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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117031
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】袖仕切り
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20220803BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D33/00 A
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013507
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三谷 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英一
(57)【要約】
【課題】意匠性を向上させつつ簡易な構成の袖仕切りを提供する。
【解決手段】袖仕切り2は、シート11側の第1面31とシート11と反対側の第2面32とを有し、第1面31及び第2面32を貫通するように開口4が形成されたパネル本体3と、開口4を塞ぐように、パネル本体3に取り付けられる透明プレート5とを備えている。パネル本体3は、化粧層33とフェノール樹脂を含有する中間層34とを含んでいる。開口4の内周面40は、第1内周面41と、第1内周面41に対して第2面32側に位置し且つ第1内周面41よりも開口面積が大きい第2内周面42と、第1内周面41と第2内周面42とを接続する段差面43とを有する。透明プレート5は、段差面43に接着剤6を介して取り付けられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両のシートの側端に設けられる袖仕切りであって、
前記シート側の第1面と前記シートと反対側の第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面を貫通するように開口が形成されたパネル本体と、
前記開口を塞ぐように、前記パネル本体に取り付けられる取付部材とを備え、
前記パネル本体は、化粧層とフェノール樹脂を含有する中間層とを含み、、
前記開口の内周面は、第1内周面と、前記第1内周面に対して前記第2面側に位置し且つ前記第1内周面よりも開口面積が大きい第2内周面と、前記第1内周面と前記第2内周面とを接続する段差面とを有し、
前記取付部材は、前記段差面に接着剤を介して取り付けられている袖仕切り。
【請求項2】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記取付部材は、前記第2内周面に接着剤を介して取り付けられている袖仕切り。
【請求項3】
請求項2に記載の袖仕切りにおいて、
前記接着剤は、前記取付部材のうち前記シートと反対側の面の周端縁を覆っている袖仕切り。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の袖仕切りにおいて、
前記取付部材のうち前記シートと反対側を向く面の周端縁は、前記パネル本体の厚み方向において前記第2面よりも内側に配置されている袖仕切り。
【請求項5】
請求項4に記載の袖仕切りにおいて、
前記取付部材は、前記パネル本体の厚み方向において前記第1面よりも内側で且つ前記第2面よりも内側に配置されている袖仕切り。
【請求項6】
請求項5に記載の袖仕切りにおいて、
前記パネル本体の厚み方向における前記第1面から前記取付部材までの距離は、前記パネル本体の厚み方向における前記第2面から前記取付部材までの距離よりも大きい袖仕切り。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の袖仕切りにおいて、
前記取付部材は、透明又は半透明の材質で形成されている袖仕切り。
【請求項8】
請求項7に記載の袖仕切りにおいて、
前記取付部材は、ガラスで形成されている袖仕切り。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載の袖仕切りにおいて、
前記パネル本体のうち前記シートの前後方向における後側の端部は、前記鉄道車両の車体に取り付けられている袖仕切り。
【請求項10】
請求項9に記載の袖仕切りにおいて、
