(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117161
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ゴム部材成型方法及びゴム部材成型装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013712
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】中谷 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】毛利 尚暉
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA01
4F215VD09
4F215VK34
4F215VL11
4F215VL13
4F215VM07
4F215VP11
(57)【要約】
【課題】押し出し機から押し出され一対のローラの間を通ったゴムストリップの先端を成型ドラムに貼り付ける方法及び装置を提供する。
【解決手段】押し出し機13から押し出されたゴムストリップ12を回転体11の表面に貼り付けてゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、押し出し機13から押し出されたゴムストリップ12を、押し出し機13と回転体11との間に設けられた一対の成形ローラ14の間を通し、成形ローラ14を通過したゴムストリップ12の先端を保持部材20で保持して回転体11の表面に貼り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出し機から押し出されたゴムストリップを回転体の表面に貼り付けてゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、
前記押し出し機から押し出された前記ゴムストリップを、前記押し出し機と前記回転体との間に設けられた一対の成形ローラの間を通し、前記成形ローラを通過した前記ゴムストリップの先端を保持部材で保持して前記回転体の表面に貼り付けることを特徴とする、ゴム部材成型方法。
【請求項2】
前記保持部材が、通気性のある弾性部材と、前記弾性部材の表面である吸着面と、前記弾性部材の裏面側で空気を吸引する吸引部とを有し、
前記吸引部から空気を吸引することにより前記吸着面に前記ゴムストリップを吸着させて保持する、請求項1に記載のゴム部材成型方法。
【請求項3】
前記吸着面に隣接して押圧ローラが設けられ、
前記ゴムストリップの先端を前記吸着面が吸着して前記回転体の表面に貼り付けるステップと、
前記押圧ローラにより前記ゴムストリップを前記回転体に向かって押さえるステップと、
前記押圧ローラにより前記ゴムストリップを押さえた状態のまま前記吸着面を前記ゴムストリップから離すステップと、
前記押圧ローラにより前記ゴムストリップを前記回転体に向かって押さえた状態のまま、前記押し出し機からの前記ゴムストリップの押し出し及び前記回転体の回転を開始し、前記ゴムストリップの回転体の表面への貼り付けを開始するステップと、を有する、請求項2に記載のゴム部材成型方法。
【請求項4】
ゴムストリップを押し出す押し出し機と、前記押し出し機から押し出されたゴムストリップが張り付けられる回転体とを有するゴム部材成型装置において、
前記押し出し機と前記回転体との間の一対のローラと、前記ゴムストリップの先端を保持可能な保持部材と、前記押し出し機、前記回転体、前記成形ローラ及び前記保持部材を制御する制御装置と、が設けられ、
前記制御装置が、前記押し出し機から押し出された前記ゴムストリップを、一対の前記成形ローラの間を通し、前記成形ローラを通過した前記ゴムストリップの先端を保持部材で保持して前記回転体の表面に貼り付ける制御を実行することを特徴とする、ゴム部材成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム部材成型方法及びゴム部材成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴムストリップを成型ドラムに巻き付けてゴム部材とする方法が知られていた(特許文献1参照)。ゴムストリップは押し出し機から押し出されて形成される。ゴムストリップの断面形状は、押し出し機の押し出し口(押し出し機本体の出口又は押し出し機本体に設けられた口金の孔)と同じ形状となるのが理想である。
