(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117140
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】プリント基板及び当該プリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20220803BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220803BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/00 N
H05K1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013680
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】貝原 誠一
【テーマコード(参考)】
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
5E314AA25
5E314AA27
5E314BB06
5E314BB07
5E314BB10
5E314BB12
5E314CC06
5E314DD06
5E314DD07
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF05
5E314FF19
5E314GG26
5E338AA02
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC08
5E338CD24
5E338EE02
5E338EE51
(57)【要約】
【課題】電子部品を実装するパッド表面に残渣が残り、電子部品の半田付け不良が発生する。
【解決手段】
2つの主面を有する基材12と、前記基材12の前記2つの主面のうち少なくとも一方の主面に形成された少なくとも1つの放熱用導体層20と、前記放熱用導体層の20表面に形成されたソルダーレジスト層22を具備する。
ソルダーレジスト層22に炭酸ガスレーザを照射してパッド73を形成する。次に、パッド上にフェムト秒レーザ光64を照射してパッド73の残渣を除去するとともに、パッド73部に対応する放熱用導体層20の表面を除去する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主面を有する基材と、
前記基材の前記2つの主面のうち少なくとも一方の主面に形成された少なくとも1つの放熱用導体層と、
前記放熱用導体層の表面に形成されたソルダーレジスト層を具備し、
前記ソルダーレジスト層は、炭酸ガスレーザ光によりパッドが形成され、
前記パッド表面にフェムト秒レーザが照射され、前記放熱用導体層の表層が除去されていることを特徴とするプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板とその製造方法に関し、特に、放熱面に、放熱用導体層およびソルダーレジスト層からなる積層体を有するプリント基板と、そのプリント基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係るプリント基板の製造工程においては、外形・穴加工を行い、その後に表面仕上げを行う。表面仕上げは、銅箔表面の清浄を目的とし、酸により、脱脂、除錆を行う。
上述のようなプリント基板やその製造方法が、特開2011-222962号公報(特許文献1)に記載されている。
基板の製造工程において、レーザで穴開け加工すると樹脂残渣(スミヤ)が発生する。スミヤを除去する作業をデスミヤ処理という。
【0003】
加工穴にスミアが残っていると金属同士の導電を妨げてしまうため、その後の層間接続の際に導通不良、機械的な接合力不足(層間剥離)等の不良原因となる。そのため、あけ加工後にはスミア除去=デスミア処理を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板のレジストに炭酸ガス(CO2)レーザ光で穴あけ加工し、部品を接続するパッド73を形成する。ナノフィラーを含有させたレジストの場合、レジストの樹脂成分がスミヤとなり残留する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2つの主面を有する基材と、前記基材の前記2つの主面のうち少なくとも一方の主面に形成された少なくとも1つの放熱用導体層と、前記放熱用導体層の表面に形成されたソルダーレジスト層を具備するものである。