IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特開2022-116583生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム
<>
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図1
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図2
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図3
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図4
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図5
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図6
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図7
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図8
  • 特開-生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116583
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20220803BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220803BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61B5/0245 100A
A61B5/0245 C
A61B5/11 120
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012824
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 大地
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5H181
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017BC16
4C017DD14
4C017EE01
4C017EE15
4C017FF05
4C038VA04
4C038VB31
4C038VC05
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL06
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】移動体の乗員の生体情報を高精度で取得する。
【解決手段】実施形態の生体情報取得システムは、移動体の乗員に向けて電波を送信し乗員からの反射波を受信することにより乗員の心拍に対応する心拍信号を検出する第1センサと、第1センサと乗員との距離に関する距離情報を取得する第2センサと、距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行うゲイン処理部と、ゲイン処理が施された心拍信号から乗員の心拍に関する生体情報を生成する生成部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の乗員に向けて電波を送信し前記乗員からの反射波を受信することにより前記乗員の心拍に対応する心拍信号を検出する第1センサと、
前記第1センサと前記乗員との距離に関する距離情報を取得する第2センサと、
前記距離に基づいて前記心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行うゲイン処理部と、
前記ゲイン処理が施された前記心拍信号から前記乗員の心拍に関する生体情報を生成する生成部と、
を備える生体情報取得システム。
【請求項2】
前記距離が閾値を超えているときに検出された前記心拍信号を棄却する棄却処理部、
を更に備える請求項1に記載の生体情報取得システム。
【請求項3】
前記第1センサは、前記乗員が着座する座席の背もたれ部に配置されたドップラーセンサを含む、
請求項1又は2に記載の生体情報取得システム。
【請求項4】
前記第2センサは、前記乗員の体動に関する情報を取得可能なセンサである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報取得システム。
【請求項5】
前記第2センサは、前記乗員の頭上に配置された周波数変調連続波レーダを含む、
請求項4に記載の生体情報取得システム。
【請求項6】
前記第2センサは、前記乗員を撮像可能なカメラを含む、
請求項4に記載の生体情報取得システム。
【請求項7】
前記移動体の振動に関する振動情報を取得する第3センサ、
を更に備え、
前記ゲイン処理部は、前記振動情報に基づいて、前記移動体の振動が大きいほど前記ゲイン処理におけるゲインの更新頻度を高くする、
