(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116638
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】回転刃ユニット
(51)【国際特許分類】
A01D 34/67 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A01D34/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012915
(22)【出願日】2021-01-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月21日、株式会社サカソウインベントは、株式会社山善ロジス関東に、藤田篤が発明した「回転刃ユニット」の製品を卸した。
(71)【出願人】
【識別番号】511052794
【氏名又は名称】株式会社サカソウインベント
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA01
2B083CA03
2B083CA09
2B083CA22
2B083CA28
2B083CB02
2B083CB14
2B083DA02
2B083DA03
2B083HA26
(57)【要約】
【課題】工具を用いない方式で揺動刃の交換を簡単に行えるようにしつつ、刈り込んだ草木等が絡み付き難い構造とした回転刃ユニットを提供する。
【解決手段】回転刃ユニット1は、概略円盤形状の中心に草刈り機の回転軸に装着するための装着孔12を有し、装着孔12の周囲に支持突起13を設けた回転基板10と、支持突起13に対して着脱可能な揺動刃20とを備える。支持突起13は、円盤形状の表面から立設する円柱状の支柱部13bと、支柱部13bの先端に設けられ支柱部13bよりも大径の頭部13aとを有する。揺動刃20は、基端部22に、頭部13aよりも大径の第1の孔25と、頭部13aよりも小径で且つ支柱部13bよりも大径の第2の孔26とを隘路部27を介して互いに連通させた概略瓢箪型の取付孔24を有する。支柱部13bの高さは、揺動刃20の基端部22の厚みと略同一に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略円盤形状の中心に草刈り機の回転軸に装着するための装着孔を有し、前記装着孔の周囲に支持突起を設けた回転基板と、
前記支持突起に対して着脱可能な揺動刃と、
を備え、
前記支持突起は、前記回転基板の表面から立設する円柱状の支柱部と、前記支柱部の先端に設けられ前記支柱部よりも大径の頭部とを有し、
前記揺動刃は、基端部に、前記頭部よりも大径の第1の孔と、前記頭部よりも小径で且つ前記支柱部よりも大径の第2の孔とを隘路部を介して互いに連通させた概略瓢箪型の取付孔を有し、
前記支柱部の高さが前記揺動刃の前記基端部の厚みと略同一に形成されることを特徴とする回転刃ユニット。
【請求項2】
前記取付孔は、前記第1の孔を前記揺動刃の先端側に有し、前記第2の孔を前記揺動刃の基端部側に有することを特徴とする請求項1に記載の回転刃ユニット。
【請求項3】
前記揺動刃は、前記第2の孔よりも更に基端部側において下面に突出する突起部を有し、
前記回転基板は、表面に、前記突起部を挿入可能なガイド溝が前記支持突起に向かって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転刃ユニット。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記支持突起の近傍において円弧状に形成されることを特徴とする請求項3に記載の回転刃ユニット。
【請求項5】
前記支持突起は、前記回転基板に設けられた孔に挿通され、前記回転基板の裏面側においてハトメ加工が施されることによって前記回転基板に一体的に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転刃ユニット。
【請求項6】
前記回転基板は、アルミ製であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回転刃ユニット。
【請求項7】
前記揺動刃は、樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の回転刃ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り機の回転軸に取り付けられる回転刃ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払機などの草刈り機の回転軸に取り付けられる回転刃ユニットとして、例えば
