える。前記下部ノズルは前記ドーム内に配置される。前記下部ノズルは前記進入口から進入した前記車椅子に乗せられた入浴者に向けて、所定の噴射角度で液体を噴射する。前記車椅子の進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側とする場合、前記下部ノズルは、前記座面部の前側を前記後側よりも上とするように前記座面部がチルトされた前記車椅子において、チルトされた前記座面部の前記後側の端よりも前記前側、かつ、前記座面部よりも下に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、下部ノズルは、入浴者の斜め下に配置される。汚れが垂れ落ちる範囲外に下部ノズルを配置することができる。入浴者から洗い流された汚れのノズルへの付着を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る入浴装置の使用状態の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る入浴装置への車椅子の進入の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る入浴装置から進入口カーテンを取り外した状態の一例を示す図である。
図4】左側から見た実施形態に係る入浴装置の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る入浴装置のノズルの配置の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る入浴装置のノズルの配置の一例を示す図である。
図7】実施形態に係るノズルの一例を示す図である。
図8】実施形態に係るノズルからの液体の噴射の一例を示す図である。
図9】前側から見た実施形態に係る入浴装置の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る車椅子の座面部の一例を示す図である。
図11】実施形態に係る下部ノズルの位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図11を用いて、実施形態に係る入浴装置の一例を説明する。本発明に係る入浴装置として、シャワー浴装置100を説明する。本実施形態の説明に記載されている構成、配置等の各要素は発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
【0011】
ここで、シャワー浴装置100の車椅子6の進入口Eからの進入方向と平行な方向を前後方向とし、進入時に進む方向を前側、退出時に進む方向を後側と定義する。また、シャワー浴装置100が載置される平坦な床面と直交する方向を上下方向とし、床面に対してシャワー浴装置100が載置される側を上として上下を定義する。前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向とし、後側から前側を見て、右側となる側を右、左側となる側を左と定義する。
【0012】
(シャワー浴装置100の概要)
図1図4を用いて、実施形態に係るシャワー浴装置100の一例を説明する。実施形態に係るシャワー浴装置100は、車椅子6が進入可能である。入浴者Pが車椅子6に座った状態で使用可能である。シャワー浴装置100は、ドーム1を備える。ドーム1内が入浴スペースS(図4参照)である。言い換えると、シャワー浴装置100は、入浴スペースSを備え、ドーム1は入浴スペースSを囲む。ドーム1は、車椅子6を入浴スペースSに進入させる入口としての進入口Eを備える。車椅子6に座り、入浴スペースSに入った入浴者Pに向けて、液体がかけられる。液体は、例えば、温水、又は、ボディーシャンプー入りの温水である。例えば、温水(真水)をかけた後、ボディーシャンプー入りの温水を入浴者Pにかけ、ボディーシャンプー無しに切り替え、温水(真水)でボディーシャンプーを洗い流すことが可能である。
【0013】
シャワー浴装置100を使用するとき、入浴者Pの介助(介護)を担う介助者(介護者)は、車椅子6を入浴スペースSの予め定められた入浴位置まで進入させる。そして、車椅子6が入浴位置まで進入した状態で、シャワー浴装置100が使用される。図1及び図4は、車椅子6が入浴位置まで進入した状態を示す。
