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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117029
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】クライオポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20220803BHJP
   F04B 37/08 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F04B37/16 C
F04B37/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013503
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】朴 文官
(72)【発明者】
【氏名】日高 康祐
(72)【発明者】
【氏名】安田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村山 吉信
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA25
3H076BB23
3H076BB43
3H076CC54
(57)【要約】
【課題】排気容量の減少を抑制可能としたクライオポンプを提供する。
【解決手段】冷凍機11と、外気を導入する導入口12A1を有した筒状部12Aと、筒状部12Aの導入口12A1とは反対側の開口を塞ぐ底部12Bと、筒状部12Aを貫通し、第2シリンダー11Dが通される貫通孔12AHとを備え、筒状部12A外において冷凍機11の第1ステージ11Aに熱的に接続される放射シールド12と、導入口12A1に位置するバッフル13と、筒状部12A内において冷凍機11の第2ステージ11Bに熱的に接続されるクライオパネル14と、バッフル13と対向する視点から見て、バッフル13と冷凍機11の第2シリンダー11Dとの間に位置し、第1ステージ11Aに接続される第1カバー15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1温度に冷却されるように構成された第1ステージと、前記第1温度よりも低い第2温度に冷却されるように構成された第2ステージと、前記第1ステージを前記第2ステージに接続するシリンダーと、を備える冷凍機と、
外気を導入する導入口を有した筒状部と、前記筒状部の前記導入口とは反対側の開口を塞ぐ底部と、前記筒状部を貫通し、前記シリンダーが通される貫通孔とを備え、前記筒状部外において前記第1ステージに熱的に接続される放射シールドと、
前記導入口に位置するバッフルと、
前記筒状部内において前記第2ステージに熱的に接続されるクライオパネルと、
前記バッフルと対向する視点から見て、前記バッフルと前記シリンダーとの間に位置し、前記第1ステージに接続されるカバーと、を備える
クライオポンプ。
【請求項2】
前記カバーは、前記バッフルと対向する視点から見て、前記シリンダーのうち25K以上45K以下の部分を覆う
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記カバーは、第1カバーであり、
前記第2ステージに接続され、前記シリンダーに沿って延びる第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは、前記バッフルと対向する視点から見て、前記第1カバーを覆う
請求項1または2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記シリンダーと前記第1カバーとの間の距離は、前記第2カバーと前記第1カバーとの間の距離よりも小さい
請求項3に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記カバーは、筒状を有し、
前記シリンダーの一部が、前記カバー内に位置する
