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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116659
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20220803BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220803BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20220803BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20220803BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
H01F27/00 S
H01F17/00 D
H03H7/01 A
H03H7/075 Z
H03H7/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012953
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 直之
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB13
5J024AA01
5J024BA09
5J024CA02
5J024CA03
5J024DA05
5J024DA29
5J024DA31
5J024DA33
5J024EA03
5J024KA02
(57)【要約】
【課題】2つのインダクタ間の電磁界結合を抑制して、所望の特性を実現できる積層型電子部品を実現する。
【解決手段】電子部品1は、共通ポート2と、信号ポート4と、第1のインダクタL24と、第2のインダクタL25と、積層体50とを備えている。第1のインダクタL24は、第1端と第2端とを有している。第1のインダクタL24の第2端は、第2のインダクタL25の一端に接続されている。第1のインダクタL24を構成する第1のインダクタ導体L24cは、第1の方向に延びる軸A1を中心に巻回されている。第2のインダクタL25を構成する第2のインダクタ導体L25cは、第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸A2を中心に巻回されている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポートと、
前記第1のポートに入力された信号を通過させる第2のポートと、
回路構成上、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に設けられた第1のインダクタおよび第2のインダクタと、
積層された複数の誘電体層と複数の導体とを含み、前記第1のポート、前記第2のポート、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタを一体化するための積層体とを備え、
前記第1のインダクタは、回路構成上前記第1のポートに最も近い第1端と、前記第1端とは反対側の端である第2端とを有し、
前記第1のインダクタの前記第2端は、前記第2のインダクタの一端に接続され、
前記積層体は、前記第1のインダクタを構成する第1のインダクタ導体と、前記第2のインダクタを構成する第2のインダクタ導体とを含み、
前記第1のインダクタ導体は、第1の方向に延びる軸を中心に巻回され、
前記第2のインダクタ導体は、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸を中心に巻回されていることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1の方向と前記第2の方向は、互いに直交することを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1の方向と前記第2の方向の一方は、前記複数の誘電体層の積層方向に平行であることを特徴とする請求項2記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタは、前記第1のポートと前記第2のポートを接続する経路に直列に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項5】
更に、回路構成上前記第1のポートと前記第2のポートとの間に設けられた第1の共振器を備え、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタは、前記第1の共振器に含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項6】
更に、第3のポートと、
回路構成上前記第1のポートと前記第3のポートとの間に設けられた第2の共振器とを備えたことを特徴とする請求項5記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第2のポートと前記第3のポートの一方は、第1の通過帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる第1の信号ポートであり、
前記第2のポートと前記第3のポートの他方は、前記第1の通過帯域よりも低い第2の通過帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる第2の信号ポートであることを特徴とする請求項6記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第2のポートは、前記第1の信号ポートであり、
前記第3のポートは、前記第2の信号ポートであることを特徴とする請求項7記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記積層体は、更に、前記第2の共振器を構成する第2の共振器用導体を含み、
前記第1のインダクタ導体と前記第2のインダクタ導体の一方は、前記複数の誘電体層の積層方向に平行な方向に延びる軸を中心に巻回された水平インダクタ導体であり、
前記第1のインダクタ導体と前記第2のインダクタ導体の他方は、前記複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回された垂直インダクタ導体であり、
前記垂直インダクタ導体は、前記水平インダクタ導体よりも前記第2の共振器用導体からより遠い位置に配置されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記積層体は、前記複数の誘電体層の積層方向の両端に位置する底面および上面と、前記底面と前記上面を接続する4つの側面とを有し、