【0014】
車椅子6は、背もたれ61を備える。背もたれ61は後方に向かって斜め上方に傾く。また、背もたれ61の上部には、枕部62が設けられる。枕部62には入浴者Pの頭部をのせてもよい。車椅子6が入浴位置まで進入した状態では、背もたれ61の一部(上部)がドーム1(入浴スペースS)から外側に突出する。従って、シャワー浴装置100の使用中では、入浴者Pの頭部はドーム1から外側に出る(図1及び図4参照)。
【0015】
ドーム1の内側には、ストッパー5が設けられる(図11参照、詳細は後述)。シャワー浴装置100を使用するとき、介助者は、車椅子6の前輪66がストッパー5に当たるまで、車椅子6を入浴スペースSに進入させる。前輪66がストッパー5に当たったときの車椅子6の位置が通常の入浴位置である。なお、入浴者Pの身長、体形、足の長さのような事情に合わせて、車椅子6の位置を通常の入浴位置よりも後側にずらしてもよい。
【0016】
シャワー浴装置100は、ドーム1を備える。ドーム1は、本体カバー11及び上側カバー12を含む。例えば、本体カバー11は、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂の成型品であってもよい。本体カバー11は、ブロー成形法のような樹脂成形法を用いて製造されてもよい。また、上側カバー12には、塩化ビニル板のような熱可塑性樹脂製であってもよい。上側カバー12は真空成形法のような樹脂成形法を用いて製造されてもよい。
【0017】
本体カバー11は、後側カバー111、右側カバー112、左側カバー113、及び、前側カバー114を有する。なお、本体カバー11は単一の部材でもよい。また、カバー11は5つ以上の部材から構成されてもよい。後側カバー111と前側カバー114はそれぞれ、右側カバー112、及び、左側カバー113と連結される。本体カバー11は4つのカバーを組み合わせである。本体カバー11の上側の開口に、上側カバー12が取り付けられる。本体カバー11の上側の開口は、上側カバー12によって塞がれる。なお、上部カバー12が2つ以上の部材から構成されてもよい。ドーム1は、後側カバー111、右側カバー112、左側カバー113、前側カバー114、及び、上側カバー12を組み立てたものである。
【0018】
ドーム1は、入浴スペースSを囲む。言い換えると、入浴スペースSは、ドーム1の内側の空間である。なお、ドーム1は床板を有しない。つまり、ドーム1の下面を覆う板はない。ドーム1(入浴スペースS)は、床無しであり、液体(湯、水)を溜める浴槽ではない。ドーム1の内部で噴射された液体は床面に落ちる。そのため、濡れてもよく、排水管(排水構)を備える床がある部屋(例えば、入浴室)にシャワー浴装置100が設けられる。
【0019】
上側カバー12は介助口12aを有する。介助口12aは、入浴者Pを介助する介助者が入浴スペースSに手を入れるための開口である。なお、上側カバー12は入浴者Pの状態を観察できる透光性を備えてもよい。上側カバー12は色付きの半透明の板であってもよい。透光性があれば、入浴者Pを適切に介助できる。なお、上側カバー12には、介助口12aを外側から塞ぐシートが着脱可能に取り付けられる。介助口12aを塞ぐシートによって、介助口12aから入浴スペースSの保温性の低下を抑制できる。
【0020】
ドーム1は、入浴スペースSへの進入口Eを後面に有する。具体的には、後側カバー111の形状は、下枠の無いアーチ型であり、上に凸の円弧である。後側カバー111は、進入口Eの外枠として機能する。後側カバー111は、進入口Eの縁に沿う形状である。後側カバー111のうち右下側の部分は、右側カバー112とつながっている。つまり、右側カバー112の下部は、ドーム1の後面まで延びており、進入口Eの外枠の一部となっている。後側カバー111のうち左下側の部分は、左側カバー113とつながっている。つまり、左側カバー113の下部は、ドーム1の後面まで延びており、進入口Eの外枠の一部となっている。進入口Eの外枠部分では、下枠が無いので、車椅子6を進入口Eから入浴スペースSに進入させるとき、車椅子6を持ち上げる必要はない。車椅子6を入浴スペースSに進入させるときには、車椅子6を押すだけでよい。
