IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大泰化工株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117065
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ゲルコート用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20220803BHJP
   C09D 167/06 20060101ALI20220803BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220803BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20220803BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20220803BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220803BHJP
【FI】
C08F283/01
C09D167/06
C09D4/02
C09D4/00
C09D201/02
C08J7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013552
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】591279054
【氏名又は名称】大泰化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】林 将尊
【テーマコード(参考)】
4F006
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F006AA53
4F006AB42
4F006AB43
4F006AB76
4F006BA02
4F006BA03
4F006BA15
4J038DB361
4J038DD181
4J038FA042
4J038FA112
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA11
4J038NA14
4J038PB05
4J038PB07
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB042
4J127BB071
4J127BB072
4J127BB082
4J127BB092
4J127BB222
4J127BB251
4J127BB261
4J127BC021
4J127BC062
4J127BC151
4J127BC152
4J127BD122
4J127BD131
4J127BD171
4J127BD211
4J127BG042
4J127BG04Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG102
4J127BG10Y
4J127BG121
4J127BG122
4J127BG12Y
4J127BG142
4J127BG14Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG181
4J127BG182
4J127BG18Y
4J127BG192
4J127BG19Y
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127CB061
4J127CB144
4J127CB284
4J127CB342
4J127CB372
4J127CB373
4J127CC092
4J127CC113
4J127CC143
4J127FA02
4J127FA04
4J127FA07
(57)【要約】
【課題】耐擦傷性とともに、耐水性にも優れたFRP成形物等のゲルコートを作製することができる成形性が良好なゲルコート用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル、(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体、(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン、及び、(D)1または2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体を含有するゲルコート用樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル、
(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体、
(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン、及び、
(D)1または2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体
を含有するゲルコート用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステルを20~45重量%、
(B)(メタ)アクリル系単量体を15~45重量%、
(C)ポリロタキサンを0.8~5重量%、及び、
(D)不飽和単量体を20~50重量%
含有する請求項1に記載のゲルコート用樹脂組成物。
【請求項3】
(B)(メタ)アクリル系単量体が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルコキシ変性品から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載のゲルコート用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)ポリロタキサンが(メタ)アクリロイル基を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のゲルコート用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のゲルコート用樹脂組成物を含む塗料。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のゲルコート用樹脂組成物の硬化物からなる層を有する繊維強化プラスチック成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種成形物の表面特性を改良するためのゲルコートに用いられるゲルコート用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルコートは、各種成形物の表面外層として形成される樹脂層であり、優れた意匠性や成形性に加え、化学的、物理的、機械的、電気的特性を有するために様々な用途に利用されている。その主な用途として、浴槽、ユニットバス、洗面カウンター、キッチンカウンターなどの水回り機器や船舶、タンク、車両、レドームなどの屋外使用製品などがある。
