(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116693
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】制限表面干渉チェックシステム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/14 20060101AFI20220803BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220803BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220803BHJP
G06T 7/521 20170101ALI20220803BHJP
【FI】
G01B11/14 Z
G09B29/00 Z
G06T7/00 600
G06T7/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012999
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】591139633
【氏名又は名称】東急株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521044567
【氏名又は名称】グローバル・インフラ・マネジメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081455
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100170966
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 正紀
(72)【発明者】
【氏名】森 友峰
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 祐人
(72)【発明者】
【氏名】服部 尚道
(72)【発明者】
【氏名】舩元 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】清水 実
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳文
(72)【発明者】
【氏名】得能 智昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳子
(72)【発明者】
【氏名】小田原 匠
【テーマコード(参考)】
2C032
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC27
2F065AA04
2F065AA24
2F065AA53
2F065BB15
2F065CC14
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF61
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065LL62
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065RR06
2F065UU05
5L096AA02
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA03
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA69
5L096FA70
(57)【要約】
【課題】滑走路や空港周辺の建造物等の3次元点群データから実測した高さを利用して制限表面に干渉するか否かを容易にチェックすることが可能な制限表面干渉チェックシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】対象物の点群データを取得する測定装置と、測定装置が取得した点群データに基づいて対象物の高さ情報を算出するデータ生成装置と、を備え、データ生成装置は、地図データと、該地図上に表される各地点の標高データと、所定の空港ごとに規定されている制限表面データとを記憶する記憶手段と、地図データと制限表面データとに基づいて表示画面上に地図と制限表面とを表示させる表示手段と、地図上から選択された地点にある対象物の点群データから該対象物の高さを取得し、対象物の位置する標高と高さとを合算した値と、制限表面との高さとを比較して、合算した値が前記制限表面に干渉しているかを判定する干渉判定手段と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間座標情報を有する点群データを用いて空港及び空港周辺の管理事業における対象物が制限表面に干渉するか否かを判定する制限表面干渉チェックシステムにおいて、
前記対象物の点群データを取得する測定装置と、
前記測定装置が取得した点群データに基づいて前記対象物の高さ情報を算出するデータ生成装置と、を備え、
