(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117047
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】取付金具および照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20220803BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20220803BHJP
F21V 21/30 20060101ALI20220803BHJP
F21W 131/101 20060101ALN20220803BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220803BHJP
【FI】
F21S2/00 630
F21S8/04 320
F21V21/30 110
F21W131:101
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013527
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】器具本体の回転前後で取付面から光学中心までの距離を一定に保った取付金具および照明器具を提供する。
【解決手段】トンネル照明器具1の器具本体2を回転自在に支持し、照明器具1の取付面A1に固定される取付金具6であって、器具本体2の回転に応じて器具本体2を取付面A1から離間する方向に移動させることで、器具本体2に設定された光学中心Oから取付面A1までの距離を一定に維持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具の器具本体を回転自在に支持し、当該照明器具の取付面に固定される取付金具であって、
前記器具本体の回転に応じて前記器具本体を前記取付面から離間する方向に移動させることで、前記器具本体に設定された光学中心から前記取付面までの距離を一定に維持する
ことを特徴とする取付金具。
【請求項2】
前記器具本体に設けられた第1ガイド軸が係合し、前記取付面から離間する方向への前記器具本体の移動をガイドする第1ガイド孔と、
前記器具本体に設けられた第2ガイド軸が係合し、当該器具本体の回転をガイドする第2ガイド孔と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の取付金具。
【請求項3】
前記第2ガイド孔は、
次の楕円曲線によって表される、ことを特徴とする請求項2に記載の取付金具。
x2/(WA)2+y2/(TB)2=1
ただし、WAは前記器具本体の前記第1ガイド軸と前記第2ガイド軸との距離、TBは前記第2ガイド軸と前記光学中心との距離、x、yはそれぞれ、前記取付面に平行な方向をx軸とし当該x軸に垂直な方向をy軸とする直交座標における変数である。
【請求項4】
前記第1ガイド孔は、前記取付面から離間する方向に延びる長孔であり、
当該長孔の長さは、次式によって表される前記器具本体の回転に応じた第1移動量δvに基づいて決定されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載の取付金具。
(前記第1ガイド孔が前記第2ガイド孔よりも前記光学中心に近い場合)
δv=(TB-WA)(1-cosθ)
(前記第2ガイド孔が前記第1ガイド孔よりも前記光学中心に近い場合)
δv=(TB+WA)(1-cosθ)
ただし、θは前記器具本体の回転角度、WAは前記器具本体の前記第1ガイド軸と前記第2ガイド軸との距離、TBは前記光学中心から前記第2ガイド軸までの距離である。
【請求項5】
前記第1ガイド孔は、前記取付面に垂直な方向に延在する長孔であり、
前記第2ガイド孔は、中央部より両端部のそれぞれが前記取付面から離間するように曲がった弧状の長孔であり、
前記第2ガイド孔の長孔は、
前記器具本体の回転角度がゼロ度のときに前記第2ガイド軸が位置する位置と、
前記取付面から前記光学中心までの距離を変えずに、前記器具本体を最大回転角で正転方向および逆転方向のそれぞれに回転させたきに、前記第2ガイド軸が位置する位置と、
のそれぞれを通る円弧に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の取付金具。
【請求項6】
前記取付面に固定される固定部を有し、
前記固定部は、
前記器具本体の回転に伴って前記取付面に平行な方向へ移動する前記光学中心の当該移動を打ち消す方向へ移動可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の取付金具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の取付金具を備える、ことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付金具および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
