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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116801
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20220803BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
E04B1/64 E
E04B1/80 100J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013173
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】行成 貞一
(72)【発明者】
【氏名】嶽釜 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】軽部 元喜
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB05
2E001DD01
2E001DD02
2E001EA06
2E001FA04
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA33
2E001HC11
2E001HD09
2E001HF07
2E001HF11
2E001KA01
2E001MA01
(57)【要約】
【課題】壁部材および壁部材と梁との間の隙間における結露の発生を抑制することができる建築物を提供する。
【解決手段】建築物は、第1気密部材と、第1気密部材の室内側に設けられた第1断熱材と、第1断熱材の室内側に設けられた第2気密部材と、第1気密部材の室外側に設けられた第2断熱材と、を有する壁部材と、壁部材との間に隙間が形成された状態で壁部材の上に設けられた梁と、隙間を塞ぐように梁から壁部材に亘って設けられているとともに第1気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第3気密部材と、隙間と重なる位置において第3気密部材の室内側に設けられた第3断熱材と、第3断熱材の室内側において隙間を塞ぐように梁から壁部材に亘って設けられているとともに第2気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第4気密部材と、隙間と重なる位置において第3気密部材の室外側に設けられた第4断熱材と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物であって、
第1気密部材と、前記第1気密部材の室内側に設けられた第1断熱材と、前記第1断熱材の室内側に設けられた第2気密部材と、前記第1気密部材の室外側に設けられた第2断熱材と、を有する壁部材と、
前記壁部材との間に隙間が形成された状態で前記壁部材の上に設けられた梁と、
前記隙間を塞ぐように側面視で前記梁から前記壁部材に亘って設けられているとともに前記第1気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第3気密部材と、
側面視において前記隙間と重なる位置において前記第3気密部材の室内側に設けられた第3断熱材と、
前記第3断熱材の室内側において前記隙間を塞ぐように側面視において前記梁から前記壁部材に亘って設けられているとともに前記第2気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第4気密部材と、
側面視において前記隙間と重なる位置において前記第3気密部材の室外側に設けられた第4断熱材と、を有する建築物。
【請求項2】
前記第3気密部材は、前記梁に取り付けられた被取付部と、前記第1気密部材に対して気密を確保した状態で接続された被接続部と、前記被取付部と前記被接続部とを連結する連結部と、を備えている、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記連結部は、前記被取付部から下に延びる第1延出部と、前記第1延出部の先端部から室内側または室外側に延びるとともに、前記梁の下面と対向する第2延出部と、を有する、請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記被接続部は、前記被取付部および前記連結部と比較して大きな弾性を有する材質により形成されている、請求項2または請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記梁は、上下方向に対向する一対のフランジと、前記両フランジ同士を内外方向の中間位置で互いに連結するウェブと、を有し、