【0003】
しかし実際には、ゴムストリップの厚みが不均一になる等して、ゴムストリップの断面形状が、押し出し口の形状と一致しないことが多かった。そのため、押し出し口の形状を、ゴムストリップの目標とする断面形状として作製してあっても、その目標通りのゴムストリップができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発明者による研究の結果、押し出し機から押し出されたゴムストリップを一対のローラの間に通すと、ゴムストリップの厚みが均一になりやすく、そのことも含めてゴムストリップの断面形状が目標通りになりやすいことがわかってきた。
【0006】
しかし、押し出し機から押し出され一対のローラの間を通ったゴムストリップの先端を成型ドラムに貼り付ける方法が、確立されていなかった。
【0007】
そこで本発明は、押し出し機から押し出され一対のローラの間を通ったゴムストリップの先端を成型ドラムに貼り付ける方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のゴム部材成型方法は、押し出し機から押し出されたゴムストリップを回転体の表面に貼り付けてゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、前記押し出し機から押し出された前記ゴムストリップを、前記押し出し機と前記回転体との間に設けられた一対の成形ローラの間を通し、前記成形ローラを通過した前記ゴムストリップの先端を保持部材で保持して前記回転体の表面に貼り付けることを特徴とする。
【0009】
また、実施形態のゴム部材成型装置は、ゴムストリップを押し出す押し出し機と、前記押し出し機から押し出されたゴムストリップが張り付けられる回転体とを有するゴム部材成型装置において、前記押し出し機と前記回転体との間の一対のローラと、前記ゴムストリップの先端を保持可能な保持部材と、前記押し出し機、前記回転体、前記成形ローラ及び前記保持部材を制御する制御装置と、が設けられ、前記制御装置が、前記押し出し機から押し出された前記ゴムストリップを、一対の前記成形ローラの間を通し、前記成形ローラを通過した前記ゴムストリップの先端を保持部材で保持して前記回転体の表面に貼り付ける制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
実施形態のゴム部材成型方法及びゴム部材成型装置によれば、押し出し機から押し出され一対のローラの間を通ったゴムストリップの先端を成型ドラムに貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】ゴムストリップをほぼ巻き終え、成型ドラムが停止したときの様子を示す図。
【
図7】保持部材がゴムストリップを保持したときの様子を示す図。
【
図8】保持部材の成型ドラムに対する姿勢が変わったときの様子を示す図。
【
図9】成型ドラムが回転してゴムストリップが切断されたときの様子を示す図。
【
図10】ゴムストリップの成型ドラムへの貼り付け方法のフロー図。
【
図11】2個目のゴム部材の成型の開始時の様子を示す図。
【
図12】保持部材でゴムストリップの先端を成型ドラムに押し付ける様子を示す図。
【
図13】押圧ローラでゴムストリップを成型ドラムに押し付ける様子を示す図。
【
図14】保持部を成型ドラムから離したときの様子を示す図。
【
図15】成型ドラムの回転を開始し圧着ローラを成型ドラムに押し付けたときの様子を示す図。
【
図16】押圧ローラを成型ドラムから離したときの様子を示す図。
【
図17】円盤に対してゴムストリップを貼り付けるときの様子を示す図。
【
図18】グリーンタイヤに対してゴムストリップを貼り付けるときの様子を示す図。
【
図20】変更例の保持部材が設けられたゴム部材成型装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のゴム部材成型装置は、回転体としての成型ドラム11と、ゴムストリップ12の押し出し機13と、押し出し機13から押し出されたゴムストリップ12を成型ドラム11に貼り付ける貼り付け装置10とを有している。
【0014】
貼り付け装置10は成型ドラム11と押し出し機13との間に配置されている。以下の説明において、成型ドラム11のある方を前、押し出し機13のある方を後ろとする。押し出し機13の前方かつ貼り付け装置10の下には、ゴム部材成型装置の一部として、上下一対の成形ローラ14が配置されている。
