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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116788
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】セパレータ
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013148
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 将彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】本多 勇治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 岳文
(72)【発明者】
【氏名】石井 正吾
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA02
3D022BB03
3D022BB04
3D022BC15
(57)【要約】
【課題】車両において乗員室と荷室とを仕切るセパレータであって、荷室の空間を十分に隠すことができるセパレータを提供する。
【解決手段】車両の乗員室と荷室との間に配置される左右の座席がそれぞれ個別にリクライニング可能であり、かつ、左右の座席間に空間を有する場合に、セパレータ1は、荷室を覆うトノカバーの一辺に第1の端辺12が固定される、略矩形状のメインカバー11と、車両の左右方向の両側で、第1の端辺12と対向するメインカバー11の第2の端辺13に接続される、可撓性を有する略矩形状の2つの第1のサブカバー16L,16Rと、2つの第1のサブカバー16L,16Rの間で、メインカバー11の第2の端辺13に接続される、略矩形状の1つの第2のサブカバー21と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員室と荷室との間に配置される左右の座席がそれぞれ個別にリクライニング可能であり、前記左右の座席間に空間を有する、前記乗員室と前記荷室とを仕切るセパレータであって、
前記荷室を覆うトノカバーの前記乗員室側の一辺に第1の端辺が固定される、略矩形状のメインカバーと、
前記車両の左右方向の両側で、前記第1の端辺と対向する前記メインカバーの第2の端辺に接続される、可撓性を有する略矩形状の2つの第1のサブカバーと、
2つの前記第1のサブカバーの間で、前記メインカバーの前記第2の端辺に接続される、略矩形状の1つの第2のサブカバーと、
を有するセパレータ。
【請求項2】
前記第2の端辺と対向する前記第1のサブカバーの第3の端辺が、前記乗員室と前記荷室との間に配置される前記座席の前記荷室側を向く面に固定され、
前記第2の端辺と対向する前記第2のサブカバーの第4の端辺が、前記左右の座席間に配置された固定部材に固定される、請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記メインカバーが、
中央部にて第1層と第2層とに離間する、可撓性を有する2層の面状部材から成り、
前記車両の前後方向における、前記荷室の天井側に配置される前記第1層の長さが前記第2層の長さよりも短い、請求項1または2記載のセパレータ。
【請求項4】
前記メインカバーに対する前記第1のサブカバー及び前記第2のサブカバーの接続位置が、前記第2の端辺から前記第1の端辺側にオフセットしている、請求項1から3のいずれか1項記載のセパレータ。
【請求項5】
前記トノカバーに対する前記メインカバーの固定位置が、
前記座席に対する前記第1のサブカバーの固定位置及び前記固定部材に対する前記第2のサブカバーの固定位置よりも前記荷室の天井側である、請求項2から4のいずれか1項記載のセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において乗員室と荷室とを仕切るセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の荷室に搭載された荷物を車外や車内から見えないように隠す手段として、荷室の上部を覆うトノカバー及び乗員室と荷室とを仕切るセパレータが知られている。トノカバーには、従来から剛性部材を用いたボード状の構成がある。また、巻取り方式のシートをトノカバーやセパレータとして用いる簡易な構成もある。
【0003】