請求項1~6のいずれか1項に記載の生体情報取得システム。
【請求項8】
前記振動情報は、前記移動体にかかる加速度を含む、
請求項7に記載の生体情報取得システム。
【請求項9】
前記振動情報は、前記移動体の駆動源の駆動状態を示す情報を含む、
請求項7又は8に記載の生体情報取得システム。
【請求項10】
移動体の乗員に向けて電波を送信し前記乗員からの反射波を受信することにより前記乗員の心拍に対応する心拍信号を検出するセンサから前記心拍信号を取得する第1取得部と、
前記センサと前記乗員との距離に関する距離情報を取得する第2取得部と、
前記距離に基づいて前記心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行うゲイン処理部と、
前記ゲイン処理が施された前記心拍信号から前記乗員の心拍に関する生体情報を生成する生成部と、
を備える生体情報取得装置。
【請求項11】
移動体の乗員に向けて電波を送信し前記乗員からの反射波を受信することにより前記乗員の心拍に対応する心拍信号を検出する工程と、
前記心拍信号を検出するセンサと前記乗員との距離に関する距離情報を取得する工程と、
前記距離に基づいて前記心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行う工程と、
前記ゲイン処理が施された前記心拍信号から前記乗員の心拍に関する生体情報を生成する工程と、
を含む生体情報取得方法。
【請求項12】
プロセッサに、
移動体の乗員に向けて電波を送信し前記乗員からの反射波を受信することにより前記乗員の心拍に対応する心拍信号を検出するセンサから前記心拍信号を取得する処理と、
前記センサと前記乗員との距離に関する距離情報を取得する処理と、
前記距離に基づいて前記心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理と、
前記ゲイン処理が施された前記心拍信号から前記乗員の心拍に関する生体情報を生成する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行支援システム等において、乗員の心拍数等に関する生体情報を取得する技術が利用されている。例えば、車両のノイズによる生体情報の検出精度の低下を抑制することを目的として、異なる箇所に配置された2つの感圧部により乗員の体動を検出し、両感圧部による検出信号の誤差に基づいて生体情報を取得する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-61781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等の移動体の乗員の生体情報を高精度で取得するためには、乗員の拍動以外の動きである体動(例えば、移動体の振動に基づく動き、乗員の意思に基づく動き等)による影響を抑制する必要がある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、移動体の乗員の生体情報を高精度で取得可能な生体情報取得システム、生体情報取得装置、生体情報取得方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態としての生体情報取得システムは、移動体の乗員に向けて電波を送信し乗員からの反射波を受信することにより乗員の心拍に対応する心拍信号を検出する第1センサと、第1センサと乗員との距離に関する距離情報を取得する第2センサと、距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行うゲイン処理部と、ゲイン処理が施された心拍信号から乗員の心拍に関する生体情報を生成する生成部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、第1センサと乗員との距離に基づいて、乗員の体動による影響が小さくなるようにゲインを設定し、当該ゲインを用いて心拍信号の強度(振幅)を適切に調整できる。これにより、移動体の乗員の生体情報を高精度で取得できる。
【0008】
また、生体情報取得システムは、距離が閾値を超えているときに検出された心拍信号を棄却する棄却処理部を更に備えてもよい。
【0009】
これにより、信頼性の低い心拍信号から生体情報が生成される可能性を低減でき、生体情報の信頼性を向上できる。
【0010】
また、第1センサは、乗員が着座する座席の背もたれ部に配置されたドップラーセンサを含んでもよい。
【0011】
これにより、座席に着座している乗員の背部から心臓付近の拍動(脈動)に対応する心拍信号を高精度で検出できる。
【0012】
また、第2センサは、乗員の体動に関する情報を取得可能なセンサである。
【0013】
このようなセンサにより取得される情報に基づいて乗員の体動を推定することにより、第1センサと乗員との距離を正確に算出できる。
【0014】
また、第2センサは、乗員の頭上に配置された周波数変調連続波レーダを含んでもよい。
【0015】