請求項1から4のいずれか一項に記載のクライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、冷凍機を備えている。冷凍機は、第1ステージ、第2ステージ、および、第1ステージを第2ステージに接続するシリンダーを備えている。冷凍機において、第2ステージは、第1ステージよりも低い温度に冷却される。クライオポンプは、放射シールドを備えている。放射シールドは、一方の開口が塞がれた筒状を有し、かつ、筒状を有した周面にシリンダーが通される開口を有している。放射シールドにおいて、塞がれた開口とは反対側の開口には、バッフルが位置している。放射シールド内には、クライオパネルが配置されている。冷凍機のうち、シリンダーの少なくとも一部および第2ステージが、放射シールド内に配置されている。第2ステージには、クライオパネルが熱的に接続されている。第1ステージには、放射シールドが熱的に接続されている。冷凍機は、筒状を有し、シリンダーを覆うカバーをさらに備えている。カバーは、第2ステージに熱的に接続されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-275672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クライオポンプが接続された空間内をクライオポンプが排気することによって、凝縮気体がクライオパネル上に堆積するとともに、クライオパネルと同等に冷却されたカバーにも凝縮気体が堆積する。カバーが延びる方向に沿って凝縮気体が堆積すると、凝縮気体が、バッフルよりも先に放射シールドに接し、これによって、クライオパネル上にそれ以上の凝縮気体を堆積させることが難しい場合がある。これにより、クライオパネルとバッフルとの間の空間に対して期待される排気容量に対して、クライオポンプの排気容量が減少する。
【0005】
本発明は、排気容量の減少を抑制可能としたクライオポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのクライオポンプは、第1温度に冷却されるように構成された第1ステージと、前記第1温度よりも低い第2温度に冷却されるように構成された第2ステージと、前記第1ステージを前記第2ステージに接続するシリンダーと、を備える冷凍機と、外気を導入する導入口を有した筒状部と、前記筒状部の前記導入口とは反対側の開口を塞ぐ底部と、前記筒状部を貫通し、前記シリンダーが通される貫通孔とを備え、前記筒状部外において前記第1ステージに熱的に接続される放射シールドと、前記導入口に位置するバッフルと、前記筒状部内において前記第2ステージに熱的に接続されるクライオパネルと、前記バッフルと対向する視点から見て、前記バッフルと前記シリンダーとの間に位置し、前記第1ステージに接続されるカバーと、を備える。
【0007】
上記クライオポンプによれば、シリンダーを覆うカバーが第1ステージと同等の温度に冷却されるから、カバーにおいて気体の凝縮が生じることが抑えられる。これにより、凝縮気体がカバーに沿って堆積することが抑えられ、凝縮気体が放射シールドに接することが抑えられる。結果として、クライオパネルとバッフルとの間の空間に凝縮気体が堆積するから、排気容量の減少を抑えることが可能である。
【0008】
上記クライオポンプにおいて、前記カバーは、前記バッフルと対向する視点から見て、前記シリンダーのうち25K以上45K以下の部分を覆ってもよい。このクライオポンプによれば、シリンダーにおいて25K以上45K以下の領域をカバーが覆うから、固相と気相とが平衡である条件において気体が凝縮することが抑えられるから、真空槽内の圧力が不安定になることが抑えられる。
【0009】
上記クライオポンプにおいて、前記カバーは、第1カバーであり、前記第2ステージに接続され、前記シリンダーに沿って延びる第2カバーをさらに備え、前記第2カバーは、前記バッフルと対向する視点から見て、前記第1カバーを覆ってもよい。
【0010】
上記クライオポンプによれば、第1カバーの一部を第2温度に冷却された第2カバーが覆うから、第2カバーにおいて気体の凝縮が生じる。これにより、クライオパネル以外の部分において気体の凝縮が生じるから、放射シールドが画定する領域のうち、気体が堆積する領域を拡張することが可能である。
【0011】
上記クライオポンプにおいて、前記シリンダーと前記第1カバーとの間の距離は、前記第2カバーと前記第1カバーとの間の距離よりも小さくてもよい。このクライオポンプによれば、シリンダーと第1カバーとの間の距離が第2カバーと第1カバーとの間の距離よりも小さいから、第1カバーが第2カバーによって覆われていても、第1カバーが第2カバーによって冷却されることが抑えられる。これにより、第2カバーに対して気体を凝縮させ、かつ、第2カバーと第1カバーとの間に気体が凝縮することが抑えられる。
【0012】
