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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116768
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】キッチンタオルロール
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/16 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013112
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3B074
【Fターム(参考)】
3B074AA04
3B074AB01
3B074AC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】坪量を過剰に高くせずに一定の範囲にした条件でも、吸水性が良好で嵩張らず、プライ剥がれせずに、交換頻度が少ないキッチンタオルロールを提供する。
【解決手段】エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xをロール状に巻取ったキッチンタオルロール1であって、キッチンタオルシートは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有し、2プライの坪量が30g/m以上54g/m以下、紙厚が1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下、2プライの1mあたりの吸水量が220g以上600g以下であり、キッチンタオルロール1の巻長が14m以上44m以下、巻直径が110mm以上189mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、
前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、
2プライの坪量が30g/m以上54g/m以下、紙厚が1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下であり、
2プライの1mあたりの吸水量が220g以上600g以下であり、
前記キッチンタオルロールの巻長が14m以上44m以下、巻直径が110mm以上189mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。
【請求項2】
前記キッチンタオルシートの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記キッチンタオルシートの2プライ間の1mあたりの吸水量が100g以上300g以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキッチンタオルロール。
【請求項4】
前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが、0.06mm以上1.1mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項5】
前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/前記キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項6】
前記キッチンタオルロールのロール密度が0.04g/cm以上0.15g/cm以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項7】
前記キッチンタオルロールの巻密度が0.22m/cm以上0.68m/cm以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項8】
前記エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項9】
前記エンボスパターンが線状であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項10】
前記線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足した時の総長が50cm/100cm以上550cm/100cm以下であることを特徴とする、請求項9に記載のキッチンタオルロール。
【請求項11】
前記キッチンタオルシートの、前記エンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さが、35μm以上であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項12】
前記キッチンタオルシートは、裏面にエンボスを有しないことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンタオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キッチンタオルが各種開発されている。キッチンタオルは吸水量や吸油量が重要であり、吸水量や吸油量を高くする抄紙技術が開発されている。また、エンボスパターンによって、紙厚を低くする技術も開発されている
【0003】
例えば、特許文献1には、パルプを主成分とし、シートを1枚又は2枚以上重ねてなり、1組の坪量が15~50g/m、かつ吸油量/坪量が4.5~7.5OIL-g/gであり、抄紙機以外の工程で機械的に行ったエンボスを避けた部分の測定視野の長さを1.0-1.4mmとしたとき、表面の凹凸の高低差が100~600μm、スキャン面積10cm×10cmの条件下で行った表面の凹部の面積率が2~12%であり、ドライクレープを適用してなるキッチンタオル及びその製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、高バルクのティッシュ紙を製造するティッシュ製紙機械のプレス部分でプレスすることにより、湿った繊維性ウェブに凹凸付けするための凹凸付けベルトの凹凸付け層であって、凹凸付け層は不織であり、繊維性ウェブと協力する表面を伴うウェブ運搬側をもち、その表面には、その表面に三次元構造を形作るくぼみあるいは高くなった部分があることを特徴とする凹凸付け層、高バルクなクレープティッシュ紙ウェブ製造用のプレス部分及び製紙機械、並びにその製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、ロール状紙製品の製造法であって、少なくとも1つのペーパーウェブを準備する工程と、少なくとも1つのウェブの全表面積の少なくとも約22%を覆うエンボス模様を用いて、少なくとも1つのウェブをエンボス加工する工程と、を含み、模様は、少なくとも約80%の線状エンボスを含み、完成品のキャリパーが、エンボス加工したベースシートのキャリパーよりも小さいことを特徴とする、ロール状紙製品及びその製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5373208号公報
