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特開2022-116970RFIDラベル、RFID記録媒体、RFIDラベルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116970
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】RFIDラベル、RFID記録媒体、RFIDラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220803BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G06K19/077 224
G06K19/077 144
G06K19/077 280
G06K19/077 136
G09F3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013411
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 禎光
(72)【発明者】
【氏名】ファイズ アディ エザルディン ビン アディブ
(57)【要約】
【課題】基材としてサーマル紙を使用できるRFIDラベル、RFID記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、ラベル基材、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層をこの順に積層したRFIDラベルである。ラベル基材は、一方の面に感熱発色剤層を有するサーマル紙である。RFIDアンテナは、ラベル基材の他方の面に設けられる。ICチップは、RFIDアンテナに紫外線硬化型異方導電性接着剤により接続されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル基材、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層をこの順に積層したRFIDラベルであって、
前記ラベル基材は、一方の面に感熱発色剤層を有するサーマル紙であって、
前記RFIDアンテナは、前記ラベル基材の他方の面に設けられ、
前記ICチップは、前記RFIDアンテナに紫外線硬化型異方導電性接着剤により接続されている、RFIDラベル。
【請求項2】
前記RFIDアンテナは導電性材料で構成されている、請求項1に記載されたRFIDラベル。
【請求項3】
前記導電性材料は金属箔である、請求項2に記載されたRFIDラベル。
【請求項4】
前記粘着剤層は、粘着剤層、シート状芯材、粘着剤層をこの順に積層した両面テープである、請求項1から3のいずれか一項に記載されたRFIDラベル。
【請求項5】
サーマル紙、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層、基材をこの順に積層したRFID記録媒体であって、
前記RFIDアンテナは、前記サーマル紙の感熱発色剤層を有する面とは反対側の面に設けられ、
前記ICチップは、前記RFIDアンテナに紫外線硬化型異方導電性接着剤により接続されている、RFID記録媒体。
【請求項6】
感熱発色剤層を有するサーマル紙、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層をこの順に積層したRFIDラベルの製造方法であって、
前記サーマル紙において前記感熱発色剤層を有する面とは反対側の面にRFIDアンテナを形成する工程と、
前記サーマル紙に形成された前記RFIDアンテナの所定位置に紫外線硬化型異方導電性接着剤を配置する工程と、
前記RFIDアンテナの所定位置に配置された前記紫外線硬化型異方導電性接着剤に前記ICチップを配置する工程と、
前記ICチップが配置された前記紫外線硬化型異方導電性接着剤に紫外線を照射して硬化させ、前記RFIDアンテナと前記ICチップとを接着するとともに電気的に接続させる工程と、
前記サーマル紙の前記RFIDが形成された面に前記粘着剤層を設ける工程と、
を含むRFIDラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDラベル、RFID記録媒体、及び、RFIDラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の製造、管理、流通のために物品に取り付けられるラベルにおいてRFID(Radio Frequency Identification)ラベルが普及している。RFIDラベルでは、RFIDに適合したICチップ及び所定形状のアンテナパターンをベースフィルムに積層したRFIDインレイが組み込まれ、ICチップには物品に関する様々な情報を記憶することができる。
【0003】
従来のRFIDラベルは、ラベル基材、粘着剤層、セパレータをこの順に積層した粘着紙において、粘着剤層とセパレータの間にPETフィルムをベースとしたRFIDインレイを配置したものが一般的である。ラベル基材には、熱転写印字が可能な紙やフィルム、サーマル紙が用いられる。
