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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116667
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】減速装置、及び、自転車
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20220803BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20220803BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F16H1/32 B
B62M6/55
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012965
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】横川 知佳
(72)【発明者】
【氏名】下村 巧
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智之
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭祐
【テーマコード(参考)】
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB14
3J027GA01
3J027GC07
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE22
3J027GE30
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD04
5H607DD09
5H607DD19
5H607EE35
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607HH02
5H607JJ10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸方向の長さを比較的小さくできる減速装置を提供する。
【解決手段】減速装置SRはモータ100と減速機200とを備える。モータは、モータ本体10と回転軸25と第1軸受30と第2軸受35とを有する。減速機は、波動発生器60と可撓性部材50と環状の環状部材40とを有する。波動発生器は、周方向の位置によって異なる外径を有する。可撓性部材は、波動発生器が径方向内側から接触する可撓性の筒状部51を有する。環状部材には、筒状部が径方向内側から接触する。可撓性部材は、波動発生器の回転に応じて、環状部材に対して相対回転する。波動発生器は、モータのロータ15が接続される位置と異なる位置で、回転軸25に接続される。第1軸受は、ロータに対して波動発生器の反対側に配置され、回転軸を回転可能に支持する。第2軸受は、可撓性部材の筒状部の径方向内側に配置され、回転軸を回転可能に支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転速度を減速する減速機と
を備え、
前記モータは、モータ本体と、中心軸を中心として回転する回転軸と、第1軸受と、第2軸受とを有し、
前記減速機は、
周方向の位置によって異なる外径を有し、前記中心軸を中心として回転する波動発生器と、
前記波動発生器が径方向内側から接触する可撓性の筒状部を有する可撓性部材と、
前記筒状部が径方向内側から接触する環状の環状部材と
を有し、
前記可撓性部材は、前記波動発生器の回転に応じて、前記環状部材に対して相対回転し、
前記モータ本体は、前記回転軸に接続されるロータを有し、
前記波動発生器は、前記ロータが接続される位置と異なる位置で、前記回転軸に接続され、
前記第1軸受は、前記ロータに対して前記波動発生器の反対側に配置されるとともに、前記回転軸を回転可能に支持し、
前記第2軸受は、前記筒状部の径方向内側に配置されるとともに、前記回転軸を回転可能に支持する、減速装置。
【請求項2】
前記モータの極数は、N(2以上の整数)であり、
前記ロータは、前記回転軸と接続する第1接続部を有し、
前記第1接続部は、周方向に連なるN個の第1凹部を有し、
前記N個の第1凹部の各々は、径方向外側に向かって窪むとともに、軸方向に沿って延び、
前記波動発生器は、前記回転軸と接続する第2接続部を有し、
前記第2接続部は、周方向に連なるN個の第2凹部を有し、
前記N個の第2凹部の各々は、径方向外側に向かって窪むとともに、軸方向に沿って延び、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、軸方向に沿って一直線上に並び、
前記回転軸は、径方向外側に向かって突出するN個の凸部を有し、
前記N個の凸部は、軸方向に沿って延び、前記N個の第1凹部に嵌るとともに、前記N個の第2凹部に嵌る、請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記第2軸受は、前記波動発生器に対して前記ロータの反対側に配置される、請求項1又は請求項2に記載の減速装置。
【請求項4】
前記回転軸の径方向外側で、前記減速機と前記モータ本体との間をシールするシール部をさらに有し、
前記減速機の内部にはグリスが存在する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項5】
前記回転軸は、中空である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の減速装置。
【請求項6】
請求項5に記載の減速装置と、
ペダルと、
前記減速装置の前記回転軸を軸方向に貫通し、前記ペダルからの踏力によって駆動されるクランクシャフトと、
前記減速装置の出力軸が接続されるスプロケットと