取付面に取付られた状態のまま、器具本体を回転させて取付角度を調整可能な照明器具が従来から知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-185905号公報
【特許文献2】特開2015-023004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、器具本体を回転させると、取付面と照明器具の光学中心との距離も変わってしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、器具本体の回転前後で取付面から光学中心までの距離を一定に保つことができる取付金具および照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、照明器具の器具本体を回転自在に支持し、当該照明器具の取付面に固定される取付金具であって、前記器具本体の回転に応じて前記器具本体を前記取付面から離間する方向に移動させることで、前記器具本体に設定された光学中心から前記取付面までの距離を一定に維持することを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記取付金具において、前記器具本体に設けられた第1ガイド軸が係合し、前記取付面から離間する方向への前記器具本体の移動をガイドする第1ガイド孔と、前記器具本体に設けられた第2ガイド軸が係合し、当該器具本体の回転をガイドする第2ガイド孔と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記取付金具において、前記第2ガイド孔は、次の楕円曲線によって表される、ことを特徴とする請求項2に記載の取付金具。
x2/(WA)2+y2/(TB)2=1
ただし、WAは前記器具本体の前記第1ガイド軸と前記第2ガイド軸との距離、TBは前記第2ガイド軸と前記光学中心との距離、x、yはそれぞれ、前記取付面に平行な方向をx軸とし当該x軸に垂直な方向をy軸とする直交座標における変数である。
【0009】
本発明は、上記取付金具において、前記第1ガイド孔は、前記取付面から離間する方向に延びる長孔であり、当該長孔の長さは、次式によって表される前記器具本体の回転に応じた第1移動量δvに基づいて決定されている、ことを特徴とする。
(前記第1ガイド孔が前記第2ガイド孔よりも前記光学中心に近い場合)
δv=(TB-WA)(1-cosθ)
(前記第2ガイド孔が前記第1ガイド孔よりも前記光学中心に近い場合)
δv=(TB+WA)(1-cosθ)
ただし、θは前記器具本体の回転角度、WAは前記器具本体の前記第1ガイド軸と前記第2ガイド軸との距離、TBは前記光学中心から前記第2ガイド軸までの距離である。
【0010】
本発明は、上記取付金具において、前記第1ガイド孔は、前記取付面に垂直な方向に延在する長孔であり、前記第2ガイド孔は、中央部より両端部のそれぞれが前記取付面から離間するように曲がった弧状の長孔であり、前記第2ガイド孔の長孔は、前記器具本体の回転角度がゼロ度のときに前記第2ガイド軸が位置する位置と、前記取付面から前記光学中心までの距離を変えずに、前記器具本体を最大回転角で正転方向および逆転方向のそれぞれに回転させたきに、前記第2ガイド軸が位置する位置と、のそれぞれを通る円弧に沿って形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記取付金具において、前記取付面に固定される固定部を有し、前記固定部は、前記器具本体の回転に伴って前記取付面に平行な方向へ移動する前記光学中心の当該移動を打ち消す方向へ移動可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記のいずれかに記載の取付金具を備えることを特徴とする照明器具である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、器具本体の回転前後で取付面から光学中心までの距離を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル照明器具の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】トンネル照明器具の設置状態を示す図であり、(A)はカバーが閉じている状態を示し、(B)はカバーが開いている状態を示す。
【
図4】取付角度変更時に光学中心の位置を固定した場合の取付位置の移動を示す図である。
【
