(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117033
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】デュアルフューエルエンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20220803BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20220803BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20220803BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20220803BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02M21/02 311F
F02D21/08 301C
F02M26/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013509
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 操
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062BA04
3G062FA01
3G062FA08
3G062FA10
3G062GA01
3G062GA07
3G092AA08
3G092AA17
3G092AB03
3G092AB08
3G092AB12
3G092DE01
3G092EA05
3G092EA06
3G092EA07
3G092EC01
(57)【要約】
【課題】エンジン出力が変化しても空燃比をストイキに維持する事が出来るデュアルフューエルエンジンを提供する。
【解決手段】EGRガス量が調整可能なEGR装置101を備え、天然ガスと軽油とを燃料とするデュアルフューエルエンジン100において、EGR装置101では、空燃比に応じてEGRガス量が調整される事によって課題を解決する事が出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRガス量が調整可能なEGR装置を備え、天然ガスと軽油とを燃料とするデュアルフューエルエンジンにおいて、
前記EGR装置では、空燃比に応じてEGRガス量が調整される
事を特徴とするデュアルフューエルエンジン。
【請求項2】
前記EGR装置では、空燃比がストイキとなる様にEGRガス量が調整される
請求項1に記載のデュアルフューエルエンジン。
【請求項3】
前記EGR装置では、排気中の酸素濃度を基にEGRガス量が調整される
請求項2に記載のデュアルフューエルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
デュアルフューエルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルフューエルエンジンは、天然ガスと軽油とを燃料とするもので、天然ガスと空気との混合気をシリンダ内で圧縮する事で高温とし、当該混合気に軽油を添加し、当該軽油を自己着火させる事で混合気を燃焼させる(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
デュアルフューエルエンジンでは、混合気中の天然ガス量を増減する事でエンジン出力を制御する。具体的には、混合気中の天然ガス量を増やすとエンジン出力が大きくなるのでエンジン負荷も高くなり、混合気中の天然ガス量を減らすとエンジン出力が小さくなるのでエンジン負荷も低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-109198号公報
【特許文献2】特開2014-109199号公報
【特許文献3】特開2018-204476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混合気中の天然ガス量を増やすと空燃比がリッチ(過濃)側に変化し、混合気中の天然ガス量を減らすと空燃比がリーン(希薄)側に変化するので、エンジン出力が変化すると空燃比も変化する。
【0006】
排気を浄化する為に三元触媒を使用する事が出来れば酸化触媒や脱硝触媒が不要となるので排気後処理装置を簡略化する事が出来るが、三元触媒では、空燃比がリッチであると一酸化炭素と炭化水素の浄化率が低下し、空燃比がリーンであると窒素酸化物の浄化率が低下するので、三元触媒を使用する為には空燃比をストイキ(理論空燃比)に維持する必要がある。
【0007】
しかしながら、デュアルフューエルエンジンでは、エンジン出力が変化すると空燃比も変化するので、空燃比をストイキに維持する事が出来ず、三元触媒を使用する事が出来ない。
【0008】
以上の事情に鑑み、エンジン出力が変化しても空燃比をストイキに維持する事が出来るデュアルフューエルエンジンを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス量が調整可能なEGR装置を備え、天然ガスと軽油とを燃料とするデュアルフューエルエンジンにおいて、前記EGR装置では、空燃比に応じてEGRガス量が調整されるデュアルフューエルエンジンを提供する。
【0010】
前記EGR装置では、空燃比がストイキとなる様にEGRガス量が調整される事が望ましい。
【0011】
前記EGR装置では、排気中の酸素濃度を基にEGRガス量が調整される事が望ましい。
【発明の効果】
【0012】
