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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116972
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】パンツ型オムツカバー
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/72 20060101AFI20220803BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220803BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61F13/72 100
A41D13/05 136
A41D13/05 106
A41D13/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013415
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】521045069
【氏名又は名称】菰田 正治
(71)【出願人】
【識別番号】521045070
【氏名又は名称】松浪 靖夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 厚子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英忠
(72)【発明者】
【氏名】菰田 正治
(72)【発明者】
【氏名】松浪 靖夫
【テーマコード(参考)】
3B011
3B200
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB08
3B011AC04
3B011AC24
3B200AA01
3B200AA12
3B200AA13
3B200BB08
3B200BB10
3B200BB11
3B200CB03
3B200CB20
(57)【要約】
【課題】パンツ型オムツを使用している人にとって長く座った状態であっても苦痛ではなく、椅子からの落下の場合に対応可能なパンツ型オムツカバーを提供する。
【解決手段】ウエスト穴101と、足側穴102とを有し、前記ウエスト穴101と前記足側穴102との間に、伸縮性を有する生地をパンツ形態にして設けることによって作成されるパンツ本体部103とを有するパンツ型オムツカバーにおいて、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部103における、左右の臀部と大腿筋側部に対応する位置を覆うように前記パンツ本体部103に取り付けられた弾性樹脂素材により構成される人工臀筋300と、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部103における尻穴に対応する位置に前記生地を用いて空間が形成されるように構成された便溜り部105とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人のウエストに対応するウエスト穴と、両足の付根部から大腿部にかけての部位に対応して設けられる足を通すための足側穴とを有し、前記ウエスト穴と前記足側穴との間に、伸縮性を有する生地をパンツ形態にして設けることによって作成されるパンツ本体部とを有するパンツ型オムツカバーにおいて、
前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における、左右の臀部と大腿筋側部に対応する位置を覆うように前記パンツ本体部に取り付けられた弾性樹脂素材により構成される人工臀筋と、
前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における尻穴に対応する位置に前記生地を用いて空間が形成されるように構成された便溜り部と
を具備することを特徴とするパンツ型オムツカバー。
【請求項2】
前記人工臀筋は、前記パンツ本体部の外側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のパンツ型オムツカバー。
【請求項3】
前記人工臀筋は、前記大腿筋側部を覆う部位で、腸骨が外側へ突出した位置を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載のパンツ型オムツカバー。
【請求項4】
前記パンツ型オムツを装着したときに、前記人工臀筋における前記尻穴に臨む縁部から前記人工臀筋における横幅の3分の1程度までの領域にジェルパッドが設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパンツ型オムツカバー。
【請求項5】
前記人工臀筋は、周縁部において厚みが最も薄く、中央部において厚みが最も厚く形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパンツ型オムツカバー。
【請求項6】