前記建築物は、前記被取付部および前記フランジを挟み込むことにより前記梁に対して前記被取付部を拘束する拘束部材をさらに備えている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項6】
前記建築物は、前記梁の室内側に設けられた第5断熱材をさらに備えている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項7】
前記建築物は、前記梁により前記梁上に支持された梁上部材をさらに備え、
前記第4気密部材は、前記第5断熱材の室内側において前記第5断熱材を覆うとともに、前記梁上部材に接続されている、請求項6に記載の建築物。
【請求項8】
前記建築物は、前記梁の室外側に設けられた第6断熱材をさらに備えている、請求項6または請求項7に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁部材と、壁部材との間に隙間が形成された状態で壁部材の上に設けられた梁と、を備え、気密部材によって壁部材および当該隙間における気密を図る建築物がある(例えば特許文献1)。
【0003】
具体的に、当該建築物の壁部材は第1気密部材と、第1気密部材の室外側に設けられた第1断熱材と、を有する。また、当該建築物は、隙間を塞ぐように側面視で梁から壁部材に亘って設けられているとともに、第1気密部材に接続された第2気密部材と、側面視において隙間と重なる位置において第2気密部材の室内側または室外側に設けられた第2断熱材と、を有する。これら第1気密部材および第2気密部材によって壁部材および隙間における気密が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-10448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の建築物では、壁部材に設けられた第1気密部材が室内の温度環境に置かれている。そのため、夏季において室内側の冷房によって冷却された第1気密部材の室外側の面で、外部から壁部材に侵入した湿度の高い空気が冷却され、壁部材において結露が生じるおそれがある。また、建築物では、壁部材だけでなく、壁部材と梁との隙間においても結露の防止が求められている。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、壁部材および壁部材と梁との間の隙間における結露の発生を抑制することができる建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0008】
本発明の一局面に係る建築物は、第1気密部材と、前記第1気密部材の室内側に設けられた第1断熱材と、前記第1断熱材の室内側に設けられた第2気密部材と、前記第1気密部材の室外側に設けられた第2断熱材と、を有する壁部材と、前記壁部材との間に隙間が形成された状態で前記壁部材の上に設けられた梁と、前記隙間を塞ぐように側面視で前記梁から前記壁部材に亘って設けられているとともに前記第1気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第3気密部材と、側面視において前記隙間と重なる位置において前記第3気密部材の室内側に設けられた第3断熱材と、前記第3断熱材の室内側において前記隙間を塞ぐように側面視において前記梁から前記壁部材に亘って設けられているとともに前記第2気密部材に対して気密を確保した状態で接続された第4気密部材と、側面視において前記隙間と重なる位置において前記第3気密部材の室外側に設けられた第4断熱材と、を有する。
【0009】
本発明にかかる建築物によれば、壁部材から壁部材と梁との間の隙間(以下単に「隙間」ともいう。)に亘り結露の発生を抑制することができる。具体的に、上記の建築物では、第1気密部材と第3気密部材とが気密を確保した状態で接続され、第2気密部材と第4気密部材とが気密を確保した状態で接続されている。これにより、壁部材から隙間に亘って室外側には第1気密部材と第3気密部材により気密ライン(以下「外側気密ライン」という。)が形成され、室内側には第2気密部材と第4気密部材により別の気密ライン(以下「内側気密ライン」という。)が形成される。これらの2本の気密ラインにより、壁部材および隙間における気密を図ることができる。
【0010】
この明細書において、二つの部材が「気密を確保した状態で接続される」とは、二つの部材が直接的に接続され且つ気密が確保されている状態、および、二つの部材が別の部材を介して間接的に接続され且つ二つの部材の部材の間での気密が確保されている状態をいう。
【0011】