エンジン出力が変化しても空燃比をストイキに維持する事が出来るデュアルフューエルエンジンを提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るデュアルフューエルエンジンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す様に、デュアルフューエルエンジン100は、EGRガス量が調整可能なEGR装置101を備え、天然ガス(例えば、CNG(
Compressed
Natural
Gas)やLNG(
Liquefied
Natural
Gas))と軽油とを燃料とするものである。
【0015】
デュアルフューエルエンジン100では、天然ガスと空気との混合気を所定の行程容積を有するシリンダ102内で圧縮する事で高温とし、当該混合気に軽油を添加し、当該軽油を自己着火させる事で混合気を燃焼させるので、混合気中の軽油量は混合気中の天然ガス量と比較すると僅かである。
【0016】
EGR装置101は、エンジン本体103の排気の一部(EGRガス)を排気流路104から吸気流路105に環流させるEGRパイプ106と、EGRパイプ106に設置され、EGRガス量を調整するEGRバルブ107と、EGRパイプ106に設置され、EGRガスを冷却するEGRクーラ108と、を備える。
【0017】
EGRバルブ107は、ECU(Electronic(or Engine) Control Unit)109で開度が調整される。ECU109は、エンジン回転数とアクセル開度とを基に天然ガスインジェクタ110で噴射すべき天然ガスの噴射量と軽油インジェクタ111で噴射すべき軽油の噴射量とを決定し、当該噴射量を指示値として天然ガスインジェクタ110と軽油インジェクタ111とを制御する。
【0018】
エンジン回転数はエンジン回転数センサ112で検出され、アクセル開度はアクセル開度センサ113で検出される。エンジン回転数が高いほど、アクセル開度が大きいほど、天然ガスと軽油の噴射量は多くなる。逆に、エンジン回転数が低いほど、アクセル開度が小さいほど、天然ガスと軽油の噴射量は少なくなる。
【0019】
排気流路104は、エンジン本体103に接続された排気マニホールド114と、排気マニホールド114に接続された排気パイプ115と、で構成される。排気マニホールド114にO2センサ116が設置され、O2センサ116で検出された排気中の酸素濃度がECU109に入力される。
【0020】
O
2センサ116は、
図2に示す様に、ストイキを境に出力電圧が急変するZ特性を有するので、排気中の酸素濃度を検出するのみならず、Z特性を利用する事で空燃比がリーン、ストイキ、リッチの何れかであるのかを判定する事が出来る。
【0021】
デュアルフューエルエンジン100では、混合気中の天然ガス量を増やすと空燃比がリッチ側に変化し、混合気中の天然ガス量を減らすと空燃比がリーン側に変化するので、何もしなければ、エンジン出力が変化すると空燃比も変化する。空燃比は混合気中の空気質量を混合気中の燃料質量で除したもので、燃料質量は混合気中の天然ガス質量と軽油質量との和である。
【0022】
例えば、エンジン出力が大きくエンジン負荷が高い高負荷運転領域では、混合気中の天然ガス量が多く空燃比がストイキとなる場合でも、エンジン出力が小さくエンジン負荷が低い低負荷運転領域では、混合気中の天然ガス量が少なく空燃比がストイキとならないという事態が生じ得る。
【0023】
即ち、行程容積は一定であり、過給機等の搭載を考慮しなければ、混合気中の新規空気(大気中から新しく取り込まれる空気)量の最大値を増やす事は出来ないので、通常は混合気中の天然ガス量が多くなる高負荷運転領域で空燃比がストイキとなる様に設計されるが、そうすると、低負荷運転領域では、混合気中の天然ガス量が少なくなるので、空燃比がリーンとなり、空燃比がストイキとならない。
【0024】
従って、EGR装置101では、空燃比に応じてEGRガス量が調整される。即ち、空燃比がストイキとなる様に、排気中の酸素濃度を基にEGRガス量が調整(フィードバック制御)される。EGRガス量は、ECU109が排気中の酸素濃度がストイキ時の酸素濃度に維持される様にEGRバルブ107の開度を調整する事で調整される。
【0025】
具体的には、混合気中の天然ガス量が増えると空燃比がリッチ側に変化するので排気中の酸素濃度が減り、混合気中の天然ガス量が減ると空燃比がリーン側に変化するので排気中の酸素濃度が増える。
【0026】
排気中の酸素濃度がストイキ時の酸素濃度よりも減った場合には、EGRバルブ107の開度を小さくする事でEGRガス量を減らし、混合気中の新規空気量を増やす事で空燃比をリーン側に変化させる。
【0027】
排気中の酸素濃度がストイキ時の酸素濃度よりも増えた場合には、EGRバルブ107の開度を大きくする事でEGRガス量を増やし、混合気中の新規空気量を減らす事で空燃比をリッチ側に変化させる。
【0028】
即ち、空燃比がリッチである場合は空燃比がストイキとなるまでEGRガス量を減らし、空燃比がリーンである場合は空燃比がストイキとなるまでEGRガス量を増やす事によって、空燃比をストイキに維持する。
【0029】
以上に説明した様に、デュアルフューエルエンジン100では、EGR装置101でEGRガス量が調整される事でエンジン出力が変化しても空燃比がストイキに維持されるので、排気を浄化する為に三元触媒を使用する事が可能であり、排気後処理装置を簡略化する事が出来る。
【符号の説明】
【0030】
100 デュアルフューエルエンジン
101 EGR装置
102 シリンダ
103 エンジン本体
104 排気流路
105 吸気流路
106 EGRパイプ
107 EGRバルブ
108 EGRクーラ
109 ECU
110 天然ガスインジェクタ
111 軽油インジェクタ
112 エンジン回転数センサ
113 アクセル開度センサ
114 排気マニホールド
115 排気パイプ
116 O2センサ