(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116756
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】手術顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/22 20060101AFI20220803BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20220803BHJP
G02B 21/18 20060101ALI20220803BHJP
A61B 90/20 20160101ALI20220803BHJP
【FI】
G02B21/22
G02B21/36
G02B21/18
A61B90/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013092
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
(72)【発明者】
【氏名】土居 正雄
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA13
2H052AB10
2H052AB19
2H052AB21
2H052AB24
2H052AB27
2H052AD29
2H052AD31
2H052AF14
2H052AF17
2H052AF21
(57)【要約】
【課題】メインドクター又はサブドクターが通常と同じ方向性で光学的にも映像的にも術部の観察が可能な手術顕微鏡を提供する。
【解決手段】メインドクターは顕微鏡本体2の前側のメイン光束取出口3に取付けられているメイン光学接眼部MKと交換してメイン映像接眼部MEを取付けることができることにより、術部Gを光学的でなく映像的に観察することができる。メイン映像接眼部ME内のパネルME10に表示された映像を見るだけなので、メイン光学接眼部MKのようなアイポイントがなく、観察を楽に行うことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
術部からの反射光を取入れる光束取入口が下側に形成され、その反射光を対物光学系と変倍光学系を経て左右一対の光束として取出すメイン光束取出口が前側に形成され、左右一対の光束の一部をそれぞれ分岐導入して術部を撮像し該術部に関する左右一対の電子映像を出力するカメラが設けられた顕微鏡本体と、
前記メイン光束取出口に着脱自在で、左右一対の光束をメインドクターの瞳に導いて術部を光学的に観察自在なメイン光学接眼部と、
前記メイン光束取出口に着脱自在で、カメラから出力された左右一対の電子映像をそれぞれ表示する左右一対のパネルを有し、該パネルをそれぞれ左右のメイン観察部から見ることにより術部を映像的に観察自在なメイン映像接眼部と、を備えていることを特徴とする手術顕微鏡。
【請求項2】
顕微鏡本体の後側に顕微鏡本体内の左右一対の光束の一部がそれぞれ分岐されて取出されるサブ光束取出口が形成され、
前記サブ光束取出口に着脱自在で、左右一対の光束をサブドクターの瞳に導いて術部を光学的に観察自在なサブ光学接眼部と、
前記サブ光束取出口に着脱自在で、カメラから出力された左右一対の電子映像をそれぞれ表示する左右一対のパネルを有し、該パネルをそれぞれ左右のサブ観察部から見ることにより術部を映像的に観察自在なサブ映像接眼部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の手術顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術顕微鏡には顕微鏡本体の前側にメインドクター用のメイン光学接眼部が設けられ、そこから術部の光学像を立体的に拡大観察できるようになっている。手術顕微鏡によっては、顕微鏡本体の後側にサブドクター用のサブ光学接眼部が取付けられるものもあり、そこからサブドクターが術部を立体的に拡大観察してメインドクターの手術を補助できるようになっている。
【0003】
このような術部の光学的な観察に加えて、手術顕微鏡の内部に術部を立体的に撮像自在なカメラを設け、そのカメラで撮像した映像を手術顕微鏡の近くに専用アームで支持した映像観察装置に表示し、その映像観察装置をメインドクター及びサブドクター以外のアシスタントドクター等が左右方向から見ることにより術部を映像的に観察可能にしたものもある。
【0004】