図5】回転軸と光学中心とを一致させて取付金具に器具本体を回転自在に支持した構成を示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【
図7】トンネル照明器具の回転の様子を示す図である。
【
図9】第1ガイド孔および第2ガイド孔の設計手順の説明図である。
【
図10】回転方向への筐体の移動の様子を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るトンネル照明器具の構成を示す図である。
【
図12】トンネル照明器具の回転の様子を示す図である。
【
図13】第1ガイド孔および第2ガイド孔の設計手順の説明図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る取付板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るトンネル照明器具1の全体構成を示す斜視図である。
図2はトンネル照明器具1の設置状態を示す図であり、
図2(A)はカバー3が閉じた状態を示し、
図2(B)はカバー3が開いた状態を示す。
トンネル照明器具1は、
図1に示すように、その正面が出射面1Aとして構成されており、
図2(A)に示すように、当該出射面1Aを路面に対面させた姿勢でトンネルAの取付面A1(図示例では壁面)に設置され、照明光を出射面1Aから出射することで路面を照明する。
【0016】
本実施形態のトンネル照明器具1は、
図1に示すように、出射面1Aの側に開口部7(
図3)を有する略直方形状の筐体2(器具本体)と、筐体2の開口部7を塞ぐ略矩形板状の透光性材から成るカバー3と、当該カバー3を開閉可能にする適宜の数(図示例では2つ)の開閉機構4と、閉状態のカバー3を筐体2に係止する適宜の数(図示例では2つ)の留め具5と、を備えている。
留め具5は、カバー3を筐体2に開放不能に係止する機能を有する適宜の形式の金具が用いられ、本実施形態ではパッチン錠が用いられている。
開閉機構4は、
図2(B)に示すように、開口部7の上端縁部7A1に設けられており、カバー3が下方(開口部7の下端縁部7A2の側)から上方(開口部7の上端縁部7A1の側)に向かって開く上開き方式の蓋体として取り付けられている。
【0017】
またトンネル照明器具1は、筐体2の両端のそれぞれに、固定金具である取付板6を備え、
図2(A)に示すように、これらの取付板6をボルトで取付面A1に固定することでトンネルAに設置される。本実施形態の取付板6には、ワイヤ通し孔9が設けられており、筐体2の内部を通って延びる落下防止ワイヤ(図示せず)がワイヤ通し孔9に通されることで、筐体2が取付板6に落下防止ワイヤによっても結合される。
【0018】
また本実施形態の取付板6は、器具本体である筐体2を回動自在に支持しており、筐体2を回転させることで取付角度を調整可能にする角度調整金具として構成されている。さらに、この取付板6は、取付角度が変わった場合でも、トンネルAの取付面A1からトンネル照明器具1の光学中心O(
図3)までの距離(以下、「取付距離L」という)を一定に維持する機能を有している。
【0019】
詳述すると、一般的に、照明空間での照明器具の器具本体QAの取付位置や取付角度などの設計(すなわち照明設計)は次の手順で行われている。
先ず、
図3に示すように、器具の設置高さHで水平線Mを設定し、当該水平線M上の適宜の位置に器具本体QAの光学中心Oを配置する。そして、その位置で器具本体QAの取付角度(照射方向V)を適宜に変更することで、仕様や要求等を満足する最適な取付角度を探す。なお、設置高さHは、照明空間ごとに適宜に設定され値であり、例えばトンネル照明においては建築限界HMを超えない高さに設定される。また光源がLEDなどの発光素子である場合、器具本体QAの光学中心Oは、出射面(典型的には、出射開口を覆う透光性のカバーの外表面)に設定される。
【0020】
またトンネル照明においては、器具本体QAを取付面A1に取付金具で取り付けた際に、設計通りの位置に光学中心Oが自動で配置され、なおかつ、取付角度で自動で取り付けられるようにするために、通常、照明器具ごとに専用の取付金具が設計されている。かかる専用の取付金具は、一般に、取付面A1の精度が良くないため(照明設計に用いた値とのズレが少なくないため)、設置現場において取付角度を微調整可能にするために、器具本体を回転自在に支持している。
【0021】
一方、発光素子は放電ランプに比べて寿命が非常に長くなっており、発光素子を光源とする照明器具においては、当該光源の交換時期が半導体素子の寿命相当(例えば10年程度)に設定されている。交換のスパンが長くなるほど交換後の光源の光学性能が交換前のものと異なる蓋然性が高くなり、光源交換時に、交換後の光源の光学性能に応じて取付角度を微調整の範囲を超えて再調整する必要が生じることになる。
