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  • 特開-複合型不織布 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117130
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】複合型不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20220803BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20220803BHJP
   D04H 1/593 20120101ALI20220803BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220803BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20220803BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20220803BHJP
   B32B 23/10 20060101ALI20220803BHJP
   B32B 23/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/732
D04H1/593
D04H3/16
D04H5/03
B32B5/26
B32B23/10
B32B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013661
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大場 裕介
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AJ04B
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
4F100AK21A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK48A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100DG02B
4F100DG06B
4F100DG15A
4F100EC03A
4F100GB71
4F100JD02
4L047AA08
4L047AA14
4L047AA16
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA04
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC03
(57)【要約】
【課題】発塵が抑制されている複合型不織布を提供する。
【解決手段】スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブが積層されて一体化されている複合型不織布であって、前記スパンボンド不織布の坪量が7~30g/m、前記パルプ繊維ウエブの坪量が30~100g/mであり、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比が40/60~10/90(wt%)であり、前記スパンボンド不織布の通気抵抗値が0.13kPa・s/m以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブが積層されて一体化されている複合型不織布であって、
前記スパンボンド不織布の坪量が7~30g/m、前記パルプ繊維ウエブの坪量が30~100g/mであり、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比が40/60~10/90(wt%)であり、前記スパンボンド不織布の通気抵抗値が0.13kPa・s/m以下である、ことを特徴とする複合型不織布。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの群から選択された1種類、又は2種類以上の混合である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項3】
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、
前記融着点の単位面積当たりの面積率が7~15%、前記融着点1個の面積が0.10~0.50mm、前記融着点の単位面積当たりの個数が10~200個/cmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合型不織布。
【請求項4】
前記融着点の形状が、円形、楕円形および正方形の群から選択された1つの形状である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の複合型不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを水流交絡させることによって得られる複合型不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布は、パルプ繊維に基づく吸液性とスパンボンド不織布に基づく強度との両方を具備してなるので、ウエスなどの工業用ワイパー、或いは手ぬぐい、タオルなどの対人用のワイパー等の様々な用途で広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示するように、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを重ねた後に、高圧のウォータジェット(水流)を吹き付ける水流交絡処理によって一体化されている。ここでスパンボンド不織布は強度に優れるので製造された複合型不織布の裏打ち層的な機能を果たす。一方、パルプ繊維ウエブは優れた吸液機能を備えている。よって、このような複合型不織布は、水性、油性のいずれの液体に対しても吸収性が良好なパルプ繊維ウエブと、強度に優れるスパンボンド不織布との利点を併有している優れた複合型不織布として消費者に提供することができる。
【0004】
上記特許文献1などで使用されているスパンボンド不織布(特許文献1では、不織連続フィラメント支持体と称している)については、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂をスパンボンド処理して得たものが広く採用されている。スパンボンド処理では、紡糸された樹脂繊維同士を熱処理により溶着した複数の融着部分(以下、融着点)によって接続している。これにより、スパンボンド不織布は自らのシート強度を発現させて外形を維持している。
【0005】