人が紙オムツを装着した状態で、その上から履くことができる大きさであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパンツ型オムツカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンツ型オムツカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代は、要介護高齢者の増加が極めて顕著になっている。しかしながら、要介護認定された人がすぐに介護施設等に入所できる分けではなく、在宅で入所順番を待っている人も多いのが現状である。係る現状において、要介護者に関する問題としては排泄に関するものが多数を占めている。例えば、所謂「おもらし」の問題に対しては、紙オムツの使用によって問題の解決が図られる。この場合、紙オムツには、「テープ式紙オムツ」と「パンツ型紙オムツ」の2種が主なものとして知られている。
【0003】
従来は「テープ式紙オムツ」が多く使用されていたが、近年では生産技術の向上により「パンツ型紙オムツ」が大量に安く供給されるようになり、多くの老人が通常のパンツの代用としても使用するようになっている。しかしながら、ここにきてパンツ型紙オムツの安易な使用にも問題があることが指摘されている。即ち、パンツ型紙オムツを使用した老人も使用の当初には便意を生じると急いでトイレへ行き用を足していたものが、使用に慣れて急いでトイレへ駆け込むことを止め、パンツ型紙オムツ内ではあるが「垂れ流し」の状態となってしまうというのである。
【0004】
介護の観点からは、人は常に努力してトイレへ行くようにすることが「廃用症候群」などと称される機能低下を防ぐ対策であり、トイレは自分で行くようにサポートすることが大事であるとされている。従って、パンツ型紙オムツは万が一の場合の対策として用いているのであり、マンパワー不足を補うために用いているのである。このため、介護度が低い人には「パンツ型紙オムツ」を用いて基本的には通常のパンツと同様に上げ下げして使用してもらうようにしており、介護度が高い人には「テープ式紙オムツ」を用いるというのが基本的な使用スタイルである。
【0005】
また、介護度が軽中度の人の場合には、足を上げることも立位になることも、ほぼ一人で可能であれば、自由に歩き回り易く、履き易く脱ぎ易い「パンツ型紙オムツ」が好適である。これに対し、「寝たきり」になってしまった人には、「パンツ型紙オムツ」では、寝た状態で腰を持ち上げてパンツを履かせる作業は、行い難く本人の協力も期待できず重労働であることから、「テープ式紙オムツ」を用いることになる。「テープ式紙オムツ」は、介護対象者の体位を横向きにして、お尻の下に紙オムツを配して介護対象者を仰向けに返すようにすれば、その後は紙オムツの前立て部分を腹部に返すように折り曲げて載せ、左右の羽根状に広がった羽根状部分を腹部側に折返し、その先端部に設けられたテープのカバーを剥離し、テープにより羽根状部分を上記前立て部分の表面に張り付けることで装着完了となる。
【0006】
本実施形態に係る「人工臀筋付パンツ」は上記の「パンツ型紙オムツ」の上に重ねて履くタイプのもので、「パンツ型紙オムツ」が有している様々な問題を解決する。「パンツ型オムツ」の利用者の多くは、寝た切りになることを防止するため、昼間は車椅子で生活するかまたは椅子で生活し、夜はベッドにて生活している。また、老齢であることから運動をすることは殆どないと言える。このため、若いときに比べて臀筋の退化は著しく、臀筋の退化のために坐骨や仙骨(尾骨)が飛び出た骨格体形となる。そして、車椅子や介護施設の椅子はクッション性に乏しいために、上記の飛び出した坐骨や仙骨(尾骨)が椅子床に当り、坐骨や仙骨(尾骨)に体重が加わり痛みが激しく、長時間座っていることが苦痛となる。これに対し、車椅子用等のクッション性の高い座布団が販売されているものの、十万円を超えるものなど高価なものである割に効果が低く、高価な座布団で上記問題を解決できたという情報は得られていない。
【0007】
更に、車椅子褥瘡という問題も発生する。上記の通り飛び出した坐骨や仙骨(尾骨)が椅子床に当ると、その部分の皮膚の血流が阻害され、皮膚が擦り切れやすく傷が生じ易くなる上に、排便した場合の便が傷に付着し褥瘡が発生する。また、このように褥瘡が生じた場合には、痛みを避けようと車椅子の座席の先端側へ先端側へと臀部を移動するようになり、最終的には被介護者が落下するケースも多い。そして腰部の骨において、特に外方へ突出している尾骨や腸骨棘の部分や大腿骨を骨折することもある。
【0008】
また、「パンツ型紙オムツ」も「テープ式紙オムツ」も臀筋が退化した老人等にとっては、装着したときに尻穴付近においてオムツまでの距離が臀筋の退化を生じていない人よりも短く、この部分の体積が小さいことから、排便した場合に便が広がってしまい、仙骨などの突出した骨部分の皮膚に付着し、皮膚を溶解させ褥瘡ができる原因となる虞がある。また、特に女性などの場合には尿路感染である膀胱炎などを発症する虞が高い。
【0009】
特許文献1には、介護用オムツカバーが開示されている。このオムツカバーは、臀部対応弾性部材と仙骨保護用弾性部材と排便筒部とカバーとを具備するものである。上記臀部対応弾性部材は、少なくとも仙骨先端の尾骨を避けて臀部と対向する位置において、仰臥及び座位状態の臀部を床側から押し上げるものである。また、仙骨保護用弾性部材は、上記臀部対応弾性部材よりも人体側に配置され、仙骨及び臀部に対応する位置において生体を押圧から保護する保護手段が設けられているものである。