トノカバーに剛性部材を用いる構成は、例えば特許文献1及び2に記載されている。また、トノカバーとして巻取り方式のシートを用いる構成は、例えば特許文献3及び4に記載されている。特許文献4には、巻取り方式のシートを仕切部材(セパレータ)として用いる構成も記載されている。なお、乗員室と荷室とを仕切るものではないが、剛性を有する仕切板を用いて前部座席を後部座席から隔離する構成が、例えば特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-030835号公報
【特許文献2】実開昭61-066037号公報
【特許文献3】特許第3313295号公報
【特許文献4】特開2009-149218号公報
【特許文献5】特開2004-067051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したトノカバーは、乗員室と荷室と間に位置する座席(例えば、後部座席)がリクライニングシートである場合に、その座席を最大限に傾斜させても、その背面と当接しないように配置する必要がある。そのため、座席を傾斜させない場合には、座席の背面側に、トノカバーでは覆えない荷室の空間が生じてしまう。そこで特許文献1-3は、後部座席上部とトノカバー端部との間に可撓性を有するサブカバーで設けることにより、後部座席を傾斜させない場合においてトノカバーで覆えない荷室の空間をサブカバーで覆う構成を提案している。しかしながら、特許文献1-3に記載された構成は、左右の後部座席の背面側の上部にそれぞれ個別のサブカバーを接続する構成であるため、左右の後部座席の傾斜角度が異なると、2つのサブカバーの間に隙間が生じてしまう課題がある。特に、左右の後部座席の間にリアコンソールが配置される車両では、リアコンソールによって形成される後部座席の相互間の隙間をサブカバーで覆うことができない。そのため、特許文献1-3に記載された構成には、乗員室側から荷室の空間を十分に隠すことができないという課題がある。
【0006】
離隔している後部座席の間の隙間から荷室を隠す方法としては、例えば、乗員室と荷室との間に位置する座席の背面側に、特許文献4に記載された仕切部材をセパレータとして設ける構成が考えられる。しかしながら、特許文献4に記載の技術は、座席がリクライニングシートであることを想定したものではないため、リクライニング時に例えば左右の座席の傾斜角度が異なる場合に対応することができない。特許文献5に記載される仕切板も、座席がリクライニングシートであることや左右の座席の間にコンソールが配置されることを想定していないため、上記の課題を解決するものではない。
【0007】
本発明は上述したような背景技術が有する課題を解決するためになされたものであり、車両において乗員室と荷室とを仕切るセパレータであって、荷室の空間を十分に隠すことができるセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のセパレータは、車両の乗員室と荷室との間に配置される左右の座席がそれぞれ個別にリクライニング可能であり、前記左右の座席間に空間を有する、前記乗員室と前記荷室とを仕切るセパレータであって、
前記荷室を覆うトノカバーの前記乗員室側の一辺に第1の端辺が固定される、略矩形状のメインカバーと、
前記車両の左右方向の両側で、前記第1の端辺と対向する前記メインカバーの第2の端辺に接続される、可撓性を有する略矩形状の2つの第1のサブカバーと、
2つの前記第1のサブカバーの間で、前記メインカバーの前記第2の端辺に接続される、略矩形状の1つの第2のサブカバーと、
を有する。
【0009】
上記のようなセパレータでは、メインカバーの第1の端辺をトノカバーの乗員室側の一辺に固定するともに、第1のサブカバー及び第2のサブカバーをその長さに応じて荷室の乗員室側で適宜固定することにより、トノカバーでは覆えない荷室の空間と、座席相互間の隙間とをこのセパレータによって覆うことができる。そのため、荷室の空間を十分に隠すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、荷室の空間を十分に隠すことができるセパレータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態のセパレータを示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)及び(c)は、それぞれ、取り外して平らに置いた状態に対応する平面図及び底面図である。
図2】セパレータの車両への取付け状態を示す図であって、(a)は概略側面図であり、(b)は乗員室側から見た概略斜視図である。
図3】荷室に大型の荷物が収納されているときのセパレータの取付け状態を示す概略側面図である。