しかし、従来のRFIDラベルの製造方法では、ラベル基材、粘着剤層、セパレータからなるラベルとインレイとをそれぞれ別々に製造した後に合体するため、構成材料が多く、また、生産工数が多くなることから、量産とコストダウンの障害となっている。また、完成したRFIDラベルは、構成材料が多く厚いことから汎用ラベルと比較して厚くて腰が強く、曲面に貼り付き難くなる。
【0004】
そこで、ラベル基材の印字面の反対面にアンテナを直接形成する構造のRFIDラベル(つまり、インレイを省いたRFIDラベル)が提案されている(特許文献1)。この構造は、ラベル基材がインレイのベースフィルムを兼用するために構成材料が削減され、さらには省資源にも寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/159222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インレイを省いたRFIDラベルのラベル基材としてサーマル紙を使用することができない。これは、ラベル基材の裏面に形成されたアンテナにICチップを配置する際に熱硬化の異方導電性接着剤を用いるためである。ラベル基材としてサーマル紙を使用した場合には、接着剤の加熱硬化の作業によりIC近傍のサーマル紙が変色してしまう。
また、RFIDラベルを製造する際に、ラベル基材に積層した金属箔にアンテナパターンのレジスト層を印刷し、化学的エッチングによってアンテナパターン以外を溶融除去する方法が従来用いられてきた。しかし、ラベル基材としてサーマル紙を使用する場合には、化学的エッチングを適用することができない。
以上の理由から、インレイを省いたRFIDラベルは、熱転写印字用やインクジェット用のラベルや表面にプレ印刷を施した表示シールのような限定的な用途にしか利用されていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明のある態様は、基材としてサーマル紙を使用できるRFIDラベル、RFID記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、ラベル基材、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層をこの順に積層したRFIDラベルであって、前記ラベル基材は、一方の面に感熱発色剤層を有するサーマル紙であって、前記RFIDアンテナは、前記ラベル基材の他方の面に設けられ、前記ICチップは、前記RFIDアンテナに紫外線硬化型異方導電性接着剤により接続されている、RFIDラベルである。
【0009】
本発明の別の態様は、サーマル紙、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層、基材をこの順に積層したRFID記録媒体であって、前記RFIDアンテナは、前記サーマル紙の感熱発色剤層を有する面とは反対側の面に設けられ、前記ICチップは、前記RFIDアンテナに紫外線硬化型異方導電性接着剤により接続されている、RFID記録媒体である。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、感熱発色剤層を有するサーマル紙、RFIDアンテナ、ICチップ、粘着剤層をこの順に積層したRFIDラベルの製造方法であって、前記サーマル紙において前記感熱発色剤層を有する面とは反対側の面にRFIDアンテナを形成する工程と、前記サーマル紙に形成された前記RFIDアンテナの所定位置に紫外線硬化型異方導電性接着剤を配置する工程と、前記RFIDアンテナの所定位置に配置された前記紫外線硬化型異方導電性接着剤に前記ICチップを配置する工程と、前記ICチップが配置された前記紫外線硬化型異方導電性接着剤に紫外線を照射して硬化させ、前記RFIDアンテナと前記ICチップとを接着するとともに電気的に接続させる工程と、前記サーマル紙の前記RFIDが形成された面に前記粘着剤層を設ける工程と、を含むRFIDラベルの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のある態様によれば、RFIDラベル、RFID記録媒体において、基材としてサーマル紙を使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】セパレータに仮着された複数枚のRFIDラベルの平面図である。
図2図1のX-X断面を拡大して示す図である。
図3】一実施形態に係るアンテナパターンの製造方法を実行する製造装置の概略図である。
図4】製造途中の一実施形態に係るRFIDラベルの要部を拡大し、一部を切り欠いて示す部分拡大図である。
図5】別の実施形態のRFIDラベルの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)RFIDラベル
以下、図1及び図2を参照して、一実施形態のRFIDラベル1を説明する。