前記ソルダーレジスト層は、炭酸ガス(CO2)レーザ光によりパッド73が形成される。前記パッド73表面にフェムト秒レーザ光を照射し、前記放熱用導体層の表層を除去する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、炭酸ガス(CO2)レーザ光でレジストを穴あけ加工し、次に、炭酸ガス(CO2)で穴あけ加工した部分に、フェムト秒レーザ光で加工することによりスミヤを除去する。この加工の際、パッド73の導体層の表面を同時に加工する。
炭酸ガス(CO2)レーザとフェムト秒レーザ光で加工することにより、スミヤを完全に除去でき、実装する電子部品を良好に半田付け実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のプリント基板の製造方法のフローチャート図である。
【
図2】本発明のプリント基板の製造方法の説明図である。
【
図3】本発明のプリント基板の製造方法の説明図である。
【
図4】本発明のプリント基板の製造方法の説明図である。
【
図5】本発明のプリント基板の製造方法の説明図である。
【
図6】本発明のプリント基板の製造方法の説明図である。
【
図8】本発明のプリント基板に電子部品を状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態について説明をする。発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能を有する要素、構成には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、本明細書に記載する本発明の実施例は、一部または全部をそれぞれの実施例と組み合わせることができる。
【0010】
当業者が本開示を十分に理解するために図面、及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
以下、
図7、
図8等を参照して、実施の形態に係るプリント基板について説明する。
図7は本発明のプリント基板の構成図および説明図である。
図8は、本発明のプリント基板にLED等の電子部品を実装した状態を示す構成図および説明図である。
【0012】
図7、
図8に図示するように、実施の形態に係るプリント基板は、基材12を含む。基材12の回路面には、多数の部品実装用導体層14と配線用導体層16と回路面レジスト層18が形成される。基材12の放熱面には、多数の放熱用導体層20とソルダーレジスト層22からなる積層体24が適宜な高さを有する略凸形状に形成される。
基材12は、たとえば、
図2(a)に図示するようにベース基板30から形成される。ベース基板30は、厚さ0.1~1.0mmからなり、絶縁性のある樹脂からなる基材12に銅箔等の金属層32を貼り合わせたものである。銅箔をエッチングすることにより、基材12、部品実装用導体層14、配線用導体層16、放熱用導体層20が形成される。
【0013】
実施の形態においては、ガラス布エポキシ樹脂積層板である利昌工業株式会社製のCS-3945(両面)、利昌工業株式会社製のCS-3940(片面)、ニッカン工業株式会社製のニカプレックス L-6504、日立化成(株)製のMCL-E-67、パナソニック株式会社製のR-1705、R-1705SX、R-1705SH、Shengyi Technology CO.LTD製のS11600、住友ベークライト株式会社製のELC-4768等を用いることもある。
なお、実施の形態においては、ガラス布エポキシ樹脂積層板の他に、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラス・コンポジット基板、液晶ポリマー基板、アルミナ基板、ポリイミド基板等を用いることもある。
部品実装用導体層14は、厚さ18~70μmの銅箔からなる金属層32をエッチングすることで形成される。
【0014】
部品実装用導体層14は、2つの主面と少なくとも1つの側面を有し、2つの主面のうちの一方の主面が基材12の主面に面接触しており、さらに、側面が第1層目のソルダーレジスト層18aの側面に面接触している。
なお、部品実装用導体層14の側面は、第1層目のソルダーレジスト層18aの側面と面接触していなくてもよい。