この映像観察装置による観察は映像観察装置内に設けた左右一対のパネル(小型LCD)にそれぞれ両眼視差を有する映像を表示し、それを映像観察装置に設けられた左右の観察部から見るだけの構造ため、光学的な観察に比べて鮮明さは劣るものの、光学接眼部のようなアイポイントがなく、観察が大変に楽である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
映像観察装置のこのような観察の容易性から、手術内容によっては、メインドクター及びサブドクターもメイン光学接眼部及びサブ光学接眼部により通常術部を光学的に観察しているのと同じ方向性(前側又は後側から)でその映像観察装置を利用して術部を映像的に観察したいという希望がある。しかし映像観察装置は専用アームで手術顕微鏡の近くに支持する構造となっており、メイン光学接眼部やサブ光学接眼部と交換して顕微鏡本体の前側又は後側に取付けることができないため、メインドクター及びサブドクターは通常の観察方向で映像観察装置を利用することができなかった。
【0007】
本発明はこのような関連技術に着目してなされたものであり、メインドクター又はサブドクターが通常と同じ方向性で光学的にも映像的にも術部の観察が可能な手術顕微鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術的側面によれば、術部からの反射光を取入れる光束取入口が下側に形成され、その反射光を対物光学系と変倍光学系を経て左右一対の光束として取出すメイン光束取出口が前側に形成され、左右一対の光束の一部をそれぞれ分岐導入して術部を撮像し該術部に関する左右一対の電子映像を出力するカメラが設けられた顕微鏡本体と、前記メイン光束取出口に着脱自在で、左右一対の光束をメインドクターの瞳に導いて術部を光学的に観察自在なメイン光学接眼部と、前記メイン光束取出口に着脱自在で、カメラから出力された左右一対の電子映像をそれぞれ表示する左右一対のパネルを有し、該パネルをそれぞれ左右のメイン観察部から見ることにより術部を映像的に観察自在なメイン映像接眼部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術的側面によれば、顕微鏡本体の後側に顕微鏡本体内の左右一対の光束の一部がそれぞれ分岐されて取出されるサブ光束取出口が形成され、前記サブ光束取出口に着脱自在で、左右一対の光束をサブドクターの瞳に導いて術部を光学的に観察自在なサブ光学接眼部と、前記サブ光束取出口に着脱自在で、カメラから出力された左右一対の電子映像をそれぞれ表示する左右一対のパネルを有し、該パネルをそれぞれ左右のサブ観察部から見ることにより術部を映像的に観察自在なサブ映像接眼部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の技術的側面によれば、顕微鏡本体の前側のメイン光束取出口に取付けられているメイン光学接眼部と交換してメイン映像接眼部を取付け可能なため、メインドクターは術部を光学的でなく映像的に観察したい場合は、メイン光学接眼部に代えてメイン映像接眼部を取付ければ良い。メインドクターはメイン映像接眼部内のパネルに表示された映像を見るだけなので、メイン光学接眼部のようなアイポイントがなく、メインドクターは自身の眼とメイン映像接眼部との間隔を気にすることがなく、観察を楽に行うことができる。また映像を観察するため、パネルに表示される映像に蛍光画像などを重ねて表示させたりすることもできる。
【0011】
本発明の第2の技術的側面によれば、顕微鏡本体の後側のサブ光束取出口に取付け可能なサブ映像接眼部も用意されているため、サブドクターもサブ光学接眼部に代えてサブ映像接眼部を取付け、術部を映像的に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】メイン光学接眼部及びサブ光学接眼部を取付けた手術顕微鏡を示す断面図。
【
図2】メイン映像接眼部及びサブ映像接眼部を取付けた手術顕微鏡を示す断面図。
【
図3】メイン光学接眼部とメイン映像接眼部と顕微鏡本体を示す斜視図。
【
図4】顕微鏡本体に取付けられたメイン光学接眼部を示す斜視図。
【
図5】顕微鏡本体に取付けられたサブ映像接眼部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図7は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0014】
以上及び以下の説明において前後左右の方向性は
図3に示された通りである。
【0015】