【0021】
ドーム1の内側には、シャワー用のノズル2が設けられる(詳細は後述)。複数のノズル2が設けられる。それぞれのノズル2は、ドーム1の内側に設けられた分岐配管部4に接続される(図6参照)。但し、図6に示す分岐配管部4は保護カバー41に覆われた状態を示す。分岐配管部4は、入水口を備える。入水口はホースで給液ユニット200(図1参照)と接続される。給液ユニット200は、液体を分岐配管部4に供給する(送る)。分岐配管部4は、複数の出水口を備える。それぞれのノズル2は、チューブ(給水ホース)を介して、いずれかの出水口と接続される。その結果、液体が各ノズル2に送り込まれる。これにより、各ノズル2は給液ユニット200から供給された液体を噴射する。それぞれのノズル2は、入浴者Pの全身に液体をかける。
【0022】
シャワー浴装置100は、進入口カーテン3を備える。進入口カーテン3には、撥水性の生地を用いてもよい。また、進入口カーテン3の素材は、ポリエステルのような熱可塑性樹脂熱可塑性樹脂でもよい。進入口カーテン3は、ドーム1に取り付けられる。具体的に、進入口カーテン3は、後側カバー111、右側カバー112の後側部分、左側カバー113の後側部分に取り付けられる。進入口カーテン3は、ドーム1に対して着脱可能である。車椅子6を入浴スペースSに進入させるとき、進入口カーテン3はドーム1から取り外される。車椅子6を入浴スペースSに進入させた後、進入口カーテン3がドーム1に取り付けられる。車椅子6の通路領域が進入口カーテン3で塞がれた状態で、シャワー浴装置100が使用される。進入口カーテン3で進入口Eを塞ぐので、進入口Eから後側に液体が飛び出す(漏れ散る)ことを防ぐことができる。また、進入口カーテン3で塞ぐことにより、ドーム1内への冷気の流入を防ぐことができ、進入口Eから逃げる熱を減らすことができる。従って、ドーム1の内部(入浴スペースS)の温度が低下しにくくなる。さらに、進入口Eを開閉する扉をドーム1に設置する必要はない。当該扉を省略するので、入浴スペースSへの車椅子6の出し入れを速やかに行うことができる。停電、災害のような異常事態が発生しても、速やかに、入浴者Pを入浴スペースSから脱出させることができる。
【0023】
(ノズル2の配置)
次に、図5図6を用いて、実施形態に係るシャワー浴装置100でのノズル2の配置の一例を説明する。図5は、後側左方から見たシャワー浴装置100の一例を示す図である。図6は、後側上方から見たシャワー浴装置100の一例を示す図である。
【0024】
シャワー浴装置100は、入浴者Pの全身を洗えるように、複数のノズル2を備える。例えば、入浴者Pの上部から液体を噴射するノズル2として、上部ノズル21を備える(図8参照)。上部ノズル21は複数設けられてもよい。上部ノズル21は、車椅子6に乗せられた入浴者Pの上方から、入浴者Pの胸、腹及び膝などに向けて液体を噴射する。
【0025】
また、図5に示すように、シャワー浴装置100は、ノズル2として、複数のサイドノズル22を備える。サイドノズル22は、右側カバー112及び左側カバー113のそれぞれに設けられる。各サイドノズル22は、車椅子6に乗せられた入浴者Pの側方から、入浴者Pの肩、肘、腰、膝及び足などに向けて液体を噴射する。
【0026】
また、シャワー浴装置100は複数の背部ノズル23を備える(図5参照)。背部ノズル23は、右側カバー112及び左側カバー113のそれぞれに設けられる。各背部ノズル23は、車椅子6に乗せられた入浴者Pの背面から、入浴者Pの背中及び腰などに向けて液体を噴射する。
【0027】
図6に示すように、ドーム1(入浴スペースS)内には、前後方向を長手方向とする下部フレーム50が設けられる。下部フレーム50の前端は前側カバー114と接続される。下部フレーム50は、ドームの左右方向の中央に配置される。また、ドーム1(入浴スペースS)内には、ストッパー5が設けられる。ストッパー5は、左右方向を長手方向とする。ストッパー5の一端は左側カバー113の下部に接続され、他端は右側カバー112の下部に接続される。ストッパー5は、下部フレーム50の下面(下側)と接し、下部フレーム50を支持する。ストッパー5は、一定以上の車椅子6の前側への進入を防ぐ。ストッパー5によって、入浴者Pの足が、前側カバー114、及び、ドーム1内の構造物にぶつかることを防ぐことができる。