図1は、セパレータ7に粘着剤により仮着された複数枚のRFIDラベル1の平面図である。図2は、図1のX-X断面を拡大して示す図である。図1に記載された矢印Fは、後述する製造装置100における搬送方向に一致する。
図2に示すように、一実施形態のRFIDラベル1は、ラベル基材としてのサーマル紙2、アンテナ3、ICチップ4、及び、被着体用粘着剤6がこの順に積層されたラベルである。
【0014】
サーマル紙2は、基材21と、基材21の一方の面に設けられた感熱発色剤層22と、を含む。
本開示において「サーマル紙」は、一方の面に感熱発色剤層が設けられたものであれば如何なる材料を基材として用いてもよく、基材が紙類である場合に限られない。例えば、サーマル紙2の基材としてフィルムを用いることもできる。
例えば、図2に示すサーマル紙2の基材21として適用可能な材料としては、上質紙、コート紙等の紙類、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルム単体又はこれら樹脂フィルムを複数積層してなる多層フィルムが挙げられる。
【0015】
感熱発色剤層22と基材21との間には、下塗り層(易接着層やバリア層)を設けても良い。感熱発色剤層22の表面には、オーバコート層(保護層、潤滑層や耐紫外線層)を設けても良い。
【0016】
サーマル紙2の厚さ(後述する連続体Cの厚さと同じ)は、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材21として紙類を用いる場合には、上記範囲のなかでも、50μm以上260μm以下とすることができる。また、基材21として樹脂フィルムを用いる場合には、上記範囲のなかでも、16μm以上200μm以下とすることができる。サーマル紙2の厚さは、用途に応じて適宜選択可能である。
【0017】
アンテナ3は、図1に示すように、所定形状の導電性材料からなる。アンテナ3の形状は、図1に例示したアンテナパターンに限定されず、RFIDラベル1が利用される用途に応じて適宜設定することができる。例えば、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)、マイクロ波(1~30GHz、特に2.4GHz近傍)、及びHF帯(3MHz~30MHz、特に13.56MHz近傍)等の特定の周波数帯に対応したパターンに設計される。
【0018】
アンテナ3を構成する導電性材料として金属箔が挙げられるが、その限りではなく、導電性材料であれば如何なる材料でも適用可能である。
アンテナ3として金属箔を適用する場合には、その材料の一例として、銅、アルミニウムが挙げられる。製造コストを抑える観点から、アルミニウムを用いることが好ましい。また、RFIDラベル1の全体の厚さ及び製造コストの観点から、アンテナ3の厚さ(後述する金属シートの連続体Mの厚さと同じ)は、3μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0019】
粘着剤Aとしては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。中でも紫外線硬化剤型のアクリル系粘着剤が好適である。
粘着剤Aの粘着力は、180°剥離試験(JIS Z 0237)において、500gf/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは、800gf/25mm以上であり、さらに好ましくは、1000gf/25mm以上である。粘着力の上限値は、好ましくは、2000gf/25mmである。
【0020】
図2において、ICチップ4の近傍をさらに拡大して示すように、アンテナ3の中央部分には、紫外線硬化型異方導電性接着剤である異方性導電ペースト(図中及び以下の記載では、単に「ACP」と表記する。)が配置される。ACP上にはICチップ4が配置されている。
紫外線硬化型異方導電性接着剤は、紫外線(UV)を照射することで硬化する接着剤であるが、接着剤の中に均一に分散されたら導電粒子を含み、ICチップ4とアンテナ3の間の導電性を確保しつつICチップ4をアンテナ3の所定位置に接続させる。
【0021】
ACPに含まれる導電粒子のサイズは、例えばアンテナ3の表面粗さに応じて適宜決定することができる。導電粒子のサイズは、安定した電気的接続のために10μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0022】
図2に示すように、サーマル紙2の基材21において感熱発色剤層22が設けられている面とは反対側の面の全面において、RFIDラベル1をセパレータ7に貼着するための被着体用粘着剤6が設けられる。なお、サーマル紙2の基材21の被着体用粘着剤6が設けられる面には、被着体用粘着剤6の密着性を高めるためにアンダーコート層を配置してもよい。被着体用粘着剤6の浸入を防ぐバリア層を設けても良い。
【0023】
