(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116808
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】階段用下地材及び階段の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20220803BHJP
E04F 11/025 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
E04F11/02 100
E04F11/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013184
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000145437
【氏名又は名称】株式会社ウッドワン
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】八木 弘
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC21
2E301CC45
2E301CC54
2E301CD02
2E301EE00
(57)【要約】
【課題】建築の初期段階での階段施工を可能とし、省令準耐火構造の仕様を満たすことができるとともに、施工も容易な階段用下地材及び階段の施工方法を提供する。
【解決手段】階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置される階段用下地材A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2であって、不燃材からなる板部材と、板部材の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材とで断面略コ字状に形成され、当て木部材が対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置される階段用下地材であって、
不燃材からなる板部材と、該板部材の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材とで断面略コ字状に形成され、
前記当て木部材が前記対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出していることを特徴とする階段用下地材。
【請求項2】
前記板部材の高さ方向の幅が前記受台の高さ方向の幅以上であることを特徴とする請求項1に記載の階段用下地材。
【請求項3】
前記板部材の周縁部が5本以下の直線から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の階段用下地材。
【請求項4】
前記当て木部材に前記柱部材を挿通させる切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の階段用下地材。
【請求項5】
対向する前記当て木部材の間に断熱層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の階段用下地材。
【請求項6】
請求項1に記載の階段用下地材を用いた階段の施工方法であって、
階段の踏板の受台の設置位置に沿って前記階段用下地材を固定し、固定した階段用下地材の表面から前記受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定することを特徴とする階段の施工方法。
【請求項7】
前記固定した階段用下地材の板部材の面積が前記受台の面積以上であり、前記固定した受台が前記板部材からはみ出さないことを特徴とする請求項6に記載の階段の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段用下地材及び階段の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物に設置される階段は、上階と下階とをつなぐ通路としての役割を担うものであるが、階段の設置は階段室の壁材の施工後に行われるのが通常であり、建築の初期段階では階段が設置されていない。そのため、上階の造作工事等のためには、作業用の仮梯子を設置して資材等の運搬や作業者の移動を行う必要があり、仮梯子の設置・撤去の工数増加や運搬・移動のしにくさという問題があった。
【0003】
こうした仮梯子設置の問題に対して、例えば特許文献1には、建方後における各種施工のための仮梯子代替の階段Sを設置した後、当該階段Sの化粧を直すことによって、この仮梯子代替の階段Sを本来の階段S´に変更するようにした階段の構成方法に関する発明が記載されており、仮梯子の設置・撤去が不要となっている。
【0004】
同様に、特許文献2乃至特許文献5には、下地材(踏板下地)と化粧材(踏板化粧材)とを組み合わせた、いわゆる「仮設兼用階段」に関する発明が記載されており、下地材(踏板下地)を作業用の仮設階段の踏板として使用し、必要な作業を終えた後に化粧材(踏板化粧材)を固定して階段として完成させるようになっている。
【0005】