なお、上記特許文献1では、湿式抄紙法によるシート製造技術を流用して、パルプ繊維ウエブを製造する場合を例示しているが、乾式のエアレイド方式でパルプ繊維ウエブを製造することができる。湿式抄紙法を採用した場合には従来の製紙製造と同様の大型設備が必要となるが、エアレイド方式は設備の簡素化、コストの低減を図ることができるという点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2533260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の複合型不織布では、ワイパーとして使用した際に「発塵」、「リント」などと称される、塵状の微細(約5μm以下)な繊維が発生することが確認されている。パルプウエブ製造時や水流交絡時での処理によって微細な繊維が生じ、これが不織布内に滞留し、使用時に脱落することが上記した発塵(微細繊維の発生)の原因と考えられている。このような発塵は、製品価値を低下させるので、その解消が望まれている。
【0008】
よって、本発明の目的は、発塵が抑制されている複合型不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブが積層されて一体化されている複合型不織布であって、前記スパンボンド不織布の坪量が7~30g/m、前記パルプ繊維ウエブの坪量が30~100g/mであり、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比が40/60~10/90(wt%)であり、前記スパンボンド不織布の通気抵抗値が0.13kPa・s/m以下である、ことを特徴とする複合型不織布により達成できる。
【0010】
前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの群から選択された1種類、又は2種類以上の混合とすることができる。
【0011】
そして、前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、前記融着点の単位面積当たりの面積率が7~15%、前記融着点1個の面積が0.10~0.50mm、前記融着点の単位面積当たりの個数が10~200個/cmであるものが好ましい。
【0012】
前記融着点の形状は、円形、楕円形および正方形の群から選択された1つの形状とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、発塵が抑制された複合型不織布を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る複合型不織布を製造するのに好適な装置について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る複合型不織布について説明する。
前述したように、パルプ繊維ウエブを供給する設備として、乾式のエアレイド方式はコストを抑制できるという点で優れている。そして、乾式エアレイド方式で場合には、パルプ繊維を徐々に積層する積層装置のワイヤを通過した繊維を回収し、前記積層装置側へ再循環させる(戻す)設備も知られている。よって、その設備に集塵機を配備して、上述した微細繊維を除去することも考えられるが、その為には装置コストが増大してしまう。よって、複合型不織布を構成している材料自体の設計によって、製品での発塵(微細繊維の発生)を抑制することが望まれた。
以上のような状況で、本発明者等は複合型不織布について鋭意検討を行い、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとの重量構成比、スパンボンド不織布やパルプ繊維ウエブの坪量、そして、スパンボンド不織布の通気抵抗値等を特定の範囲とすることで、発塵を抑えることが出来ることを見出して、本発明に至ったものである。
【0016】
スパンボンド不織布の坪量は7~30g/m、パルプ繊維ウエブの坪量は30~100g/mとするのが好ましい。さらに、スパンボンド不織布の坪量は10~18g/mでパルプ繊維ウエブの坪量が48~71g/mとするのがより好ましい。
また、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比である、スパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブは40/60~10/90(wt%)とするのが好ましい。
【0017】
そして、スパンボンド不織布の通気抵抗値は0.13kPa・sec/m以下に設定されて、さらに0.10kPa・sec/m以下に設定されていることがより好ましい。この通気抵抗値は大きい程、通気し難いことを示している。通気抵抗値が0.13kPa・sec/mを超えて数値が大きくなる程に、発塵が多く確認されるようなる。従来の複合型不織布では、採用するスパンボンド不織布の通気抵抗値については配慮されていなかった。
スパンボンド不織布の通気抵抗値(kPa・sec/m)は、例えばカトーテック株式会社製の通気性試験機(KES-F8)を用いて測定することができる。JISL1096通気性A法(フラジール形法)の定義では、圧力差125Paになった時、そこを通過する流量をQとして通気度を定義しており、通気度:Q=[cc/(cm sec)]となる。
上記通気度試験機では,一定の流量V[m/(m sec)]を通し,この時の圧力差ΔP[KPa]を測定し、R=ΔP/Vから通気抵抗R値(kPa・sec/m)を求めている。
【0018】
本発明に係る複合型不織布に採用するスパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの群から選択された1種類、又は2種類以上の混合とすることができる。ポリプロピレンを用いるのが好ましい。
【0019】
上記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成され、前記融着点の単位面積当たりの面積率を7~15%、より好ましくは10~15%とし、また、前記融着点1個の面積が0.10~0.50mm、より好ましくは0.10~0.36mm、そして、前記融着点の単位面積当たりの個数が10~200個/cmであるのが好ましい。
また、融着点の形状は特に限定されないが、円形、楕円形および正方形の群から選択して採用するのが好ましい。
ここで説明したスパンボンド不織布に配置する融着点の面積率、1個の面積、単位面積当たりの個数、そしてその形状を上記の範囲内で適宜、総合的に設定することにより、上述した通気抵抗値が0.13kPa・sec/m以下であるようなスパンボンド不織布を得ることができる。
【0020】
以下、本発明に係る複合型不織布を製造するのに好適な製造装置を、図1を参照して説明する。
複合型不織布の製造装置1の概略構成を説明する。図1に示す製造装置1は、上流側にパルプ繊維ウエブを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が設けてある。