【特許文献2】特表2011-506780号公報
【特許文献3】特表2016-540530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸水量はエンボスのパターンによっても異なり、上記の抄紙技術だけで吸水量を良好にすることは困難であった。特に、上記のような抄紙技術で得られた厚い原紙を用いる場合、通常の原紙と同様にエンボスを入れると、エンボス部の紙が潰れて、吸水量が低下することが分かった。すなわち、通常の原紙の場合、吸水量を高めるためにエンボスを入れて嵩高にすることが常識であるが、原紙を嵩高にする抄紙技術の場合、一般的なエンボスの考え方では、吸水量を良好にすることが困難であることが分かった。
【0006】
そこで、エンボス部を少なくすると、水を吸収する際にプライが剥がれて、紙が破れたり、ふき取り性が劣ったりする。すなわち、通常のタオル原紙の場合と異なり、上記の抄紙技術の原紙を用いると、吸水量が多くなるので、プライが剥がれたり、紙が破れやすくなったりする。
また、特許文献3のように、エンボス処理で紙厚を低くするパターンを用いた場合、吸水量が低くなる場合がある。もちろん、坪量を高くすると吸水量は向上するが、コストが高くなる。
【0007】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲にした条件でも、吸水性が良好で嵩張らず、プライ剥がれせずに、交換頻度が少ないキッチンタオルロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、エンボスパターンとは異なる凹凸パターンを施し、キッチンタオルシートの坪量、紙厚、吸水量、並びにキッチンタオルロールの巻長及び巻直径を調整することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートは、上記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、2プライの坪量が30g/m以上54g/m以下、紙厚が1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下であり、2プライの1mあたりの吸水量が220g以上600g以下であり、上記キッチンタオルロールの巻長が14m以上44m以下、巻直径が110mm以上189mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの2プライ間の1mあたりの吸水量が100g以上300g以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが、0.06mm以上1.1mm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/上記キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルロールのロール密度が0.04g/cm以上0.15g/cm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルロールの巻密度が0.22m/cm以上0.68m/cm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記エンボスパターンが線状であることを特徴とするものである。
【0018】
(10)本発明の第10の態様は、(9)に記載のキッチンタオルロールであって、上記線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足した時の総長が50cm/100cm以上550cm/100cm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(11)本発明の第11の態様は、(1)から(10)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの、上記エンボスパターンが付与されていない部分における表面粗さの二乗平均平方根高さが、35μm以上であることを特徴とするものである。
【0020】
(12)本発明の第12の態様は、(1)から(11)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートは、裏面にエンボスを有しないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
よって、本発明によれば、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲にした条件でも、吸水性が良好で嵩張らず、プライ剥がれせずに、交換頻度が少ないキッチンタオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のキッチンタオルロールの外観を示す斜視図である。
図2】本発明のキッチンタオルロールにおけるエンボスパターンの一例を示す図である。
図3】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
図4】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
図5】エンボスパターンについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
図6】非エンボス部の、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
図7】本発明のキッチンタオルロールの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に、何ら限定されるものではない。
【0024】
<キッチンタオルロール>
図1は、本発明のキッチンタオルロール1の外観を示す斜視図である。本発明のキッチンタオルロール1は、エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xをロール状に巻取ったキッチンタオルロール1である。なお、キッチンタオルシート1xは、流れ方向の等間隔において、幅方向にミシン目を施されていることが好ましい。
【0025】