被着体用粘着剤6を形成する粘着剤は、例えば、エマルジョン系(粘着剤を水に分散したもの)、ソルベント系(粘着剤を溶剤に溶解したもの)、ホットメルト系(熱可塑性を利用したもの)等を使用可能である。粘着剤の材料としては、合成ゴム系材料や天然ゴム系材料、アクリル樹脂系材料、ポリビニルエーテル樹脂系材料、ウレタン樹脂系材料、シリコーン樹脂系材料等の材料が挙げられる。粘着剤の粘着力は、RFIDラベル1の用途に応じて適宜設定可能である。
【0024】
セパレータ7は、例えば、紙やフィルムに紫外線硬化型のシリコーン、熱硬化型のシリコーン、溶剤型のシリコーン、アルキルペンダントポリマーのほか、フッ素系の剥離剤を塗工したものを使用可能である。
【0025】
(2)RFIDラベルの製造方法
次に、一実施形態に係るRFIDラベル1の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、一実施形態に係るRFIDラベル1の製造方法の一部を実行する製造装置100の概略図である。製造装置100は、RFIDラベル1を製造する際に、サーマル紙2上にアンテナ3を形成する工程(以下、「アンテナ形成工程」という。)を実行するための装置である。
【0026】
図3に示すように、アンテナ形成工程は、サーマル紙2の連続体Cを搬送しながら、サーマル紙2の連続体Cに粘着剤Aを配置する粘着剤配置工程P1と、連続体Cにおいて粘着剤Aが配置された面に金属シートの連続体Mを配置する金属シート配置工程P2と、金属シートの連続体Mにアンテナ3の切り込みを形成する切込工程P3と、金属シートの連続体Mのうちアンテナ3を構成しない不要部分Mbを除去する除去工程P4と、連続体Cに残されたアンテナ3に加圧する加圧工程P5とを有する。図3における矢印Fは、搬送方向を示す。
【0027】
粘着剤配置工程P1は、粘着剤配置ユニット110によって実行される。粘着剤配置ユニット110は、粘着剤を貯留する粘着剤タンク111と、粘着剤タンク111から粘着剤を汲み上げる汲上ローラ112と、汲上ローラ112から粘着剤Aを受け取って連続体Cに印刷する版ローラ113と、圧胴114とを有する。また、粘着剤配置ユニット110は、粘着剤Aに紫外光を照射するUVランプ115を有する。
【0028】
版ローラ113は、サーマル紙2の連続体Cに配置される粘着剤Aの形状に対応する凸状パターン113aが形成された版が版胴に巻き付けられたものである。版ローラ113には、複数の凸状パターン113aが形成されている。複数の凸状パターン113aは、版ローラ113の送り方向と幅方向とに並んで面付けされている。これにより、複数個のアンテナパターン用の粘着剤を同時に連続体Cに印刷できる。各々の凸状パターン113aは、サーマル紙2の連続体Cに配置されるアンテナ3の外周線よりも内側に収まる形状とされている。
【0029】
粘着剤配置工程P1において適用可能な粘着剤Aとしては、前述したように、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。このアンテナ形成工程では、搬送される連続体Cに、フレキソ印刷や凸版印刷によって配置する観点から、紫外線硬化型のアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。このほか、スクリーン印刷も適用可能である。
【0030】
連続体Cに配置される粘着剤Aの厚さは、3μm以上25μm以下であることが好ましい。3μm以上であれば、アンテナ3を粘着する十分な粘着力が得られ、25μm以下であれば、加圧によりアンテナ3の外周線よりも外側にはみ出ることがない。この観点から、粘着剤Aの厚さは、より好ましくは、3μm以上10μm以下である。
【0031】
図4は、アンテナ形成工程における製造途中のRFIDラベル1の裏面側要部を拡大し、一部を切り欠いて示す部分拡大図である。図4に示す製造途中のRFIDラベル1の拡大部分において、粘着剤Aのアンテナ3の下に位置する部分は、破線で示されている。また、図4において、アンテナ3の外周線と、アンテナ3の外周線の内側に配置される粘着剤Aとの間の余白は、mu、md、w1、w2で示されている。
【0032】
搬送方向上流側の余白muは、搬送方向下流側の余白mdよりも広くなるように粘着剤Aの配置位置が位置決めされる。すなわち、図4に示される余白muは、余白mdよりも大きい。
【0033】
余白が広すぎると、アンテナ3の縁部分が浮き上がったり、剥がれたりする場合がある。また、余白が狭すぎると、アンテナ3の外周部から粘着剤Aがはみ出る場合がある。この観点から、余白muは、50μm以上300μm以下であることが好ましく、余白mdは、30μm以上100μm以下であることが好ましい(ただし、mu>mdを満たす)。
【0034】
なお、粘着剤配置工程P1の前には、粘着剤を連続体Cに印刷する際における位置決め、及びアンテナパターンの切込を形成する際における切込位置の位置決めに基準にすることのできる基準マークを印刷する工程が実行されてもよい。
【0035】
