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特開2022-117115液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置
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  • 特開-液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117115
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A61F13/15 370
A61F13/15 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013633
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桃瀬 知之
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200EA27
3B200EA30
(57)【要約】
【課題】本発明は、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】搬送装置によって一定方向に搬送される繊維材料からなる資材に液体散布装置から液体を散布することによって、資材に液体を付着させる液体付着方法であって、液体散布装置は、液体を噴霧するノズルを有し、ノズルによる液体の拡散方向を、資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体の付着幅を調整することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって一定方向に搬送される繊維材料からなる資材に液体散布装置から液体を散布することによって、前記資材に前記液体を付着させる液体付着方法であって、
前記液体散布装置は、前記液体を噴霧するノズルを有し、
前記ノズルによる前記液体の拡散方向を、前記資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体の付着幅を調整すること
を含む、液体付着方法。
【請求項2】
前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を設定することで前記液体の散布幅を調整し、
前記散布幅に応じて、前記拡散方向の角度を設定することで前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項3】
前記資材の前記幅方向の中央部には、前記資材の搬送方向に沿って延在する溝が形成されており、
前記液体散布装置は、前記ノズルを複数有し、
複数の前記ノズルは、前記溝より前記幅方向の一端側に前記液体を噴霧する第1ノズルと、前記溝より前記幅方向の他端側に前記液体を噴霧する第2ノズルと、を含んで構成されており、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの前記角度を設定することで前記付着幅を調整する、
請求項1または2に記載の液体付着方法。
【請求項4】
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルを垂直方向に対して前記幅方向の外側に傾けることで、前記付着幅を調整する、
請求項3に記載の液体付着方法。
【請求項5】
前記資材を垂直方向に対して前記幅方向の外側に傾けることで前記付着幅を調整する、
請求項3に記載の液体付着方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体付着方法を用いて吸収性物品に用いる前記資材に液体を付着させる液体付着工程を含む、
吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
繊維材料からなる資材を一定方向に搬送する搬送装置と、
液体を噴霧するノズルを有し、前記搬送装置上の前記資材に向かって前記液体を散布する液体散布装置を備え、
前記ノズルは、前記液体の拡散方向が前記資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定されている、
吸収性物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が知られている。一般的に、吸収性物品は、薄いシート状、マット状等の形状に成形され、着用者が排出した体液を吸収する吸収体を備えている。特許文献1には、吸収体を備える吸収性物品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-213855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の製造工程において、吸収性物品に用いられる資材は、搬送装置によって搬送される。吸収性物品の製造工程では、搬送装置による搬送中の資材に液体を付着する工程が含まれる場合がある。吸収性物品において必要な機能を実現するために、所定の付着幅で資材に液体を付着させる必要がある。しかしながら、液体の付着方法については、具体的な提案がなされていない。
【0005】