【0028】
図6は、下部フレーム50の前後方向の中央よりも後側に2つの下部ノズル24を設ける例を示す。図6に示すシャワー浴装置100では計2個の下部ノズル24が設けられる。下部ノズル24の設置数は、少なくとも1つであり、2個より多くてもよい。下部ノズル24は前後方向に並べられる。各下部ノズル24は、車椅子6に乗せられた入浴者Pの臀部及び陰部に向けて、液体を噴射する。なお、下部ノズル24は、左右方向に並べられてもよい。
【0029】
つまり、下部ノズル24は、複数配置されてもよい。シャワー浴装置100は、下部ノズル24として、少なくとも、第1下部ノズル24aと第2下部ノズル24bを含んでもよい。第1下部ノズル24aは、第2下部ノズル24bよりも、後側に配置されたノズル2である。このように、臀部を洗浄するための下部ノズル24(第1下部ノズル24a)と陰部(股下)を洗浄するための下部ノズル24(第2下部ノズル24b)をそれぞれ設けるようにしてもよい。洗浄性能が高いシャワー浴装置100を提供することができる。
【0030】
(ノズル2)
次に、図7図9を用いて、実施形態に係るノズル2の一例を説明する。シャワー浴装置100のそれぞれのノズル2は液体を噴射する。例えば、ミストを噴射するノズル2が用いられてもよい。また、複数本の線状の水流を噴射するノズル2が用いられてもよい。本実施形態のシャワー浴装置100では、全てのノズル2がミストを噴射する。ミストを噴射するノズル2を用いる場合、例えば、ミストの平均粒子径が200~500μmの範囲内の値となるノズル2が用いられる。例えば、ノズル2は、その先端を頂点とした円錐の範囲にミスト(液体)を噴射する。なお、ノズル2は、その先端を頂点として扇型に液体)を噴射するものでもよい。
【0031】
なお、給液ユニット200から各ノズル2までの給水経路の途中に、気泡発生装置が設けられてもよい。例えば、気泡発生装置は、等体積球相当径(体積相当の直径)が1μm未満の気泡を発生してもよい。この場合、各ノズル2は微小な泡を含む液体を入浴者Pに噴射する。なお、気泡発生装置は、等体積球相当径が1μm以上、100μm未満の気泡を発生させてもよい。これにより、気泡を含む液体を用いて、入浴者Pを洗浄することができる。
【0032】
それぞれのノズル2の噴射角度θは予め定められる。上部ノズル21、サイドノズル22、背部ノズル23、及び、下部ノズル24の噴射角度θは同じでもよいし、異なっていてもよい。体全体にミストを吹き付けられるように、上部ノズル21の噴射角度θが最も大きくてもよい。例えば、下部ノズル24の噴射角度θは、50~100度のうちの何れかの角度である。より好ましくは、下部ノズル24の噴射角度θは、60~70度のうちの何れかの角度である。図7の破線はノズル2の中心軸の一例を示す。中心軸はノズル2の長手方向と平行である。中心軸はノズル2、ノズル2の噴射角度θ、及び、液体の理想的な噴射範囲の中心を通る。
【0033】
図8に示すように、シャワー浴装置100には、分岐配管部4が設けられる(図6参照)。分岐配管部4はホースを介して、給液ユニット200と接続される。給液ユニット200は、外部から供給された水及び温水(お湯)を分岐配管部4に向けて送る。分岐配管部4は、上部ノズル21、サイドノズル22、背部ノズル23、及び、下部ノズル24のそれぞれとチューブ(給水ホース)で接続される。その結果、給液ユニット200から供給された液体が各ノズル2から噴射する。
【0034】
なお、給液ユニット200には、薬液投入口(不図示)が設けられる。洗浄薬タンク201を薬液投入口に接続することができる。洗浄薬はドーム1内(入浴スペースS)の除菌するための成分を含む。シャワー浴装置100の洗浄、除菌を行うとき、洗浄薬タンク201が接続される。これにより、洗浄薬を液体に混入することができる。また、給液ユニット200には、ボディーシャンプー投入口(不図示)が設けられる。ボディーシャンプータンク202をボディーシャンプー投入口に接続することができる。入浴者Pの体をボディーシャンプーで洗うとき、ボディーシャンプータンク202が接続される。これにより、ボディーシャンプーを液体に混入することができる。