図4】メインカバーに対する各サブカバーの縫合位置を示す概略斜視図である。
図5】メインカバーを説明する断面図である。
図6】メインカバーに対する各サブカバーの縫合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明の実施の一形態のセパレータ1の斜視図である。図1(b)は、車両から取り外して平らに置いた状態、すなわち垂れ下がっていない状態でのセパレータ1の平面図であり、図1(c)は、図1(b)の状態から表裏をひっくり返した状態でのセパレータ1を示す図、すなわち底面図である。また、図2(a)は、車両に対してセパレータ1を取り付けた状態を示す概略側面図であり、図2(b)は、乗員室側から見て座席の後方に位置して車両に取り付けられているセパレータ1を示す概略斜視図である。
【0013】
本実施形態のセパレータ1は、乗員室に対して独立した荷室を有しないステーションワゴンなどの車両において、車両の内部に設けられるトノカバーとともに、車両の乗員室側からも車外からも車両の荷室の空間を隠すために用いられるものであり、車両に対して取り外し可能に取付けられるものである。車両の乗員室と荷室との間には、リクライニング可能なシートバックを有する座席31L,31Rが配置されている。座席31Lは車両進行方向左側の座席であり、座席31Rは車両進行方向右側の座席である。2つの座席31L,31Rは車両の左右方向すなわち車幅方向に離れて設けられており、座席31L,31Rの間には空間が形成され、この空間には固定部材であるコンソール33が配置している。座席列が2以上ある車両であっては、座席31R,31Lは後部座席であり、コンソール33はリアコンソールである。セパレータ1は、略矩形状のメインカバー11と、可撓性を有する略矩形状の2つの第1のサブカバー16L,16Rと、略矩形状の1つの第2のサブカバー21とを備えている。
【0014】
メインカバー11は対向する第1の端辺12と第2の端辺13とを有し、車両において荷室を覆うトノカバーの乗員室側の一辺に第1の端辺12が固定されることによりトノカバーに取り付けられている。第1の端辺12は、セパレータ1を車両に取り付けたときにメインカバー11の車両後方側となる端部であり、後端とも呼ばれ、図では矢印Rによっても示されている。同様に第2の端辺13は、セパレータ1を車両に取り付けたときにメインカバー11の車両前方側となる端部であり、前端とも呼ばれ、図では矢印Fによっても示されている。本実施形態では、トノカバーとして巻取り式のものが使用されており、セパレータ1のメインカバー11の第1の端辺12は、トノカバーのトノカバーケース37に取り外し可能に締結されている。トノカバーケース37からは荷室を覆うトノカバーシート36が引き出されている。より具体的には、第1の端辺12に沿ってメインカバー11の内部には補強材51が設けられており、補強材51に接続してメインカバー11の裏面(セパレータ1を車両に取り付けたときに概して車両の床面側を向く面)に露出している連結部55によって、メインカバー11はトノカバーケース37に固定される。トノカバーケース37には、セパレータ1側の連結部55を受け入れる不図示の係合部が設けられている。もちろん、車両において剛性を有する板状のトノカバーを使用することも可能であり、その場合は、トノカバーの乗員室側の端部に、連結部55を受け入れる係合部が設けられる。第2の端辺13に沿ってもメインカバー11の内部に補強材52が設けられている。なお、煩雑さを避けるため、図1(c)には補強材51,52は描かれていない。
【0015】
2つの第1のサブカバー16L,16Rは、それぞれ車両の左右方向の両側で、メインカバー11の第2の端辺13に接続している。第2のサブカバー21は、2つの第1のサブカバー16L,16Rの間となる位置で、メインカバー11の第2の端辺13に接続している。車両の左右方向に沿うメインカバー11の長さは、トノカバーケース37の長さとほぼ同じである。第1のサブカバー16L,16Rは、それぞれ、メインカバー11の第2の端辺13に対向する第3の端辺17L,17Rを有する。第1のサブカバー16L,16Rの内部には、第3の端辺17L,17Rに沿って補強材53L,53Rが設けられている。第3の端辺17L,17Rは、それぞれ、座席31L,31Rのシートバックの荷室側の面に取り外し可能に固定される。一例として、補強材53L,53Rも含めて第1のサブカバー16L.16Rを貫通する穴に対して押し込み式のクリップを挿通することにより、座席31L,31Rに対して第1のサブカバー16L,16Rを固定することができる。同様に第2のサブカバー21は、メインカバー11の第2の端辺13に対向する第4の端辺22を有し、第2のサブカバー21の内部には、第4の端辺に沿って補強材54が設けられている。第2の端辺22は、例えば、補強材54を含めて第2のサブカバー21を貫通する穴にクリップを挿通することにより、車両のコンソール33の後端(荷室側の端部)に取り外し可能に固定される。なお、煩雑さを避けるため、図1(c)には補強材53L,53R,54は描かれていない。