また、外側気密ラインと内側気密ラインとの間には、壁部材および隙間に第1断熱材および第3断熱材(以下「内側断熱材」と総称する。)が設けられており、外側気密ラインの室外側には、壁部材および隙間に第2断熱材および第4断熱材(以下「外側断熱材」と総称する。)が設けられている。
【0012】
そのため、上記の建築物では、夏季には、外側気密ラインによって、湿度の高い外気が外側気密ラインと内側気密ラインとの間の空間に侵入するのを抑制することができ、かつ内側断熱材によって室内側の冷房による外側気密ラインの冷却が抑制される。そのため、夏季において、壁部材から隙間に亘り結露の発生を抑制することができ、結露による内側断熱材の劣化を抑制することができる。
【0013】
さらに、冬季には、内側気密ラインによって、室内から湿度の高い空気が内側気密ラインと外側気密ラインとの間の空間に侵入するのを抑制することができ、かつ内側断熱材および外側断熱材によって、低温の外気による内側気密ラインの冷却が抑制される。そのため、冬季において、壁部材から隙間に亘り結露の発生を抑制することができ、かつ結露による内側断熱材および外側断熱材の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、寒冷地においては、内外気密ライン間に存在している微小の湿度が外気によって冷却されて結露することが問題となるが、上記の建築物では、外側断熱材により外側気密ラインの冷却を抑制することができるため、内外気密ライン間における結露も有効に抑制することができる。
【0015】
上記の建築物において、前記第3気密部材は、前記梁に取り付けられた被取付部と、前記第1気密部材に対して気密を確保した状態で接続された被接続部と、前記被取付部と前記被接続部とを連結する連結部と、を備えていてもよい。
【0016】
この態様では、第3気密部材において、被取付部と被接続部とが連結されており、被取付部の下に第3断熱材または第4断熱材を配置するための空間を区画することができる。
【0017】
上記の建築物において、前記連結部は、前記被取付部から下に延びる第1延出部と、前記第1延出部の先端部から室内側または室外側に延びるとともに、前記梁の下面と対向する第2延出部と、を有していてもよい。
【0018】
この態様では、梁と第2延出部との間に第3断熱材または第4断熱材をはめ込むことにより第3断熱材または第4断熱材を安定して配置することが可能である。
【0019】
上記の建築物において、前記被接続部は、前記被取付部および前記連結部と比較して大きな弾性を有する材質により形成されていてもよい。
【0020】
この態様では、梁と壁部材との間の隙間に寸法誤差が生じても、当該寸法誤差を被接続部の弾性変形によって吸収することができるため、第1気密部材に対して第3気密部材をより確実に接続することができる。
【0021】
上記の建築物において、前記梁は、上下方向に対向する一対のフランジと、前記両フランジ同士を内外方向の中間位置で互いに連結するウェブと、を有し、前記建築物は、前記被取付部および前記フランジを挟み込むことにより前記梁に対して前記被取付部を拘束する拘束部材をさらに備えていてもよい。
【0022】
この態様では、拘束部材を用いることによって、梁のフランジに対し、第3気密部材の被取付部を容易に取り付けることができる。
【0023】
上記の建築物は、前記梁の室内側に設けられた第5断熱材をさらに備えていてもよい。
【0024】
この態様では、夏季において、梁によって、湿度の高い外気が梁の室内側に侵入するのを抑制することができ、かつ第5断熱材によって室内側の冷房による梁の冷却を抑制することができるため、梁の室外側の面における結露の発生を抑制することができる。
【0025】
上記の建築物は、前記梁により前記梁上に支持された梁上部材をさらに備え、前記第4気密部材は、前記第5断熱材の室内側において前記第5断熱材を覆うとともに、前記梁上部材に接続されていてもよい。
【0026】
この態様では、冬季において、第4気密部材によって、室内から、梁と第4気密部材との間の空間に湿度の高い空気が侵入するのを抑制し、かつ、第5断熱材により第4気密部材の冷却を抑制することができるため、冬季における第4気密部材での結露の発生および結露による第5断熱材の劣化を抑制することができる。
【0027】
上記の建築物は、前記梁の室外側に設けられた第6断熱材をさらに備えていてもよい。
【0028】
この態様では、寒冷地においては、梁と第4気密部材との間の空間に存在している微小の湿度が外気によって冷却されて結露することが問題となるが、上記の建築物では、第6断熱材により梁の冷却を抑制することができるため、梁と第4気密部材との間における結露も有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、外気に対して室内の気密を図るだけでなく、結露の発生を抑制することができる建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建築物の壁部材および梁上部材の周辺の部分断面図である。