【0010】
また、排便筒部は、上記仙骨保護用弾性部材と上記臀部対応弾性部材とを貫いて形成されたものである。更に、カバーは、上記臀部対応弾性部材、上記仙骨保護用弾性部材及び上記排便筒部の露出面を被覆し、装着状態において背中側から尻部を介して下腹部を覆うものである。
【0011】
上記のように構成された介護用オムツカバーにおいては、上記臀部対応弾性部材のカバー上に排便に対応するオムツが配置される。
【0012】
また、特許文献2には、便袋を備えたオムツが開示されている。このオムツは、生体に触れる面に吸水性シートを備え、この吸水性シートの外側に防水シートを備えたおむつ本体部と、上記おむつ本体部が生体に装着されたときに、上記おむつ本体部における肛門が位置する部位に形成された穴と、上記穴から外側に便を収納する空間を備える便袋と、上記穴と上記便袋の開口部とを結合する結合部と、上記結合部に設けられ、該結合部における開口を維持させると共に床側からおむつ本体部を離間させる緩衝部材とを具備するものである。
【0013】
上記おむつは、緩衝部材が結合部に設けられ、結合部を厚くしてまた穴の開口を維持させることができる。また、穴を閉じた状態で流通させることができ、運搬時にはコンパクトにすることができるというものである。また、閉じられた開口は、容易に広げることができ開口を維持した状態で患者に装着させることができる。また、結合部は緩衝部材によって厚みを生じ、穴の開口部の周囲に沿ってバンクのように便袋を見込むように構成され、床側からおむつ本体部を離間させるので、便と尿とが混じり合い難く、便が腰や背中へ回り込み難く、排泄の後には皮膚と便との接触を防ぎ、排泄物の処理が簡単容易であると共に、構造が簡単で、安価とすることが可能であるという特徴を備えている。
【0014】
更に、特許文献3には、オムツユニットが開示されている。このオムツユニットは、人の臀部を一周するように環状に形成された弾性部材から構成された人工臀筋ブロックと、オムツ外装体と、オムツ内装体とによって構成される。上記オムツ外装体は、上記人工臀筋ブロックを内包し、上記人工臀筋ブロックの環状部分における穴に対応する穴を有するカバーであって、装着時に少なくともこのカバーが人の臀部と対向する部分に面ファスナーが設けられたカバーを具備する。
【0015】
オムツ内装体は、オムツの便対応部に開口部を有し、上記オムツ外装体の面ファスナーにより上記オムツ外装体に接着するオムツ本体部と、上記オムツ本体部の開口部に結合され、内部が吸水性で外部が防水性の便袋であって、オムツ外装体の穴に収容される便袋とを具備する。
【0016】
この特許文献3に係るオムツユニット及びオムツ外装体では、装着時にカバーが人の臀部と対向する部位において、衝撃吸収ジェル片が、カバーと人工臀筋ブロックとの間に設けられている。このため、臀部に加わる応力が分散され、仙骨部分に褥瘡ができ難く、また、褥瘡ができている場合に悪化を抑制する効果がある。
【0017】
上記のような従来の排便対応の場合には、弾性部材によって臀筋などの補完を行うというものがあったが、基本的に紙オムツを使用する構成となっており、紙オムツのコストに弾性部材による構成部分のコストが上乗せされたものとなり、全体としてコスト高であるという問題があった。また、紙オムツを使用することが前提となっていることから、使用済みの紙オムツがゴミとして大量に発生し、その処理にコストが必要であるだけでなく、廃棄物の低減と言う課題からも問題のあるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2012-228320号公報
【特許文献2】特開2014-327号公報
【特許文献3】特開2014-94062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上の通り、従来では老人等が臀筋の退化を生じたときに、これを補うものとして人工臀筋という考え方はあったものの、構成が大掛かりであり、高価なものであった。更に、従来のものは、テープ式紙オムツに対し対策することが前提であり、パンツ型紙オムツに対してまで簡単に適用できるものではなかった。
【0020】
本発明は、このような従来のオムツに関する現状に鑑みなされたもので、その目的は、パンツ型オムツを使用している人にとって長く座った状態であっても苦痛ではなく、椅子からの落下の場合に対応可能なパンツ型オムツカバーを提供することである。また、排便をした場合にも褥瘡の発生に進行し難くするパンツ型オムツカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るパンツ型オムツカバーは、人のウエストに対応するウエスト穴と、両足の付根部から大腿部にかけての部位に対応して設けられる足を通すための足側穴とを有し、前記ウエスト穴と前記足側穴との間に、伸縮性を有する生地をパンツ形態にして設けることによって作成されるパンツ本体部とを有するパンツ型オムツカバーにおいて、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における、左右の臀部と大腿筋側部に対応する位置を覆うように前記パンツ本体部に取り付けられた弾性樹脂素材により構成される人工臀筋と、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における尻穴に対応する位置に前記生地を用いて空間が形成されるように構成された便溜り部とを具備することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るパンツ型オムツカバーでは、前記人工臀筋は、前記パンツ本体部の外側に取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るパンツ型オムツカバーでは、前記人工臀筋は、前記大腿筋側部を覆う部位で、腸骨が外側へ突出した位置を覆うことを特徴とする。