【0016】
セパレータ1を車両から取り外して平らに置いた状態を示す図1(b)及び図1(c)に示されるように、セパレータ1において、メインカバー11の後端すなわち第1の端辺12から第1のサブカバー16L,16Rの先端すなわち第3の端辺17L,17Rまでの長さL1は、第1の端辺12から第2のサブカバー21の先端すなわち第4の端辺22までの長さL2よりも長い。また、コンソール33やトノカバーケース37は車両に固定されているから、メインシート11も可撓性を有して上述したように車両にセパレータ1を取り付けた場合、セパレータ1は、トノカバーケース37とコンソール33の間で下に凸になるように垂れるような形態となる。そして、可撓性を有する材料で構成されている第1のサブカバー16L,16Rは、座席31L,31Rのリクライニング状態に応じて変形する。図2(a)において、リクライニングしていない状態の座席31Lとそのときの第1のサブカバー16Lの状態が実線で示され、リクライニングした状態の座席31Lとそのときの第1のサブカバー16Lの状態が破線で示されている。座席31Lをリクライニングすることによって、第1のサブカバー16Lは、下方に垂れ下がるように大きく撓むが、メインカバー11や第2のサブカバー21はほとんど変形しない。また、最大角度で座席31L,31Rをリクライニングさせてもセパレータ1のメインカバー11や第2のサブカバー21は座席31L,31Rに干渉しない。
【0017】
車両において、トノカバー36やトノカバーケース37は荷室に設けられるが、リアコンソールなどであるコンソール33は、一般的には荷室内には突出しない。また、トノカバー36やトノカバーケース37は、車両において、一般的にはコンソール33よりも高い位置に設けられる。したがってトノカバーケース37に対するメインカバー11の固定位置は、固定部材であるコンソール33に対する第2のサブカバー21の固定位置よりも荷室の天井側となる。これに合わせ、本実施形態では、座席31L,31Rに対する第1のサブカバー16L,16Rの固定位置よりもトノカバーケース37に対するメインカバー11の固定位置が荷室の天井側となるようにすることが好ましい。このように構成すると、車両の側面方向から見たときにセパレータ1が斜め方向に配置することとなり、車両のバックドアを開けたときに車両の後方からコンソール33の上方の空間を通して乗員室の内部を見通そうとしてもセパレータ1によって遮られ、乗員室が見通されることが防がれる。トノカバーケース37と座席31L,31Rとの間の隙間がセパレータ1で塞がれることになるので、乗員室側からも荷室を隠すことができる。
【0018】
セパレータ1のメインシート11は、可撓性を有しない剛性材料で構成してもよいが、可撓性を有する材料で構成してもよい。可撓性を有する材料でメインシート11を構成した場合、剛性材料を用いた場合に比べ、荷室の空間をより有効に利用することが可能になる。図3は、図2(a)と同様に車両の側方から見てセパレータ1の取付け状態を示す図であるが、荷室に大型の荷物100が収納されている点で、図2(b)とは異なっている。図3に示した例では、セパレータ1のメインカバー11が荷物100に押されて上に凸になるように撓んでいる。図3における荷物100の車両前方側の端部の位置Aは、メインカバー11が剛性部材で形成されているとしたら荷物100が到達することができない位置である。すなわち、可撓性を有する材料によってメインカバー11を構成することにより、荷室において車両のより前方の側にも荷物を収納することが可能になり、荷室の空間をより有効に利用できることになる。ただし図3に示すような場合、上に凸になるように撓んだメインカバー11に対して座席13Lのシートバックが当接する可能性があるので、座席13Lのリクライニング可能な角度範囲が狭くなる。
【0019】