前記底面および前記上面の各々の形状は、一方向に長い矩形形状であり、
前記4つの側面は、前記矩形形状の長手方向の両端に位置する第1の側面および第2の側面を含み、
前記第1のインダクタ導体と前記第2のインダクタ導体の一方は、前記複数の誘電体層の積層方向に平行な方向に延びる軸を中心に巻回された水平インダクタ導体であり、
前記第1のインダクタ導体と前記第2のインダクタ導体の他方は、前記複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回された垂直インダクタ導体であり、
前記垂直インダクタ導体は、前記第2の側面よりも前記第1の側面により近い位置に配置され、
前記垂直インダクタ導体から前記第1の側面までの距離は、前記水平インダクタ導体から前記第1の側面までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのインダクタを含む積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
小型移動体通信機器では、システムおよび使用周波数帯域が異なる複数のアプリケーションで共通に使用されるアンテナを設け、このアンテナが送受信する複数の信号を、分波器を用いて分離する構成が広く用いられている。
【0003】
一般的に、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号を分離する分波器は、共通ポートと、第1の信号ポートと、第2の信号ポートと、共通ポートから第1の信号ポートに至る第1の信号経路に設けられた第1のフィルタと、共通ポートから第2の信号ポートに至る第2の信号経路に設けられた第2のフィルタとを備えている。第1および第2のフィルタとしては、例えば、インダクタとキャパシタを用いて構成されたLC共振器が用いられる。
【0004】
分波器としては、特許文献1に開示されているように、積層された複数の誘電体層を含む積層体を用いたものが知られている。また、LC共振器に用いられるインダクタとしては、特許文献1に開示されているように、積層体の短手方向に延在するインダクタ電極と、積層体の積層方向に延在する2つのビアホール導体を用いて構成されたインダクタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/152206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられる分波器の小型化も要求されている。フィルタを構成するLC共振器が2つのインダクタを含んでいる場合、分波器が小型化すると、2つのインダクタ間の電磁界結合が強くなりすぎる場合がある。これにより、所望の特性を実現することができない場合があった。
【0007】
特許文献1には、それぞれインダクタ電極と2つのビアホール導体を用いて構成された2つのインダクタを、ダイプレクサの上面の長手方向にずらして、2つのインダクタ間の電磁界結合を弱くする方法が開示されている。しかし、分波器を小型化すると、2つのインダクタをずらすためのスペースも小さくなるため、引用文献1に記載された方法では、小型化された分波器において、2つのインダクタ間の電磁界結合を十分に弱くすることができないという問題があった。
【0008】
上記の問題は、分波器に限らず、電磁界結合し得る2つのインダクタを含む積層型電子部品全般に当てはまる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、2つのインダクタ間の電磁界結合を抑制して、所望の特性を実現できるようにした積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層型電子部品は、第1のポートと、第1のポートに入力された信号を通過させる第2のポートと、回路構成上、第1のポートと第2のポートとの間に設けられた第1のインダクタおよび第2のインダクタと、積層された複数の誘電体層と複数の導体とを含み、第1のポート、第2のポート、第1のインダクタおよび第2のインダクタを一体化するための積層体とを備えている。第1のインダクタは、回路構成上第1のポートに最も近い第1端と、第1端とは反対側の端である第2端とを有している。第1のインダクタの第2端は、第2のインダクタの一端に接続されている。
【0011】
積層体は、第1のインダクタを構成する第1のインダクタ導体と、第2のインダクタを構成する第2のインダクタ導体とを含んでいる。第1のインダクタ導体は、第1の方向に延びる軸を中心に巻回されている。第2のインダクタ導体は、第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸を中心に巻回されている。
【0012】
本発明の積層型電子部品において、第1の方向と第2の方向は、互いに直交していてもよい。この場合、第1の方向と第2の方向の一方は、複数の誘電体層の積層方向に平行であってもよい。
【0013】
また、本発明の積層型電子部品において、第1のインダクタと第2のインダクタは、第1のポートと第2のポートを接続する経路に直列に設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明の積層型電子部品は、更に、回路構成上第1のポートと第2のポートとの間に設けられた第1の共振器を備えていてもよい。第1のインダクタと第2のインダクタは、第1の共振器に含まれていてもよい。この場合、積層型電子部品は、更に、第3のポートと、回路構成上第1のポートと第3のポートとの間に設けられた第2の共振器とを備えていてもよい。
【0015】
また、本発明の積層型電子部品が第3のポートを備えている場合、第2のポートと第3のポートの一方は、第1の通過帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる第1の信号ポートであってもよく、第2のポートと第3のポートの他方は、第1の通過帯域よりも低い第2の通過帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる第2の信号ポートであってもよい。また、第2のポートは、第1の信号ポートであってもよく、第3のポートは、第2の信号ポートであってもよい。
【0016】
また、本発明の積層型電子部品が第2の共振器を備えている場合、積層体は、更に、第2の共振器を構成する第2の共振器用導体を含んでいてもよい。この場合、第1のインダクタ導体と第2のインダクタ導体の一方は、複数の誘電体層の積層方向に平行な方向に延びる軸を中心に巻回された水平インダクタ導体であってもよく、第1のインダクタ導体と第2のインダクタ導体の他方は、複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回された垂直インダクタ導体であってもよい。垂直インダクタ導体は、水平インダクタ導体よりも第2の共振器用導体からより遠い位置に配置されていてもよい。