上記クライオポンプにおいて、前記カバーは、筒状を有し、前記シリンダーの一部が、前記カバー内に位置してもよい。このクライオポンプによれば、カバーが筒状を有するから、シリンダーの外周面の全体において、気体の凝縮が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のクライオポンプの構造を模式的に示す構成図。
図2図1が示す構造の一部を拡大して示す部分拡大図。
図3】第1実施形態のクライオポンプの作用を説明するための作用図。
図4】第1実施形態のクライオポンプの作用を説明するための作用図。
図5】第2実施形態のクライオポンプの構造を模式的に示す構成図。
図6図5が示す構造の一部を拡大して示す部分拡大図。
図7】第2実施形態のクライオポンプの作用を説明するための作用図。
図8】第2実施形態のクライオポンプの作用を説明するための作用図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して、クライオポンプの第1実施形態を説明する。
[構造]
図1および図2を参照して、クライオポンプ10の構造を説明する。
図1が示すように、クライオポンプ10は、冷凍機11を備えている。冷凍機11は、第1ステージ11A、第2ステージ11B、第1シリンダー11C、および、第2シリンダー11Dを備えている。第1ステージ11Aは、第1温度に冷却されるように構成されている。第2ステージ11Bは、第1温度よりも低い第2温度に冷却されるように構成されている。第2シリンダー11Dは、第1ステージ11Aを第2ステージ11Bに接続している。
【0015】
冷凍機11は、ギフォード・マクマホン式冷凍機である。冷凍機11は、各シリンダー11C,11D内に蓄冷器を備えた膨張室を備えている。冷凍機11には、図示されない圧縮機から圧縮された冷媒ガスが供給される。冷媒ガスは、まず、第1シリンダー11Cの膨張室に供給され、第1シリンダー11Cの蓄冷器を通過することによって冷却され、かつ、膨張室において膨張し、これによって第1ステージ11Aを冷却する。次いで、冷却ガスは第2シリンダー11Dに供給され、第2シリンダー11Dの蓄冷器を通過することでさらに冷却され、かつ、膨張室において膨張し、これによって第2ステージ11Bを冷却する。結果として、第1ステージ11Aが第1温度に冷却され、かつ、第2ステージ11Bが第1温度よりも低い第2温度に冷却される。第1温度は、例えば50K以上110K以下の範囲に含まれる。第2温度は、例えば10K以上20K以下の範囲に含まれる。
【0016】
クライオポンプ10は、放射シールド12、バッフル13、クライオパネル14、および、第1カバー15を備えている。放射シールド12は、筒状部12Aと底部12Bとを備えている。筒状部12Aは、外気を導入する導入口12A1を有している。底部12Bは、筒状部12Aの導入口12A1とは反対側の開口を塞いでいる。放射シールド12は、筒状部12Aを貫通し、第2シリンダー11Dが通される貫通孔12AHを備えている。放射シールド12は、筒状部12A外において第1ステージ11Aに熱的に接続されている。
【0017】
バッフル13は、導入口12A1に位置している。バッフル13は、クライオポンプ10が接続された真空槽から放射される熱から第2ステージ11Bおよびクライオパネル14を保護する。バッフル13は、例えば、放射シールド12の中心軸を中心として同心円状に配置された複数の板部材を備える。なお、バッフル13は、例えば格子状のプレートであってもよい。バッフル13は、放射シールド12に取り付けられているから、放射シールド12と同等の温度に冷却される。
【0018】
クライオパネル14は、筒状部12A内において第2ステージ11Bに熱的に接続されている。クライオポンプ10は、複数のクライオパネル14を備えている。各クライオパネル14は、筒状部12A内に位置している。各クライオパネル14は、バッフル13と対向する視点から見て、略円錐台状を有している。
【0019】
第1カバー15は、バッフル13と対向する視点から見て、バッフル13とシリンダー11Cとの間に位置している。第1カバー15は、第1ステージ11Aに接続されている。本実施形態では、第1カバー15は、筒状を有している。第2シリンダー11Dの一部が、第1カバー15内に位置している。
【0020】
本実施形態において、クライオポンプ10は、第2カバー16をさらに備えている。第2カバー16は、第2ステージ11Bに接続され、かつ、第2シリンダー11Dに沿って延びている。第2カバー16は、第2シリンダー11Dに沿って、第2ステージ11Bから第1ステージ11Aに向かう途中まで延びている。第2シリンダー11Dが延びる方向において、第2カバー16のうち、第1ステージ11Aからの距離が小さい端部は、放射シールド12から離れている。第2カバー16は、バッフル13と対向する視点から見て、第1カバー15を覆っている。
