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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116707
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 501
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013017
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】上原 義貴
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG01
2C057AG09
2C057AG24
2C057AG51
(57)【要約】
【課題】液体をノズル孔から押し出すロッドと、ロッドが挿入されるスリーブを備え、ロッドが液体を押し出す際の液体の逃げをスリーブにより抑制する液体吐出装置をより簡易に実現する。
【解決手段】液体吐出装置1は、液体を吐出するノズル孔8が形成された液室7と、液室7に液体を供給するための供給路10と、液室7内に配置された先端5aを有し、軸方向2cに移動可能なロッド5と、ロッド5の前進時に先端5aがノズル孔8に接近し、ロッド5の後退時に先端5aがノズル孔8から遠ざかるように、ロッド5を軸方向2cに進退動させるアクチュエータ13と、弾性体15を介してロッド5に支持されて先端5aが挿入されるスリーブ14と、を備える。弾性体15は、ロッド5の前進時においてスリーブ14がノズル孔8に当接した後に弾性変形してロッド5が更に前進することを許容する。
ことを特徴とする
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル孔が形成された液室と、
前記液室に液体を供給するための供給路と、
前記液室内に配置された先端を有し、軸方向に移動可能なロッドと、
前記ロッドの前進時に前記先端が前記ノズル孔に接近し、前記ロッドの後退時に前記先端が前記ノズル孔から遠ざかるように、前記ロッドを前記軸方向に進退動させるアクチュエータと、
弾性体を介して前記ロッドに支持されて前記先端が挿入されるスリーブと、
を備え、
前記弾性体は、前記ロッドの前進時において前記スリーブが前記ノズル孔に当接した後に弾性変形して前記ロッドが更に前進することを許容する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ノズル孔と、前記ノズル孔に当接する前記スリーブの先端と、にテーパ面が形成され、
前記ノズル孔のテーパ面の傾斜と、前記スリーブの先端のテーパ面の傾斜とが等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記供給路が前記液室に開口する開口部又は前記液室から液体を排出するための排出路が前記液室に開口する開口部の少なくとも一方は、前記ノズル孔に近接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ロッドの外周面と前記スリーブの内周面との間をシールするシール構造を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記シール構造は、前記ロッドの外周面と前記スリーブの内周面との間に挿入された弾性部材であることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記シール構造は、前記ロッドの外周面又は前記スリーブの内周面に形成された環状突起であることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記弾性体は、筒形状又はバネ形状を有する樹脂材料、ゴム材料又は金属材料の部材であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ノズル孔に当接する前記スリーブの先端に弾性体を設けることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記スリーブの先端の前記弾性体は、有機材料又はゴム材料の部材であることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、液体を吐出ノズルから押し出すピストンと、ピストンが挿入される可動スリーブと、ピストンを駆動する第1のアクチュエータと、可動スリーブを駆動する第2のアクチュエータと、を有する液体供給装置が記載されている。ピストンを囲う可動スリーブは、ピストンが液体を押し出す前にハウジングに当接するように、第2のアクチュエータで駆動され、ピストンが液体を押し出す際の液体の逃げを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―21715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液体供給装置は、ピストンを駆動するための第1のアクチュエータに加えて可動スリーブを駆動するための第2のアクチュエータを有する。このため、これらアクチュエータの制御や、装置の構造が複雑になるという問題があった。
