(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116587
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物及びこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220803BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20220803BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/5415
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012829
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 大地
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CC043
4J002CC053
4J002CC123
4J002CD00W
4J002CD01W
4J002CD01X
4J002CD18X
4J002DE048
4J002DE078
4J002DE148
4J002DF018
4J002DK008
4J002EN019
4J002EN059
4J002EU099
4J002EU116
4J002EU119
4J002EW019
4J002EX037
4J002FA018
4J002FA038
4J002FA088
4J002FD143
4J002FD146
4J002FD159
4J002FD208
4J002GQ00
4J002GQ05
5F136BC07
5F136FA52
5F136FA63
5F136FA67
5F136FA71
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗が低く、信頼性が高い熱伝導性組成物の提供。
【解決手段】熱伝導性組成物は、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、液状の2官能以下のエポキシ樹脂と、硬化剤と、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物と、熱伝導性フィラーとを含む。熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%超、35体積%未満である。熱伝導性フィラーは、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、
液状の2官能以下のエポキシ樹脂と、
硬化剤と、
アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物と、
熱伝導性フィラーとを含み、
上記熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%超、35体積%未満であり、
上記熱伝導性フィラーが、
熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、
平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む、熱伝導性組成物。
【請求項2】
上記2官能以下の液状のエポキシ樹脂が、アルキルグリシジルエーテルである、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
上記硬化剤が、アミン系、リン系及びフェノール系からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
硬化促進剤をさらに含む、請求項3に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
上記硬化促進剤が、アミン系、リン系及びフェノール系からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
当該熱伝導性組成物を発熱体と放熱体との間に配置し、上記発熱体側から所定の圧力をかけたときの当該熱伝導性組成物の最小厚みを表す実装最小Gap(μm)と、上記最小厚みとするのに必要な圧力(psi)との比(圧力(psi)/実装最小Gap(μm))が10未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
熱抵抗が0.25K/W未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物の硬化物とを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、熱伝導性組成物及びこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの熱対策としては、各種の熱伝導部品が検討されている。例えば、各種のシリコンダイ(ICチップ)から生じる熱は、電子機器から生じる様々な熱源の最上流に位置する。以下、シリコンダイに直接適用される熱伝導部材を「TIM(Thermal Interface Material)1」と称する。
【0003】