第1層目のソルダーレジスト層18aは、配線用導体層16を覆っている。そして、第1層目のソルダーレジスト層18aの一方の主面に、第2層目のソルダーレジスト層18bの主面が面接触し、略凸形状の積層体を形成している。
【0015】
部品実装用導体層14にLED等発熱量が高い電子部品を実装させる場合には、部品実装用導体層14の周囲の熱伝導性を高め、放熱効果をもたせることが必要とされる。
【0016】
放熱用導体層20は、厚さ18~70μmの銅箔からなる金属層32をエッチングすることで形成される。放熱用導体層20は、2つの主面と少なくとも1つの側面を有し、2つの主面のうちの一方の主面が基材12の主面に面接触している。
【0017】
一般に、放熱用導体層20は、電気伝導性・熱伝導性が良く、安価な銅箔が用いられるが、薄い基板、曲げ剛性の弱い低コストの基板における熱変形による反り・ねじれは、銅箔の熱膨張が大きな要因になっていることが知られている。
実施の形態に係るプリント基板によれば、放熱面において、放熱用導体層20の側面とソルダーレジスト層22を露出させることにより、略凸形状の積層体24が形成される。その結果、放熱用導体層20の側面の露出および積層体24の表面積の拡大により基板全体の放熱効果を促進し、さらにそれに伴う銅箔の熱膨張の低下によりプリント基板の反り・ねじれの機械的特性が向上する。
【0018】
回路面レジスト層18およびソルダーレジスト層22は、「ソルダーレジスト性」のほかに「耐エッチング液性」および「耐インク剥離液性」をさらに有し、ソルダーレジストインクを用いてレジスト印刷を行うことにより形成される。
【0019】
この場合、「耐エッチング液性」とは、ソルダーレジスト層22がエッチング液により溶けない性質即ち、エッチング耐酸性、およびソルダーレジスト層22がエッチング液により剥がれないソルダーレジスト剥離耐性のことをいう。
【0020】
また、「耐インク剥離液性」とは、ソルダーレジスト層22がインク剥離液により溶けない性質耐アルカリ性、およびソルダーレジスト層22がインク剥離液により剥がれないソルダーレジスト剥離耐性のことをいう。
実施の形態のプリント基板において、回路面レジスト層18は、回路面において形成され、ソルダーレジスト層22は、放熱面において形成されている。
【0021】
回路面レジスト層18およびソルダーレジスト層22は、それぞれ、2つの主面および少なくとも1つの側面を有する。回路面において、第1層目のソルダーレジスト層18aは、配線用導体層16を覆うように形成され、第1層目のソルダーレジスト層18aの2つの主面のうちの一方の主面が基材12の主面に面接触しており、さらに、第1層目のソルダーレジスト層18aの少なくとも1つの側面が部品実装用導体層14の側面に面接触している。
【0022】
第2層目のソルダーレジスト層18bについては、2つの主面のうちの一方の主面が第1層目のソルダーレジスト層18aの主面に面接触しており、さらに、他方の主面および側面が露出している。
【0023】
これに対し、放熱面においては、ソルダーレジスト層22は、放熱用導体層20の2つの主面のうちの他方の主面に形成され、放熱用導体層20の側面と共に側面や他方の主面が露出している。
【0024】
放熱面において、放熱用導体層20の側面とソルダーレジスト層22を露出させることにより、略凸形状の積層体24が形成される。その結果、放熱用導体層20の側面の露出および積層体24の表面積の拡大により基板全体の放熱効果が促進し、さらにそれに伴う放熱用導体層である。たとえば、銅箔の熱膨張の低下によりプリント基板の反り・ねじれの機械的特性が向上する。
【0025】
実施の形態に係るプリント基板においては、基材12の主面に略凸形状の積層体24に加えて、略凸形状の積層体24とは別個に同形状の積層体を同一面の主面に形成している。その双方の積層体の側面間に隙間を形成し、基材12を境界としてその隙間と相対的な位置に部品実装用導体層14を有している。
基材12の主面に対して平行な前記隙間の長さは、基材12の主面に対して平行な部品実装用導体層14の長さよりも短い。
このように、部品実装用導体層14が放熱用導体層20の側面に接近している点でも、放熱効果が促進される。
実施の形態に係るプリント基板においては、基材12または、基材12と部品実装用導体層14を貫通させたスルーホールを設けていてもよい。
【0026】