を有する、自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置、及び、自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動モジュールは、第1の駆動シャフトを有している(例えば、特許文献1)。第1の駆動シャフトは、駆動モジュールの人力式の駆動のために設けられている。さらに第2の駆動シャフトが設けられている。第2の駆動シャフトは、電気式の補助駆動装置のロータと回転不能に結合されている。電気式の補助駆動装置は、さらにステータを有している。このようにしてロータが、第2の駆動シャフトを介して波動歯車装置と結合されていてよい。波動歯車装置は内側ブッシュと、ウェーブジェネレータと、外側ブッシュとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-507140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の駆動モジュールでは、波動歯車装置と電気式の補助駆動装置とは、軸方向に離隔して配置される。従って、駆動モジュール(減速装置)の軸方向の長さが大きくなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸方向の長さを比較的小さくできる減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な減速装置は、モータと、減速機とを備える。減速機は、前記モータの回転速度を減速する。前記モータは、モータ本体と、中心軸を中心として回転する回転軸と、第1軸受と、第2軸受とを有する。前記減速機は、波動発生器と、可撓性部材と、環状の環状部材とを有する。波動発生器は、周方向の位置によって異なる外径を有し、前記中心軸を中心として回転する。可撓性部材は、前記波動発生器が径方向内側から接触する可撓性の筒状部を有する。環状部材には、前記筒状部が径方向内側から接触する。前記可撓性部材は、前記波動発生器の回転に応じて、前記環状部材に対して相対回転する。前記モータ本体は、前記回転軸に接続されるロータを有する。前記波動発生器は、前記ロータが接続される位置と異なる位置で、前記回転軸に接続される。前記第1軸受は、前記ロータに対して前記波動発生器の反対側に配置されるとともに、前記回転軸を回転可能に支持する。前記第2軸受は、前記筒状部の径方向内側に配置されるとともに、前記回転軸を回転可能に支持する。
【0007】
本発明の例示的な自転車は、上記の減速装置と、ペダルと、クランクシャフトと、スプロケットとを有する。クランクシャフトは、前記減速装置の前記回転軸を軸方向に貫通し、前記ペダルからの踏力によって駆動される。スプロケットには、前記減速装置の出力軸が接続される。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、軸方向の長さを比較的小さくできる減速装置、及び、自転車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る減速装置を示す縦断面図である。
図2図2は、実施形態1に係るモータを示す横断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る減速機を示す横断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るモータの回転軸を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態1に係る減速装置の一部を拡大して示す縦断面図である。
図6A図6Aは、実施形態1に係る減速装置のシール部を拡大して示す縦断面図である。
図6B図6Bは、実施形態1に係る減速装置のシール部の他の例を拡大して示す縦断面図である。
図6C図6Cは、実施形態1に係る減速装置のシール部の更に他の例を拡大して示す縦断面図である。
図6D図6Dは、実施形態1に係る減速装置のシール部の更に他の例を拡大して示す縦断面図である。
図7図7は、実施形態1に係る減速装置の非真円カムを示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態2に係る自転車を示す図である。
図9図9は、実施形態2に係る自転車に搭載された減速装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解の容易のため、三次元直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸を適宜記載している。
【0011】
本明細書では、減速装置の中心軸AXと平行な方向を「軸方向AD」と記載し、中心軸AXに直交する方向を「径方向RD」と記載し、中心軸AXを中心とする円弧に沿う方向を「周方向CD」と記載する。なお、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。また、「平面視」は、軸方向ADから対象物を見ることを示す。
【0012】
(実施形態1)
図1図7を参照して、本発明の実施形態1に係る減速装置SRを説明する。図1は、実施形態1に係る減速装置SRを示す縦断面図である。図2は、減速装置SRのモータ100を示す横断面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面に相当する。図3は、減速装置SRの減速機200を示す横断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿った断面に相当する。
【0013】
図1に示す減速装置SRは、回転速度を減速する。回転速度は、例えば、単位時間当たりの回転数を示す。具体的には、減速装置SRは、第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換する。
【0014】
図1に示すように、減速装置SRは、モータ100と、減速機200とを有する。モータ100は、減速機200を駆動する。減速機200は、モータ100の回転速度を減速する。具体的には、減速機200は、モータ100による第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換する。
【0015】