本発明は、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、ノズルによる液体の拡散方向を、資材の幅方向に対して斜め方向とした。
【0007】
詳細には、本発明は、搬送装置によって一定方向に搬送される繊維材料からなる資材に液体散布装置から液体を散布することによって、前記資材に前記液体を付着させる液体付着方法であって、前記液体散布装置は、前記液体を噴霧するノズルを有し、前記ノズルによる前記液体の拡散方向を、前記資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体の付着幅を調整することを含む。
【0008】
上記液体付着方法において、前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を設定することで前記液体の散布幅を調整し、前記散布幅に応じて、前記拡散方向の角度を設定することで前記付着幅を調整してもよい。
【0009】
上記液体付着方法において、前記資材の前記幅方向の中央部には、前記資材の搬送方向に沿って延在する溝が形成されており、前記液体散布装置は、前記ノズルを複数有し、複数の前記ノズルは、前記溝より前記幅方向の一端側に前記液体を噴霧する第1ノズルと、前記溝より前記幅方向の他端側に前記液体を噴霧する第2ノズルと、を含んで構成されており、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの前記角度を設定することで前記付着幅を調整してもよい。
【0010】
上記液体付着方法において、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルを垂直方向に対して前記幅方向の外側に傾けることで、前記付着幅を調整してもよい。
【0011】
上記液体付着方法において、前記資材を垂直方向に対して前記幅方向の外側に傾けることで前記付着幅を調整してもよい。
【0012】
また、本発明を吸収性物品の製造方法の側面から捉えることができる。例えば、本発明は、吸収性物品の製造方法であって、上記液体付着方法を用いて吸収性物品に用いる前記資材に液体を付着させる液体付着工程を含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明を吸収性物品の製造装置の側面から捉えることができる。例えば、本発明は、吸収性物品の製造装置であって、繊維材料からなる資材を一定方向に搬送する搬送装置と、液体を噴霧するノズルを有し、前記搬送装置上の前記資材に向かって前記液体を散布する液体散布装置を備え、前記ノズルは、前記液体の拡散方向が前記資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、液体付着方法の概要を示したフローチャートである。
図2図2は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図(その1)である。
図3図3は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図(その2)である。
図4図4は、液体付着方法の概要を示したフローチャートである。
図5図5は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
図6図6は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
図7図7は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
図8図8は、吸収性パッドの平面図である。
図9図9は、吸収性パッドを幅方向に切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0017】
<実施形態>
実施形態に係る液体付着方法について説明する。本実施形態において、吸収性物品の吸収体には、繊維材料からなる資材が用いられる。繊維材料としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維等が挙げられる。資材は、シート状に形成されており、所定サイズに切断されて吸収体として用いられる。この資材は、切断される前における搬送装置による搬送中に液体が付着される。この液体は、例えば、水や薬液等である。例えば、資材上に高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)の粒子を撒く場合には、SAPの粒子を資材へ保持させるために、SAPの粒子を撒く工程の前段階で水や薬液等の液体が資材に付着される。SAPの粒子群は資材に付着された水によって当該資材に保持されるため、SAPの粒子を適切な位置に配置することができる。また、吸収性物品の着用感を向上するために、肌ケア剤や抗菌剤等の薬液が資材に付着される場合もある。
【0018】
吸収性物品において必要な機能を実現するために、所定の付着幅で資材に液体を付着させる必要がある。なお、付着幅は、資材の長手方向(MD方向)に直交する幅方向(CD
方向)における液体の付着幅である。
【0019】