【0022】
一般には、光源の交換時に器具本体QAの内部で光学系の角度を変更することで、取付角度の再調整を不要としている。しかしながら、光学系の角度を変更可能にすることは設計が煩雑化し、またコストも増大するという問題がある。
そこで、比較的大きな角度範囲で器具本体QAを回転可能な取付金具を照明器具の設置に用いた場合、光源交換時に交換後の光源の光学特性に応じた回転量で器具本体QAを回転させることで、取付角度を大きく調整可能となる。しかしながら、器具本体QAの回転時に、取付面A1から光学中心Oまでの取付距離Lを一定に維持するには、
図4に矢印AMで示すように、器具本体QAを取付面A1上でスライド移動する必要がある。また、器具本体QAを移動させないと、取付距離Lが大きく変わることから、照明器具の照明特性(配光特性など)が設計時のものと大きく異なってしまうことになる。
【0023】
また、
図5(A)および
図5(B)に示すように、回転軸QCと光学中心Oとを一致させて器具本体QAを一対の取付金具QBに回転自在に支持した構成であれば、器具本体QAの回転にかかわらず、取付面A1から光学中心Oまでの取付距離Lを一定に維持できる。
しかしながら、取付金具QBが器具本体QAを光学中心Oで支持するためには、その支持部先端QB1が光学中心Oよりも突出している必要があり、光学中心Oが器具本体QAの出射面QA1に設定されている場合には、出射面QA1よりも支持部先端QB1が突出することになる。すなわち、この場合、
図5(B)に示すように、器具本体QAの出射面QA1から出射した照明光は、回転軸QCの軸方向QCAに拡がる光成分が支持部先端QB1によって遮蔽されるため、かかる照明光では、軸方向QCAに長い照射範囲を照明することができない。特に、道路や街路を照明する照明器具は、軸方向QCAを道路の交通方向と一致させて設置されており、かかる照明光では交通方向の照射範囲が狭くなってしまい、それを補うためには、交通方向における照明器具の配置間隔を狭める必要が生じ、灯数の増加を招くこととなる。
【0024】
これに対し、本実施形態の取付板6は、筐体2を回転自在に支持する位置が光学中心Oよりも取付面A1に近い位置であり、なおかつ、筐体2を回転させた場合でも取付距離Lが一定になるように構成されているため、交通方向に長い範囲を照明することができ、また、光源交換時に取付角度を大きく変更したとしても、トンネル照明器具1の照明特性が変わることなく維持される。
また、かかる取付板6によれば、照明設計において、取付角度を変更するごとに光学中心O、または、取付位置をずらす必要がないため、照明設計の手間が抑えられる、という効果も奏する。
【0025】
図6は、かかる取付板6を備えたトンネル照明器具1の側面図であり、
図7はトンネル照明器具1の回転の様子を示す図である。なお、これら
図6および
図7は概略図であり、筐体2および取付板6の寸法は
図1および
図2と異なっており、またワイヤ通し孔9の図示も省略している。
取付板6には、
図1および
図6に示すように、略矩形板状の金属板の一端部をL字状に折り曲げて固定部6Aを形成した部材であり、他端側の先端部6Bよりも出射面1Aおよび光学中心Oが上方に位置するように筐体2を回転自在に支持する位置に、第1ガイド孔70および第2ガイド孔72の2つのガイド孔が形成されている。また器具本体である筐体2の端部には、筐体2の横方向(長手方向)に平行に延びる2本の第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBが設けられており、これら第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBがそれぞれ、第1ガイド孔70および第2ガイド孔72に係合している。そして、筐体2の回転時に、第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBが第1ガイド孔70および第2ガイド孔72にガイドされることで、
図7に示すように、回転角度θによらず取付距離Lを一定に維持するように、筐体2が取付面A1に対して移動するようになっている。なお、本実施形態において、回転角度θは取付面A1に垂直な垂直方向UBと照射方向Vとの間の角度である。
【0026】
第1ガイド孔70は、
図6に示すように、筐体2と取付面A1との離間距離を可変する方向(以下、「取付距離可変方向UA」という)に延び、当該取付距離可変方向UAへの筐体2の移動をガイドする長孔である。なお、この取付距離可変方向UAは、通常、垂直方向UBである。
第2ガイド孔72は、第1ガイド孔70よりも取付面A1に近い側に設けられ、筐体2の回転をガイドする長孔であり、筐体2の回転に伴う光学中心Oの移動を打ち消すように、第1ガイド軸2GAを第1ガイド孔70内で移動させる弧状(曲線状)を成している。