このような仮設兼用階段では、下地材を踏板として施工した仮設階段が、安全・快適な作業通路として使用可能でありながら、傷の付きやすい化粧面施工前での使用であるために、特に化粧面保護用の養生材施工が基本的に不要であることが省力化の点で有利である。さらに、従来の階段で見られがちな、養生材不足による傷付きや、作業終了後に必要な養生材撤去・廃棄作業まで考慮すると、総合的には作業効率が大幅に向上することが知られている。
【0006】
一方、階段室内の壁には、防火や延焼遅延のための防火材料の使用が求められている。例えば特許文献6には、建物躯体90とささら桁12との間に防火材料からなるジョイント部材50を挟み込んで隙間を形成し、その隙間に防火材料からなる板状の防火板材60を差し込むようにした階段構造に関する発明が記載されており、ジョイント部材50及び防火板材60により階段室内の壁を防火材料で連続して覆うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-144461号公報
【特許文献2】特許第4110340号公報
【特許文献3】特許第4244263号公報
【特許文献4】特許第5986385号公報
【特許文献5】特許第5986383号公報
【特許文献6】特開平10-2080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造として、住宅金融支援機構の省令準耐火構造がある。その仕様では、階段室の壁下地として、プラスターボード又は厚さ30mm以上の側板の使用が指定されている。さらに、これらのプラスターボード又は側板の継目直下には、被覆用部材としての当て木の使用が指定されている。
【0009】
階段室を省令準耐火構造の仕様とするためには、階段室の壁全体にプラスターボード等の不燃材を施工した後で階段を施工することが考えられるが、壁材の施工が終了するまで階段の施工ができないため、建築の初期段階で階段を作業用に使用することができない。
【0010】
これに対して、プラスターボード等の不燃材を施工する前に階段を施工する場合には、後工程の不燃材の施工に問題が生じる。すなわち、既に施工された階段の踏板の支持部材の上下に不燃材を施工するために、支持部材の上下の形状に合わせて不燃材を切断加工しなければならない。支持部材が直線状の側板であれば、不燃材を側板上辺に合わせて直線状に切断すればよいので容易であるが、支持部材が鋸歯状の受台(ささら桁)であれば、不燃材も鋸歯状の切断加工が必要になる。プラスターボード等の不燃材を鋸歯状に切断加工するのは非常に困難であり、さらには、省令準耐火構造の仕様に求められる当て木についても同様の鋸歯状加工が必要であることを考えると、現実にはほとんど不可能である。
【0011】
一方、仮設兼用階段では、作業通路として早期に使用可能とするためには、一刻も早く階段の施工を行う必要がある。しかし、前述のように、不燃材施工前に仮設兼用階段を施工する場合、不燃材としてのプラスターボード等には極めて複雑な加工が必要であり、現実的ではない。これに対して、不燃材施工後に仮設兼用階段を施工する場合、このような複雑な加工は不要であるものの、不燃材施工を先行させる必要があり、早期に作業用通路を利用することができず、施工の効率化を図るという目的に反する結果となってしまう。
【0012】
さらに、引用文献6に記載された発明における防火構造には、住宅金融支援機構の省令準耐火構造に対応するには次のような問題がある。まず、ジョイント部材50は、建物躯体90(柱・間柱)とささら桁12(受台)との間に防火材料からなる板状の防火板材60(プラスターボード)を差し込む隙間を形成するとされているが、この隙間を大きく取れば、防火板材60を差し込むのは容易であるが、差し込まれた部分の防火板材60は、建物躯体90とささら桁12に挟まれて、ビス等の固定が不可能なので、隣接する防火板材60との間や建物躯体90との間に隙間(省令耐火構造において避けなければならない隙間)が生じやすく、防火上大きな問題がある。
【0013】
一方、隙間を小さくすると、防火上の問題は多少減少するものの、そもそも重く脆いプラスターボードを狭い隙間に差し込むこと自体が難しいと考えられる。プラスターボードが少しでも反ってしまうと引っ掛かって差し込めない。また、隙間の大小に関わらず共通して、プラスターボード裏面側の被覆用部材としての当て木は設置不可能である。このようにプラスターボードを隙間に差し込むといったことは、そもそも住宅金融支援機構省令準耐火構造の仕様への対応は極めて困難である。
【0014】
また、引用文献6には、断熱材の施工に関して何も示されていないが、構造から見て、ジョイント部材50やささら桁12(受台)を施工後に断熱材を施工せざるを得ないと思われる。フワフワして腰が無く、嵩張るグラスウールを狭い場所に上下から棒等で突いて入れなければならないと思われ、断熱材の施工を考慮した構造とは思えない。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、建築の初期段階での階段施工を可能とし、省令準耐火構造の仕様を満たすことができるとともに、施工も容易な階段用下地材及び階段の施工方法を提供するものである。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の階段用下地材は、階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置される階段用下地材であって、不燃材からなる板部材と、該板部材の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材とで断面略コ字状に形成され、前記当て木部材が前記対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出していることを特徴とする。