TIM1には、特に以下のような2つの主要特性が求められる。TIM1に求められる1つ目の特性として、低BLT(Bond Line Thickness)が挙げられる。半導体パッケージの低背化要求の観点では、実装後のTIM1の領域高さ、すなわち、半導体チップとヒートスプレッダとの間隙(実装最小Gap)が、小さいほど好ましい。実装最小Gapは、例えば100μm以下が望まれることがある。TIM1に求められる2つ目の特性として、半導体と同様の信頼性が挙げられる。TIM1は、例えば、発熱体であるシリコンダイ界面に直接作用することに加えて、半導体パッケージ内に組み込まれる。そのため、TIM1には、各種半導体と同様の信頼性が要求される。以上の特性を満たすTIM1としては、液状の製品であるグリースタイプや、反応性タイプ(接着剤タイプ)、固体状の製品であるはんだ(低温はんだ)タイプが挙げられる。
【0004】
近年、電子機器の更なる高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。従来の単一シリコンダイをパッケージ化したものの他に、2.5Dや3Dに代表されるインターポーザを介した大型のチップパッケージ(SiP(System in Package))なども導入されている。このように、電子機器を構成する各種シリコンダイや半導体パッケージから生じる熱を効率的に放熱することが、電子機器の性能を発現するためには極めて重要である。また、上述したような大型のチップパッケージを含む次世代のパッケージ技術に対応可能な、より低熱抵抗のTIM1が求められている。
【0005】
ところで、近年主流のTIM1としては、上述した液状の製品であるグリースタイプのものと反応性タイプのものが挙げられる。これらのグリースタイプのTIM1と反応性タイプのTIM1には、それぞれ次のような課題がある。グリースタイプのTIM1の課題としては、接着信頼性が低いこと、ポンプアウトにより熱性能が低下してしまうことなどが挙げられる。一方、反応性タイプのTIM1の課題としては、シリコーン系が多いこと、接着力が低いこと、低ポットライフ性、樹脂設計性の自由度が小さいことなどが挙げられる。反応性タイプのTIM1に関して、非シリコーン系のものとしては、樹脂に高熱伝導性を付与させたメゾゲン骨格系のものが多い。メゾゲン骨格を含む反応性タイプのTIM1は、一般的に、高結晶性かつ高粘度であるため、熱伝導性フィラーの高充填と柔軟性を両立することが困難な傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2016/125664号公報
【特許文献2】特開2008-258254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗が低く、信頼性が高い熱伝導性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術に係る熱伝導性組成物は、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、液状の2官能以下のエポキシ樹脂と、硬化剤と、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物と、熱伝導性フィラーとを含み、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%超、35体積%未満であり、熱伝導性フィラーが、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗が低く、信頼性が高い熱伝導性組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本技術に係る熱伝導性組成物を適用した半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例で用いた試験片を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、熱伝導性フィラーの平均粒径とは、熱伝導性フィラーの粒子径分布全体を100%とした場合に、粒子径分布の小粒子径側から粒子径の値の累積カーブを求めたとき、その累積値が50%となるときの粒子径をいう。なお、本明細書における粒度分布(粒子径分布)は、体積基準によって求められたものである。粒度分布の測定方法としては、例えば、レーザー回折型粒度分布測定機を用いる方法が挙げられる。また、本明細書において、「常温」とは、JIS K 0050:2005(化学分析方法通則)に規定される15~25℃の範囲をいう。
【0012】
本技術に係る熱伝導性組成物は、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、液状の2官能以下のエポキシ樹脂と、硬化剤と、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物と、熱伝導性フィラーとを含み、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%超、35体積%未満であり、熱伝導性フィラーが、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む。
【0013】
本技術に係る熱伝導性組成物は、上述した各成分の組み合わせにより、実装最小Gapを小さくでき、半導体パッケージの低背化を実現できる。また、本技術に係る熱伝導性組成物は、上述した各成分の組み合わせにより、熱伝導性フィラーを高充填することができるため、熱抵抗を低くすることができる。
【0014】
また、本技術に係る熱伝導性組成物は、上述した各成分の組み合わせ、特に、エポキシ樹脂として、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、液状の2官能以下のエポキシ樹脂とを用いることにより、遅硬化設計による良好な反応性、例えば高ポットライフ性を実現できる。また、本技術に係る熱伝導性組成物は、エポキシ樹脂の接着性を維持しつつ低応力化により、ヒートショック(Heat Shock:HS)試験等に対して高信頼性を実現できる。
