(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116647
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 11/00 20060101AFI20220803BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F01M11/00 U
F01M11/00 H
F02F7/00 302A
F02F7/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012935
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】大竹 治
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 大湖
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BA09
3G015CA07
3G015DA04
3G024AA65
3G024BA03
3G024FA00
3G024FA07
3G024FA14
(57)【要約】
【課題】バッフルプレートに滴下した空気を含むオイルがポンプに吸い込まれないよう、オイルの移動態様をコントロールすることができるエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン(5)の下部に配設され、エンジン内を循環するオイルを貯留するオイルパンと、前記オイルパンに貯留されるオイルをエンジン内に流通させるポンプ(17)と、水平方向に延び、一端である吸入口(41a)が前記オイルパン内に開放し、他端である吐出口(45)がポンプにオイルを流通可能に接続するストレーナ(31)と、ストレーナの吸入口より上方に配設され、前記吐出口側の周縁から前記吸入口側の周縁に向かい下方に傾斜して延在するバッフルプレート(33)と、を備え、バッフルプレートは、該バッフルプレートの前記ストレーナの延在方向における前記吸入口側の周縁から上方に延びる壁部(53)を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの下部に配設され、前記エンジン内を循環するオイルを貯留するオイルパンと、
前記オイルパンに貯留されるオイルを前記エンジン内に流通させるポンプと、
水平方向に延び、一端である吸入口が前記オイルパン内に開放し、他端である吐出口が前記ポンプにオイルを流通可能に接続するストレーナと、
前記ストレーナの前記吸入口より上方に配設され、前記吐出口側の周縁から前記吸入口側の周縁に向かい下方に傾斜して延在するバッフルプレートと、を備え、
前記バッフルプレートは、該バッフルプレートの前記ストレーナの延在方向における前記吸入口側の周縁から上方に延びる壁部を有することを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記バッフルプレートは、前記ストレーナに固定される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記ストレーナは、前記吸入口側から前記吐出口側に向かい上方に傾斜する本体部と、前記本体部の前記吸入口側端部から前記吐出口とは反対側へ延び前記オイルパンに固定される取付脚とを有し、
前記バッフルプレートは、前記本体部に固定される第1平板部と、前記取付脚に固定される第2平板部とを有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記第1平板部は、前記本体部と同方向に傾斜し、
前記第2平板部は、水平面に対する傾斜角度が前記第1平板部より小さく設定される
ことを特徴とする、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記バッフルプレートは、前記オイルパンに取り付けられる取付部を有し、
前記取付部は、前記壁部と連続してなる、
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記オイルパンは、前記バッフルプレートから水平方向で視て一定距離以上離間してなる開放領域を有し、
前記壁部は、前記開放領域に接する部分の少なくとも一部に該開放領域に開放する開放部が形成されてなる、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンに係り、特に潤滑油の発泡を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンの内部には、上下方向に摺動することで駆動力を生成するピストンがシリンダ内に配設されている。また、ピストンやクランクシャフトなどの駆動部と周辺部品との間の摩擦を低減するべく、エンジン内は、オイルポンプによって潤滑油(オイル)が循環している。
しかしながら、オイルパンに貯留されるオイルは、油面が波打つことやシリンダからオイルパンに滴下することにより、空気を気泡状にして含むことがある。このような空気を含んだオイルは、ポンプ内に空気による空間を形成してポンプの稼働効率を低下させるという問題がある。