図10に示すように、略円盤状でスチール製の回転基板100の中心から所定半径の円周上に等間隔で複数の支持突起110を形成し、その支持突起110に樹脂製の揺動刃120を装着したものが公知である(例えば、特許文献1)。回転刃ユニットの中心には、草刈り機の回転軸に装着するための装着部115が設けられている。この回転刃ユニットを草刈り機の回転軸に装着して使用すると、回転基板100の回転に伴う遠心力によって揺動刃120が支持突起110を中心に揺動し、
図10に示すように回転基板100の外側に突出した状態となる。その状態で揺動刃120が回転基板100と共に高速回転することにより、雑草などの被切断物を切断して刈り込むことができる。また、回転基板100の回転中に、揺動刃120に木の根や石などの障害物が当たると、揺動刃120が支持突起110の軸周りに揺動するため揺動刃120の破損を防ぐことができる。
【0003】
上記回転刃ユニットは、回転基板100の支持突起110に対して揺動刃120を着脱可能である。例えば、回転基板100に設けられる支持突起110は、
図11に示すように、円柱状の支柱部111と、その支柱部111の先端に設けられる横長の頭部112とを備えている。一方、揺動刃120は、その基端部121に長孔122を有している。長孔122の長さL2は、支持突起110の頭部112の横方向長さL1よりも短く形成される。そのため、揺動刃120は、支持突起110に対して水平姿勢のままで装着することができない。
【0004】
図12は、従来の回転刃ユニットにおいて揺動刃120を支持突起110に装着する例を示す図である。揺動刃120を支持突起110に装着する際には、まず
図12(a)に示すように、揺動刃120を立てた状態で長孔122に支持突起110の頭部112の一端を差し込む。そして
図12(b)に示すように、長孔122の一端を支柱部111に係止させた状態で揺動刃120を水平姿勢となるように倒していくと、長孔122の他端が頭部112の他端を乗り越える。その結果、
図12(c)に示すように、揺動刃120は、支持突起110に装着された状態となる。尚、揺動刃120を回転基板100から取り外す場合は、これと逆の手順になる。このように
図10に示す従来の回転刃ユニットは、工具等を使用することなく、揺動刃120を簡単に交換することができるため、作業性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の回転刃ユニットは、揺動刃120が支持突起110に装着されると、
図12(c)に示すように、揺動刃120の基端部121と支持突起110の頭部112との間に隙間dが生じる。そのため、回転刃ユニットを草刈り機に装着して使用しているときに、その隙間dに刈り込んだ草木が絡み付き易いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、工具を用いない方式で揺動刃の交換を簡単に行えるようにしつつ、刈り込んだ草木等が絡み付き難い構造とした回転刃ユニットを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、概略円盤形状の中心に草刈り機の回転軸に装着するための装着孔を有し、前記装着孔の周囲に支持突起を設けた回転基板と、前記支持突起に対して着脱可能な揺動刃と、を備え、前記支持突起は、前記回転基板の表面から立設する円柱状の支柱部と、前記支柱部の先端に設けられ前記支柱部よりも大径の頭部とを有し、前記揺動刃は、基端部に、前記頭部よりも大径の第1の孔と、前記頭部よりも小径で且つ前記支柱部よりも大径の第2の孔とを隘路部を介して互いに連通させた概略瓢箪型の取付孔を有し、前記支柱部の高さが前記揺動刃の前記基端部の厚みと略同一に形成されることを特徴とする構成である。
【0009】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記取付孔は、前記第1の孔を前記揺動刃の先端側に有し、前記第2の孔を前記揺動刃の基端部側に有することを特徴とする構成である。
【0010】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記揺動刃は、前記第2の孔よりも更に基端部側において下面に突出する突起部を有し、前記回転基板は、表面に、前記突起部を挿入可能なガイド溝が前記支持突起に向かって形成されていることを特徴とする構成である。
【0011】
第4に、本発明は、上記第3の構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記ガイド溝は、前記支持突起の近傍において円弧状に形成されることを特徴とする構成である。