モータ100は、モータ本体10と、中心軸AXを中心として回転する回転軸25と、略円環状の第1軸受30と、略円環状の第2軸受35とを有する。中心軸AXは、回転軸25の長手方向に沿って、回転軸25の中心を通る仮想線である。モータ本体10は、回転軸25を回転させる。図1及び図2に示すように、モータ本体10は、ロータ15を有する。
【0016】
図1及び図3に示すように、減速機200は、剛性内歯歯車40と、可撓性外歯歯車50と、波動発生器60とを有する。
【0017】
可撓性外歯歯車50は、「可撓性部材」の一例に相当する。剛性内歯歯車40は、「環状部材」の一例に相当する。
【0018】
波動発生器60は、周方向CDの位置によって異なる外径を有する。波動発生器60は、中心軸AXを中心として回転する。図3の例では、波動発生器60は、略楕円状である。波動発生器60は、可撓性外歯歯車50を撓み変形させる機構である。可撓性外歯歯車50は、筒状部51を有する。筒状部51は、可撓性を有する。筒状部51は、略筒状である。剛性内歯歯車40は、略環状である。図3の例では、剛性内歯歯車40は、略円環状である。剛性内歯歯車40には、可撓性外歯歯車50の筒状部51が径方向RD内側から接触する。可撓性外歯歯車50は、波動発生器60の回転に応じて、剛性内歯歯車40に対して相対回転する。
【0019】
図1に示すように、モータ100において、モータ本体10のロータ15は、回転軸25に接続される。具体的には、ロータ15は回転軸25に固定される。一方、減速機200において、波動発生器60は、ロータ15が接続される位置と異なる位置で、回転軸25に接続される。具体的には、波動発生器60は回転軸25に固定される。モータ100の第1軸受30は、回転軸25を回転可能に支持する。第1軸受30は、ロータ15を挟んで波動発生器60の反対側に配置される。つまり、第1軸受30は、ロータ15に対して波動発生器60の反対側に配置される。モータ100の第2軸受35は、回転軸25を回転可能に支持する。第2軸受35は、可撓性外歯歯車50の筒状部51の径方向RD内側に配置される。つまり、モータ100の第2軸受35が、減速機200の内部に配置される。従って、実施形態1によれば、モータ100の第2軸受35が減速機200の外部に配置される場合と比較して、減速装置SRの軸方向ADの長さを小さくできる。つまり、減速装置SRの軸方向ADの長さを比較的小さくできる。
【0020】
具体的には、実施形態1では、モータ100の第2軸受35は、波動発生器60を挟んでロータ15の反対側に配置される。つまり、第2軸受35は、波動発生器60に対してロータ15の反対側に配置される。従って、実施形態1によれば、モータ本体10を減速機200に対して軸方向ADにより近づけて配置できる。その結果、減速装置SRの軸方向ADの長さを更に小さくできる。
【0021】
また、実施形態1では、モータ100の回転軸25は、中空であることが好ましい。この好ましい例によれば、回転軸25の内部に、シャフト等の機械要素を配置できる。その結果、減速装置SRの応用範囲が拡がる。具体的には、回転軸25は、略円柱状の内部空間SPを有する。なお、回転軸25は中空でなくてもよい。
【0022】
次に、図1及び図2を参照して、モータ100の詳細を説明する。図1に示すように、モータ100は、固定部材R1と、スペーサR10と、スペーサR11と、固定部材R2とをさらに有する。モータ本体10は、ステータ11と、フランジ部18とをさらに有する。
【0023】
ステータ11は、モータ100の固定子である。ステータ11は、中心軸AXを中心に配置される。具体的には、ステータ11は、ステータコア12と、インシュレータ13と、複数のコイル14とを有する。
【0024】
ステータコア12は、中心軸AXを中心に配置される。ステータコア12は、中心軸AXを囲んで配置され、略円環状である。ステータコア12は、例えば、薄板の電磁鋼板が軸方向ADに積層した積層鋼板によって構成される。インシュレータ13は、ステータコア12とコイル14とを電気的に絶縁する。インシュレータ13は、絶縁材料で構成される。インシュレータ13は、ステータコア12の少なくとも一部を覆う。インシュレータ13は、中心軸AXを囲んで略円環状に配置される。インシュレータ13は、複数個の別部材によって構成されていてもよいし、単一の部材によって構成されていてもよい。コイル14は、インシュレータ13を介してステータコア12に導線を巻き付けることによって構成される。
【0025】
図2に示すように、ステータコア12は、略円環状のコアバック121と、複数のティース122とを有する。複数のティース122は、コアバック121から径方向RD内側に向かって突出する。そして、コイル14は、ティース122に導線が巻き付けられることによって構成される。複数のコイル14は、周方向CDに沿って配置される。一例として、ステータコア12は、18スロットを有する。従って、図2の例では、ステータ11は、18個のコイル14を有する。
【0026】
図1に戻って、ロータ15は、モータ100の回転子である。つまり、ロータ15は、中心軸AXを中心として回転する。ロータ15は、回転軸25に接続される。従って、ロータ15が回転すると、回転軸25が回転する。つまり、回転軸25は、ロータ15とともに回転する。ロータ15は、中心軸AXを中心に配置される。ロータ15は、ステータ11の径方向RD内側に配置される。つまり、モータ100は、インナーロータ型のモータである。なお、モータ100は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0027】
具体的には、ロータ15は、ロータコア16と、マグネット17とを有する。マグネット17は、例えば、永久磁石である。例えば、ロータ15は、周方向CDに配列された複数のマグネット17を有していてもよいし、略円環状の単数のマグネット17を有していてもよい。ロータコア16は、例えば、電磁鋼板が軸方向ADに積層した積層鋼板によって構成される。マグネット17は、ロータコア16の径方向RD外面に固定される。つまり、モータ100は、SPM(Surface Permanent Magnet)モータである。なお、マグネット17は、ロータコア16の内部に固定されていてもよい。つまり、モータ100は、いわゆる、IPM(Interior Permanent Magnet)モータであってもよい。マグネット17とステータコア12とは、径方向RDに隙間をあけて対向する。