【0003】
そこで、オイルパン内に平板部材であるバッフルプレートを配設することで、オイルパンに貯留されているオイルが空気を含むことを抑制している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術のようにバッフルプレートを配設したとしても、バッフルプレート上のオイルは空気を含んでいることがあり、そのようなオイルがバッフルプレートから滴下すると、滴下先周辺のオイルにも空気を含ませる虞があった。特に、バッフルプレートの取付等の制約上、バッフルプレートがオイルストレーナの吸込口側に向かい傾斜することがあり、このような場合は吸込口付近にバッフルプレート上の空気を含んだオイルが滴下することとなり、ポンプが空気を含んだオイルを吸う可能性が高くなり、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッフルプレートに滴下した空気を含むオイルがポンプに吸い込まれないよう、オイルの移動態様をコントロールすることができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンは、エンジンの下部に配設され、前記エンジン内を循環するオイルを貯留するオイルパンと、前記オイルパンに貯留されるオイルを前記エンジン内に流通させるポンプと、水平方向に延び、一端である吸入口が前記オイルパン内に開放し、他端である吐出口が前記ポンプにオイルを流通可能に接続するストレーナと、前記ストレーナの前記吸入口より上方に配設され、前記吐出口側の周縁から前記吸入口側の周縁に向かい下方に傾斜して延在するバッフルプレートと、を備え、前記バッフルプレートは、該バッフルプレートの前記ストレーナの延在方向における前記吸入口側の周縁から上方に延びる壁部を有することを特徴とする。
【0008】
これにより、バッフルプレートがバッフルプレートのストレーナの延在方向における吸入口側の周縁から上方に延びる壁部を有することで、バッフルプレート上のオイルが吸入口付近でオイルパンに滴下することを抑制することが可能とされる。
その他の態様として、前記バッフルプレートは、前記ストレーナに固定されるのが好ましい。
【0009】
これにより、ストレーナ及びバッフルプレートの取付作業性を向上させることが可能とされる。
その他の態様として、前記ストレーナは、前記吸入口側から前記吐出口側に向かい上方に傾斜する本体部と、前記本体部の前記吸入口側端部から前記吐出口とは反対側へ延び前記オイルパンに固定される取付脚とを有し、前記バッフルプレートは、前記本体部に固定される第1平板部と、前記取付脚に固定される第2平板部とを有するのが好ましい。
【0010】
これにより、ストレーナにおける吸入口側から吐出口側に向かい上方に傾斜する本体部に固定される第1平板部と、本体部の吸入口側端部から吐出口とは反対側へ延びてオイルパンに固定される取付脚に固定される第2平板部とを有することで、取付脚とバッフルプレートとで互いに剛性を高めつつ、バッフルプレートの周縁と吸入口との距離を大きくすることが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記第1平板部は、前記本体部と同方向に傾斜し、前記第2平板部は、水平面に対する傾斜角度が前記第1平板部より小さく設定されるのが好ましい。
これにより、第1平板部を本体部と同方向に傾斜させ、第2平板部の水平面に対する傾斜角度を第1平板部より小さく設定することで、剛性を高めつつ、第2平板部の傾斜を抑制して第2平板部上のオイルが吸入口付近でオイルパン21に滴下することを抑制することが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記バッフルプレートは、前記オイルパンに取り付けられる取付部を有し、前記取付部は、前記壁部と連続してなるのが好ましい。
これにより、オイルパンに取り付けられる取付部を壁部と連続してなるよう形成することで、取付部と壁部とで互いに剛性を高めることが可能とされる。
その他の態様として、前記オイルパンは、前記バッフルプレートから水平方向で視て一定距離以上離間してなる開放領域を有し、前記壁部は、前記開放領域に接する部分の少なくとも一部に該開放領域に開放する開放部が形成されてなるのが好ましい。
【0013】
これにより、壁部のうち、バッフルプレートから水平方向で視て一定距離以上離間してなる開放領域に接する部分の少なくとも一部に、該開放領域に開放する開放部を形成することで、バッフルプレートからオイルパンに流入するオイルが空気を含んでいる場合であっても、開放領域でオイルから空気を抜いてからストレーナを介してポンプにオイルを吸引させることが可能とされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジンによれば、バッフルプレートの周縁の所定箇所から上方に延びる壁部を形成したので、バッフルプレートに滴下してからオイルパンに移動するまでのオイルの移動態様をコントロールすることができる。これにより、バッフルプレートに滴下した空気を含むオイルがポンプに吸い込まれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】ストレーナ及びバッフルプレートの上方斜視図である。