【0017】
また好ましくは、前記板部材の高さ方向の幅が前記受台の高さ方向の幅以上であることを特徴とする。
【0018】
また好ましくは、前記板部材の周縁部が5本以下の直線から構成されていることを特徴とする。
【0019】
また好ましくは、前記当て木部材に前記柱部材を挿通させる切り欠きが設けられていることを特徴とする。
【0020】
また好ましくは、対向する前記当て木部材の間に断熱層が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の階段の施工方法は、上記階段用下地材を用いた階段の施工方法であって、階段の踏板の受台の設置位置に沿って前記階段用下地材を固定し、固定した階段用下地材の表面から前記受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定することを特徴とする。
【0022】
また好ましくは、前記固定した階段用下地材の板部材の面積が前記受台の面積以上であり、前記固定した受台が前記板部材からはみ出さないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の階段用下地材は、階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置される階段用下地材であり、不燃材からなる板部材と、該板部材の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材とで断面略コ字状に形成されている。この階段用下地材を階段の踏板の受台の設置位置に沿って固定することにより、受台と柱部材との間に不燃層を設けることができる。そして、固定した階段用下地材の表面から受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定すれば、階段室の壁全体に不燃材を施工する前に階段を施工することができるため、建築の初期段階で階段を作業用に使用することができる。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【0024】
また、当て木部材が板部材の対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出しているので、後工程で階段用下地材の上下に接するように不燃材を施工する際に、階段用下地材の板部材と不燃材との継目直下に当て木部材が位置することになり、改めて当て木を取り付ける必要がなく施工が容易である。また、不燃材は階段用下地材の上下の形状に沿って切断加工すればよいので、受台に合わせて鋸歯状に切断加工する必要がなく施工が容易である。また、不燃層を設け当て木部材を配置することにより、省令準耐火構造の仕様を満たすことができる。
【0025】
また、板部材の高さ方向の幅が受台の高さ方向の幅以上である場合には、後工程で階段用下地材の上下に不燃材を施工する際に、不燃材が受台に接することがなく、さらに施工が容易である。
【0026】
また、板部材の周縁部が5本以下の直線から構成されている場合には、5本以下の直線によって不燃材を切断加工して板部材とすればよく、加工が極めて容易である。
【0027】
また、当て木部材に柱部材を挿通させる切り欠きが設けられている場合には、階段用下地材を固定する際に、柱部材が邪魔にならないように、柱部材を切り欠きに挿通させることができる。
【0028】
また、対向する当て木部材の間に断熱層が設けられている場合には、当て木部材や柱部材等に遮られて施工しにくい断熱層を予め設けておくことができる。
【0029】
また、本発明の階段の施工方法は、上記階段用下地材を用いた階段の施工方法であり、階段の踏板の受台の設置位置に沿って階段用下地材を固定することにより、受台と柱部材との間に不燃層を設けることができる。そして、固定した階段用下地材の表面から受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定すれば、階段室の壁全体に不燃材を施工する前に階段を施工することができるため、建築の初期段階で階段を作業用に使用することができる。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【0030】
また、固定した階段用下地材の板部材の面積が受台の面積以上であり、固定した受台が板部材からはみ出さない場合には、後工程で階段用下地材の周囲に不燃材を施工する際に、不燃材が受台に接することがなく、さらに施工が容易である。
【0031】
このように、本発明によれば、建築の初期段階での階段施工を可能とし、省令準耐火構造の仕様を満たすことができるとともに、施工も容易な階段用下地材及び階段の施工方法を提供することができる。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る階段の施工方法を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る階段の施工方法を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る階段の施工方法を示す断面図である。