【0024】
本発明に係るパンツ型オムツカバーでは、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記人工臀筋における前記尻穴に臨む縁部から前記人工臀筋における横幅の3分の1程度までの領域にジェルパッドが設けられることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るパンツ型オムツカバーでは、前記人工臀筋は、周縁部において厚みが最も薄く、中央部において厚みが最も厚く形成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るパンツ型オムツカバーでは、人が紙オムツを装着した状態で、その上から履くことができる大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るパンツ型オムツカバーは、人のウエストに対応するウエスト穴と、両足の付根部から大腿部にかけての部位に対応して設けられる足を通すための足側穴とを有し、前記ウエスト穴と前記足側穴との間に、伸縮性を有する生地をパンツ形態にして設けることによって作成されるパンツ本体部とを有するパンツ型オムツカバーにおいて、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における、左右の臀部と大腿筋側部に対応する位置を覆うように前記パンツ本体部に取り付けられた弾性樹脂素材により構成される人工臀筋を備えるので、パンツ型オムツを使用している人にとって長く座った状態であっても苦痛ではなく、椅子からの落下の場合に対応可能である。
【0028】
本発明に係るパンツ型オムツカバーは、前記パンツ型オムツを装着したときに、前記パンツ本体部における尻穴に対応する位置に前記生地を用いて空間が形成されるように構成された便溜り部を備えるので、排便をした場合にも褥瘡の発生に進行し難くするものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの臀部側からの斜視図。
図2】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの正面側からの斜視図。
図3】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの要部である便溜り部の斜視図。
図4】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの左側方からの斜視図。
図5】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの要部である人工臀筋の正面図。
図6図5のA-A断面図。
図7図5のB-B断面図。
図8】本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーの前に装着されるパンツ型オムツの正面方向からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るパンツ型オムツカバーを説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態に係るパンツ型オムツは、オムツを装着した上に履くものである。用いられるオムツとしては、パンツ型紙オムツを想定しているが、テープ式紙オムツであっても良い。また、布のものでも良い。要は、椅子に座った場合を想定している。
【0031】
本実施形態に係るパンツ型オムツカバーの下に履くオムツとして想定している「パンツ型紙オムツ」の使用については、以下の通りと思える。「パンツ型紙オムツ」を使用している人を観察すると、「パンツ型紙オムツ」の上に普通のパンツを重ねて履くことが多い。これは、下半身の冷えに対する対策であり、また、「パンツ型紙オムツ」だけではフワフワして安定感がなく、これを普通のパンツを履いている感覚に戻すためである。このような事情から、本実施形態に係るパンツ型オムツカバーは、重ねて履く場合に履き易いものである。
【0032】