図2図2は、図1のII-II線での断面図である。
図3図3は、第2気密部材の側面図である。
図4図4は、拘束部材の側面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態の変型例に係る第2気密部材の側面図であり、図5(a)は第1の変型例、図5(b)は第2の変型例、図5(c)は第3の変型例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る建築物について図面に基づいて説明する。
【0032】
(建築物の構成)
図1は、本実施形態に係る建築物の壁部材および梁上部材の周辺の部分断面図であり、図2は、図1のII-II線での断面図である。図3は、第2気密部材の側面図であり、図4は拘束部材の側面図である。建築物1は、柱6と、壁部材10と、梁20と、梁上部材5と、第3気密部材30と、第3断熱材40と、第4気密部材50と、第4断熱材60と、拘束部材70と、第5断熱材81と、第6断熱材82と、野縁3と、天井パネル4と、を有する。
【0033】
次に、建築物1を構成する各要素について説明する。
【0034】
柱6は、水平方向に間隔を空けて複数設けられ(図2では1本のみ示す。)、その上端が梁20の下面よりも下に配置された状態で梁20の下で直立している。柱6は、H型鋼からなり、ウェブが壁部材10と平行に配置されている。
【0035】
図1および図2に示すように、壁部材10は、第1気密部材11と、第1気密部材11の室内側に設けられた第1断熱材12と、第1断熱材12の室内側に設けられた第2気密部材13と、第1気密部材11の室外側に設けられた第2断熱材14と、第2気密部材13の室内側に設けられた内壁パネル15と、第1断熱材12の上下面および側面を囲む枠体16と、を有する。
【0036】
第2断熱材14は、複数の断熱材片からなり、隣接する2本の柱6の間および各柱6の周囲に設けられている。第2断熱材14を構成する断熱材片は、押出発泡ポリスチレン等からなる硬質の断熱材(以下、単に「硬質断熱材」ともいう)である。第2断熱材14を構成する断熱材片は、セルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等からなる軟質の繊維系断熱材(以下、単に「軟質断熱材」ともいう。)であってもよい。また、第2断熱材14を構成する断熱材片は、硬質断熱材と軟質断熱材とを組み合わせて使用してもよい。
【0037】
第1気密部材11は、第2断熱材14を内側から覆った状態で枠体16の外面に固定されている。また、第1気密部材11の上端部は、柱6および第2断熱材14の上端部の内側面と枠体16の上部の横材との間に挟まれている。第1気密部材11は樹脂製のシートである。
【0038】
枠体16は、不図示の固定部材を介して梁20および不図示の床板材に固定されている。具体的に、枠体16は、左右方向に延びるとともに上下方向に対向する一対の横材と、横材の右端部同士および左端部同士を接続するように上下方向に延びるとともに左右方向に対向する一対の縦材と、を有する。
【0039】
第1断熱材12は、枠体16の内側にはめ込まれている。第1断熱材12は、軟質断熱材である。第1断熱材12は、硬質断熱材であってもよく、硬質断熱材および軟質断熱材の両方を使用してもよい。
【0040】
第2気密部材13は、第1断熱材12を内側から覆った状態で枠体16の内面に固定されている。具体的に、第2気密部材13は、枠体16と内壁パネル15との間、枠体16と天井パネル4との間、および、枠体16と野縁3との間に挟まれている。第2気密部材13は、樹脂製のシートである。
【0041】
野縁3は、不図示の野縁受けを介して不図示の梁に固定されている。天井パネル4は、野縁3の下面に釘または木ねじ等の固定部材によって固定されている。天井パネル4は、石膏ボード等の板材である。
【0042】
内壁パネル15は、天井パネル4の下において枠体16および第1断熱材12との間で第2気密部材13を挟んだ状態で枠体16に固定されている。内壁パネル15は、石膏ボード等の板材である。
【0043】
梁20は、壁部材10との間に隙間2が形成された状態で壁部材10の上に設けられている。梁20は、H型鋼からなり、上下方向に対向する一対のフランジ22、23と、両フランジ22、23同士を内外方向の中間位置で互いに連結するウェブ21と、を有する。
【0044】