【0015】
このように、本技術に係る熱伝導性組成物によれば、実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗が低く、高い信頼性を実現できる。以下、熱伝導性組成物の各構成要素について説明する。
【0016】
<芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂>
熱伝導性組成物は、エポキシ樹脂として、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂)を含む。このように、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂を用いることで、高い信頼性を実現できる。芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂は、室温において液状であってもよいし、固体であってもよい。
【0017】
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂の粘度は、例えば、25℃において500mPa・s以上とすることができ、1000mPa・s以上であってもよく、3000mPa・s以上であってもよく、5000mPa・s以上であってもよく、7000mPa・s以上であってもよく、9000mPa・s以上であってもよい。芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂の粘度の上限値は、例えば、25℃において150000mPa・s以下とすることができ、120000mPa・s以下であってもよく、110000mPa・s以下であってもよい。
【0018】
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100~300g/eqの範囲とすることができ、100~200g/eqの範囲であってもよい。
【0019】
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、例えば、5000~10000の範囲とすることができる。
【0020】
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ変性ポリブタジエンを用いることができる。エポキシ変性ポリブタジエンは、分子末端に水酸基を有するものが好ましく、分子両末端に水酸基を有することがより好ましく、分子両末端にのみ水酸基を有することがさらに好ましい。エポキシ変性ポリブタジエンが水酸基を有する場合、水酸基の数は、1つ以上であってもよく、2個であってもよいし、3個以上であってもよい。エポキシ変性ポリブタジエンの具体例としては、ダイセル社製のエポリードPB3600が挙げられる。
【0021】
熱伝導性組成物中、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂の含有量は、1質量%以上とすることができ、2質量%以上であってもよく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、9質量%以上であってもよい。また、熱伝導性組成物中、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂の含有量の上限は、例えば、15質量%以下とすることができ、10質量%以下とすることもできる。芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<液状の2官能以下のエポキシ樹脂>
熱伝導性組成物は、エポキシ樹脂として、液状の2官能以下のエポキシ樹脂も含む。液状の2官能以下のエポキシ樹脂は、室温において液状であるものが好ましい。
【0023】
液状の2官能以下のエポキシ樹脂の粘度は、例えば、室温において100mPa・s以下とすることができ、50mPa・s以下であってもよく、30mPa・s以下であってもよい。液状の2官能以下のエポキシ樹脂の粘度の下限値は、例えば、1mPa・s以上とすることができる。
【0024】
液状の2官能以下のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100~300g/eqの範囲とすることができ、100~200g/eqの範囲であってもよい。
【0025】
液状の2官能以下のエポキシ樹脂としては、例えば、アルキルモノグリシジルエーテルや、アルキルジグリシジルエーテルを用いることができる。液状の2官能以下のエポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製のYED216D、YED188が挙げられる。
【0026】
液状の2官能以下のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、液状の2官能以下のエポキシ樹脂として、液状の2官能のエポキシ樹脂を2種以上併用してもよいし、樹脂を液状の1官能のエポキシ樹脂と、液状の2官能のエポキシ樹脂とを併用してもよいし、液状の1官能のエポキシ樹脂を2種以上併用してもよい。
【0027】
熱伝導性組成物中、液状の2官能以下のエポキシ樹脂の含有量は、9質量%以上とすることができ、12質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、21質量%以上であってもよい。また、熱伝導性組成物中、液状の2官能以下のエポキシ樹脂の含有量の上限は、例えば、28質量%以下とすることができ、25質量%以下とすることもできる。