前記パネル本体の下端部は、前記シートの座面よりも下方において、前記車体から前記シートの前後方向に延びるベースに取り付けられている袖仕切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、袖仕切りに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両のシートの側端には、袖仕切りが設けられている。袖仕切りは、車両内において比較的目立つ位置に配置されるので、車両内のデザイン性に寄与する。そのため、パネル本体と、パネル本体とは別体の取付部材とを組み合わせることによって意匠性を向上させた袖仕切りが知られている。例えば、特許文献1には、仕切り板と透過部とを備えた袖仕切りが開示されている。仕切り板及び透過部は、枠部及び骨組み等のフレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-82290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された袖仕切りは、透過部を取り付けるための骨組み等が必要となる。その結果、袖仕切りの構成が複雑になると共に部品点数が増加する。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、意匠性を向上させつつ簡易な構成の袖仕切りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の袖仕切りは、鉄道車両のシートの側端に設けられる袖仕切りであって、前記シート側の第1面と前記シートと反対側の第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面を貫通するように開口が形成されたパネル本体と、前記開口を塞ぐように、前記パネル本体に取り付けられる取付部材とを備え、前記パネル本体は、化粧層とフェノール樹脂を含有する中間層とを含み、前記開口の内周面は、第1内周面と、前記第1内周面に対して前記第2面側に位置し且つ前記第1内周面よりも開口面積が大きい第2内周面と、前記第1内周面と前記第2内周面とを接続する段差面とを有し、前記取付部材は、前記段差面に接着剤を介して取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
前記袖仕切りによれば、意匠性を向上させつつ簡易な構成の袖仕切りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、鉄道車両の袖仕切りをシートと反対側から見た模式図である。
図2図2は、図1のII-II線における袖仕切りの部分断面図である。
図3図3は、袖仕切りの保持状態を示す、袖仕切りを上方から見た部分拡大図である。
図4図4は、パネル本体の部分断面図である。
図5図5は、パネル本体の斜視図である。
図6図6は、図1のVI-VI線における袖仕切りの部分断面図である。
図7図7は、図1のVII-VII線における袖仕切りの部分断面図である。
図8図8は、袖仕切りをシートの前方から見た部分拡大図である。
図9図9は、変形例に係る鉄道車両の袖仕切りをシートと反対側から見た模式図である。
図10図10は、別の変形例に係る鉄道車両の袖仕切りをシートと反対側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、鉄道車両の袖仕切り2をシート11と反対側から見た模式図である。図2は、図1のII-II線における袖仕切り2の部分断面図である。図3は、袖仕切り2の車体による保持状態を示す、袖仕切り2を上方から見た部分拡大図である。
【0010】
袖仕切り2は、鉄道車両のシート11の側端に設けられる。シート11は、背ずり11aを後側とする前後方向と、座ぶとん11bを下側とする上下方向と、前後方向及び上下方向に直交する左右方向とを有している。シート11は、車体の側壁15に沿って、即ち、車両の長手方向に沿って設けられたロングシートである。すなわち、シート11は、シート11の前後方向が車両の車幅方向を向き、シート11の左右方向が車両の長手方向を向くように配置されている。シート11は、シートベース14に支持されている。シートベース14は、側壁15に取り付けられている。シート11の側端は、シート11の左右方向(即ち、長手方向)の端を意味する。
【0011】
袖仕切り2は、車両内の空間とシート11とを仕切っている。この例では、袖仕切り2は、側壁15に設けられた乗降口(図示省略)周辺の空間とシート11とを仕切っている。シートベース14は、ベースの一例であり、側壁15は、車体の一例である。
【0012】
袖仕切り2は、開口4が形成されたパネル本体3と、開口4を塞ぐように、パネル本体3に取り付けられる透明プレート5とを備えている。透明プレート5は、取付部材の一例である。
【0013】
パネル本体3は、平板状の部材である。パネル本体3は、シート11側の第1面31とシート11と反対側の第2面32とを有している。第1面31と第2面32とは、互いに略平行となっている。
【0014】