これにより、周波数変調連続波レーダの設置位置と乗員との間の距離を測定でき、当該測定結果に基づいて乗員の体動を正確に推定できる。
【0016】
また、第2センサは、乗員を撮像可能なカメラを含んでもよい。
【0017】
これにより、画像データに基づいて乗員の体動、体格等を正確に推定できる。
【0018】
また、生体情報取得システムは、移動体の振動に関する振動情報を取得する第3センサを更に備え、ゲイン処理部は、振動情報に基づいて、移動体の振動が大きいほどゲイン処理におけるゲインの更新頻度を高くしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、移動体の振動が大きいほど頻繁にゲインが更新され、心拍信号の調整をより正確に行うことができる。これにより、生体情報の精度がより向上する。
【0020】
また、振動情報は、移動体にかかる加速度を含んでもよい。
【0021】
これにより、移動体の振動を正確に検出できる。
【0022】
また、振動情報は、移動体の駆動源の駆動状態を示す情報を含んでもよい。
【0023】
これにより、エンジン、モータ等の駆動源の駆動状態(例えば駆動状態であるか、停止状態であるか等)に応じて移動体の振動の大きさを推定できる。
【0024】
また、本発明の他の実施形態としての生体情報取得装置は、移動体の乗員に向けて電波を送信し乗員からの反射波を受信することにより乗員の心拍に対応する心拍信号を検出するセンサから心拍信号を取得する第1取得部と、センサと乗員との距離に関する距離情報を取得する第2取得部と、距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行うゲイン処理部と、ゲイン処理が施された心拍信号から乗員の心拍に関する生体情報を生成する生成部と、を備える。
【0025】
また、本発明の他の実施形態としての生体情報取得方法は、移動体の乗員に向けて電波を送信し乗員からの反射波を受信することにより乗員の心拍に対応する心拍信号を検出する工程と、心拍信号を検出するセンサと乗員との距離に関する距離情報を取得する工程と、距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行う工程と、ゲイン処理が施された心拍信号から乗員の心拍に関する生体情報を生成する工程と、を含む。
【0026】
また、本発明の他の実施形態としてのプログラムは、プロセッサに、移動体の乗員に向けて電波を送信し乗員からの反射波を受信することにより乗員の心拍に対応する心拍信号を検出するセンサから心拍信号を取得する処理と、センサと乗員との距離に関する距離情報を取得する処理と、距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理と、ゲイン処理が施された心拍信号から乗員の心拍に関する生体情報を生成する処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る車両のシステム構成及びハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るプロセッサの機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態において乗員が正規位置にいる場合におけるドップラーセンサと乗員との距離の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態において乗員が非正規位置にいる場合におけるドップラーセンサと乗員との距離の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態におけるゲイン処理の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る取得領域及び棄却領域の一例を示す上面図である。
図8図8は、実施形態に係る取得領域及び棄却領域の一例を示す斜視図である。
図9図9は、実施形態に係る生体情報取得システムによる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0029】
図1は、実施形態に係る車両1の構成の一例を示す図である。車両1は、生体情報取得システムが搭載される移動体の一例である。本実施形態に係る生体情報取得システムは、座席21に着座している乗員2の生体情報を取得する。
【0030】
本実施形態に係る車両1は、ドップラーセンサ11、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)レーダ12、カメラ13、振動センサ14、及びステアタッチセンサ15を備える。
【0031】
ドップラーセンサ11は、乗員2に向けて電波を送信し乗員2からの反射波を受信することにより乗員2の心拍に対応する電気信号である心拍信号を検出する第1センサの一例である。ドップラーセンサ11は、座席21の背もたれ部22に配置され、乗員2の所定部分(例えば背部の心臓近傍部)に向けて電波(送信波)を送信し、送信波が乗員2に反射された反射波を受信する。ドップラーセンサ11は、送受信する電波の周波数の変化(送信波と受信波との間の周波数差)に基づいて、乗員2の心拍(拍動に伴う脈動)に対応する心拍信号を検出する。ドップラーセンサ11の送信波の周波数は、使用状況に応じて適宜選択されるべきものであるが、例えば24GHz程度であり得る。
