(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116989
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】回転状態検出装置および回転状態検出方法
(51)【国際特許分類】
H02P 7/06 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
H02P7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013437
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】都 軍安
(72)【発明者】
【氏名】木村 渉
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【テーマコード(参考)】
5H571
【Fターム(参考)】
5H571AA03
5H571BB10
5H571CC04
5H571JJ16
5H571JJ25
5H571JJ26
5H571LL22
5H571LL23
5H571LL50
(57)【要約】
【課題】リップル成分の周期を高精度に補正すること。
【解決手段】整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出装置であって、電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測部と、観測部によって観測された複数の周期に基づいて、周期の補正値を算出する補正部と、補正部によって算出された複数の補正値に基づいて、電動機の回転角速度を計算する計算部とを備え、観測部は、所定個数の複数の周期を観測し、補正部は、所定個数の複数の周期のうちの中央値を、補正値として算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出装置であって、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測部と、
前記観測部によって観測された複数の前記周期に基づいて、前記周期の補正値を算出する補正部と、
前記補正部によって算出された複数の前記補正値に基づいて、前記電動機の回転角速度を計算する計算部と
を備え、
前記観測部は、所定個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正部は、前記所定個数の複数の周期のうちの中央値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項2】
前記電動機の回転開始時において、
前記観測部は、前記電動機の回転が開始されてからの、前記所定個数に満たない個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正部は、前記所定個数に満たない個数の複数の周期のうちの中央値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転状態検出装置。
【請求項3】
前記電動機の回転終了時において、
前記観測部は、前記電動機の回転が終了するまでの、前記所定個数に満たない個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正部は、前記所定個数に満たない個数の複数の周期のうちの中央値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転状態検出装置。
【請求項4】
前記計算部は、
前記電動機の1回転に相当する個数以上の前記周期が観測された場合、直近の前記電動機の1回転に相当する個数の前記補正値に基づいて、前記回転角速度を算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転状態検出装置。
【請求項5】
前記計算部は、
前記周期が所定時間以上観測されなかった場合、前記回転角速度として0を計算する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の回転状態検出装置。
【請求項6】
前記計算部は、
前記電動機の1回転に相当する個数の前記周期が観測されなかった場合、前記回転角速度として0を計算する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の回転状態検出装置。
【請求項7】
前記所定個数は、奇数である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の回転状態検出装置。
【請求項8】
整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出装置であって、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測部と、
前記観測部によって観測された複数の前記周期に基づいて、前記周期の補正値を算出する補正部と、
前記補正部によって算出された複数の前記補正値に基づいて、前記電動機の回転角速度を計算する計算部と
を備え、
前記観測部は、所定個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正部は、前記所定個数の複数の周期のうちの最小値および最大値を除去し、当該除去後の複数の前記周期の平均値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする回転状態検出装置。
【請求項9】
整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出方法であって、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測工程と、