パネル本体3のうちシート11の前後方向における後側の端部は、鉄道車両の車体に取り付けられている。具体的には、パネル本体3は、第1面31及び第2面32が側壁15に対して垂直となる状態で、側壁15に取り付けられている。このとき、第1面31がシート11側を向き、第2面32がシート11と反対側を向く。
【0015】
側壁15には、パネル本体3を保持するための保持具16が取り付けられている。パネル本体3は、保持具16を介して側壁15に取り付けられている。保持具16は、互いに平行に上下方向へ延びる第1壁16a及び第2壁16bを有している。第1壁16aと第2壁16bとの間隔は、パネル本体3の厚みと略同じか、又はパネル本体3の厚みよりも少しだけ大きい。第1壁16aは、保持具16の上部にのみ設けられている。第2壁16bは、保持具16の上下方向の全域に亘って設けられている。パネル本体3は、図2,3に示すように、第1壁16aと第2壁16bとの間に配置される。第1壁16aは、第1面31と対向する。第2壁16bは、第2面32と対向する。パネル本体3は、第1壁16a及び第2壁16bによって、車両の長手方向への移動が規制される。パネル本体3は、第1壁16aにボルト17を介してボルト締結される。
【0016】
さらに、パネル本体3の下端部は、シート11の座面よりも下方において、車体からシート11の前後方向に延びるシートベース14に取り付けられている。具体的には、シートベース14には、3つの保持部14aが設けられている。パネル本体3は、3つの保持部14aにボルト締結されている。
【0017】
この例では、パネル本体3は、側壁15及びシートベース14のみに取り付けられている。
【0018】
図4は、パネル本体3の部分断面図である。パネル本体3は、化粧層33とフェノール樹脂を含有する中間層34とを含む。尚、図4においては、化粧層33及び中間層34をわかりやすく図示するために、化粧層33及び中間層34の厚みは、実際の縮尺とは異なる。具体的には、パネル本体3は、一対の化粧層33の間に中間層34が積層されている。化粧層33は、メラミン樹脂で形成されている。中間層34は、フェノール樹脂で形成されている。一方の化粧層33の表面が第1面31であり、他方の化粧層33の表面が第2面32である。パネル本体3は、その内部にフレーム等の骨組みを含んでいない。
【0019】
より詳しくは、パネル本体3は、メラミン樹脂を印刷紙に含侵させ乾燥させた含侵紙と、フェノール樹脂をクラフト紙に含侵させ乾燥させた複数枚の含侵紙とを高温、高圧化で積層形成したプラスチック板である。メラミン樹脂で形成された一対の表面層が化粧層33であり、一対の表面層の間のフェノール樹脂で形成された層が中間層34である。化粧層33の表面には、表面紙がさらに積層されていてもよい。
【0020】
図5は、パネル本体3の斜視図である。開口4は、第1面31及び第2面32を貫通するように、即ち、パネル本体3を厚み方向に貫通するように形成されている。開口4は、閉じた形状をしている。開口4は、パネル本体3の厚み方向(即ち、シート11の長手方向)に見て、パネル本体3のうちシート11と干渉しない領域に形成されている。つまり、パネル本体3の厚み方向に見た場合(図1参照)、開口4からはシート11は視認できない。また、開口4の下端は、シート11の座面11cよりも所定距離だけ上方に配置されている。これにより、パネル本体3の厚み方向に見た場合に、シート11に着席する乗客の大腿部が開口4から見えにくくなる。
【0021】
開口4の内周面40は、第1内周面41と、第1内周面41に対して第2面32側に位置し且つ第1内周面41よりも開口面積が大きい第2内周面42と、第1内周面41と第2内周面42とを接続する段差面43とを有している。第1内周面41は、第1面31と接続されている。第1内周面41は、第1面31と略直交している。第2内周面42は、第2面32と接続されている。第2内周面42は、第2面32と略直交している。段差面43は、シート11と反対側を向き、第1面31及び第2面32と略平行に(即ち、パネル本体3の厚み方向に対して略直交するように)形成されている。段差面43は、第1内周面41及び第2内周面42と略直交している。
【0022】
透明プレート5は、平板状に形成されている。透明プレート5は、透明の材質で形成されている。具体的には、透明プレート5は、ガラスで形成されている。透明プレート5は、図1に示すように、開口4と略同じで且つ開口4よりも小さい外形を有している。詳しくは、透明プレート5は、開口4のうち第1内周面41で形成される開口よりも大きく、開口4のうち第2内周面42で形成される開口よりも小さい外形を有している。
【0023】