【0032】
FMCWレーダ12は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離に関する距離情報を取得する第2センサの一例であり、乗員2の体動に関する情報を取得可能なセンサの一例である。ここでいう体動とは、乗員2の拍動(心臓の動き)以外の動きであり、例えば、車両1の振動に基づく動き、乗員2の意思に基づく動き等であり得る。FMCWレーダ12は、乗員2の頭上(本実施形態では車両1のルーフ31)に配置され、その設置位置と乗員2(頭部又はその近傍部)との間の距離に対応するTOF(Time Of Flight)等の距離情報を取得できる。FMCWレーダ12の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば60GHz程度の周波数を利用するものであり得る。FMCWレーダ12により取得された距離情報に基づいて乗員2の体動を推定でき、その推定結果に基づいてドップラーセンサ11と乗員2との距離を推定できる。
【0033】
カメラ13は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離に関する距離情報を取得する第2センサの一例であり、乗員2の体動に関する情報を取得可能なセンサの一例である。カメラ13は、座席21に着座した乗員2を撮像した撮像データを取得する。本実施形態に係るカメラ13は、車両1のルーフ31とフロントガラス32との境界付近に配置され、乗員2の前方斜め上方からの画像データを取得する。カメラ13により取得された画像データを解析することにより、乗員2の体動、体格等を推定でき、その推定結果に基づいてドップラーセンサ11と乗員2との距離を推定できる。
【0034】
振動センサ14は、車両1の振動に関する振動情報を取得する第3センサの一例である。振動センサ14は、例えば、車両1にかかる加速度を検出する加速度センサ、車両1のエンジンの駆動状態を検出するセンサ等であり得る。
【0035】
ステアタッチセンサ15は、ステアリングホイール41に配置され、ステアリングホイール41を把持している乗員2の心拍数等を計測可能なセンサである。ステアタッチセンサ15により取得される心拍数等の情報(補助心拍情報)は、ドップラーセンサ11により検出される心拍信号から生体情報を生成する際の補助的な情報として利用される。ステアタッチセンサ15は、例えば、乗員2が両手でステアリングホイール41を把持しているときに心拍数を計測できるものであってもよい。
【0036】
図2は、実施形態に係る車両1のシステム構成及びハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る車両1は、生体情報取得システム111及び車両制御システム112を備える。
【0037】
生体情報取得システム111は、車両1の乗員2の心拍に関する生体情報を取得するシステムであり、ドップラーセンサ11、FMCWレーダ12、カメラ13、振動センサ14、ステアタッチセンサ15、プロセッサ121(生体情報取得装置)等を備える。
【0038】
プロセッサ121は、プログラムに従って各種演算処理を行う情報処理装置(マイクロコントローラ)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、I/F(Interface)、増幅器等を備える。プロセッサ121は、ROMやSSDに記憶されたプログラムをRAMに展開し、生体情報を取得するための処理を実行する。プロセッサ121は、I/Fを介して他のデバイスと各種情報の送受信を行う。本実施形態に係るプロセッサ121は、ドップラーセンサ11からの心拍信号、FMCWレーダ12からのTOFデータ、カメラ13からの画像データ、振動センサ14からの振動情報、ステアタッチセンサ15からの補助心拍情報等に基づいて生体情報を取得するための処理を実行する。プロセッサ121(生体情報取得システム111)により取得された生体情報は、車両制御システム112に出力される。
【0039】
車両制御システム112は、ECU(Electronic Control Unit)131、駆動機構132、制動機構133、操舵機構134、ユーザI/F135等を備える。駆動機構132は、車両1の駆動源(エンジン、モータ等)を含む機構である。制動機構133は、車両1を減速及び停止させる機構である。操舵機構134は、車両1の進行方向を変化させる機構である。ユーザI/F135は、車内に装備されたディスプレイ、スピーカ等である。ECU131は、駆動機構132、制動機構133、操舵機構134、ユーザI/F135等を制御するため各種処理を行う情報処理装置である。本実施形態に係るECU131は、生体情報取得システム111から出力された生体情報を利用して所定の制御を実行する。ECU131は、例えば、生体情報に基づいて危険回避行動が実現されるように駆動機構132、制動機構133、操舵機構134、ユーザI/F135等を制御する。危険回避行動は、例えば、車両1の安全な停止、乗員2への警告、医療機関等への通報等であり得る。