【0027】
これにより、筐体2の回転時には、
図7に示すように、第2ガイド軸2GBが第2ガイド孔72に沿って移動することで回転角度θが可変するとともに、当該回転に応じた量だけ第1ガイド孔70内を第1ガイド軸2GAが移動することで、取付距離Lが一定に維持される。
【0028】
かかる第1ガイド孔70および第2ガイド孔72は、例えば、次のように設計される。
先ず、光学中心Oから第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBまでの距離TA、TB(
図6)をそれぞれ求める(第1ステップ)。
次いで、
図8に示すように、光学中心Oを中心に、回転角度θをゼロ度から最大回転角(図示例では30°)の間で複数の角度(例えば回転角度θ=10°、20°および30°)に回転させたときの第1ガイド軸2GAの位置(または、その軌跡TMA)に基づいて、それぞれの回転角度θごとに、第1ガイド軸2GAの取付距離可変方向UAへの移動量δを求める(第2ステップ)。
【0029】
そして、
図9に示すように、回転角度θ=ゼロ度のときの第1ガイド軸2GAの位置PAから取付距離可変方向UAに沿って取付面A1から離間する方向に、移動量δの最大値だけ移動可能な長さの直線NAを求め、この直線が第1ガイド孔70の長孔となる(第3ステップ)。
【0030】
次いで、所定の回転角度θに対応する移動量δだけ取付面A1から離間する方向に第1ガイド軸2GAを第1ガイド孔70に沿って移動した後、その第1ガイド軸2GAを中心に、所定の回転角度θだけ回転したときの第2ガイド軸2GBの位置を求める(第4ステップ)。この第4ステップでは、複数の所定の回転角度θについて第2ガイド軸2GBの位置が求められる。
そして、
図9に示すように、複数の第2ガイド軸2GBの位置をつないだ曲線NBが第2ガイド孔72となる。なお、かかる曲線NBは、第1ガイド孔70と第2ガイド孔72との間に中心が位置し、回転角度θ=0のときの第2ガイド軸2GBを通る円弧と近似した形状となる。
【0031】
なお、第1ガイド孔70の長手方向の長さは、次式(1)によって表される第1移動量δvに基づいて決定してもよい。第1移動量δvは、取付面A1に垂直な方向における第1ガイド軸2GAの移動量である。
【0032】
δv=(TB-WA)(1-cosθ) (1)
ただし、θは回転角度、WAは第1ガイド軸2GAと第2ガイド軸2GBとの距離、TBは光学中心Oから第2ガイド軸2GBまでの距離である。
【0033】
また第2ガイド孔72の曲線NBは次式(2)の楕円曲線で表すことができ、この式にしたがって第2ガイド孔72を形成してもよい。
【0034】
x2/(WA)2+y2/(TB)2=1 (2)
ただし、x、yは、取付面A1と平行な方向をx軸とし、x軸に垂直な方向をy軸とする直交座標の変数である。
【0035】
これら式(1)および式(2)は、
図6をもとに(より具体的には
図6のパラメーターTB,WAと,回転角θとから)幾何学的な解析手法を用いて導出されたものである。
【0036】
ところで、筐体2を回転させた場合、
図7に示すように取付距離Lは一定に維持されるものの、何ら対策を施さなければ、光学中心Oが側面視で回転方向へ、取付面A1に平行に移動する。そこで、本実施形態の取付板6は、光学中心Oが移動する方向へ筐体2を取付面A1に平行に移動可能にするための構成を備えている。
具体的には、取付板6は、前掲
図1に示すように、固定孔80が設けられた板状の固定部6Aを有し、この固定部6Aが固定孔80に通されたボルト82(
図10)によって取付面A1に固定される。そして、この固定孔80が、筐体2の回転方向UCに長手方向を有する長孔に形成されている。これにより、
図10に示すように、筐体2を回転させた場合に、光学中心Oの回転方向UCへの移動を打ち消すように、固定部6Aを固定孔が80に沿って移動させることで、筐体2の回転前の位置に光学中心Oを配置できる。
【0037】
なお、回転角度θ=ゼロの状態から筐体2が正転方向および逆転方向のそれぞれに同じ最大回転角だけ回転する構成である場合、かかる固定孔80の長手方向の長さ(すなわち、回転方向UCへの筐体2の最大移動量)は、正転方向および逆転方向のいずれか一方向に最大回転角だけ回転させたときに、取付面A1に平行な方向に光学中心Oが移動する量(以下、第2移動量δhという)の少なくとも2倍の長さであればよい。
なお、第2移動量δhは、次式(3)によって表される。
δh=(TB-WA)sinθ (3)
【0038】
これにより、筐体2を最大回転角だけ回転させた場合でも、回転前の位置に光学中心Oを配置できる。
【0039】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0040】