図6は、図1のVI-VI線における袖仕切り2の部分断面図である。図7は、図1のVII-VII線における袖仕切り2の部分断面図である。透明プレート5は、シート11側の第1面51とシート11と反対側の第2面52とを有している。すなわち、第1面51は、パネル本体3の第1面31と同じ方向を向き、第2面52は、パネル本体3の第2面32と同じ方向を向いている。第1面51と第2面52とは、互いに略平行となっている。透明プレート5は、段差面43に接着剤6を介して取り付けられている。すなわち、パネル本体3の厚み方向へ見た場合に、透明パネル5の周端部と段差部43とは重なっている。透明プレート5の第1面51の周端部は、段差面43と対向している。段差面43の複数個所に、スペーサ44が設けられている(図1参照)。透明プレート5と段差面43との間には、スペーサ44によって隙間が形成されている。透明プレート5の第1面51と段差面43との隙間が接着剤6で埋められている。例えば、スペーサ44は、ゴムで形成されている。
【0024】
さらに、透明プレート5は、第2内周面42にも接着剤6を介して取り付けられている。透明プレート5の周端面53と第2内周面42との間には、隙間が形成されている。透明プレート5の周端面53と第2内周面42との隙間が接着剤6で埋められている。
【0025】
接着剤6は、透明プレート5のうち第2面52(即ち、シート11と反対側を向く面)の周端部まで塗布されている。詳しくは、接着剤6は、周端面53と第2内周面42との隙間からさらに、第2面52の周端部まで回り込んで設けられている。つまり、接着剤6の断面は、実質的にC字状又はJ字状に形成され、透明プレート5の周端部において、第1面51から第2面52までを覆うように塗布されている。これにより、接着剤6は、必然的に、透明プレート5のうち第2面52の周端縁(即ち、第2面52と周端面53とで形成される稜部)を覆うことになる。
【0026】
それに加えて、第2面52の周端部は、パネル本体3の第2面32よりもパネル本体3の厚み方向における内側に配置されている。接着剤6は、パネル本体3の第2面32からはみ出さない、即ち、膨出しない範囲で第2面52上に塗布されている。
【0027】
図8は、袖仕切り2をシート11の前方から見た部分拡大図である。パネル本体3にこのように取り付けられた透明プレート5は、パネル本体3の厚み方向において、第1面31よりも内側で且つ第2面32よりも内側に配置されている。つまり、透明プレート5は、パネル本体3の厚み方向において、第1面31からも第2面32からも突出していない。つまり、透明プレート5は、第1面31からも第2面32からも陥没した位置に配置される。
【0028】
さらに、図6に示すように、パネル本体3の厚み方向における第1面31から透明プレート5までの距離d1は、パネル本体3の厚み方向における第2面32から透明プレート5までの距離d2よりも大きい。つまり、第1面31からの透明プレート5の陥没量は、第2面32からの透明プレート5の陥没量よりも大きい。
【0029】
このように構成された袖仕切り2においては、パネル本体3に別部材の透明プレート5を取り付けることによって、袖仕切り2の意匠性が向上する。さらに、透明プレート5が透過性を有する部材であるので、袖仕切り2に開放感を付与することができる。
【0030】
パネル本体3への透明プレート5の取付は、パネル本体3への透明プレート5の接着により実現される。透明プレート5を骨組み等のフレームに取り付ける必要がないため、透明プレート5の取付を簡易にすることができる。また、透明プレート5を取り付けるためのフレーム等が不要なので、袖仕切り2の部品点数を削減することができる。
【0031】
さらに、パネル本体3は化粧層33とフェノール樹脂を含有する中間層34とを重ね合わせて形成されているので、パネル本体3の高い剛性を確保することができる。パネル本体3が高剛性を有するので、透明プレート5をフレーム等ではなくパネル本体3に取り付ける構成であっても、透明プレート5に作用する外力をパネル本体3で受け止めることができる。また、開口4は、閉じた形状をしている。つまり、透明プレート5が取り付けられる段差面43は、閉じた形状をしている。そのため、パネル本体3は、高い剛性で透明プレート5を支持することができる。
【0032】
さらに、パネル本体3は、中実のプレートであり、且つ、透明プレート5は、パネル本体3に接着により取り付けられている。透明プレート5は、複数のパネルによる挟み込みによって取り付けられた構成ではない。そのため、袖仕切り2の薄型化を図ることができる。
【0033】