本実施形態に係る液体付着方法は、搬送装置によって一定方向に搬送される資材に液体散布装置から液体を散布することによって、資材に液体を付着させる方法である。液体散布装置は、搬送中の資材に向けて液体を噴霧するノズルを有する。液体は、資材における設計上の所定の付着幅で付着されることが望ましい。例えば、SAPの粒子を資材へ保持させるために資材に液体を付着させる場合には、SAPの粒子の配置幅より液体の付着幅が狭くなるとSAPの粒子の全部を資材に保持させることができなくなってしまう。また、資材に肌ケア剤や抗菌剤等の薬液を付着させる場合には、薬液を必要な領域に付着させることができなくなるため、この薬液による効果が十分に得られなくなってしまう。
【0020】
そこで、本実施形態に係る液体付着方法では、液体散布装置のノズルによる液体の拡散方向を、資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体の付着幅を調整する。本実施形態に係る液体付着方法によれば、ノズルを交換する必要がなく、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る液体付着方法の概要を示したフローチャートである。本実施形態に係る液体付着工程では、ノズルによる液体の拡散方向を、資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体の付着幅を調整する(ステップS101)。液体散布装置は、ノズルの噴出口を頂点とする楕円錐状に液体を散布する。この楕円錐の底面が資材に対する液体の付着範囲であり、底面である楕円状の長軸方向がノズルによる液体の拡散方向となる。本実施形態に係る液体付着方法では、ノズルを回転させることによって、ノズルによる液体の拡散方向を、資材の幅方向に対して斜め方向となる角度に設定する。これにより、ノズルによる液体の拡散方向を資材の幅方向に対して斜め方向とし、液体の付着幅を調整することができる。
【0022】
次に、図2および図3に基づいて、本実施形態に係る液体付着方法についてより詳細に説明する。図2および図3は、本実施形態に係る液体付着方法が用いられる吸収性物品の製造方法に使用される吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。図2は、搬送方向に対して横方向から見た状態を示し、図3は、搬送方向に対して鉛直上方から見た状態を示している。吸収性物品の製造に用いる本製造装置Mは、搬送ラインM1(本願でいう「搬送装置」の一例)、液体散布装置M2を備える。搬送ラインM1は、所謂連続シートである資材Aを一定方向(図中、「搬送方向(MD方向)」である右向き矢印方向)に搬送するコンベアである。資材Aは、繊維材料からなり、所定のサイズに切断されることで吸収性物品の吸収体として用いられる。液体散布装置M2は、資材Aに向けて液体Lを噴霧するノズルNを有し、搬送ラインM1上の資材Aに液体Lを散布する。液体Lが資材Aに向かって散布されることによって液体Lが資材Aに付着される。なお、ノズルNの噴霧圧は、資材Aの搬送速度に応じて所定の付着量で液体が付着されるように、0.01MPa~0.5MPaに調整される。
【0023】
また、液体散布装置M2は、ノズルNの噴出口を頂点とする楕円錐状に液体Lを散布する。図3では、楕円錐の底面が図示されており、実線で示す楕円は、ノズルNによる液体の拡散方向を、資材Aの幅方向(CD方向)に対して斜め方向となる角度に設定した場合の液体Lの散布範囲を示している。この実線の楕円の長軸であるW1が資材Aに対する液体Lの散布幅となり、資材Aでの液体Lの付着幅は図中のW2となる。また、図3において、点線で示す楕円は、ノズルNによる液体の拡散方向を、資材Aの幅方向に設定した場合の液体Lの散布範囲を示している。この点線の楕円の長軸であるW1’が資材Aに対する液体Lの散布幅となり、資材Aでの液体Lの付着幅は図中のW3となる。W2は、W3よりも短く、W1はW1’と同じ長さである。このように、本実施形態に係る液体付着方法は、ノズルNによる液体の拡散方向を資材Aの幅方向(CD方向)に対して斜め方向と
なる角度に設定することで、液体Lの散布幅を一定のW1としたままで、資材Aでの液体Lの付着幅を調整することができる。ノズルNによる液体の拡散方向を資材Aの幅方向(CD方向)に対して斜め方向となる角度が大きいほど、資材Aでの液体Lの付着幅を狭くし、当該角度が小さいほど資材Aでの液体Lの付着幅を広くできる。これにより、本実施形態に係る液体付着方法は、液体Lの付着幅を調整することができるため、所定の付着幅で液体Lを資材Aに付着させることができる。
【0024】
また、液体Lが資材Aからはみ出て散布されると、製造装置Mの搬送ラインM1等に液体Lが付着し、液体Lによって製造装置Mを汚染してしまう虞がある。また、液体Lが資材Aの所定の付着幅からはみ出して散布されたり、液体Lが所定の付着幅よりも狭い幅で散布されたりすると、完成した吸収性物品が設計通りの機能を発揮できなくなる虞がある。しかしながら、本実施形態に係る液体付着方法によれば、液体の付着幅を調整することができるため、所定の付着幅で液体Lを資材Aに付着させることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る液体付着方法によれば、ノズルNによる液体Lの拡散方向を設定することで液体Lの付着幅を調整することができるので、液体Lの付着幅の調整のためにノズルNを交換する必要はなく、液体付着工程の作業効率を上昇することができる。また、本実施形態に係る液体付着方法によれば、液体Lの付着幅の調整のために新規のノズルを準備、購入等をしなくてもよく、低コスト化を図ることができる。