本発明は、液体をノズル孔から押し出すロッドと、ロッドが挿入されるスリーブを備え、ロッドが液体を押し出す際の液体の逃げをスリーブにより抑制する液体吐出装置をより簡易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、液体を吐出するノズル孔が形成された液室と、液室に液体を供給するための供給路と、液室内に配置された先端を有し、軸方向に移動可能なロッドと、ロッドの前進時に先端がノズル孔に接近し、ロッドの後退時に先端がノズル孔から遠ざかるように、ロッドを軸方向に進退動させるアクチュエータと、弾性体を介してロッドに支持されて先端が挿入されるスリーブと、を備える液体吐出装置が提供される。弾性体は、ロッドの前進時においてスリーブがノズル孔に当接した後に弾性変形してロッドが更に前進することを許容する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体をノズル孔から押し出すロッドと、ロッドが挿入されるスリーブを備え、ロッドが液体を押し出す際の液体の逃げをスリーブにより抑制する液体吐出装置をより簡易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の液体吐出装置の一例の概略構成図である。
図2A図1の液体吐出装置の動作例の説明図(その1)である。
図2B図1の液体吐出装置の動作例の説明図(その2)である。
図3】液体の供給路及び排出路が液室に開口する開口部の他の設置例を示す図である。
図4A】ロッドの外周面とスリーブの内周面との間をシールするシール構造の第1例を示す図である。
図4B】ロッドの外周面とスリーブの内周面との間をシールするシール構造の第2例を示す図である。
図4C】ロッドの外周面とスリーブの内周面との間をシールするシール構造の第3例を示す図である。
図5A】ロッドとスリーブを接続する弾性体の他の一例を示す図である。
図5B図5Aの弾性体の弾性変形の一例を示す図である。
図5C図5Aの弾性体に形成された屈曲誘導部の一例を示す図である。
図5D図5Aの弾性体の弾性変形の他の一例を示す図である。
図6】スリーブの先端に設けられる弾性体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
実施形態の液体吐出装置は、液体を吐出する様々な装置に広く適用可能である。例えば、実施形態の液体吐出装置は、液体塗料を吐出して対象を塗装する塗装装置に適用できる。例えば、広い塗装範囲を塗装するために高速な塗装が求められる塗装装置に適用してよい。例えば、車両の塗装に用いられる塗装装置に適用してよい。これらの塗装装置として例えばインクジェットプリンタに適用してよい。
以下、塗装用の液体塗料をノズル孔から吐出して液体吐出装置の例を説明する。
【0009】
図1は、実施形態の液体吐出装置の一例の概略構成図である。液体吐出装置1は、ハウジング2と、上部プレート3と、ノズルプレート4と、ロッド(プランジャロッド)5と、シール部材6と、液体タンク9と、液体供給路10と、液体排出路11と、付勢手段12と、アクチュエータ13と、スリーブ14と、弾性体15を備える。
ハウジング2は中空部材であり、内部に柱形状の上部空間2aと下部空間2bが形成されている。上部空間2a及び下部空間2bは、例えば円柱形状であってよく他の角柱形状であってもよい。
【0010】
上部空間2a及び下部空間2bは、これら柱形状の空間の高さ方向である軸方向2cに沿って延在し、上部空間2aの開口部が上部プレート3によって覆われ、下部空間2bの開口部がノズルプレート4によって覆われている。
ノズルプレート4には、液体吐出装置の外部へ液体塗料が吐出されるノズル孔8が形成されている。ノズル孔8には、ノズルプレート4の外側面に開口して液体塗料の吐出口をなす円柱孔部8aと、円柱孔部8aと同心に形成されて円柱孔部8aに近くなるほど断面積が小さくなる円錐台形状のテーパ孔部8bと、が形成されている。
【0011】
上部空間2a及び下部空間2bには、下部空間2bから液体塗料を押し出すためのロッド5が挿入されている。ロッド5は軸方向2cに延在し、ロッド5の一方の端部であるロッド先端5aが下部空間2bに配置され、他方の端部であるロッド尾端5bが上部空間2aに配置されている。
ロッド5は、例えばロッド5の中心軸と下部空間2bの中心軸とが一致するように配置される。また例えば、ロッド5の中心軸と円柱孔部8a及びテーパ孔部8bの中心軸(すなわちノズル孔8の中心軸)とが一致するように配置される。
【0012】
下部空間2bの内周面とロッド5の外周面とはシール部材6によってシールされており、下部空間2bの内周面と、ロッド5の外周面と、シール部材6と、ノズル孔8の内周面とにより、液体塗料が充填される液室7が形成される。
液室7には、液体タンク9から図示しないポンプにより液体供給路10を経由して液体塗料が供給される。また、図示しないポンプにより液室7内の液体塗料が液体排出路11を経由して排出され液体タンク9へ戻されている。
【0013】
上部空間2aには、ロッド5とハウジング2とを軸方向2cに相対運動させることにより、ロッド5を軸方向2cに進退動させるアクチュエータ13が設けられている。
例えば、アクチュエータ13は軸方向2cに直線運動が可能な直動アクチュエータであってもよく、軸方向2cに伸長及び縮小可能なアクチュエータであってもよい。