それに加えて、透明プレート5は、シート11と反対側からパネル本体3に取り付けられている。具体的には、パネル本体3のうち、シート11と反対側を向く段差面43に透明プレート5が取り付けられている。そのため、透明プレート5にシート11側から作用する外力は、接着剤6で受け止められるのに対し、透明プレート5にシート11と反対側から作用する外力は、段差面43、即ち、パネル本体3で受け止められる。袖仕切り2に対してシート11側にはシート11に着席した乗客が存在する一方、シート11と反対側には起立した乗客が存在し得る。袖仕切り2に乗客がもたれ掛かった際には、座った乗客よりも立った乗客から袖仕切り2が受ける外力の方が大きい。つまり、袖仕切り2には、シート11側からよりもシート11と反対側からの方がより大きな外力が作用し得る。透明プレート5をシート11と反対側から段差面43に取り付けることによって、透明プレート5に作用する外力をより効果的に受け止めることができる。
【0034】
また、透明プレート5は、段差面43に加えて第2内周面42にも接着剤6を介して取り付けられている。これにより、透明プレート5をパネル本体3により高い強度で取り付けることができる。
【0035】
さらに、接着剤6は、透明プレート5の第1面51の周端部及び周端面53に加えて、第2面52の周端部にも塗布されている。つまり、透明プレート5は、その周端部を接着剤6によって断面略C字状又は略J字状に保持された状態となっている。これにより、透明プレート5がパネル本体3により強固に取り付けられる。
【0036】
このような接着剤6の塗布により、透明プレート5の第2面52の周端縁が接着剤6によって覆われる。第2面52の周端縁は、開口4から第2面32側に露出し得る。第2面52の周端縁に乗客が接触すると、透明プレート5が破損する虞がある。それに対し、接着剤6が第2面52の周端縁を覆うことによって、第2面52の周端縁の露出が防止される。これにより、第2面52の周端縁が接着剤6によって保護される。また、接着剤6は透明プレート5の周端面53と開口4の第2内周面42との隙間に存在するので、第2面52の周端縁を覆うように接着剤6を設けることを容易に実現できる。
【0037】
ここで、第2面52の周端縁は、パネル本体3の厚み方向において第2面32よりも内側に配置されている。第2面52の周端縁が、パネル本体3の厚み方向において第2面32よりも外側に突出していないので、第2面52の周端縁への乗客の接触が抑制される。それに加えて、第2面52の周端縁に接着剤6を設けやすくなる。つまり、第2内周面42が、パネル本体3の厚み方向において第2面52よりも外側まで延びている。第2内周面42と透明プレート5の周端面53との隙間を埋める接着剤6を第2内周面42のうち第2面52よりも外側に位置する部分まで延ばして設けることによって、表面張力を利用して、接着剤6を透明プレート5の第2面52の周端部まで設けやすくなる。
【0038】
また、全体的に見ても、透明プレート5は、パネル本体3の厚み方向において第1面31及び第2面32よりも内側に配置され、パネル本体3から突出していない。これにより、透明プレート5への乗客の接触を抑制することができる。
【0039】
さらに、パネル本体3の厚み方向において、第1面31から透明プレート5までの距離d1は、第2面32から透明プレート5までの距離d2よりも大きい。これにより、第1面31から透明プレート5までの凹みを第2面32から透明プレート5までの凹みよりも大きくすることができる。第1面31から透明プレート5までの凹みはシート11側に位置するので、その凹みは、シート11に着席する乗客のためのスペースの確保に寄与する。
【0040】
以上のように、袖仕切り2は、シート11側の第1面31とシート11と反対側の第2面32とを有し、第1面31及び第2面32を貫通するように開口4が形成されたパネル本体3と、開口4を塞ぐように、パネル本体3に取り付けられる透明プレート5(取付部材)とを備え、パネル本体3は、化粧層33とフェノール樹脂を含有する中間層34とを含み、開口4の内周面40は、第1内周面41と、第1内周面41に対して第2面32側に位置し且つ第1内周面41よりも開口面積が大きい第2内周面42と、第1内周面41と第2内周面42とを接続する段差面43とを有し、透明プレート5は、段差面43に接着剤6を介して取り付けられている。
【0041】
この構成によれば、パネル本体3とは別体の透明プレート5をパネル本体3に取り付けることによって、袖仕切り2の意匠性を向上させることができる。さらに、パネル本体3は、フェノール樹脂を含有する中間層34を有するので、パネル本体3の剛性が高い。そのため、フレーム等ではなく、パネル本体3に透明プレート5を接着する構成であっても、透明プレート5を高い強度を支持することができる。その結果、袖仕切り2の部品点数を削減することができ、袖仕切り2の構成を簡易にすることができる。
【0042】
それに加えて、透明プレート5は、パネル本体3の開口4に設けられた段差面43に接着されるため、取付部材をパネル本体で挟み込む構成と比較して、袖仕切り2の薄型化を図ることができる。
【0043】