【0026】
また、資材に対する液体の塗布量が多すぎると、資材にカビが生えてしまうといった問題が生じ、液体の塗布量が少なすぎると液体付着による効果を発揮できないため、適切な量の液体を資材に塗布することが必要になる。一方、搬送ラインの搬送速度(製造速度)を大きくすると、搬送ラインの搬送速度が遅い場合と同じ液体の塗布量とするためには液体の噴霧圧を高くする必要があり、この場合には液体の散布幅が広がってしまう。これに対し、本実施形態に係る液体付着方法によれば、搬送ラインの搬送速度を大きくした場合でも、ノズルによる液体の拡散方向の角度を設定することで、液体の噴霧圧を調整せずに液体の付着幅を調整できる。これにより、本実施形態に係る液体付着方法によれば、液体の散布幅が資材からはみ出るのを防止できる。
【0027】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例1に係る液体付着方法について説明する。資材Aにおける液体Lの付着量はノズルNからの液体Lの噴霧圧によって調整可能である。具体的には、噴霧圧を高くすることによって噴霧量を多くし、液体Lの付着量を増やすことができ、噴霧圧を低くすることによって噴霧量を少なくし、液体Lの付着量を減らすことができる。しかしながら、資材を搬送する搬送装置の搬送速度によっても液体Lの付着量が変化してしまう。例えば、噴霧圧が一定の場合には、搬送速度が大きくなるにつれて単位面積当たりの液体Lの付着量は減り、搬送速度が小さくなるにつれて単位面積当たりの液体Lの付着量は増える。このため、単位面積当たりの液体Lの付着量を一定に保つためには、搬送速度に応じて噴霧圧を調整する必要がある。一般的にノズルは、噴霧圧が大きいほど液体Lの散布幅が広くなり、噴霧圧が小さいほど液体Lの散布幅が狭くなるため、噴霧圧を調整すると今度は資材における液体Lの付着幅が変化してしまう。
【0028】
また、吸収性物品の生産速度を増加させるために搬送速度を大きくすると、単位面積当たりの液体Lの付着量が減ってしまうため、液体Lの付着量を一定に保つために噴霧圧を高くすることが考えられるが、噴霧圧を高くすると液体Lの散布幅が広がってしまうために資材における液体Lの付着幅が広がってしまう。また、液体Lの散布幅が広くなりすぎると、資材の幅方向端部の外側に液体Lが散布されてしまう虞もある。
【0029】
また、吸収性物品の生産速度を低下させるために搬送速度を小さくすると、単位面積当
たりの液体Lの付着量が減ってしまうため、液体Lの付着量を一定に保つために噴霧圧を高くすることが考えられるが、噴霧圧を低くすると液体Lの散布幅が狭くなってしまうために資材における液体Lの付着幅が狭くなってしまう。また、搬送速度に応じて適切な付着幅で液体Lを散布できるノズルに交換することも考えられるが、ノズル交換の際には製造装置を一時的に停止させる必要があるため、搬送速度に応じてノズルを交換すると、吸収性物品の生産性が低下してしまう。
【0030】
そこで、本変形例に係る液体付着方法では、搬送装置の搬送速度に応じてノズルの噴霧圧を調整し、この噴霧圧に応じて液体の散布幅を調整する工程を設ける。本変形例に係る液体付着方法によれば、ノズルを交換する必要がなく、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる。
【0031】
図4は、本変形例に係る液体付着方法の概要を示したフローチャートである。本変形例に係る液体付着工程では、まず、搬送ライン(搬送装置)の搬送速度に応じてノズルNの噴霧圧を設定することで液体Lの散布幅を調整する(ステップS201)。次に、ノズルNの噴霧圧、すなわち、液体Lの散布幅に応じて液体Lの拡散方向の角度を設定することで付着幅を調整する(ステップS202)。搬送速度が大きいほどノズルの噴霧圧を高くすることで単位時間当たりにノズルから噴霧される液量を増加させ、搬送速度が小さいほどノズルの噴霧圧を低くすることで単位時間当たりにノズルから噴霧される液量を減少させ、資材の単位面積あたりに散布される液量を一定に保つ。また、ノズルの噴霧圧を高くすると液体の散布幅が広くなり、ノズルの噴霧圧を低くすると液体の散布幅が狭くなる。本実施形態に係る液体付着方法は、ノズルの噴霧圧によって液体の散布幅が変化してもノズルによる液体Lの拡散方向の角度を設定することで資材における液体の付着幅を調整することができる。
【0032】
また、本変形例では、搬送ラインの搬送速度と資材への噴霧量(噴霧総量)とに基づいて噴霧圧を設定し(ステップS201)、噴霧圧に応じてノズルによる液体Lの拡散方向を調整してもよい(ステップS202)。
【0033】
<変形例2>
次に、本実施形態の変形例2に係る液体付着方法について説明する。本変形例では、資材Aの幅方向の中央部に搬送方向に沿って延在する溝が形成されている場合の液体付着方法について説明する。図5は、搬送方向に対して鉛直上方から見た場合の、本変形例に係る液体付着方法が用いられる吸収性物品の製造方法に使用される吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
【0034】