手術顕微鏡1は図示せぬスタンド装置のアームの先端に支持され、そのアームの範囲内において位置を自由に変更できると共に、変更後の位置において向きを自由に変えることができる。
【0016】
手術顕微鏡1は、顕微鏡本体2と、メイン光学接眼部MK及びメイン映像接眼部MEと、サブ光学接眼部SK及びサブ映像接眼部SEとを備えている。メイン光学接眼部MK及びメイン映像接眼部MEはメインドクター用で、顕微鏡本体2の前側に形成されたメイン光束取出口3にそれぞれ着脱自在である。
【0017】
サブ光学接眼部SK及びサブ映像接眼部SEはサブドクター用で、顕微鏡本体2の後側に形成されたサブ光束取出口4にそれぞれ着脱自在である。サブ光束取出口4はメイン光束取出口3よりも低い位置に形成されている。
【0018】
まず最初にメイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKについて説明する。顕微鏡本体2の前方下部には光束取入口5が形成されており、観察対象である術部Gで反射された光束Lはこの光束取入口5から顕微鏡本体2の内部に取り入れられる。
【0019】
顕微鏡本体2内における光束取入口5の上部には垂直な対物光学系6が設置されている。対物光学系6の上部には、対物光学系6を通過する太い光束Lの範囲内に、左右2列の変倍光学系7がそれぞれ垂直方向に沿って設けられている。その変倍光学系7に対物光学系6を通過した光束Lの一部が導入されて、倍率を変化させることができる。変倍光学系7をそれぞれ通過する細い2本の光束Lは左右方向で所定間隔だけ離れており互いに立体視が可能な両眼視差を有する。尚、以下の説明で、この変倍光学系7からメイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKまでに設けられる後述のレンズやプリズムなどは全て立体観察のためにそれぞれ左右一対設けられている。
【0020】
変倍光学系7の上部にはビームスプリッター8が設けられている。対物光学系6及び変倍光学系7を通過した光束Lはビームスプリッター8で前側へ反射される成分と、上方にそのまま通過する成分に分岐される。前側へ反射された成分は第1光束L1として結像レンズ9を経てメイン光束取出口3からメイン光学接眼部MKに導かれ、上方へ通過する成分は第2光束L2としてプリズム10により後方へ向けて水平に反射され、最終的にサブ光束取出口4からサブ光学接眼部SKに導かれる。
【0021】
メイン光学接眼部MKに導かれた第1光束L1はメイン光学接眼部MK内に設けられた複数の接眼レンズを経て左右一対のアイピースMK1からメインドクターの瞳に導入され、メインドクターは術部Gを鮮明な状態で光学的に立体観察することができる。但し、光学的な観察を行うにはメインドクターの瞳をメイン光学接眼部MKの接眼レンズにより決定されるアイポイントに置く必要があり、アイポイントからずれると視野が狭くなり、全視野で術部Gを観察することができなくなるという問題もある。
【0022】
顕微鏡本体2内で後方に導かれた第2光束L2はリレーレンズ11を経た後、上下一対のプリズム12、13により反射され、サブ光束取出口4の位置まで光路が下げられる。位置が下げられた第2光束L2は結像レンズ14及びビームスプリッター15を経てサブ光束取出口4からサブ光学接眼部SKに導入される。そしてサブ光学接眼部SKの内部の接眼レンズを通過した第2光束L2は左右一対のアイピースSK1からサブドクターの瞳に導かれ、術部Gを光学的に観察できるようになる。このサブ光学接眼部SKの場合も、メイン光学接眼部MKと同様に術部Gを全視野で確実に観察するためには、サブドクターの瞳をサブ光学接眼部SKのアイポイントに置く必要がある。
【0023】
このように顕微鏡本体2内で対物光学系6と変倍光学系7を通過した光束Lは第1光束L1と第2光束L2に分岐されて前後のメイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKに導かれるため、メインドクターとサブドクターはそれぞれ術部Gの光学像を共有して観察することができ、サブドクターはメインドクターの手術を確実に補助することができる。
【0024】
顕微鏡本体2の後部にはビームスプリッター15の上方にプリズム16と結像レンズ17を介してカメラ18が配置されている。ビームスプリッター15を通過する第2光束L2はサブ光学接眼部SKへ向けてまっすぐ通過する成分と、上方のカメラ18へ反射される成分に分岐される。上方へ分岐された左右一対の第2光束L2はカメラ18に内蔵された撮像素子にて受光され、そこで立体視可能な術部Gの電子映像が撮像される。カメラ18には出入れ自在な図示せぬ偏光フィルターが設けられており、術部Gの蛍光像を撮影することもできる。