【0040】
図3は、実施形態に係るプロセッサ121の機能構成の一例を示すブロック図である。プロセッサ121は、心拍信号取得部201(第1取得部)、距離情報取得部202(第2取得部)、振動情報取得部203(第3取得部)、補助情報取得部204、ゲイン処理部205、棄却処理部206、生成部207、及び出力部208を備える。これらの機能的構成要素201~208は、図2に示すようなハードウェア(CPU、RAM、ROM、SSD、I/F、増幅器等)とプログラムとの協働により構成される。
【0041】
心拍信号取得部201は、ドップラーセンサ11により検出された心拍信号を取得する。
【0042】
距離情報取得部202は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離に関する距離情報を取得する。本実施形態に係る距離情報取得部202は、FMCWレーダ12により取得されたTOFデータ、カメラ13により取得された画像データ等に基づいて、ドップラーセンサ11と乗員2との距離を算出する。当該距離の算出方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、TOFデータの経時的変化の特徴や画像データに対する画像認識処理の結果に基づいて、乗員2の体格や体動を推定することにより行われ得る。
【0043】
振動情報取得部203は、振動センサ14により検出された振動情報を取得する。振動情報は、例えば、車両1にかかる加速度、車両1の駆動源の駆動状態等を含む。
【0044】
補助情報取得部204は、生体情報を生成するための補助的な情報(本実施形態ではステアタッチセンサ15により検出された補助心拍情報等)を取得する。
【0045】
ゲイン処理部205は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離に基づいて心拍信号を増幅又は減衰させるゲイン処理を行う。ゲイン処理部205は、ゲイン設定部211及び更新頻度設定部212を含む。
【0046】
ゲイン設定部211は、乗員2の体動による影響が低減されるようにゲインを設定する。例えば、ゲイン設定部211は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離が遠くなるほど心拍信号が増幅されるようにゲインを設定する。また、ゲインは、当該距離が近くなるほど心拍信号が減衰されるように設定されてもよい。これにより、乗員2の体動による影響を低減できる。
【0047】
更新頻度設定部212は、振動情報に基づいて、ゲイン設定部211により設定されたゲインを更新(再設定)する頻度を設定する。更新頻度設定部212は、車両1の振動が大きいほどゲインの更新頻度を高くする。これにより、車両1の振動が大きい状況下では頻繁にゲインが更新され、心拍信号の信頼性が向上する。
【0048】
棄却処理部206は、ドップラーセンサ11と乗員2との距離が閾値を超えているときに検出された心拍信号を棄却する。これにより、信頼性の低い心拍信号から生体情報が生成される可能性を低減でき、生体情報の信頼性を向上させることができる。
【0049】
生成部207は、ゲイン処理後の心拍信号から生体情報を生成する。生体情報の形態は特に限定されるべきものではないが、例えばRRI(R-R Interval)等を含む情報であり得る。
【0050】
出力部208は、生成部207により生成された生体情報を所定のシステム、装置等に出力する。本実施形態においては、生体情報が車両制御システム112に出力されるが、生体情報の出力先(利用方法)はこれに限定されるものではない。
【0051】
図4は、実施形態において乗員2が正規位置にいる場合におけるドップラーセンサ11と乗員2との距離Dの一例を示す図である。図5は、実施形態において乗員2が非正規位置にいる場合におけるドップラーセンサ11と乗員2との距離Dの一例を示す図である。
【0052】
図4及び図5に示す例における距離Dは、ドップラーセンサ11と所定の測定位置Pとの間の距離である。測定位置Pは、乗員2の心拍の測定に適した乗員2の体の部分に対応し、例えば心臓が存在すると推定される位置等である。測定位置Pは、例えば、カメラ13により取得された画像データから推定される乗員2の体格、FMCWレーダ12により取得されたTOFデータ、画像データ等から推定される乗員2の体動等に基づいて推定され得る。なお、測定位置Pの設定方法はこれに限定されるものではない。
【0053】
図5に示す非正規位置は、乗員2が正規位置にいる場合より前屈みになった状態を示している。このような非正規位置における距離Dは、図4に示す正規位置における距離Dより大きくなる。距離Dが大きくなるほど、ドップラーセンサ11により検出される心拍信号の強度(振幅)が小さくなり、心拍信号の信頼性が低下する。なお、距離Dが正規位置より大きくなる状況は、図5に示すような、乗員2の上体が前後に移動する場合に限定されるものではない。例えば、乗員2の上体が左右又は上下に移動した場合にも距離Dは大きくなる。