【
図5】
図4中I-I断面で視た、シリンダブロック及びオイルパンユニットの断面図である。
【
図6】第2シリンダ及び第3シリンダの吸排気を説明する、
図5中の枠Fの拡大図である。
【
図7】第2シリンダ及び第3シリンダの吸排気を説明する、
図5中の枠Fの拡大図である。
【
図8】第2シリンダ及び第3シリンダの吸排気を説明する、オイルパンユニットにおける気流が示された上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両1の前部の側面概略図が示されている。車両1は、前部に形成されたエンジンルーム3にエンジン5が縦置きで配設された乗用自動車である。この車両1は、エンジン5によって生成された駆動力を車輪9に伝達することで走行することが可能である。
【0017】
エンジン5は、図示しない燃料タンクから燃料が供給されることで該燃料を燃焼して稼働し、駆動力を生成することが可能な直列4気筒式の内燃機関である。このエンジン5は、シリンダブロック11、シリンダヘッド13及びオイルパンユニット15を備えている。シリンダブロック11は、内部にシリンダ11aが形成された金属製のブロックである。このシリンダブロック11には、シリンダ11a内にピストン11bが略上下方向に摺動可能に配設されており、ピストン11bの摺動によりクランクシャフト11cが回転する。
【0018】
図2を参照すると、オイルパンユニット15の上方斜視図が示されている。オイルパンユニット15は、エンジン5内を循環するオイルが貯留されるオイルパン21を含んでなる。すなわち、オイルは、シリンダブロック11からオイルパンユニット15に滴下し、ポンプ17によってシリンダヘッド13やシリンダブロック11に供給され、再びエンジン5内を循環してオイルパンユニット15に滴下する。
【0019】
オイルパンユニット15は、オイルパン21、ストレーナ31、及びバッフルプレート33を有している。オイルパン21は、上端がシリンダブロック11の下端に図示しないオイルシールを介して取り付けられている。
図3を参照すると、ストレーナ31及びバッフルプレート33の上方斜視図が示されている。ストレーナ31及びバッフルプレート33は、後述する複数の取付部35、37及び取付脚39によってオイルパン21内に取付けられる。ストレーナ31は、吸入路41、導入路(本体部)43及び吐出路(吐出口)45が形成された、水平方向(本実施形態では車両前後方向)に延びる油路である。なお、ここで言う「水平方向」とは、車両1の前後方向、若しくは車幅方向を指すものであり、「水平方向に延びる」とは水平面に対して傾斜しているものも含む。
【0020】
吸入路41は、オイルパン21内の下側に吸入口41aが形成され、吸入口41aから上方に向かって延びるパイプ状の油路である。導入路43は、吸入路41の上端から車両前後方向前方に、水平面に対して所定角度傾斜して延びるパイプ状の油路である。吐出路45は、導入路43の前端から上方に開口する開口部であり、ポンプ17にオイルを排出可能に接続してなる。ストレーナ31の導入路43の後端には、取付脚39が設けられる。取付脚39は、導入路43の後端から後方に延び、後端がオイルパン21に固定される。取付脚39の上部には、上方に延びる支持壁39aが形成される。支持壁39aは、バッフルプレート33上面より上方まで延び、取付脚39の後端から後述する屈曲部33aよりも前方まで延在する。
【0021】
バッフルプレート33は、第1バッフル(第1平板部)51、第2バッフル(第2平板部)52、右壁(壁部)53、左壁(壁部)55、後壁(壁部)57及びゲージ穴59が形成されてなる。第1バッフル51は、ストレーナ31の導入路43に固定され、導入路43から車両左右方向に延びる平板部である。この第1バッフル51は、導入路43と並行して延びてなるため、車両前後方向水平面に対して所定角度(第1角度)傾斜して延びてなる。第2バッフル52は、第1バッフル51の後端から後方に延びてなる平板部であり、ストレーナ31の取付脚39に固定される。この第2バッフル52は、水平面に平行に延びてなる。以下、第1バッフル51と第2バッフル52との接続部分を屈曲部33aという。
【0022】
右壁53は、第1バッフル51の右端から上方に向かって延びる平板部である。左壁55は、第2バッフル52の左端から上方に向かって延びる平板部である。後壁57は、左右両方の第2バッフル52の後端から上方に向かって延びる平板部である。後壁57は、取付脚39に当接される。この後壁57のうち左側のものは左壁55の後端と接続され、右側のものは右壁53の後端から離間することで後述する開放部23cを形成する。ゲージ穴59は、第1バッフル51の左前側に形成される開口部であり、オイルの量を検出するレベルゲージが挿通される。
【0023】