前記データ生成装置は、地図データと、該地図上に表される各地点の標高データと、所定の空港ごとに規定されている制限表面データとを記憶する記憶手段と、
前記地図データと前記制限表面データとに基づいて表示画面上に地図と制限表面とを表示させる表示手段と、
地図上から選択された地点にある対象物の点群データから該対象物の高さを取得し、前記対象物の位置する標高と高さとを合算した値と、前記制限表面との高さとを比較して、合算した値が前記制限表面に干渉しているかを判定する干渉判定手段と、
を有することを特徴とする制限表面干渉チェックシステム。
【請求項2】
前記測定装置は、設置物や建造物、樹木、地形といった滑走路周辺及び空港周辺に存在する有体物の点群データを取得することを特徴とする請求項1記載の制限表面干渉チェックシステム。
【請求項3】
前記表示手段は、地図上に表示されている空港の滑走路に合わせて予め規定されている制限表面データを重畳するようにして表示させることを特徴とする請求項1記載の制限表面干渉チェックシステム。
【請求項4】
前記データ生成装置は、前記干渉判定手段が前記対象物の高さと制限表面の高さとを比較した結果を格納することを特徴とする請求項1記載の制限表面干渉チェックシステム。
【請求項5】
前記干渉判定手段は、前記対象物の高さと前記制限表面の高さとを比較した際に、前記対象物の高さが前記制限表面の高さに対して余裕高がある場合には余裕高を算出し、干渉している場合にはどれくらいの高さで干渉しているかを算出することを特徴とする請求項1記載の制限表面干渉チェックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港周辺の建造物等が制限表面に干渉するか否かを判定するための制限表面干渉チェックシステム及びチェック方法に関し、特に、予め取得した滑走路や空港周辺の建造物等の点群データから算出した建造物等の高さを利用して制限表面に干渉するか否かを判定する制限表面干渉チェックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港周辺には、航空機の航行空間の安全を確保するために空間の制限が設けられている。このような空間の制限は、制限表面と呼ばれ、空港の近辺に高い建造物などがあると航空機の安全な航空の妨げになるため、空港近辺でそのような建造物の建築などを禁止することを目的として定められたものであり、制限表面に干渉する高さの建造物などの設置は、航空法により禁止されている。
【0003】
ところで、このような空港の制限表面と空港周辺の建造物等の干渉をチェックする発明が特許文献1に開示されている。
特許文献1の発明には、制限表面から算出した二次表面と、DTMデータ又はDSMデータと、から調査範囲を限定し、この調査範囲内でのみ、現地測量などによる別途建造物の高さの調査や、その高さ等を示すDSMデータの高さ情報がわかれば、DSMデータが示す高さと制限表面とから航空障害物を判定することができる航空障害物抽出装置などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、建造物の高さ調査を現地測量や航空写真などのデジタル写真画像からステレオマッチング処理によって行っているものの、このような方法では手間がかかるほか誤差が発生して正確な数値を算出できないといった問題がある。
【0006】
本発明係る問題に鑑みてなされたものであって、滑走路や空港周辺の建造物等の3次元点群データから実測した高さを利用して制限表面に干渉するか否かを容易にチェックすることが可能な制限表面干渉チェックシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の制限表面干渉チェックシステムは、空間座標情報を有する点群データを用いて空港及び空港周辺の管理事業における対象物が制限表面に干渉するか否かを判定する制限表面干渉チェックシステムにおいて、前記対象物の点群データを取得する測定装置と、前記測定装置が取得した点群データに基づいて前記対象物の高さ情報を算出するデータ生成装置と、を備え、前記データ生成装置は、地図データと、該地図上に表される各地点の標高データと、所定の空港ごとに規定されている制限表面データとを記憶する記憶手段と、前記地図データと前記制限表面データとに基づいて表示画面上に地図と制限表面とを表示させる表示手段と、地図上から選択された地点にある対象物の点群データから該対象物の高さを取得し、前記対象物の位置する標高と高さとを合算した値と、前記制限表面との高さとを比較して、合算した値が前記制限表面に干渉しているかを判定する干渉判定手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記測定装置は、設置物や建造物、樹木、地形といった滑走路周辺及び空港周辺に存在する有体物の点群データを取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記表示手段は、地図上に表示されている空港の滑走路に合わせて予め規定されている制限表面データを重畳するようにして表示させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記データ生成装置は、前記干渉判定手段が前記対象物の高さと制限表面の高さとを比較した結果を格納することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記干渉判定手段は、前記対象物の高さと前記制限表面の高さとを比較した際に、前記対象物の高さが前記制限表面の高さに対して余裕高がある場合には余裕高を算出し、干渉している場合にはどれくらいの高さで干渉しているかを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め取得した滑走路や空港周辺の設置物や建造物、樹木、地形などの点群データは、実測値に基づいており干渉チェックする対象物の高さを正確に算出することが可能である。