【
図6】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図7】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図8】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図9】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図12】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図13】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図14】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図15】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図18】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図19】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図20】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図21】受台を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図23】他の実施形態に係る階段用下地材の説明図である。
【
図24】他の実施形態に係る階段の施工方法を示す斜視図である。
【
図25】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【
図26】階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、
図1乃至
図26を参照して、本発明の実施形態に係る階段用下地材及び階段の施工方法について説明する。まず
図1乃至
図3を参照して、本実施形態に係る階段の施工方法について説明する。
図1及び
図2は階段の施工方法を示す斜視図であり、
図3は本発明の実施形態に係る階段の施工方法を示す断面図である。
【0034】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態に係る階段の施工方法は、複数の柱1及び複数の間柱2に囲まれた階段室100に階段を設置するものである。階段室100に設置される階段は、下階から続く第1の直階段Xと、第1の直階段Xの上端に接続されて180度方向を変える廻り階段Yと、廻り階段Yの上端に接続されて上階へと続く第2の直階段Zから構成されている。
【0035】
階段の施工にあたっては、まず
図1に示すように、第1の直階段X、廻り階段Y及び第2の直階段Zに沿って、両側の柱1に階段用下地材A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2を固定する。このとき、階段用下地材を階段室の内側から柱1に向けて固定する。各々の階段用下地材の固定位置は、後から固定する踏板の受台の設置位置に沿っており、下階から上階に向けて徐々に上昇するようになっている。
【0036】
階段用下地材A1,A2は第1の直階段Xに対応している。階段用下地材B1,B2,C1,C2は廻り階段Yに対応している。階段用下地材D1,D2は第2の直階段Zに対応している。
【0037】
階段用下地材を固定したら、次に
図2に示すように、固定した階段用下地材の表面から受台a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2を固定する。階段用下地材と受台との対応関係は、A1-a1、A2-a2、B1-b1、B2-b2、C1-c1、C2-c2、D1-d1、D2-d2である。受台を固定すると、階段用下地材は階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置された状態となる。なお、ここでいう柱部材には、柱1及び間柱2の両方を含んでいる。柱部材の外側は外壁又は部屋壁となる。
【0038】
受台を固定したら、固定した受台に階段の踏板を固定して階段を施工する。このとき、階段用下地材以外の壁面は施工されておらず、階段に沿った部分のみ壁面が施工された状態になっている。この状態で上階と下階とが連絡されるので、作業用に使用することができる。階段用下地材の上下の壁面については、建築の進行状況に合わせて所定の段階で施工される。なお、最終的に階段用下地材の表面は化粧材等で覆われる。
【0039】
次に、
図4乃至
図20を参照して、階段用下地材及び受台について詳細に説明する。なお、以下の説明では階段室100の外回り部分(A1-a1、B1-b1、B2-b2、C1-c1、C2-c2、D1-d1)について説明し、内回り部分(A2-a2、D2-d2)については説明を省略する。
【0040】
まず、第1の直階段Xから廻り階段Yの下段の部分について説明する。
図4は
図3のE矢視図であり、階段室を外側から見たものである。
