(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116902
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】皮脂腺正常化用外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20220803BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220803BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P17/08
A61P17/10
A61P17/00
A61P17/14
A61K36/752
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013323
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】512280194
【氏名又は名称】ネイチャーライフ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501187136
【氏名又は名称】バイオアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 正好
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA92
4C088AB62
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA32
4C088CA03
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA92
(57)【要約】
【課題】優れた皮脂腺の正常化作用を有する外用剤を提供する。
【解決手段】ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有する皮脂腺正常化用外用剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有する皮脂腺正常化用外用剤。
【請求項2】
ノビレチン及び/又はタンゲレチンが含まれる柑橘類果実抽出物を含有する、請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
前記柑橘類がシークワーサーである、請求項2に記載の外用剤。
【請求項4】
皮脂分泌の促進若しくは抑制用、乾燥肌の予防若しくは改善用、脂性肌の予防若しくは改善用、保湿用、抗ニキビ用、体臭の抑制用、育毛用、又は脱毛防止用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項5】
ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有する皮脂腺正常化用外用剤に用いるための添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮脂腺正常化用外用剤及び添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニキビ(ざ瘡、尋常性ざ瘡)は毛包脂腺系の慢性炎症性疾患であり、原因は、アンドロゲンの脂腺刺激作用による皮脂の分泌亢進、毛漏斗部の角化障害による毛穴の狭窄、毛漏斗部の生物の存在が重要な発症要因と考えられており、その他にも遺伝的要因、年齢、食事性因子、温度湿度などの環境要因、機械的刺激、ストレス、化粧品、薬剤などの内的・外的因子も関与すると考えられている。
【0003】
植物由来の健康食品原料として、シークワーサー抽出物が注目されている。シークワーサー抽出物にはノビレチン、タンゲレチン等のポリメトキシフラボノイドが含まれており、これらの化合物には今まで種々の効能が見出されている。例えば、ノビレチンは、抗潰瘍作用(特許文献1)、心疾患予防治療作用(特許文献2)を有することが、タンゲレチン、ノビレチン等のポリメトキシフラボノイドは血管新生抑制作用(特許文献3)を有することが、シークワーサー等の柑橘類に含まれるフラボノイドは、血圧上昇抑制作用(特許文献4)を有することが報告されている。
【0004】
また、特許文献5には、柑橘類果実、特に沖縄地方特産のシイクワシャー(学名:Citrus depressa HAYATA)に含まれるノビレチンが、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の活性化作用を有することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-72870号公報
【特許文献2】特開2011-37798号公報
【特許文献3】特開2004-83417号公報
【特許文献4】特開2001-240539号公報
【特許文献5】特開2013-163685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた皮脂腺の正常化作用を有する外用剤及び該外用剤に用いるための添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、シークワーサーに多く含まれるフラボノイドの一種であるノビレチン及びタンゲレチンが、皮脂腺細胞において、アクネ菌存在下ではアクネ菌によって誘導される皮脂産生を抑制させ、アクネ菌の非存在下では皮脂線を刺激して皮脂を産生させることを見出した。