そして、算出された高さと標高を合算することにより存在する対象物が制限表面に干渉しているかの判定を行うことができることから空港管理事業の業務の軽減を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における制限表面干渉チェックシステムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における測定車両の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における測定車両の外観を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるデータ生成装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態における情報格納部の構成を示す図である。
【
図6】
図6(a)は制限表面モデルの概念を説明するための図であり、
図6(b)は、制限表面の高さの計算方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態における干渉チェックの判定結果を示した図である。
【
図8】本発明の実施形態における点群データの一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態における点群データの画像表示例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態における画像データの一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態における画像表示例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態における空間座標を平面に投影し平面座標を求めることを説明するための図である。
【
図13】本発明の実施形態における重畳画像データの一例を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態におけるカラー点群データの一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態における対象物が制限表面モデルに干渉するかの判定を行う動作を示したフローチャートである。
【
図16】本発明の実施形態における干渉チェックにおける表示例を示した図である。
【
図17】本発明の実施形態における干渉チェックにおける表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照して、本実施形態に係る制限表面干渉チェックシステムについて説明する。
図1は、制限表面干渉チェックシステムの構成を示した図である。
図示するように、制限表面干渉チェックシステムは、測定車両10と、データ生成装置20と、がインターネット等1を介して接続して構成されている。
測定車両10は、空港の滑走路や空港周辺の道路を走行しながら滑走路や空港周辺の設置物や建造物、地形などを測定し、データ生成装置20は、測定車両10によって測定されたデータに基づいて各種データを生成するほか、生成したデータと制限表面モデルとの干渉チェックを行う。
なお、データ生成装置20は、インターネット等1に接続することなく干渉チェックを行うことは可能である。
【0015】
(1)測定車両10の構成
測定車両は、滑走路を走行中または停車中に、滑走路の周囲の地形や建造物、設置物について点群データを取得するとともに、撮影を行って画像データを取得する装置を搭載した車両である。
図2は、本発明の実施形態における測定車両10の構成を示す図であり、
図3は、その測定車両10の外観を示す図である。
図2及び
図3に示すように、測定車両10は、測定車両10における点群データおよび画像データの取得動作全体を制御する制御部11と、取得した点群データ及び画像データなどを格納する情報格納部12と、測定車両10の走行中又は停車中に道路周囲にレーザを照射するとともに、その反射光を受光して点群データを取得するレーザスキャナ13と、測定車両10の現在位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)14と、測定車両10の車体の姿勢を示す情報を取得するIMU(Inertial Measurement Unit)15と、計時を行う計時部16と、道路及びその周囲の風景を撮影するカメラ17と、測定車両10の走行距離を計測するオドメータ18と、ネットワーク又は情報記録媒体と接続して情報の入出力を行う情報入出力部19とを有して構成される。