また、図1に示すように、キッチンタオルシート1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(キッチンタオルシート1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(キッチンタオルシート1xの裏面)と称する。
【0026】
(巻長及び巻直径)
キッチンタオルロール1の巻長は14m以上44m以下である。また、キッチンタオルロール1の巻直径DRは110mm以上189mm以下である。巻長が14m未満であると、交換頻度が高くなり、巻長が44mを超えると嵩張る。巻直径DRが110mm未満であると吸水量に劣ったり、巻長が短くなって交換頻度が高くなったりし、巻直径DRが189mmを超えると嵩張ったり、ロール密度が低くなったりして、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。
【0027】
なお、巻長は、21m以上37m以下であることが好ましく、25m以上33m以下であることがより好ましい。巻直径DRは、130mm以上176mm以下あることが好ましく、140mm以上163mm以下であることがより好ましい。
巻長は、キッチンタオルロール1のミシン目とミシン目の間のキッチンタオルシート1xについて、10シート分の長さを実測する。その後、キッチンタオルロール1のシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求める。例えば、10シート分の長さが1.80m、シート数が150シートの場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。なお、キッチンタオルロール1にミシン目がない場合は、実測して巻長を測定することができる。また、ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
また、ミシン目とミシン目の間の長さ(流れ方向のシートの長さ)は、100mm以上270mm以下が好ましく、125mm以上240mm以下がより好ましく、150mm以上210mm以下が更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、吸水量を良好にすることができる。
【0028】
(ロール幅及びロール質量)
キッチンタオルロール1のロール幅は150mm以上380mm以下であることが好ましく、200mm以上340mm以下であることがより好ましく、250mm以上300mm以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、吸水量を良好にすることができる。
また、キッチンタオルロール1のロール質量は160g以上550g以下であることが好ましく、230g以上450g以下であることがより好ましく、270g以上380g以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルロール1を使用する際、嵩張らずに交換頻度を良好にすることができる。
なお、ロール質量は、コア(紙管)を含まないロール幅280mmあたりの質量とする。ロール幅が280mmでない場合は、比例計算により280mmあたりの質量に換算する。
【0029】
(ロール密度及び巻密度)
キッチンタオルロール1のロール密度は0.04g/cm以上0.15g/cm以下であることが好ましく、巻密度は0.22m/cm以上0.68m/cm以下であることが好ましい。キッチンタオルロール1のロール密度が0.04g/cm未満であるか、又は巻密度が0.22m/cm未満であると、キッチンタオルロール1が嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。また、キッチンタオルロール1のロール密度が0.15g/cmを超えるか、又は巻密度が0.68m/cmを超えると、紙厚や比容積が低くなり、吸水量に劣る。
なお、キッチンタオルロール1のロール密度は0.05g/cm以上0.13g/cm以下であることが好ましく、0.06g/cm以上0.09g/cm以下であることがより好ましい。キッチンタオルロール1の巻密度は0.25m/cm以上0.54m/cm以下であることがより好ましく、0.28m/cm以上0.40m/cm以下であることが更に好ましい。
【0030】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(コア(紙管)外径部分の断面積)}で表される。コア外径DIは、ロールの中心孔の直径である。
例えば、巻長27m、2プライ、巻直径DR150mm、コア外径DI39mmの場合、巻密度=(27m×2)÷{3.14×(150mm÷2÷10)-3.14×(39mm÷2÷10)}=0.33m/cmとなる。キッチンタオルロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
また、ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅280mmあたりのキッチンタオルロール1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(280mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅280mmあたりのロール質量(コアを除く)が382g、巻直径150mm、コアの外径が39mmの場合、ロール密度=382g÷[{3.14×(150mm÷2÷10)-3.14×(39mm÷2÷10)}×(280mm÷10)]=0.083g/cmとなる。なお、キッチンタオルロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
【0031】
(坪量)
キッチンタオルシート1xの2プライの坪量は、30g/m以上54g/m以下である。2プライの坪量が30g/m未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。坪量が54g/mを超えると、キッチンタオルロール1の生産コストが高くなる。なお、キッチンタオルシート1xの2プライの坪量は、34g/m以上50g/m以下であることが好ましく、38g/m以上46g/m以下であることがより好ましい。坪量はJIS P 8124に基づいて測定する。
【0032】
また、キッチンタオルシート1xの1プライあたりの坪量は、表面1aも裏面1bもいずれも、14g/m以上28g/m以下であることが好ましく、16g/m以上26g/m以下であることがより好ましく、18g/m以上24g/m以下であることが更に好ましい。1プライあたりの坪量は、2プライの坪量を測定した後、プライを剥離し、表面1aと裏面1bの質量を測定して、その質量比から表面1aと裏面1bの坪量を算出する。