図8に図示するようにソルダーレジスト層22は、CO2レーザ光により穴あけ加工されている。また、CO2レーザ光によりソルダーレジスト層22が除去され、電子部品を実装するパッド73が形成されている。パッド73はフェムト秒レーザ光が照射され、パッド73上のスミヤが除去されるとともに、放熱用導体層20の表面(表層)が除去されている。
LED等の発熱が大きい電子部品72は、ソルダーレジスト層22上に実装され、電子部品72の接続端子とパッド73は半田71で電気的に接続される。
【0027】
図1は、
図7に示すプリント基板の製造工程を説明するためのフローチャートである。フローチャート図に記載するA面とは回路面であり、B面とは放熱面である。また、B面の放熱用導体層20は、電子部品72に電圧を供給する配線としての役割もある。
【0028】
図2~
図6は、
図7、
図8に図示する本発明のプリント基板の製造方法を説明するための説明図である。
以下、これらの図面を参照して、本発明の好適な実施の形態に係るプリント基板の製造方法を説明する。
図1に示す最初のステップS11では、
図2(a)に示すように、基材12の両面に金属層32が形成されているベース基板30を準備する。
【0029】
金属層32は、下記に示すエッチングを経て放熱用導体層20、部品実装用導体層14、配線用導体層16となるものであり、電気伝導性・熱伝導性が良く、安価な金属である銅箔から構成される。製造工程のステップS11の終了後、製造工程のステップS12の印刷前処理を行う。
【0030】
図2(b)は、基材12の放熱面に上記ソルダーレジストインクを用いて、レジスト印刷を含めたパターン印刷を行い(ステップS13)、その後、ソルダーレジストインクを硬化させ(ステップS14)、ソルダーレジスト層22を形成する。
【0031】
ソルダーレジストインクとしては、紫外線で硬化する紫外線硬化型のもの、熱で硬化(写真現像タイプを含む)する熱硬化型のものが例示され、厚み5~30μmである絶縁性のある樹脂が用いられる。
【0032】
実施の形態においては、ソルダーレジストインクを用いて、ソルダーレジスト層22を形成した後、エッチング液を用いることになるため、ソルダーレジスト層22がエッチング液で侵されることのないように、ソルダーレジストインクは、さらに「耐エッチング液性」を有することが必要となる。
【0033】
実施の形態においては、紫外線硬化型のソルダーレジストインクとして、互応化学工業株式会社製のPLAS FINE PSR-310(A-99F)、PLAS FINE PSR-310(SC-84)、PLAS FINE PSR-310(SW-26)、山栄化学株式会社製のSSR-1600WS110、SSR-1600WS35、タムラ化研株式会社製のUSR-2B14-84-200、USR-2G14-94-250等を用いる。
【0034】
また、熱硬化型のソルダーレジストインクとして、山栄化学株式会社製のLE-6000S、太陽インキ製造株式会社製のPSR-4000 G24K、PSR-4000 LEW3、S-40 T1等を用いる。
【0035】
ステップS15では、
図3(a)に示すように、基材12の回路面にエッチングレジストインクを用いて、パターン印刷を行い、その後、エッチングレジストインクを硬化させ(ステップ16)、エッチングレジスト層52を形成する。
エッチングレジストインクとしては、厚み5~30μmからなる、アルカリ性の溶液により剥離可能なインクが用いられる。
【0036】
実施の形態においては、エッチングレジストインクとして、互応化学工業株式会社製のPLAS FINE PER-51B、同社製のPLAS FINE PER-213
B-5、PER-57BH等を用いることもある。
ステップS17では、
図3(b)に示すように、エッチングにより、ソルダーレジスト層22の土台となる放熱用導体層20を形成する。
【0037】
エッチング液としては、塩化第二鉄、塩化第二銅が用いられる。塩化第二鉄については、濃度42%以下、使用温度15~55℃、通常40℃前後、塩化第二銅については、濃度40%以下、使用温度15~55℃、通常40℃前後の条件の下で用いられる。
【0038】
実施の形態においては、エッチング液の主剤として、ラサ工業(株)製の塩化第二鉄液、米山工業株式会社製の塩化銅(II)二水和物、エッチング液の助剤として、塩酸、過酸化水素等を用いることもある。
ステップS18では、
図4(a)に示すように、インクを剥離させることで、エッチングレジスト層52を取り除く。