【0017】
また、本発明の積層型電子部品が第2の共振器を備えている場合、積層体は、複数の誘電体層の積層方向の両端に位置する底面および上面と、底面と上面を接続する4つの側面とを有していてもよい。底面および上面の各々の形状は、一方向に長い矩形形状であってもよい。4つの側面は、矩形形状の長手方向の両端に位置する第1の側面および第2の側面を含んでいてもよい。この場合、第1のインダクタ導体と第2のインダクタ導体の一方は、複数の誘電体層の積層方向に平行な方向に延びる軸を中心に巻回された水平インダクタ導体であってもよく、第1のインダクタ導体と第2のインダクタ導体の他方は、複数の誘電体層の積層方向に直交する方向に延びる軸を中心に巻回された垂直インダクタ導体であってもよい。垂直インダクタ導体は、第2の側面よりも第1の側面により近い位置に配置されていてもよい。垂直インダクタ導体から第1の側面までの距離は、水平インダクタ導体から第1の側面までの距離よりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層型電子部品では、第1のインダクタを構成する第1のインダクタ導体は、第1の方向に延びる軸を中心に巻回され、第2のインダクタを構成する第2のインダクタ導体は、第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸を中心に巻回されている。これにより、本発明によれば、第1のインダクタと第2のインダクタと間の電磁界結合を抑制して、所望の特性を実現できる積層型電子部品を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の回路構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における4層目ないし6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における7層目ないし10層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における11層目ないし13層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における14層目ないし16層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における17層目ないし20層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における21層目ないし23層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における24層目ないし26層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における27層目ないし29層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における30層目および31層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
図14図13に示した積層体の内部の一部を示す断面図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の通過減衰特性および反射減衰特性の一例を示す特性図である。
図16】本発明の一実施の形態における第1のフィルタの挿入損失を示す特性図である。
図17】本発明の一実施の形態における第1のフィルタの反射損失を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1の構成の概略について説明する。本実施の形態に係る電子部品1は、少なくとも、第1のポートと、第2のポートと、第1のインダクタと、第2のインダクタとを備えている。第2のポートは、第1のポートに入力された信号を通過させるポートである。第1および第2のインダクタは、回路構成上、第1のポートと第2のポートとの間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0021】
図1には、第1のポート、第2のポート、第1のインダクタおよび第2のインダクタを含む電子部品1の例として、分波器(ダイプレクサ)を示している。分波器は、第1の通過帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる第1のフィルタと、第1の通過帯域よりも低い第2の通過帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる第2のフィルタとを備えている。
【0022】
電子部品1は、更に、第3のポートを備えている。第2のポートと第3のポートの一方は、第1の通過帯域内の周波数の第1の信号を選択的に通過させる第1の信号ポートであり、第2のポートと第3のポートの他方は、第2の通過帯域内の周波数の第2の信号を選択的に通過させる第2の信号ポートである。本実施の形態では特に、電子部品1は、第1のポートとしての共通ポート2と、第2のポートとしての信号ポート4と、第3のポートとしての信号ポート3とを備えている。信号ポート4は、第1の信号ポートに対応する。信号ポート3は、第2の信号ポートに対応する。
【0023】
電子部品1は、更に、回路構成上共通ポート2と信号ポート3との間に設けられた共振器10と、回路構成上共通ポート2と信号ポート4との間に設けられた共振器20とを備えている。
【0024】
次に、図1を参照して、共振器10,20の構成の一例について説明する。共振器10は、共通ポート2に接続されるポート11と、信号ポート3に接続されるポート12と、ポート11とポート12を接続する経路13と、インダクタL11,L12,L13と、キャパシタC11,C12,C13とを含んでいる。インダクタL11,L12は、経路13に直列に設けられている。経路13は、共通ポート2と信号ポート3を接続する経路の一部である。
【0025】
インダクタL11の一端は、ポート11に接続されている。インダクタL12の一端は、インダクタL11の他端に接続されている。インダクタL12の他端は、ポート12に接続されている。
【0026】
キャパシタC11の一端は、インダクタL12の一端に接続されている。キャパシタC12の一端は、インダクタL12の他端に接続されている。インダクタL13は、キャパシタC11,C12の各々の他端とグランドとを接続している。キャパシタC13は、インダクタL12に対して並列に接続されている。
【0027】
共振器20は、共通ポート2に接続されるポート21と、信号ポート4に接続されるポート22と、ポート21とポート22を接続する経路23と、回路構成上ポート21とポート22との間に設けられたLC回路24,25,26とを含んでいる。