【0012】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記支持突起は、前記回転基板に設けられた孔に挿通され、前記回転基板の裏面側においてハトメ加工が施されることによって前記回転基板に一体的に設けられることを特徴とする構成である。
【0013】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記回転基板は、アルミ製であることを特徴とする構成である。
【0014】
第7に、本発明は、上記第1乃至第6のいずれかの構成を有する回転刃ユニットにおいて、前記揺動刃は、樹脂製であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工具を用いない方式で揺動刃の交換を簡単に行えるようにしつつ、刈り込んだ草木等が絡み付き難い構造とした回転刃ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における回転刃ユニットを示す斜視図である。
【
図5】回転基板に対する支持突起の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図6】回転基板に対して揺動刃を取り付ける手順を示す図である。
【
図7】回転基板に対して揺動刃を取り付ける手順を示す図である。
【
図8】回転基板に対して揺動刃を取り付ける手順を示す図である。
【
図9】揺動刃が支持突起に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図11】従来の回転刃ユニットにおける揺動刃と支持突起との関係を示す断面図である。
【
図12】従来の回転刃ユニットにおいて揺動刃を支持突起に装着する手順の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である回転刃ユニット1を示す斜視図である。
図2は、回転刃ユニット1の使用例を示す図である。この回転刃ユニット1は、
図2に示すように、刈払機を含む草刈り機2の回転軸4に取り付けられて使用され、雑草などの草木を切断して刈り込むための回転刃ユニットである。例えば、草刈り機2は、長尺の操作桿3の先端にエンジンやモーターなどを駆動源とする回転軸4が設けられた構成である。回転刃ユニット1は、その回転軸4に装着され、回転軸4と共に所定の回転方向Rに回転することで草木を切断する。
【0019】
図1に示すように、回転刃ユニット1は、概略円盤形状であるアルミ製の回転基板10と、その回転基板10に着脱可能な複数の揺動刃20とを備えている。本実施形態では、回転基板10に対して2つの揺動刃20が取り付け可能である構成を例示する。回転基板10は、円盤形状の中央部に草刈り機2の回転軸4に装着するための装着部11を有しており、その装着部11の中心に装着孔12が設けられている。回転基板10は、その装着孔12に草刈り機2の回転軸4が装着されることによって草刈り機2に取り付けられる。この回転基板10は、草刈り機2が作動すると、
図1(a)に示すように回転軸Aを中心に回転方向Rに回転する。
【0020】
また、回転基板10は、装着部11の周囲の2箇所の位置に、回転基板10の表面から立設する支持突起13を有している。揺動刃20は、その支持突起13に取り付けられる。揺動刃20は、例えば樹脂によって形成され、その基端部22に取付孔24が設けられている。その取付孔24に支持突起13が挿通されることにより、揺動刃20が回転基板10に取り付けられる。また、揺動刃20は、先端部21に草木を切断する切断刃23が形成されている。この切断刃23は、揺動刃20の先端部21において回転基板10の回転方向Rに向くように形成されている。
【0021】
揺動刃20が支持突起13に取り付けられると、支持突起13を中心に揺動する。そのため、揺動刃20は、回転基板10に対する姿勢を、
図1(a)に示すように先端部21を回転方向後方側に向けた第1姿勢と、
図1(b)に示すように先端部21を回転基板10の外側に向けた第2姿勢とに変位させることができる。例えば、回転基板10が回転方向Rに回転すると、揺動刃20には遠心力が作用する。そのため、揺動刃20は、
図1(b)に示す第2姿勢となり、揺動刃20の先端部21を回転基板10の外側に突出させた状態で、回転方向Rに回転し、先端部21に形成されている切断刃23が草木を切断する。回転基板10の回転中に、揺動刃20に木の根や石などの障害物が当たると、揺動刃20は、支持突起13の軸周りに揺動し、