【0021】
第2シリンダー11Dにおいて、第1ステージ11Aに接続された端部が基端であり、第2ステージ11Bに接続された端部が先端である。第1カバー15において、第1ステージ11Aに接続された端部が基端であり、基端とは反対側の端部が先端である。本実施形態では、第1カバー15の基端が、放射シールド12の筒状部12A外において、第1ステージ11Aに接続され、かつ、第1ステージ11Aと筒状部12Aとに挟まれている。そのため、第1カバー15および放射シールド12は、第1ステージ11Aと同等の温度に冷却される。
【0022】
第1カバー15は、バッフル13と対向する視点から見て、第2シリンダー11Dのうち25K以上45K以下の部分を覆っている。上述したように、第1ステージ11Aは第1温度に冷却される一方で、第2ステージ11Bは第1温度よりも低い第2温度に冷却される。そのため、第1ステージ11Aおよび第2ステージ11Bの両方に接続された第2シリンダー11Dの温度は、第1ステージ11Aから第2ステージ11Bに向けて低下する勾配を有する。第1温度が110Kに設定され、第2温度が15Kに設定された場合に、第2シリンダー11Dのうち、25K以上45K以下の範囲が第1カバー15によって覆われることが好ましい。
【0023】
クライオポンプ10が接続された真空槽内には、例えばアルゴン(Ar)ガスが供給されている。真空槽内の圧力が3×10-6以上3×10-3Pa以下であり、かつ、第2シリンダー11Dが筒状部12A内に露出する場合には、第2シリンダー11Dのうち、25K以上45K以下の領域において、Arガスが凝縮する。当該領域において凝縮したArガスは固相と気相とが平衡の状態であるから蒸発しやすい。そのため、第2シリンダー11Dのうち、25K以上45K以下の領域にArガスが凝縮すると、真空槽内の圧力が不安定になる。この点で、第2シリンダー11Dにおいて25K以上45K以下の領域を第1カバー15が覆うから、真空槽内の圧力が不安定になることが抑えられる。
【0024】
クライオポンプ10は、ポンプケース18をさらに備えている。ポンプケース18は、放射シールド12と、第1シリンダー11Cとを覆っている。
【0025】
図2は、図1が示す構造のうちで、クライオパネル14の周辺構造を拡大して示している。
図2が示すように、クライオポンプ10は、支持部材17を備えている。支持部材17は、第2カバー16に接続されている。支持部材17は、複数のクライオパネル14を支持するように構成されている。支持部材17は、第2ステージ11Bに接続された第2カバー16に接続されている。そのため、支持部材17は、第2ステージ11Bに熱的に接続されている。各クライオパネル14は支持部材17によって支持されるから、これによって、各クライオパネル14は、第2ステージ11Bに熱的に接続される。すなわち、支持部材17および各クライオパネル14は、第2ステージ11Bと同等の温度に冷却される。
【0026】
第2シリンダー11Dと第1カバー15との間の距離が、第1距離D1である。第2カバー16と第1カバー15との間の距離が、第2距離D2である。第1距離D1は、第2距離D2よりも小さい。
【0027】
[作用]
図3および図4を参照して、クライオポンプ10の作用を説明する。
図3は、本実施形態のクライオポンプ10によって真空槽を排気した場合におけるクライオポンプ10の状態を模式的に示している。これに対して、図4は、第2シリンダーを覆うカバーが第2ステージに接続されるクライオポンプが真空槽を排気した場合におけるクライオポンプの状態を模式的に示している。
【0028】
図3が示すように、クライオポンプ10が駆動され、クライオポンプ10が接続された真空槽内が排気される際には、冷凍機11の第1ステージ11Aが第1温度に冷却され、第2ステージ11Bが第2温度に冷却される。これにより、第2ステージ11Bに熱的に接続された各クライオパネル14も第2温度と同等の温度に冷却される。一方で、放射シールド12、バッフル13、および、第1カバー15は、第1温度と同等の温度に冷却される。
【0029】
