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  • 特開-内視鏡装置 図1
  • 特開-内視鏡装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116623
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20220803BHJP
   G02B 23/26 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
A61B1/00 730
G02B23/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012893
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】591236172
【氏名又は名称】株式会社ハタ研削
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊樹
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040AA01
2H040BA24
2H040CA23
2H040CA27
2H040FA02
2H040GA01
4C161CC07
4C161FF40
4C161FF46
4C161JJ01
4C161JJ06
4C161LL03
(57)【要約】
【課題】挿入管の先端に位置する対物レンズが液体に触れないように保護する保護部材を不要とした内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡装置1の挿入管2には、複数本の光ファイバーを束ねた構成のイメージガイドファイバー6が配置されている。挿入管2の先端には、対物レンズとして複眼レンズ5が取り付けられている。複眼レンズ5の物体側のレンズ面52は挿入管2の先端開口部から露出している。複眼レンズ5のレンズ面52に液体が接触した状態でも鮮明な被写体画像を取得できる。挿入管部2の先端部に保護部材を取り付ける必要がないので、当該先端部を微細化するのに有利である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズで取得した撮影対象の光学像が、複数本の光ファイバーを束ねた構成のイメージガイドファイバーを介して取り出される内視鏡装置において、
前記対物レンズは、前記イメージガイドファイバーの入射側端面に配列された複数個のマイクロレンズから構成される複眼レンズであることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記複眼レンズは、前記マイクロレンズとして、相互に平行に配列された円柱状のロッドレンズを備えている請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記複眼レンズの像側のレンズ面は、前記イメージガイドファイバーの前記入射側端面に、融着または紫外線硬化樹脂により接合されている請求項1に記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用あるいは工業用の内視鏡装置に関し、多数本の光ファイバーを束ねた構成の光伝送路を介して被写体画像を取得する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置としては、多数本の光ファイバーの束から構成されるイメージガイドファイバーから出力される画像を、接眼レンズを介して目視するタイプのファイバースコープと呼ばれるもの、接眼レンズの代わりにCCDカメラ等のカメラにより取得画像を撮影するものなどが知られている。イメージガイドファイバーを用いた内視鏡装置では、イメージガイドファイバーの先端(画像入射側の端)に対物レンズを取り付け、対物レンズを介して入射する画像を伝送して、反対側の後端から接眼レンズあるいはCCDカメラなどに出力している。内視鏡装置には、一般的に、多数本の光ファイバーを束ねた構成のライトガイドファイバーも備わっており、ここを介して照明光源からの照明光が被写体に照射される。
【0003】
特許文献1には、イメージガイドファイバーおよびライトガイドファイバーを備えたファイバースコープを携帯電話に接続して用いるための発明が開示されている。イメージガイドファイバーは、多数本の光ファイバーが束ねられた構成となっており、その先端に、対物レンズが取り付けられている。特許文献2には、撮影光をガイドするための導光部として、マルチコア型の光ファイバーが使用されている歯科用プローブ等に用いられるファイバースコープが記載されている。このファイバースコープにおいては、イメージガイドファイバーの先端部に、シリコン系樹脂等から成形されたレンズ部が一体に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-189884号公報
【特許文献2】特開2015-228887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡装置、例えば、医療用の内視鏡装置においては、被験者への体内に挿入される挿入管の先端部が体腔液、胃液などの消化液に晒されることが多い。イメージガイドファイバーの先端部に取り付けられている対物レンズが挿入管の先端部から露出している場合には、対物レンズが液体に晒されると被写体に焦点を合わせることができず、撮影画像が不鮮明になる等の弊害が生じる。これを回避するために、挿入管の先端部に透明カバーガラス等を液密状態に取り付けて、対物レンズが液体に触れることがないように保護している。上記の特許文献2においてもカバーガラスにより対物レンズを保護している。
【0006】