さらに、第2内周面42は、第1内周面41よりも大きな開口面積を有し、且つ、第1内周面41に対して第2面32側に位置しているので、第1内周面41と第2内周面42とを接続する段差面43は、概ねシート11と反対側を向いている。段差面43に透明プレート5を取り付けることによって、透明プレート5がシート11と反対側からパネル本体3に取り付けられる。そのため、シート11と反対側から透明プレート5に作用する外力に対する取付強度を高めることができる。これにより、シート11と反対側からの大きな外力に耐え得る、透明プレート5の取付強度を確保することができる。
【0044】
また、透明プレート5は、第2内周面42にも接着剤6を介して取り付けられている。
【0045】
この構成によれば、透明プレート5は、段差面43及び第2内周面42に接着剤6を介して取り付けられる。これにより、透明プレート5の取付強度をさらに向上させることができる。特に、パネル本体3の第1面31及び第2面32と平行な方向への荷重に対しても透明プレート5の高い取付強度を確保することができる。
【0046】
さらに、接着剤6は、透明プレート5の第2面52(即ち、シート11と反対側の面)の周端縁を覆っている。
【0047】
この構成によれば、開口4から外側に露出し得る第2面52の周端縁を接着剤6で保護することができる。これにより、第2面52の周端縁への乗客の接触によって第2面52の周端縁が破損することが防止される。
【0048】
また、第2面52の周端縁は、パネル本体3の厚み方向において第2面32よりも内側に配置されている。
【0049】
この構成によれば、パネル本体3の厚み方向において、第2面52の周端縁は、パネル本体3から突出していないので、乗客が第2面52の周端縁に接触しにくくなる。それに加え、第2面32よりも第2面52がパネル本体3の厚み方向における内側に凹むように段差が形成されるので、第2内周面42と第2面52の周端部とに亘って接着剤6を塗布し易くなる。
【0050】
また、透明プレート5は、パネル本体3の厚み方向において第1面31よりも内側で且つ第2面32よりも内側に配置されている。
【0051】
この構成によれば、透明プレート5は、第1面31側からも第2面32側からも凹んだ位置に配置される。つまり、袖仕切り2が開口4において部分的に薄肉化されている。パネル本体3の開口4において、第1面31から透明プレート5まで凹んだスペースと、第2面32から透明プレート5まで凹んだスペースとが形成される。これらのスペースにより、袖仕切り2のシート11側にもシート11と反対側にもスペースが確保されることになる。
【0052】
さらに、パネル本体3の厚み方向における第1面31から透明プレート5までの距離d1は、パネル本体3の厚み方向における第2面32から透明プレート5までの距離d2よりも大きい。
【0053】
この構成によれば、シート11側の第1面31から透明プレート5までの凹部の方が、シート11と反対側の第2面32から透明プレート5までの凹部よりも大きい。つまり、シート11に着席する乗客に対するスペースがより拡大される。
【0054】
透明プレート5は、透明又は半透明の材質で形成されている。具体的には、透明プレート5は、ガラスで形成されている。
【0055】
この構成によれば、パネル本体3の開口4が透過しているので、袖仕切り2の意匠性が向上することに加えて、開放感が付与される。
【0056】
パネル本体3のうちシート11の前後方向における後側の端部は、側壁15(鉄道車両の車体)に取り付けられている。
【0057】
この構成によれば、パネル本体3は、少なくとも側壁15に取り付けられている。パネル本体3は、側壁15による保持と前述のフェノール樹脂を含有する中間層34とによって、高い剛性を有する。
【0058】
さらに、パネル本体3の下端部は、シート11の座面11cよりも下方において、側壁15からシート11の前後方向に延びるシートベース14(ベース)に取り付けられている。
【0059】
この構成によれば、パネル本体3は、側壁15に加えて、シートベース14にも保持される。これにより、パネル本体3が車体により強固に固定されることになる。
【0060】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0061】
例えば、袖仕切り2が設けられるシート11は、ロングシートに限定されない。シート11は、クロスシートであってもよい。
【0062】
パネル本体3の車体への支持は、前述の構成に限定されない。例えば、パネル本体3は、車体のみ、例えば、側壁15のみに取り付けられ、シートベース14に取り付けられていなくてもよい。あるいは、パネル本体3は、車体(例えば、側壁15)に加えて、スタンションポールに取り付けられていてもよい。
【0063】
前述の構成では、パネル本体3にフレーム等が設けられていないが、これに限定されるものではない。パネル本体3にフレーム等が含まれていてもよい。