【0028】
<硬化剤>
熱伝導性組成物は、硬化剤を含む。硬化剤は、上述したエポキシ樹脂用の硬化剤である。硬化剤は、アミン系、リン系、フェノール系またはその組み合わせからなるものを用いることができ、例えば、アミン系の硬化剤を単独で用いてもよいし、フェノール系の硬化剤を単独で用いてもよい。
【0029】
フェノール系の硬化剤としては、フェノールノボラック化合物、クレゾールノボラック化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール化合物、ジシクロペンタジエンフェノール付加型化合物、フェノールアラルキル化合物などが挙げられる。フェノール系の硬化剤の具体例としては、DIC社製のTD2131が挙げられる。
【0030】
アミン系の硬化剤としては、イミダゾール類、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。アミン系の硬化剤の具体例としては、T&K TOKA社製のフジキュアー7002が挙げられる。
【0031】
熱伝導性組成物中、硬化剤の含有量は、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよく、1.5質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。また、熱伝導性組成物中、硬化剤の含有量の上限値は、例えば、5質量%以下とすることができ、3質量%以下であってもよく、2.5質量%以下であってもよい。硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
<アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物>
熱伝導性組成物は、シラン化合物を含む。シラン化合物は、アルコキシ基以外の官能基を有しない。ここで、アルコキシ基以外の官能基とは、エポキシ基、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、イソシアネート基などが含まれる。なお、アルコキシ基以外の官能基には、エポキシ樹脂が有するエポキシ基と実質的に反応しない有機系の官能基、例えば、アルキル基やアリール基(フェニル基など)は含まれない。すなわち、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基と実質的に反応しない有機系の官能基、例えばフェニル基を有していてもよい。
【0033】
アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物の具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
熱伝導性組成物中、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物の含有量は、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上であってもよく、0.8質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、熱伝導性組成物中、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物の含有量の上限値は、例えば、5質量%以下とすることができ、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
<熱伝導性フィラー>
熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラーとして、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む。このような第1の熱伝導性フィラーと第2の熱伝導性フィラーを併用することにより、実装最小Gapを小さくでき、また、実装圧力に対する実装最小Gap値の比も小さくすることができ、さらに、熱伝導性フィラーを高充填できるため熱抵抗を低くすることもできる。なお、熱伝導性組成物が、2種以上の熱伝導性フィラーを含み、かつ、その2種以上の熱伝導性フィラーが第1の熱伝導性フィラー及び第2の熱伝導性フィラーのいずれにも該当する場合、任意の1種の熱伝導性フィラーを第1の熱伝導性フィラーと特定し、他の熱伝導性フィラーを第2の熱伝導性フィラーと特定する。
【0036】
<第1の熱伝導性フィラー>
第1の熱伝導性フィラーは、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下である。熱伝導率が20W/m・K以上である熱伝導性フィラーとしては、窒素化合物、金属水酸化物、金属酸化物などが挙げられる。窒素化合物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。金属酸化物としては、アルミナ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。第1の伝導性フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、粉末状、顆粒状、扁平状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。
【0037】