梁上部材5は、梁20によって当該梁20上に支持されたものである。梁上部材5としては、例えば、屋根や上層階の床材が挙げられる。本実施形態では、梁上部材5として陸屋根を例示する。具体的に、梁上部材5は、ALC(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete;オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート)等からなる板状の部材である。
【0045】
第3気密部材30は、隙間2を塞ぐように建築物1の側面視(図1における左右方向から見て)で梁20から壁部材10に亘って設けられているとともに第1気密部材11に対して気密を確保した状態で直接的に接続されている。これにより、第3気密部材30は、第1気密部材11および梁20とともに、外側気密ラインを形成する。
【0046】
第3気密部材30は、図1および図3に示すように、梁20に取り付けられた被取付部31と、第1気密部材11に対して気密を確保した状態で直接的に接続された被接続部32と、被取付部31が被接続部32の室外側に位置するように被取付部31と被接続部32とを連結する連結部33と、被取付部31の上面に設けられた粘着テープ31aと、を備えている。
【0047】
被取付部31は、梁20の下面に沿って延びるとともに梁20の下面に取り付けられている。具体的に、被取付部31は、後述の連結部33から室内側に延びている。本実施形態において、被取付部31は、粘着テープ31aを介して梁20の下面に取り付けられている。
【0048】
連結部33は、被取付部31の外側の端部から下に延びる第1延出部33aと、第1延出部33aの下端部から室内側に延びるとともに、梁20の下側のフランジ22の下面と対向する第2延出部33bと、を有する。このような構成を有することにより、梁20と壁部材10との間の隙間2は、第3断熱材40をはめ込むために内側に開く空間と、第4断熱材60を設けるための第1延出部33aの外側の空間と、に区画されている。なお、本実施形態に係る建築物1において、第1延出部33aは、梁20のウェブ21の真下の位置でウェブ21と平行に配置されている。
【0049】
被接続部32は、第2断熱材14および柱6と枠体16の上部の横材との間に挟まれた第1気密部材11の上端部に対して上から密着している。また、被接続部32は、被取付部31および連結部33と比較して大きな弾性を有する材質により形成されている。具体的に、被取付部31および連結部33は成形された鉄板からなり、被接続部32は、当該鉄板よりも大きな弾性を有する発泡樹脂により形成されている。
【0050】
拘束部材70は、第3気密部材30の被取付部31および梁20の下側のフランジ22におけるウェブ21の室内側に延びる部分22aを挟み込むことにより梁20に対して被取付部31を拘束する。拘束部材70は、梁20および被取付部31の長手方向(水平方向)の複数箇所に設けられている。
【0051】
拘束部材70は、図4に示すように、第3気密部材30の被取付部31に対向する下側部71と、フランジ22の室内側に延びる部分22aの上面に対向する上側部72と、下側部71と上側部72との間の距離がフランジ22と被取付部31との合計厚み寸法よりも小さくなるように下側部71と上側部72とを連結する連結部73と、を有する。本実施形態の拘束部材70は、成形された金属板からなる。
【0052】
下側部71は、連結部73の下端から垂直に延びる垂直部71aと、連結部73から離れるに従って上側部72から離れる方向に垂直部71aの先端部から延びる誘い込み部71bと、を有する。上側部72は、連結部73から離れるに従い下側部71に近づく方向に向けて連結部73の上端部から延びる近接部72aと、連結部73から離れるに従い下側部71から離れる方向に向けて近接部72aの先端部から延びる誘い込み部72bと、を有する。拘束部材70は、両誘い込み部71b、72bの表面に沿ってフランジ22および被取付部31を下側部71と上側部72との間に案内することができる。また、垂直部71aと近接部72aとの間の距離は、フランジ22と被取付部31との合計厚み寸法よりも小さく設定されている。そのため、上記のようにフランジ22および被取付部31を下側部71と上側部72との間に導くことにより拘束部材70の弾性力によってフランジ22および被取付部31を挟持することができる。
【0053】
第3断熱材40は、建築物1の側面視において、隙間2と重なる位置において第3気密部材30の室内側に設けられている。具体的に、第3断熱材40は、第3気密部材30の被取付部31およびフランジ22と第2延出部33bとの間にはめ込まれている。第3断熱材40は、第2断熱材14と同様に、硬質断熱材からなる。第3断熱材40は、軟質断熱材であってもよく、また、断熱性能を有する耐火被覆材であってもよい。また、第3断熱材40は、硬質断熱材、軟質断熱材および耐火被覆材の2つ以上を使用してもよい。