【0003】
ゲルコート用樹脂組成物の主成分としては、一般的に不飽和ポリエステル系樹脂が用いられているが、不飽和ポリエステル系樹脂では、ゲルコートの表面硬度は鉛筆硬度でH~2H程度しかないため十分な表面硬度が得られず、耐擦傷特性に劣るという問題点を有していた。そのため、硬度が高いもので擦った時には、容易に擦傷してその美観性を損なってしまうことがあった。
【0004】
耐擦傷特性の改善のために、特許文献1には、(メタ)アクリル系重合体と(メタ)アクリル系単量体を主成分にする(メタ)アクリル系ゲルコートが開示されている。しかしながら、実際のFRP成型物や人造大理石成形物では形状が複雑であり、成型時に造膜性や耐クラック性などの問題があった。
【0005】
特許文献2には、環状分子と、この環状分子を包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置される封鎖基とを有し、直鎖状分子や環状分子が疎水性の修飾基を有する親油性ポリロタキサンからなる硬化型溶剤系クリア塗料が開示されている。しかしながら、ゲルコートを用いた成型物の主用途である浴槽や洗面カウンター等では、過酷な使用条件下で長期間の耐久性が求められるため、耐摩耗性や剥離の問題があった。
【0006】
特許文献3には、ポリロタキサン化合物を用いることで、自動車用着色プラスチックが開示されている。しかしながら、一般的なゲルコート用樹脂組成物に添加しただけでは耐擦傷性の向上が得ることができないという問題があった。
【0007】
特許文献4には、ポリロタキサン化合物と、重合性モノマーと、パーフルオロポリエーテル変性アクリレートと、重合開始剤とを含むコーティング塗膜が開示されている。しかし、ゲルコートの主用途である浴槽や洗面カウンター等の水回り製品では、過酷な使用条件下であり、剥離、耐摩耗性、クラック、耐温水性、耐薬品性などの問題があった。
【0008】
特許文献5には、ポリロタキサン化合物と特定の水酸基及びエーテル基のうちの少なくとも1つを有する単量体を使用する不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されている。しかし、耐温水性や耐薬品性が考慮されておらず、浴槽などの水回り製品や耐薬品性を要求されるタンク等への適用には問題があった。
【0009】
このように、これらの特許文献に開示されたゲルコート用樹脂組成物では、耐擦傷性を改善することができたとしても、耐水性等が不十分であり、繊維強化プラスチック(FRP)成形物等のゲルコートに必要な基本特性を十分に達成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-262012号公報
【特許文献2】特開2007- 99989号公報
【特許文献3】特許2007-106860号公報
【特許文献4】特開2019- 5066号公報
【特許文献5】特開2019- 6924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐擦傷性とともに、耐水性にも優れたFRP成形物等のゲルコートを作製することができる成形性が良好なゲルコート用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、不飽和ポリエステル系樹脂に、3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系多官能単量体とポリロタキサン化合物を併用することにより、耐擦傷性や耐水性などの諸物性と作業性を十分に満足することができるゲルコートが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル、
(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体、
(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン、及び、
(D)1または2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体
を含有するゲルコート用樹脂組成物に関する。
【0014】
(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステルを20~45重量%、
(B)(メタ)アクリル系単量体を15~45重量%、
(C)ポリロタキサンを0.8~5重量%、及び、
(D)不飽和単量体を20~50重量%
含有することが好ましい。
【0015】
(B)(メタ)アクリル系単量体が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルコキシ変性品から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
(C)ポリロタキサンが(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記ゲルコート用樹脂組成物を含む塗料に関する。
【0018】
さらに、本発明は、前記ゲルコート用樹脂組成物の硬化物からなる層を有する繊維強化プラスチック成形品に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるゲルコート用樹脂組成物によれば、十分な耐擦傷性、耐久性、表面硬度を有し、しかも表面の美観や装飾性に優れたゲルコートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明のゲルコート用樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル、(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体、(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン、及び、(D)1または2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体を含有することを特徴とする。
【0022】
<(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル>
[不飽和ポリエステル]