そのため、バッフル13を介して放射シールド12内に導入されたArガスGは、クライオパネル14において凝縮し、凝縮したArガスGがクライオパネル14上に堆積する。一方で、第2シリンダー11Dを覆う第1カバー15は、第1ステージ11Aと同等の温度であるから、第1カバー15ではArガスGの凝縮が抑えられる。そのため、第1カバー15に堆積したArガスGが放射シールド12に接することが抑えられる。第1カバー15は筒状を有するから、第2シリンダー11Dの外周面の全体において、ArガスGの凝縮が抑えられる。
【0030】
さらに、本実施形態では、バッフル13と対向する視点から見て、第1カバー15の一部を第2温度に冷却された第2カバー16が覆うから、第2カバー16においてArガスGの凝縮が生じる。これにより、クライオパネル14以外の部分においてArガスGの凝縮が生じるから、放射シールド12が画定する領域のうち、ArガスGが堆積する領域を拡張することが可能である。
【0031】
このように、本実施形態のクライオポンプ10では、筒状部12Aの径方向においてArガスGの凝縮および堆積が進むことが抑えられ、これにより、筒状部12Aの軸方向であって、かつ、クライオパネル14とバッフル13との間においてArガスGの凝縮および堆積が進む。そのため、クライオポンプ10は、第2温度に冷却された部材において堆積されたArガスGがバッフル13に接するまで凝縮したArガスGを堆積することが可能であるから、クライオポンプ10の排気容量の減少を抑えることが可能である。
【0032】
上述したように、第1距離D1が第2距離D2よりも小さいから、第1距離D1が第2距離D2よりも大きい場合に比べて、第1カバー15が第2カバー16によって覆われていても、第1カバー15が第2カバー16によって冷却されることが抑えられる。これにより、第2カバー16に対してArガスGを凝縮させ、かつ、第2カバー16と第1カバー15との間にArガスGが凝縮することが抑えられる。
【0033】
これに対して、クライオポンプ110では、第2シリンダー111Dを覆うカバー115が第2ステージ111Bに接続されている。そのため、第1シリンダー111Cによって冷却される第1ステージ11Aとは異なり、カバー115は、第2ステージ111Bと同等の温度まで冷却される。
【0034】
これにより、バッフル113から導入されたArガスGは、クライオパネル114に加えて、第2カバー116およびカバー115でも凝縮する。カバー115に堆積したArガスGが放射シールド112に接すると、凝縮したArガスGの一部が固相から気相に変化する。例えば、ArガスGは、放射シールド112の貫通孔112AHまで達し、貫通孔112AHを画定する面に接することによって固相から気相に変わる。これによって、放射シールド112内の圧力が高められ、結果として、放射シールド112内にArガスGが堆積されにくくなる。
【0035】
以上説明したように、クライオポンプの第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第2シリンダー11Dを覆う第1カバー15が第1ステージ11Aと同等の温度に冷却されるから、第1カバー15において気体の凝縮が抑えられる。これにより、第1カバー15に堆積した凝縮気体が放射シールド12に接することが抑えられる。
【0036】
(2)第2シリンダー11Dにおいて25K以上45K以下の領域を第1カバー15が覆うから、真空槽内の圧力が不安定になることが抑えられる。
【0037】
(3)第1カバー15の一部を第2温度に冷却された第2カバー16が覆うから、第2カバー16においてArガスGの凝縮が生じる。これにより、クライオパネル14以外の部分においてArガスGの凝縮が生じるから、放射シールド12が画定する領域のうち、ArガスGが堆積する領域を拡張することが可能である。
【0038】
(4)第1距離D1が第2距離D2よりも小さいから、第1カバー15が第2カバー16によって冷却されることが抑えられる。これにより、第2カバー16に対してArガスGを凝縮させ、かつ、第2カバー16と第1カバー15との間にArガスGが凝縮することが抑えられる。
【0039】
(5)第1カバー15が筒状を有するから、第2シリンダー11Dの外周面の全体において、ArガスGの凝縮が抑えられる。
【0040】
[第2実施形態]
図5から図8を参照して、クライオポンプの第2実施形態を説明する。第2実施形態のクライオポンプは、第1実施形態のクライオポンプと比べて、放射シールドを第1ステージに熱的に接続するための構造が異なっている。そのため以下では、第2実施形態において第1実施形態と異なる構造を主に説明する。一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する構造には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該構造の詳しい説明を省略する。