【0016】
本実施の形態において、測定車両10は、いわゆるモービルマッピングシステムの原理を利用して走行中又は停車中に道路及びその周囲の点群データを取得するものである。
測定車両10が滑走路を走行中又は停車中、レーザスキャナ13は、滑走路周囲の対象物(建築物や設置物、地形を含む)にレーザを発射し、その反射光を受光する。このとき、レーザスキャナ13は、発射時・受光時の時刻を計時部16から取得するとともに、発射方向(角度)を検出して点群データを取得する。
【0017】
また、情報格納部12にはレーザスキャナ13の測定車両10の車体との相対的な位置・照射角度・受光角度の関係等の情報が格納されており、測定車両10の現在位置に基づいて、レーザスキャナ13の現在位置及び姿勢等が特定可能に構成されている。
【0018】
カメラ17は、上記レーザスキャナ13による点群データの取得と同時に、滑走路周囲の風景等をカラーで撮影し、画像データを取得する。
また、情報格納部12にはカメラ17の撮影角度、画角、測定車両10の車体との相対的な位置・角度の関係等の情報が格納されており、測定車両10の現在位置に基づいて、カメラ17の現在位置及び撮影角度(姿勢)等が特定可能に構成されている。
【0019】
GPS14及びオドメータ18は、測定車両10の車体の現在位置を計測する。
IMU15は、ジャイロセンサと加速度センサとで構成され、測定車両10の車体の姿勢を計測する。ジャイロセンサは測定車両10の3軸方向xyzそれぞれの角速度を検出し、加速度センサは測定車両10の3軸方向xyzそれぞれの加速度を検出する。
IMU15は、測定車両10の3軸方向xyzそれぞれの角速度と加速度とを示すデータを慣性データとして生成する。慣性データには、計時部16から取得した検出時刻(取得時刻)ごとに角速度と加速度とが設定されている。
【0020】
上記で取得された点群データ及び画像データは、情報格納部12に格納される。
格納後、情報入出力部19により上記点群データ及び画像データはデータ生成装置20に出力される。
【0021】
(2)データ生成装置20の構成
図4は、本発明の実施の形態におけるデータ生成装置20の構成を示す図であり、
図5は、情報格納部が格納するデータベースを示した図である。
図示するように、データ生成装置20は、空港管理事業者等により操作されるPC等の情報処理装置であって、上述した測定車両10により取得された点群データ及び画像データに基づいて、後述するカラー点群データ及び重畳画像データを生成するほか、生成したカラー点群データ及び重畳画像データを利用して各空港の滑走路に設定されている制限表面モデルと比較して任意の地点における構造物や樹木、地形などが制限表面モデルに干渉しているか否かを判定する。
【0022】
データ生成装置20は、CPU等から構成されたデータ生成装置20全体の動作を制御する制御部21と、入力した情報やネットワークを介して受信した情報等を格納する情報格納部22と、測定車両10から取得した重畳画像データやカラー点群データを生成する情報処理部23と、情報処理部23で生成したデータと制限表面モデルとを比較して任意の地点における干渉チェックを行う干渉チェック部24と、ネットワークを介して情報の送受信を行う通信部25と、ディスプレイ等から構成され情報を画面表示する表示部26と、キーやマウス等から構成され情報の入力等を行う操作部27とを有して構成される。
【0023】
なお、データ生成装置20は、いわゆるサーバ装置であって、操作及び表示等は、データ生成装置20にネットワークを介して接続された端末により行われるよう構成されてもよい。
【0024】
また、
図5に示すように、情報格納部22は、地図データベース22aと、点群データベース22bと、制限表面モデルデータベース22cと、物件データベース22dとを格納している。
地図データベース22aは、地図データと標高データを格納している。制限表面モデルデータベース22cは、各空港の滑走路に設定されている制限表面モデルを格納している。点群データベース22bは、測定車両10によって取得した点群データ及び画像データを格納する。
【0025】
制限表面モデルデータベース22cには、
図6(a),
図6(b)に示すような制限表面モデルが格納されている。
この制限表面モデルは、各空港の滑走路ごとに設定されている。
図6(a)に示すように、制限表面には、基本的に滑走路を中心に放射状に規定され、一般的に、滑走路の高さ近傍に規定された内側水平表面と、航空機の離着陸軌跡を考慮して規定された円錐表面と、円錐表面の外側に所定距離にわたり規定された外側水平表面と、が含まれている。また、滑走路の方向においてはさらに進入表面、転移表面などを含む。
【0026】
このような制限表面は、空港ごとに規定されるものであり、制限表面ごと(水平表面、円錐表面、外側水平表面ごとに)その高さ及び対象範囲(上方から見た平面的な範囲であり、位置情報によって特定される)が異なる。なお、制限表面として水平表面及び進入表面のみの空港も存在する。