実施の形態においては、インク剥離液としては、株式会社カネカ製の水酸化ナトリウム水溶液の他、炭酸ナトリウム水溶液等を用いることもある。
【0039】
水酸化ナトリウムについては、濃度10%以下、使用温度15~50℃、通常30℃前後、炭酸ナトリウムについては、濃度5%以下、使用温度15~50℃、通常30℃前後の条件の下で用いられる。
【0040】
なお、実施の形態においては、ソルダーレジストインクを用いて、ソルダーレジスト層22を形成した後、インク剥離液を用いることになるため、ソルダーレジスト層22がインク剥離液で侵されることのないように、ソルダーレジストインクは、さらに「耐インク剥離液性」を有することが必要となる。
【0041】
ステップS19の印刷前処理を行い、ステップ31では、
図4(b)に示すように、印刷前処理後(ステップS19)、基材12の回路面にソルダーレジストインクを用いて、パターン印刷を行い、その後、ソルダーレジストインクを硬化させ(ステップ32)、第1層目のソルダーレジスト層18aを形成する。
【0042】
ステップS33では、
図5(a)に示すように、基材12の回路面に形成した第1層目のソルダーレジスト層18aの上にさらに、ソルダーレジストインクを用いて、パターン印刷を行い、第2層目のソルダーレジスト層18b(回路レジスト層18)を形成し、その後、ソルダーレジストインクを硬化させ(ステップ34)、ソルダーレジスト層からなる積層体を形成する。
【0043】
実施の形態に係るプリント基板の製造工程のステップS35において、外形・穴加工を行い、その後に表面仕上げを行う。表面仕上げは、銅箔表面の清浄を目的とし、酸により、脱脂、除錆を行う。
【0044】
実施の形態においては、化学研磨剤としては、メック株式会社製のメックブライトCB-5612、株式会社ADEKA製のテックCL-8、防錆剤として、四国化成工業株式会社製のタフエースF2、メック株式会社製のメックシールCL-5018等を用いることもある。
【0045】
次に、
図5(b)に図示するように、CO2レーザ装置61はCO2レーザ光62を発生させ、CO2レーザ光62はソルダーレジスト層22に照射されて電子部品72を接続するパッド73を形成する(ステップS36)。
【0046】
CO2レーザ光62の走査方向は、ガルバノミラーを制御することにより、高速のかつ精度よく制御できる。また、CO2レーザ装置61は、高出力であり、ソルダーレジスト膜22を除去できる。
【0047】
CO2レーザ装置61は、連続発振モードの装置を使用することが好ましい。しかし、パルス発振方式のCO2レーザ装置61は、レーザ光パルスのエネルギーが強く、CO2レーザ光62を照射するパッド73が離散的に配置されている場合は、パルス発振方式のCO2レーザ装置61を用いることが好ましい。
【0048】
パルス発振方式のCO2レーザ装置61が出力するCO2レーザ光62は、Qスイッチでオンオフ制御されるため、パルス強度のバラツキが発生しやすい。そのため、改質させる箇所に、複数のレーザパルスを照射してソルダーレジスト層22を除去させることが望ましい。
CO2レーザ光62は、出力1.5~4.0Wとし、周波数を1KHz~5KHzとすることが好ましい。
ソルダーレジスト層22は、放熱性を向上させるため、レジストにフィラーを含有させる。フィラーの粒径は比較的大きい場合が多い。
【0049】
フィラーを含有するソルダーレジスト層22は、CO2レーザ光62による加工性が悪くなる。また、CO2レーザ光62で、フィラーが加工されず、パッド73上に残留する。
【0050】
CO2レーザ光62でフィラーを除去するため、焦点オフセットを+方向に設定し、比較的高出力で加工すると、ビア表面・底面共に溶融が発生する。ソルダーレジスト層22が溶融すると、樹脂成分が放熱用導体層20に固着する。
【0051】
パッド73に固着した樹脂成分を除去するには、薬剤で除去する方法もあるが、比較的、ソルダーレジスト層22は薬品に弱く、パッド73以外の部分のソルダーレジスト層22を劣化させる。したがって、CO2レーザ光62だけでは、パッド73上のフィラー等を良好に除去することができない。
図6(a)に、CO2レーザ光62で、ソルダーレジスト層22にパッド73に対応する穴あけ加工をした基板を図示している。
図6(b)に図示するように、フェムト秒レーザ装置63は、フェムト秒レーザ光62をパッド73部に照射する(ステップS37)。
【0052】
フェムト秒レーザ光62のパルス幅は非常に短く、熱拡散する前に融点を超える温度に放熱用導体層20が加熱され、蒸発が起こるので、熱影響の少ない加工ができる。