【0054】
第4気密部材50は、第3断熱材40の室内側において隙間2を塞ぐように建築物1の側面視において梁20から壁部材10に亘って設けられているとともに第2気密部材13に対して気密を確保した状態で直接的に接続されている。これにより、第4気密部材50は、第2気密部材13とともに、内側気密ラインを形成する。さらに、第4気密部材50は、後述する第5断熱材81の室内側において第5断熱材81を覆うとともに、梁上部材5に接続されている。第4気密部材50は、板状の防湿部材からなるものであってもよく、シート状の防湿部材からなるものであってもよい。さらに、第4気密部材50は、吹き付けによって形成された発泡ウレタンからなるものであってもよい。
【0055】
第4断熱材60は、建築物1の側面視において隙間2と重なる位置において第3気密部材30の室外側に設けられている。具体的に、第4断熱材60は、第3気密部材30の第1延出部33aの室外側において、梁20の下面と第2断熱材14の上面とをつなぐように配置されている。第4断熱材60は、第2断熱材14と同様に、硬質断熱材からなる。第4断熱材60は、軟質断熱材であってもよく、また、断熱性能を有する耐火被覆材であってもよい。さらに、硬質断熱材、軟質断熱材および耐火被覆材の2つ以上を使用してもよい。
【0056】
第5断熱材81は、梁20の室内側に設けられている。具体的に、第5断熱材81は、第4気密部材50と梁20と梁上部材5と第3断熱材40とによって囲まれた空間に配置されている。
【0057】
第6断熱材82は、梁20の室外側に設けられている。具体的に、第6断熱材82は、梁20のウェブ21の室外側に配置されている。
【0058】
第5断熱材81および第6断熱材82は、第1断熱材12と同様に、軟質断熱材からなる。第5断熱材81および第6断熱材82は、硬質断熱材であってもよく、また、断熱性能を有する耐火被覆材であってもよい。さらに、硬質断熱材、軟質断熱材および耐火被覆材の2つ以上を使用してもよい。
【0059】
(作用、効果)
本実施形態に係る建築物1では、壁部材10から隙間2に亘り結露の発生を抑制することができる。具体的に、建築物1では、第1気密部材11と第3気密部材30と梁20とが気密を確保した状態で直接的に接続され、第2気密部材13と第4気密部材50とが気密を確保した状態で直接的に接続されている。これにより、壁部材10から隙間2に亘って室外側には第1気密部材11と第3気密部材30と梁20により外側気密ラインが形成され、室内側には第2気密部材13と第4気密部材50により内側気密ラインが形成される。これらの2本の気密ラインにより、壁部材10および隙間2における気密を図ることができる。
【0060】
また、外側気密ラインと内側気密ラインとの間には、壁部材10および隙間2に第1断熱材12および第3断熱材40(以下「内側断熱材」と総称する。)が設けられており、外側気密ラインの室外側には、壁部材10および隙間2に第2断熱材14および第4断熱材60(以下「外側断熱材」と総称する。)が設けられている。
【0061】
そのため、建築物1では、夏季には、外側気密ラインによって、湿度の高い外気が外側気密ラインと内側気密ラインとの間の空間に侵入するのを抑制することができ、かつ内側断熱材によって室内側の冷房による外側気密ラインの冷却が抑制される。そのため、夏季において、壁部材10から隙間2に亘り結露の発生を抑制することができ、結露による内側断熱材の劣化を抑制することができる。
【0062】
さらに、冬季には、内側気密ラインによって、室内から湿度の高い空気が内側気密ラインと外側気密ラインとの間の空間に侵入するのを抑制することができ、かつ内側断熱材および外側断熱材によって、低温の外気による内側気密ラインの冷却が抑制される。そのため、冬季において、壁部材10から隙間2に亘り結露の発生を抑制することができ、かつ結露による内側断熱材および外側断熱材の劣化を抑制することができる。
【0063】
また、寒冷地においては、内外気密ライン間に存在している微小の湿度が外気によって冷却されて結露することが問題となるが、建築物1では、外側断熱材により外側気密ラインの冷却を抑制することができるため、内外気密ライン間における結露も有効に抑制することができる。
【0064】
建築物1では、第3気密部材30において、被取付部31が被接続部32の室外側に位置するように被取付部31と被接続部32とが連結されており、被取付部31の下の室内側に第3断熱材40を配置するための空間を区画することができる。そのため、第3気密部材30が第1気密部材11の上に垂直に延びる場合と比較して、第3断熱材40が室内の空間に与える影響を抑えた状態で第3断熱材40を配置することができる。