【0027】
また、
図6(b)は、各制限表面の高さを示す図である。
図示するように、H1は水平表面の高さを、H2は円錐表面の高さを、H3は外側水平表面の高さを、それぞれ示している。また、図中のh0は標点高(平均海面から標点までの高さ)を、hiは標点から水平表面までの高さと、dsは標点から対象点(物件)までの直線距離を、riが水平表面の半径を、icが円錐表面の勾配(傾き)を、それぞれ示している。
【0028】
物件データベース22dは、干渉チェックを行った対象物件と制限表面モデルとの干渉チェックの結果を格納する。
図7は、例として、成田空港の滑走路Aに規定されている制限正面モデルと干渉チェックを行う対象物件との比較結果を示したものである。
図示するように、干渉チェックを行った日付と、干渉チェックを行った対象物件の名称と、対象物件の位置情報(座標点)と、物件の地表面からの高さ(m)と、対象物件の制限表面モデル内での存在位置と、干渉チェックの判定結果、余裕高を示す。
【0029】
<動作>
(1)点群データの取得
測定車両10の走行中又は停車中に、レーザスキャナ13は、滑走路周囲にレーザを照射する。このとき、レーザの光軸は仰俯角及び方位角を変えることにより垂直方向及び水平方向に走査され、走査範囲内にて微小角度ごとにレーザパルスが発射される。そして、レーザスキャナ13は、その発射したレーザの反射光を受光する。
また、制御部11は、このレーザの発射時刻及び対象物の反射光の受光時刻を計時部16から取得し、このレーザの発射から反射光を受光するまでの時間に基づいてレーザスキャナ13と対象物との間の距離を計測する。
さらに、レーザスキャナ13は、受光した反射光の光強度を測定する。
【0030】
また、測定車両10の走行中又は停車中には、レーザスキャナ13からレーザの発射方向の情報、GPS14又はオドメータ18により測定車両10の現在位置情報、IMU15により測定車両10の車体の姿勢を示す情報がそれぞれ取得される。
これら各情報は、計時部16により計時される時刻情報とそれぞれ対応付けられ、情報格納部12に格納される。
【0031】
レーザスキャナ13の位置・姿勢は、測定車両10の位置・姿勢と一定の関係にあるから、制御部11は、測定車両10の位置・姿勢及びレーザの発射方向の情報に基づいてレーザスキャナ13の位置・姿勢を求める。
制御部11は、上記レーザスキャナ13と対象物との間の距離、レーザスキャナ13の位置・姿勢を示す情報といった各情報に基づいて、レーザパルスを反射した対象物を構成する各座標点の空間座標(三次元座標)を表す点群データを算出する。
例えば、上記各座標点の座標の「1」が「1m」を示すといったように、座標は実際の距離と変換可能な数値であるものとする。
【0032】
なお、測定車両10は滑走路のみならず、滑走路の周辺の道路や空港周辺の道路を走行して点群データを取得してもよい。
【0033】
図8は、本発明の実施形態における点群データの一例を示す図である。
図示するように、情報格納部12には、点群データとして、測定した各座標点の空間座標(X,Y,Z)と、その受光した反射光の光強度とがそれぞれ対応付けられて格納されている。
図9は、本発明の実施形態における点群データの画像表示例を示す図である。
図示するように、滑走路及び滑走路周辺の地形を点群データの各座標点(X,Y,Z)の集合により画像を表す。
なお、図示しないが、滑走路の周囲の設置物やターミナルビル、管制塔、空港周辺のホテルなど建造物についても点群データの集合により画像を表すことは可能である。
【0034】
(2)画像データの取得
測定車両10は、滑走路上を走行中又は停車中に、カメラ17で滑走路周囲を撮影し、画像データ(カラー)を取得する。
制御部11は、その画像データとともに、その撮影した時刻を計時部16から取得し、これらを対応付けて情報格納部12に格納する。
また、制御部11は、カメラ17の位置・姿勢は、測定車両10の位置・姿勢と一定の関係にあることから、測定車両10の位置・姿勢の情報に基づいて、上記画像撮影時のカメラ17の位置・姿勢を求める。
【0035】
図10は、本発明の実施の形態における画像データの一例を示す図である。
図の例では、撮影された画像データ(撮影画像)を、撮影時のカメラ17の位置・姿勢に対応付けられて情報格納部12に格納されている。
図11は、本発明の実施形態における画像データの画像表示例を示す図である。
図示するように、画像データは、通常のカメラ等で撮影された静止画又は動画を表し、上記と同様に滑走路と地形のみならず、滑走路の周囲の設置物やターミナルビル、管制塔、空港周辺のホテル等の建築物についても静止画や動画で表すことは可能である。
【0036】
(3)重畳画像データの生成
上記のように、測定車両10から点群データ及び画像データを取得した後、データ生成装置20は、これら点群データ及び画像データを、ネットワークを介して、又は情報記録媒体を介して測定車両10から取得する。