【0028】
LC回路24は、インダクタL21とキャパシタC21,C22とを含んでいる。インダクタL21の一端は、ポート21に接続されている。キャパシタC21は、インダクタL21に対して並列に接続されている。キャパシタC22の一端は、インダクタL21の他端に接続されている。キャパシタC22の他端は、グランドに接続されている。
【0029】
LC回路25は、インダクタL22,L23と、キャパシタC23,C24,C25,C26,C27,C28,C29,C30とを含んでいる。キャパシタC23の一端は、LC回路24のインダクタL21の他端に接続されている。キャパシタC24の一端は、キャパシタC23の他端に接続されている。キャパシタC25の一端は、キャパシタC24の他端に接続されている。キャパシタC26の一端は、キャパシタC25の他端に接続されている。
【0030】
キャパシタC27の一端は、キャパシタC23の一端に接続されている。キャパシタC28の一端は、キャパシタC27の他端に接続されている。キャパシタC28の他端は、キャパシタC26の他端に接続されている。
【0031】
キャパシタC29の一端は、キャパシタC23とキャパシタC24の接続点に接続されている。キャパシタC29の他端は、キャパシタC26とキャパシタC28の接続点に接続されている。インダクタL22の一端は、キャパシタC23とキャパシタC24の接続点に接続されている。インダクタL22の他端は、グランドに接続されている。
【0032】
キャパシタC30の一端は、キャパシタC23とキャパシタC27の接続点に接続されている。キャパシタC30の他端は、キャパシタC25とキャパシタC26の接続点に接続されている。インダクタL23の一端は、キャパシタC25とキャパシタC26の接続点に接続されている。インダクタL23の他端は、グランドに接続されている。
【0033】
LC回路25は、インダクタL24,L25と、キャパシタC31,C32,C33,C34とを含んでいる。インダクタL24,L25は、経路23に直列に設けられている。経路23は、共通ポート2と信号ポート4を接続する経路の一部である。
【0034】
インダクタL24の一端は、LC回路25のキャパシタC26の他端に接続されている。インダクタL25の一端は、インダクタL24の他端に接続されている。インダクタL25の他端は、ポート22に接続されている。
【0035】
キャパシタC31の一端は、インダクタL24の一端に接続されている。キャパシタC32の一端は、インダクタL25の一端に接続されている。キャパシタC31,C32の各々の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC33は、インダクタL24に対して並列に接続されている。キャパシタC34は、インダクタL25に対して並列に接続されている。
【0036】
第1の通過帯域内の周波数の第1の信号は、共振器20の経路23を選択的に通過する。第2の通過帯域内の周波数の第2の信号は、共振器10の経路13を選択的に通過する。このようにして、電子部品1は、第1の信号と第2の信号を分離する。
【0037】
次に、図2を参照して、電子部品1のその他の構成について説明する。図2は、電子部品1の外観を示す斜視図である。
【0038】
電子部品1は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体とを含む積層体50を備えている。積層体50は、第1のポート、第2のポート、第3のポート、第1のインダクタおよび第2のインダクタを一体化するためものである。本実施の形態では特に、積層体50は、共通ポート2、信号ポート3,4および共振器10,20を一体化している。共振器10,20は、複数の導体を用いて構成されている。
【0039】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0040】
ここで、図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0041】
図2に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。底面50Aおよび上面50Bの各々の形状は、X方向に長い矩形形状である。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0042】
電子部品1は、更に、積層体50の底面50Aに設けられた端子111,112,113,114,115,116を備えている。端子114,111,113は、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置において、X方向にこの順に並んでいる。端子116,112,115は、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置において、X方向にこの順に並んでいる。
【0043】
端子112は共通ポート2に対応し、端子113は信号ポート3に対応し、端子114は信号ポート4に対応している。従って、共通ポート2および信号ポート3,4は、積層体50の底面50Aに設けられている。端子111,115,116の各々は、グランドに接続される。
【0044】
次に、図3ないし図13を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された31層の誘電体層を有している。以下、この31層の誘電体層を、下から順に1層目ないし31層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし31層目の誘電体層を符号51~81で表す。
【0045】
図3ないし図11において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~79の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、導体層または他のスルーホールに接続されている。
【0046】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、端子111~116が形成されている。
【0047】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521,522,523,524,525が形成されている。
【0048】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、導体層531,532,533,534が形成されている。
【0049】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544,545,546が形成されている。導体層545は、導体層544に接続されている。