【0064】
パネル本体3の外形は、前述の形状に限定されない。また、パネル本体3は、平板状に限定されず、湾曲していてもよい。
【0065】
パネル本体3には、取付部材を取り付けるための開口以外の開口が形成されていてもよい。図9は、変形例に係る鉄道車両の袖仕切り202をシート11と反対側から見た模式図である。袖仕切り202のパネル本体203には、開口35が形成されている。袖仕切り202のうちパネル本体203に開口35が形成されている以外の構成は、袖仕切り2と同様である。開口35は、パネル本体203を厚み方向に貫通するように形成されている。開口35は、パネル本体203の下部に形成されている。例えば、開口35は、パネル本体203のうちシート11よりも下方の位置に形成されている。開口35は、パネル本体203に対してシート11と反対側の空間に存在する乗客及び乗務員が足を掛けるために使用され得る。あるいは、開口35は、緊急時等に乗客及び乗務員が車両から線路へ降りたり、線路から車両へ乗ったりする際に手を掛けるために使用され得る。さらに、開口35は、乗客及び乗務員が足又は手を掛けやすくするために、その内周面に車両の床面と平行な部分を有していてもよい。
【0066】
パネル本体3に形成された開口4は、1つに限定されない。パネル本体3には、複数の開口4が形成されていてもよい。図10は、別の変形例に係る鉄道車両の袖仕切り302をシート11と反対側から見た模式図である。袖仕切り302は、複数の開口304が形成されたパネル本体303と、複数の開口304を塞ぐように、パネル本体303に取り付けられる複数の透明プレート305とを備えている。各開口304は、開口4と同様の内周面を有している。パネル本体303への透明プレート305の取付は、パネル本体3への透明プレート5の取付と同様である。つまり、透明プレート305は、開口304の段差面に接着剤を介して取り付けられている。尚、複数の開口304のうち一部の開口304に透明プレート305が取り付けられ、残りの開口304には透明プレート305以外の取付部材が取り付けられるか、又は透明プレート305等の取付部材が取り付けられていなくてもよい。
【0067】
開口4の形状は、任意に形成され得る。例えば、開口4は、閉じた形状ではなく、開いた形状であってもよい。つまり、開口4は、パネル本体3の周端縁に跨るように、即ち、切欠き状に形成されていてもよい。
【0068】
開口4の下端は、シート11の座面11cよりも下方に位置していてもよい。
【0069】
開口4の内周面40は、第1内周面41、第2内周面42及び段差面43以外の面を含んでいてもよい。例えば、内周面40は、第1内周面41に対して第1面31側に位置し且つ第1内周面41と開口面積が異なる別の内周面、及び/又は、第2内周面42に対して第2面32側に位置し且つ第2内周面42よりも開口面積が大きい別の内周面をさらに含んでいてもよい。
【0070】
段差面43は、パネル本体3の厚み方向に対して傾斜していてもよい。
【0071】
透明プレート5は、ガラス製に限定されない。透明プレート5は、アクリル板等の透明の材質で形成されてもよい。
【0072】
取付部材(アタッチメント)は、透明プレート5に限定されない。取付部材は、半透明の材質又は非透過性の材質で形成されてもよい。また、取付部材は、平板状ではなく、湾曲する形状であってもよい。さらに、取付部材は、板状ではなく、ブロック状など任意の形状に形成され得る。開口4がパネル本体3のうち乗客の脚部(例えば、大腿部)に掛かるような位置に形成されている場合などには、取付部材の一部(乗客の脚部に掛かる部分)が非透過性の材質で形成され、取付部材の残りの部分が透過性の材質で形成されてもよい。
【0073】
取付部材は、パネル本体3の厚み方向においてパネル本体3の第2面32よりも内側に配置されていなくてもよい。取付部材は、第2面32と面一又は第2面32から突出して配置されていてもよい。
【0074】
取付部材は、少なくとも段差面43に接着されていればよく、第2内周面42に接着されていなくてもよい。さらには、接着剤6は、取付部材のうちシート11と反対側を向く面(例えば、透明プレート5の第2面52)に設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
11 シート
11c 座面
14 シートベース(ベース)
15 側壁(車体)
2,202,302 袖仕切り
3,203,303 パネル本体
31 第1面
32 第2面
33 化粧層
34 中間層
4,304 開口
41 第1内周面
42 第2内周面
43 段差面
5,305 透明プレート(取付部材)
6 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10