図1(a)に示すように先端部21を回転方向後方側に退避させた第1姿勢となる。その後、揺動刃20は、回転基板10の回転に伴う遠心力によって再び第2姿勢に戻る。このような揺動動作により、揺動刃20は、障害物に当たっても切断刃23を破損させ難い構造となっている。
【0022】
図3は、揺動刃20を示す図であり、(a)は平面図を、(b)は斜め上方からみた斜視図を、(c)は斜め下方からみた斜視図を示している。この揺動刃20は、基端部22が概略オーバル形状を有している。また、基端部22は、先端部21よりも肉厚である。そのため、支持突起13に取り付けられる基端部22は、先端部21よりも高い強度を有している。反対に、先端部21は、基端部22よりも薄いため、草木の切断をスムーズに行うことができる。
【0023】
基端部22の中央には、概略瓢箪型の取付孔24が設けられる。この取付孔24は、
図3(a)に示すように、大径の第1の孔25と小径の第2の孔26とを隘路部27を介して互いに連通させた形状の1つの孔として形成される。第1の孔25は、支持突起13の頭部13a(
図4(a)参照)よりも大径の略円形の孔である。第2の孔26は、支持突起13の頭部13aよりも小径であり、且つ、支持突起13の支柱部13b(
図4(a)参照)よりも大径の略円形の孔である。第1の孔25の中心と第2の孔26の中心とは所定間隔離れた位置に形成される。そして、第1の孔25と第2の孔26は、第2の孔26の直径よりも狭い幅の隘路部27を介して互いに連通している。尚、隘路部27の幅は、後述する支持突起13の支柱部13bの直径と同一又はそれよりも若干小さい寸法である。この取付孔24は、小径の第2の孔26が揺動刃20の基端側に設けられ、大径の第1の孔25が揺動刃20の先端側に設けられている。
【0024】
また、基端部22は、
図3(b)に示すように、取付孔24の更に基端側に、上方に突出した肉厚部28を設けている。この肉厚部28は、基端部22の基端側を補強するためのものであり、回転基板10が回転することに伴う遠心力の負荷によって基端側が破損してしまうことを防ぐことができる。
【0025】
更に、基端部22は、
図3(c)に示すように、取付孔24の更に基端側に、下面側に突出した突起部29を有している。この突起部29は、後述する回転基板10の表面に設けられたガイド溝14(
図4(a)参照)に係合し、揺動刃20を支持突起13に取り付ける際の移動方向(操作方向)、及び、揺動刃20の揺動動作を案内するためのものである。
【0026】
図4は、回転基板10を示す図であり、(a)は斜め上方からみた斜視図を、(b)は斜め下方からみた斜視図を示している。回転基板10は、
図4(a)に示すように、中央の装着部11の外側の周縁部10aの2箇所の位置に支持突起13を有している。ここで、中央の装着部11は、外側の周縁部10aに段差を介して接続されており、周縁部10aよりも一段高くなった位置に設けられている。言い換えると、支持突起13が設けられる周縁部10aの表面は、装着部11の表面よりも低い位置にある。周縁部10aと装着部11との間の段差は、少なくとも揺動刃20の厚みよりも大きくなるように形成される。このような段差を設けることにより、揺動刃20が支持突起13を中心に回動した場合であっても、揺動刃20が草刈り機2の回転軸4に接触してしまうことを防止することができる。
【0027】
回転基板10の周縁部10aに設けられる2つの支持突起13は、回転基板10の中心から所定半径の円上に等間隔に配置される。すなわち、2つの支持突起13は、回転基板10の中心を基準にして互いに180度回転した位置にある。支持突起13は、回転基板10の表面から立設する円柱状の支柱部13bと、その支柱部13bの先端に設けられ支柱部13bよりも大径の頭部13aとを有している。支柱部13bの直径は、揺動刃20の取付孔24の一部である第2の孔26の直径よりも若干小さい。また、頭部13aは、揺動刃20の取付孔24の一部である第1の孔25の直径よりも若干小さい直径を有する円形の頭部である。
【0028】
回転基板10の表面には、支持突起13の周囲近傍にガイド溝14が形成される。このガイド溝14は、揺動刃20の下面側に設けられた突起部29を挿入して揺動刃20の移動方向を案内する溝である。ガイド溝14は、支持突起13の回転方向Rの後方側から支持突起13に向かって直線状に形成される第1ガイド溝14aと、支持突起13から所定距離離れた近傍位置で円弧状に形成される第2ガイド溝14bとを有し、第1ガイド溝14aと第2ガイド溝14bとが交差する位置で互いに連通接続されている。第1ガイド溝14aは、揺動刃20を支持突起13に取り付ける際の揺動刃20の移動方向(操作方向)を案内するガイド溝である。第2ガイド溝14bは、支持突起13に取り付けられた揺動刃20を支持突起13の中心に揺動させるためのガイド溝である。