さらに、キッチンタオルシート1xにおいて、裏面1bの坪量は、表面1aの坪量より0.1g/m以上1g/m以下高い方が好ましい。表面1aは、後述するエンボスパターンを有していることから、裏面1bより吸水量が劣りやすい。裏面1bの坪量を高くすることで、裏面1bの吸水量を高めることができ、それにより全体の吸水量を高めることができる。なお、裏面1bの坪量は、表面1aの坪量より0.1g/m以上0.8g/m以下高い方がより好ましく、0.2g/m以上0.5g/m以下高い方が更に好ましい。
【0033】
(紙厚)
また、キッチンタオルシート1xの紙厚は1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下である。紙厚が1.3mm/10枚未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、5mm/10枚を超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。なお、キッチンタオルシート1xの紙厚は、2.0mm/10枚以上4.4mm/10枚以下であることが好ましく、2.6mm/10枚以上3.8mm/10枚以下であることがより好ましい。紙厚はシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。2プライに積層したキッチンタオルシート1xを5組重ねて、10枚分として測定を行う。また、測定を異なる箇所で10回繰り返して測定結果を平均する。
【0034】
(エンボスパターン)
本発明のキッチンタオルロール1(キッチンタオルシート1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。また、本発明におけるキッチンタオルシート1xは、シートにエンボス処理した後、積層して2プライにする。2プライ積層する際には、プライボンドグルー(糊)を用い、グルーを塗布して接着処理する。このように接着して2プライにすることにより、プライの接着が強くなり、キッチンタオルシート1xが水に濡れてもプライ剥がれせずに破れにくくなる。
【0035】
キッチンタオルシート1xの表面1aのプライには、エンボスパターンが施されている。エンボスパターンが表面1aに施されることで、該エンボスパターンのエンボス部にグルーを塗布して接着処理することができ、キッチンタオルシート1xのプライ剥がれが起こりにくくなり、吸水量を一定の範囲とすることができる。なお、エンボスパターンはドット状や線状等、キッチンタオルに一般的に施されるパターンであれば特に限定されないが、中でも線状のエンボスパターンであることが好ましい。線状のエンボスパターンとしては、具体的には図2に示すような、1つのパターンが、略丸型の略円形とその内部に他の柄を有する図形と、全体として上下及び左右に略線対称で、複数の曲線及び図形の組み合わせを含む図形の2種類の図形を2個ずつ含むパターンであれば、特に限定されない。略丸型の略円形については、略丸型が二重になっていることが好ましい。
また、エンボスパターンの寸法としては、エンボスパターンを囲む四角形E(Eはエンボスパターンではない)が、一辺2cm以上25cm以下四方の正方形であることが好ましく、一辺5cm以上20cm以下四方の正方形であることがより好ましく、一辺8cm以上15cm以下四方の正方形であることが更に好ましい。この四角形Eについて、縦方向はキッチンタオルロール1の流れ方向に平行であり、横方向はキッチンタオルロール1の幅方向に平行であることが好ましいが、傾いていても良い。このような柄を用いることで、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、吸水量を良好にでき、プライも剥がれにくく拭き取り性が良好になる。
【0036】
このとき、線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスについて、エンボスの長さを足した時の総長が50cm/100cm以上550cm/100cm以下であることが好ましく、80cm/100cm以上410cm/100cm以下であることがより好ましく、110cm/100cm以上300cm/100cm以下であることが更に好ましい。
上記の総長は、図2のように1つのエンボスパターンをすべて含むようにした四角形Eの内側において、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上のエンボスについて、エンボス長さを足した時の合計を総長として測定し、100cm当たりの総長とする。この四角形Eの一辺の大きさは、エンボスパターンの大きさによって適宜変更できる。なお、エンボスパターンをすべて含むようにした四角形内に、四角形内に含まれるエンボスパターンに隣接するエンボスパターンが含まれる場合は、その隣接するエンボスパターンの長さも測定し、総長に含める。また、エンボスパターンによって、四角形Eの1辺の大きさを明確に決められない場合は、四角形Eの大きさを10×10cmとして、この四角形Eに含まれるエンボス長さの総長を測定する。総長を上記の範囲にすることで、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、吸水量を良好にでき、プライも剥がれにくく拭き取り性が良好になる。総長は、上述した方法で実測して求める。なお、一般的な顕微鏡を用いて測定しても良い。
【0037】
エンボスパターンにおいて、エンボスの深さは0.06mm以上1.1mm以下であることが好ましい。エンボスの深さが0.06mm未満であると、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、プライが剥がれやすくなる。深さが1.1mmを超えると、キッチンタオルシート1xの比容積が高くなり、嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。
なお、エンボスパターンにおけるエンボスの深さは、0.10mm以上0.80mm以下であることがより好ましく、0.20mm以上0.55mm以下であることが更に好ましい。
【0038】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。又、測定条件は、倍率25倍、視野面積12mm×9mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0039】