本実施形態の取付板6は、取付距離可変方向UAに筐体2を、当該筐体2の回転に応じた移動量δだけ移動させることで、当該筐体2に設定された光学中心Oから取付面A1までの距離である取付距離Lを一定に維持するように構成されている。
この構成により、筐体2の回転前後で取付面A1から光学中心Oまでの距離を一定に保つことができる。これにより、トンネル照明器具1ごとに専用の取付金具を用意する必要がなく、汎用的に使用することできる。
【0041】
本実施形態の取付板6は、筐体2に設けられた第1ガイド軸2GAが係合し、取付距離可変方向UAへの筐体2の移動をガイドする第1ガイド孔70と、筐体2に設けられた第2ガイド軸2GBが係合し、当該筐体2の回転をガイドする第2ガイド孔72と、を備える。
これら第1ガイド孔70および第2ガイド孔72を備えることで、筐体2の回転時には、第2ガイド軸2GBが第2ガイド孔72に沿って移動することで回転角度θが可変するとともに、当該回転に応じた量だけ第1ガイド孔70内を第1ガイド軸2GAが移動することで、取付距離Lが一定に維持される。
【0042】
本実施形態の取付板6において、第2ガイド孔72は、上記式(1)の楕円曲線によって表してもよいため、長孔形状を簡単かつ正確に求めることができる。
【0043】
本実施形態の取付板6において、第1ガイド孔70は、取付距離可変方向UAに延びる長孔であり、当該長孔の長さは、上記式(2)によって表される移動量δに基づいて決定してもよいため、その長さを簡単かつ正確に定めることができる。
【0044】
本実施形態の取付板6は、筐体2の回転に伴う光学中心Oの移動を打ち消す方向(すなわち回転方向UC)へ移動可能に構成されているため、回転前後で光学中心Oを同じ位置に配置できる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る取付板106について説明する。
図11は、本実施形態の取付板106の構成を示す図である。また
図12は、取付板106によってガイドされながら回転する筐体2の様子を示す図である。なお、これら
図11および
図12は、
図6および
図7と同様に概略図である。また、これら同10および
図12において、第1実施形態で説明したものは同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の取付板106は、筐体2の回転をガイドする第2ガイド孔172が、取付距離可変方向UAに筐体2をガイドする第1ガイド孔170よりも光学中心Oの側に設けられている点で第1実施形態の取付板6と構成を異にしている。また、筐体2においても、第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBの位置関係は第1実施形態と逆になっている。
【0046】
そして、筐体2の回転時には、
図12に示すように、第2ガイド軸2GBが第2ガイド孔172に沿って移動することで回転角度θが可変するとともに、当該回転に伴って、第1ガイド孔170内を第1ガイド軸2GAが移動することで取付距離Lが一定に維持される。
【0047】
かかる第1ガイド孔170および第2ガイド孔172は、例えば、次のように設計される。
先ず、第1実施形態と同様に、光学中心Oから第1ガイド軸2GAおよび第2ガイド軸2GBまでの距離TA、TBをそれぞれ求め(第1ステップ)、光学中心Oを中心に、回転角度θをゼロ度から最大回転角の間で複数の角度に回転させたときの第1ガイド軸2GAの位置に基づいて、それぞれの回転角度θごとに、第1ガイド軸2GAの取付距離可変方向UAへの移動量δを求める(第2ステップ)。そして、
図13に示すように、回転角度θ=ゼロ度のときの第1ガイド軸2GAの位置PAから取付距離可変方向UAに沿って取付面A1から離間する方向に、移動量δの最大値だけ移動可能な長さの直線NAを求め、この直線が第1ガイド孔70の長孔となる(第3ステップ)。
【0048】
次いで、
図13に示すように、光学中心Oに中心が位置し、回転角度θ=0のときの第2ガイド軸2GBを通る円弧を求める。この円弧が第2ガイド孔72となる。
【0049】
なお、第1ガイド孔70の長手方向の長さは、次式(4)によって表される上記第1移動量δvを用いて決定してもよい。
【0050】
δv=(TB+WA)(1-cosθ) (4)
ただし、θは回転角度、WAは第1ガイド軸2GAと第2ガイド軸2GBとの距離、TBは光学中心Oから第2ガイド軸2GBまでの距離である。
【0051】
本実施形態の取付板106によっても、第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0052】
なお、本実施形態においても取付板106は、第1実施形態で説明した固定部6Aを有し、筐体2を回転方向UCへ移動可能に構成されている。この場合、第1実施形態で説明した第2移動量δhは、次式(5)によって表される。