【0029】
また、このような支持突起13の下面側は、
図4(b)に示すように、支持突起13が設けられていない部分よりも肉厚を増した肉厚部30として形成される。上述したガイド溝14は、その肉厚部30の表面側(上面側)に形成される。また、支持突起13が取り付けられる部分は、肉厚部30よりも更に肉厚を増した支持突起保持部31として形成されている。支持突起13は、その支持突起保持部31に取り付けられ、回転基板10と一体的に形成される。
【0030】
図5は、回転基板10に対する支持突起13の取り付け態様の一例を示す図である。例えば、回転基板10の支持突起13を設ける位置には、
図5(a)に示すように孔32が形成されている。この孔32は、支持突起保持部31を上下に貫通形成されている。また、この孔32の直径は、支持突起13の支柱部13bの直径よりも若干小さい。一方、支持突起13の支柱部13bの下部には孔32に挿入可能な筒状の係止部13cが設けられている。支持突起13は、その係止部13cを孔32に差し込んだ状態で回転基板10に固定される。
【0031】
図5(b)~(d)は、支持突起13を回転基板10に取り付ける手順を示している。まず
図5(a)に示すように支持突起13の係止部13cを孔32に差し込むと、
図5(b)に示すように係止部13cの先端が回転基板10の下面側に突出する。そして
図5(c)に示すように筒状である係止部13cの先端を外側に折り曲げて圧縮することにより、係止部13cは、支持突起保持部31の下面側に係止された状態となり、支持突起13を回転基板10に固定することができる。つまり、支持突起13は、回転基板10の裏面側(下面側)においてハトメ加工が施されることによって回転基板10に対して一体的に設けられる。
【0032】
一方、
図10に示した従来の回転刃ユニットは、回転基板100の裏面側において支持突起110を回転基板100に溶接することにより、支持突起110と回転基板100とを一体物として形成している。支持突起110を溶接によって回転基板100の裏面側に固定すると、例えば
図12(a)に示すように、回転基板100の裏面側に、溶接による膨出部130が形成される。この膨出部130の高さは均一に形成することが難しい。膨出部130の高さが高くなってしまうと、草木の刈り込み作業を行っているときに障害物に当たり易く、膨出部130が破損する可能性が高くなる。また、回転基板100に取り付けられる複数の支持突起110のそれぞれの膨出部130の高さが異なると、回転基板100の回転動作が不安定になってしまう可能性もある。
【0033】
これらの問題を解決するため、本実施形態の回転刃ユニット1は、支持突起13を取り付ける際にハトメ加工で支持突起13を回転基板10の裏面側に固定している。つまり、支持突起13が回転基板10に取り付けられると、
図5(d)に示すように、回転基板10の裏面側に圧縮変形された係止部13cが形成される。この圧縮変形された係止部13cの高さ寸法tは、従来のような溶接時に生じる膨出部130の高さよりも小さく抑えることができると共に、ハトメ加工を行う際の圧縮力を一定にすることで所定の寸法に形成することが可能である。そのため、本実施形態の回転刃ユニット1は、草木の刈り込み作業を行っているときに、圧縮変形された係止部13cに障害物が当たる可能性を低減することができると共に、2つの支持突起13のそれぞれを固定する各係止部13cの変形量を同じ状態に形成することができるという利点がある。
【0034】
図6乃至
図8は、上記のように構成される回転基板10に対して揺動刃20を取り付ける手順を示す図である。揺動刃20を回転基板10に取り付ける際には、まず
図6に示すように、揺動刃20の先端部21を回転基板10の回転方向前方側に向けた状態とし、揺動刃20の基端部22に設けられた第1の孔25に対して支持突起13の頭部13aを挿入する。これにより、
図7に示すように、取付孔24の第1の孔25が支持突起13に装着される。このとき、揺動刃20の下面に設けられている突起部29は、ガイド溝14のうちの第1ガイド溝14aに挿入された状態となる。そして
図7に示すように、回転基板10の回転方向前方側(矢印F1方向)に向けて揺動刃20を引っ張ることにより、取付孔24の第2の孔26を支持突起13の支柱部13bに向けて移動させる。このとき、支持突起13の支柱部13bが取付孔24の隘路部27を通過する。隘路部27の幅は、支柱部13bの直径と同一又はそれよりも若干小さいため、支柱部13bが隘路部27を超えて第2の孔26に進入するときには、支柱部13bと隘路部27とが互いに接触した状態となり、摩擦力が生じる。そのため、支柱部13bを第2の孔26に進入させるためには、揺動刃20を矢印F1方向に引っ張る力がその摩擦力以上であることが必要となる。そのような力で揺動刃20を引っ張ることにより、支柱部13bが隘路部27を通過し、第2の孔26に進入する。また、揺動刃20の基端部22が矢印F1方向に移動すると、下面側に設けられている突起部29は、第1ガイド溝14aに沿って支持突起13に近づく方向へ移動する。その結果、揺動刃20は、