図3は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、キッチンタオルシート1x表面の高さが濃淡で表されている。図3の濃淡が周辺と異なる線状の部位が個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記のマイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はキッチンタオルシート1xの表面1a側で行う。また、測定時に、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のキッチンタオルシート1xを用いて、2プライのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。
まず、図3のように線分ABを引き、図4の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、キッチンタオルシート1xの幅方向(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以下と狭く、下記の凸部の高さが低くなってしまう場合は、線分を斜め方向に引いたり、流れ方向に引いたりしてもよい。高さプロファイルは、実際のキッチンタオルシート1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(キッチンタオルシート1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0040】
そこで、図4の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした図5の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、図5に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、凸部H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、凸部H1と凸部H2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、図5に示すように、断面曲線上において連続する計2カ所(凹部D1と、凸部H3と凸部H4に挟まれる凹部D2の連続する計2カ所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向にキッチンタオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
なお、本発明のキッチンタオルシート1xはエンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しているため、凹部を挟んでいる左右の凸部の高さにばらつきが見られる。そのため、凹部を挟む凸部と凸部(例えば、凹部D2を挟む凸部H3と凸部H4)の縦軸の値の差が0.2mm以上ある場合は、その部分を避けた箇所で測定を行う。
【0041】
さらに、キッチンタオルシート1x全体の紙厚に対する、エンボスパターンにおけるエンボスの深さの比である、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1x全体の紙厚の比が、0.02以上0.4以下であることが好ましい。比が0.02未満であると、キッチンタオルシート1xの2プライ間の1mあたりの吸水量が低くなり、全体として吸水量に劣り、かつ、プライが剥がれやすくなる。比が0.4を超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。なお、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1x全体の紙厚の比は、0.04以上0.35以下であることがより好ましく、0.08以上0.20以下であることが更に好ましい。
【0042】
キッチンタオルシート1xの裏面1bのプライは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していれば、エンボスのパターンが施されているかどうかに関しては特に制限はない。ネステッドエンボスやピントゥピンエンボスが施されているか、又はエンボスを施されていなくてもかまわないが、好ましくはネステッドエンボス又はエンボスなし、より好ましくはエンボスなしである。従来のキッチンタオルは、ピントゥピンやネステッド形式で吸水量を確保しているが、本願のように、紙厚の高い原紙を用いた場合、先に述べたように、エンボスを設けることで紙がつぶれてしまい、吸水量が下がる。このため、表面1aは線状のエンボス、裏面1bはエンボスなしが好ましい。
【0043】
このとき、キッチンタオルシート1xの、エンボスパターンが付与されていない部分(以下、非エンボス部とも称する)における表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、35μm以上であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましく60μm以上120μm以下であることが更に好ましく、70μm以上90μm以下であることが特に好ましい。表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、35μm未満の場合、吸収性に劣る。また、表面粗さの二乗平均平方根高さSqの上限は特に限定されないが、値が高くなりすぎると嵩張る場合がある。
非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、上述のエンボスの深さと同様に、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率38倍、視野面積8mm×6mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0044】
図6に示す得られた画像について、上述のエンボスの深さと同様、フィルターを設定する。具体的には、S-フィルター(ローパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも小さいスケールの成分、L-フィルター(ハイパスフィルター)を設定することで、カットオフ波長よりも大きいスケールの成分を画像から取り除く。ここでは、S-フィルターは500μm、L-フィルターは8mmとする。S-フィルター及びL-フィルターを選択すれば、自動で二乗平均平方根高さSqが算出される。
非エンボス部は、エンボス深さと同様、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のキッチンタオルシート1xを用いて、2プライのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。キッチンタオルロールの幅方向で2カ所測定し、その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向にキッチンタオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値を二乗平均平方根高さSqとして最終的に採用する。