金属シート配置工程P2は、金属シート配置ユニット120によって実行される。金属シート配置ユニット120は、押圧ローラ121と支持ローラ122とを有する。金属シート配置工程P2では、連続体Cの粘着剤Aが配置された面に連続体Cの搬送路とは別の搬送路によって搬送された金属シートの連続体Mが重ね合わせられ、押圧ローラ121と支持ローラ122との間に挿通されて貼り合わされる。アンテナ3の外周線よりも外側には粘着剤が存在しないため、金属シートの連続体Mは、アンテナ3を形成する領域以外は、連続体Cに貼着していない。
【0036】
切込工程P3は、切込ユニット130によって実行される。切込ユニット130は、連続体Cに配置された金属シートの連続体Mにアンテナ3の切込を形成するダイロール131と、ダイロール131をバックアップするアンビルローラ132とを有する。ダイロール131の表面には、アンテナ3の外周線の形状の凸状刃部131aが形成されている。凸状刃部131aは、フレキシブルダイとすることができる。また、このほかに、彫刻刃、植込刃等で構成することができる。
【0037】
切込ユニット130は、連続体C及び連続体Mからなるワークを挟み込んで連続的に搬送しながら、金属シートの連続体Mに凸状刃部131aを食い込ませてアンテナ3を区画する。これにより、金属シートの連続体Mに切込を形成することができる。
【0038】
除去工程P4は、除去ユニット140によって実行される。除去ユニット140は、ピールローラ141、142を備える。ピールローラ141の一部に金属シートの不要部分Mbを沿わせて搬送方向を変更させるとともに、ピールローラ142の一部にワークを沿わせて、不要部分Mbの搬送方向とは異なる方向に搬送させることにより、連続体C及び連続体Mからなるワークから金属シートの不要部分Mbを引き離す。不要部分Mbは、回収の後、再生加工処理が施され、再び、金属シートの連続体Mとして利用される。
【0039】
加圧工程P5は、加圧ユニット150によって実行される。加圧ユニット150は、押圧ローラ151と支持ローラ152とを備える。加圧ユニット150では、押圧ローラ151と支持ローラ152との間にワークを挟み込んで搬送しながら加圧することにより、粘着剤Aが連続体Cに配置されたアンテナ3の全面に亘って押し広げられる。圧力は、2kg/cm以上6kg/cm以下が好ましい。
【0040】
加圧工程P5の後、連続体Cにアンテナ3が配置されたワークは、巻き取りローラ102に巻き取られる。
以上の工程P1~P5からなるアンテナ形成工程により、サーマル紙2の連続体Cにアンテナ3を形成することができる。
【0041】
上記アンテナ形成工程では、加圧工程P5において、加圧ユニット150が押圧ローラ151と支持ローラ152との間にワークを挟み込んでワークを加圧することにより、粘着剤Aが連続体Cに配置されたアンテナ3の全面に亘って押し広げられる。また、加圧により、粘着剤Aの凝着が得られ、アンテナ3を連続体Cに密着させることができる。
【0042】
また、加圧工程P5では、連続体Cにアンテナ3が配置されたワークが搬送されながら押圧ローラ151と支持ローラ152とで加圧されると、連続体Cとアンテナ3との間に配置された粘着剤Aは、搬送方向上流側に引き延ばされる。これに対して、本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法では、アンテナ3の外周線と、アンテナ3の外周線の内側に配置される粘着剤Aとの間の余白は、搬送方向上流側の余白が搬送方向下流側の余白よりも広くなるように粘着剤Aの位置が配置されるため、搬送方向上流側に引き延ばされた粘着剤Aが搬送方向上流側に広く設定された余白muに収められる。
【0043】
上記アンテナ形成工程では、金属シートの不要部分Mbには、粘着剤Aが付着していないため、不要部分Mbを巻き取る際に、不要部分Mbの巻き取りローラ(図3には図示しない)に不要部分Mbをワークから引き剥がす引剥力を付加する必要がない。したがって、金属シートの不要部分Mbの引剥力や該引剥力による破断等を考慮することなく、ワークの搬送速度を設定できる。また、金属シートの不要部分Mbには、粘着剤Aが付着していない、また粘着剤Aが付着することにより他の異物の付着もないため、回収後の取り扱い性が良好であるとともに、金属シートの再利用性に優れるという利点を有する。
【0044】
上記アンテナ形成工程において、除去工程P4では、ピールローラ141,142によってワークと金属シートの不要部分Mbとを引き離すほか、不要部分Mbを吸引によって除去する吸引機構が設けられていてもよい。これにより、ピールローラ141,142による引き離しだけではワークに残り易い金属シート片を確実に除去できる。
【0045】
図示しないが、アンテナ形成工程の後、易接着工程、ACP吐出工程と、ICチップ配置工程と、ACP硬化工程をこの順で行う。
易接着工程は、アンテナのICチップ配置面にレーザを照射して表面を粗面加工する工程である。
ACP吐出工程では、ディスペンサから、アンテナ形成工程によりサーマル紙の連続体C上に形成された各アンテナ3の所定位置に向けてACPを吐出する。