第1の熱伝導性フィラーの最大粒子径が200μm以下であることにより、実装最小Gapを小さくでき、半導体パッケージの低背化を実現できる。最大粒子径が200μm以下の熱伝導性フィラーとしては、例えば、平均粒径が70μm以下の熱伝導性フィラーを用いることができ、平均粒径が40μm以下の熱伝導性フィラーを用いてもよいし、平均粒径が20μm以下の熱伝導性フィラーを用いてもよいし、平均粒径が5μm以下の熱伝導性フィラーを用いてもよいし、平均粒径が1μm以下の熱伝導性フィラーを用いてもよい。また、最大粒子径が200μm以下の熱伝導性フィラーとしては、平均粒径が0.5μm以上の熱伝導性フィラーを用いることができる。ここで、例えば、平均粒径が70μmの熱伝導性フィラーを用いる場合、最大粒子径が200μm以下となるように、75μm以下の目開きを有する網(篩)にかけてから用いることが好ましい。同様に、例えば、平均粒径が40μmの熱伝導性フィラーを用いる場合、45μm以下の目開きを有する網(篩)にかけてから用いることが好ましい。
【0038】
第1の熱伝導性フィラーの具体例としては、75μmの目開きを有する篩にかけた平均粒径が70μmのアルミナ、45μmの目開きを有する篩にかけた平均粒径が40μmのアルミナ、平均粒径が20μm以下のアルミナ、平均粒径が20μm以下の窒化アルミニウムなどが挙げられる。第1の熱伝導性フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
<第2の熱伝導性フィラー>
第2の熱伝導性フィラーとして、平均粒子径が10~20μmである熱伝導性フィラーを用いることは、後述するように、熱伝導性組成物を発熱体と放熱体との間に配置し、発熱体側から所定の圧力をかけたときの実装最小Gap(μm)と、実装最小Gapに必要な圧力(psi)との比(psi/μm)を小さくすることに寄与する。第2の熱伝導性フィラーは、平均粒子径が10~20μmである熱伝導性フィラーであれば、その他の条件は特に制限されない。第2の熱伝導性フィラーの材質としては、第1の熱伝導性フィラーと同様に、窒素化合物、金属水酸化物、金属酸化物などが挙げられる。第2の熱伝導性フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。第2の伝導性フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、粉末状、顆粒状、扁平状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。
【0040】
熱伝導性組成物中、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量は、9体積%超、35体積%未満である。熱伝導性組成物中、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量を9体積%超とすることで、実装最小Gapを小さくするとともに、熱抵抗値も小さくし、高い信頼性を実現することができる。また、熱伝導性組成物中、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量を35体積%未満とすることで、熱抵抗値を小さくすることができる。換言すると、熱伝導性組成物中、第1の熱伝導性フィラーと第2の熱伝導性フィラーの合計量は、65~91体積%の範囲であり、70体積%以上であってもよく、75体積%以上であってもよく、80体積%以上であってもよく、85体積%以上であってもよく、70~90体積%の範囲であってもよい。また、熱伝導性組成物は、第1の熱伝導性フィラーを第2の熱伝導性フィラーよりも多く含んでいてもよいし、第2の熱伝導性フィラーを第1の熱伝導性フィラーよりも多く含んでいてもよいし、第1の熱伝導性フィラーと第2の熱伝導性フィラーを同量で含んでいてもよい。第1の熱伝導性フィラーの含有量は、例えば、30~70体積%の範囲とすることができる。熱伝導性組成物中、第2の熱伝導性フィラーの含有量は、例えば、5~50体積%の範囲とすることができる。
【0041】
<その他の成分>
熱伝導性組成物は、本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、分散剤、遅延剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤などが挙げられる。
【0042】
熱伝導性組成物は、硬化促進剤をさらに含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン系、リン系及びフェノール系からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。例えば、硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾ-ル系、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7塩(DBU塩)、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン系、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン系を用いることができる。イミダゾール系の硬化促進剤の具体例としては、四国化成社製のC11Z-CNなどが挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。熱伝導性組成物が硬化促進剤を含む場合、熱伝導性組成物中の硬化促進剤の含有量は、例えば、0.01~10質量%とすることができ、0.05~1質量%とすることもできる。
【0043】
本技術に係る熱伝導性組成物は、公知の手法で調製できる。例えば、上述した各成分を常法により均一に混合することで製造できる。また、熱伝導性組成物は、液状状態で用いてもよいが、ハンドリング性の観点からシート状又はフィルム状に成形して用いてもよい。