【0041】
[構造]
図5および図6を参照して、クライオポンプの構造を説明する。
図5が示すように、クライオポンプ20は、冷凍機11、放射シールド12、バッフル13、クライオパネル14、第2カバー16を備えている。これらの部材は、第1実施形態のクライオポンプ10が備える各部材と同等の構造を有している。
【0042】
一方で、クライオポンプ20は、連結部材29をさらに備えている。連結部材29は、第2シリンダー11Dが延びる方向において、第1ステージ11Aと放射シールド12との間に位置している。連結部材29は、放射シールド12を第1ステージ11Aに接続している。これにより、放射シールド12が、第1ステージ11Aに熱的に接続される。このように、本実施形態では、第1ステージ11Aが、連結部材29の長さの分だけ放射シールド12から離れている。連結部材29は、筒状を有している。第2シリンダー11Dの一部が、連結部材29内を通っている。
【0043】
第1カバー25は、第1ステージ11Aから第2ステージ11Bに向けて延びる筒状を有している。第1カバー25において、第1ステージ11Aに接続された端部が基端であり、基端とは反対側の端部が先端である。第1カバー25の基端は、第1ステージ11Aと連結部材29とに挟まれている。そのため、第1カバー25および連結部材29が、第1ステージ11Aに熱的に接続され、これによって、第1ステージ11Aと同等の温度に冷却される。第1カバー25は、連結部材29内において連結部材29に沿って延び、かつ、放射シールド12の貫通孔12AHを通って筒状部12A内まで延びている。すなわち、第1カバー25の先端は、筒状部12A内に位置している。一方で、第1カバー15の先端は、第2ステージ11Bには接していない。
【0044】
図6は、図5が示す構造のうちで、クライオパネル14の周辺構造を拡大して示している。
図6が示すように、クライオポンプ20は、支持部材17および第2カバー16を備えている。これらの部材は、第1実施形態のクライオポンプ10が備える各部材と同等の構造を有している。第2シリンダー11Dと第1カバー25との間の距離が、第1距離D1である。第2カバー16と第1カバー15との間の距離が、第2距離D2である。第1距離D1は、第2距離D2よりも小さい。
【0045】
[作用]
図7および図8を参照して、クライオポンプ20の作用を説明する。
図7は、本実施形態のクライオポンプ20によって真空槽を排気した場合におけるクライオポンプ20の状態を模式的に示している。これに対して、図8は、第2シリンダーを覆うカバーが第2ステージに接続されるクライオポンプが真空槽を排気した場合におけるクライオポンプの状態を模式的に示している。
【0046】
図7が示すように、クライオポンプ20が駆動され、クライオポンプ20が接続された真空槽内が排気される際には、冷凍機11の第1ステージ11Aが第1温度に冷却され、第2ステージ11Bが第2温度に冷却される。これにより、第2ステージ11Bに熱的に接続された各クライオパネル14も第2温度と同等の温度に冷却される。一方で、放射シールド12、バッフル13、および、第1カバー25は、第1温度と同等の温度に冷却される。
【0047】
そのため、バッフル13を介して放射シールド12内に導入されたArガスGは、クライオパネル14において凝縮し、凝縮したArガスGがクライオパネル14に堆積する。一方で、第2シリンダー11Dを覆う第1カバー25は、第1ステージ11Aと同等の温度であるから、第1カバー25ではArガスGの凝縮が抑えられる。そのため、第1カバー25に堆積したArガスGが放射シールド12に接することが抑えられる。
【0048】
さらに、第1カバー25の一部を第2カバー16が覆うから、第2カバー16においてArガスGの凝縮が生じる。これにより、クライオパネル14以外の部分においてArガスGの凝縮が生じるから、放射シールド12が画定する領域のうち、ArガスGが堆積する領域を拡張することが可能である。
【0049】
これに対して、クライオポンプ120では、第2シリンダー111Dを覆うカバー125が第2ステージ111Bに接続されている。そのため、第1シリンダー111Cによって冷却される第1ステージ111Aとは異なり、カバー125は、第2ステージ111Bと同等の温度まで冷却される。
【0050】