【0045】
(吸水量)
本発明において、キッチンタオルシート1xの2プライの1mあたりの吸水量が220g以上600g以下である。1mあたりの吸水量が220g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、600gを超えると、キッチンタオルシート1xの紙厚が高くなって嵩張る。なお、1mあたりの吸水量は、270g以上550g以下であることが好ましく、330g以上480g以下であることがより好ましく、370g以上480g以下であることが更に好ましい。
また、キッチンタオルシート1xの2プライの1gあたりの吸水量が6g以上であることが好ましい。1gあたりの吸水量が6g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。なお、1gあたりの吸水量は、7.0g以上14.0g以下であることがより好ましく、8.0g以上12.0g以下であることが更に好ましい。
【0046】
さらに、キッチンタオルシート1xの2プライ間の1mあたりの吸水量が100g以上300g以下であることが好ましい。2プライ間の1mあたりの吸水量が100g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、300gを超えると、キッチンタオルシート1xの紙厚が高くなって嵩張り、かつ、嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。このとき、2プライ間の1mあたりの吸水量とは、2プライの1mあたりの吸水量から、後述する1プライ(表面1a)の1mあたりの吸水量及び1プライ(裏面1b)の1mあたりの吸水量を差し引いた値である。
なお、2プライ間の1mあたりの吸水量は、130g以上280g以下であることがより好ましく、160g以上260g以下であることが更に好ましい。キッチンタオルシート1xの各吸水量は以下のように測定する。
【0047】
まず、2プライに重ねられたキッチンタオルシート1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片を作製する。吸水前の試験片の質量を電子天秤で測定しておく。試験片をホルダー(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダーにセットした試験片を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片をホルダーと共に蒸留水から取り出し、図7に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するサンプルと同じキッチンタオルシート1xを幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、プライを剥離して裏面の1プライを用い、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダーと試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて10分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片200の1mあたりの蒸留水の吸水量(水g/シートm)を計算する。さらに、1mあたりの吸水量(水g/シートm)を試験片200の2プライの坪量で割ることにより、1mあたりの吸水量(水g/シートm)/坪量(シートg/シートm)=1gあたりの吸水量(水g/シートg)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
1プライの吸水量は、2プライに重ねられたキッチンタオルシート1xを一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片200を得て、その後、プライを剥離して、これを1プライの吸水量測定用の試験片200とする。測定方法は、2プライと同様にする。
なお、本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0048】
なお、本発明において、キッチンタオルシート1xの1プライ(表面1a)の1mあたりの吸水量は50g以上160g以下であることが好ましく、60g以上145g以下であることがより好ましく、70g以上130g以下であることが更に好ましい。それに対して、キッチンタオルシート1xの1プライ(裏面1b)の1mあたりの吸水量は50g以上165g以下であることが好ましく、60g以上150g以下であることがより好ましく、70g以上135g以下であることが更に好ましい。
また、キッチンタオルシート1xの1プライ(表面1a)の1gあたりの吸水量は3.0g以上であることが好ましく、3.5g以上7.0g以下であることがより好ましく、4.0g以上6.0g以下であることが更に好ましい。それに対して、キッチンタオルシート1xの1プライ(裏面1b)の1gあたりの吸水量は3.1g以上であることが好ましく、3.6g以上7.1g以下であることがより好ましく、4.1g以上6.1g以下であることが更に好ましい。
【0049】
(コア外径)
また、本発明のキッチンタオルロール1の芯の外径である、コア外径DIは、25mm以上55mm以下であることが好ましく、30mm以上50mm以下であることがより好ましく、35mm以上45mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが上記の範囲のものであることにより、キッチンタオルロール1の巻密度を好適に維持しつつ、嵩張らないためキッチンタオルロール1を、キッチンタオルホルダーに収まりやすくすることができ、加えて、製造時のキッチンタオルロール1の取扱性も良好となる。
コア外径は、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均した。
さらに、ロール幅280mmあたりのコア(紙管)の質量は、5g以上22g以下であることが好ましく、7g以上17g以下であることがより好ましく、9g以上13g以下であることが更に好ましい。
【0050】
(比容積)
キッチンタオルシート1xの比容積は7cm/g以上22cm/g以下であることが好ましい。キッチンタオルシート1xの比容積が7cm/g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、22cm/gを超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。なお、上記比容積は、9cm/g以上20cm/g以下であることがより好ましく、12cm/g以上17cm/g以下であることが更に好ましい。比容積は、キッチンタオルシート1xの2プライあたりの紙厚を2プライあたりの坪量で割り、単位gあたりの容積cmで表す。