【0050】
図4(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55のパターン形成面には、導体層551,552,553,554,555,556,557が形成されている。導体層553は、導体層552に接続されている。導体層555,556は、導体層554に接続されている。
【0051】
図4(c)は、6層目の誘電体層56のパターン形成面を示している。誘電体層56のパターン形成面には、導体層561,562,563,564,565が形成されている。
【0052】
図5(a)は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、導体層571,572,573,574,575,576が形成されている。導体層574は、導体層573に接続されている。導体層576は、導体層575に接続されている。
【0053】
図5(b)は、8層目および9層目の誘電体層58,59のパターン形成面を示している。誘電体層58,59のパターン形成面には、導体層は形成されていない。
【0054】
図5(c)は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、導体層601,602が形成されている。また、図5(c)において、符号60T1,60T2,60T3,60T4は、誘電体層60に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0055】
図6(a)は、11層目の誘電体層61のパターン形成面を示している。誘電体層61のパターン形成面には、導体層611,612が形成されている。また、図6(a)において、符号61T1,61T2,61T3,61T4は、誘電体層61に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0056】
図6(b)は、12層目の誘電体層62のパターン形成面を示している。誘電体層62のパターン形成面には、導体層621,622が形成されている。また、図6(b)において、符号62T1,62T2,62T3,62T4は、誘電体層62に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0057】
図6(c)は、13層目の誘電体層63のパターン形成面を示している。誘電体層63のパターン形成面には、導体層631,632,633が形成されている。また、図6(c)において、符号63T1,63T2,63T3,63T4は、誘電体層63に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0058】
図7(a)は、14層目の誘電体層64のパターン形成面を示している。誘電体層64のパターン形成面には、導体層641,642,643が形成されている。また、図7(a)において、符号64T1,64T2,64T3,64T4は、誘電体層64に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0059】
図7(b)は、15層目の誘電体層65のパターン形成面を示している。誘電体層65のパターン形成面には、導体層651,652,653が形成されている。また、図7(b)において、符号65T1,65T2,65T3,65T4は、誘電体層65に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0060】
図7(c)は、16層目の誘電体層66のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、導体層661,662,663が形成されている。また、図7(c)において、符号66T1,66T2,66T3,66T4は、誘電体層66に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0061】
図8(a)は、17層目の誘電体層67のパターン形成面を示している。誘電体層67のパターン形成面には、導体層671,672,673が形成されている。また、図8(a)において、符号67T1,67T2,67T3,67T4は、誘電体層67に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0062】
図8(b)は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、導体層681,682,683が形成されている。また、図8(b)において、符号68T1,68T2,68T3,68T4は、誘電体層68に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0063】
図8(c)は、19層目および20層目の誘電体層69,70のパターン形成面を示している。誘電体層69,70のパターン形成面には、導体層は形成されていない。また、図8(c)において、符号69T1,69T2,69T3,69T4は、誘電体層69,70に形成されたインダクタ用のスルーホールを示している。
【0064】
図9(a)は、21層目の誘電体層71のパターン形成面を示している。誘電体層71のパターン形成面には、導体層711,712が形成されている。
【0065】
図9(b)は、22層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、導体層は形成されていない。
【0066】
図9(c)は、23層目の誘電体層73のパターン形成面を示している。誘電体層73のパターン形成面には、導体層731,732,733,734が形成されている。
【0067】
図10(a)は、24層目の誘電体層74のパターン形成面を示している。誘電体層74のパターン形成面には、導体層741,742,743,744が形成されている。
【0068】
図10(b)は、25層目の誘電体層75のパターン形成面を示している。誘電体層75のパターン形成面には、導体層751,752,753が形成されている。
【0069】
図10(c)は、26層目の誘電体層76のパターン形成面を示している。誘電体層76のパターン形成面には、導体層761,762,763が形成されている。
【0070】
図11(a)は、27層目の誘電体層77のパターン形成面を示している。誘電体層77のパターン形成面には、導体層771,772,773が形成されている。
【0071】
図11(b)は、28層目の誘電体層78のパターン形成面を示している。誘電体層78のパターン形成面には、導体層781,782,783が形成されている。
【0072】
図11(c)は、29層目の誘電体層79のパターン形成面を示している。誘電体層79のパターン形成面には、導体層791,792,793が形成されている。