【0028】
ロータ15は、略円環状の固定部材R2と略円環状のスペーサR11とによって挟み込まれて、軸方向ADに位置決めされる。
【0029】
図2に示すように、ロータ15は、N個のマグネット17を有する。従って、モータ100の極数は「N」である。Nは、2以上の整数である。図2の例では、N=20、である。ロータ15は、第1接続部161を有する。具体的には、ロータコア16は、中心軸AXを中心に配置される。また、ロータコア16は、中心軸AXを囲んで配置され、略円環状である。そして、ロータコア16が、第1接続部161を有する。第1接続部161は、回転軸25に接続する。具体的には、第1接続部161は、周方向CDに連なるN個の第1凹部162を有する。N個の第1凹部162の各々は、径方向RD外側に向かって窪むとともに、軸方向ADに沿って延びる。
【0030】
N個の第1凹部162は、それぞれ、N個のマグネット17に対して径方向RDに対向する。N個のマグネット17の磁界が最適化されるように、N個の第1凹部162の形状が設定される。「最適化された磁界」とは、ステータ11に対してロータ15を、最も円滑に回転させることの可能な磁界のことである。N個の第1凹部162は、ロータコア16の内周面に設けられる。
【0031】
一方、回転軸25は、N個の凸部250を有する。N個の凸部250は、径方向RD外側に向かって突出する。N個の凸部250は、周方向CDに連なる。N個の凸部250は、回転軸25の外周面に設けられる。N個の凸部250は、それぞれ、N個の第1凹部162に嵌る。その結果、ステータコア12が、回転軸25に接続される。つまり、ステータ11が、回転軸25に接続される。なお、凸部250を有する回転軸25と第1凹部162を有するロータコア16とは、スプラインを構成する。
【0032】
図1に戻って、フランジ部18は、ステータ11を保持する。具体的には、フランジ部18は、ステータコア12を保持する。フランジ部18は、中心軸AXを中心に略円環状に配置される。具体的には、フランジ部18は、第1フランジ部19と、第2フランジ部20とを有する。第1フランジ部19は、略円環状である。第2フランジ部20は、略円環状である。第1フランジ部19は、軸方向AD一方側からステータ11を覆う。第2フランジ部20は、軸方向AD他方側からステータ11及びロータ15を覆う。第1フランジ部19と第2フランジ部20とは、ステータ11を軸方向ADに挟むことで、ステータ11を保持する。その結果、フランジ部18にステータ11が固定される。具体的には、フランジ部18にステータコア12が固定される。
【0033】
第1軸受30は、回転軸25の軸方向AD一方端部に配置される。第1軸受30は、ステータ11及びフランジ部18に対して回転可能に回転軸25を支持する。第1軸受30は、例えば、ボールベアリングである。第1軸受30は、内輪31と、複数のボール32と、外輪33とを有する。内輪31は、回転軸25の外周面に固定される。複数のボール32は、内輪31と外輪33との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪33は、第1フランジ部19の径方向RD内周面に固定される。
【0034】
第1軸受30の内輪31とロータ15との間に、略円環状のスペーサR11が配置される。また、内輪31を挟んでスペーサR11の反対側には、略円環状のスペーサR10が配置される。そして、内輪31は、スペーサR10を介して、スペーサR11と固定部材R1とによって挟み込まれて、軸方向ADに位置決めされる。
【0035】
第2軸受35は、回転軸25の軸方向AD他方端部に配置される。第2軸受35は、ステータ11及びフランジ部18に対して回転可能に回転軸25を支持する。第2軸受35は、例えば、ボールベアリングである。第2軸受35は、内輪36と、複数のボール37と、外輪38とを有する。内輪36は、回転軸25の外周面に固定される。複数のボール37は、内輪36と外輪38との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪38は、後述する出力回転体55に固定される。なお、図1に表れていないが、実際には、内輪36は、出力回転体55に対して隙間をあけて離れている。
【0036】
次に、図3及び図4を参照して、減速機200及び回転軸25の詳細を説明する。図3に示すように、波動発生器60は、第2接続部66を有する。具体的には、波動発生器60は、波動軸受61と、非真円カム65とを有する。波動軸受61は、可撓性を有する。波動軸受61は、可撓性外歯歯車50の筒状部51の径方向RD内側に位置する。非真円カム65は、中心軸AXを中心として環状に拡がる。図3の例では、非真円カム65は、略楕円状である。波動軸受61は、非真円カム65の外周面に沿って配置され、略楕円状に撓んでいる。非真円カム65が、第2接続部66を有する。
【0037】
第2接続部66は、回転軸25に接続する。具体的には、第2接続部66は、周方向CDに連なるN個の第2凹部67を有する。N個の第2凹部67の各々は、径方向RD外側に向かって窪むとともに、軸方向ADに沿って延びる。N個の第2凹部67は、非真円カム65の内周面に設けられる。平面視において、第2接続部66の形状は、図2に示す第1接続部161の形状と略同じである。
【0038】
N個の第2凹部67は、それぞれ、図2に示すN個の第1凹部162に対応する。N個の第2凹部67は、それぞれ、N個の第1凹部162に対して軸方向ADに対向する。つまり、第1凹部162と第2凹部67とは、軸方向ADに沿って一直線上に並ぶ。
【0039】
一方、回転軸25のN個の凸部250は、それぞれ、N個の第2凹部67に嵌る。その結果、非真円カム65が、回転軸25に接続される。つまり、波動発生器60が、回転軸25に接続される。回転軸25は、減速機200の入力軸として機能する。なお、凸部250を有する回転軸25と第2凹部67を有する非真円カム65とは、スプラインを構成する。