図1の例では、軸方向2cに伸長及び縮小可能なアクチュエータ13がロッド尾端5bと上部プレート3との間に介挿されている。アクチュエータ13は例えば圧電素子であってよい。
【0014】
アクチュエータ13が軸方向2cに伸長すると、ロッド5は付勢手段(例えば弾性体)12による付勢に抗って前進して、ロッド先端5aがノズル孔8に接近する。
その後、アクチュエータ13が軸方向2cに収縮すると、付勢手段12の付勢によりロッド5は後退し、ロッド先端5aがノズル孔8から遠ざかる。このように、アクチュエータ13が、伸長と収縮を繰り返すことにより、ロッド5が軸方向2cに進退動する。ロッド5が前進する行程及び後退する行程をそれぞれ「前進行程」及び「後退行程」と表記することがある。
【0015】
前進行程では、ロッド5が前進することで液室7内の容量が減少し、ロッド先端5aが液室7内の液体塗料を押す。このため、液室7内の液体塗料がノズル孔8から押し出されて液滴となって吐出される。
その際に、液室7内でロッド先端5aに押された液体塗料が液体供給路10や液体排出路11へ逃げると、ノズル孔8から押し出される液体塗料の量が減少し、吐出効率が低下する。
【0016】
このため、ロッド先端5aの外周を囲うスリーブ14を設け、円筒状のスリーブ14内にロッド5を挿入する。ロッド5が前進し液体塗料をノズル孔8から押出す時に、スリーブ14がノズル孔8に当接することにより、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗が増加する。
このため、ロッド先端5aに押されて液体供給路10や液体排出路11へ逃げる液体塗料が抑制される。この結果、ノズル孔8から押し出される液体塗料の減少が抑制され、吐出効率が向上する。
【0017】
ロッド5とスリーブ14とは弾性体15により接続され、これによりスリーブ14は弾性体15を介してロッド5に支持される。
図1の例では、ノズル孔8から離れる方向に向かって、ロッド5に小径部、中径部、大径部がこの順に形成され、弾性体15の一端を小径部と中径部の段差に接続し、弾性体15の他端をスリーブ14の上端に接続している。
弾性体15は、例えばバネ形状を有する樹脂材料、ゴム材料又は金属材料の部材であってよい。
【0018】
スリーブ14のノズル孔8に近い一端であるスリーブ先端14aがノズル孔8に当接していない状態では、ロッド先端5aよりもスリーブ先端14aがノズル孔8に近くなるように、スリーブ14が配置されている。
これによりロッド5が前進する前進行程では、図2Aに示すようにロッド先端5aよりも先に、スリーブ先端14aがノズル孔8に当接する。
【0019】
スリーブ先端14aがノズル孔8に当接した後もアクチュエータ13が伸長を続けると、弾性体15は軸方向2cの長さが短縮するように弾性変形して、ロッド5が前進することを許容する。
これによりロッド5は、図2Bに示すように、ロッド先端5aがノズル孔8に当接するまで前進し、液室7内の液体塗料がノズル孔8から押し出されて液滴Lとなって吐出される。
【0020】
このように、ロッド5が前進する前進行程では、ロッド先端5aよりも先にスリーブ先端14aがノズル孔8に当接する。これにより、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗が増加する。このため、ロッド先端5aに押されて液体供給路10や液体排出路11へ逃げる液体塗料が抑制される。この結果、ノズル孔8から押し出される液体塗料の減少が抑制され、吐出効率が向上する。
【0021】
なお、前進行程においてスリーブ先端14aがノズル孔8に当接する前に液体塗料がノズル孔8から出ないように、スリーブ先端14aがノズル孔8に当接するまで、図示しないポンプを用いて液体排出路11に負圧をかけ、スリーブ先端14aがノズル孔8に当接したら負圧を停止してもよい。
また、ノズル孔8から吐出すべき液体塗料の総量を、ロッド5が押し出す液体塗料の量とスリーブ14が押し出す液体塗料の量とで実現してもよい。この場合、スリーブ14が押し出す液体塗料の見込み量に応じて、ロッド5のストローク量を調整する(例えば、ロッド5がノズル孔8に当接する前に前進を止める)ようにしてもよい。
【0022】
なお、スリーブ先端14aには、ノズル孔8のテーパ孔部8bと同様にテーパ面が形成されていてもよい。そして、スリーブ先端14aのテーパ面の傾斜をテーパ孔部8bのテーパ面の傾斜に一致させてもよい。
これにより、スリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときのスリーブ先端14aとノズル孔8との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【0023】
図3は、液体供給路10及び液体排出路11が液室7に開口する開口部の他の設置例を示す図である。
液体供給路10及び液体排出路11が液室7に開口する開口部のそれぞれは、ノズル孔8のテーパ孔部8bに近接している。例えば、これらの開口部はテーパ孔部8bに接していてもよい(言い換えれば、開口部はノズル孔8に接続していてもよい)。スリーブ先端14aは、液体供給路10及び液体排出路11の開口部と円柱孔部8aとの間の位置においてテーパ孔部8bに当接している。
【0024】
このように、液体供給路10又は液体排出路11が液室7に開口する開口部の少なくとも一方をテーパ孔部8bに近接して配置することにより、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗を低減できる。