【0044】
本技術に係る熱伝導性組成物は、上述の構成とすることで、遅硬化性を高めることができ、良好な反応性を実現できる。例えば、熱伝導性組成物を調製してから常温で8時間経過後の反応率を10%以下とすることができ、8%以下とすることもでき、5%以下とすることもでき、3%以下とすることもでき、2%以下とすることもでき、1%以下とすることもでき、0%とすることもでき、0~5%の範囲とすることもできる。
【0045】
また、熱伝導性組成物を150℃で3分加熱後の反応率を20%以下とすることができ、15%以下とすることもでき、12%以下とすることもでき、10%以下とすることもでき、5%以下とすることもでき、5~20%の範囲とすることもできる。
【0046】
さらに、熱伝導性組成物を150℃で1時間加熱後の反応率を60%以下とすることができ、55%以下とすることもでき、50%以下とすることもでき、50~60%の範囲とすることもできる。
【0047】
また、熱伝導性組成物を260℃で3分加熱後の反応率を85%以下とすることができ、80%以下とすることもでき、75%以下とすることもでき、70%以下とすることもでき、70~85%の範囲とすることもできる。
【0048】
なお、熱伝導性組成物の各反応率は、後述する実施例の方法で測定することができる。
【0049】
本技術に係る熱伝導性組成物は、上述した構成とすることで熱抵抗を低くすることができ、例えば、熱抵抗を0.25K/W未満とすることができ、0.24K/W以下とすることもでき、0.16K/W以下とすることもでき、0.08K/W以下とすることもでき、0.08~0.25未満の範囲とすることもできる。なお、熱伝導性組成物の熱抵抗は、後述する実施例の方法で測定することができる。
【0050】
本技術に係る熱伝導性組成物は、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすことが可能な構造の電子機器(放熱構造)とすることができる。例えば、本技術に係る熱伝導性組成物が室温常圧で液状である場合には、発熱体に、熱伝導性組成物を常法により塗布し、塗布面に放熱体を載せて発熱体と熱伝導性組成物の層と放熱体とを備える積層体を形成し、この積層体を加熱チャンバーに投入して熱伝導性組成物を熱硬化させることにより、発熱体と放熱体とが一体化した電子機器を形成できる。熱伝導性組成物の塗布量は、実装後の発熱体と放熱体の間が最小Gapとなり、かつ、発熱体の面積を被覆可能となる量が好ましい。
【0051】
本技術に係る熱伝導性組成物は、発熱体と放熱体との間に配置(例えば塗布)し、発熱体側から所定の圧力をかけたときの熱伝導性組成物の最小厚みを表す実装最小Gap(μm)を小さくできる。例えば、実装最小Gap(μm)を250μm以下とすることができ、200μm以下とすることもでき、100μm以下とすることもでき、80μm以下とすることもできる。このように、本技術に係る熱伝導性組成物を用いることにより、実装最小Gapを小さくできるため、電子機器(例えば半導体パッケージ)の低背化を実現できる。なお、実装最小Gapは、後述する実施例の方法で測定できる。
【0052】
また、本技術に係る熱伝導性組成物は、発熱体と放熱体との間に配置(例えば塗布)し、発熱体側から所定の圧力をかけたときの実装最小Gap(μm)と、実装最小Gapに必要な圧力(psi)との比(psi/μm)を小さくできる。例えば、実装最小Gap(μm)と、実装最小Gapに必要な圧力(psi)との比(psi/μm)を10未満とすることができ、8以下とすることもでき、5以下とすることもでき、2以下とすることもでき、1.25以下とすることもでき、0.8以下とすることもでき、0.5以下とすることもでき、0.4以下とすることもでき、0.16以下とすることもでき、0.16~10未満の範囲とすることもできる。このように、本技術に係る熱伝導性組成物を用いることで、実装最小Gapと、実装最小Gapに必要な圧力との比を小さくできるため、電子機器の低背化をより効果的に実現できる。なお、実装最小Gapに必要な圧力(psi)は、後述する実施例の方法で測定できる。
【0053】
発熱体としては、特に限定されず、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの集積回路素子、トランジスタ、抵抗器など、電気回路において発熱する電子部品等が挙げられる。また、発熱体には、通信機器における光トランシーバ等の光信号を受信する部品も含まれる。
【0054】
放熱体としては、特に限定されず、例えば、ヒートシンクやヒートスプレッダなど、集積回路素子やトランジスタ、光トランシーバ筐体などと組み合わされて用いられるものが挙げられる。放熱体としては、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
【0055】
電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導性シートとを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有していてもよい。
【0056】
図1は、本技術に係る熱伝導性組成物を適用した半導体装置の一例を示す断面図である。例えば、熱伝導性組成物は、
図1に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に配置(実装)され、発熱体と放熱体との間に挟持される。