【0065】
建築物1では、第3気密部材30の連結部33は、被取付部31から下に延びる第1延出部33aと、第1延出部33aの先端部から室内側に延びるとともに梁20の下面と対向する第2延出部33bとを有する。そのため、梁20と第2延出部33bとの間に第3断熱材40をはめ込むことにより第3断熱材40を安定して配置することが可能である。
【0066】
建築物1では、第3気密部材30の被接続部32は、被取付部31および連結部33と比較して大きな弾性を有する材質により形成されている。そのため、梁20と壁部材10との間の隙間2に寸法誤差が生じても、当該寸法誤差を被接続部32の弾性変形によって吸収することができるため、第1気密部材11に対して第3気密部材30をより確実に接続することができる。
【0067】
建築物1では、拘束部材70を用いることによって、梁20のフランジ22におけるウェブ21の室内側に延びる部分22aに対し、室内側から第3気密部材30の被取付部31を容易に取り付けることができる。
【0068】
建築物1では、夏季において、梁20によって、湿度の高い外気が梁20の室内側に侵入するのを抑制することができ、かつ第5断熱材81によって室内側の冷房による梁20の冷却を抑制することができるため、梁20の室外側の面における結露の発生を抑制することができる。
【0069】
また、冬季において、第4気密部材50によって、室内から、梁20と第4気密部材50との間の空間に湿度の高い空気が侵入するのを抑制し、かつ、第5断熱材81により第4気密部材50の冷却を抑制することができるため、冬季における第4気密部材50での結露の発生および結露による第5断熱材81の劣化を抑制することができる。
【0070】
さらに、寒冷地においては、梁20と第4気密部材50との間の空間に存在している湿度が外気によって冷却されて結露することが問題となるが、建築物1では、第6断熱材82により梁20の冷却を抑制することができるため、梁20と第4気密部材50との間における結露も有効に抑制することができる。
【0071】
(変型例)
本実施形態に係る建築物1では、第3気密部材30の第1延出部33aは、梁20のウェブ21の真下に位置するように配置される場合について説明したが、第1延出部33aの位置はこれに限られず、ウェブ21の室内側または室外側に位置してもよく、フランジ22の室外側に位置してもよい。
【0072】
また、第1気密部材11と第3気密部材30の被接続部32、および第2気密部材13と第4気密部材50が、それぞれ気密を確保した状態で直接的に接続される場合について説明したが、これらは気密を確保した状態で間接的に接続されてもよい。
【0073】
例えば、第3気密部材30の被接続部32は、第1気密部材11に直接的に接続されず、枠体16の上部の横材に接続されるものとしてもよい。この場合、枠体16は、木材等、気密性、防湿性を有する素材からなるため、被接続部32は、枠体16を介して、第1気密部材11に対して気密を確保した状態で間接的に接続される。
【0074】
さらに、例えば、第4気密部材50は、第2気密部材13に直接的に接続されず、枠体16の上部の横材に接続されるものとしてもよい。この場合、第4気密部材50は、枠体16を介して、第2気密部材13に対して気密を確保した状態で間接的に接続される。
【0075】
また、壁部材10の仕様に応じて変化する第1気密部材11の位置に応じて、第3気密部材30の形状を適宜変更することができる。具体的に、第3気密部材30は、図5(a)~(c)に示す変型例に係る態様、形状を有していてもよい。
【0076】
図5(a)に示す第1の変型例に係る第3気密部材310は、梁20に取り付けられる被取付部311と、被取付部311に対向するとともに第1気密部材11に対して気密を確保した状態で接続される被接続部312と、被取付部311と被接続部312とを連結する連結部313と、被取付部311の上面に設けられた粘着テープ311aと、を備えている。連結部313は、被取付部311の内側の端部から下に延びる第1延出部313aと、第1延出部33aの下端部から室外側に延びる第2延出部313bと、を有する。第3断熱材40は第1延出部313aの室内側、第4断熱材60は第1延出部313aの室外側に配置される。このとき、第4断熱材60を被取付部311と第2延出部313bとの間にはめ込むことができる。一方、第3気密部材310を図5(a)に示す向きとは内外反対に配置することもできる。
【0077】
