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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116994
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/00 20060101AFI20220803BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20220803BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B65D75/00
B32B27/10
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013443
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AB26
3E064BA05
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA04
3E064HA06
3E064HM01
3E067BA12A
3E067BA31A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE38
3E067EE40
3E067FC01
3E067GD05
3E067GD07
4F100AK01D
4F100AK07C
4F100AK63C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100DG10B
4F100EJ37C
4F100GB15
4F100GB23
4F100HB00A
4F100HB31A
4F100JK06
4F100JK06C
4F100JL12C
4F100JN01D
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】材料の一部に紙を使用したスタンディングパウチであって、その底部を構成する包装材の表面同士が融着することを十分に抑制できるスタンディングパウチを提供する。
【解決手段】本開示に係るスタンディングパウチは、第一の印刷層、第一の基材及び第一のヒートシール層を含む第一の側胴部と、第二の印刷層、第二の基材及び第二のヒートシール層を含む第二の側胴部と、第三の印刷層、第三の基材及び第三のヒートシール層をこの順序で含み且つ山折り部を有する底テープとをヒートシールして形成されており、第三の基材が紙であり、第三の印刷層のうち、当該スタンディングパウチの底部を構成するヒートシールが施される領域は単位面積あたりの質量が3.5g/m以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の印刷層、第一の基材及び第一のヒートシール層を含む第一の側胴部と、
第二の印刷層、第二の基材及び第二のヒートシール層を含む第二の側胴部と、
第三の印刷層、第三の基材及び第三のヒートシール層をこの順序で含み且つ山折り部を有する底テープと、
をヒートシールして形成されているスタンディングパウチであって、
前記第三の基材が紙であり、
前記第三の印刷層のうち、当該スタンディングパウチの底部を構成するヒートシールが施される領域は、単位面積あたりの質量が3.5g/m以下である、スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記第三の印刷層における前記領域同士を対面させた状態で、温度150℃、圧力0.2MPa、時間1秒の条件で熱プレスをした後において、当該領域同士の剥離強度が1.0N/15mm未満である、請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項3】
前記第一及び第二の基材がいずれも紙である、請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記第一及び第二の印刷層が、インキ層と、前記インキ層を覆うように形成されたニス層とをそれぞれ含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記第三の印刷層が少なくともニス層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はスタンディングパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋の一例として、スタンディングパウチが挙げられる。スタンディングパウチは、店頭の商品棚で商品を目立たせることが可能で、採用の範囲が広がっている。スタンディングパウチが途中で折れ曲がることなく、全面が見えるようにするため、パウチを構成する包装材にはある程度の剛性が求められる。
【0003】
従来、種々のタイプのスタンディングパウチが開発されている。例えば、特許文献1は、スタンディングパウチの内部空間に比べて大きさが小さい固形の商品を封入する場合に好適なスタンディングパウチを開示している。特許文献2は、適度な耐油耐水性を有し、ヒートシール性、通気性にも優れ、特にファーストフードや揚げ物、焼き物などの惣菜等の調理済食品の包装に適したスタンド型の包装用袋を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-70045号公報
【特許文献2】特開2018-131210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、海洋プラスチックごみ問題にみられるようにマイクロプラスチックによって環境汚染に影響を与えることが問題視されている。これに伴って、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まり、紙単体又は紙を含む複合材をした包装材の需要が高まっている。
【0006】