図1に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1と、本技術に係る熱伝導性組成物の硬化物1Aとを備え、熱伝導性組成物の硬化物1Aがヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持されている。また、熱伝導性シート1が、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されている。これにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。熱伝導性シート1は、本技術に係る熱伝導性組成物をシート状に形成したものを用いてもよいし、あるいは、本技術に係る熱伝導性組成物以外の熱伝導性組成物を用いて形成された熱伝導性シートを用いてもよい。本技術に係る熱伝導性組成物の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間に限定されず、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間にも配置してもよい。本技術に係る熱伝導性組成物は、特に、上述のようにTIM1用途に用いることが好ましく、例えば、電子部品51としてのPCB(Printed Circuit Board)上に接着させたシリコンダイと、ヒートスプレッダ52との間に配置することが好ましい。
【実施例0057】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<エポキシ樹脂>
液状の2官能のエポキシ樹脂:製品名;YED216D、粘度20mPa・s、エポキシ当量130g/eq
芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂:製品名;PB3600、粘度(25℃)100,000mPa・s、エポキシ当量190g/eq
液状の1官能のエポキシ樹脂:製品名;YED188、粘度5mPa・s、エポキシ当量110g/eq
4官能のエポキシ樹脂:製品名;BATD(昭和電工社製)、粘度15,000mPa・s、エポキシ当量150g/eq
【0059】
<硬化剤>
アミン系:製品名;フジキュアー7002(T&K TOKA社製)、粘度50000mPa・s
フェノール系:製品名;TD2131(DIC社製)
【0060】
<硬化促進剤>
イミダゾール系:製品名;C11Z-CN(四国化成社製)
【0061】
<シラン化合物>
フェニルトリメトキシシラン
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
【0062】
<熱伝導性フィラー>
アルミナ:平均粒径40μm(45μm目開き篩)
アルミナ:平均粒径20μm
アルミナ:平均粒径1μm
アルミナ:平均粒径70μm(75μm目開き篩)
アルミナ:平均粒径70μm
窒化アルミニウム:平均粒径20μm
窒化アルミニウム:平均粒径1μm
【0063】
<熱伝導性組成物の調製>
表1に示す各成分を混合して熱伝導性組成物を調製した。
【0064】
<試験片の作製>
図2は、実施例で用いた試験片を模式的に示す断面図である。試験片60として、PCB61(サイズ:50mm×50mm)上に接着させたベアシリコンダイ62(サイズ:20mm×20mm、厚み750μm)上に熱伝導性組成物63を塗布し、熱伝導性組成物63上に、NiメッキしたCu(厚み1.0mm)素材のIHS(Integrated heat spreader)64(サイズ:40mm×40mm)を貼り合わせたパッケージ構造を準備した。熱伝導性組成物63の塗布量は、実装後のベアシリコンダイ62とIHS64間が最小Gapとなり、かつ、ベアシリコンダイ62の面積(20mm×20mm)を被覆可能となるような量とした。
【0065】
<反応率>
[ポットライフ8hr]
熱伝導性組成物を調製してから室温常圧で8時間経過後の反応率(ポットライフ8hr)、熱伝導性組成物を150℃で3分加熱後の反応率(150℃/3min)、熱伝導性組成物を150℃で1時間加熱後の反応率(150℃/1hr)、熱伝導性組成物を260℃で3分加熱後の反応率(260℃/3min)をそれぞれ測定した。反応率は、温度計、圧力計、およびヒーターを備えた耐圧容器(オーエムラボテック(株)製「OM-50」)に投入前と投入後の熱伝導性組成物中のエポキシ基の減少率から求めた。具体的には、熱伝導性組成物中のエポキシ基が、耐圧容器に投入する前後でどれだけ減少したかを、赤外吸収スペクトルの914cm-1の吸収を測定して求めた。結果を表1に示す。
【0066】
<実装最小Gap>
試験片60を作製する際に、設定した一定圧力に対する、ベアシリコンダイ62とIHS64との最小Gap、すなわち実装最小Gap(μm)を測定した。実装最小Gapは、圧力が低いうちは熱伝導性組成物の粘度に依存するが、圧力が所定値(最小Gap到達のための圧力)以上になると、熱伝導性組成物中の熱伝導性フィラーの最大径にGapが到達し、それ以上はGapが小さくならない傾向にある。結果を表1に示す。
【0067】
<圧力/実装最小Gap>
実装最小Gap(μm)と、実装最小Gap到達のために必要な圧力(psi)との比、すなわち、「圧力(psi)/実装最小Gap(μm)」を求めた。実装最小Gapが小さくても、実装最小Gapに必要な圧力が高すぎると、試験片60を構成するベアシリコンダイ62が破損してしまうおそれがあるので、圧力(psi)/実装最小Gap(μm)の値が高すぎないことが望ましくない。結果を表1に示す。
【0068】
<熱抵抗>
熱伝導性組成物の熱抵抗(K/W)は、熱抵抗測定装置の発熱側と冷却側との間に、熱伝導性組成物の厚みが最小Gapとなるように熱伝導性組成物を塗布して測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<SAT(Scanning Acoustic Tomograph>