図5に示されるように、資材Aの幅方向の中央部には、資材Aの搬送方向に沿って延在する溝Sが形成されている。また、液体散布装置M2は、液体Lを噴霧するノズルを複数有する。複数のノズルは、溝Sより幅方向の一端側(搬送方向左側)に液体Lを噴霧するノズルNL(本願でいう「第1ノズル」に相当)と、溝Sより幅方向の他端側(搬送方向右側)に液体Lを噴霧するノズルNR(本願でいう「第2ノズル」に相当)とで構成されている。また、図5では、ノズルNL,NRから楕円錐状に散布される液体Lの楕円錐の底面を図示して説明するために、液体散布装置M2、およびノズルNL,NRを点線で図示している。本変形例に係る液体付着方法は、ノズルNL,NRによる液体の拡散方向を資材Aの幅方向(CD方向)に対して斜め方向となる角度に設定することで、液体Lの散布幅を一定のW11としたままで、資材Aでの液体Lの付着幅W12を調整することができる。
【0035】
また、溝S内は、資材Aにおける設計上の液体散布範囲外であるので、液体Lが散布されるのは、製造装置Mの搬送ラインM1が液体Lで汚染されてしまうので望ましくない。
また、資材Aがティッシュペーパなどのシート材(例えば、コアラップシート)で被覆されている場合には、溝Sと重なる部分のシート材に液体Lが散布されるとシート材の破れが生じる虞があり望ましくない。また、この場合、シート材は、溝S内の下側で資材Aの荷重がかかり、シート材はこの部位が液体Lで濡れてしまうと破れやすくなる。そこで、本変形例では、液体散布装置M2は、溝Sより幅方向の一端側に液体Lを噴霧するノズルNLと、溝Sより幅方向の他端側に液体Lを噴霧するノズルNRとを有する。本変形例に係る液体付着方法は、ノズルNL,NRによる液体Lの拡散方向を、資材Aの幅方向に対して斜め方向となる角度に設定することで液体Lの付着幅を調整できる。これにより、資材Aの溝S内に液体Lが散布されないようにすることができる。
【0036】
<変形例3>
次に、本実施形態の変形例3に係る液体付着方法について説明する。本変形例では、資材Aの幅方向の中央部に搬送方向に沿って延在する溝Sが形成されている場合の液体付着方法について説明する。図6は、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合の、本変形例に係る液体付着方法が用いられる吸収性物品の製造方法に使用される吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
【0037】
本変形例では、上記変形例2と同様に、液体散布装置M2がノズルNL,NRを有する。本変形例に係る液体付着方法では、ノズルNL,NRを垂直方向に対して資材Aの幅方向の外側(CD方向の外側)に傾けることで、液体Lの付着幅を調整する。本変形例のように、ノズルNL,NRを幅方向の外側に傾けることで、幅方向の内側よりも幅方向の外側への液体Lの散布幅を広くすることができ、これによって、資材Aの溝S内に液体Lが散布されるのを抑制できる。
【0038】
<変形例4>
次に、本実施形態の変形例4に係る液体付着方法について説明する。本変形例では、資材Aの幅方向の中央部に搬送方向に沿って延在する溝が形成されている場合の液体付着方法について説明する。図7は、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合の、本変形例に係る液体付着方法が用いられる吸収性物品の製造方法に使用される吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
【0039】
本変形例では、上記変形例2と同様に、液体散布装置M2がノズルNL,NRを有する。また、本変形例に係る製造装置Mは、資材Aを垂直方向に対して幅方向の外側に傾けるガイドGを備える。ガイドGは、搬送ラインM1上に設置されており、資材Aの溝Sの形成領域である幅方向の中央部を載せる平坦部G1と、溝Sより資材Aの幅方向の外側を載せ、溝Sより資材Aの幅方向の外側を垂直方向に対して幅方向の外側に傾ける傾斜部G2と、を有する。本変形例に係る液体付着方法では、資材Aを垂直方向に対して幅方向の外側(CD方向の外側)に傾けることで、液体Lの付着幅を調整する。本変形例のように、ノズルAを幅方向の外側に傾けることで、幅方向の内側よりも幅方向の外側への液体Lの散布幅を広くすることができ、これによって、資材Aの溝S内に液体Lが散布されるのを抑制できる。
【0040】
以上の通り、本実施形態に係る液体付着方法によれば、液体Lの付着幅を調整することができるので、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる。また、本実施形態に係る液体付着方法は、吸収性物品に用いられる資材に液体を付着させる液体付着工程に用いることができる。このため、本実施形態に係る液体付着方法は、吸収性物品の製造方法に用いることができる。
【0041】
上記の製造方法を利用した吸収性物品の一例として、吸収性パッドついて説明する。本実施形態では、吸収性パッドについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部
に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、吸収性パッドが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0042】