データ生成装置20の情報処理部23は、これら取得したデータに基づいて、画像データに点群データを重畳したデータである重畳画像データを生成する。
【0037】
情報処理部23は、画像データに含まれる撮影画像及び撮影時のカメラ17の位置・姿勢・画角に基づいて、撮影画像の視野内にある点群データの各座標点(X,Y,Z)を抽出する。
図12は、本発明の実施形態における空間座標を平面に投影し平面座標を求めることを説明するための図である。
図示するように、データ生成装置20は、抽出した各座標点(X,Y,Z)を視点の座標を(Px,Py,Pz)としたときに、撮影画像の座標系(投影座標点)(x,y)に投影した座標を求める。
【0038】
このように、点群データにおける各座標点(X,Y,Z)を、撮影画像の座標系(x,y)に投影した座標を求めたことから、各座標点(X,Y,Z)は、撮影画像に投影された投影座標点(x,y)と対応付けられる。
【0039】
情報処理部23は、これを利用して、撮影画像上の各投影座標点(x,y)に対して、これに対応する各座標点の座標(X,Y,Z)を重畳した画像データ(重畳画像データ)を作成することができる。
【0040】
図13、14は、本実施形態における重畳画像データの一例を示す図である。
図示するように、画像データ(撮影画像)と、その画像データ(撮影画像)の各投影座標点(x,y)に色データ(RGB)と各座標点の座標(X,Y,Z)とが対応付けられてデータ生成装置20に格納されている。
また、データ生成装置20は、各重畳画像データを、撮影画像ごとに管理することが可能であり、各重畳画像データに点検対象物の名称(例えば、滑走路等)を入力し、対応付けて格納することにより、操作者は、調べたい点検対象物の形状や現況等を容易かつ迅速に検索することが可能となる。
【0041】
また、空間座標を平面に投影する際、視点の座標を変更することにより、あらゆる角度から見た任意の表示倍率の重畳画像データの画像を生成することができる。例えば、運転者の視点からの画像を生成することもできるし、垂直方向上方の視点からの画像(鳥俯瞰図)を生成し通常の平面地図と同様に利用することもできる。
【0042】
(4)カラー点群データの生成
また、データ生成装置20の情報処理部23は、上記のように、測定車両10から取得した画像データ及び点群データに基づいて、色付けされた点群データであるカラー点群データを生成する。
情報処理部23は、画像データに含まれる撮影画像及び撮影時のカメラ17の位置・姿勢・画角に基づいて、色付けされた点群データであるカラー点群データを生成する。
データ生成装置20は、画像データに含まれる撮影画像及び撮影時のカメラ17の位置・姿勢・画角に基づいて、撮影画像の視野内にある点群データの各座標点(X,Y,Z)を抽出する。
【0043】
次に、情報処理部23は、
図14に示すように、抽出した各座標点(X,Y,Z)を撮影画像の座標系(投影座標点)(x,y)に投影した座標を求める。さらに、データ生成装置20は、投影した座標に相当する、例えば撮影画像中の色(RGB値)を投影前の座標点(X,Y,Z)の色とする。
【0044】
当該撮影画像の視野内にある全ての座標点について色を決定すると、データ生成装置20は、当該撮影画像を撮影した位置(Xc,Yc,Zc)と、各座標点の座標(X,Y,Z)と色(RGB値)の組み合わせをカラー点群データとして格納する。
【0045】
(5)地図データと点群データとの紐付け
データ生成装置20の情報格納部22が格納している地図データベース22aには、地図上の各地点に対して地図座標点の座標(X,Y)の情報が対応付けられている地図データを格納している。この地図座標点の各座標(X,Y)は点群データの各座標点(X,Y,Z)のXY座標と同一又は変換可能に設定されている。以下、本実施形態では両座標のXY座標は一致しているものとして説明を進める。
【0046】
地図データベース22aは、各座標点の座標(X,Y)に基づいて、上記点群データと地図データとを紐付けて格納することが可能である。なお、地図データは、各空港を含む空港周辺の地図データである。
これにより、データ生成装置20は、地図データ上で地図座標点(X,Y)が指定されると、その地図座標点(X,Y)に紐付けられている点群データの座標点(X,Y,Z)を抽出し、その抽出した座標点(X,Y,Z)及びその座標点から所定距離内の各座標点(X,Y,Z)を含む点群データを表示することができる。
【0047】
(6)制限表面モデルとの干渉チェック
次に、取得した点群データと制限表面モデルとの干渉チェックについて説明する。
図15は、対象物が制限表面モデルに干渉するかの判定を行う動作を示したフローチャートである。
まず、操作者は、データ生成装置20の操作部27を操作して表示部26に表示された地図から空港を選択する(ステップS100)。
操作者による操作部27の操作により、制御部21は、情報格納部22の地図データベース22aから操作者によって指定された地点の地図データを取得して表示部26に表示させる。
本実施形態では、例として成田空港周辺の地図データを表示部26に表示する。
【0048】
次に、操作者は、表示部26に表示された地図データから成田空港の複数ある滑走路のうちの1つを選択する(ステップS101)。