このため、ロッド5が後退する後退行程においてスリーブ先端14aがテーパ孔部8bから離間すると、ノズル孔8の余分な液体塗料を速やかに液体排出路11へ排出できる。また、ノズル孔8内に速やかに液体塗料を充填できる。
この結果、後退行程においてノズル孔8への液体塗料の排出時間や再充填時間を短縮できるので、ロッド5の進退動作のサイクルタイムを向上できる。
【0025】
次に図4A図4Cを参照する。液体吐出装置1は、ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間をシールするシール構造を備えてもよい。
ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間をシールすることにより、ロッド5が前進する前進行程においてスリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときの、ロッド5とスリーブ14との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【0026】
ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間のシール構造は、例えば図4Aに示すように、ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間に挿入された弾性部材16aであってもよい。例えば弾性部材16aの材料はゴムであってよい。例えば、ロッド5の外周面に周方向に沿って係止凹溝を形成し、スリーブ14の内周面に摺接する弾性リングを係止凹溝に係止してもよく、スリーブ14の内周面に周方向に沿って係止凹溝を形成し、ロッド5の外周面に摺接する弾性リングを係止凹溝に係止してもよい。
また、例えばロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間のシール構造として、例えば図4Bに示すように、ロッド5の外周面に摺接する環状突起16bをスリーブ14の内周面に形成してもよく、4Cに示すように、スリーブ14の内周面に摺接する環状突起16cをロッド5の外周面に形成してもよい。
例えば、環状突起16bや環状突起16cとなる突起を有するように、スリーブ14やロッド5を形成する基材を成形してもよい。スリーブ14やロッド5の材料は、例えば金属、セラミック及び樹脂や、これらの組み合わせでもよい。
【0027】
図5Aは、ロッド5とスリーブ14を接続する弾性体15の他の一例を示す図である。例えば、ロッド5を筒形状の弾性体15に挿入してもよい。弾性体15は、例えば円筒形状であってもよい。弾性体15の材料は、樹脂、ゴム又は金属であってもよい。
筒形状の弾性体15にロッド5を挿入することにより、弾性体15が変形してロッド5とスリーブ14との軸方向の相対位置が変化しても、弾性体15がロッド5に当接してロッド5の進退動を阻害するのを回避できる。
また、スリーブ14の上端のロッド5との隙間から、液体供給路10及び液体排出路11へ液体塗料が流れ出ることを抑制することができる。
【0028】
図5Bを参照する。ロッド5の前進行程において筒形状の弾性体15の軸方向2cの長さが短縮するように弾性変形する際に、弾性体15が径方向外側に屈曲し易くする屈曲誘導部を、弾性体15に形成してもよい。
弾性体15が径方向外側に屈曲することにより、弾性体15がロッド5に当接してロッド5の進退動を阻害するのを回避できる。
このような屈曲誘導部として、例えば、弾性体15が弾性変形していない状態で予め径方向外側に僅かに屈曲した屈曲部を弾性体15に形成してもよい。
【0029】
また、図5Cに示すような屈曲誘導部を、弾性体15に形成してもよい。例えば、屈曲誘導部は、弾性体15の外周面15aに周方向に沿って形成された切り込み溝15bと、弾性体15の内周面15cで且つ切り込み溝15bの軸方向位置に対応する位置に形成されたヌスミ部15dを有する。ヌスミ部15dは、弾性体15が外側に折れ曲がる際の余剰肉による妨害を回避する。
【0030】
図5Dを参照する。屈曲誘導部は、筒形状の弾性体15の軸方向2cの長さが短縮するように弾性変形する際に弾性体15が径方向内側に屈曲し易くしてもよい。
例えば、弾性体15が弾性変形していない状態で予め径方向内側に僅かに屈曲した屈曲部を弾性体15に形成してもよい。また例えば、弾性体15の外周面15aに図5Cのヌスミ部15dを形成し、内周面15cに切り込み溝15bを形成してもよい。
【0031】
スリーブ先端14aとノズル孔8とが当接すると、ノズル孔8、スリーブ14及び弾性体15の内周面とロッド5の外周面に囲まれた液体塗料が、ロッド5の前進によってノズル孔8へ押し出される。
径方向内側に弾性体15が屈曲すると、液体塗料をノズル孔8へ押し出す部材の径方向断面積(すなわち軸方向2cから見た断面積)を増加させることができる。これにより、ノズル孔8へ押し出される液体塗料を増加させ、吐出効率を向上できる。
なお、屈曲誘導部の構成は、図5Cの構成に限定されるものではなく、弾性体15を一方向に折れ曲がり易くする様々な構成を採用してよい。
【0032】
次に、図6を参照する。ノズル孔8のテーパ孔部8bに当接するスリーブ先端14aに弾性体14bを設けてもよい。弾性体14bは、有機材料又はゴム材料の部材であってよい。