次に、セパレータ1のメインカバー11に対する第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー21の接続の形態について説明する。第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー21は、メインカバー11に対し、例えば縫い合わせなどによって接合される。後述するようにメインカバー11や第1のサブカバー16L,16R、第2のサブカバー21を車両の内装に用いられるものと同様の表皮材によって構成するときは、縫い合わせによって接続することが好ましい。図1(c)において一点鎖線Sは、メインカバー11に対する第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー21の縫合位置を示している。また図4は、縫合位置Sを概略的に示している。上記の説明では、第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー21は、メインカバー11の第2の端辺13に接続されるとしているが、実際には、縫合位置Sは、メインカバー11の前端F(第2の端辺13)からやや後端R(第1の端辺12)の側にオフセットした位置となっている。オフセットさせずにメインカバー11の前端Fに第1のサブカバー16L,16Rを接続した場合、座席16L,16Rのリクライニング時の第1のサブカバー16L,16Rの撓みが大きくなりすぎ、それに引っ張られる形態でメインカバー11も大きく撓みかつ歪む可能性がある。これに対して縫合位置Sをオフセットさせることで、リクライニング時の第1のサブカバー16L,16Rの撓み量が小さくなってメインカバー11が撓みにくくなる。また、縫合位置Sをオフセットさせることにより縫合位置Sから前端Fの側にメインカバー11がひさし状に延びるので、第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー21の間に形成される隙間をひさし状に延びた領域で隠すことができ、隙間から荷室の空間を見えなくすることができる。
【0020】
次に、セパレータ1のメインカバー11、第1のサブカバー16L,16R及び第2のサブカバー21の各カバーを構成する素材について説明する。メインカバー11、第1のサブカバー16L,16R及び第2のサブカバー21は、いずれも面状部材によって構成される。セパレータ1、特にメインカバー11は、乗員室の側から見える部材であり、また、荷室に荷物を収納するときなどにも見える部材であるので、車両における美観を損ねないように、面状部材の表面の色や質感、意匠には十分に注意を払うことが好ましい。1層の面状部材を用いてもよいが、1層の面状部材の表面及び裏面の両方の面について色、質感、意匠を同等のものとすることがコストなどの理由により難しいことがあるので、裏面どうしが向かい合うように2層の面状部材を配置して各カバーを構成することもできる。2層の面状部材を重ねてメインカバー11を構成するときに、2層の面状部材を貼り合わせるなどした場合には、メインカバー11が撓んだときに撓みの内側となる面状部材の表面にしわが生じて美観を損ねることになる。そこで、図5に示すように、中央部において第1層61と第2層62とに離間する、可撓性を有する2層の面状部材によってメインカバー11を構成し、車両の前後方向における、荷室の天井側に配置される第1層61の長さの方が第2層62の長さよりも短くなるようにすることが好ましい。このようにメインカバー11を構成した場合には、図2(a)に示すようにメインカバー11が下に凸になるように垂れ下がる場合に、メインカバー11の第1層61及び第2層62の両方の表面にしわが生じないようにすることができる。一方、図3に示すように荷物100に押し上げられてメインカバー11が上に凸になるように撓む場合、第2層62の表面にしわが生じるおそれがあるが、このときは荷物100によってメインカバー11が車両後方側からは見えづらくなっているので、美観に与える影響は少ない。
【0021】
ここでは、メインカバー11を2層の面状部材で構成し、かつ中央部において2層を離間させることを説明したが、車両形状やセパレータ1の形状によっては、第1のサブカバー16L,16R及び第2のサブカバー21の少なくとも一方においても、中央部で2層が離間するように面状部材を配置してもよい。カバーの端部などにおいて面状部材の断面が露出すると美観を損ねるので、面状部材が露出する位置では、縁取り部材を例えば縫合によって結合し、面状部材の断面が縁取り部材によって隠されるようにすることが好ましい。特に、2層の面状部材によって各カバーを構成する場合、面状部材を折り返して2層とするときの折り返しの位置以外では、カバーの端部において面状部材の層が重なり合うとともに面状部材の断面が露出する。図1(b)及び図1(c)において、縁取り部材が配設されるところは太線で示されている。
【0022】