【0035】
ここで、給液ユニット200と下部ノズル24の間には、バルブ25が設けられる。例えば、分岐配管部4と下部ノズル24と接続する配管にバルブ25が設けられてもよい。図9に示すように。バルブ25は、シャワー浴装置100(ドーム1)の前側に設けられてもよい。図9は、前側カバー114の下方にバルブ25を設ける例を示す。バルブ25は、手動で液体の流量を調整するための操作レバー25aを備える。つまり、シャワー浴装置100は下部ノズル24に供給する液体の量を調整するバルブ25を備える。臀部及び陰部に水(液体)がかかり続けることを嫌がる入浴者Pがいる。また、臀部及び陰部は敏感な部位である。入浴者Pによって、噴射される液体の勢いの好みが異なる。バルブ25によって、下部ノズル24に供給する液体の量を調整することができる。これにより、下部ノズル24からの液体の噴射量を、入浴者Pにとって快適な量に調整することができる。入浴者Pの要望にあわせて、下部ノズル24からの液体の噴射量をコントロールすることができる。なお、バルブ25は手動ではなく、電磁式であってもよい。
【0036】
なお、シャワー浴装置100では、下部ノズル24を含め、各ノズル2の向き(角度、傾き)は固定されている。可動式にする場合に比べ、製造コストを抑えることができる。介助者がノズル2の向きを調整する手間を省くこともできる。また、下部ノズル24を含め、各ノズル2の向きは調整可能でもよい。ノズル2の位置を入浴者Pに合わせた位置とすることができる。
【0037】
(車椅子6)
次に、図2図10を用いて、実施形態に係るシャワー浴装置100に用いる車椅子6の一例を説明する。図2に示すように、入浴するとき、入浴者Pは車椅子6に乗せられる。車椅子6に乗せられた入浴者Pの正面は前側を向く。そして、車椅子6は、座椅子部6aと車台部6bを備える。
【0038】
座椅子部6aは、枕部62、背もたれ61、手すり63、座面部64、及び、足置き部65を備える。枕部62、背もたれ61、手すり63、座面部64、及び、足置き部65の組み合わせが座椅子部6aである。具体的に、枕部62と背もたれ61がつながっている。入浴者Pの頭部を枕部62にのせてもよい。背もたれ61にはメッシュ状の素材が用いられる。入浴者Pの背中が背もたれ61と接する。背もたれ61には手すり63が取り付けられる。入浴者Pはアームレスト63に肘をかける。背もたれ61の下端が座面部64とつながる。座面部64には入浴者Pの臀部及び太ももが乗せられる。座面部64の前側端部に足置き部65がつながる。足置き部65には、入浴者Pの足裏、足首が乗せられる。
【0039】
また、車椅子6は車台部6bを含む。車台部6bは、2つの前輪66と2つの後輪67を備える。車台部6bの上部、及び、座面部64の下側には接続部68が設けられる(図2参照)。接続部68は、座椅子部6aと車台部6bを接続する部分である。接続部68は、座椅子部6aを回転可能に支持する。つまり、座面部64(座椅子部6a)をチルトさせることができる。このように、車椅子6は、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部64(座椅子部6a)を有する。座椅子部6aの回転軸は左右方向と平行である。入浴者Pの足首が上がり、頭部が下がる方向に、座面部64(座椅子部6a)を所定傾き角度まで、傾けることができる。所定傾き角度は、25度~35度の範囲内の何れかの値である。図2は、座面部64をチルトさせた状態の一例を示す。所定傾き角度まで座面部64を傾けたとき、座面部64の前側(前側の端)は座面部64の後側(後側の端)よりも上に位置する(図11参照)。
【0040】
座面部64(座椅子部6a)を傾けていない状態(ゼロ度)では、座面部64の臀部と接触する面(上面)と下面は水平である。なお、車椅子6には、座面部64の上面と下面を水平で維持する第1維持部材、及び、座面部64(座椅子部6a)が所定傾き角度以上に傾かず、所定傾き角度でチルト状態を維持する第2維持部材が設けられてもよい。