ICチップ配置工程では、ACP吐出工程においてアンテナ3上に配置されたACPに向けてICチップ4を押し付けながら配置させる。
ACP硬化工程では、アンテナ3上に配置されているICチップ4を押圧ユニットにより押圧しながらアンテナ3上のACPに対して紫外線を照射して硬化させる。紫外線照射器を押圧ユニット内に内蔵してもよいし、斜め上方に紫外線照射器を配置して紫外線を斜め上方からACPに照射してもよい。紫外線照射器としては発熱の少ないLEDランプが好適である。
【0046】
ACP吐出工程と、ICチップ配置工程と、ACP硬化工程によって、アンテナ3とICチップ4とが接着しつつ電気的に接続することになる。
次いで、アンテナ3とICチップ4とが積層された基材21の全面に被着体用粘着剤6を塗工し、セパレータ7に仮着させることで、図1に示したRFIDラベル1が完成する。または、セパレータ7の剥離層側に粘着剤を塗工し、基材21(及びアンテナ3、ICチップ4)と貼り合せても良い。その後、所望のRFIDラベル1の形状に打ち抜く。
【0047】
以上説明したようにして製造されたRFIDラベル1は、サーマル紙2の感熱発色剤層22が設けられている面とは反対側の面に、アンテナ3及びICチップ4が直接配置されており、インレイのベースフィルムを省けることから構成材料が削減されるとともに省資源にも寄与する。さらに、このRFIDラベル1では、ACPに対して紫外線を照射することでアンテナ3とICチップ4を接着させている。すなわち、熱硬化型接着剤を用いる従来の接着方法と異なり、アンテナ3とICチップ4を接着させる時に熱が加わらないことから、ICチップ4の近傍のサーマル紙2の変色も生じない。そのため、サーマルプリンタによりサーマル紙2に印字を行う広い用途でRFIDラベル1を利用することが可能となる。
【0048】
図5に別の実施形態のRFIDラベル10を示す。図5は、図2と同様に、RFIDラベル10の断面を示している。
このRFID10は、先に図2を参照して説明したRFIDラベル1の被着体用粘着剤6の代わりに両面テープ16を用いたものである。両面テープ16は、粘着剤層26a、紙またはフィルムからなる芯材25、粘着剤層26bをこの順に積層したものである。両面テープ16の粘着剤層26a,26bのそれぞれにセパレータを仮着したテープロール(不図示)から粘着剤層26a側のセパレータを剥離させ、露出した粘着剤層26aをサーマル紙2のアンテナ3側にラミネートすれば、図5の断面構成が得られる。この場合、セパレータ17は両面テープのセパレータをそのまま利用しても良いし、ラベルに適した別体のセパレータと交換しても良い。
また、基材の両面に剥離剤層を有する両面剥離セパレータを用いて巻回した両面テープ16のテープロールも使用可能である。両面テープ16と両面剥離セパレータの積層体をサーマル紙2のアンテナ側にラミネートすればよい。
図5の断面構成にすることにより、芯材25によるクッション性が付加され、ICチップ4の保護に有効である。
両面テープは芯材が無い物を用いても良い。この場合、断面構成は図2のようになる。セパレータ17として両面テープのセパレータをそのまま用いても良いし、ラミネートの際にラベルロールに適したセパレータに交換しても良い。
【0049】
(3)RFID記録媒体
一実施形態に係るRFID記録媒体は、RFIDラベル1の被着体用粘着剤6に対して、セパレータ7に代えて外側基材が配置される。
RFID記録媒体は、例えば、タグ、カード、リストバンド、チケット等として使用することができ、その用途に応じて、サーマル紙2や外側基材の外形が決定される。
RFID記録媒体の製造方法は、セパレータ7に代えて被着体用粘着剤6に外側基材を貼着させる点を除けば、上記RFIDラベルの製造方法と同一の方法とすることができる。
【0050】
以上、RFIDラベル、RFID記録媒体、及び、RFIDラベルの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,10…RFIDラベル
2…サーマル紙
21…基材
22…感熱発色剤層
3…アンテナパターン
4…ICチップ
6…被着体用粘着剤
7,17…セパレータ
16…両面テープ
25…芯材
26a,26b…粘着剤層
100…製造装置
101…繰り出しローラ
102…巻き取りローラ
110…粘着剤配置ユニット
111…粘着剤タンク
112…汲上ローラ
113…版ローラ
113a…凸状パターン
114…圧胴
115…UVランプ
120…金属シート配置ユニット
121…押圧ローラ
122…支持ローラ
130…切込ユニット
131…ダイロール
131a…凸状刃部
132…アンビルローラ
140…除去ユニット
141,142…ピールローラ
150…加圧ユニット
151…押圧ローラ
152…支持ローラ
P1…粘着剤配置工程
P2…金属シート配置工程
P3…切込工程
P4…除去工程
P5…加圧工程
A…粘着剤
ACP…異方性導電ペースト
C…サーマル紙の連続体
F…搬送方向
M…金属シートの連続体
Mb…金属シートの不要部分
S…領域
mu,md,w1,w2…余白
図1
図2
図3
図4
図5