【0008】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の皮脂腺正常化用外用剤及び添加剤を提供するものである。
【0009】
項1.ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有する皮脂腺正常化用外用剤。
項2.前記ノビレチン及び/又はタンゲレチンが含まれる柑橘類果実抽出物を含有する、項1に記載の外用剤。
項3.前記柑橘類果実抽出物が柑橘類果皮抽出物であり、項2に記載の外用剤。
項4.前記柑橘類がシークワーサーである、項2又は3に記載の外用剤。
項5.皮脂分泌の促進若しくは抑制用、乾燥肌の予防若しくは改善用、脂性肌の予防若しくは改善用、保湿用、抗ニキビ用、体臭の抑制用、育毛用、又は脱毛防止用である、項1~4のいずれか一項に記載の外用剤。
項6.ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有する皮脂腺正常化用外用剤に用いるための添加剤。
【発明の効果】
【0010】
ノビレチン及びタンゲレチンは、皮脂線細胞において通常の場合は皮脂腺を刺激し皮脂を産生させる一方、異常に皮脂が産生される場合は皮脂の産生を抑制させることができる。そのため、ノビレチン及びタンゲレチンは、皮脂腺正常化用外用剤、特に、皮脂分泌の促進若しくは抑制用、乾燥肌の予防若しくは改善用、脂性肌の予防若しくは改善用、保湿用、抗ニキビ用、体臭の抑制用、育毛用、又は脱毛防止用の外用剤の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験例1におけるアクネ菌の存在下又は非存在下で、ノビレチン素材を添加したSZ-95皮脂腺細胞の蛍光顕微鏡による観察結果を示す写真である。バーは200μm
【
図2】試験例2におけるアクネ菌の存在下又は非存在下で、ノビレチン、タンゲレチン又はノビレチン素材を添加したSZ-95皮脂腺細胞の蛍光顕微鏡による観察結果を示す写真である。バーは100μm
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書において「含有する、含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0014】
本発明の皮脂腺正常化用外用剤は、ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有することを特徴とする。
【0015】
ノビレチン及びタンゲレチンとしては、単離又は精製された状態でない物(粗精製物)、及び単離又は精製された物のいずれも使用することができる。
【0016】
本発明の皮脂腺正常化用外用剤で使用するノビレチン及びタンゲレチンとしては、ノビレチン及び/又はタンゲレチンが含まれる柑橘類抽出物を用いることができる。当該柑橘類としては、シークワーサー、ポンカン、温州ミカン、伊予柑、バレンシアオレンジ、タチバナなどが挙げられ、ノビレチン及びタンゲレチンが特に多く含まれていることから、シークワーサー(和名:ヒラミレモン、学名:Citrus depressa)が特に好ましい。シークワーサーの品種としては、例えば、大宜見クガニー、勝山クガニー、伊豆味クガニー、カーアチー、仲本シードレスなどが挙げられ、特に制限無く使用できる。
【0017】
また、ノビレチン及びタンゲレチンは柑橘類の部位の中でも果実に多く含まれていることから、柑橘類抽出物の中でも、柑橘類果実の抽出物が好ましく、柑橘類果皮の抽出物がより好ましい。
【0018】
ノビレチン及び/又はタンゲレチンが含まれる柑橘類抽出物には、ノビレチン及びタンゲレチン以外のフラボノイドが含まれていてもよく、そのようなフラボノイドとしては、例えば、シネンセチン、ヘスペリジン、ナリンギンなどが挙げられる。
【0019】
ノビレチン及び/又はタンゲレチンが含まれる柑橘類抽出物中のフラボノイドにおけるノビレチンの割合は、例えば、30~90質量%程度、好ましくは30~80質量%程度であり、タンゲレチンの割合は、例えば、10~50質量%程度、好ましくは20~40質量%程度である。また、柑橘類抽出物中のノビレチンの含有量は、タンゲレチン1質量部に対して、例えば、約2~5質量部、好ましくは約2~4質量部である。
【0020】
ノビレチン及びタンゲレチンは、自家調製品又は市販品を問わず用いることができる。
【0021】
ノビレチン及びタンゲレチンを調製する方法としては、例えば、ノビレチン及びタンゲレチンを含む植物から抽出する方法などが挙げられる。ノビレチン及びタンゲレチンを含む植物としては、特に制限されず、例えば、柑橘類が挙げられ、当該柑橘類としては、シークワーサー、ポンカン、温州ミカン、伊予柑、バレンシアオレンジ、タチバナなどが挙げられる。中でもノビレチン及びタンゲレチンが特に多く含まれていることから、シークワーサーが好ましく用いられる。
【0022】
また、ノビレチン及びタンゲレチンは柑橘類の部位の中でも果実に多く含まれていることから、ノビレチン及びタンゲレチンの抽出に使用する柑橘類の部位としては、柑橘類の果実が好ましく、柑橘類の果皮が特に好ましい。