【0051】
(DMDT及びDCDT)
キッチンタオルシート1xの2プライの、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)が4.5N/25mm以上21N/25mm以下であることが好ましく、また、乾燥時の横方向の引張強さDCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)が4.5N/25mm以上21N/25mm以下であることが好ましい。DMDT又はDCDTが4.5N/25mm未満であると、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、いずれもキッチンタオルシート1xが吸水時に破れやすくなり、DMDT又はDCDTが21N/25mmを超えると、いずれもキッチンタオルシート1xの密度が高くなり、吸水性に劣る。
なお、DMDTは、6.0N/25mm以上17.0N/25mm以下であることがより好ましく、7.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは6.0N/25mm以上17.0N/25mm以下であることがより好ましく、7.5N/25mm以上12.0N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、DCDTに対するDMDTの比率(DMDT/DCDT)は0.9以上1.6以下であることが好ましく、1.0以上1.4以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0052】
(WMDT及びWCDT)
また、キッチンタオルシート1xの2プライの、旧JIS S 3104に基づく湿潤時の縦方向の引張強さWMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)が1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることが好ましく、また、湿潤時の横方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile Strength)が1.5N/25mm以上8.0N/25mm以下であることが好ましい。WMDT又はWCDTが1.5N/25mm未満であると、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、いずれもキッチンタオルシート1xが吸水時に破れやすくなり、WMDT又はWCDTが8.0N/25mmを超えると、いずれもキッチンタオルシート1xの密度が高くなり、吸水性に劣る。
なお、WMDTは、2.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることがより好ましく、2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。また、WCDTは2.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることがより好ましく、2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であることが更に好ましい。
また、WCDTに対するWMDTの比率(WMDT/WCDT)は0.9以上1.6以下であることが好ましく、1.0以上1.4以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0053】
(プライ剥離強度)
キッチンタオルシート1xのプライ剥離強度は、0.04N/75mm以上2.1N/75mm以下であることが好ましい。プライ剥離強度が0.04N/75mm未満であると、プライ同士が剥がれて拭き取りにくくなり、プライ剥離強度が2.1N/75mmを超えると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。
なお、キッチンタオルシート1xのプライ剥離強度は、0.10N/75mm以上1.2N/75mm以下であることがより好ましく、0.15N/75mm以上0.6N/75mm以下であることが更に好ましい。
プライ剥離強度の測定方法は、JIS P 8113の引張試験方法に準じて、引張試験機(STB-1225S、株式会社エー・アンド・デイ社製)を使用することができ、JIS P 8111に規定された標準条件下で行う。まず、キッチンタオルロール1のサンプルから幅方向75mm、流れ方向200mmの試験片を採取する。次に、流れ方向にプライを35mm剥離する。剥離したプライの片側を上側のつかみ具(幅75mm)に流れ方向で15mm挟んで固定する。また、もう一方のプライも下側のつかみ具(幅75mm)に流れ方向で15mm挟んで固定する。なお、つかみ具のピッチ(間隔)は20mmとする。次に、引張速度を100mm/minの条件で引張り(剥離し)、強度データを採取する。データは20μmおきに取得し、測定開始後の距離40mmから150mmまで(測定長110mm)のデータを平均して、これを剥離強度(N/75mm)とする。ただし、測定開始後の距離40mmから150mmまでにミシン目を含んでしまう場合は、測定開始後の距離を40mmから例えば90mm(測定長50mm)のように、ミシン目を含まない範囲で短くすることができる。
【0054】
(キッチンタオルシート及びキッチンタオルロールの製造方法)
キッチンタオルシート1x及びキッチンタオルロール1は、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。製造工程においては、スルーエアードライヤー技術を用いることが好ましい。このとき、抄紙工程において、上述のエンボスパターンとは異なる抄紙工程(ファブリック)由来の凹凸のパターンがキッチンタオルシート1xに施される。この凹凸のパターンを有することにより、キッチンタオルシート1xの吸水量が更に高くなる。なお、抄紙工程由来とは、キッチンタオルシート1xの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤーの入口までの間に付与されることを意味し、特にスルーエアードライヤー部でシートがファブリックと共に乾燥されることで、凹凸が形成される。
また、凹凸のパターンは、ファブリックのパターン(細かいパターン、荒いパターン)を変更することで、適宜変更することができる。凹凸のパターンを変更すると比容積(紙厚)が変わるが、原紙の比容積(紙厚)が後述する数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。また、キッチンタオルシート1xの非エンボス部の表面粗さの二乗平均平方根高さSqが上述した数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。
