(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116662
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20220803BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220803BHJP
A23F 3/34 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 K
A23F3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012960
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 裕貴
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB15
4B027FC01
4B027FE06
4B027FK02
4B027FK12
4B027FP85
4B117LC02
4B117LG12
4B117LK01
4B117LK07
4B117LK16
4B117LL01
4B117LP01
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】p-クレゾールによる薬品臭が抑制され、嗜好性に優れる飲料を提供すること。
【解決手段】飲料は、4.0~10ppbの含有量のp-クレゾールを含有し、オイゲノールを1.5ppb以上の含有量で含有する。飲料中のオイゲノールの含有量は20ppb以下であってもよい。飲料は焙煎された植物の抽出液を含んでいてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.0~10ppbの含有量のp-クレゾールを含有する飲料であり、
オイゲノールを1.5ppb以上の含有量で含有する、
飲料。
【請求項2】
前記オイゲノールの含有量が20ppb以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
焙煎された植物の抽出液を含む、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料に、オイゲノールをその含有量が1.5ppb以上となるように添加する、
飲料の薬品臭の抑制方法。
【請求項5】
オイゲノールを含み、
p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料中に、前記オイゲノールの含有量が1.5ppb以上となるように添加して用いられる、
飲料の薬品臭の抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料や果汁飲料のような飲料には、天然の素材由来の抽出物を含むという特性上、様々な成分が含まれている。それらの成分の大半は香味に良い影響を与えるが、少なからず嗜好性を低下させる好ましくない成分も存在する。そのような嗜好性の低下に大きな影響を与える成分としてp-クレゾールが知られている。p-クレゾールは飲料中に数ppb存在するだけでも薬品臭として感じられ、香味に悪影響を及ぼす。
【0003】
したがって、p-クレゾールの混入を防ぐことが飲料の嗜好性の改善や向上を目指す上で重要であるが、p-クレゾールは多くの素材に含まれているため、混入を防ぐことが容易でないという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献1にはエチルピルベート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、ジエチルマロネート、メチルベータナフチルケトン、マルトールイソブチレート、メントール、ラウリン酸、アセトイン、シンナミルアセテート、ベンジルアセテート、及びα-ターピネオールからなる群から選択される1種以上を含有させる方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、シネオールやシス-3-ヘキセノールを特定の濃度で飲料に含有させる方法が提案されている。
【0006】
商品設計の自由度の観点から、様々な方法によりp-クレゾールによる薬品臭を抑制できることが好ましく、そのため、更なる新規な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-180715号公報
【特許文献2】特開2016-36319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、p-クレゾールによる薬品臭が抑制され、嗜好性に優れる飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、例えば天然の素材由来の抽出物に由来して所定の含有量でp-クレゾールが含有される飲料において、所定の量のオイゲノールが含有されることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
<1> 4.0~10ppbの含有量のp-クレゾールを含有する飲料であり、オイゲノールを1.5ppb以上の含有量で含有する、飲料。
【0011】
<2> 前記オイゲノールの含有量が20ppb以下である、<1>に記載の飲料。
【0012】
<3> 焙煎された植物の抽出液を含む、<1>又は<2>に記載の飲料。
【0013】
<4> p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料に、オイゲノールをその含有量が1.5ppb以上となるように添加する、飲料の薬品臭の抑制方法。
【0014】
<5> オイゲノールを含み、p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料中に、前記オイゲノールの含有量が1.5ppb以上となるように添加して用いられる、飲料の薬品臭の抑制剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、p-クレゾールによる薬品臭が抑制され、嗜好性に優れる飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0017】
<1.飲料>
飲料は、例えば天然の素材由来の抽出物に由来して4.0~10ppbの含有量でp-クレゾールを含有する飲料であって、オイゲノールを1.5ppb以上の含有量で含有する。このように特定の割合でオイゲノールを含有するよう設計することで、p-クレゾールによる薬品臭が抑制され、嗜好性に優れる飲料とすることができる。
【0018】
オイゲノールは、刺激のあるフラワリー様の快い芳香がする香気成分であるが、本発明者は、p-クレゾールを含有する飲料にオイゲノールを含有させることで、意外にもp-クレゾールによる薬品臭が抑制されることを見出した。
【0019】
飲料の種類は特に限定されるものではなく、例えば、焙煎された植物の抽出液を含む飲料、果汁・野菜汁飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料等が挙げられる。中でも、様々な素材の抽出物を含有させることによりp-クレゾールが混入しやすいという観点から、飲料は焙煎された植物の抽出液を含むものであることが好ましく、茶飲料であることがより好ましい。