【0041】
図10は、座面部64の一例を示す。座面部64には切り欠け部64aが設けられる。切り欠け部64aは座面部64のうちの切り取られている領域(空間)である。座面部64の上面と下面のうち、切り欠け部64a以外の部分は平面である。座面部64がチルトされていないとき、座面部64の上面と下面は水平である。下部ノズル24から吹き出された液体を臀部及び陰部に当てるため、切り欠け部64aが設けられる。座面部64の前側の端から後側に向けて、一定の領域が切り欠け部64aとされる。切り欠け部64aは、座面部64の前側の縁の左右方向の中央を含む。座面部64は、上方向からみてU字である。なお、切り欠け部64aは穴でもよい。つまり、切り欠け部64aは閉じていてもよい。また、座面部64の前側端部は、前側が下方に向かうように湾曲している(湾曲部69)。入浴者Pの膝裏を乗せることを考慮して、湾曲部69は下方にカーブする形状となっている。本説明では、チルトしていないときに面が水平でない部分から、座面部64の前側端部までの範囲を湾曲部69と称する。
【0042】
このように、シャワー浴装置100(入浴装置)は、座面部64がチルトする車椅子6を備えてもよい。チルトするとき、車椅子6の座面部64は、水平状態から前側が引き上げられる。これにより、入浴者Pを上向きに寝かせ、かつ背中を傾け、入浴者Pの座位姿勢を保ちつつ後方に傾けることができる。入浴者Pの姿勢を楽な姿勢とすることができる。しかも、入浴者Pの姿勢を洗浄しやすい姿勢で維持することができる。
【0043】
(下部ノズル24の位置)
次に、図11を用いて、実施形態に係る下部ノズル24の位置の一例を説明する。まず、シャワー浴装置100(入浴装置)は、入浴スペースSを備え、チルトした状態としない状態とを切替可能な座面部64を有する車椅子6が進入可能である。具体的に、シャワー浴装置100は、ドーム1及び下部ノズル24を備える。ドーム1は、入浴スペースSを囲み、車椅子6を入浴スペースSに進入させる入り口としての進入口Eを備える。下部ノズル24は、ドーム1内に配置され、進入口Eから進入した車椅子6に乗せられた入浴者Pに向けて、所定の噴射角度θで液体を噴射する。そして、下部ノズル24は、座面部64の前側(前側の端)を後側(後側の端)よりも上とするように座面部64が所定傾き角度だけチルトされた車椅子6において、チルトされた車椅子6の座面部64の後側の端よりも前側、かつ、座面部64よりも下に配置される。なお、給液ユニット200から供給された液体は、下部ノズル用チューブ24c(下部ノズル用給水ホース)によって、下部ノズル24に届けられる(図5参照)。これにより、斜め下から臀部と陰部に液体を噴射することができる。座面部64がチルトされている(傾いている)ので、入浴者Pに噴射された液体は、座面部64の後側の端に向けて流れ、集まり、床面に落ちる。液体とともに入浴者Pからはがれ落ちた汚れも同様である。液体、汚れが座面部64の後側の端から落ちやすい。そして、液体、汚れが落ちる場所から下部ノズルの位置を外すことができる。従って、便のような汚れが垂れ落ちにくい位置に、下部ノズル24を配置することができる。入浴者Pから洗い流された汚れがノズル2に付着しない。汚れが下部ノズル24に付着しないので、衛生的に好ましい。また、下部ノズル24が汚れを噴射することもない。また、車椅子6に乗せたまま入浴者Pをあらうことができる。被介助者(被介護者)の入浴時の労力を減らすことができる。また、入浴者Pをドーム1、又は、ドーム1及び進入口カーテン3で囲うので、熱がドーム1外に逃げにくく、温かい液体を吹き付けて、入浴者Pを効率的に温めることができる。
【0044】
図11を用いて、下部ノズル24の配置条件の一例を述べる。なお、図11では、車椅子6の車台部6bの一部の図示を意図的に省略している。
【0045】
上述したように、ドーム1内には、ストッパー5が設けられる。ストッパー5は下部フレーム50と接続されている。ストッパー5は、車椅子6の車輪(前輪66)と接する。ストッパー5は、一定以上の車椅子6の前側への進入を防ぐ。そして、下部ノズル24は、ストッパー5よりも後側に配置してもよい。これにより、座面部64、臀部、及び、陰部から離れすぎない位置に下部ノズル24を設けることができる。臀部及び陰部の洗浄能力が高い位置に下部ノズル24を配置することができる。