【0054】
図6は、実施形態におけるゲイン処理の一例を示す図である。同図において、乗員2が正規位置から非正規位置に移動した場合における距離D、ゲイン、及び心拍信号のそれぞれの変化が例示されている。心拍信号は、例えばIQ信号等であり得る。
【0055】
乗員2が正規位置にいる時刻T1から時刻T2までの間においては、距離Dは所定の基準値Dtとなり、十分な振幅を有する心拍信号を検出できる状態となる。このような状態においては、心拍信号を増幅させる必要がないため、ゲインは0に設定される。これに対し、乗員2が非正規位置に移動した時刻T2以降においては、距離Dが基準値Dtより大きくなり、心拍信号の振幅が一点鎖線で示すように小さくなる。このような状態においては、心拍信号を増幅するためにゲインが高く設定される。これにより、乗員2が非正規位置に移動した場合であっても、正規位置にいる場合と同等の心拍信号を検出できる。なお、距離Dが基準値Dtより小さくなった場合には、ゲインを0より低くし、心拍信号を減衰させてもよい。
【0056】
図7は、実施形態に係る取得領域A1及び棄却領域A2の一例を示す上面図である。図8は、実施形態に係る取得領域A1及び棄却領域A2の一例を示す斜視図である。図7及び図8において、X軸は車両1の幅方向に対応し、Y軸は車両1の前後方向に対応し、Z軸は車両1の上下方向に対応する。
【0057】
取得領域A1は、ドップラーセンサ11からの距離が閾値以内の領域である。棄却領域A2は、ドップラーセンサ11からの距離が閾値より大きい領域である。図7は、取得領域A1及び棄却領域A2のXY平面上における関係を例示している。図8は、取得領域A1及び棄却領域A2の高さ方向における関係を例示している。測定位置P(図4及び図5参照)が取得領域A1内にあるときにドップラーセンサ11により検出された心拍信号は、その利用が許可される。一方、測定位置Pが棄却領域A2内にあるときにドップラーセンサ11により検出された心拍信号は、その利用が許可されず、棄却される。
【0058】
図9は、実施形態に係る生体情報取得システム111による処理の一例を示すフローチャートである。先ず、距離情報取得部202は、FMCWレーダ12、カメラ13等から取得される情報(TOFデータ、画像データ等)に基づいて、ドップラーセンサ11と乗員2(測定位置P)との距離Dを算出する(S101)。棄却処理部206は、測定位置Pが取得領域A1内にあるか否かを判定する(S102)。測定位置Pが取得領域A1内にない(棄却領域A2内にある)場合(S102:No)、この状況下でドップラーセンサ11により検出された心拍信号を棄却し(S104)、本ルーチンを終了する。
【0059】
測定位置Pが取得領域A1内にある場合(S102:Yes)、ゲイン設定部211は、距離Dに基づいてゲインを設定し(S103)、更新頻度設定部212は、振動情報に基づいてゲインの更新頻度を設定する(S105)。このとき、ゲイン設定部211は、距離Dが大きいほどゲインが高くなるように設定する。また、更新頻度設定部212は、車両1の振動が大きいほどゲインの更新頻度が高くなるように設定する。
【0060】
ゲイン設定部211は、設定された更新頻度に基づいて現在のゲインが有効期限内にあるか否かを判定する(S106)。現在のゲインが有効期限内にない場合(S106:No)、再度ステップS103が実行される。現在のゲインが有効期限内にある場合(S106:Yes)、ゲイン処理部205は、当該ゲインを用いて心拍信号を増幅又は減衰し(S107)、生成部207は、当該ゲイン処理後の心拍信号に基づいて生体情報を生成し(S108)、出力部208は、生成された生体情報を車両制御システム112等に出力する(S109)。
【0061】
上記実施形態によれば、ドップラーセンサ11と乗員2との距離Dに基づいて、乗員2の体動による影響が小さくなるようにゲインが設定され、当該ゲインを用いて心拍信号の強度(振幅)が適切に調整される。これにより、乗員2の生体情報を高精度で取得することが可能となる。
【0062】
上記実施形態の機能を実現するためのプログラムは、プロセッサ121にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…車両(移動体)、2…乗員、11…ドップラーセンサ(第1センサ)、12…FMCWレーダ(第2センサ)、13…カメラ(第2センサ)、14…振動センサ(第3センサ)、15…ステアタッチセンサ、21…座席、22…背もたれ部、31…ルーフ、32…フロントガラス、41…ステアリングホイール、111…生体情報取得システム、112…車両制御システム、121…プロセッサ(生体情報取得装置)、201…心拍信号取得部(第1取得部)、202…距離情報取得部(第2取得部)、203…振動情報取得部(第3取得部)、204…補助情報取得部、205…ゲイン処理部、206…棄却処理部、207…生成部、208…出力部、211…ゲイン設定部、212…更新頻度設定部、D…距離、P…測定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9