(A)不飽和ポリエステルは、特に限定されず、例えば、α,β-不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの反応で得られたものが挙げられる。α,β-不飽和ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、ヘット酸、あるいは、これらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β-不飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、一般的には反応性や硬化物の諸物性などの観点から、フマル酸又は、マレイン酸及びその無水物が好ましい。
【0023】
α,β-不飽和ジカルボン酸に加えて、必要に応じて飽和ジカルボン酸を併用することができる。飽和ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。これらの飽和ジカルボン酸は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA・アルキレンオキサイド付加物等のグリコール類などのジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類等が挙げられる。これらの多価アルコール類は、単独でも、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐薬品性など諸物性の観点から、プロピレングリコールやネオペンチルグリコール等を使用することが好ましい。
【0025】
必要に応じて樹脂に空気乾燥性を持たせるため、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トロプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2-ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等のアリルエーテル類も使用することができる。
【0026】
さらに、臭素化飽和ジカルボン酸、ジブロムネオペンチルグリコール、臭素化グリコール等のハロゲン化物を選択的に使用することで、得られる樹脂組成物に難燃性能を付与することができる。
【0027】
さらに、得られた不飽和ポリエステル樹脂の分子末端であるカルボキシ基又はヒドロキシ基に、エポキシ基を有するα,β-不飽和カルボン酸エステルやヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものを用いることもできる。また、不飽和ポリエステル樹脂の分子末端のヒドロキシ基に、ポリイソシアネートを反応させて得られる変性不飽和ポリエステル樹脂を用いることもできる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方が含まれることを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方が含まれることを意味する。
【0028】
また、ジシクロペンタジエンを添加し、上記α,β-不飽和ジカルボン酸および多価アルコールと共に反応し得られるジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステルにしてもよい。
【0029】
[ビニルエステル]
本発明で使用する(A)ビニルエステルは、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール類のグリシジルエーテル類として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂類とその臭素化樹脂類、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とその臭素化樹脂類、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂類、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールA・グリシジルエーテル等の多価アルコール類のグリシジルエーテル類、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂類、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、トリグリシジル-p一アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0031】
不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これらの酸は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0032】
さらに、得られたビニルエステル樹脂を、無水マレイン酸、無水コハク酸などの酸無水物類、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル-ジメチル-ベンジルイソシアネートなどのイソシアネート化合物等で変性してもよい。
【0033】
(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステルは、ゲルコート用樹脂組成物中に20~45重量%含まれることが好ましく、25~35重量%がより好ましい。20重量%未満では、硬化乾燥性や成膜性などの観点で不具合を起しやすくなり、45重量%を超えると、耐擦傷性など本発明の特徴が得られない傾向がある。
【0034】
<(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体>
(B)(メタ)アクリル系単量体は特に限定されず、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、3官能ポリエステル(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリル系モノマー、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの4官能以上の(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独でも、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性や硬度向上の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルコキシ変性品が好ましい。重合性不飽和基の個数の上限は、10個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。