被験者の体内に挿入される挿入管は、被験者の負担を軽減するために可能な限り細くすることが望ましい。例えば、内視鏡装置の極細の挿入管の内部には、1000~3000本の光ファイバーの束からなる外径寸法が0.25mm程度の極細のイメージガイドファイバーが挿入される。イメージガイドファイバーの先端面に取付けられる対物レンズも、極小外径寸法で、厚みも例えば0.01mm以下の微小レンズが用いられる。
【0007】
ここで、挿入管の先端に取り付けられているカバーガラス等の対物レンズの保護部材は、対物レンズを保護するために、対物レンズと同一あるいは、それよりも大きな寸法の部品である。したがって、挿入管の先端部に取り付けられている対物レンズの保護部材を省略できれば、挿入管の先端部の極小化に有利である。
【0008】
本発明の目的は、この点に鑑みて、極細のイメージガイドファイバーの先端に取り付けられた対物レンズが液体に晒されないように保護するための保護部材を不要とした内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、対物レンズで取得した撮影対象の光学像が、複数本の光ファイバーを束ねた構成のイメージガイドファイバーを介して取り出される内視鏡装置において、対物レンズとして、イメージガイドファイバーの入射側端面に配列された複数個の微小レンズから構成される複眼レンズを用いたことを特徴としている。
【0010】
内視鏡装置は、挿入管の先端部から対物レンズとして用いている複眼レンズの物体側のレンズ面が露出した状態のままで使用される。使用時には、複眼レンズのレンズ面が液体に接触することがある。例えば、医療用の内視鏡装置の場合には、被験者の体腔液、消化液などの液体に接触することがある。複眼レンズを用いた複眼光学系においては、液体に接触したことに起因する被写体に対するピントずれが抑制され、鮮明な撮影画像を得ることができる。よって、本発明によれば、内視鏡装置の挿入管の先端部に、対物レンズが液体等に触れないように保護するための保護部材を取り付ける必要がないので、挿入管の先端部の微小化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した内視鏡装置を示す概略構成図である。
図2】(A)は図1の内視鏡装置のイメージガイドファイバーの先端部分の断面を示す模式図であり、(B)はその端面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明を適用した内視鏡装置の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態に係る内視鏡装置を示す概略構成図である。内視鏡装置1は、可撓性の極細の挿入管2と、この後端に取り付けたCCDカメラ3と、CCDカメラ3の撮影画像を表示する表示装置4とを備えている。挿入管2には、先端に対物レンズとして複眼レンズ5が取り付けられたイメージガイドファイバー6が内蔵されており、複眼レンズ5を介して取得される被写体画像は、イメージガイドファイバー6を介して、その後ろ側に配置した結像光学系を介してCCDカメラ3の受光面に結像する。
【0013】
また、挿入管2には、照明光を被写体に導くためのライトガイドファイバー7も内蔵されている。ライトガイドファイバー7の後端は、挿入管2の途中の部位から外部に引き出されて、照明光源8に接続されている。一般的に、可撓性の挿入管2の先端側部分を所定方向に折り曲げ操作するための操作機構部9も、挿入管2に付設されている。
【0014】
なお、イメージガイドファイバー6は樹脂製のカバー(図示せず)で覆われている。この状態で、イメージガイドファイバー6は、挿入管2の外筒であるステンレススチール製の蛇腹状をした可撓性の管20に挿入されている。管20の先端開口部の内部に、複眼レンズ5が位置しており、複眼レンズ5の物体側のレンズ面51が、管20の先端開口部に露出している。
【0015】
図2(A)は、複眼レンズ5が取り付けられているイメージガイドファイバー6の先端部分を示す模式図であり、図2(B)はその先端に取り付けた複眼レンズ5を示す模式図である。イメージガイドファイバー6は、例えば、1000本以上の多数本のシングルモードの光ファイバー60を束ねた構成のものであり、外径寸法が例えば0.25mmである。イメージガイドファイバー6の入射側端面61は光軸6aに直交する平坦面である。この入射側端面61に複眼レンズ5が配置されている。
【0016】
複眼レンズ5は、微小厚さで微小径のマイクロレンズ50が多数個配列された構成のマイクロレンズアレイからなる。各マイクロレンズ50は例えば微小径の円筒状のロッドレンズからなる。各マイクロレンズ50の像側のレンズ面(複眼レンズの像側のレンズ面52)は、入射側端面61に融着接合されている。紫外線硬化樹脂を用いて、各マイクロレンズ50をイメージガイドファイバー6の入射側端面61に接合することもできる。各マイクロレンズ50の先端面である物体側のレンズ面(複眼レンズ5の物体側のレンズ面51)は、光軸6aに直交する平坦な研磨面である。
【0017】
マイクロレンズアレイからなる複眼レンズ5の外径寸法は0.25mmであり、イメージガイドファイバー6と同様である。複眼レンズ5の厚さ(各マイクロレンズ50の光軸方向の長さ)は、例えば0.75mmである。
【0018】
このように、内視鏡装置1は、挿入管部2に組み込まれる撮影画像伝送用の光伝送路が、イメージガイドファイバー6と、この入射側端面に接合したマイクロレンズアレイからなる複眼レンズ5から構成されている。一般的な樹脂成形品の対物レンズを用いた個眼光学系とは異なり、複眼レンズ5を備えた複眼光学系では、複眼レンズ5の物体側のレンズ面が液体に接した状態でも鮮明な被写体画像を得ることができる。よって、挿入管の先端部に取り付けられる対物レンズの保護部材を省略できるので、内視鏡装置の挿入管の先端部の微細化を実現できる。
【符号の説明】
【0019】
1 内視鏡装置
2 挿入管
3 CCDカメラ
4 表示装置
5 複眼レンズ
6 イメージガイドファイバー
6a 光軸
7 ライトガイドファイバー
8 照明光源
9 操作機構部
20 管
50 マイクロレンズ
51 物体側のレンズ面
52 像側のレンズ面
60 光ファイバー
61 入射側端面
図1
図2