前記観測工程において観測された複数の前記周期に基づいて、前記周期の補正値を算出する補正工程と、
前記補正工程において算出された複数の前記補正値に基づいて、前記電動機の回転角速度を計算する計算工程と
を含み、
前記観測工程では、所定個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正工程では、前記所定個数の複数の周期のうちの中央値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする回転状態検出方法。
【請求項10】
整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出方法であって、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測工程と、
前記観測工程において観測された複数の前記周期に基づいて、前記周期の補正値を算出する補正工程と、
前記補正工程において算出された複数の前記補正値に基づいて、前記電動機の回転角速度を計算する計算工程と
を含み、
前記観測工程では、所定個数の複数の前記周期を観測し、
前記補正工程では、前記所定個数の複数の周期のうちの最小値および最大値を除去し、当該除去後の複数の前記周期の平均値を、前記補正値として算出する
ことを特徴とする回転状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転状態検出装置および回転状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期に基づいて、電動機の回転角速度等を算出する方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/123453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、リップル成分の周期を補正するために、パラメータを事前調整したり、パラメータを学習したりする必要があった。このため、従来技術では、十分な学習が行われるまでの間は、リップル成分の周期を高精度に補正することができなかった。また、従来技術では、学習済みのパラメータが一定の誤差を有するため、これによっても、リップル成分の周期を高精度に補正することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る回転状態検出装置は、整流子を備えた電動機の回転に関する情報を取得する回転状態検出装置であって、電動機を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測部と、観測部によって観測された複数の周期に基づいて、周期の補正値を算出する補正部と、補正部によって算出された複数の補正値に基づいて、電動機の回転角速度を計算する計算部とを備え、観測部は、所定個数の複数の周期を観測し、補正部は、所定個数の複数の周期のうちの中央値を、補正値として算出する。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、リップル成分の周期を高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る回転状態検出装置の構成の一例を示す図
【
図2】一実施形態に係る回転状態検出装置において用いられる各種信号の一例を示す図
【
図3】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置の機能構成の一例を示すブロック図
【
図4】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による処理の手順の一例を示すフローチャート
【
図5】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による中間期間における補正値の算出例を示す図
【
図6】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による駆動開始期間における補正値の算出例を示す図
【
図7】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による駆動開始期間における補正値の算出例を示す図
【
図8】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による駆動終了期間における補正値の算出例を示す図
【
図9】一実施形態に係る回転状態検出装置が備える制御装置による駆動終了期間における補正値の算出例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照し、一実施形態に係る回転状態検出装置100について説明する。
【0009】
(回転状態検出装置100の構成)
図1は、一実施形態に係る回転状態検出装置100の構成の一例を示す図である。一実施形態に係る回転状態検出装置100は、整流子(図示省略)を備えたDCモータ10(「電動機」の一例)の回転に関する情報を取得する装置である。なお、DCモータ10は、駆動回路20によって駆動される。駆動回路20は、電源30から供給される電力を用いて、DCモータ10を駆動する。
【0010】
例えば、DCモータ10および回転状態検出装置100は、車両が備えるパワーウインドウの開閉動作用に用いられる。但し、DCモータ10および回転状態検出装置100の用途は、これに限らず、その他の用途(例えば、電動サンルーフの開閉動作用、電動ドアミラーの角度調整用、電動パワーシートの調整用等)に用いられてもよい。
【0011】
図1に示すように、回転状態検出装置100は、電圧検出部110、電流検出部120、パルス発生部130、および制御装置140を備える。
【0012】
電圧検出部110は、DCモータ10に供給される電圧を検出する。