【0055】
このスルーエアードライヤーを用いて抄紙された原紙を用いる場合、エンボスパターンを施すためのエンボスロールにおける凸部の面積率が4%以上40%以下であることが好ましい。面積率が4%未満であると、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルシート1xの場合、プライ同士が剥がれやすくなる。面積率が40%を超えると、キッチンタオルシート1xの紙が潰れて、吸水量に劣る。
なお、凸部の面積率は6%以上30%以下であることがより好ましく、9%以上18%以下であることが更に好ましい。また、凸部及びエンボス単体の形状は、円形、楕円形、長方形、正方形、花柄、ロゴ、文字等、特に制限なく用いることができるが、上述したように線状のエンボスが好ましい。このエンボスは、上述したようにキッチンタオルシート1xの表面1aのみに設けることが好ましい。
【0056】
このとき、キッチンタオルシート1xの製造に用いる原紙の2プライの坪量(1プライの坪量を2倍したもの)は、31g/m以上58g/m以下であることが好ましく、35g/m以上54g/m以下であることがより好ましく、39g/m以上50g/m以下であることが更に好ましい。また、紙厚は1.4mm/10枚以上5.4mm/10枚以下であることが好ましく、2.1mm/10枚以上4.8mm/10枚以下であることがより好ましく、2.7mm/10枚以上4.2mm/10枚以下であることが更に好ましい。さらに、比容積は7cm/g以上22cm/g以下であることが好ましく、9cm/g以上20cm/g以下であることがより好ましく、12cm/g以上17cm/g以下であることが更に好ましい。
【0057】
なお、キッチンタオルシート1xの原紙の紙厚に対する、エンボスパターンにおけるエンボスの深さの比である、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1xの原紙の紙厚の比は、0.01以上0.38以下であることが好ましく、0.03以上0.33以下であることがより好ましく、0.07以上0.18以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルシート1xの場合、嵩張らずにプライ剥がれしにくく、吸水性を良好にすることができる。
また、キッチンタオルシート1xの比容積と原紙の比容積の差(キッチンタオルシート1xの比容積-原紙の比容積の差)は、嵩張らずにプライ剥がれしにくく、吸水性を良好にするため、-3cm/g以上2cm/g以下が好ましく、-2cm/g以上1cm/g以下がより好ましく、-1cm/g以上0.5cm/g以下が更に好ましく、-0.5cm/g以上0cm/g以下が特に好ましい。
【0058】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例0059】
(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の工程を経て、実施例1から実施例27、比較例1から比較例12のキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを製造した。また、市販品のキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを1種類用意した。以上の全ての実施例、比較例及び市販品のキッチンタオルロールに関して上述の各パラメーターを測定し、かつ、評価を行った。
なお、エンボスパターンに関しては、各実施例及び各比較例で本数や太さを適宜変更し、かつ、エンボスは全てキッチンタオルシートの表側のみに設けた。具体的には、比較例7~実施例18では、エンボスの本数を増やし、実施例19~比較例8では、エンボスの本数は増やさず、エンボスの太さを太くした。
市販品1を含めて、ロール幅が280mmではないものは、ロール幅280mmあたりに換算してロールの質量を記載した。
【0060】
製造したキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールについて、以下の項目の評価を行った。
坪量:キッチンタオルシート2プライの坪量を実測して、下記の通り評価を行った。
61g/mを超える:1点
54g/mを超えて61g/m以下:2点
50g/mを超えて54g/m以下:3点
46g/mを超えて50g/m以下:4点
46g/m以下:5点
【0061】
吸水性:上述の方法で2プライのシート1mにおける吸水量(水g/シートm)を測定し、下記の通り評価を行った。
170(水g/シートm)未満:1点
170(水g/シートm)以上220(水g/シートm)未満:2点
220(水g/シートm)以上270(水g/シートm)未満:3点
270(水g/シートm)以上330(水g/シートm)未満:4点
330(水g/シートm)以上370(水g/シートm)未満:5点
370(水g/シートm)以上:6点
【0062】
嵩張らないこと:上述の方法で紙厚、巻直径を測定し、下記表1に示す通り評価を行った。
【0063】
【表1】
【0064】
交換頻度:巻長を測定して、下記の通り評価を行った。
10m未満:1点
10m以上14m未満:2点
14m以上21m未満:3点
21m以上25m未満:4点
25m以上:5点
【0065】
拭き取り性(プライの剥がれにくさ):プライの剥離強度を測定して、下記の通り評価を行った。
0.01N/75mm未満:1点
0.01N/75mm以上0.04N/75mm未満:2点
0.04N/75mm以上0.10N/75mm未満:3点
0.10N/75mm以上0.15N/75mm未満:4点
0.15N/75mm以上:5点
【0066】
得られた結果を表2~4に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
以上より、本発明のキッチンタオルロールは、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲にした条件でも、吸水性が良好で嵩張らず、プライ剥がれせずに、交換頻度が少ないものであることが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1 キッチンタオルロール
1a 表面
1b 裏面
1e キッチンタオルシートの最外巻の端縁
1x キッチンタオルシート
200 試験片
200a、200d 隅部
210 帯
220 ホルダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7