試験片60をオーブン(150℃、60分)に投入して熱伝導性組成物63を硬化させた。硬化後の試験片60、すなわち実装初期の試験片60について、超音波映像装置(SAT)、装置名:FS300、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、非破壊検査した。具体的に、試験片60が全面接着されているときを○(OK)と評価し、部分接着(非接着箇所あり)のときを×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<吸湿リフロー試験>
試験片60をオーブン(150℃、60分)に投入して熱伝導性組成物63を硬化させた。硬化後の試験片60を温度85℃、湿度85%、24時間の条件で吸湿させ、最大260℃のリフロー炉で3サイクル加熱(吸湿リフロー)させた。吸湿リフロー後の試験片60におけるベアシリコンダイ62とIHS64との間の剥離を、超音波映像装置(SAT)で観察した。吸湿リフローさせる前後で、剥離起因の変化がなかったときを○(OK)と評価し、変化があったときを×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<ヒートショック(HS)試験>
試験片60をオーブン(150℃、60分)に投入して熱伝導性組成物63を硬化させた。硬化後の試験片60について、-55℃(30min)⇔125℃(30min)の温度サイクル試験を1000サイクル行った。温度サイクル試験後の試験片60におけるベアシリコンダイ62とIHS64との間の剥離を、超音波映像装置(SAT)で観察した。温度サイクル試験の前後で、剥離起因の変化がなかったときを○(OK)と評価し、変化があったときを×(NG)と評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
比較例1では、芳香族骨格を有する3官能以上のエポキシ樹脂を含む熱伝導性組成物、換言すると、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂を含まない熱伝導性組成物を用いたため、信頼性試験(HS試験)の結果が良好ではないことが分かった。
【0075】
比較例2では、平均粒子径が10~20μmである熱伝導性フィラーを含まない熱伝導性組成物を用いたため、実装圧力に対する実装最小Gap値の比が10psi/μm以上と大きいことが分かった。
【0076】
比較例3では、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が35体積%以上である熱伝導性組成物を用いたため、熱抵抗値が大きいことが分かった。
【0077】
比較例4では、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%以下である熱伝導性組成物を用いたため、実装最小Gapが大きく、熱抵抗値も大きく、信頼性試験の結果(吸湿リフロー、HS)が良好ではないことが分かった。
【0078】
比較例5では、熱伝導性フィラーとして、75μm目開き篩を使用していない平均粒径70μmのアルミナを用いた、換言すると、最大粒子径が200μmを超える熱伝導性フィラーを含む熱伝導性組成物を用いたため、実装最小Gapが大きく、熱抵抗も大きいことが分かった。一方、実施例2では、75μm目開き篩にかけた平均粒径70μmのアルミナを用いた、換言すると、最大粒子径が200μmを超えないアルミナを用いたため、実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗を低くでき、高い信頼性が実現できることが分かった。
【0079】
比較例6では、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂を含まない熱伝導性組成物を用いたため、信頼性試験の結果(吸湿リフロー、HS)が良好ではないことが分かった。
【0080】
比較例7では、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物を含まない熱伝導性組成物を用いたため、熱伝導性組成物の分散性が良好ではなく、熱伝導性組成物をシート化するのが困難であることが分かった。
【0081】
比較例8では、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物を含まない熱伝導性組成物であって、アルコキシ基以外の官能基を有するシラン化合物を含む熱伝導性組成物を用いたため、信頼性試験の結果(HS)が良好ではないことが分かった。
【0082】
一方、実施例の結果から、芳香族骨格を有しない3官能以上のエポキシ樹脂と、液状の2官能以下のエポキシ樹脂と、硬化剤と、アルコキシ基以外の官能基を有しないシラン化合物と、熱伝導性フィラーとを含み、熱伝導性フィラー以外の成分の合計量が9体積%超、35体積%未満であり、熱伝導性フィラーが、熱伝導率が20W/m・K以上かつ最大粒子径が200μm以下の第1の熱伝導性フィラーと、平均粒子径が10~20μmである第2の熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物を用いることで、実装最小Gapを小さくでき、熱抵抗を低くでき、高い信頼性が実現できることが分かった。
【0083】
1 熱伝導性シート、1A 熱伝導性組成物の硬化物、50 半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、53 ヒートシンク、60 試験片、61 PCB、62 ベアシリコンダイ、63 熱伝導性組成物、64 IHS