図8に示すように第2の孔26が支持突起13の支柱部13bに係合した状態に取り付けられる。このとき、揺動刃20の下面に設けられている突起部29は、第1ガイド溝14aから第2ガイド溝14bに進入した状態となる。
【0035】
図8に示すように、揺動刃20が回転基板10の支持突起13に取り付けられると、揺動刃20は、支持突起13の支柱部13bを中心にR1方向に揺動可能な状態となる。揺動刃20がR1方向に回動するとき、揺動刃20の下面側に設けられている突起部29は、第2ガイド溝14bに沿って移動する。そのため、揺動刃20は、第2ガイド溝14bが形成されている範囲内で揺動する。
【0036】
図9は、揺動刃20が支持突起13に取り付けられた状態を示す断面図である。
図9に示すように、本実施形態では、揺動刃20の基端部22の厚みは、支持突起13の支柱部13bの高さと略同一に形成される。本実施形態では、上述したように揺動刃20を水平方向にスライド移動させることによって第2の孔26が支持突起13の支柱部13bに係合した状態に取り付けられるため、基端部22の厚みを支持突起13の支柱部13bの高さと略同一に形成することができるのである。そのため、揺動刃20の基端部22が支持突起13に取り付けられた状態において、揺動刃20の基端部22と支持突起13の頭部13aとの間に生じる隙間dを可能な限り小さくすることができる。したがって、本実施形態の回転刃ユニット1を草刈り機2に装着して使用しているときに、揺動刃20と支持突起13との間の隙間dに刈り込んだ草木が絡み付くことはなく、長時間に亘って刈り込み作業を継続することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態の回転刃ユニット1は、揺動刃20の基端部22に形成された取付孔24において大径の第1の孔25が揺動刃20の先端側に位置し、小径の第2の孔26が揺動刃20の基端側に位置している。そのため、回転基板10の回転によって遠心力が揺動刃20に作用している状態のときには、支持突起13の支柱部13bが第1の孔25に向かって移動することはない。仮に、第1の孔25と第2の孔26との位置関係がこれとは逆であった場合、回転基板10の回転によって遠心力が作用すると、支持突起13の支柱部13bが第2の孔26から第1の孔25に移動してしまい、刈り込み作業中に揺動刃20が回転基板10から離脱してしまう可能性があるのに対し、本実施形態の回転刃ユニット1は刈り込み作業中に揺動刃20が回転基板10から離脱することがない構造となっている。
【0038】
また、揺動刃20を回転基板10から取り外す際には、上記の手順とは逆の手順を行えば良い。すなわち、揺動刃20を回転基板10から取り外す際には、まず
図8に示すように揺動刃20の先端部21を回転基板10の回転方向前方側に向けた状態とする。
図8に示す揺動刃20の姿勢は、上述した第1姿勢及び第2姿勢とも異なる第3姿勢である。この第3姿勢は、回転刃ユニット1の使用中には生じ得ない姿勢である。このとき、基端部22の下面に設けられた突起部29は、第1ガイド溝14aを臨む位置にある。揺動刃20を第3姿勢とすると、
図7に示す矢印F1とは反対の方向に揺動刃20を押し込む。これにより、第2の孔26が支持突起13の支柱部13bに係合した状態が解除され、支持突起13は第1の孔25に挿入された状態となる。このとき、突起部29は第1ガイド溝14aに沿って移動する。その後、揺動刃20を上方に持ち上げれば、回転基板10から簡単に取り外すことができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の回転刃ユニット1は、概略円盤形状の中心に草刈り機2の回転軸4に装着するための装着孔12を有し、その装着孔12の周囲に支持突起13を設けた回転基板10と、支持突起13に対して着脱可能な揺動刃20と、を備えている。支持突起13は、円盤形状の表面から立設する円柱状の支柱部13bと、支柱部13bの先端に設けられ支柱部よりも大径の頭部13aとを有しており、揺動刃20は、その基端部22に、頭部13aよりも大径の第1の孔25と、頭部13aよりも小径で且つ支柱部13bよりも大径の第2の孔26とを隘路部27を介して互いに連通させた概略瓢箪型の取付孔24を有している。そして本実施形態の回転刃ユニット1は、支柱部13bの高さが揺動刃20の基端部22の厚みと略同一に形成されている。