第1取付部35及び第2取付部37は、右壁53の前端及び左壁55の前端に位置し、それぞれ右壁53及び左壁55に連続するように、第1バッフル51から上方に突出して形成されてなる。
図4を参照すると、オイルパンユニット15の上視図が示されている。左右両方の第1バッフル51の前端には壁部が設けられず解放されることで、バッフルプレート33には、左側の第1バッフル51の前端部分にあたる第1通路23a、右側の第1バッフル51の前端部分にあたる第2通路23bが形成される。また、右側の第2バッフル52の右端後方には、右壁53と後壁57の間にあたる開放部により第3通路23cが形成される。第1通路23a及び第3通路23cは、オイルパン21内の以下に説明する開放領域内にバッフルプレート33上のオイルを滴下するように、開放位置が決定されている。
【0024】
開放領域とは、上方から視てバッフルプレート33と重ならないオイルパン21内の領域であり、その容積がその他の領域に比べ広く形成された領域である。開放領域は、その他の領域に比べオイルパン21の側壁をバッフルプレート33の端部から離間させることやオイルパン21の深さを深くすることで形成すればよい。
本実施形態では、開放領域はオイルパン21内の範囲A1及びA2に形成される。範囲A1はオイルパン21内の左側前方の領域に設けられ、範囲A2はオイルパン21内の右側後方の領域に設けられる。特に、範囲A2は、オイルパン21のシール面(
図4ハッチング部分)よりもオイルパン21外側へ拡張される拡張部21aにより、その容積が拡張されている。第1通路23a及び第3通路23cは、それぞれ範囲A1及びA2に向かい開放されている。
【0025】
また、第1通路23a、第2通路23b及び第3通路23cは、いずれも吸入口41aから離間した位置で開放してなる。すなわち、第1バッフル51の前端は吸入口41aよりも前方に位置し、第2バッフル52の後端は吸入口41aよりも後方に位置する。
以上の構成により、バッフルプレート33上のオイルがオイルパン21内に滴下しても、吸入口41aから離れた個所に滴下することとなるため、ストレーナ31が気泡を含んだオイルを吸い込むことを抑制することができる。
【0026】
図5を参照すると、
図4中I-I断面で視た、シリンダブロック11及びオイルパンユニット15の断面図が示されている。以下、シリンダブロック11に形成された4つのシリンダ11aを、前側から順に、第1シリンダC1、第2シリンダC2、第3シリンダC3及び第4シリンダC4という。
シリンダ11aの下端は、シリンダブロック11の下面で開口しており、シリンダ11a内のピストン11bより下側の領域では、ピストン11b(
図1参照)の摺動により負圧や正圧が生じる。具体的には、ピストン11bが上昇しているときはシリンダ11a内のピストン11bより下側の領域は負圧になり、ピストン11bが下降しているときはシリンダ11a内のピストン11bより下側の領域は正圧になる。本実施形態では、第1シリンダC1及び第3シリンダC3内のピストン11bが互いに同じ位相で上下方向に移動し、第2シリンダC2及び第4シリンダC4のピストン11bが第1シリンダC1及び第3シリンダC3内のピストン11bに対し逆位相で上下方向に移動する。したがって、第1シリンダC1及び第3シリンダC3内のピストン11bより下側の領域が負圧になるときは、第2シリンダC2及び第4シリンダC4のピストン11bより下側の領域が正圧になる。このような圧力変動によりシリンダブロック11の下方では気流が発生し、この気流によってもオイルパン21内のオイルに気泡が発生することがある。バッフルプレート33には、この気流を制御しオイルパン21内のオイルに気泡が発生することを抑制する効果もある。
【0027】
図6、7を参照すると、第2シリンダC2及び第3シリンダC3の吸排気を説明する、
図5中の枠Fの拡大図が示されている。また、
図8を参照すると、第2シリンダC2及び第3シリンダC3の吸排気を説明する、オイルパンユニット15の上視図における気流が示されている。第2シリンダC2及び第3シリンダC3は、内部が負圧になるとオイルパン21から空気を吸引し、内部が正圧になるとオイルパン21に空気を排出する。また、第1バッフル51及び第2バッフル52は、それぞれ第2シリンダC2及び第3シリンダC3のピストン摺動方向下方に位置する。したがって、第2シリンダC2及び第3シリンダC3から排出される空気は、第1バッフル51及び第2バッフル52に向かって排出される。
【0028】
一方、第1バッフル51は、ピストン摺動方向に対して垂直であって前後方向に延びる線(以下、基準線という。)に対して角度θ1で、屈曲部33aから前方に向かうにつれて上方に傾斜するよう形成されている。また、第2バッフル52は、基準線に対して角度θ2で、屈曲部33aから後方に向かうにつれて上方に傾斜するよう形成されている。
これにより、第2シリンダC2から排出される空気は、第1バッフル51によって後方かつ下方に誘導されたあと、第2バッフル52によって後方かつ上方に誘導される(
図6参照)。また、第3シリンダC3から排出される空気は、第2バッフル52によって前方かつ下方に誘導されたあと、第1バッフル51によって前方かつ上方に誘導される(