本発明者らは、紙と、紙の一方の面上に設けられた印刷層と、紙の他方の面上に設けられたヒートシール層とを備える包装材を使用してスタンディングパウチを試作した。その結果、スタンディングパウチの底部において、包装材の表面同士が融着するという事象が発生した。スタンディングパウチの底部が融着すると、底部を拡げて内容物を収容する作業の効率が低下したり、底部を拡げる作業に伴って印刷層が剥離して見栄えが悪くなったりする。なお、これは透明な樹脂フィルムに代えて紙を使用したことに起因して生じた事象である。すなわち、基材が透明な樹脂フィルムであれば、その裏面側に印刷層を形成することができるのに対し、不透明な紙を基材として使用する場合にはその表面側に印刷層を形成せざるを得ず、上記のような事象が生じ得る。
【0007】
本開示は、材料の一部に紙を使用したスタンディングパウチであって、その底部を構成する包装材の表面同士が融着することを十分に抑制できるスタンディングパウチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面はスタンディングパウチに関する。このスタンディングパウチは、第一の印刷層、第一の基材及び第一のヒートシール層を含む第一の側胴部と、第二の印刷層、第二の基材及び第二のヒートシール層を含む第二の側胴部と、第三の印刷層、第三の基材及び第三のヒートシール層をこの順序で含み且つ山折り部を有する底テープとをヒートシールして形成されているスタンディングパウチであって、第三の基材が紙であり、第三の印刷層のうち、当該スタンディングパウチの底部を構成するヒートシールが施される領域は、単位面積あたりの質量が3.5g/m以下である。
【0009】
本発明者らは印刷層の単位面積あたりの質量(ドライ塗布量)に着目し、この値を振って試作を繰り返した。その結果、底テープの印刷層(第三の印刷層)のうち、少なくとも、上記領域の単位面積あたりの質量を3.5g/m以下とすることで、スタンディングパウチ底部において印刷層の表面同士が融着することを十分に抑制できることを本発明者らは見出した。
【0010】
底テープの印刷層(第三の印刷層)における上記領域は、スタンディングパウチを実際に作製するときの温度よりもやや高めの温度(例えば、150℃)で加熱されても融着しないことが好ましい。すなわち、第三の印刷層における当該領域同士を対面させた状態で、温度150℃、圧力0.2MPa、時間1秒の条件で熱プレスをした後において、当該領域同士の剥離強度は1.0N/15mm未満であることが好ましい。
【0011】
地球環境保全の観点から、第三の基材が紙であることに加え、第一及び第二の基材がいずれも紙であってもよい。第一及び第二の印刷層は、インキ層と、インキ層を覆うように形成されたニス層(オーバープリントニス)とをそれぞれ含むことが好ましい。ニス層を設けることで、インキ層を保護できるとともに、側胴部の表面に光沢を持たせることができる。他方、底テープはスタンディングパウチの底部を構成するものであるから、絵柄や文字などの表示を必ずしも設けなくてもよい。このため、第三の印刷層は少なくともニス層を含むものであればよく、インキ層は必要に応じて形成すればよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、材料の一部に紙を使用したスタンディングパウチであって、その底部を構成する包装材の表面同士が融着することを十分に抑制できるスタンディングパウチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本開示に係るスタンディングパウチの一実施形態を模式的に示す正面図である。
図2図2図1に示すスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。
図3図3図1に示すスタンディングパウチを構成する一対の側胴部と、底テープとを模式的に示す斜視図である。
図4図4図1に示すスタンディングパウチを構成する包装材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ここでは、高度な密封性を求められないスタンディングパウチについて説明する。本実施形態に係るスタンディングパウチは、例えば、一次容器に収容された物品(化粧品や日焼け止クリームなど)を収容する二次包材として使用されるものである。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<スタンディングパウチ>
図1は本実施形態に係るスタンディングパウチを模式的に示す正面図である。図2は本実施形態に係るスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。これらの図に示すスタンディングパウチ50は、一対の側胴部10,20(第一及び第二の側胴部)と、底テープ30とをヒートシールして形成されている。一対の側胴部10,20及び底テープ30はいずれも、基材1と、印刷層2と、ヒートシール層3を含む積層体で構成されている(図2参照)。印刷層2は基材1の表面1a側(スタンディングパウチ50の外面側)に形成されている。ヒートシール層3は基材1の裏面1b側(スタンディングパウチ50の内面側)に形成されている。ヒートシールによるスタンディングパウチの形成は、従来の方法と同様に実施することができる。
【0016】
底テープ30は一つの山折り部30aを有する。すなわち、スタンディングパウチ50が自立した状態において、底テープ30は逆V字状に配置されている(図2,3参照)。スタンディングパウチ50の底部は、図2に示すように、底シール部5と、底シール部6とによって構成されている。底シール部5は、側胴部10の底部10aと底テープ30の一方の底部30bとをヒートシールした部分である。底シール部6は、側胴部20の底部20aと底テープ30の他方の底部30cとをヒートシールした部分である。
【0017】
スタンディングパウチ50の側部は、サイドシール部7で構成されている。サイドシール部7の幅は、例えば、5~18mmであり、7~15mmであってもよい。サイドシール部7の幅が5mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、18mm以下であることでスタンディングパウチ50の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0018】