図1に示す例では、電圧検出部110は、LPF(Low Pass Filter)111およびA/D(Analog To Digital Converter)112を有する。LPF111は、DCモータ10に供給される電圧から、所定の遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)を除去し、DCモータ10へ供給される平均的な電圧に応じた電圧信号(アナログ信号)を出力する。A/D112は、LPF111から出力された電圧信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、当該デジタル信号を出力する。
【0013】
電流検出部120は、DCモータ10を流れる電流を検出する。
図1に示す例では、電流検出部120は、LPF121およびA/D122を有する。LPF121は、DCモータ10を流れる電流から、所定の遮断周波数よりも高い周波数成分(ノイズ成分)を除去し、DCモータ10を流れる平均的な電流に応じた電流信号(アナログ信号)を出力する。A/D122は、LPF121から出力された電流信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、当該デジタル信号を出力する。
【0014】
パルス発生部130は、DCモータ10を流れる電流に含まれるリップル成分に基づくパルス信号を発生する。
図1に示す例では、パルス発生部130は、BPF(Band Pass Filter)131およびリップル検知部132を有する。BPF131は、DCモータ10を流れる電流から、リップル成分に対応する特定の周波数帯の成分を抽出して、当該特定の周波数帯の成分の信号を出力する。リップル検知部132は、BPF131から出力された信号に基づいて、DCモータ10を流れる電流に含まれるリップル成分を検知する。そして、リップル検知部132は、検知されたリップル成分をパルス信号に変換して、当該パルス信号を出力する。
【0015】
制御装置140は、電圧検出部110から出力された電圧信号(デジタル信号)と、電流検出部120から出力された電流信号(デジタル信号)と、パルス発生部130から出力されたパルス信号との少なくともいずれか一つに基づいて、DCモータ10の回転状態に関する情報を生成および出力する。例えば、制御装置140は、パルス発生部130から出力されたパルス信号に基づいて、DCモータ10の回転角速度を算出し、当該回転角速度を示す回転角速度信号を出力することができる。
【0016】
(各種信号の一例)
図2は、一実施形態に係る回転状態検出装置100において用いられる各種信号の一例を示す図である。
図2において、Aは、回転状態検出装置100に入力される電圧(すなわち、DCモータ10の両端子の観測電圧)の時間変化を示す。
図2において、Bは、回転状態検出装置100に入力される電流(すなわち、DCモータ10の巻き線を流れる電流)の時間変化を示す。
図2において、Cは、回転状態検出装置100のパルス発生部130が発生するパルス信号の時間変化を示す。
【0017】
複数の整流子を備えるDCモータ10においては、回転に伴って整流子が切り替わる毎に、抵抗値が変化して、当該DCモータ10を流れる電流に、リップル成分が発生する。このため、DCモータ10から回転状態検出装置100に入力される電流は、
図2に示すように、複数のリップル成分によって細かく変動するものとなる。例えば、DCモータ10が、45度間隔で8個の整流子を有する場合、DCモータ10を流れる電流には、1回転につき、8個のリップル成分が発生する。
【0018】
回転状態検出装置100のパルス発生部130は、回転状態検出装置100に入力された電流から、複数のリップル成分を検知して、当該複数のリップル成分をパルス信号に変換する。これにより、
図2に示すように、パルス発生部130から、複数のリップル成分に対応する複数のパルスを含んだパルス信号が出力されることとなる。
【0019】
(制御装置140の機能構成の一例)
図3は、一実施形態に係る回転状態検出装置100が備える制御装置140の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置140は、観測部141、補正部142、および計算部143を備える。
【0020】
観測部141は、DCモータ10を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する。具体的には、観測部141は、DCモータ10を流れる電流においてリップル成分が発生する毎に、パルス発生部130から出力されたパルス信号に含まれている、当該リップする成分に対応するパルスに基づいて、当該リップル成分の周期を観測する。なお、「リップル成分の周期」とは、連続する2つのリップル成分の立ち上がりエッジ間の時間間隔を意味する。
【0021】
補正部142は、観測部141によって観測された複数のリップル成分の周期に基づいて、各リップル成分の周期の補正値を算出する。
【0022】
具体的には、補正部142は、観測部141によって、補正値の算出対象のリップル成分の周期をn番目のリップル成分の周期とした場合、観測部141によって観測されたリップル成分の周期のうち、当該n番目のリップル成分の周期を中間位置とする、所定個数の複数のリップル成分の周期を、算出に使用する。補正部142は、所定個数の複数のリップル成分の周期のうちの中央値を、n番目のリップル成分の周期の補正値として算出する。
【0023】
例えば、補正部142は、所定個数を「9個」とした場合において、1~9番目のリップル成分の周期が観測された場合、1~9番目のリップル成分の周期のうちの中央値を、1~9番目のリップル成分の周期において中間位置にある、5番目のリップル成分の周期の補正値として算出する。これにより、補正部142は、DCモータ10のパラメータを用いることなく、5番目のリップル成分の周期を、連続する9個のリップル成分の周期の略平均的な値に補正することができる。