【0023】
ノビレチン及びタンゲレチンを含む植物の抽出物の製造方法としては、特に制限されず、例えば、抽出溶媒を用いて常温又は加熱抽出する方法、超臨界抽出法、亜臨界抽出法などを用いて行うことができる。
【0024】
上記抽出溶媒としては水、有機溶媒又は含水有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール等の炭素数1~5の低級アルコール、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、酢酸、氷酢酸、プロピオン酸等の有機酸等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。抽出溶媒としては、好ましくは、水、含水エタノール、及びエタノールである。含水エタノールのエタノール濃度としては、通常20~90容量%程度である。
【0025】
また、抽出溶媒を用いた抽出に用いる植物としては、生の物、乾燥した物、切断又は粉砕された物などいずれの状態の物も使用することができる。
【0026】
抽出溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、植物100質量部に対して、200~100000質量部である。
【0027】
抽出の温度は、適宜設定され得、常温抽出の場合は、通常10~50℃であり、加熱抽出の場合は、通常40~100℃である。抽出溶媒を用いる場合の抽出時間は、適宜設定され得、例えば、常温抽出の場合は1~10日間であり、加熱抽出の場合は1~96時間である。
【0028】
回収した抽出液は、そのままでも使用できるが、必要に応じて、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、透析法、これらの組合せなどにより精製を行い得る。
【0029】
上記植物の抽出物としては、回収された抽出液(必要に応じて更に精製されたものも含む)、当該抽出液を濃縮した濃縮液、及び凍結乾燥、スプレードライ等により当該浸漬液の溶媒が除去された固形物の何れの状態も取り得る。ここで、抽出液の濃縮、凍結乾燥及びスプレードライは、常法に従って行うことができる。
【0030】
本発明の外用剤は、ノビレチン及び/又はタンゲレチンにより皮脂腺正常化作用を発揮するため、皮脂分泌の促進若しくは抑制用、乾燥肌の予防若しくは改善用、脂性肌の予防若しくは改善用、保湿用、抗ニキビ用、体臭の抑制用、育毛用、脱毛防止用などの外用剤として好適に使用される。また、本発明の外用剤には、外用の医薬品及び化粧料が含まれる。当該化粧料には、医薬部外品も包含される。また、本発明の外用剤は、哺乳動物の皮膚(頭皮を含む)に適用されるものである。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、イルカやクジラなどの海獣などが挙げられ、好ましくはヒトである。
【0031】
医薬品を調製する場合、ノビレチン及び/又はタンゲレチンを、公知の成分とともに、外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などの形態に調製して、外用の製剤にすることが可能である。
【0032】
医薬品には、外用剤に使用される公知の添加剤、例えば、抗菌剤、清涼剤、乳化剤、油分、酸化防止剤、界面活性剤、香料、紫外線吸収剤、色素、エタノール、水、保湿剤、増粘剤、可溶化剤、ゲル化剤などから選択される1種又は2種以上を配合することができる。
【0033】
医薬品中に含まれるノビレチン及び/又はタンゲレチンの割合は、特に制限されず、例えば、0.01~99質量%の濃度を挙げることができる。
【0034】
化粧料の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、油液系、粉末系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等の幅広い剤型を採り得る。
【0035】
化粧料の用途も任意であり、例えば、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられ、メークアップ化粧品であれば、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等が挙げられ、その他、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、制汗剤、入浴剤等が挙げられる。
【0036】
化粧料には、ノビレチン及び/又はタンゲレチン以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0037】
化粧料中に含まれるノビレチン及び/又はタンゲレチンの割合は、特に制限されず、例えば、0.01~99質量%の濃度を挙げることができる。
【0038】
本発明の添加剤は、皮脂腺正常化用外用剤に用いるためのものであって、ノビレチン及び/又はタンゲレチンを含有することを特徴とする。
【0039】
本発明の添加剤は、その有効成分であるノビレチン及び/又はタンゲレチンが有する皮脂分泌の促進若しくは抑制作用に基づいて、対象とする外用剤に皮脂腺正常化作用を付与するために用いられる添加剤である。