【0073】
図12(a)は、30層目の誘電体層80のパターン形成面を示している。誘電体層80のパターン形成面には、導体層801,802,803が形成されている。
【0074】
図12(b)は、31層目の誘電体層81のパターン形成面を示している。誘電体層81のパターン形成面には、導体層よりなるマーク811が形成されている。
【0075】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、31層目の誘電体層81のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし31層目の誘電体層51~81が積層されて構成される。
【0076】
図3ないし図11に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし29層目の誘電体層51~79を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、図3ないし図11に示した複数のスルーホールのうち、端子内または導体層内に位置するスルーホールは、その端子またはその導体層に接続されている。
【0077】
図13は、1層目ないし31層目の誘電体層51~81が積層されて構成された積層体50の内部を示している。図13に示したように、積層体50の内部では、図3ないし図12に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、図13では、マーク811を省略している。また、図13では、理解を容易にするために、積層方向Tにおける積層体50の寸法を、実際よりも大きく描いている。
【0078】
以下、図1に示した電子部品1の回路の構成要素と、図3ないし図12に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。始めに、共振器10の構成要素について説明する。インダクタL11は、図9(c)ないし図12(a)に示した導体層731,741,751,761,771,781,791,801と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0079】
インダクタL12は、図6(a)ないし図8(b)に示した導体層611,621,631,641,651,661,671,681と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0080】
インダクタL13は、図3(b)に示した導体層521によって構成されている。
【0081】
キャパシタC11は、図3(c)ないし図4(c)に示した導体層531,541,551,561と、これらの導体層の間の誘電体層53~55とによって構成されている。
【0082】
キャパシタC12は、図3(c)ないし図4(b)に示した導体層531,542,551と、これらの導体層の間の誘電体層53,54とによって構成されている。
【0083】
キャパシタC13は、図4(c)および図5(a)に示した導体層561,571と、これらの導体層の間の誘電体層56とによって構成されている。
【0084】
次に、共振器20のLC回路24の構成要素について説明する。インダクタL21は、図6(a)ないし図8(b)に示した導体層612,622,632,642,652,662,672,682と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0085】
キャパシタC21は、図3(a)および図4(a)に示した端子112および導体層543と、これらの導体層の間の誘電体層51~53とによって構成されている。
【0086】
キャパシタC22は、図3(a)および図3(c)に示した端子116および導体層532と、これらの導体層の間の誘電体層51,52とによって構成されている。
【0087】
次に、共振器20のLC回路25の構成要素について説明する。インダクタL22は、図9(c)ないし図12(a)に示した導体層732,742,752,762,772,782,792,802と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0088】
インダクタL23は、図9(c)ないし図12(a)に示した導体層733,743,753,763,773,783,793,803と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0089】
キャパシタC23は、図4(a)ないし図4(c)に示した導体層543,552,562と、これらの導体層の間の誘電体層54,55とによって構成されている。
【0090】
キャパシタC24は、図4(b)および図4(c)に示した導体層553,563と、これらの導体層の間の誘電体層55とによって構成されている。
【0091】
キャパシタC25は、図4(b)および図4(c)に示した導体層554,563と、これらの導体層の間の誘電体層55とによって構成されている。
【0092】
キャパシタC26は、図4(a)ないし図4(c)に示した導体層544,555,564と、これらの導体層の間の誘電体層54,55とによって構成されている。
【0093】
キャパシタC27は、図4(c)および図5(a)に示した導体層562,573と、これらの導体層の間の誘電体層56とによって構成されている。
【0094】
キャパシタC28は、図4(c)および図5(a)に示した導体層564,574と、これらの導体層の間の誘電体層56とによって構成されている。
【0095】
キャパシタC29は、図4(a)および図4(b)に示した導体層545,553と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0096】
キャパシタC30は、図3(c)および図4(b)に示した導体層532,556と、これらの導体層の間の誘電体層53,54とによって構成されている。
【0097】
次に、共振器20のLC回路26の構成要素について説明する。インダクタL24は、図6(c)ないし図8(b)に示した導体層633,643,653,663,673,683と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0098】
インダクタL25は、図5(c)および図9(a)に示した導体層601,711,712と、図5(c)ないし図9(a)に示したスルーホール60T1~60T4,61T1~61T4,62T1~62T4,63T1~63T4,64T1~64T4,65T1~65T4,66T1~66T4,67T1~67T4,68T1~68T4,69T1~69T4とによって構成されている。
【0099】