図8は、吸収性パッド1を肌面側から見た平面図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、装着状態において着用者の腹部側に位置する前身頃領域3、股下に位置する股下領域5、及び背部側に位置する後身頃領域7を備えている。吸収性パッド1は、長手方向に見て、前身頃領域3、股下領域5及び後身頃領域7に区分される。なお、長手方向に直交する方向が吸収性パッド1の幅方向(短手方向)となる。吸収性パッド1は、平面視において、股下領域5に最も狭い横幅を有しており、股下領域5がくびれた瓢箪形状を有している。
【0043】
なお、以下では、吸収性パッド1を長手方向に見た場合に、相対的に前身頃領域3側を「前」や「前側」や「前方」や「腹部側」と称し、相対的に後身頃領域7側を「後」や「後側」や「後方」や「背部側」と称し、後側から前側に向かって相対的に左側を「左」や「左側」や「左方」と称し、後側から前側に向かって相対的に右側を「右」や「右側」や「右方」と称する。なお、吸収性パッド1の前後方向は長手方向となり、吸収性パッド1の左右方向は幅方向となる。また、前後左右方向に直交する方向が吸収性パッド1の厚み方向となる。
【0044】
図8に示すように、吸収性パッド1は、装着状態における肌面側に配置されたトップシート11を備えている。トップシート11は、吸収性パッド1の装着状態において着用者の肌に接する部分(肌面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている。トップシート11には、具体的には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0045】
また、吸収性パッド1は、装着状態における肌面の反対側に配置されたバックシート13を備えている。バックシート13は、肌面と反対の非肌面(外表面)となる部分であり、尿等の液体を透過しない液不透過性の材料で形成されている。バックシート13には、具体的には、ポリエチレン樹脂で形成された液不透過性のフィルムが用いられる。なお、バックシート13には、液不透過性を維持しつつ装着状態での蒸れを防ぐための通気性を得るために、0.1~4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0046】
トップシート11とバックシート13とは、夫々の周縁部が互いに接合されている。また、吸収性パッド1は、トップシート11とバックシート13との間に配置され、尿などの液体を吸収する吸収体14を備えている。吸収体14は、トップシート11側に配置された上層吸収体15と、バックシート13側に配置された下層吸収体17とを有している。上層吸収体15は、平面視において、吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有している。下層吸収体17は、トップシート11側から見て上層吸収体15の下方に配置されており、平面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる長方形状を有している。また、平面視において、上層吸収体15は、下層吸収体17よりも大きく形成されている。吸収性パッド1は、尿等の液体が排泄されたときに相対的に大きく、トップシート11側
に配置された上層吸収体15により尿を迅速に吸収することができる。なお、吸収体14の長手方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の長手方向であって、吸収性パッド1の長手方向と一致している。また、吸収体14の幅方向は、上層吸収体15及び下層吸収体17の幅方向であって、吸収性パッド1の幅方向と一致している。
【0047】
上層吸収体15及び下層吸収体17には、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプや、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)、親水性シート等やこれらを組み合わせたものが用いられる。また、SAPは、自重の10~100倍程度の液体を吸収する。SAPには、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられる。
【0048】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15を厚さ方向に貫通して形成された溝21を備えている。溝21は、吸収体14のトップシート側(上層吸収体15)に着用者の排尿位置となる尿道口対応領域を含んで吸収体14の長手方向に延び且つ吸収体14の幅方向中央部に形成されている。
【0049】
また、吸収性パッド1は、上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置されたSAP層23L、23Rを有している。SAP層23L、23Rは、高吸収性重合体(SAP)の粒子が複数集まって形成されている。SAP層23L、23Rは、SAPの粒子を複数含み、上層吸収体15と下層吸収体17との間に導かれた液体を吸収して保持することができる。図8に示すように、溝21の左方にはSAP層23Lが配置され、溝21の右方にはSAP層23Rが配置されている。このように、SAP層23L、23Rは、溝21の長手方向に沿うように溝21の両側に配置されている。また、平面視において、SAP層23L、23Rは、長方形状に形成されている。なお、SAP層23L、23Rは、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0050】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収体15、下層吸収体17、溝21、SAP層23L、23Rを備えている。上層吸収体15、下層吸収体17、溝21及びSAP層23L、23Rの長手方向は一致している。また、溝21とSAP層23L、23Rとは、互いに略平行に配置されている。