【0020】
飲料が茶飲料である場合、飲料に含まれる抽出物の由来となる植物の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法は限定されない。植物の種類も特に限定されず、例えば、大麦、ハトムギ、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、黒豆、大豆、小豆、芋、びわの葉、チャの葉、昆布、熊笹、ごま、柿の葉、アマチャヅル、桑の葉、霊芝、クコ、みかんの皮、ユズの皮、杜仲葉、シソの葉、ドクダミ、オオバコ、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、陳皮、イチョウ、松葉、蓮、オリーブ、大麦若葉、カワラケツメイ、仙草、明日葉、よもぎ、月見草等を用いることができる。これらの植物のうち、ハトムギ、ハブ茶、及びびわの葉からなる群から選択される一種以上を用いることが好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0021】
飲料が植物の抽出液を含むものである場合、ある一種の植物を抽出して得られる抽出物を含む液体だけでなく、その抽出物に他の植物の抽出物を混合して得られる液体、もしくはこれらの液体に添加物を加えて得られる液体、又はこれらの液体を乾燥したものを分散させてなる液体等を含む。
【0022】
飲料が果汁・野菜汁飲料である場合、飲料に含まれる果汁・野菜汁の由来となる果実や野菜の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法は限定されない。果実や野菜の種類も特に限定されず、例えば、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ等のオレンジ類;グレープフルーツ等のグレープフルーツ類;レモン、ライム、シークヮーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカン等の香酸柑橘類;ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポン等の雑柑類;イヨカン、タンカン等のタンゴール類;セミノール等のタンゼロ類;ブンタン等のブンタン類;マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカン等のミカン類;キンカン等のキンカン類;などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
飲料が果汁や野菜汁を含むものである場合、ある一種の果汁や野菜汁を含む液体だけでなく、その液体に他の果汁や野菜汁を混合して得られる液体、もしくはこれらの液体に添加物を加えて得られる液体、又はこれらの液体を乾燥したものを分散させてなる液体等を含む。
【0024】
[p-クレゾール]
飲料にはp-クレゾールが含まれる。飲料中のp-クレゾールの含有量は4.0~10ppbの範囲である。また、飲料中のp-クレゾールの含有量は5ppb以上であってもよく、6ppb以上であってもよい。
【0025】
他方で、p-クレゾールによる薬品臭が過度にならないようにする観点から、飲料中のp-クレゾールの含有量の上限は、9ppb以下であってもよく、8ppb以下であってもよい。
【0026】
飲料中のp-クレゾールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0027】
[オイゲノール]
飲料にはオイゲノールが含まれる。オイゲノールとしては、特に限定されないが、化合物の市販品を用いて配合したり、オイゲノールが含まれる天然物やその抽出物等を配合することができる。
【0028】
飲料中のオイゲノールの含有量は1.5ppb以上の範囲である。飲料中のオイゲノールの含有量をこのような範囲に設定することで、p-クレゾールが含まれる飲料における薬品臭を低減させることができる。p-クレゾールによる薬品臭の抑制効果を高める観点から、飲料中のオイゲノールの含有量は2ppb以上であることが好ましく、3ppb以上であることがより好ましく、5ppb以上であることが更に好ましい。
【0029】
他方で、オイゲノールを大量に入れると飲料のおいしさが損なわれる場合がある。したがって飲料のおいしさを良好に保つという観点から、飲料中のオイゲノールの含有量の上限は20ppb以下であることが好ましく、15ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることが更に好ましい。
【0030】
飲料中のオイゲノールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0031】
[その他の成分]
飲料においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な飲料に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、配合量は目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
[容器]
飲料においては、容器に充填することで容器詰飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0033】
<2.飲料の製造方法>
飲料は、飲料の製造において採用される任意の条件や方法を用いて製造できる。例えば、p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料に、含有量が1.5ppb以上となるようにオイゲノールを添加し、更にその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして飲料を調製する。
【0034】
飲料中のp-クレゾールの含有量は任意の適当な方法により調整すればよい。また、オイゲノールを添加する方法は、常法にしたがえばよい。
【0035】
飲料の製造においては、例えば、準備されたそれぞれ所定量の成分を含有する抽出液等及び所定量のオイゲノールを、順次又は同時に添加し、撹拌等により混合する方法が挙げられる。各成分の混合順序等については、特に限定されない。また、複数の植物を予め混合して抽出処理を行って抽出液を得た後に、得られた抽出液にオイゲノールを所定濃度となるように添加する方法も挙げられる。オイゲノールを添加するにあたっては、香料(化学合成された化合物等)として添加する方法、オイゲノールを含む食品素材を添加する方法等が挙げられる。
【0036】
製造された飲料は、容器に充填して容器詰飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0037】
<3.飲料の薬品臭の抑制方法>
上記のとおり、本発明によれば、p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料に、オイゲノールをその含有量が1.5ppb以上となるように添加することで、p-クレゾールによる薬品臭を抑制させることができる。
【0038】