【0040】
図4は、モータ100の回転軸25を示す斜視図である。図4に示すように、回転軸25において、N個の凸部250は、軸方向ADに沿って延びる。また、N個の凸部250は、周方向CDに間隔をあけて並ぶ。凸部250に第1凹部162(図2)及び第2凹部67(図3)が嵌る限りにおいては、各凸部250は、軸方向ADにおいて分断されていてもよいし、軸方向ADにおいて連続していてもよい。
【0041】
回転軸25は、固定部材配置部251、252、253、254をさらに有する。固定部材配置部251~254の各々は、N個の凸部250を周方向CDに通る。固定部材配置部251~254は、軸方向ADに間隔をあけて配置される。固定部材配置部251~254の各々は、径方向RD内側に向かって窪んでいる。固定部材配置部251、252、253、254には、それぞれ、図1の固定部材R1、R2、R3、R4が配置される。
【0042】
以上、図2図4を参照して説明したように、実施形態1によれば、回転軸25に設けられた凸部250が軸方向ADに沿って延びることで、凸部250がロータ15の第1凹部162と波動発生器60の第2凹部67との双方に嵌る。従って、簡素な構造の回転軸25によって、モータ100の回転力を減速機200に伝達できる。
【0043】
次に、図5図6A、及び、図7を参照して、モータ本体10と減速機200との間のシール構造を説明する。図5は、図1の減速装置SRの一部を拡大して示す縦断面図である。なお、図5では、簡単のため、図1の固定部材R3、R4を省略している。
【0044】
図5に示す減速機200の内部には、グリスが存在する。つまり、減速機200の内部には、グリスが充填されている。例えば、減速機200は、空間SP1、SP2、SP3を有する。そして、空間SP1、SP2、SP3には、グリスが充満している。従って、減速機200のグリスがモータ本体10に侵入することを防止する必要がある。特に実施形態1では、モータ本体10と減速機200とが軸方向ADに近接しているからである。
【0045】
モータ本体10の第2フランジ部20は、減速機200と、モータ本体10のステータ11及びロータ15との間に位置する。第2フランジ部20は、モータ本体10のステータ11及びロータ15に対して軸方向ADに対向する。また、第2フランジ部20は、減速機200の剛性内歯歯車40と可撓性外歯歯車50と波動発生器60とに対して軸方向ADに対向する。
【0046】
具体的には、第2フランジ部20は、第1リング部191と、第2リング部192とを有する。第1リング部191は、略円環状である。第1リング部191は、剛性内歯歯車40に対して軸方向ADに対向する。そして、第1リング部191は、剛性内歯歯車40に対して軸方向ADから固定される。第1リング部191は、軸方向ADから剛性内歯歯車40に接触している。
【0047】
第2リング部192は、第1リング部191よりも径方向RD内側に位置する。第2リング部192は、略円環状の平板部材であり、第1リング部191から、軸方向AD内側に向かって拡がる。第2リング部192は、剛性内歯歯車40、可撓性外歯歯車50、及び、波動発生器60に対して、軸方向ADに対向する。また、第2リング部192は、ステータ11及びロータ15に対して、軸方向ADに対向する。第2リング部192は、ロータ15に対して軸方向ADに離隔している。第2リング部192は、第1リング部191から径方向RD内側に延びる。第2リング部192の先端部は、回転軸25に対して隙間をあけて径方向RDに対向する。
【0048】
減速装置SRは、シール部90をさらに有する。シール部90は、回転軸25の径方向RD外側で、減速機200とモータ本体10との間をシールする。従って、実施形態1によれば、減速機200のグリスがモータ本体10に侵入することを防止できる。
【0049】
図6Aは、シール部90を拡大して示す縦断面図である。つまり、図6は、図5の領域Aを拡大して示している。図6Aに示すように、シール部90は、ラビリンス構造を有する。具体的には、シール部90は、第1ラビリンス部91と、第2ラビリンス部92とを有する。第1ラビリンス部91は、非真円カム65の軸方向AD側面に設けられる。第1ラビリンス部91は、凸凹形状を有する。一方、第2ラビリンス部92は、第2リング部192の径方向RD先端部に設けられる。第2ラビリンス部92は、第1ラビリンス部91に対して軸方向ADに対向する。第2ラビリンス部92は、凸凹形状を有する。
【0050】
第1ラビリンス部91の凸凹形状と第2ラビリンス部92の凸凹形状とが噛み合うことで、減速機200とモータ本体10との間がシールされる。
【0051】
図7は、非真円カム65を示す平面図である。図7に示すように、非真円カム65に設けられる第1ラビリンス部91は、平面視において、中心軸AXを囲む略円環状に設けられる。なお、図示を省略したが、第2ラビリンス部92もまた、平面視において、中心軸AXを囲む略円環状に設けられる。
【0052】
次に、図6B図6Dを参照して、シール部90の他の例を説明する。図6Bは、シール部90の他の例(以下、シール部90A)を拡大して示す縦断面図である。図6Bに示すように、シール部90Aは、オイルシールによって構成される。シール部90Aは、中心軸AXを囲む略円環状である。一方、第2リング部192は、径方向RDの先端部193において、軸方向ADに曲がる。そして、シール部90Aは、非真円カム65の軸方向AD側面と第2リング部192の先端部193との間に配置される。その結果、シール部90Aによって、減速機200とモータ本体10との間がシールされる。
【0053】
図6Cは、シール部90の更に他の例(以下、シール部90B)を拡大して示す縦断面図である。図6Cに示すように、シール部90Bは、Vリングによって構成される。シール部90Aは、中心軸AXを囲む略円環状である。シール部90Bは、非真円カム65の軸方向AD側面と第2リング部192の径方向RDの先端部との間に配置される。その結果、シール部90Bによって、減速機200とモータ本体10との間がシールされる。
【0054】