【0053】
フェムト秒レーザ光62は、CO2レーザ光64で除去できなかったパッド73上の残渣を除去するとともに、放熱用導体層20の表面(表層)を除去する。また、放熱用導体層20の表面に微細な凹凸を形成する。あるいは表面を粗化する(ステップ37)。
加工状態あるいは粗化状態は、フェムト秒レーザ光64のレーザ強度、照射するレーザパルスの移動速度を変更あるいは設定することにより容易に実現できる。
【0054】
フェムト秒レーザ装置63は、一般にパルス幅が、サブピコ秒から数十フェムト秒のフェムト秒レーザ光64を発生する。サブピコ秒から数十フェムト秒の超短パルスのレーザ光64を材料に照射した場合、材料の熱拡散時間に比べてパルス幅が十分に短いため、光エネルギーを有効に照射部に投入できる。
【0055】
その結果、照射周辺部への熱影響を局限化することが可能で、高精度な微細加工が実現できる。また、レーザ光の電場強度が非常に高いので、ビームが集光されたところにのみ、空間選択的に多光子吸収、多光子イオン化等の非線形作用を誘起することができる。
【0056】
フェムト秒グリーンレーザは、第二高調波であるため、比較的高出力を取り出すことができ、放熱用導体層20に対しても、照射したレーザ光の吸収が良好である。
【0057】
フェムト秒グリーンレーザが出射する光の波長は500nm~550nmであるのが好ましい。パルス幅は、1フェムト秒~1000フェムト秒であるのが好ましい。
【0058】
ピコ秒レーザを用いる場合、ピコ秒レーザが出射する光の波長は500nm~550nmであるのが好ましい。パルス幅は、1ピコ秒~10ピコ秒であるのが好ましい。
【0059】
放熱用導体層20の表面の残渣は除去される。また、パルス幅の単位がピコ秒であるピコ秒レーザ光、又はフェムト秒であるフェムト秒レーザ光により放熱用導体層20の表面粗化され、また加工される。
【0060】
図6(b)等で説明する放熱用導体層20の表面の加工は、複数回、繰り返しても良い。レーザ光64の照射により残差が除去され、微細な凹凸が形成されることにより、半田71の濡れ性が良好となる。
レーザ光64は、0.4W~0.6Wの範囲が良好であり、周波数は、100KHz~500kHzが適正である。
【0061】
以上の工程により、
図7に図示する本発明のプリント基板が完成する。次に、
図8に図示するように、プリント基板上に電子部品72を実装し、半田71付けを行う(ステップ39)。その工程後、ステップ39に示すように、洗浄等の表面仕上げを行う。
【0062】
本発明の実施の形態に係るプリント基板においては、回路面の部品実装用導体層14から発生した熱が、基材12を通じて、放熱面の上記略凸形状の積層体24の側面間に生じた隙間および、放熱用導体層20に熱伝導する。
【0063】
また、LED等の発熱が大きい電子部品72から発生する熱は、放熱用導体層20を介して放熱される。放熱用導体層20は、電子部品72の電圧、電流を供給する配線としての役割も担う。
隙間に到達した熱についてはそのまま外部へ放出されるのに対し、放熱用導体層20に到達した熱については露出した側面を通じて外部へ放出される。
【0064】
したがって、実施の形態に係るプリント基板においては、略凸形状の積層体の側面間に生じた隙間および、放熱用導体層20の双方から熱を放出できるので、より放熱効果が促進され、それに伴う銅箔の熱膨張の低下によるプリント基板の反り・ねじれの機械的特性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、CO2レーザ光62により、ソルダーレジスト層22にパッド73加工し、発生する残渣等をフェムト秒レーザ光64の照射により除去する。そのため、半田濡れ性の良好なパッド73を形成することができる。
プリント基板全体としての放熱効果を促進させ、さらに、反り・ねじれ等の機械的特性を向上させたプリント基板およびその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
12 基材
14 部品実装用導体層
16 配線用導体層
18 回路面レジスト層
20 放熱用導体層
24 略凸形状の積層層
30 ベース基板
32 金属層(銅箔)
52 エッチングレジスト層
61 CO2レーザ装置
62 CO2レーザ光
63 フェムト秒レーザ装置
64 フェムト秒レーザ光
71 半田
72 電子部品
73 パッド