操作者によって任意の滑走路が選択されると、データ生成装置20の制御部21は、情報格納部22の制限表面モデルデータベース22cから選択された滑走路に該当する制限表面モデルを取得し、表示部26に表示されている滑走路の位置に重畳するように制限表面モデルを表示する(
図16)。
【0049】
操作者は、表示部26に表示されている空港周辺の地図を見ながら、干渉チェックを行いたい任意の地点を指定する(ステップS102)。
操作者は、
図17に示すように、表示部26に表示されている制限表面モデルの範囲内にある任意の地点を選択する。
なお、選択した地点の画像を確認する場合には、選択した地点の座標から上記で取得してある重畳画像データを表示部26に表示させることが可能である。
データ生成装置20の制御部21は、情報格納部22の点群データベース22bから操作者が選択した任意の地点の座標点に該当する点群データと標高データを取得する。
【0050】
例として、操作者が選択した任意の地点がホテルである場合、次に、干渉チェック部24は、取得した点群データのZ方向の座標をもとに、ホテルの地表面からの高さを算出し、ホテルの位置する標高データをホテルの地表面からの高さに合算する。この合算した高さを「絶対高さ」とする。(ステップS103)。
なお、ホテルの地表面からの高さは「3000cm」であり、ホテルが位置する標高は「1000cm」であり、絶対高さは「4000cm」となる。
次に、ホテルの位置に該当する制限表面モデルの高さを算出する(ステップS104)。
【0051】
そして、絶対高さが制限表面モデルの高さに干渉しているかのチェックを行う(ステップS105)。
上記で算出された絶対高さが4000cmであり、ホテルの位置する制限表面モデルの高さが4500cm(水平表面)であることから干渉チェック部24は、ホテルの高さは制限表面モデルの高さに干渉しないと判定する(ステップS106/NO)とともに、制限表面モデルの高さまでの余裕高(ここでは+500cm)を算出する。
【0052】
さらに、干渉チェック部24は、
図7に示すような干渉チェックを行った対象物の情報と判定結果を物件データベース22dに登録する(ステップS107)。
なお、上記の算出の結果、絶対高さが制限表面モデルの高さまで500cm分の高さの余裕があることから、物件データベース22dには、余裕高が「+500cm」として登録する。
【0053】
また、一方で、操作者が任意に選択した位置に樹木があり、樹木の高さが「500cm」で、樹木が位置する標高が5000cmであった場合に、絶対高さが「5500cm」となる。そして、樹木の位置する制限表面モデルの範囲の高さが「4500cm」である場合、干渉チェック部24は、絶対高さが制限表面モデルの高さに干渉していると判定する(ステップS106/YES)とともに、干渉している高さ(1000cm)を算出する。
【0054】
干渉チェック部24は、上記と同様に情報格納部22の物件データベース22dに干渉している旨の判定結果とともに対象物の情報を登録する(ステップS108)。
なお、上記の算出により絶対高さが制限表面モデルの高さに対して1000cm高いことから、物件データベース22dには、余裕高が「-1000cm」として登録する。
【0055】
なお、余裕高の表記について、絶対高さが制限表面モデルに干渉しない高さの場合には正の符号(+)で表記し、絶対高さが制限表面モデルに干渉する高さの場合には、負の符号(-)で表記する。
【0056】
このように、本実施形態では、測定車両が滑走路や滑走路周辺を走行又は停止中に取得した建造物等の点群データから建造物等の正確な高さの実測値(地表面からの高さ)を算出することができ、この実測値に建造物が位置している標高を合算することで制限表面モデルと比較することが可能な数値を算出することができる。
【0057】
これにより、操作者が空港周辺の任意の地点に存在する建造物等を選択したとき、建造物等の高さと標高とを合算した数値と、制限表面モデルとを容易に比較することができ、建造物等の高さが実際に制限表面モデルに干渉しているか否かを容易に判定することが可能である。
【0058】
また、制限表面モデルとの判定により建造物等の余裕高を容易に算出することも可能であり、例えば、判定した建造物等の周辺に新たな建造物の建設の目安にすることができるほか、空港周辺の樹木の余裕高を定期的に干渉チェックすることで樹木の成長具合を把握でき伐採予定を組むことも可能となる。
【0059】
さらに、既存の空港だけではなく、将来空港を建設する予定地での干渉チェックを行うことも可能であり、この場合でも事前に建設予定周辺の建造物等の点群データを取得することで容易に干渉チェックを行うことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 測定車両
11 制御部
12 情報格納部
13 レーザスキャナ
14 GPS
15 IMU
16 計時部
17 カメラ
18 オドメータ
19 情報入出力部
20 データ生成装置
21 制御部
22 情報格納部
23 干渉チェック部
24 通信部
25 表示部
26 操作部