図6Dは、シール部90の更に他の例(以下、シール部90C)を拡大して示す縦断面図である。図6Dに示すように、シール部90Cは、Oリングによって構成される。シール部90Cは、中心軸AXを囲む略円環状である。シール部90Cは、非真円カム65の軸方向AD側面と第2リング部192の径方向RDの先端部との間に配置される。その結果、シール部90Cによって、減速機200とモータ本体10との間がシールされる。
【0055】
なお、減速機200とモータ本体10との間をシールできる限りにおいては、シール部90、90A~90Cの構成は特に限定されない。また、図6A図6Dでは、簡単のため、図1の固定部材R3を省略している。
【0056】
次に、図1及び図3を参照して、減速機200の詳細を説明する。図1及び図3に示す減速機200は、剛性内歯歯車40と可撓性外歯歯車50との差動を利用して、入力された回転運動を減速する装置である。減速機200を有する減速装置SRは、例えば、自転車、小型ロボットの関節、アシストスーツ、ターンテーブル、工作機械の割出盤、車椅子、又は、無人搬送車に組み込まれる。ただし、減速装置SRが組み込まれる対象は、特に限定されない。
【0057】
図1及び図3に示すように、減速機200は、出力回転体55と、ハウジング70と、軸受80と、シール部材85と、固定部材R3と、固定部材R4とをさらに有する。また、減速機200の入力軸は、モータ100の回転軸25である。減速機200の出力軸は、出力回転体55である。出力回転体55は、例えば、ブッシュである。
【0058】
剛性内歯歯車40は、中心軸AXを中心として略円環状に拡がる部材である。剛性内歯歯車40の剛性は、可撓性外歯歯車50の筒状部51の剛性よりも高い。従って、剛性内歯歯車40は、実質的に剛体とみなすことができる。剛性内歯歯車40は、内周面に複数の内歯41を有する。複数の内歯41は、周方向CDに沿って、一定のピッチで配列される。
【0059】
可撓性外歯歯車50は、筒状部51に加えて、平板部52をさらに有する。筒状部51は、中心軸AXを中心として軸方向ADに筒状に延びる部位である。また、筒状部51は、可撓性を有し、径方向RDに撓み可能な円筒状の部分である。筒状部51の軸方向AD一端部は、剛性内歯歯車40の径方向RD内側に配置される。また、平板部52は、筒状部51よりも撓み難い平板状の部分である。平板部52は、筒状部51の軸方向AD他端部から径方向RD内側に拡がる部位である。
【0060】
可撓性外歯歯車50は、一端部付近の外周面に複数の外歯511を有する。複数の外歯511は、周方向CDに沿って、一定のピッチで配列される。平板部52には、減速後の動力を取り出すための出力軸である出力回転体55が固定される。
【0061】
波動発生器60において、非真円カム65は、中心軸AXを中心として環状に拡がる部材である。非真円カム65は、入力軸としての回転軸25に接続される。従って、非真円カム65は、回転軸25の回転によって、中心軸AXを中心として減速前の回転数で回転する。実施形態1では、非真円カム65は、楕円形のカムプロフィールを有する。換言すれば、非真円カム65は、周方向CDの位置によって異なる外径を有する。更に換言すれば、非真円カム65の外縁は、略楕円状である。
【0062】
非真円カム65は、軸方向ADにおいて、固定部材R3と固定部材R4とに挟まれる。その結果、非真円カム65が軸方向ADに位置決めされる。
【0063】
波動軸受61は、可撓性外歯歯車50における筒状部51の径方向RD内側に位置する可撓性の軸受である。波動軸受61は略環状である。波動軸受61は、例えば、ボールベアリングである。波動軸受61は、内輪62と、複数のボール63と、弾性変形可能な外輪64とを有する。内輪62は、非真円カム65の外周面に固定される。複数のボール63は、内輪62と外輪64との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪64は、回転される非真円カム65のカムプロフィールを反映するように、内輪62およびボール63を介して弾性変形(撓み変形)する。また、外輪64は、可撓性外歯歯車50における筒状部51の外歯511を有する部位の内周面に接触する。具体的には、外輪64は、筒状部51の外歯511を有する部位の内周面に固定される。波動発生器60は、周方向CDの位置によって異なる外径を有しつつ、剛性内歯歯車40の径方向RD内側において、中心軸AXを中心として減速前の回転数で回転する。
【0064】
出力回転体55は、第2軸受35の外輪38に固定される。具体的には、出力回転体55は、筒状胴部551と、軸受保持部552とを有する。軸受保持部552は、第2軸受35を保持する。具体的には、第2軸受35の外輪38が軸受保持部552の径方向RD内周面に固定される。筒状胴部551は、中心軸AXを周方向CDに囲む略円筒状である。筒状胴部551は、軸方向ADに沿って延びる。
【0065】
ハウジング70は、可撓性外歯歯車50の筒状部51の一部及び平板部52を収容する。ハウジング70は、軸方向ADの一端において、剛性内歯歯車40に固定される。また、ハウジング70の軸方向ADの他端において、ハウジング70の径方向RD内面が、軸受80及びシール部材85を介して、筒状胴部551の外周面と対向する。
【0066】
具体的には、ハウジング70は、略円筒状の第1円筒部71と、略円環状の平板部72と、略円筒状の第2円筒部73とを有する。第1円筒部71の軸方向ADの一端部は、剛性内歯歯車40に対して軸方向ADに対向し、剛性内歯歯車40に固定される。第1円筒部71は、中心軸AXを囲み、軸方向ADに沿って延びる。平板部72は、第1円筒部71の軸方向ADの他端部から中心軸AXに向かって径方向RDに拡がる。第2円筒部73は、平板部72の径方向RD内側端部から軸方向ADに延びる。第2円筒部73は、中心軸AXを囲み、軸方向ADに沿って延びる。
【0067】
シール部材85は、略円環状である。シール部材85は、第2円筒部73の内周面と筒状胴部551の外周面との間に配置される。そして、シール部材85は、第2円筒部73の内周面と筒状胴部551の外周面との間をシールする。シール部材85は、例えば、オイルシールである。シール部材85によって、減速機200の内部に存在するグリスが外部に漏れることを防止できる。