図7参照)。したがって、第1バッフル51及び第2バッフル52が第2シリンダC2及び第3シリンダC3のピストン摺動方向下方に位置していても、第2シリンダC2及び第3シリンダC3から排出される空気の流通を好適にすることができ、ひいてはピストン11bが摺動する際に生じる稼働抵抗を低減することができる。
【0029】
また、上述したように、バッフルプレート33に第1通路23a及び第3通路23cが形成されてなる。これにより、バッフルプレート33は、シリンダ11aから排出される空気をオイルパン21内の容積の広い開放領域に向かい案内することができ、流通抵抗をより小さくすることができる。
また、上述したように、オイルパン21外側へ拡張される拡張部21aにより、範囲A2の容積が拡張されることで、オイル内に含まれる空気を好適に取り除くことができる。
【0030】
以上説明したように、本発明に係るエンジン5では、ストレーナ31が水平方向に延在するとともに、バッフルプレート33がストレーナ31の吸入口41aに向かい下方に傾斜し、バッフルプレート33のストレーナ31の延在方向(前後方向)における吸入口41a側の周縁から上方に延びる後壁57を有する。
従って、バッフルプレート33上のオイルがバッフルプレート33の傾斜に沿って流れ、吸入口41a付近でオイルパン21に滴下することを抑制することができる。これにより、オイルパン21内のオイルが吸入口41a付近で空気を含むことを抑制することができ、空気を含むオイルがポンプ17に吸い込まれないようにすることができる。
【0031】
そして、バッフルプレート33は、ストレーナ31に固定されるので、ストレーナ31及びバッフルプレート33を強固に固定できる、若しくはストレーナ31及びバッフルプレート33の固定点を少なくすることができ、取付作業性を向上させることができる。
そして、ストレーナ31は、導入路43が吸入口41aから吐出路45に向かい上方に傾斜してなるので、ストレーナ31内のオイル通路の長さを極力短くすることができ、バッフルプレート33は、第1バッフル51が導入路43に沿って傾斜してなるので、導入路43と第1バッフル51との接触面積の減少を抑制することができ、剛性を高めることができる。
【0032】
そして、ストレーナ31は、吸入路41側から吐出路45側に向かい上方に傾斜する導入路43と、導入路43の吸入路41側端部から吐出路45とは反対側、すなわち後端から後方へ延び、オイルパン21に固定される取付脚39を有し、第2バッフル52は、導入路43に固定される第1バッフル51との吸入路41側は、取付脚39に固定される第2バッフル52とを有するので、取付脚39と第2バッフル52とで互いに剛性を高めつつ、バッフルプレート33の後縁と吸入口41aとの距離を大きくすることができる。
【0033】
また、取付脚39は導入路43のように傾斜させる必要がないため、第1バッフル51は、導入路43と同方向に傾斜し、第2バッフル52は、水平面に対する傾斜角度が第1バッフル51より小さく設定することで、第2バッフル52の傾斜を抑制して第2バッフル52上のオイルが吸入口41a付近でオイルパン21に滴下することを抑制することができる。
【0034】
そして、バッフルプレート33は、オイルパン21に取り付けられる第1取付部35及び第2取付部37を有し、第1取付部35及び第2取付部37は、右壁53及び左壁55とそれぞれ連続してなるので、第1取付部35と右壁53とで及び第2取付部37と左壁55とで互いに剛性を高めることができる。
そして、オイルパン21は、バッフルプレート33から水平方向で視て一定距離以上離間してなる開放領域(範囲A1、A2)を有し、バッフルプレート33の周縁の、範囲A1、A2に接する部分の少なくとも一部に壁部を設けないことによって、該範囲A1、A2に開放する第1通路23a、第3通路23cが形成されてなるので、バッフルプレート33からオイルパン21に流入するオイルが空気を含んでいる場合であっても、範囲A1、A2でオイルから空気を抜いてからストレーナ31を介してポンプ17にオイルを吸引させることができる。
【0035】
以上で本発明に係るエンジンの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、エンジン5を車両1に対し縦置きで配設したが、横置きで配置してもよい。
また、本実施形態では、第2バッフル52は水平となるよう形成されているが、第1バッフル51よりも緩やかな角度(第2角度)で傾斜するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
5 エンジン
17 ポンプ
21 オイルパン
23c 第3通路(開放部)
31 ストレーナ
33 バッフルプレート
35 第1取付部(取付部)
37 第2取付部(取付部)
39 第3取付部(取付脚)
41a 吸入口
43 導入路(本体部)
45 吐出路(吐出口)
51 第1バッフル(第1平板部)
52 第2バッフル(第2平板部)
53 右壁(壁部)
55 左壁(壁部)
57 後壁(壁部)
A1 範囲A1(開放領域)
A2 範囲A2(開放領域)