【0035】
なお、ジアリルフタレート等の2官能のアリル系モノマーを、(B)(メタ)アクリル系単量体と併用してもよい。
【0036】
(B)(メタ)アクリル系単量体は、ゲルコート用樹脂組成物中に15~40重量%含まれることが好ましく、20~30重量%がより好ましい。15重量%未満では、耐擦傷性の向上効果が低くなり、40重量%を超えると、物性的に硬くなることや、アクリルモノマーの嫌気性の影響などで、成型作業性に問題が生じる傾向がある。
【0037】
<(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン>
(C)ポリロタキサンは、環状分子の開口部を直鎖状分子が串刺し状に貫通し、環状分子が脱離しないように該直鎖状分子の両端に封鎖基が配置され、さらに、環状分子が少なくとも1種の重合性不飽和基を有する化合物である。
【0038】
重合性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なかでも、得られる硬化物の硬化反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。重合性不飽和基の数を表す(メタ)アクリル当量は、500~5,000g/eqが好ましい。
【0039】
環状分子としては、シクロデキストリン、、クラウンエーテル、ベンゾクラウン、ジベンゾクラウン、ジシクロヘキサノクラウン、及びこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。直鎖状分子鎖の包接能の観点から、環状分子は、好ましくはシクロデキストリン又はこれの誘導体若しくは変性体である。クラウンエーテル、ベンゾクラウン、ジベンゾクラウン、ジシクロヘキサノクラウン、及びこれらの誘導体又は変性体などが挙げられる。一方、直鎖状分子としては、ポリアルキレン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリアミド鎖、ポリアクリレート鎖などが挙げられる。なかでも、環状分子への貫通性が良好となり、優れた効果が得られるという点で、ポリエーテル鎖のポリエチレングリコール鎖が好ましい。封鎖基としては、アダマンチル基、シクロデキストリンを含む基、アントラセン基、トリフェニレン基、ピレン基、トリチル基及びこれらの異性体、誘導体などが挙げられる。
【0040】
(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン全体の重量平均分子量Mwは、100,000~1,000,000が好ましく、150,000~500,000がより好ましい。また、ポリロタキサンの軸となるポリマーの重量平均分子量Mwは、5,000~50,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。
【0041】
(C)ポリロタキサンとしては市販品を使用することができ、例えば株式会社アドマンスト・ソフトマテリアル製のセルムスーパーポリマーSM/SAシリーズが挙げられる。ポリロタキサンは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(C)ポリロタキサンは、ゲルコート用樹脂組成物中に0.5~5重量%含まれることが好ましく、1~3重量%がより好ましい。0.5重量%未満では、クラック抑制効果が得られず、5重量%を超えると、ポリロタキサンの影響により求める耐擦傷性が得られなくなる傾向にある。
【0043】
<(D)1又は2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体>
(D)不飽和単量体は特に限定されず、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー等が挙げられる。これらの不飽和単量体は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0044】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、コストと硬化物の物性の観点から、スチレンが好ましい。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、1個の重合性不飽和基を有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの塩基性(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、2個の重合性不飽和基を有するモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、粘度低減効果と硬化反応性の観点から、1個の重合性不飽和基を有するモノマーが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】
(D)不飽和単量体は、ゲルコート用樹脂組成物中に25~50重量%含まれることが好ましく、30~45重量%がより好ましい。25重量%未満では、粘度が高く作業性に影響を及ぼし、50重量%を超えると、硬化性や物性面から本発明の目的の物性を得ることができなくなる傾向がある。(D)不飽和単量体は、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステルに予め含有された形で供給されてもよい。
【0047】
泡抜け、レベリングなど塗装作業性を考慮すると、ゲルコート用樹脂組成物の粘度がB型粘度計において、100~160mPasとなるように調整することが好ましい。
【0048】
<その他の成分>
本発明のゲルコート用樹脂組成物には、硬化剤(硬化触媒)、硬化促進剤、揺変化剤、揺変化助剤、消泡剤、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを添加してもよい。
【0049】
硬化剤は特に限定されるものではないが、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカボネート系などといった有機過酸化物系の硬化剤を挙げることができる。
【0050】
より具体的には、たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、アセト酢酸エステルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ラウリルパーオキサイドなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0051】
