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特開2022-117145塩釜組成物とこれを使用した冷凍塩釜食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117145
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】塩釜組成物とこれを使用した冷凍塩釜食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220803BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220803BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220803BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20220803BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20220803BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L13/00 Z
A23L17/00 E
A23L5/00 F
A23L5/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013685
(22)【出願日】2021-01-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年11月30日 <https://kousuke-co.shop-pro.jp/>(自社サイト)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年11月30日 <https://item.rakuten.co.jp/kousuke-r/10000000/>(楽天市場)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年12月25日 <http://www.citydo.com/furusato/official/aichi/kariya/items/item075.html>(愛知県刈谷市のふるさと納税返礼品サイト)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和2年12月25日 <https://www.furusato-tax.jp/city/product/23210/>(ふるさとチョイス)
(71)【出願人】
【識別番号】519449493
【氏名又は名称】株式会社皓介
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】元山 満
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE07
4B035LG01
4B035LG34
4B035LG42
4B035LG43
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP43
4B042AC10
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG01
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK12
4B042AK14
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP19
4B047LB01
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE10
4B047LF04
4B047LG03
4B047LG41
4B047LG52
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP06
4B047LP09
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】冷凍庫から取り出しても、解凍が進行し難く塩釜の崩れを遅らせることができる、冷凍塩釜食品用の塩釜組成物を提供する。
【解決手段】食塩と、メレンゲと、予め熱処理された米粉とを含有している。この塩釜組成物を使用して冷凍塩釜食品とすれば、冷凍庫から取り出して外気温度に晒されても、暫くの間、食塩が結露によって溶かされ、塩釜が崩れ始めることを遅らせることができる。而して、冷凍塩釜食品として市場に流通させることができる。
【選択図】無し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍塩釜食品用の塩釜組成物であって、
食塩と、メレンゲと、米粉とを含有し、
前記米粉が予め加熱処理されている、塩釜組成物。
【請求項2】