【0046】
また、図11に示すように、下部ノズル24は、チルトされた座面部64に対して、下部ノズル24の中心軸が垂直となる角度で傾けられてもよい。これにより、座面部64の斜め下から、切り欠け部64aによって露出した臀部と陰部に向けて、液体を噴射することができる。下部ノズル24の中心軸が座面部64に対して直角なので、十分な量の液体を、座面部64、臀部、及び、陰部に吹き付けることができる。具体的に、座面部64の所定傾き角度をX度とすると、下部ノズル24の中心軸は、垂直方向(上下方向)から(90-X)度、傾けられる。なお、図11では、第1下部ノズル24aの中心軸にC1の符号を付し、第2下部ノズル24bの中心軸にC2の符号を付している。
【0047】
また、下部ノズル24のうちの第1下部ノズル24a(後側のノズル2)は、車椅子6の車輪(前輪66)がストッパー5に接している状態で、チルトされた座面部64の後側の端が第1下部ノズル24aの噴射角度θに基づく第1噴射範囲R1に入り、かつ、予め定められた肛門想定位置も第1噴射範囲R1に入る位置に設けてもよい。これにより、汚れが垂れ落ちず、かつ、入浴者Pの臀部及び肛門が第1下部ノズル24aの噴射範囲内に収まる位置に、第1下部ノズル24aを配置することができる。入浴者Pの臀部及び肛門を十分に洗浄することができる。
【0048】
第1噴射範囲R1は第1下部ノズル24aの噴射角度θに基づく。第1噴射範囲R1は、所定の噴射角度θの第1下部ノズル24aから液体を噴射したときの理想的な液体の噴射範囲である。例えば、第1噴射範囲R1は、第1下部ノズル24aの中心軸を中心とする。図11では、第1噴射範囲R1は、上下方向及び前後方向の平面において、第1下部ノズル24aの噴射開始点を頂点とし、中心軸を中心とし、角度が噴射角度θの範囲である。
【0049】
また、肛門想定位置は予め定められる。例えば、座面部64を所定傾き角度だけ(最大角度だけ)チルトさせ、車輪(前輪66)がストッパー5に接するまで車椅子6を進入させたときの肛門の位置が複数人分測られる。そして、測った肛門の位置の平均の位置を肛門想定位置と定めることができる。
【0050】
また、下部ノズル24のうちの第2下部ノズル24b(前側のノズル2)は、車椅子6の車輪(前輪66)がストッパー5に接している状態で、肛門想定位置が第2下部ノズル24bの噴射角度θに基づく第2噴射範囲R2に入り、チルトされた座面部64の前側の端が第2噴射範囲R2に入らない位置に設けられてもよい。なお、第2下部ノズル24bは、座面部64のうちの膝裏をのせる湾曲部69の少なくとも一部が第2噴射範囲R2に入る位置に設けられてもよい。これにより、汚れが垂れ落ちず、かつ、入浴者Pの陰部が第2下部ノズル24bの噴射範囲内に収まる位置に、第2下部ノズル24bを配置することができる。また、入浴者Pの陰部を十分に洗浄することができる。
【0051】
第2噴射範囲R2は、第2下部ノズル24bの噴射角度θに基づく。第2噴射範囲R2は所定の噴射角度θの第2下部ノズル24bから液体を噴射したときの理想的な液体の噴射範囲である。例えば、第2噴射範囲R2は、第2下部ノズル24bの中心軸を中心とする。図11では、第2噴射範囲R2は、上下方向及び前後方向の平面において、第2下部ノズル24bの噴射開始点を頂点とし、中心軸を中心とし、角度が噴射角度θの範囲である。
【0052】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100 シャワー浴装置(入浴装置)
1 ドーム
24 下部ノズル
24a 第1下部ノズル
24b 第2下部ノズル
25 バルブ
5 ストッパー
6 車椅子
64 座面部
66 前輪(車輪)
69 湾曲部
200 給液ユニット
C1 中心軸(第1下部ノズル)
C2 中心軸(第2下部ノズル)
E 進入口
R1 第1噴射範囲
R2 第2噴射範囲
S 入浴スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11