【0024】
なお、DCモータ10の駆動開始時および駆動終了時には、補正値の算出対象のn番目のリップル成分の周期を中心位置とする、所定個数の複数のリップル成分の周期が得られない場合がある。この場合、補正部142は、n番目のリップル成分の周期を中心位置とする、所定個数に満たない個数の複数のリップル成分の周期のうちの中央値を、n番目のリップル成分の周期の補正値として算出する。
【0025】
例えば、補正部142は、所定個数を「9」とした場合において、DCモータ10の駆動開始時に、所定個数に満たない1~7番目のリップル成分の周期しか観測されなかった場合、1~7番目のリップル成分の周期のうちの中央値を、1~7番目のリップル成分の周期において中間位置にある、4番目のリップル成分の周期の補正値として算出する。
【0026】
計算部143は、補正部142によって算出された、複数のリップル成分の周期の補正値に基づいて、DCモータ10の回転角速度を計算する。例えば、計算部143は、複数のリップル成分の周期に基づくDCモータ10の回転角度を、複数のリップル成分の周期(すなわち、回転角度分の回転に要する時間)で除することにより、DCモータ10の単位時間あたりの回転角度を、DCモータ10の回転角速度として計算することができる。
【0027】
なお、計算部143は、観測されたリップル成分の周期の個数が、予め想定したDCモータ10の1回転毎のリップル成分の周期の個数以上であった場合、直近のDCモータ10の1回転毎のリップル成分の周期の個数のリップル成分の周期の補正値に基づいて、DCモータ10の回転角速度を算出する。DCモータ10の1回転毎のリップル成分の周期の個数、すなわち、DCモータ10の1回転に相当するリップル成分の周期の個数は、例えばDCモータ10が有する整流子の個数から、予め導出することができる。
【0028】
例えば、DCモータ10が8個の整流子を有する場合、計算部143は、直近のDCモータ10の1回転に相当する8個のリップル成分の周期の補正値(T1~T8)に基づいて、下記数式(1)により、DCモータ10の回転角速度ωを算出する。但し、下記数式(1)において、2πは、DCモータ10の1回転分の回転角度(すなわち、360°)を示し、Tiは、DCモータ10の1回転分8個の周期のうちのi番目の周期に要した時間を示す。
【0029】
【0030】
また、計算部143は、リップル成分の周期が所定時間内に観測されなかった場合、DCモータ10の回転角速度として「0」を計算する。
【0031】
また、計算部143は、DCモータ10の1回転に相当する個数のリップル成分の周期が観測されなかった場合、DCモータ10の回転角速度として「0」を計算する。
【0032】
なお、制御装置140は、例えば、マイクロコンピュータ等のIC(Integrated Circuit)によって実現される。そして、制御装置140が備える各機能部は、ICにおいて、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュメモリ等)に記憶されたプログラムを、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等)が実行することによって実現される。
【0033】
(制御装置140による処理の手順の一例)
図4は、一実施形態に係る回転状態検出装置100が備える制御装置140による処理の手順の一例を示すフローチャートである。制御装置140は、DCモータ10の駆動中に、
図4に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0034】
まず、観測部141が、パルス発生部130から出力されたパルス信号に基づいて、DCモータ10を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する(ステップS401)。
【0035】
次に、観測部141が、ステップS401において、リップル成分の周期が所定時間内に観測されたか否かを判断する(ステップS402)。
【0036】
ステップS402において、「リップル成分の周期が所定時間内に観測されなかった」と判断された場合(ステップS402:No)、計算部143が、DCモータ10の回転角速度として「0」を計算する(ステップS410)。その後、制御装置140は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0037】
一方、ステップS402において、「リップル成分の周期が所定時間内に観測された」と判断された場合(ステップS402:Yes)、補正部142が、DCモータ10の現在の駆動期間が「駆動開始期間」であるか否かを判断する(ステップS403)。なお、「駆動開始期間」は、DCモータ10の駆動開始時から観測されたリップル成分の周期の数が、所定個数に満たない期間である。補正部142は、駆動回路20等から供給されるDCモータ10の駆動開始信号等に基づいて、DCモータ10の駆動開始時を判断することができる。
【0038】
ステップS403において、「DCモータ10の現在の駆動期間が「駆動開始期間」である」と判断された場合(ステップS403:Yes)、補正部142が、DCモータ10の「駆動開始期間」において取得された、所定個数に満たない個数の複数のリップル成分の周期の中央値を、当該所定個数に満たない個数の複数のリップル成分の周期の中間位置のリップル成分の周期の補正値として算出する(ステップS404)。そして、制御装置140は、ステップS408へ処理を進める。
【0039】
一方、ステップS403において、「DCモータ10の現在の駆動期間が「駆動開始期間」ではない」と判断された場合(ステップS403:No)、補正部142が、DCモータ10の現在の駆動期間が「中間期間」であるか否かを判断する(ステップS405)。なお、「中間期間」は、「駆動開始期間」と「駆動終了期間」との間の期間であり、すなわち、所定個数以上の複数のリップル成分の周期が観測された期間である。