【0021】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0022】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウエブを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウエブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウエブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
【0023】
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0024】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0025】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように通気抵抗値が所定値よりも低く設定されているスパンボンド不織布SWが製造に伴って巻き取られてロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
【0026】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布に含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量は例えば30.0~100.0g/mとされる。そして、スパンボンド不織布SWの坪量は例えば7.0~30.0g/mとするのが好ましい。パルプ繊維ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布のパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量やスパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとの重量構成比が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウエブの搬送速度は例えば150~300m/minとするのが好ましい。
【0027】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0028】
なお、図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0029】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向CD)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
【0030】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1~30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0031】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体化が促進される。
【0032】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理によって複合型不織布が得られることになる。
このように水流交絡処理を受けた際、ここで採用しているスパンボンド不織布SWは前述したように従来よりも低い通気抵抗値に設計してあるので、高圧のウォータジェットが貫通し易くなっており、発生した微細繊維が排水に流され易いので、複合型不織布の内部に滞留するものが抑制される。これにより、発塵を抑制された複合型不織布が得られることになる。
【0033】
上記水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
そこで、図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはパルプ繊維ウエブに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水処理、乾燥処理を行うと効率よく複合型不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の複合型不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した複合型不織布を製造できる。
【0034】
そして、上記サクション装置6の下流には、更に乾燥装置7が設置されており複合型不織布WPが乾燥処理される。ここでの乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
以上で説明したように、製造装置1により、本発明に係る発塵が抑制された複合型不織布を効率良く製造することができる。
【0035】
(実施例)
以下、本発明の複合型不織布の実施例および比較例について説明する。
複合型不織布に採用しているスパンボンド(SB)不織布の坪量、融着点の面積、面積率、個数、形状および通気抵抗値、そして、パルプ繊維ウエブの坪量、並びにスパンボンド(SB)とパルプ繊維ウエブとの重量構成比を、表1に示す通りとした実施例1~5の複合型不織布、並びに表2に示す通りとした比較例1~3について、複合型不織布の発塵(微細繊維の発生)の状態を確認した。なお、ワイパーとしての拭き取り性については、いずれの複合型不織布も問題は無かった。
【0036】
発塵量を以下のように評価した。
微細繊維は、その長さが0.3~0.5μm以下、0.5~1.0μm以下、1.0~2.0μm以下、2.0~5.0μm以下、5.0μmを超えるものに分けて、発生本数を確認した。具体的には、リオン株式会社製の「光散乱式自動粒子計数機」を用いて、不織布単位面積(m)当たりの微細繊維の個数(本数)をカウントし、これらを合計して総個数を確認した。不織布単位面積当たり、総個数40000個/mを超えるような発塵量のある複合型不織布を不良と評価した。
実施例1~5から通気抵抗値が低い程、発塵を抑制できることが確認できる。例えば、スパンボンド不織布の通気抵抗値を0.128(実施例1)とすることで発塵量は34805となった。通気抵抗値を0.091(実施例3)として更に低くすると、発塵量は12636となり、更に大きく抑えることが確認できる。
一方、比較例1のスパンボンド不織布の通気抵抗値は0.162、比較例2のスパンボンド不織布の通気抵抗値は0.150であり、それぞれの発塵量は総個数40000個/mを大きく超えている。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 複合型不織布の製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布
TD 搬送方向
図1