硬化剤の添加量は、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル100重量部に対して0.5重量部~5量部が好ましく0.7~3重量部がより好ましい。
【0052】
硬化促進剤としては特に限定されるものではないが、具体的には、たとえば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、2価のアセチルアセトンコバルト、3価のアセチルアセトンコバルト、カリウムヘキソエート、オクテン酸ジルコニウム、オクテン酸コバルト、ジルコニウムアセチルアセトナート、ナフテン酸バナジウム、オクチル酸バナジウム、バナジウムアセチルアセトナート、酸化バナジウムアセチルアセトナート、リチウムアセチルアセトナートなどの金属石鹸(高級有機酸金属塩);ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどのアミン類;含リン化合物;β-ジケトン類などを挙げることができる。中でも、オクテン酸コバルト又はオクチル酸コバルトが好ましい。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0053】
硬化促進剤の添加量は、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル100重量部に対して0.01重量部~5重量部が好ましく、0.1~1重量部がより好ましい。硬化促進剤は、予め(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル中に添加しておいてもよく、硬化剤添加の直前に添加してもよい。
【0054】
揺変化剤も、ゲルコート用樹脂組成物に必要とされる粘度、揺変性を与えるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、たとえば、シリカ粉末、タルク粉末、マイカ粉末、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト、有機系の揺変化剤などが挙げられる。
【0055】
揺変化剤の市販品としては、ヒュームドシリカ:レオロシールQSシリーズ(株式会社トクヤマ製)、アエロジルシリーズ(日本アエロジル株式会社製)、BENATHIXシリーズ(コネル・ブラザーズ・ジャパン株式会社製)、CLAYTONEシリーズ(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、タルクMS、MLシリーズ(富士タルク工業株式会社製)、などがある。
【0056】
揺変化剤の添加量は、ゲルコートを塗布する物体の形状、特に垂直面の高さ、面積、形状や、塗布されるゲルコートの厚み、雰囲気温度、樹脂組成物または樹脂組成物に含まれる樹脂(重合体)の性状にもよるが、当該ゲルコート用樹脂組成物に必要とされる粘度によって規定することができる。樹脂組成物の粘度は、0.5~3Pa・sが好ましく、1.0~2.7Pa・sがより好ましく、1.5~2.5Pa・sがさらに好ましい。また、揺変度(6rpmと60rpmとの粘度比)が4.0~7.0となるような量で添加されることが好ましい。ここで、粘度は、BM型粘度計4号ローター、25℃、60rpmの条件で測定することができる。
【0057】
揺変化助剤は、ゲルコート用樹脂組成物の性状にもよるが、添加することによって、上記揺変化剤の添加量を少なくすることができる上に、該樹脂組成物の各種物性を向上させることができるものである。
【0058】
揺変化助剤としては、たとえば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有する単官能または多官能(メタ)アクリレート類((B)成分に該当するものを除く);ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有するエポキシエーテル類;ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有するエポキシエステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートなどの界面活性剤類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0059】
また、各種チキソ性増加剤、安定剤なども揺変化助剤として使用できる。チキソ性増加剤、安定剤の市販品としては、たとえばBYK R605、BYK410(ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
各揺変化助剤の添加量は、ゲルコート用樹脂組成物の性状や、揺変化助剤の種類にもよるが、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル100重量部に対して0.001~5重量部が好ましく、0.01~3重量部がより好ましい。
【0061】
消泡剤も特に限定されるものではないが、たとえば、BYK A-515、BYK A-555、BYK A-501(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、EFFKA2720(BASF社製)などのシリコーンを含まない破泡性ポリマー溶液(非シリコーン系消泡剤);ディスパロンAPシリーズ、OXシリーズ、Lシリーズ(楠本化成株式会社製)などのシリコーン系消泡剤;SHシリーズ(信越化学株式会社製)などが挙げられる。消泡剤の添加量は、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル100重量部に対して0.001~2.0重量部が好ましい。
【0062】
顔料は、ゲルコートの装飾性、美観性、あるいは耐候性の向上などの目的で適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、具体的には、たとえば、酸化チタン白、酸化鉄赤、水酸化鉄黄、縮合アゾレッド、DPPレッド、チタンエロー、コバルトブルー、キナクリドンレッド、カーボンブラック、鉄黒、ペリノン、イソインドリノン、クロームグリーン、シアニンブルー、シアニングリーンなど、一般に着色用途で使用されるものを挙げることができる。また、その添加量も特に限定されるものではない。
【0063】
顔料の添加量は、色調によって異なるが、(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル100重量部に対して1重量部~30重量部が好ましく、3~15量部がより好ましい。
【0064】
紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、耐候性を向上させる目的で適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、紫外線吸収剤としては、たとえばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、紫外線安定剤としては、たとえばヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0065】
他にも、必要に応じて、硬化促進助剤、硬化時間調整剤、補強材、充填剤、改質剤、難燃剤などを添加してもよい。これら添加剤は、ゲルコートの使用目的に応じて適宜選択されるものであって、特にその種類や具体的な化合物が限定されるものではない。
【0066】
また、本発明の塗料は、前記ゲルコート用樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【0067】
ゲルコートは、各種成形物の表面外層として形成される樹脂層である。具体的な用途としては、たとえば浴槽、船舶、タンク、車両、FRP成型物、人工大理石、注型物面の装飾性や美観性などが重視される用途などが挙げられる。浴槽、船舶、タンク、車両などの用途では、温水や屋外に暴露されたり、さまざまな物質と接触することになるため、ゲルコート自身に耐久特性が求められる。具体的には、耐熱性や耐温水性、耐水性、耐薬品性または耐候性などが挙げられ、本発明のゲルコート用樹脂組成物を好適に適用することができる。
【0068】
FRP成型物や人工大理石注型物などの用途では、製造する際にあらかじめ型に塗装して膜を形成するため、成型物の最外層になり、美観や耐久性が求められている。具体的には、ゲルコートが均一に硬化すること、気泡が残らないこと、垂れやムラが発生しないこと、クラックや凹凸などが発生しないことなどの仕上がりなどが挙げられ、本発明のゲルコート用樹脂組成物を好適に適用することができる。
【0069】
表面の装飾性や美観性などが重視される用途では、表面に擦傷などが容易に形成されないように機能することが求められている。具体的には、十分な表面硬度が挙げられ、近年、耐メラミンスポンジ耐性が求められることから、表面硬度として鉛筆硬度で4~5Hが要求され、本発明のゲルコート用樹脂組成物を好適に適用することができる。
【0070】
本発明のゲルコート用樹脂組成物を用いてゲルコート層を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。一般には、本発明のゲルコート用樹脂組成物を、スプレーガンや、はけ、ローラーなどによって被対象物表面に塗布する手法が挙げられるが、塗布される被対象物の材質、形状、表面の状態などによって種々の方法を選択する。なかでも、生産性や汎用性などの点から、スプレーガンが好ましい。スプレーガンのゲルコート供給方式としては、圧送式、重力式、吸上式のものを好適に用いることができる。
【0071】
本発明のゲルコート用樹脂組成物の性状(粘度、揺変化度、硬化性)は、ゲルコートを塗布する物体の形状、特に垂直面の高さ、面積、形状や、塗布されるゲルコートの塗布厚み、雰囲気温度などに応じて各条件を設定(調整)する。組成を調整することで、様々な条件下においても非常に優れたスプレー性・成型性を発揮することができる。
【0072】
さらに、本発明の繊維強化プラスチック成形品は、前記ゲルコート用樹脂組成物の硬化物からなる層を有することを特徴とする。
【0073】
繊維強化プラスチックとしては、たとえばガラス繊維強化プラスチック、カーボンファイバー強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチックなどが挙げられる。これらの強化プラスチックにおけるプラスチックとしては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂の硬化物などが挙げられる。
【0074】
本発明にかかるゲルコート用樹脂組成物を用いて形成されたゲルコートにより、以下の3つの特性が大きく改善される。
耐擦傷特性(擦傷が表面に容易に形成されない特性)
耐久特性 (温水浸漬、屋外暴露、薬品などに暴露された状態でも、当初の状態を保持し続ける特性)
形成特性 (形成過程で、ゲルコートに硬化不良や気泡、クラック、凹凸が生じたりせず、平滑な表面が容易に形成される特性)
【実施例0075】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0076】
<(A)不飽和ポリエステル又はビニルエステル>
(A1)6510(日本ユピカ株式会社製)
(A2)N-325(ジャパンコンポジット株式会社製)
(A3)FG-283(DICマテリアル株式会社製)
(A4)6650(ジャパンコンポジット株式会社)
各製品の内容を下表に示す。これらは、(D)1個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体であるスチレンモノマー(SM)を含有する。
【0077】
【表1】
【0078】
<(B)3個以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル系単量体>
(B1)ライトエステルTMPA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)(3官能単量体)、共栄社化学株式会社製
(B2)ライトアクリレートTMP-A(トリメチロールプロパントリアクリレート)(3官能単量体)とライトアクリレートPE-4A(4官能単量体)の1:1混合物、共栄社化学株式会社製
(B3)PETA(ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート)(3官能単量体と4官能単量体の混合物)、ダイセル・オルネクス株式会社製
(B4)AD-TMP(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)(4官能単量体)、新中村化学工業株式会社製
(B5)DPHA(ペンタエリスリトール(ペンタ/ヘキサ)アクリレート)
(5官能単量体と6官能単量体の混合品)、ダイセル・オルネクス株式会社製
(B6)カヤラードDPEA-12(EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(6官能単量体)、日本化薬株式会社製
【0079】
<(C)重合性不飽和基を有するポリロタキサン>
(C1)セルムスーパーポリマーSA1303P(アドマンスト・ソフトマテリアル社製)
(C2)セルムスーパーポリマーSM2403P(アドマンスト・ソフトマテリアル社製)
(C3)セルムスーパーポリマーSA3403P(アドマンスト・ソフトマテリアル社製)
【0080】
【表2】
【0081】