【0068】
軸受80は、略円環状である。軸受80は、第2円筒部73の内周面と筒状胴部551の外周面との間に配置される。軸受80は、シール部材85よりも、可撓性外歯歯車50に近い位置に配置される。軸受80は、例えば、ボールベアリングである。軸受80は、内輪81と、複数のボール82と、外輪83とを有する。内輪81は、筒状胴部551の外周面に固定される。複数のボール82は、内輪81と外輪83との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪83は、第2円筒部73の径方向RD内周面に固定される。
【0069】
以上のような構成の減速機200において、モータ100の回転軸25が減速前の回転数で回転すると、非真円カム65が、減速前の回転速度で回転する。つまり、非真円カム65は、回転軸25の回転速度と同じ回転速度で回転する。そして、非真円カム65の回転に伴って、波動軸受61を介して、可撓性外歯歯車50における筒状部51の外歯511を有する部位の内周面が押されることにより、筒状部51が楕円状に撓み変形する。さらに、筒状部51は、非真円カム65がなす楕円の長軸の両端の2箇所の径方向RD外側付近において、一端部へ向かうにつれて拡径する方向(他端部へ向かうにつれて縮径する方向)に傾斜する。その結果、楕円の長軸の両端の2箇所の径方向RD外側付近において、外歯511と内歯41とが噛み合う。
【0070】
非真円カム65が回転すると、非真円カム65がなす楕円の長軸の両端の位置が周方向CDに移動するので、外歯511と内歯41との噛み合い部も周方向CDに移動する。ここで、剛性内歯歯車40の内歯41の歯数と、可撓性外歯歯車50の外歯511の歯数とは、僅かに相違する。このため、非真円カム65の1回転ごとに、内歯41と外歯511との噛み合い部が僅かに変化する。その結果、剛性内歯歯車40に対して可撓性外歯歯車50および出力回転体55が、減速された回転数で回転する。つまり、可撓性外歯歯車50および出力回転体55は、可撓性外歯歯車50の外歯511と剛性内歯歯車40の内歯41との噛み合い部を周方向CDに移動させながら、外歯511と内歯41との歯数の違いによって剛性内歯歯車40対して相対回転する。
【0071】
なお、図1及び図3を参照して説明した減速機200において、「可撓性部材」の一例として可撓性外歯歯車50を説明し、「環状部材」の一例として剛性内歯歯車40を説明した。ただし、第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換できる限りにおいては、「可撓性部材」及び「環状部材」は、特に限定されない。例えば、減速機200がトラクション(摩擦)を利用した減速を行う場合、「可撓性部材」は、可撓性を有するが、外歯を有していなくてもよく、「環状部材」は、弾性を有するが、内歯を有していなくてもよい。この場合、「可撓性部材」の外周面は、「環状部材」の内周面と潤滑油の油膜を介して接触する。
【0072】
(実施形態2)
図8及び図9を参照して、本発明の実施形態2に係る自転車300を説明する。実施形態2に係る自転車300は、図1を参照して説明した減速装置SRを搭載する。従って、以下では、減速装置SRの説明は適宜省略する。
【0073】
図8は、実施形態2に係る自転車300を示す図である。図8に示すように、自転車300は、前輪310と、後輪320と、ペダル330と、クランクアーム340と、ローラチェーン350と、減速装置SRとを有する。ペダル330は、自転車300の両側面のそれぞれに、配置される。クランクアーム340は、自転車300の両側面のそれぞれに、配置される。ペダル330は、クランクアーム340に回転自在に取り付けられる。以下では、ペダル330が回転する方向のうちの一方を「順方向」とする。ユーザが、ペダル130を順方向にこぐと、ペダル330の回転運動が、ローラチェーン350を介して後輪320へ伝達される。その結果、後輪320が回転し、後輪320及び前輪310の回転により、自転車300が前方へ進行する。
【0074】
また、減速装置SRは、自転車300の両側面に配置されたペダル330の間に配置される。また、減速装置SRは、ローラチェーン350を覆うチェーンカバー351の内部に配置される。例えば、発進時又は上り坂を走行する時、ペダル330の負荷が大きい場合には、減速装置SRが、ペダル330に順方向の回転駆動力を供給する。つまり、減速装置SRは、電動アシスト装置として機能する。従って、ユーザがペダル330をこぐ力が軽減される。その結果、ユーザは、自転車300を楽に運転することができる。
【0075】
特に、実施形態2によれば、自転車300が、軸方向ADの長さを比較的小さくできる減速装置SRを搭載しているため、自転車300の重量の増加を抑制できる。また、減速装置SRの軸方向ADの長さが比較的小さいので、減速装置SRが邪魔にならず、ユーザがペダル330をこぎ易い。
【0076】
図9は、自転車300に搭載された減速装置SRを示す縦断面図である。図9に示すように、自転車300は、クランクシャフト360と、スプロケット370と、一方向クラッチ380と、軸受385と、軸受390とをさらに有する。なお、図面を見やすくするために、クランクシャフト360は白色で示している。
【0077】
クランクシャフト360は、中心軸AXに沿って延びる略円柱状の部材である。クランクシャフト360は、減速装置SRの回転軸25及び出力回転体55を軸方向ADに貫通する。また、クランクシャフト360は、ペダル330(図8)からの踏力によって駆動される。
【0078】
クランクシャフト360の軸方向ADの両端は、減速装置SRの外側へ突出する。クランクシャフト360の軸方向ADの両端には、それぞれ、クランクアーム340が固定される。自転車300のユーザがクランクアーム340に接続されたペダル330(図8)をこぐと、踏力(人力)により、ペダル330、クランクアーム340、及び、クランクシャフト360が、中心軸AXを中心として回転する。
【0079】