【0040】
このような構成の回転刃ユニット1によれば、取付孔24の第1の孔25を介して支持突起13の頭部13aに揺動刃20の基端部22を嵌め込みことが可能であり、その後、揺動刃20を水平方向にスライド移動させることによって取付孔24の第2の孔26を支持突起13の支柱部13bに係合させた状態に装着することができる。そして、この回転刃ユニット1では、支柱部13bの高さが揺動刃20の基端部22の厚みと略同一であるため、支柱部13bと揺動刃20の基端部22との隙間dに草木が絡み付くことはない。それ故、本実施形態の回転刃ユニット1は、工具を用いない方式で揺動刃20の交換を簡単に行えると共に、刈り込んだ草木等が絡み付き難い構造を有している。
【0041】
また、本実施形態では、回転刃ユニット1の揺動刃20に形成される取付孔24は、第1の孔25を揺動刃20の先端側に有し、第2の孔26を揺動刃20の基端側に有している。このような構成によれば、回転基板10が回転しているときに揺動刃20が回転基板10から離脱してしまうことがなく、安全に刈り込み作業を行うことができるという利点がある。
【0042】
また、本実施形態の揺動刃20は、第2の孔26よりも更に基端部側において下面に突出する突起部29を有しており、回転基板10は、その表面に、突起部29を挿入可能なガイド溝14が支持突起13に向かって形成されている。そのため、揺動刃20を支持突起13に取り付ける際の揺動刃20の姿勢又は操作方向をガイド溝14によって制限することが可能である。そして揺動刃20を支持突起13に取り付ける際の揺動刃20の姿勢又は操作方向を、回転刃ユニット1の使用中には生じ得ない姿勢又は操作方向とすることにより、回転刃ユニット1の使用中に揺動刃20が離脱してしまうことを防ぐことが可能であり、より一層安全性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態における支持突起13は、回転基板10に予め設けられた孔32に挿通され、回転基板10の裏面側においてハトメ加工が施されることによって回転基板10に一体的に取り付けられている。支持突起13を回転基板10の裏面側においてハトメ加工で固定することにより、従来のような溶接による固定よりも回転基板10の裏面側における突出量を小さくすることができるという利点がある。
【0044】
また、回転基板10をアルミ製とすることで、従来のスチール製よりも軽量化を図ることが可能であり、取り扱いしやすいという利点がある。ただし、回転基板10は、必ずしもアルミ製に限られるものではなく、従来と同様のスチール製であっても良いし、その他の素材によって形成されるものであっても構わない。
【0045】
更に、揺動刃20を樹脂製とすることで、安価に揺動刃20を提供することができると共に、刈り込み作業中に万一、揺動刃20が作業者の足などに当たったとしても怪我などを生じさせないという利点がある。ただし、揺動刃20は、必ずしも樹脂製のものに限られない。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態で説明したもの以外にも種々の変形例が適用可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、回転基板10に対して2つの揺動刃20が取り付けられる場合を例示したが、揺動刃20の数は2つに限られない。すなわち、回転基板10に取り付けられる揺動刃20の数は、1つであっても良いし、3つ以上であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態では、支持突起13をハトメ加工によって回転基板10の裏面側に固定する場合を例示した。しかし、支持突起13を回転基板10に固定する方法は、必ずしもハトメ加工に限られない。例えば、従来と同様の溶接によるものであっても良いし、その他の方法を用いたものであっても構わない。また、支持突起13は、回転基板10に対して予め一体成型されたものであっても構わない。
【0049】
更に、上記実施形態では、揺動刃20の下面側に突起部29を設け、回転基板10の表面に突起部29を挿入した状態で操作方向などを案内するガイド溝14を設けた構成を例示した。しかし、突起部29及びガイド溝14は、必須のものではない。
【符号の説明】
【0050】
1…回転刃ユニット、2…草刈り機、4…回転軸、10…回転基板、12…装着孔、13…支持突起、13a…頭部、13b…支柱部、14…ガイド溝、20…揺動刃、21…先端部、22…基端部、24…取付孔、25…第1の孔、26…第2の孔、27…隘路部、29…突起部。