【0025】
顕微鏡本体2の上面前方と後面にはソケット19、20が設けられている。ソケット19、20とカメラ18は配線21、22を介して接続されており、カメラ18から配線21、22を介してソケット19、20にカメラ18で撮像した術部Gの映像信号を出力することができる。
【0026】
次に、メイン映像接眼部MEとサブ映像接眼部SEの説明をする。手術内容によっては光学的な観察でなく、映像的な観察でも良い場合がある。
【0027】
そのような場合は、メイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKに代えて、メイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEを使用する。メイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEも顕微鏡本体2のメイン光束取出口3及びサブ光束取出口4に対して着脱自在であるため、メイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKを顕微鏡本体2から外して、代わりにメイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEを取付ければ良い。
【0028】
そしてメイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEにはそれぞれ先端にソケットME1、SE1を有するケーブルME2、SE2が設けられ、そのソケットME1、SE1をそれぞれ顕微鏡本体2の上面と後面のソケット19、20に差し込んで接続する。そうすることにより顕微鏡本体2のカメラ18で撮像された映像信号をメイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEに出力することができる。
【0029】
メイン映像接眼部MEとサブ映像接眼部SEは同じ構造のため、メイン映像接眼部MEを代表してその構造を説明する。メイン映像接眼部MEは、メイン光束取出口3に取付けられる取付部ME3と、ボールジョイントME4を介して接続される2本のアームME5、ME6と、先端側のアームME6がボールジョイントME7を介して接続されるメイン接眼部本体ME8とから構成される。2つのボールジョインME4、ME7はそれぞれ縦溝ME9を有し、上下方向でだけ角度を変えることができる。
【0030】
メイン接眼部本体ME8の内部には左右一対のパネル(小型LCD)ME10が設けられ、そこにケーブルME2を介してカメラ18から送られた術部Gに関する電子映像を表示することができる。メイン接眼部本体ME8にはパネルME10に対応する位置にメイン観察部ME11が設けられ、そこからメインドクターがパネルME10に表示された電子映像を見ることにより、術部Gを立体的に観察することができる。尚、このメイン観察部ME11とパネルME10はメインドクターの目幅に合わせるためにメイン接眼部本体ME8に対して一緒に左右へ移動することができる。
【0031】
サブ映像接眼部SEは前述のようにメイン映像接眼部MEと同じ構造で、取付部SE3と、ボールジョイントSE4を介して接続される2本のアームSE5、SE6と、先端側のアームSE6がボールジョイントSE7を介して接続されるサブ接眼部本体SE8とから構成される。そしてサブ接眼部本体SE8内には左右一対のパネルが設けられ、そのパネルをサブ観察部SE11から観察することができる。
【0032】
この実施形態によれば以上説明したように、メインドクター及びサブドクターが術部Gを光学的でなく映像的に観察したい場合は、メイン光学接眼部MK及びサブ光学接眼部SKに代えてメイン映像接眼部ME及びサブ映像接眼部SEを取付ければ良い。そうすることでメインドクター及びサブドクターはアイポイントを気にすることなく、通常の観察の方向性で且つ楽な状態で術部Gを映像的に観察することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 手術顕微鏡
2 顕微鏡本体
3 メイン光束取出口
4 サブ光束取出口
5 光束取入口
6 対物光学系
7 変倍光学系
18 カメラ
MK メイン光学接眼部
SK サブ光学接眼部
ME メイン映像接眼部
SE サブ映像接眼部
G 術部
L 光束
L1 第1光束
L2 第2光束