図5は
図3のe矢視図であり、階段室を内側から見たものである。
【0041】
第1の直階段Xの部分には、階段用下地材A1及び受板a1が固定されている。階段用下地材A1は、
図6に示すように、台形状の板部材10と、板部材10の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材11,12,13,14とで断面略コ字状に形成されている。板部材10は不燃材でありプラスターボードを用いることが好ましいが、その他にもケイ酸カルシウム板、鉄板やアルミ等の金属板、不燃処理済の木材等も用いることができる。不燃材である必要があるため、プラスターボードの場合は厚さ12.5mm以上、その他の場合はそれぞれの材質に適した厚さとなる。不燃材である階段用下地材A1の柱1への固定にあたっては、板部材10の左右の端部を柱1に当接させて固定する。
【0042】
当て木部材11,12は、板部材10の上側斜辺に沿って設けられている。また、当て木部材13,14は、板部材10の下側斜辺に沿って設けられている。当て木部材は角材であり、住宅金融支援機構省令準耐火構造の仕様に準拠した被覆用部材である。なお、この実施形態では断面が45mm×105mm以上の角材を用いた。不燃材である必要はない。
【0043】
当て木部材11,12の間及び当て木部材13,14の間には、切り欠きが設けられている。この切り欠きは、階段用下地材A1を柱部材に固定したときに、途中にある柱部材(特に間柱2)を挿通させるためのものである。
【0044】
当て木部材11,12,13,14は、対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出している。すなわち、当て木部材11,12は板部材10の上側斜辺から上側に向けてはみ出しており、当て木部材13,14は板部材10の下側斜辺から下側に向けてはみ出している。当て木部材のはみ出した部分は、後工程で階段用下地材の上下に接するように不燃材を施工する際に、階段用下地材の板部材と不燃材との継目直下に当て木部材を位置させるためのものである。
【0045】
なお、当て木部材の位置は、板部材10の上側斜辺(下側斜辺)が当て木部材11,12(13,14)の幅方向の中心となるようにすることが好ましい。
【0046】
また、対向する当て木部材の間(当て木部材11,12と当て木部材13,14との間)に、ウレタンフォーム、グラスウール、ロックウール等を配置して断熱層を設けることもできる。このようにすれば、当て木部材や柱部材等に遮られて後工程では施工しにくい断熱層を、予め設けておくことができる。
【0047】
受台a1は、
図7に示すように、上側斜辺が鋸歯状に形成された部材である。なお、階段用下地材A1の板部材10の高さ方向の幅は、受台a1の高さ方向の幅以上となっており、受台a1を階段用下地材A1に固定したときに、受台a1が階段用下地材A1からはみ出さないようになっている。
【0048】
廻り階段Yの下段の部分には、階段用下地材B1及び受板b1が固定されている。階段用下地材B1は、
図8に示すように、矩形状の板部材20と、板部材20の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材21,22,23,24とで断面略コ字状に形成されている。板部材20は不燃材でありプラスターボードを用いることが好ましいが、その他にもケイ酸カルシウム板、鉄板やアルミ等の金属板、不燃処理済の木材等も用いることができる。不燃材である必要があるため、プラスターボードの場合は厚さ12.5mm以上、その他の場合はそれぞれの材質に適した厚さとなる。階段用下地材B1の柱1への固定にあたっては、板部材20の左右の端部を柱1に当接させて固定する。
【0049】
当て木部材21,22は、板部材20の上辺に沿って設けられている。また、当て木部材23,24は、板部材20の下辺に沿って設けられている。当て木部材は角材であり、住宅金融支援機構省令準耐火構造の仕様に準拠した被覆用部材である。なお、この実施形態では断面が45mm×105mm以上の角材を用いた。不燃材である必要はない。
【0050】
当て木部材21,22の間及び当て木部材23,24の間には、切り欠きが設けられている。この切り欠きは、階段用下地材B1を柱部材に固定したときに、途中にある柱部材(特に間柱2)を挿通させるためのものである。
【0051】
当て木部材21,22,23,24は、対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出している。すなわち、当て木部材21,22は板部材20の上辺から上側に向けてはみ出しており、当て木部材23,24は板部材20の下辺から下側に向けてはみ出している。当て木部材のはみ出した部分は、後工程で階段用下地材の上下に接するように不燃材を施工する際に、階段用下地材の板部材と不燃材との継目直下に当て木部材を位置させるためのものである。
【0052】
なお、当て木部材の位置は、板部材20の上辺(下辺)が当て木部材21,22(23,24)の幅方向の中心となるようにすることが好ましい。
【0053】
また、対向する当て木部材の間(当て木部材21,22と当て木部材23,24との間)に、ウレタンフォーム、グラスウール、ロックウール等を配置して断熱層を設けることもできる。このようにすれば、当て木部材や柱部材等に遮られて後工程では施工しにくい断熱層を、予め設けておくことができる。