図1に示されたとおり、スタンディングパウチ50は、底部の両サイドに融着部9をそれぞれ有する。融着部9は側胴部10と側胴部20とを接合している。融着部9は、底テープ30に設けられた切り欠き部8を通じて側胴部10,20のヒートシール層3同士が局所的に融着している箇所である。図3に示されたように、底テープ30の切り欠き部8は、山折り部30aと底辺30d,30dとの間の領域であり且つ底テープ30の側部に設けられている。
【0019】
<包装材>
スタンディングパウチ50は紙を含む包装材で構成されている。一対の側胴部10,20及び底テープ30に含まれる基材1は紙である。図4は本実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。この図に示す包装材40は、基材1と、印刷層2と、ヒートシール層3とを含む。包装材40は、例えば、印刷機を使用し、基材1に印刷層2及びヒートシール層3を形成することによって得ることができる。
【0020】
基材1は、上述のとおり、紙である。基材1として使用し得る紙の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙が挙げられる。基材1の単位面積あたりの質量は、例えば、20~500g/m又は25~400g/mの範囲であればよい。
【0021】
本実施形態における印刷層2はインキ層2aとニス層2bとによって構成されている。インキ層2aは基材1の表面1a上に直接形成されている。ニス層2bはインキ層2aを覆うように、表面1a上に形成されている。本実施形態においては、ニス層2bが包装材40の最表面を構成している。インキ層2a及びニス層2bはいずれも、ニトロセルロースと、合成樹脂とを含み、インキ層2aは、顔料を更に含む。なお、環境配慮の観点から、塩素を含まないインキや植物油インキを使用してインキ層2aを形成することが好ましい。
【0022】
印刷層2の単位面積あたりの質量(インキ層2aとニス層2bのドライ塗布量の合計)は、3.5g/m以下である。これにより、スタンディングパウチ50の底テープ30の表面同士の融着を十分に抑制できる。この量は、3.2g/m以下であってもよく、2.8g/m以下又は1.5g/m以下であってもよい。この量の下限値は0.5g/mである。この値が0.5g/mであることで鮮明な印刷層2を形成できる傾向にある。
【0023】
ヒートシール層3はヒートシール性を有するニス(ヒートシールニス)を塗布することによって形成される。ヒートシール層3の単位面積あたりの質量(ヒートシールニスのドライ塗布量)は、例えば、1~7g/mである。ヒートシール層3は、熱溶融成分を含み、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩あるいは固形パラフィンを含む。ヒートシール層3を構成する材料として、ポリエチレン樹脂(例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン樹脂(例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP))を使用してもよい。
【0024】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、側胴部10,20及び底テープ30がいずれも同じ構成であり、単位面積あたりの質量が所定の範囲の印刷層2をそれぞれ有する場合を例示した。しかし、スタンディングパウチ50の底テープ30の表面同士の融着を抑制する課題を解決するには、底テープ30のみが所定の条件を満たす印刷層2を有していればよく、更には、底テープ30の印刷層のうち、底シール部5,6を形成する際に熱が加わる領域に、所定の条件を満たす印刷層2が形成されていればよい。
【実施例0025】
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
以下の材料を使用して包装材を作製した。
(1)基材
・N晒竜王(商品名、大王製紙株式会社製、60g/m)
(2)印刷層(インキ及びオーバープリントニス)
・エコカラーHR(東洋インキ株式会社製)
(3)ヒートシール層
・ヒートシールニス(HSニス):セイカダインF-2000W(大日精化工業製)
・線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
・無延伸ポリプロピレン(CPP)
【0027】
[実施例1~4及び比較例1]
印刷層の単位面積あたりの質量(インキとオーバープリントニスのドライ塗布量の合計)を表1に示す量にそれぞれ設定し、実施例及び比較例に係る包装材を作製した。これらの包装材を使用し、図1と同様の構成のスタンディングパウチを作製した。なお、底シール部を形成する際のヒートシールバー温度は130℃とした。
【0028】
<底テープの表面同士の融着の有無>
実施例1~4に係るスタンディングパウチの底テープを拡げたとき、底テープの印刷層同士の融着は認められず、印刷層の剥離も生じなかった。他方、比較例1に係るスタンディングパウチの底テープを拡げたとき、底テープの印刷層同士の融着が認められず、印刷層の剥がれが生じた。
【0029】
<底テープの印刷層の剥離強度>
底テープの印刷層の表面同士を対面させた状態で、表1に記載の温度条件で熱プレス(圧力:0.2MPa、時間:1秒)をした後において、底テープの印刷層の表面同士の剥離強度を測定した。剥離強度は、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、サンプル幅:15mm、試験速度300mm/分とした。表1に結果を示す。
【0030】
【表1】

170℃の温度条件で熱プレスをしたとき、表1に示すとおり、実施例1~4の底テープの印刷層の表面同士の剥離強度は0.1N/15mm又は0.2N/15mmであった。この程度の剥離強度では印刷層の剥離は生じなかった。
【符号の説明】
【0031】
1…基材(第一、第二及び第三の基材)、1a…表面、1b…裏面、2…印刷層(第一、第二及び第三の印刷層)、2a…インキ層、2b…ニス層、3…ヒートシール層(第一、第二及び第三のヒートシール層)、5,6…底シール部、7…サイドシール部、8…切り欠き部、9…融着部、10,20…側胴部(第一及び第二の側胴部)、10a,20a…底部、30…底テープ、30a…山折り部、30b,30c…底部、30d…底辺、40…包装材、50…スタンディングパウチ。
図1
図2
図3
図4