スルーホール60T1,61T1,62T1,63T1,64T1,65T1,66T1,67T1,68T1,69T1は、直列に接続されている。スルーホール60T2,61T2,62T2,63T2,64T2,65T2,66T2,67T2,68T2,69T2は、直列に接続されている。スルーホール60T3,61T3,62T3,63T3,64T3,65T3,66T3,67T3,68T3,69T3は、直列に接続されている。スルーホール60T4,61T4,62T4,63T4,64T4,65T4,66T4,67T4,68T4,69T4は、直列に接続されている。
【0100】
誘電体層70に形成されたスルーホール69T1は、導体層711の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層70に形成されたスルーホール69T2は、導体層711の他端部の近傍部分に接続されている。誘電体層60に形成されたスルーホール60T2は、導体層601の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層60に形成されたスルーホール60T3は、導体層601の他端部の近傍部分に接続されている。誘電体層70に形成されたスルーホール69T3は、導体層712の一端部の近傍部分に接続されている。誘電体層70に形成されたスルーホール69T4は、導体層712の他端部の近傍部分に接続されている。
【0101】
キャパシタC31は、図3(c)および図4(a)に示した導体層533,544と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0102】
キャパシタC32は、図3(b)および図3(c)に示した導体層522,534と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0103】
キャパシタC33は、図4(c)および図5(a)に示した導体層564,575と、これらの導体層の間の誘電体層56とによって構成されている。
【0104】
キャパシタC34は、図3(c)ないし図5(a)に示した導体層534,546,557,565,576と、これらの導体層の間の誘電体層53~56とによって構成されている。
【0105】
次に、図1図13および図14を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構造上の特徴について説明する。図14は、図13に示した積層体50の内部の一部を示す断面図である。本実施の形態では、共振器20のLC回路26のインダクタL24が第1のインダクタに対応し、共振器20のLC回路26のインダクタL25が第2のインダクタに対応する。
【0106】
以下、インダクタL24を第1のインダクタL24とも言い、インダクタL25を第2のインダクタL25とも言う。図1に示したように、第1のインダクタL24と第2のインダクタL25は、共振器20に含まれており、共振器20の経路23に直列に設けられている。経路23は、共通ポート2(第1のポート)と信号ポート4(第2のポート)を接続する経路の一部である。第1のインダクタL24は、回路構成上共通ポート2(第1のポート)に最も近い第1端と、第1端とは反対側の端である第2端とを有している。第1のインダクタL24の第2端は、第2のインダクタL25の一端に接続されている。
【0107】
積層体50は、第1のインダクタL24を構成する第1のインダクタ導体L24cと、第2のインダクタL25を構成する第2のインダクタ導体L25cとを含んでいる。第1のインダクタ導体L24cは、導体層633,643,653,663,673,683と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールよりなる導体の構造体である。第2のインダクタ導体L25cは、導体層601,711,712と、スルーホール60T1~60T4,61T1~61T4,62T1~62T4,63T1~63T4,64T1~64T4,65T1~65T4,66T1~66T4,67T1~67T4,68T1~68T4,69T1~69T4よりなる導体の構造体である。図14では、第1および第2のインダクタ導体L24c,L25cを、実線および破線を用いて示している。
【0108】
図14における符号A1は、導体層633,643,653,663,673,683によって囲まれた空間を通過する軸を示している。第1のインダクタ導体L24cは、第1の方向に延びる軸A1を中心に巻回されている。
【0109】
図14における符号A2は、導体層601,711,712と、スルーホール60T1~60T4,61T1~61T4,62T1~62T4,63T1~63T4,64T1~64T4,65T1~65T4,66T1~66T4,67T1~67T4,68T1~68T4,69T1~69T4とによって囲まれた空間を通過する軸を示している。第2のインダクタ導体L25cは、第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸A2を中心に巻回されている。
【0110】
本実施の形態では、第1の方向と第2の方向は、互いに直交する。また、第1の方向と第2の方向の一方は、積層方向Tに平行である。本実施の形態では、第1の方向は、Z方向に平行な方向であり、積層方向Tに平行である。軸A1は、積層方向Tに平行な方向に延びている。また、第2の方向は、X方向に平行な方向である。軸A2は、積層方向Tに直交する方向に延びている。
【0111】
ここで、積層方向Tに平行な方向に延びる軸を中心に巻回されたインダクタ導体を水平インダクタ導体と言い、積層方向Tに直交する方向に延びる軸を中心に巻回されたインダクタ導体を垂直インダクタ導体と言う。本実施の形態では、第1のインダクタ導体L24cは水平インダクタ導体であり、第2のインダクタ導体L25cは垂直インダクタ導体である。
【0112】
前述のように、積層体50の底面50Aおよび上面50Bの各々の形状は、X方向に長い矩形形状である。積層体50の4つの側面50C,50D,50E,50Fのうち、側面50C,50Dは、上記矩形形状の長手方向の両端に位置する。図14に示したように、垂直インダクタ導体である第2のインダクタ導体L25cは、側面50Dよりも側面50Cにより近い位置に配置されている。第2のインダクタ導体L25cから側面50Cまでの距離は、水平インダクタ導体である第1のインダクタ導体L24cから側面50Cまでの距離よりも小さい。
【0113】
積層体50は、更に、共振器10を構成する共振器用導体を含んでいる。共振器用導体は、インダクタL11~L13およびキャパシタC11~C13の各々を構成する複数の導体層と、この複数の導体層に接続された複数のスルーホールよりなる導体の構造体である。図14では、共振器用導体のうち、インダクタL11~L13を構成する複数の導体層を、破線を用いて示している。共振器用導体は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置に配置されている。従って、垂直インダクタ導体である第2のインダクタ導体L25cは、水平インダクタ導体である第1のインダクタ導体L24cよりも共振器用導体からより遠い位置に配置されている。また、第2のインダクタ導体L25cは、第1のインダクタ導体L24cよりもインダクタL11~L13を構成する複数の導体層からより遠い位置に配置されている。