【0051】
また、吸収性パッド1は、肌面側から見て下層吸収体17の左右端部に沿って立体ギャザー(不図示)が配置されている。立体ギャザーは、トップシート11に接合されており、液体の横漏れを抑制する。
【0052】
図9は、図8に示す吸収性パッド1をA-A線で切断した場合の断面図である。なお、図9において、吸収性パッド1の各構成要素を分かりやすくするために、各構成要素間に隙間を設けて図示しているが、実際には各構成要素間には隙間はほとんど形成されない。
【0053】
図9に示すように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体を包むコアラップシート30(図8において不図示)を備えている。コアラップシート30は、上層吸収体15側に配置された上層シート31と、下層吸収体17側に配置された下層シート33と、を有している。上層シート31は、トップシート11と上層吸収体15との間に配置されており、下層シート33は、バックシート13と下層吸収体17との間に配置されている。また、下層シート33は、上層吸収体15及び下層吸収体17の側面部を被覆する部分を有し、トップシート11と上層吸収体15との間まで引き回されており、トップシート11と上層吸収体15との間において上層シート31に接合されている。このように、上層シート31と下層シート33は互いに接合されて一体的となっており、上層吸収体15及び下層吸収体17の全体を包んでいる。上層シート31、下層シート33には
、例えば、ティッシュペーパのような薄葉紙や不織布等が用いられる。なお、上層シート31と下層シート33は、一体的に形成されていてもよいし、上層吸収体15や下層吸収体17の側面や、バックシート13と下層吸収体17との間で接合されていてもよい。本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体14の全体をコアラップシート30で包むことにより、尿等の液体を吸収体14の表面全体に拡散して吸収体14全体で吸収することができる。
【0054】
SAP層23L、23Rは、下層吸収体17上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層23L、23Rは、上層吸収体15と下層吸収体17との間に挟持されている。このため、着用者の動作により吸収性パッド1が動いた場合であってもSAP層23L、23Rに含まれるSAPの粒子が溝21の下方に移動したり、下層吸収体17外に落ちたりするのを防ぐことができる。
【0055】
また、SAP層23L、23Rを上層吸収体15と下層吸収体17との間に配置することによって、毛細管現象により下層吸収体17のパルプが一旦吸収した尿をSAP層23L、23Rに移動させることができる。これにより、吸収性パッド1は、より尿の保持力が高いSAP層23L、23Rで尿を保持することで、尿の漏出を抑制できる。
【0056】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、肌面側から厚さ方向に見て、トップシート11、上層シート31、下層シート33の一部、上層吸収体15、SAP層23L、23R、下層吸収体17、下層シート33の一部、バックシート13の順に積層された構造を有している。また、トップシート11及びバックシート13の各周縁部が互いに接合されることにより、上層シート31、下層シート33、上層吸収体15、SAP層23L、23R及び下層吸収体17がトップシート11及びバックシート13により周囲が囲まれて封止されている。
【0057】
このような吸収性パッド1の製造工程において、例えば、上述の液体付着方法を用いることができる。例えば、上層吸収体15や下層吸収体17を作成する工程において、上層吸収体15や下層吸収体17用の資材に上述の液体付着方法を用いてよい。上述の液体付着方法を用いた吸収性パッド1の製造方法によれば、上層吸収体15や下層吸収体17用の資材に所定の付着幅で液体を付着させることができる。
【0058】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。また、液体散布装置M2は、液体Lを噴霧するノズルを3基以上有していてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・吸収性パッド
3・・前身頃領域
5・・股下領域
7・・後身頃領域
11・・トップシート
13・・バックシート
14・・吸収体
15・・上層吸収体
17・・下層吸収体
21・・溝
23L・・SAP層
23R・・SAP層
30・・コアラップシート
31・・上層シート
33・・下層シート
M・・製造装置
M1・・搬送ライン
M2・・液体散布装置
N,NL,NR・・ノズル
A・・資材
L・・液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9