<4.飲料の薬品臭の抑制剤>
飲料の薬品臭の抑制剤は、オイゲノールを含むものである。この抑制剤は、p-クレゾールの含有量が4.0~10ppbである飲料中に、オイゲノールの含有量が1.5ppb以上となるように添加して用いられる。
【0039】
飲料の薬品臭の抑制剤は、本分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。また、飲料の薬品の抑制剤にオイゲノール以外の成分が含まれる場合、その種類及び含量は、得ようとする効果に応じて適宜設計できる。
【実施例0040】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0041】
≪試験1:p-クレゾール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
焙煎した玄米(L*=58)10gを、90℃、30倍容の水で抽出した。得られた抽出液にL-アスコルビン酸ナトリウム0.3g、L-アスコルビン酸0.1g、炭酸水素ナトリウム0.2gをそれぞれ添加し、純水で1000gに定容し、調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌後、無菌的にPETボトルに充填し、サンプル(基準品)を得た。得られた基準品にp-クレゾールを1~10ppbの各濃度となるように添加し、評価に用いる試験サンプルを作製した。
【0042】
基準品及び試験サンプル中におけるp-クレゾールの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC-MS/MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である飲料100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC-MS/MSの分析条件>
・機器 GC:Agilent 7980B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS Robotic Pro/DHS/TDU2/CIS4(ゲステル社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TATM、Carbopack-B/Carbopack-X
・カラム:DB-WAX UI、20m×0.18mm、膜厚0.30μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・トランスファーライン:250℃
・昇温プログラム:40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:p-クレゾール 107>77(20V)
:シクロヘキサノール 82>67(5V)
・イオン化方法:EI
・四重極温度:150℃
・イオン源温度:230℃
【0043】
[官能評価]
作製した基準品及び試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品に対して、「おいしさ」、「薬品臭」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品の点数を基準値(4点)として評価した。
【0044】
「おいしさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:基準品と同等
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:かなり悪い
【0045】
「薬品臭」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0046】
(結果)
下記表1に基準品及び試験サンプル中のp-クレゾール濃度及び官能評価結果を示す。なお、「おいしさ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「薬品臭」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており、評価が高いことを意味する。
【0047】
【0048】
表1に示されるとおり、p-クレゾール濃度が高くなると薬品臭が強く感じられるようになり、おいしさが不良であった。
【0049】
≪試験2:オイゲノール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
試験1で調製した基準品にp-クレゾールを10ppbの濃度となるように、オイゲノールを1~20ppbの各濃度となるように添加し、試験サンプルを作製した。
【0050】
基準品及び試験サンプル中におけるオイゲノールの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC-MS/MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である飲料100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC-MS/MSの分析条件>
・機器 GC:Agilent 7980B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS Robotic Pro/DHS/TDU2/CIS4(ゲステル社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TATM、Carbopack-B/Carbopack-X
・カラム:DB-WAX UI、20m×0.18mm、膜厚0.30μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・トランスファーライン:250℃
・昇温プログラム:40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:オイゲノール 164>149(10V)
:シクロヘキサノール 82>67(5V)
・イオン化方法:EI
・四重極温度:150℃
・イオン源温度:230℃
【0051】
[官能評価]
作製した基準品及び試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品に対して、「おいしさ」、「薬品臭」について比較評価することで行った。各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。
【0052】
(結果)
下記表2に基準品及び試験サンプル中のp-クレゾール濃度、オイゲノール濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「おいしさ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「薬品臭」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており、評価が高いことを意味する。
【0053】
【0054】
表2に示されるとおり、実施例1~4では、比較例1及び2と比べて薬品臭が抑制されていた。また、実施例1~4では、薬品臭の抑制に加えて、おいしさも向上していることがわかった。