【0054】
受台b1は、
図9に示すように、上辺が鋸歯状に形成された部材である。なお、階段用下地材B1の板部材20の高さ方向の幅は、受台b1の高さ方向の幅以上となっており、受台b1を階段用下地材B1に固定したときに、受台b1が階段用下地材B1からはみ出さないようになっている。
【0055】
次に、廻り階段Yの中段の部分について説明する。
図10は
図3のF矢視図であり、階段室を外側から見たものである。
図11は
図3のf矢視図であり、階段室を内側から見たものである。
【0056】
廻り階段Yの中段の部分には、階段用下地材B2,C1及び受板b2,c1が固定されている。
図12乃至
図15は、階段用下地材B2、受板b2、階段用下地材C1及び受板c1を示す図である。階段用下地材B2,C1及び受板b2,c1の構成は、階段用下地材B1及び受板b1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
次に、廻り階段Yの上段から第2の直階段Zの部分について説明する。
図16は
図3のG矢視図であり、階段室を外側から見たものである。
図17は
図3のg矢視図であり、階段室を内側から見たものである。
【0058】
廻り階段Yの上段の部分には、階段用下地材C2及び受板c2が固定されている。
図18及び
図19は、階段用下地材C2及び受板c2を示す図である。階段用下地材C2及び受板c2の構成は、階段用下地材B1及び受板b1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
第2の直階段Zの部分には、階段用下地材D1及び受板d1が固定されている。
図20及び
図21は、階段用下地材D1及び受板d1を示す図である。階段用下地材D1及び受板d1の構成は、階段用下地材A1及び受板a1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
なお、対応する個々の階段用下地材と受台とを比較した場合は別として、複数の階段用下地材を固定した状態では、固定した階段用下地材の板部材の面積が、その後で固定する受台の面積以上となっており、固定した受台が板部材からはみ出さないようになっている。これにより、後工程で階段用下地材の周囲に不燃材を施工する際に、不燃材が受台に接することがない。
【0061】
図22は、不燃材の施工方法の説明図である。
図2(A)に示すように、階段用下地材A及び受板aを用いて階段を施工し、後工程で不燃材80,90を階段用下地材Aの上下に施工する。不燃材80,90は、階段用下地材Aの上側斜辺及び下側斜辺に沿うように切断加工する。そして、
図22(B)に示すように不燃材80,90を階段用下地材Aの板部材110の上側斜辺及び下側斜辺に当接させて柱部材に固定する。このとき、階段用下地材Aの板部材110と不燃材80,90との継目直下には、当て木部材111,112が位置することになり、改めて当て木を取り付ける必要はない。
【0062】
なお、第1の直階段の最下段付近は狭く施工が困難であるため、後工程で不燃材を施工する代わりに、階段用下地材の板部材を略三角形状にして下側斜辺側に不燃材を一体化するようにしてもよい。
【0063】
また、板部材の周縁部は、加工を容易にするために、できるだけ少ない数の直線から構成されていることが好ましい。本実施形態における板部材の周縁部は、4本又は5本の直線(四角形又は五角形)から構成されているが、例えば3本の直線(三角形)とすることもできる。このように、板部材の周縁部が5本以下の直線から構成されていることが好ましい。なお、周縁部の一部を曲線とすることも可能ではあるが、加工の容易さを考慮すると当然ながら直線のみから構成されることが好ましい。
【0064】
本実施形態に係る階段用下地材及び階段の施工方法は、背景技術として述べた仮設兼用階段に適用することが特に効果的である。すなわち、下地材(踏板下地)を作業用の仮設階段の踏板として使用し、必要な作業を終えた後に化粧材(踏板化粧材)を固定して階段として完成させるようにした仮設兼用階段において、住宅金融支援機構の省令準耐火構造の仕様を満たすための施工として、優れた作用効果を奏するものである。
【0065】
本実施形態に係る階段用下地材は、階段の踏板の受台と階段室の柱部材との間に設置される階段用下地材であり、不燃材からなる板部材と、該板部材の片面の対向する2辺に沿って設けられた当て木部材とで断面略コ字状に形成されている。この階段用下地材を階段の踏板の受台の設置位置に沿って固定することにより、受台と柱部材との間に不燃層を設けることができる。そして、固定した階段用下地材の表面から受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定すれば、階段室の壁全体に不燃材を施工する前に階段を施工することができるため、建築の初期段階で階段を作業用に使用することができる。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【0066】