これにより、バッフル113から導入されたArガスGは、クライオパネル114に加えて、カバー125でも凝縮する。カバー125に堆積したArガスGが放射シールド12の貫通孔12AHから連結部材129内まで延びることによって、放射シールド112および連結部材129の少なくとも一方にArガスGが接する。これにより、凝縮したArガスGの一部が固相から気相に変化するから、放射シールド112内の圧力が高められ、結果として、放射シールド112内にArガスGが堆積されにくくなる。
【0051】
以上説明したように、クライオポンプの第2実施形態によれば、クライオポンプの第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0052】
[変更例]
なお、各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[第1カバー]
・第1カバー15,25は、筒状を有しなくてもよい。第1カバー15,25は、バッフル13と対向する視点から見て、第2シリンダー11Dを覆っていればよいため、第1カバー15,25は、例えば半円筒状を有してもよいし、板状を有してもよい。この場合であっても、第1カバー15,25が第2シリンダー11Dを覆うことによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0053】
・第1距離D1が、第2距離D2以上であってもよい。この場合であっても、クライオポンプ10が第1カバー15,25および第2カバー16を備えることによって、上述した(1)および(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0054】
・第1カバー15,25は、第2シリンダー11Dにおける25K以上45K以下の領域以外の領域を覆っていてもよい。例えば、第1カバー15,25は、第2シリンダー11Dのうち、45Kよりも高い温度を有する領域のみを覆ってもよい。あるいは、第1カバー15,25は、第2シリンダー11Dの基端から、第2シリンダー11Dの内で、25K未満の温度を有する領域まで覆ってもよい。これらの場合であっても、クライオポンプ10,20が第1カバー15,25を有するから、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0055】
・第2シリンダー11Dのうち、第1カバー15,25が覆う領域の温度範囲は、公知の温度‐平衡蒸気圧曲線を参照して、クライオポンプ10において凝縮する気体によって適宜変更することができる。例えば、クライオポンプ10において窒素ガスおよび酸素ガスが凝縮する場合は、Arガスと同様に、第1カバー15,25が覆う領域の温度範囲を25K以上45K以下に設定することができる。
【0056】
[第2カバー]
・クライオポンプ10,20は、第2カバー16を備えなくてもよい。この場合には、支持部材17は、例えば第2ステージ11Bに固定されればよい。これにより、支持部材17に支持された各クライオパネル14は、第2ステージ11Bに熱的に接続することが可能である。この場合であっても、クライオポンプ10,20が第1カバー15,25を備えるから、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0057】
[支持部材]
・クライオポンプ10,20は、支持部材17を備えなくてもよい。この場合には、各クライオパネル14は、例えば第2ステージ11Bに固定されればよい。これにより、クライオパネル14は、第2ステージ11Bに熱的に接続することが可能である。この場合であっても、クライオポンプ10,20が第1カバー15,25を備えるから、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0058】
[放射シールド]
・第1実施形態において、放射シールド12は、第1ステージ11Aに直接接続されてもよい。この場合には、第1カバー15の基端が第1ステージ11Aに接し、かつ、放射シールド12の外周面も第1ステージ11Aに接していればよい。
【符号の説明】
【0059】
10,20…クライオポンプ
11…冷凍機
11A…第1ステージ
11B…第2ステージ
11D…第2シリンダー
12…放射シールド
13…バッフル
14…クライオパネル
15,25…第1カバー
16…第2カバー
図1
図2
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図7
図8