【0040】
ステップS405において、「DCモータ10の現在の駆動期間が「中間期間」である」と判断された場合(ステップS405:Yes)、補正部142が、DCモータ10の「中間期間」において取得された、所定個数の複数のリップル成分の周期の中央値を、当該所定個数の複数のリップル成分の周期の中間位置のリップル成分の周期の補正値として算出する(ステップS406)。そして、制御装置140は、ステップS408へ処理を進める。
【0041】
一方、ステップS405において、「DCモータ10の現在の駆動期間が「中間期間」ではない」と判断された場合(ステップS405:No)、すなわち、DCモータ10の現在の駆動期間が「駆動終了期間」である場合、補正部142が、DCモータ10の「駆動終了期間」において取得された、所定個数に満たない数の複数のリップル成分の周期の中央値を、当該所定個数に満たない数の複数のリップル成分の周期の中間位置のリップル成分の周期の補正値として算出する(ステップS407)。そして、制御装置140は、ステップS408へ処理を進める。なお、「駆動終了期間」は、DCモータ10の駆動終了時までのリップル成分の周期の数が、所定個数に満たない期間である。補正部142は、駆動回路20等から供給されるDCモータ10の駆動終了信号等に基づいて、DCモータ10の駆動終了時を判断することができる。
【0042】
ステップS408では、計算部143が、これまでに、少なくとも1回転分(例えば、8個)のリップル成分の周期の補正値を取得できたか否かを判断する。
【0043】
ステップS408において、「少なくとも1回転分のリップル成分の周期の補正値を取得できていない」と判断された場合(ステップS408:No)、計算部143が、DCモータ10の回転角速度として「0」を計算する(ステップS410)。その後、制御装置140は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS408において、「少なくとも1回転分のリップル成分の周期の補正値を取得できた」と判断された場合(ステップS408:Yes)、計算部143が、直近のDCモータ10の1回転に相当する個数(例えば、8個)のリップル成分の周期の補正値に基づいて、DCモータ10の回転角速度を算出する。(ステップS409)。その後、制御装置140は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0045】
(中間期間における補正値の算出例)
図5は、一実施形態に係る回転状態検出装置100が備える制御装置140による中間期間における補正値の算出例を示す図である。ここでは、「中間期間」において、リップル成分の周期の補正値を算出する例を説明する。
【0046】
図5において、(a)は、制御装置140の観測部141によって「中間期間」において観測された、連続する9個(n-4~n+4番目)の、リップル成分の周期の観測値(単位:100μs)を示す。
【0047】
制御装置140の補正部142は、「中間期間」においては、連続する9個(「所定個数」の一例)のリップル成分の周期の中央値を、当該9個のリップル成分の中間位置(n番目)の補正値として算出する。
【0048】
すなわち、補正部142は、補正対象のリップル成分の周期を、n番目のリップル成分の周期として、当該n番目のリップル成分の周期と、その前に観測された4つ(n-4~n-1番目)のリップル成分の周期と、その後に観測された4つ(n+1~n+4番目)のリップル成分の周期とに基づいて、当該n番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0049】
例えば、補正部142は、
図5(b)に示すように、9個のリップル成分の周期を昇順にソートする。そして、補正部142は、
図5(c)に示すように、ソート後の9個のリップル成分の周期の中間位置にあるリップル成分の周期の値(1500[μs])を、9個のリップル成分の中間位置(n番目)の補正値として算出する。
【0050】
補正部142は、補正対象とするリップル成分の周期の位置を、後方に1つずつシフトさせながら、その都度、新たな補正対象のリップル成分の周期を、n番目のリップル成分の周期として、同様に、連続する9個(n-4~n+4番目)のリップル成分の周期に基づいて、当該n番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0051】
(駆動開始期間における補正値の算出例)
図6および
図7は、一実施形態に係る回転状態検出装置100が備える制御装置140による駆動開始期間における補正値の算出例を示す図である。ここでは、「駆動開始期間」において、リップル成分の周期の補正値を算出する例を説明する。
【0052】
「駆動開始期間」では、観測部141によって観測されたリップル成分の周期が、所定個数(本実施形態では、「9個」)に満たない。このため、「駆動開始期間」では、補正部142は、DCモータ10の駆動開始時からの、観測部141によって観測された、所定個数に満たない個数の複数のリップル成分の周期に基づいて、補正対象とするリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0053】
例えば、
図6(a)に示す例では、DCモータ10の駆動開始時から、3個(1~3番目)のリップル成分の周期が観測されている。この場合、補正部142は、連続する3個のリップル成分の周期の中央値を、当該3個のリップル成分の周期の中間位置(2番目)の補正値として算出する。
【0054】
すなわち、補正部142は、補正対象のリップル成分の周期を、2番目のリップル成分の周期として、当該2番目のリップル成分の周期と、その前に観測された1つ(1番目)のリップル成分の周期と、その後に観測された1つ(3番目)のリップル成分の周期とに基づいて、当該2番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0055】