魚介類又は肉類が、請求項1に記載の塩釜組成物によって覆われた状態で冷凍されている、冷凍塩釜食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品として流通・販売可能な冷凍塩釜食品と、これに使用する塩釜組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚介類や肉類全体を塩釜組成物で覆ったうえで、オーブン等で焼き上げる塩釜料理がある。当該塩釜料理用の塩釜組成物は、一般的に食塩とメレンゲとを混錬して成る。しかし、食塩とメレンゲのみからなる塩釜組成物によって塩釜を形成した場合は、塩釜が崩れ易いという問題がある。そこで、塩釜組成物に、食塩とメレンゲの他に澱粉類等も混合することで、塩釜の保形性を向上する技術が、特許文献1や特許文献2に開示されている。澱粉類としては、片栗粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-150002号公報
【特許文献2】特開2009-100693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塩釜料理は、これまで塩釜で覆われた状態で市場に流通することは殆ど無く、基本的にレストラン等の飲食店において調理されたものを食すしかなかった。仮に市場に流通することがあるとしても、食品工場や小売店舗等において加熱調理した後、塩釜から取り出した魚介類や肉類の状態で流通するしかなかった。特許文献1や特許文献2も、基本的に食品工場、小売店舗、飲食店等で調理することを想定した技術と考えられる。
【0005】
しかしながら、近年の食の多様化やいわゆる家食ブーム等もあって、家庭内でも塩釜料理を調理したいという要望が少なからずある。しかし、加熱調理後(焼き上げた後)の塩釜料理として流通させる場合は、塩釜が極めて崩れ易く、そもそも既に崩れやひび割れ等が生じている場合が多いので、見栄えが悪い。一方、未調理(焼き上げ前)の塩釜食品として流通させるには、魚介類や肉類が日持ちしない。したがって、未調理の塩釜食品として市場に流通させる場合、冷凍食品として流通させる必要がある。
【0006】
しかし、冷凍食品とした場合、冷凍庫から取り出すと、塩釜が食塩を多量に含むことで直ぐに解凍が進行し、品質の低下や塩釜の崩れが生じるため、これまでの塩釜組成物では冷凍食品としても流通が困難であることが判明した。
【0007】
これに対し、特許文献1や特許文献2は塩釜の保形性の向上を図っているが、冷凍食品とした場合の保管性の向上、すなわち解凍の進行を遅らせることについては着目していない。特許文献2では、塩釜料理の製造工程において(g)凍結・保管工程を備えているが、あくまで店舗等にて調理・保管することを想定しており、市場に流通させる場合に解凍の進行を遅らせることについては対応できていない。具体的には、塩釜組成物に片栗粉等の澱粉類を混合しただけでは、冷凍塩釜食品の解凍進行性は阻害できない。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、冷凍庫等の冷凍保管状態から常温環境に取り出しても、解凍が進行し難く塩釜の崩れを遅らせることができる塩釜組成物と、これを使用した冷凍塩釜食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明は冷凍塩釜食品用の塩釜組成物であって、食塩と、メレンゲと、米粉とを含有している。そのうえで、前記米粉が予め加熱処理されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、魚介類又は肉類が上記塩釜組成物によって覆われた状態で冷凍されている冷凍塩釜食品を提供することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塩釜組成物は、食塩とメレンゲに加えて予め加熱処理した米粉を混合することで米粉が水分を吸着し、冷凍塩釜食品の解凍を遅らせて塩釜の早期崩れを防ぐことができる。
【0012】
而して、本発明の塩釜組成物を使用すれば、未調理(焼き上げ前)の塩釜食品を、不用意な品質低下を避けながら冷凍食品として市場に流通させることができる。延いては、一般家庭においても気軽に塩釜料理を調理・食すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(塩釜組成物)
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態の塩釜組成物は、食塩と、メレンゲと、米粉とを含有している。
【0014】
食塩は特に制限されず、一般的なものを使用すればよい。但し、粒子径が大きい岩塩は不向きである。また、食塩はできるだけ含水量の少ないものを使用することが好ましい。食塩の含水量が多いと、内包された水分が悪影響を及ぼし、冷凍食品とした際に解凍し始める時間が早くなる傾向があるからである。例えば、含水率5%以下、好ましくは含水率3%以下、より好ましくは含水率1%以下、理想的には含水率0%の食塩を使用することが望ましい。必要に応じて、メレンゲ等と混錬する前に、食塩を加熱処理等によりできるだけ乾燥させておくことが好ましい。
【0015】
メレンゲは、基本的には卵白を泡立て器等によってペースト状ないしクリーム状にしたものである。又は、乾燥卵白粉に水を加えて混錬し、メレンゲとすることもできる。メレンゲは、卵白の状態の重量を基準として、食塩100重量部に対して6~15重量部、好ましくは8~12重量部配合する。メレンゲの配合量が少なすぎても多すぎても、塩釜の形成性や保形性が低下する。
【0016】
米とはうるち米であり、米粉は米粒を粉砕して得られるものである。粉の状態であれば粗粉砕から微粉砕のものまで使用可能であるが、粒径はできるだけ小さいことが好ましい。米粉の比表面積が増大して水分吸着機能が増大するからである。例えば、米粉の平均粒子径は、30~200μmが好ましく、35~150μmがより好ましく、40~100μmがさらに好ましい。