本実施形態に係るパンツ型オムツカバーは、図1図2に示すように、人のウエストに対応するウエスト穴101と、両足の付根部から大腿部にかけての部位に対応して設けられる足を通すための足側穴102、102とを有し、上記ウエスト穴101と上記足側穴102、102との間に、伸縮性を有する生地をパンツ形態にして設けることによって作成されるパンツ本体部103とを有する。上記ウエスト穴101の周囲のパンツ本体部103の部分には、ゴムなどの弾性体が設けられ、パンツ型オムツカバーを履いた状態を適切に維持することが可能である。この実施形態は、パンツ本体部103が両足の付根部から大腿部にかけての部分を覆う大腿部リング104、104を有している。大腿部リング104、104を有するものが好適であるが、勿論、この大腿部リング104、104を有さない、「ブリーフ」と称されるタイプのものや「ショーツ」と称されるタイプのものであっても良い。
【0033】
本実施形態に係るパンツ型オムツカバーは、上記パンツ型オムツを装着したときに、上記パンツ本体部103における尻穴に対応する位置に上記生地を用いて空間が形成されるように構成された便溜り部105を備える。
【0034】
便溜り部105は、図3に示すように上記パンツ本体部103における尻穴に対応する位置を円環201により示す場合に、その円環201を基部として生地202を外側へ概ね半球殻状に突出させて形成することができる。生地202を外側へ概ね半球殻状に突出させた内側には、空間203ができる。
【0035】
本実施形態に係るパンツ型オムツカバーは、図1図2図4に示されるように、上記パンツ型オムツを装着したときに、上記パンツ本体部103における、左右の臀部と大腿筋側部に対応する位置を覆うように上記パンツ本体部103に取り付けられた弾性樹脂素材により構成される人工臀筋300を備える。この人工臀筋300は、上記パンツ本体部103の外側に取り付けられている。この人工臀筋300は、上記大腿筋側部を覆う部位で、腸骨が外側へ突出した位置を覆う大きさを有する。
【0036】
人工臀筋300は、図5に示される人の左臀部に対応して設けられる人工臀筋300のA-A断面図である図6とB-B断面図である図7に示されるように、各断面図が弓の弦の形状であり、周縁部において厚みが最も薄く、中央部において厚みが最も厚く形成されている。例えば、その厚みは最も薄いところで2~3mm程度、厚いところで30~40mm程度とすることができる。人工臀筋300は、比較的硬質のウレタンフォームやチップウレタンフォーム(硬さは、普通乃至硬質)などの弾性樹脂を用いることができる。人工臀筋300の平面形状は、概ね四角形状であって、尻穴周囲に沿った部分が内側へ削ぎ取られた形状を有している。この形状で、上記のような厚みとなっているため、臀筋が後退していない本来の臀筋を有する人と同じ程度の臀部が、人工臀筋300により実現される。
【0037】
また、本実施形態においては、上記パンツ型オムツを装着したときに、上記人工臀筋300における上記尻穴に臨む縁部から上記人工臀筋300における横幅の3分の1程度までの領域にジェルパッド400が設けられる。この領域は、車椅子を含む椅子から被介護者がズレ落ちて行くときに最も力が加わるところであり、何らの手当てがなければ皮膚が剥けてしまう虞がある。上記のジェルパッド400によって椅子から被介護者がズレ落ちて行くときに上記領域に加わる力を拡散させて低減し皮膚が剥ける事故を防ぐことが可能である。
【0038】
本実施形態のパンツ型オムツカバーは、人が紙オムツを装着した状態で、その上から履くことができる大きさである。紙オムツとしては、図8に示すパンツ型紙オムツ500を使用することができる。図8以外の、市販のパンツ型紙オムツを使用することが可能である。このようなパンツ型紙オムツ500を装着し、その上から本実施形態のパンツ型オムツカバーを装着する。これによって、「パンツ型紙オムツ」の上に普通のパンツを重ねて履いた場合と同様なフィット感を味わうことができる。
【0039】
上記のように本実施形態のパンツ型オムツカバーを装着することによって、人工臀筋300が臀筋の機能を果たし、車椅子を含む椅子に座った場合に仙骨(特に仙骨先端の尾骨)が椅子床から浮いた状態となり椅子床に当ることなく、長時間座っていることが可能となる。また、坐骨や仙骨(尾骨)が椅子床に当ることがないことから、その部分の皮膚の血流が阻害されることもなく、皮膚の擦り切れや傷が生じ難くなるため、排便した場合の便が傷に付着し褥瘡が発生する可能性を低減させる。
【0040】
また、人工臀筋300によって椅子床から尻穴までの距離及び空間が生じ、この空間に便溜り部105が入り、排便した場合に便が紙オムツ内に広がり難くし、介護者が行うオムツの取り換え作業を楽にできることが期待される。
【0041】
更に、本実施形態のパンツ型オムツカバーを装着することによって、人工臀筋300が、腰部の骨において特に外方へ突出している尾骨や腸骨棘の部分や大腿骨を覆うので、椅子から落下した場合に骨折する危険性を低減させるものである。
【0042】
更に、本実施形態のパンツ型オムツカバーのジェルパッド400によって、椅子から被介護者がズレ落ちて行くときに上記領域に加わる力を拡散させて低減し皮膚が剥ける事故を防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
101 ウエスト穴
102 足側穴
103 パンツ本体部
104 大腿部リング
105 便溜り部
201 円環
202 生地
203 空間
300 人工臀筋
400 ジェルパッド
500 パンツ型紙オムツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8