δh=(TB+WA)sinθ (5)
【0053】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る取付板206について説明する。
図14は、本実施形態の取付板206の構成を示す図である。なお、同図において、第1実施形態で説明したものは同一の符号を付し、その説明を省略する。
同図に示すように、本実施形態の取付板206は、筐体2に設けられた第1ガイド軸2GAが係合する第1ガイド孔270と、筐体2に設けられた第2ガイド軸2GBが係合する第2ガイド孔272との2つのガイド孔を備え、第1ガイド孔270が垂直方向UB(取付距離可変方向UA)に延在する長孔であり、第2ガイド孔272が中央部272Aよりも両端部272Bのほうが取付面A1から離間する方向に曲がった弧状の長孔である点で第1実施形態と共通するものの第2ガイド孔272の形状が第1実施形態と異なっている。
【0054】
詳述すると、第1ガイド孔270において、取付面A1に近い側の第1端部270Aは、回転角度θがゼロ度のときの第1ガイド軸2GAの位置に対応し、光学中心Oに近い側の第2端部270Bは、回転角度θが最大回転角θmax(図示例では30度)のときの第1ガイド軸2GAに対応している。
【0055】
一方、第2ガイド孔272において、中央部272Aは、回転角度θがゼロ度のときの第2ガイド軸2GBの位置PS1に対応し、両端部272Bのそれぞれは、正転方向および逆転方向のそれぞれへの回転角度θが最大回転角θmax(図示例では30度)のときの第2ガイド軸2GBの位置PS2に対応し、中央部272Aの位置PS1と、両端部272Bのそれぞれの位置PS2との3点を通る真円290の一部(円弧)が第2ガイド孔272の長孔形状に相当している。なお、位置PS1、PS2は第2ガイド軸2GBの軸中心点であり、第2ガイド孔272は、真円290の円弧に沿って第2ガイド軸2GBが移動可能な幅を短手方向に有した長孔に形成される。
【0056】
このように、本実施形態では,第2ガイド軸2GBをガイドする第2ガイド孔272が楕円で定義された長孔ではなく、上記真円290によって規定された長孔となっている。
この真円290の半径は、筐体2の回転に伴って第1ガイド軸2GAが第1ガイド孔270内を垂直方向UB(取付距離可変方向UA)に移動するため、第1ガイド軸2GAを一点に固定して筐体2を回転させたときに第2ガイド軸GBが描く円弧の半径(=第1ガイド軸2GAと第2ガイド軸2GBとの距離WA)よりも小さくなっている。
【0057】
そして本実施形態では、第2ガイド孔272が真円290の円弧形状であり、第1実施形態および第2実施形態のような楕円形状ではないため、筐体2の回転に伴って、光学中心Oが垂直方向UBに移動する。
しかしながら、トンネル照明で要求されるような寸法で通常に照明器具が光学設計される限りにおいては、正転方向および逆転方向のそれぞれへの最大回転角θmaxが30度程度であれば、光学中心Oの垂直方向UBの移動量は、第1ガイド軸2GAと第2ガイド軸2GBの距離WAの1%程度という僅かな量であり、取付面A1などの精度に比べれば、この移動量は十分に許容される範囲に抑えられることとなる。
なお、本実施形態においても取付板206は、第1実施形態で説明した、固定孔80が設けられた固定部6Aを有することで、筐体2を回転方向UC(垂直方向UBに直交する方向:水平方向)へ移動可能に構成されており、当該水平方向への光学中心Oの移動量は、上記固定孔80によって独立して調整できるため、第2ガイド孔272の形状の影響を受けることはない。
【0058】
このように、本実施形態の取付板206によれば、筐体2の回転前後で取付面A1から光学中心Oまでの距離を概ね一定に保つことができる。
また、第2ガイド孔272の長孔が真円290によって規定されるため、楕円によって規定する場合に比べ、設計や形成が容易となる。
【0059】
上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0060】
例えば、本発明に係る照明器具は、トンネル照明器具1に限らず、任意の器具でもよい。
また上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0061】
1 トンネル照明器具(照明器具)
2 筐体(器具本体)
2GA 第1ガイド軸
2GB 第2ガイド軸
6、106、206 取付板(取付金具)
6A 固定部
70、170、270 第1ガイド孔
72、172、272 第2ガイド孔
80 固定孔
272A 第1長辺
272B 第2長辺
A トンネル
A1 取付面
L 取付距離
O 光学中心
UA 取付距離可変方向
UB 垂直方向
UC 回転方向
V 照射方向
δv 第1移動量
δh 第2移動量
θ 回転角度
θmax 最大回転角度