面状部材としては、車両において内装材として用いられるものと同様の表皮材を用いることが好ましい。表皮材の材質は繊維製であってもよいし、樹脂製であってもよい。特に繊維製の表皮材の場合、使用する材質によっては表面と裏面とで見た目が異なることがある。例えば表面は黒色であるが、裏面は灰色がかった表皮材がある。このような表皮材を用いるときは、美観のために、裏面同士が向かい合うように表皮材を2層で設けて各カバーを構成することが必要となる。また、表皮材相互の接続は縫合によって行われるが、縁取りさえている位置以外で縫い目が外部に現れると美観が損なわれる。
【0023】
図6は、メインカバー11に対する各サブカバーの縫合状態を示す断面図であり、ここでは、第2のサブカバー21がメインカバー11に縫合されている部分を示している。メインカバー11を構成する表皮材の第1層61は、前端すなわち第2の端辺13の位置で、補強材52を巻き込みつつ折り返している。一方、メインカバー11の第2層62の第2の端辺13の端部には縁取り部材71が縫い付けられ、折り返された第1層61に縫い合わされている。図において太線は、縫合位置を示し、どの層とのどの層とが縫い合わされているかを示している。第2のサブカバー21は、その第4の端辺22に対向する第5の端辺23で表皮材を折り返すことで、2層の表皮材を重ねて構成されている。第4の端辺22では重ね合わされた表皮材の断面が露出するので、縁取り部材72が縫い合わされている。図では、第4の端辺22の近傍において補強材54が2層の表皮材に挟持され、クリップ74によって第2のサブカバー21がコンソール33に取り付けられていることも示されている。第2のサブカバー21の第5の端辺23の近傍では、2層の表皮材が相互に縫い合わされるとともに、第2のサブカバー21の2層の表皮層のうちメインカバー11の第2層62と接する方の層が、メインカバー11の第2層62と縫い合わされている。ここでは第2のサブカバー21のメインカバー11への縫い付け方を説明したが、第1のサブカバー16L,16Rも同様にメインカバー11に縫い付けられる。このように縫い付けを行うことにおり、メインカバー11の第1層61の表面、すなわちメインカバー11の乗員室側の表面では、目立つところに縫い目が現れなくなる。なお縁取り部材71,72は、例えば繊維製である。
【0024】
次に、補強材51,52,53L,53R,54について説明する。本実施形態のセパレータ1では、補強材51,52,53L,53R,54を設けることにより、車両左右方向に関してセパレータ1に剛性を持たせ、車両左右方向にセパレータ1が垂れ下がることを防いでいる。補強材51は、例えばトノカバーケース37との接続に用いる連結部55を支持する樹脂製プレートであるが、ガラス繊維基材や金属板(ステンレス鋼やアルミニウム)であってもよい。連結部55は、例えば樹脂製のクリップにより構成される。補強材52,53L,53R,54は、例えばガラス繊維基材によって構成されるが、金属板あるいは樹脂製プレートであってもよい。メインカバー11も含めて各カバーを表皮材で構成すると、セパレータ1において硬くて曲げられない部分は、補強材51,52,53L,53R,54及び連結部55と、各サブカバー16L,16R,21の固定に用いられるクリップだけであり、セパレータ1におけるその他の部分は、柔らかく、折り曲げが容易である。
【0025】
座席16L,16Rのリクライニングが行われてもメインカバー11と第2のサブカバー21はほとんど変形しないから、メインカバー11と第2のサブカバーを別体とせずに1つのカバー体によって構成することもできる。その場合、しかしながら、複数の車種に対して本実施形態のセパレータ1を適用する場合、トノカバーケース37の長さには大きな違いはないものの座席形状やコンソール33の形状が車種ごとに異なることが多いので、メインカバー11と第2のサブカバーを別体とせずに1つのカバー体とするときは、車種ごとにセパレータ1を設計し直す必要が生じる。これに対し、メインカバー11と第2のサブカバー21とを別体とし、車種ごとに異なる形状の第1のサブカバー16L,16Rと第2のサブカバー33を用意し、縫合位置を工夫した場合には、複数の車種に対して共通のメインカバー11を使用することが可能になるので、セパレータ1の生産性が向上する。
【符号の説明】
【0026】
1 セパレータ
11 メインカバー
12 第1の端辺
52 第2の端辺
16L,16R 第1のサブカバー
17L,17R 第3の端辺
21 第2のサブカバー
22 第4の端辺
25 第5の端辺
31L,31R 座席
33 コンソール
36 トノカバー
37 トノカバーケース
51,52,53L,53R,54 補強材
55 連結部
61 第1層
62 第2層
図1
図2
図3
図4
図5
図6