また、当て木部材が板部材の対向する2辺の各々の外側に向けてはみ出しているので、後工程で階段用下地材の上下に接するように不燃材を施工する際に、階段用下地材の板部材と不燃材との継目直下に当て木部材が位置することになり、改めて当て木を取り付ける必要がなく施工が容易である。また、不燃材は階段用下地材の上下の形状に沿って切断加工すればよいので、受台に合わせて鋸歯状に切断加工する必要がなく施工が容易である。また、不燃層を設け当て木部材を配置することにより、省令準耐火構造の仕様を満たすことができる。
【0067】
また、板部材の高さ方向の幅が受台の高さ方向の幅以上であるので、後工程で階段用下部材の上下に不燃材を施工する際に、不燃材が受台に接することがなく、さらに施工が容易である。
【0068】
また、板部材の周縁部が5本以下の直線から構成されているので、5本以下の直線によって不燃材を切断加工して板部材とすればよく、加工が極めて容易である。
【0069】
また、当て木部材に柱部材を挿通させる切り欠きが設けられているので、階段用下地材を固定する際に、柱部材が邪魔にならないように、柱部材を切り欠きに挿通させることができる。
【0070】
また、対向する当て木部材の間に断熱層が設けられているので、当て木部材や柱部材等に遮られて施工しにくい断熱層を予め設けておくことができる。
【0071】
また、本実施形態に係る階段の施工方法は、上記階段用下地材を用いた階段の施工方法であり、階段の踏板の受台の設置位置に沿って階段用下地材を固定することにより、受台と柱部材との間に不燃層を設けることができる。そして、固定した階段用下地材の表面から受台を固定し、固定した受台に階段の踏板を固定すれば、階段室の壁全体に不燃材を施工する前に階段を施工することができるため、建築の初期段階で階段を作業用に使用することができる。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【0072】
また、固定した階段用下地材の板部材の面積が受台の面積以上であり、固定した受台が板部材からはみ出さないので、後工程で階段用下地材の周囲に不燃材を施工する際に、不燃材が受台に接することがなく、さらに施工が容易である。
【0073】
このように、本実施形態に係る階段用下地材及び階段の施工方法によれば、建築の初期段階での階段施工を可能とし、省令準耐火構造の仕様を満たすことができるとともに、施工も容易である。特に、仮設兼用階段といった、作業通路としての役割を兼ねる階段において効果的である。
【0074】
以上、本発明の実施形態に係る階段用下地材及び階段の施工方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、階段用下地材の板部材の高さ方向の幅を受台の高さ方向の幅以上となるようにしたが、受台の高さ方向の幅以下とすることもできる。
図23に他の実施形態に係る階段用下地材を示す。
図23(A)は上記実施形態と同様に階段用下地材の板部材の高さ方向の幅を受台の高さ方向の幅以上となるようにしたものであるが、
図23(B)及び
図23(C)は、受台の高さ方向の幅以下となっている。この場合、後工程で階段用下地材の上下に不燃材を施工する際に、既に固定された受板aと柱部材との間に不燃材を挿入することができれば施工は可能である。ただし、施工性が低下するため、できるだけ受台の高さ方向との差が少ない方が好ましく、
図23(C)よりは
図23(b)の方が好ましい。
【0076】
また、階段用下地材と受板とを予め一体化しておくこともできる。
【0077】
また、上記実施形態では、当て木部材に柱部材を挿通させる切り欠きを設けたが、これは一般的な柱・間柱に対応した例を示したものであり、切り欠きのサイズや個数は限定されるものではなく、壁の内部構造に応じて様々なタイプが考えられる。また、工場出荷時には切り欠き加工を行わず、施工現場で切り欠き加工を行うこともできる。
【0078】
また、壁の内部構造によっては、階段用下地材の当て木部材に切り欠きを設けない構成とすることもできる。
図24は、他の実施形態に係る階段の施工方法を示す斜視図であり、
図25及び
図26は各々、階段用下地材を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。
図24に示す階段室200においては、各階段用下地材の中間部分に挿通させるべき柱部材が存在しない。従って、
図25及び
図26に示すように、当て木部材に切り欠きのない階段用下地材を用いることができる。
【0079】
もちろん、壁の内部構造によっては、当て木部材に切り欠きのある階段用下地材と、当て木部材に切り欠きのない階段用下地材を、適宜組み合わせて施工することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 柱
2 間柱
10 板部材
11,12,13,14 当て木部材
20 板部材
21,22,23,24 当て木部材
30 板部材
31,32,33,34 当て木部材
40 板部材
41,42,43,44 当て木部材
50 板部材
51,52,53,54 当て木部材
60 板部材
71,72,73,74 当て木部材
80,90 不燃材
100 階段室
110 板部材
111,112 当て木部材
200 階段室
A,A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2 階段用下地材
a,a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2 受台
X 第1の直階段
Y 廻り階段
Z 第2の直階段