使用したポリロタキサンの分子構造を図1に示す。環状分子はシクロデキストリンで、直鎖状分子は、ポリエチレングリコールである。図1中、ポリエチレングリコール鎖は点線で表し、シクロデキストリン環は、ポリエチレングリコール鎖を囲む4員環で表している。
【化1】
【0082】
<(D)1又は2個の重合性不飽和基を有する不飽和単量体>
(D1)スチレン
(D2)メタクリル酸メチル
(D3)エチレングリコールジメタクリレート
【0083】
実施例1~14および比較例1~6
表3に示した(A)~(C)の成分に、(D)成分を加えて混合し、B型粘度計の粘度が130±10mPas(25℃)になるよう調整し、ゲルコート用樹脂組成物を作製した。比較例3~6が従来例に該当する。
【0084】
【表3】
【0085】
各実施例で作製したゲルコート用樹脂組成物100部に、揺変化剤としてシリカ粉(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル#200)3部を高速撹拌にて分散混合した後に、顔料として酸化鉄黒(大泰化工株式会社製、商品名:トーナーブラック)10部、硬化促進剤としてオクチル酸コバルト0.3部、ジメチルアニリン(株式会社三星化学研究所製)0.05部、非シリコーン系消泡剤としてBYK A-501(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.2部、硬化時間調整剤としてモノターシャリーブチルハイドロキノン0.005~0.020部を添加して、25℃下での硬化時間を20~30分になるように調整した。
【0086】
さらに、塗装直前に有機過酸化物硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイド、 化薬ヌーリオン株式会社製、商品名:カヤメックM)を1部添加して撹拌し、各種評価のためのゲルコート用塗料作製した。
【0087】
得られたゲルコート用塗料を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0088】
<泡抜性>
ゲルコート用塗料を30cm×30cmのガラス板上に塗布して、25℃下で静置2時間後にガラス板からはがした成型面を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
〇:目視で泡が確認できず、実質上問題がない場合
△:目視で数個の泡が確認できる場合
×:目視で無数の泡が確認できる場合
【0089】
<成膜性>
ゲルコート用塗料を30cm×30cmのガラス板上に塗布して室温静置後15分後、60℃×30分間、加温して硬化させ、室温下に静置した時、目視にて表面の状態を確認した。以下の基準で評価した。
〇:表面が平滑で問題ない場合
×:クラックが発生して実用レベルに達していない場合
【0090】
ガラス板表面のゲルコート用塗料上に、不飽和ポリエステル樹脂100重量部(ジャパンコンポジット(株)製、ポリホープN-33PT)と硬化剤1部(ケトンパーオキサイド系・化薬アクゾ製、カヤメックM)を混合したものを、チョップドストランドマット(日東紡製)、MC450Aを3プライで不飽和ポリエステル樹脂とガラスマットの比率70:30で含浸・脱泡したものを設置し、60℃で2時間加熱後に脱型して、ゲルコート付きFRP板を作製した。得られたFRP板を用いて以下の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0091】
<耐温水性>
FRP板を90℃の温水に300時間接触させた後、ゲルコートの外観を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
〇:試験前と比較して大きな変化がない場合
△:変色および光沢の変化が確認されたが、ある程度実用レベルに達している場合
×:大幅な変色や光沢の変化やフクレなどが確認され、実用レベルに達していない場合
【0092】
<耐候性>
FRP板を用いて、JIS A1415に基づく、サンシャインウェザーメーターを用いた耐候性試験を200時間実施した。ゲルコートの外観を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
〇:試験前に比べてあまり変化がない場合
△:変色および光沢の変化の少なくとも一方が確認されたが、ある程度実用レベルに達している場合
×:大幅な変色および大幅な光沢の変化やひび割れなどが確認され、実用レベルに達していない場合
【0093】
<耐薬品性>
FRP板を1%苛性ソーダ、1%硫酸、飽和水酸化カルシウムに24時間浸漬した後、ゲルコートの外観を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
〇:試験前に比べて変化がない場合
△:わずかな変色や光沢の変化が確認されたが、ある程度実用レベルに達している場合
×:大幅な変色や光沢の変化が確認され、実用レベルに達していない場合
【0094】
<表面硬度>
FRP板を用い、JIS K5600に基づき硬度試験を実施し、鉛筆硬度を測定した。
【0095】
<耐擦傷性>
FRP板を用い、メラミンスポンジ(激落ちくん、レック株式会社製)を100回一定の力で擦り付け、外観を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
〇:試験前に比べて変化がない場合
△:光沢の変化、傷痕が確認されたが、50回まで問題なくある程度実用レベルに達している場合
×:50回でも大幅な光沢の変化と目立つ傷が確認され、実用レベルに達していない場合
【0096】
<バーコル硬度>
ゲルコート用塗料を、3mm厚のシリコン製スペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に流し込み、室温1時間+60℃×2時間硬化させたゲルコート注型板を作製し、バーコル硬度計GYZJ 934-1にて硬度を測定した。繰り返し回数10回の平均を求めた。
【0097】
【表4】
【0098】
<クラック性、型離れ>
実際のミニバスタブの型を用いて、成型後と、積層後の外観を目視で観察し、前述した耐擦傷性の方法にしたがって、外観を目視で確認した。外観観察で、ひび割れがあったものはXで表記した。評価結果を表4に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
複雑な形状を持つミニバスタブにおいて、比較例5の樹脂組成物では、形状追随性に劣り、ゲルコート硬化中にクラック、型離れ等の欠陥が発生し綺麗な成形品を得ることができなかった。また比較例6の樹脂組成物では、成型品を得られたが、メラミンスポンジによる耐擦傷性が発揮できなかった。一方、実施例の樹脂組成物では、形状追随性を有し、クラックや型離れの欠陥もなく、綺麗な成形品を得ることができ、目的の耐擦傷性をえることができた。