【0114】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の特性の一例を示す。図15は、電子部品1の通過減衰特性および反射減衰特性の一例を示す特性図である。図15において、符号91を付した曲線は、共通ポート2と信号ポート3との間に設けられた共振器10によって構成される第2のフィルタの通過減衰特性を示している。また、符号92を付した曲線は、共通ポート2と信号ポート4との間に設けられた共振器20によって構成される第1のフィルタの通過減衰特性を示している。また、符号93を付した曲線は、共通ポート2における反射減衰特性を示している。
【0115】
図16は、第1のフィルタの挿入損失を示す特性図である。図17は、第1のフィルタの反射損失を示す特性図である。図16において、横軸は周波数を示し、縦軸は挿入損失を示している。図17において、横軸は周波数を示し、縦軸は反射損失を示している。
【0116】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の作用および効果について説明する。前述のように、本実施の形態では、第1のインダクタL24の第2端は、第2のインダクタL25の一端に接続されている。電子部品1が小型化すると、第1および第2のインダクタL24,L25のように回路構成上近接する2つのインダクタ間の距離が小さくなり、2つのインダクタ間の電磁界結合が強くなる。特に、特許文献1に記載された2つのインダクタのように、2つのインダクタを構成する2つのインダクタ導体が、いずれも同じ方向に延びる軸を中心に巻回されると共に、軸方向から見たときに、2つのインダクタ導体の一方が他方と重なるように配置されている場合には、2つのインダクタ間の電磁界結合が強くなりやすい。
【0117】
これに対し、本実施の形態では、第1のインダクタL24を構成する第1のインダクタ導体L24cは、第1の方向に延びる軸A1を中心に巻回され、第2のインダクタL25を構成する第2のインダクタ導体L25cは、第1の方向と交差する第2の方向に延びる軸A2を中心に巻回されている。これにより、本実施の形態によれば、上記の場合に比べて、第1のインダクタL24と第2のインダクタL25との間の電磁界結合を抑制することができる。これにより、本実施の形態によれば、電子部品1を小型化しながら、所望の特性を実現することができる。具体的には、図15に示したように、第1の通過帯域よりも高い周波数帯域(約3GHz~約8GHz)における通過減衰量を大きくすることができる。
【0118】
また、本実施の形態では、第1の方向と第2の方向は、互いに直交している。これにより、本実施の形態によれば、第1のインダクタL24と第2のインダクタL25との間の電磁界結合をより抑制することができる。
【0119】
ところで、垂直インダクタ導体は、水平インダクタ導体に比べて、積層方向Tに直交する方向に配置された他の導体と電磁界結合しやすい。本実施の形態では、第1のインダクタ導体L24cは水平インダクタ導体であり、第2のインダクタ導体L25cは垂直インダクタ導体である。第1および第2のインダクタ導体L24c,L25cは、側面50Cに対して前述の位置関係で配置されている。これにより、本実施の形態によれば、第2のインダクタ導体L25cから側面50Cまでの距離が、第1のインダクタ導体L24cから側面50Cまでの距離よりも大きい場合に比べて、側面50D側に配置された他の導体からの距離を大きくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、第2のインダクタ導体L25cが側面50D側に配置された他の導体に電磁界結合することを抑制することができる。
【0120】
また、本実施の形態に係る電子部品1は、共通ポート2と信号ポート3との間に設けられた共振器10と、共通ポート2と信号ポート3との間に設けられた共振器20を備えた分波器(ダイプレクサ)である。第1および第2のインダクタL24,L25は、共振器20に含まれている。第1および第2のインダクタ導体L24c,L25cは、共振器10を構成する共振器用導体に対して前述の位置関係で配置されている。これにより、本実施の形態によれば、共振器20に含まれる第2のインダクタ導体L25cが共振器10を構成する共振器用導体と電磁界結合することによって、信号ポート3と信号ポート4との間のアイソレーション特性が悪化することを防止することができる。
【0121】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の電子部品は、回路の構成要素として共振器20のみを含む電子部品であってもよいし、回路の構成要素としてLC回路26のみを含む電子部品であってもよい。共振器20のみを含む電子部品は、バンドパスフィルタとして機能する。LC回路26のみを含む電子部品は、ローパスフィルタとして機能する。
【0122】
また、本発明の第1および第2のインダクタ導体は、第1のインダクタの第2端が第2のインダクタの一端に接続されるという要件を満たす限り、インダクタL24,L25以外の2つのインダクタにも適用することができる。具体的には、本発明の第1および第2のインダクタ導体は、共振器10のインダクタL11,L12や、共振器20のLC回路25のインダクタL22,L23に適用することもできる。インダクタL11,L12の組と、インダクタL22,L23の組は、いずれも、第1のインダクタの第2端が第2のインダクタの一端に接続されるという要件を満たす。
【0123】
また、第1のインダクタの第2端は、第2のインダクタの一端に直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。
【0124】
また、実施の形態とは逆に、第1のインダクタL24を構成する第1のインダクタ導体が垂直インダクタ導体であり、第2のインダクタ同隊を構成する第2のインダクタ導体が水平インダクタ導体であってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1…電子部品、2…共通ポート、3,4…信号ポート、10,20…共振器、24~26…LC回路、50…積層体、50A…底面、50B…上面、50C~50F…側面、51~81…誘電体層、L24…第1のインダクタ、L25…第2のインダクタ。
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