例えば、補正部142は、
図6(b)に示すように、3個のリップル成分の周期を昇順にソートする。そして、補正部142は、
図6(c)に示すように、ソート後の3個のリップル成分の周期の中間位置にあるリップル成分の周期の値(800[μs])を、3個のリップル成分の中間位置(2番目)の補正値として算出する。
【0056】
なお、
図6に示すように、補正部142は、1番目のリップル成分の周期については、観測部141によって観測された観測値を、そのまま補正値としてコピーする。
【0057】
また、例えば、
図7(a)に示す例では、DCモータ10の駆動開始時から、5個(1~5番目)のリップル成分の周期が観測されている。この場合、補正部142は、連続する5個のリップル成分の周期の中央値を、当該5個のリップル成分の周期の中間位置(3番目)の補正値として算出する。
【0058】
すなわち、補正部142は、補正対象のリップル成分の周期を、3番目のリップル成分の周期として、当該3番目のリップル成分の周期と、その前に観測された2つ(1~2番目)のリップル成分の周期と、その後に観測された2つ(4~5番目)のリップル成分の周期とに基づいて、当該3番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0059】
例えば、補正部142は、
図7(b)に示すように、5個のリップル成分の周期を昇順にソートする。そして、補正部142は、
図7(c)に示すように、ソート後の5個のリップル成分の周期の中間位置にあるリップル成分の周期の値(800[μs])を、5個のリップル成分の中間位置(3番目)の補正値として算出する。
【0060】
(駆動終了期間における補正値の算出例)
図8および
図9は、一実施形態に係る回転状態検出装置100が備える制御装置140による駆動終了期間における補正値の算出例を示す図である。ここでは、「駆動終了期間」において、リップル成分の周期の補正値を算出する例を説明する。
【0061】
「駆動終了期間」では、観測部141によって観測されたリップル成分の周期が、所定個数(本実施形態では、「9個」)に満たない。このため、「駆動終了期間」では、補正部142は、DCモータ10の駆動終了時までの、観測部141によって観測された、所定個数に満たない個数の複数のリップル成分の周期に基づいて、補正対象とするリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0062】
例えば、
図8(a)および
図9(a)に示す例では、DCモータ10の駆動終了時までの、N個のリップル成分の周期が観測されている。ここで、
図8(a)に示すように、N-2番目のリップル成分の周期を、補正対象の周期(すなわち、複数のリップル成分の周期の中間位置)とする場合、補正部142は、5個(N-4~N番目)のリップル成分の周期を用いることができる。したがって、この場合、補正部142は、連続する5個(N-4~N番目)のリップル成分の周期の中央値を、当該5個のリップル成分の周期の中間位置(N-2番目)の補正値として算出する。
【0063】
すなわち、補正部142は、補正対象のリップル成分の周期を、N-2番目のリップル成分の周期として、当該N-2番目のリップル成分の周期と、その前に観測された2つ(N-4~N-3番目)のリップル成分の周期と、その後に観測された2つ(N-1~N番目)のリップル成分の周期とに基づいて、当該N-2番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0064】
例えば、補正部142は、
図8(b)に示すように、5個(N-4~N番目)のリップル成分の周期を昇順にソートする。そして、補正部142は、
図8(c)に示すように、ソート後の5個のリップル成分の周期の中間位置にあるリップル成分の周期の値(1500[μs])を、5個のリップル成分の中間位置(N-2番目)の補正値として算出する。
【0065】
また、
図9(a)に示すように、N-1番目のリップル成分の周期を、補正対象の周期(すなわち、複数のリップル成分の周期の中間位置)とする場合、補正部142は、3個(N-2~N番目)のリップル成分の周期を用いることができる。したがって、この場合、補正部142は、連続する3個(N-2~N番目)のリップル成分の周期の中央値を、当該3個のリップル成分の周期の中間位置(N-1番目)の補正値として算出する。
【0066】
すなわち、補正部142は、補正対象のリップル成分の周期を、N-1番目のリップル成分の周期として、当該N-1番目のリップル成分の周期と、その前に観測された1つ(N-2番目)のリップル成分の周期と、その後に観測された1つ(N番目)のリップル成分の周期とに基づいて、当該N-1番目のリップル成分の周期の補正値を算出する。
【0067】
例えば、補正部142は、
図9(b)に示すように、3個(N-2~N番目)のリップル成分の周期を昇順にソートする。そして、補正部142は、
図9(c)に示すように、ソート後の3個のリップル成分の周期の中間位置にあるリップル成分の周期の値(1500[μs])を、3個のリップル成分の中間位置(N-1番目)の補正値として算出する。
【0068】
なお、
図9に示すように、補正部142は、N番目のリップル成分の周期については、観測部141によって観測された観測値を、そのまま補正値としてコピーする。
【0069】
以上説明したように、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、整流子を備えたDCモータ10の回転に関する情報を取得する回転状態検出装置100であって、DCモータ10を流れる電流に含まれるリップル成分の周期を観測する観測部141と、観測部141によって観測された複数のリップル成分の周期に基づいて、リップル成分の周期の補正値を算出する補正部142と、補正部142によって算出された複数の補正値に基づいて、DCモータ10の回転角速度を計算する計算部143とを備え、観測部141は、所定個数の複数のリップル成分の周期を観測し、補正部142は、所定個数の複数のリップル成分の周期のうちの中央値を、補正値として算出する。