【0040】
本発明の添加剤は、ノビレチン及び/又はタンゲレチンだけかるなるものであってもよく、ノビレチン及びタンゲレチンの皮脂腺正常化作用が妨げられない限り、追加の成分が配合されていてもよい。かかる追加の成分を含む場合の添加剤中のノビレチン及び/又はタンゲレチンの割合としては、例えば、0.1~99質量%を例示することができる。
【0041】
本発明の添加剤は、その形態を特に問うものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状、液状、懸濁液状、乳液状などの製剤形態を有していてもよい。
【0042】
本発明の添加剤に含まれるノビレチン及びタンゲレチン、本発明の添加剤が用いられる皮脂腺正常化用外用剤などは前述するものと同様である。
【0043】
後述する実施例で示すように、本発明者らは、ノビレチン、タンゲレチン、これらを含むシークワーサー抽出物が、皮脂線細胞において通常の場合は皮脂腺を刺激し皮脂を産生させる一方、異常に皮脂が産生される場合は皮脂の産生を抑制させることを見出したことから、皮脂分泌の促進若しくは抑制作用、(高齢者、腎疾患の患者、糖尿病の患者などの)乾燥肌の予防若しくは改善作用、脂性肌の予防若しくは改善作用、保湿作用、抗ニキビ作用、体臭(例えば、腋臭症)の抑制作用、育毛作用、脱毛防止作用などが期待できる。ここで、ニキビ、腋臭症などの体臭などは過剰に皮脂が分泌されることを原因とするものである。
【0044】
そのため、ノビレチン及びタンゲレチンは、皮脂線細胞において顕著に優れた正常化作用(特に、皮脂分泌の正常化作用)を有するので、皮脂腺正常化用外用剤、特に、皮脂分泌の促進若しくは抑制用、乾燥肌の予防若しくは改善用、脂性肌の予防若しくは改善用、保湿用、抗ニキビ用、体臭の抑制用、育毛用、脱毛防止用などの外用剤の有効成分として有用である。
【実施例0045】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0046】
なお、以下の試験例1及び2で使用したノビレチンを10%含むノビレチン素材については、シークワーサー果皮抽出物であり、分析試験の結果、組成はノビレチン9.5質量%、タンゲレチン4質量%、シネンセチン1.1質量%となっていた。
【0047】
試験例1
<実験方法>
SZ-95:ヒト皮脂腺細胞株は、デッサウ医療センター(ドイツ)から輸入し、Sebomed basal medium (Millipore, Billerica, MA)に、10%FCS (Thermo Fisher Scientific Inc., Yokohama, Japan)、50 IU/mlペニシリン及び50μg/mlストレプトマイシン(Nacalai Tesque, Kyoto, Japan)、5 ng/mlヒトEGF (PeproTech GmbH, Hamburg, Germany)を添加して培養した。培地は一日置きに交換し、60~70%コンフルエントで細胞を継代培養した。
【0048】
SZ-95細胞は、5.0×104 cells/wellの濃度で8ウェルチャンバースライド(Merck Millipore)に播種した。その後、hEGFを含まない培地中にノビレチンを10%含むノビレチン素材を終濃度3μg/mlで添加し、アクネ菌は2.0×105 CFU/mlで添加し、37℃24時間でインキュベートした。インキュベーション後、10%中性緩衝ホルマリンで固定化し、ProLong Gold Antifade Mountant with DAPI (Thermofisher Scientific)で封入した。画像は、EVOS (登録商標) FL cell imaging system (Thermofisher Scientific)を用いることで得られた。同様の試験を実施し、再現性があることを確認した。
【0049】
<結果>
結果を
図1に示す。アクネ菌を含まない場合、ノビレチン素材は皮脂線を刺激し皮脂を産生させた。それに対して、アクネ菌を含む場合、ノビレチン素材はアクネ菌によって誘導される皮脂産生を抑制させた。
【0050】
試験例2
<実験方法>
SZ-95細胞は、5.0×104 cells/wellの濃度で8ウェルチャンバースライド(Merck Millipore)に播種した。その後、hEGFを含まない培地中にノビレチン若しくはタンゲレチンを終濃度10μMで又はノビレチン素材(ノビレチンを10%含む)を終濃度12.06μg/mlで添加し、アクネ菌は2.0×105 CFU/mlで添加し、37℃24時間でインキュベートした。インキュベーション後、10%中性緩衝ホルマリンで固定化し、ProLong Gold Antifade Mountant with DAPI (Thermofisher Scientific)で封入した。画像は、EVOS (登録商標) FL cell imaging system (Thermofisher Scientific)を用いることで得られた。同様の試験を実施し、再現性があることを確認した。
【0051】
<結果>
結果を
図2に示す。アクネ菌を含まない場合、ノビレチン、タンゲレチン及びノビレチン素材は皮脂線を刺激し皮脂を産生させた。それに対して、アクネ菌を含む場合、ノビレチン、タンゲレチン及びノビレチン素材はアクネ菌によって誘導される皮脂産生を抑制させた。