図5(b)に示す第2の変型例に係る第3気密部材320は、梁20に取り付けられる被取付部321と、第1気密部材11に対して気密を確保した状態で接続される被接続部322と、被取付部321と被接続部322とを連結する連結部323と、被取付部321の上面に設けられた粘着テープ321aと、を備えている。連結部323は、被取付部321の内側の端部から下に延びる第1延出部323aと、第1延出部33aの下端部から室内側に延びる第2延出部323bと、を有する。第3断熱材40は第1延出部323aの室内側、第4断熱材60は第1延出部323aの室外側に配置される。また、第2延出部323bをフランジ22と対向する位置に配置した場合、第2延出部323bとフランジ22との間に第3断熱材40をはめ込むことができる。
【0078】
図5(c)に示す第3の変型例に係る第3気密部材330は、梁20に取り付けられる被取付部331と、第1気密部材11に対して気密を確保した状態で接続される被接続部332と、被取付部331と被接続部332とを連結する連結部333と、被取付部331の上面に設けられた粘着テープ331aと、を備えている。連結部333は、被取付部331の外側の端部から下に延びる第1延出部333aと、第1延出部333aの下端部から室外側に延びる第2延出部333bと、を有する。第3断熱材40は第1延出部333aの室内側、第4断熱材60は第1延出部333aの室外側に配置される。第2延出部333bをフランジ22と対向する位置に配置した場合、第2延出部333bとフランジ22との間に第4断熱材60をはめ込むことができる。なお、第3の変型例に係る第3気密部材330は、第2の変型例に係る第3気密部材320を、室内側と室外側を逆にして配置したものである。
【0079】
拘束部材70を用いて第3気密部材310、320、330を梁20に拘束する場合、第1変型例に係る第3気密部材310および第2変型例に係る第3気密部材320は、室外側から被取付部311、321および梁20の下側のフランジ22におけるウェブ21の室外側に延びる部分を挟み込むことにより梁20に対して被取付部311、321を拘束することができる。第3変型例に係る第3気密部材330は、室内側から被取付部311、321および梁20の下側のフランジ22におけるウェブ21の室内側に延びる部分22aを挟み込むことにより梁20に対して被取付部331を拘束することができる。なお、上述の実施形態を含め、第3気密部材を梁20に取り付ける際に、拘束部材70を使用しなくてもよい。
【0080】
壁部材10と梁20との位置関係や、梁20に対する第3気密部材310、320、330の取付位置によっては、被接続部312、322、332を第1気密部材11に対して直接的に接続するのが困難である場合がある。このような場合であっても、被接続部312、322、332は、第1気密部材11に対して気密状態を確保した状態で間接的に接続することができる。
【0081】
例えば、図5(a)、(c)に示すように、第6気密部材18を被接続部312、332と第1気密部材11との間に介在させることにより、被接続部312、332を第1気密部材11に対して気密を確保した状態で間接的に接続することができる。これにより、第1気密部材11と第6気密部材18と第3気密部材310、330とによって外側気密ラインを形成することができる。
【0082】
一方、図5(b)に示すように、第3気密部材320の被接続部322が第1気密部材11に対して気密を確保した状態で直接的に接続されている場合には、第6気密部材18を介在させる必要はない。なお、図5(b)では、被取付部321が下側のフランジ22におけるウェブ21の室外側に延びる部分に取り付けられた場合が想定されている。
【0083】
第3気密部材30において、被取付部31および連結部33を成形された鉄板からなるものとしたが、例えば樹脂のように柔軟性を有する素材からなるものであってもよい。この場合も、被接続部32は、被取付部31および連結部33と比較して大きな弾性を有することが好ましい。
【0084】
また、建築物1では、第6断熱材82は設けなくてもよく、建築物1で要求される断熱性能に応じて設ければよい。
【符号の説明】
【0085】
1 建築物
2 隙間
5 梁上部材
10 壁部材
11 第1気密部材
12 第1断熱材
13 第2気密部材
14 第2断熱材
20 梁
21 ウェブ
22 下側のフランジ
23 上側のフランジ
30、310、320、330 第3気密部材
31、311、321、331 被取付部
32、312、322、332 被接続部
33、313、323、333 連結部
33a、313a、323a、333a 第1延出部
33b、313b、323b、333b 第2延出部
40 第3断熱材
50 第4気密部材
60 第4断熱材
70 拘束部材
81 第5断熱材
82 第6断熱材
図1
図2
図3
図4
図5