【0070】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、パラメータの事前調整、パラメータの学習等を行うことなく、リップル成分の周期の補正値を、短時間且つ高精度に算出することができる。
【0071】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、DCモータ10の回転開始時において、観測部141が、DCモータ10の回転が開始されてからの、所定個数に満たない個数の複数の周期を観測し、補正部142が、所定個数に満たない個数の複数の周期のうちの中央値を、補正値として算出する。
【0072】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、パラメータの事前調整、パラメータの学習等を行うことなく、DCモータ10の回転開始時における、リップル成分の周期の補正値を、短時間且つ高精度に算出することができる。
【0073】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、DCモータ10の回転終了時において、観測部141が、DCモータ10の回転が終了するまでの、所定個数に満たない個数の複数の周期を観測し、補正部142が、所定個数に満たない個数の複数の周期のうちの中央値を、補正値として算出する。
【0074】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、パラメータの事前調整、パラメータの学習等を行うことなく、DCモータ10の回転終了時における、リップル成分の周期の補正値を、短時間且つ高精度に算出することができる。
【0075】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100において、計算部143は、DCモータ10の1回転に相当する個数以上の周期が観測された場合、直近のDCモータ10の1回転に相当する個数の補正値に基づいて、回転角速度を算出する。
【0076】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、DCモータ10の回転角速度を、短時間に算出することができる。また、DCモータ10の1回転内では、各周期に対して同等の角度誤差が含まれるため、各周期の角度誤差を相殺することができ、よって、DCモータ10の回転角速度を、高精度に算出することができる。
【0077】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100において、計算部143は、リップル成分の周期が所定時間以上観測されなかった場合、回転角速度として0を計算する。
【0078】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、低精度の回転角速度が算出されないようにすることができる。
【0079】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100において、計算部143は、DCモータ10の1回転に相当する個数のリップル成分の周期が観測されなかった場合、回転角速度として0を計算する。
【0080】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、低精度の回転角速度が算出されないようにすることができる。
【0081】
また、一実施形態に係る回転状態検出装置100において、所定個数は、奇数である。
【0082】
これにより、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、所定個数のリップル成分の周期の中央値を容易に算出することができる。
【0083】
なお、一実施形態に係る回転状態検出装置100において、補正部142は、所定個数の複数の周期のうちの最小値および最大値を除去し、当該除去後の複数の周期の平均値を、補正値として算出してもよい。
【0084】
この場合も、一実施形態に係る回転状態検出装置100は、パラメータの事前調整、パラメータの学習等を行うことなく、リップル成分の周期の補正値を、短時間且つ高精度に算出することができる。
【0085】
(実施例)
一実施形態に係る回転状態検出装置100によって検出されたDCモータ10の回転角速度は、例えば、車両が備えるパワーウィンドウ制御システムにより、車両のパワーウィンドウ装置が備える窓の開閉位置の検知用に用いることができる。この場合、例えば、パワーウィンドウ制御システムは、DCモータ10の回転角速度から、窓の開閉位置を検出して、当該開閉位置に応じて、窓による物体の挟み込みを防止する制御を行ってもよい。
【0086】
また、例えば、回転状態検出装置100によって検出されたDCモータ10の回転角速度は、位置検出装置により、移動体の位置(例えば、パワーウィンドウが備える窓の位置、及び、パワーシートが備えるシートの位置等)の検出に使用することができる。例えば、位置検出装置は、DCモータ10の回転角速度から、DCモータ10の回転量を算出し、当該回転量と、移動体の移動前の位置とに基づいて、移動体の移動後の位置を検出することができる。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 DCモータ
20 駆動回路
30 電源
100 回転状態検出装置
110 電圧検出部
111 LPF
112 A/D
120 電流検出部
121 LPF
122 A/D
130 パルス発生部
131 BPF
132 リップル検知部
140 制御装置
141 観測部
142 補正部
143 計算部