スプロケット370は、減速機200の出力軸である出力回転体55に接続される。具体的には、スプロケット370は、減速機200の出力軸である出力回転体55に固定される。スプロケット370は軸方向ADに略直交する。スプロケット370は、一方向クラッチ380及び出力回転体55を介して伝達されるクランクシャフト360の回転を、ローラチェーン350へ伝達する。スプロケット370は、中心軸AXを中心とする略円板状である。スプロケット370は、外周部に複数の外歯を有する。スプロケット370は、複数の外歯により、自転車300のローラチェーン350と係合する。ペダル330からの踏力によりクランクシャフト360が回転すると、一方向クラッチ380及び出力回転体55を介してスプロケット370が、中心軸AXを中心として回転する。その結果、スプロケット370と後輪320との間で、ローラチェーン350が回動する。
【0080】
回転軸25の内周面には、軸受385及び軸受390が配置される。軸受385及び軸受390は、例えば、ボールベアリングである。軸受385及び軸受390は、軸方向ADに沿って間隔をあけて並んでいる。軸受385及び軸受390は、クランクシャフト360を回転可能に支持する。軸受385は、内輪386と、複数のボール387と、外輪388とを有する。内輪386は、クランクシャフト360の外周面に固定される。複数のボール387は、内輪386と外輪388との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪388は、回転軸25の内周面に固定される。軸受390は、内輪391と、複数のボール392と、外輪393とを有する。内輪391は、クランクシャフト360の外周面に固定される。複数のボール392は、内輪391と外輪393との間に介在し、周方向CDに沿って配列される。外輪393は、回転軸25の内周面に固定される。
【0081】
一方向クラッチ380は、クランクシャフト360に対する出力回転体55の相対回転を、一方向にのみ許容する機構である。一方向クラッチ380は、径方向RDにおいて、出力回転体55とクランクシャフト360との間に配置される。具体的には、一方向クラッチ380は、径方向RDにおいて、出力回転体55の内周面とクランクシャフト360の外周面との間に配置される。
【0082】
クランクシャフト360の順方向の回転速度が、出力回転体55の順方向の回転速度よりも大きい場合には、一方向クラッチ380は、クランクシャフト360の回転を許容する。従って、自転車300のユーザは、減速装置SRのモータ100が駆動していないときには、モータ100の抵抗を受けることなく、ペダル330を介してクランクシャフト360を回転させることができる。この場合、スプロケット370は、クランクシャフト360の回転力のみによって回転する。
【0083】
ただし、一方向クラッチ380は、出力回転体55の順方向の回転速度が、クランクシャフト360の順方向の回転速度よりも大きくなることを禁止する。従って、モータ100が駆動して、出力回転体55の順方向の回転速度が、クランクシャフト360の順方向の回転速度に追いつくと、クランクシャフト360は、出力回転体55と同じ回転速度で、順方向に回転する。
【0084】
自転車300は、コントローラ400と、トルクセンサ410とをさらに有する。トルクセンサ410は、クランクシャフト360の歪みを非接触で検出し、歪み量をトルク値に換算する。トルクセンサ410は、クランクシャフト360のトルク値を示す検出信号を、コントローラ400へ出力する。
【0085】
コントローラ400は、ステータ11のコイル14に駆動電流を供給するための電気回路を実装する。コントローラ400は、コイル14、トルクセンサ410、及び、バッテリー(不図示)と、電気的に接続されている。コントローラ400は、マイクロコンピュータを有する。マイクロコンピュータは、プロセッサ及びメモリを有する。
【0086】
コントローラ400は、トルクセンサ410から、クランクシャフト360のトルクを示す検出信号を受信する。また、コントローラ400のメモリには、予め設定されたトルクの閾値が記憶されている。コントローラ400は、トルクセンサ410から受信した検出信号が示すトルク値が、閾値未満の場合には、コイル14に駆動電流を供給しない。従って、モータ100は駆動しない。一方、コントローラ400は、トルクセンサ410から受信した検出信号が示すトルク値が、閾値以上になると、バッテリーから供給される電力により、トルク値に応じた駆動電流を生成して、コイル14へ供給する。その結果、モータ100が駆動する。
【0087】
モータ100が駆動され、かつ、出力回転体55の順方向の回転速度がクランクシャフト360の順方向の回転速度よりも小さい場合には、モータ100の回転力に基づく減速された回転力が出力回転体55に伝達される。その結果、スプロケット370は、モータ100の回転力に基づく減速された回転力と、ユーザの踏力によるクランクシャフト360の回転力とによって、回転する。
【0088】
一方、モータ100が駆動され、かつ、出力回転体55の順方向の回転速度がクランクシャフト360の順方向の回転速度よりも大きい場合には、一方向クラッチ380の作用によって、スプロケット370は、ユーザの踏力によるクランクシャフト360の回転力のみによって回転する。
【0089】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。例えば、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば、減速装置、及び、自転車に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
10 モータ本体
15 ロータ
25 回転軸
30 第1軸受
35 第2軸受
40 剛性内歯歯車(環状部材)
50 可撓性外歯歯車(可撓性部材)
60 波動発生器
66 第2接続部
67 第2凹部
90 シール部
100 モータ
161 第1接続部
162 第1凹部
200 減速機
250 凸部
300 自転車
330 ペダル
360 クランクシャフト
370 スプロケット
SR 減速装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9