弾性体14bを設けることにより、スリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときのスリーブ先端14aとノズル孔8との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【0033】
(実施形態の効果)
(1)液体吐出装置1は、液体を吐出するノズル孔8が形成された液室7と、液室7に液体を供給するための液体供給路10と、液室7内に配置された先端5aを有し、軸方向に移動可能なロッド5と、ロッド5の前進時にロッド先端5aがノズル孔8に接近し、ロッド5の後退時にロッド先端5aがノズル孔8から遠ざかるように、ロッド5を軸方向2cに進退動させるアクチュエータ13と、弾性体15を介してロッド5に支持されてロッド先端5aが挿入されるスリーブ14と、を備える。弾性体15は、ロッド5の前進時においてスリーブ14がノズル孔8に当接した後に弾性変形してロッド5が更に前進することを許容する。
【0034】
これにより、ロッド5が前進する前進行程では、ロッド先端5aよりも先にスリーブ先端14aがノズル孔8に当接し、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗が増加する。このため、ロッド先端5aに押されて液体供給路10や液体排出路11へ逃げる液体塗料が抑制される。この結果、ノズル孔8から押し出される液体塗料の減少が抑制され、吐出効率が向上する。
また、ロッド5の進退動と独立してスリーブ14を駆動するアクチュエータが不要なため液体吐出装置をより簡易に実現できる。また、ロッド5と独立してスリーブ14を駆動する複雑な制御が不要になるため高速動作が可能になる。さらに、構造がより簡易になるためコストを低減できる。
【0035】
(2)ノズル孔8と、ノズル孔8に当接するスリーブ先端14aと、にテーパ面を形成してもよい。ノズル孔8のテーパ面の傾斜と、スリーブ先端14aのテーパ面の傾斜とを一致させてもよい。
これにより、スリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときのスリーブ先端14aとノズル孔8との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【0036】
(3)液体供給路10又は液体排出路11の少なくとも一方が液室7に開口する開口部は、ノズル孔8に近接する位置に設けられていてもよい。
これにより、液体供給路10や液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗を低減できる。このため、ロッド5が後退する後退行程においてスリーブ先端14aがテーパ孔部8bから離間すると、ノズル孔8の余分な液体塗料を速やかに液体排出路11へ排出できる。また、ノズル孔8内に速やかに液体塗料が充填できる。
この結果、後退行程においてノズル孔8への液体塗料の排出時間や再充填時間を短縮できるので、ロッド5の進退動作のサイクルタイムを向上できる。
【0037】
(4)ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間をシールするシール構造16a~16cを備えていてもよい。
シール構造は、ロッド5の外周面とスリーブ14の内周面との間に挿入された弾性部材16aであってもよい。シール構造は、ロッド5の外周面に形成された環状突起16c又はスリーブ14の内周面に形成された環状突起16bであってもよい。
これにより、ロッド5が前進する前進行程においてスリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときの、ロッド5とスリーブ14との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【0038】
(5)弾性体15は、筒形状又はバネ形状を有する樹脂材料、ゴム材料又は金属材料の部材であってもよい。
これによって、弾性体15が変形してロッド5とスリーブ14との軸方向の相対位置が変化しても、弾性体15がロッド5に当接してロッド5の進退動を阻害するのを回避できる。
【0039】
(6)ノズル孔8に当接するスリーブ先端14aに弾性体14bを設けてもよい。スリーブ先端14aの弾性体14bは、有機材料又はゴム材料の部材であってもよい。
スリーブ先端14aとノズル孔8とが当接したときのスリーブ先端14aとノズル孔8との間の密閉性を向上できる。このため、液体供給路10及び液体排出路11とノズル孔8との間の配管抵抗をさらに増加することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…液体吐出装置、2…ハウジング、2a…上部空間、2b…下部空間、2c…軸方向、3…上部プレート、4…ノズルプレート、5…ロッド、5a…ロッド先端、5b…ロッド尾端、6…シール部材、7…液室、8…ノズル孔、8a…円柱孔部、8b…テーパ孔部、9…液体タンク、10…液体供給路、11…液体排出路、12…付勢手段、13…アクチュエータ、14…スリーブ、14a…スリーブ先端、14b、15…弾性体、16a…弾性部材、16b、16c…環状突起
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6