【0017】
米粉は、食塩100重量部に対して0.5~5重量部、好ましくは0.8~4重量部、より好ましくは1~3重量部配合する。米粉の配合量が少なすぎると、解凍遅延効果が得られ難い。一方、米粉の配合量が多いほど解凍遅延効果は大きくなるが、塩釜組成物が混錬時にパサパサとなって塩釜を形成し難くなったり、保形性が低下する。
【0018】
米粉は、食塩やメレンゲと混錬する前に、予め加熱処理しておく。これにより、水分吸着機能を効果的に向上できるからである。加熱の程度は、米粉が薄茶色に若干変色する程度とすればよい。米粉の加熱程度が少ないと、米粉の水分吸着機能を効果的に向上できない。一方、米粉が濃茶色に変色する程度まで過加熱すると、臭気が発生して塩釜食品の価値が低下する。
【0019】
また、塩釜組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の澱粉類や香辛料等を混合することもできる。澱粉類としては、典型的には片栗粉を挙げられる。但し、米粉以外の澱粉類を混合しても、解凍遅延効果は得られない。
【0020】
(塩釜組成物の製造)
塩釜組成物は、食塩と卵白と米粉を混合し、卵白がメレンゲ状となるまで混錬する。食塩と卵白と米粉を同時に混練してもよいし、食塩と卵白とを混錬した後、米粉を混合してもよいし、卵白と米粉とを混錬した後、食塩を混合することもできる。但し、最初から米粉を混合すると塩釜組成物の水分が米粉に奪われて混錬しにくくなる傾向があるため、先ずは食塩と卵白とを混錬した後、米粉を混合することが好ましい。先に食塩と卵白とを混錬する場合は、食塩の粒々感が無くなり滑らかなペースト状となる程度まで良く混錬することが好ましい。これにより、塩釜の保形性が向上する。
【0021】
(冷凍塩釜食品の製造)
上記のようにして得られた塩釜組成物を使用して、魚介類や肉類全体を周知の方法で覆い固めることで、塩釜食品を得ることが出来る。魚介類としては、代表的には烏賊やタコを挙げることができる。肉類としては、一般に食されているものを特に制限なく使用でき、牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、鶏肉、七面鳥肉などを挙げることができる。これら魚介類や肉類は、生(未調理)のまま使用することもできるし、必要に応じてローストしたり、下味を付けたり、香草を巻き付けるなど、前処理されたものを使用することもできる。
【0022】
得られた塩釜食品は、流通用にパック詰めしたうえで冷凍することで、冷凍塩釜食品を得ることができる。パック詰めは、酸化による劣化を防ぐため、真空パックが好ましい。冷凍温度は、塩釜食品が凍結する温度以下であれば特に限定されないが、内部の食品も含めて確実に凍結させるために、出来るだけ低いことが好ましい。例えば、-5℃以下、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下で冷凍する。冷凍温度が低いほど、凍結時間の短縮にもなる。また、一般冷凍でも問題ないが、品質をより高く保つためCAS冷凍することも好ましい。
【0023】
冷凍塩釜食品は、冷凍保存状態を保ちながら流通させ、小売店やインターネットサイト等で販売することができる。小売店で購入した場合は、小売店から各家庭へ持ち帰る際に冷凍塩釜食品が常温に晒されることになるが、本実施形態の冷凍塩釜食品は解凍し始める時間が遅いため、品質低下や開封直後に塩釜が崩れたりすることを避けることが出来る。あとは、各家庭においてオーブン等によって塩釜食品を焼き上げ調理することで、塩釜料理を食すことができる。
【実施例0024】
食塩500gと卵白50gを混合し、食塩の粒々感が無く滑らかな触感のメレンゲとなるまで泡立て器にて十分に混錬した。これに、表1に示す材料を表1に示す割合で追加混合し、さらに3分程度混錬した。なお、食塩は、フライパンにて強火で5分程度加熱したものを使用した。また、表1において熱処理有りとした米粉は、フライパンにて中火で薄茶色になる程度(およそ3分)まで加熱したものである。表1において熱処理有りとした片栗粉や米粒も、フライパンにて中火で3分程度加熱したものである。また、米粉は刈谷糖業株式会社製の「米粉(上)」を使用した。
【0025】
得られた各塩釜組成物を用いて、金属トレー上に載置した生の鯛(約500g)全体を完全に覆い、-50℃で90分間CAS冷凍することで、冷凍塩釜食品を作成した。90分間冷凍後、冷凍塩釜食品を冷凍庫から取り出し、約10℃の室内に静置して、経時変化を目視にて観察した。その結果も表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の結果から、予め熱処理した米粉を含有する塩釜組成物を使用した各実施例であれば、冷凍庫から冷凍塩釜食品を取り出した後も、暫くは解凍を遅らせることができることが確認された。これに対し各比較例は、解凍遅延効果が得られていないことが確認された。詳しくは、冷凍庫から取り出すと、冷凍塩釜食品と外気との温度差により、冷凍塩釜食品の表面に空気中の水分が結露し始める。すると、塩釜中の食塩とが結露によって溶解し始めることで、塩釜が崩れ始めることになる。一方、各実施例では、熱処理した米粉が結露を吸着することで、暫くの間は冷凍塩釜食品の表面に結露が生じないため、塩釜の崩れを遅らせることができる。