【0015】
押し出し機13は、ゴムの押し出し機としての一般的な構造を備えたものである。押し出し機13はゴムストリップ12を水平方向に押し出す。また、上下一対の成形ローラ14は、押し出し機13から押し出されたゴムストリップ12を回転しながら上下から挟み、それによってゴムストリップ12の形を整えるものである。
【0016】
貼り付け装置10は、押し出し機13から押し出され上下一対の成形ローラ14の間を通過して前方へ出てきたゴムストリップ12を受け取り、さらに前方の成型ドラム11の表面に貼り付けるための装置である。成型ドラム11の表面では、ゴムストリップ12が螺旋巻きされて成型される円筒状のゴム部材、又は、ゴムストリップ12が1周巻かれて成型される環状のゴム部材が成型される。そのようなゴム部材として、例えばサイドウォールゴムやドレッドゴム等が挙げられる。
【0017】
成型ドラム11の回転軸は、前後方向(押し出し機13からのゴムストリップ12の押し出し方向)に対して直交し、かつ水平方向に延びている。成型ドラム11は、貼り付け装置10と対向する場所において、下から上へ上る方向に回転する。
【0018】
貼り付け装置10は、ゴムストリップ12を保持するための保持部材20と、成型ドラム11上のゴムストリップ12を成型ドラム11に対して押し付けるための圧着ローラ30とを備えている。待機位置にあるときの保持部材20は、成型ドラム11と間隔を開けて、成型ドラム11の表面(外周面)と対向する位置にある。また、圧着ローラ30は、保持部材20よりも成型ドラム11の回転方向の場所に配置されている。待機位置にあるときの圧着ローラ30は、成型ドラム11と間隔を開けて、成型ドラム11の表面と対向する位置にある。
【0019】
図2及び
図3に示すように、保持部材20は、長方形で中央に貫通部分50が形成された箱形部21と、貫通部分50の内側に配置された押圧ローラ51とを有している。箱形部21は中空で、成型ドラム11側(
図2の下側)に向かって開口している。箱形部21の開口部には、通気性のある弾性部材としてウレタンスポンジ22が嵌まっている。
【0020】
ウレタンスポンジ22の一部は箱形部21の開口部から外へ出ている。ウレタンスポンジ22の表面のうち、箱形部21の外に出て成型ドラム11に対向する面が、ゴムストリップ12を吸着する吸着面23である。吸着面23と辺を共有し吸着面23に対して垂直な側面24は、加熱や塗料の塗布等の処理によって目潰しされ、通気性のない面、又は他の面と比べて通気性が悪い面となっている。一方、吸着面23及び吸着面23の反対側の面(裏面25)は、通気性が確保されている。従って、吸着面23から裏面25まで空気が通過できる。
【0021】
箱形部21の開口部と反対側の1箇所に、箱形部21の壁部を貫通する吸引孔26が形成されている。吸引孔26は箱形部21の内部の空気を吸引するための吸引部である。吸引孔26には吸引ホース27が接続され、吸引ホース27の先には吸引ポンプ28(
図4参照)が接続されている。吸引ポンプ28が稼働すると、ウレタンスポンジ22の吸着面23から吸引された空気が、ウレタンスポンジ22の裏面25、箱形部21の内部、吸引孔26及び吸引ホース27を通過して吸引ポンプ28に吸引される。このような仕組みのため、吸引ポンプ28の稼働によりウレタンスポンジ22の吸着面23にゴムストリップ12を吸着することができる。
【0022】
ウレタンスポンジ22の吸着面23には、ゴムが粘着しにくい処理、例えば粘着防止剤の塗布がなされていることが好ましい。また、ウレタンスポンジ22自体が、ゴムの粘着しにくいように元素が添加されたものであっても良い。
【0023】
保持部材20のうち、保持部材20とウレタンスポンジ22とからなる部分を保持部29とする。
【0024】
貼り付け装置10は、保持部29と、押圧ローラ51と、圧着ローラ30と、これらを進退させるシリンダとから構成されている。貼り付け装置10のシリンダとして、第1シリンダ32と、第1シリンダ32のロッド33に固定された第2シリンダ35と、第3シリンダ38とが設けられている。第1シリンダ32及び第3シリンダ38はベース部材31に設けられている。
【0025】
第1シリンダ32のロッド33は成型ドラム11へ向かって斜め下に進退可能である。第1シリンダ32のロッド33には、第2シリンダ35と、保持部材20の保持部29とが固定されている。そのため、第1シリンダ32のロッド33の進退により、第2シリンダ35及び保持部材20が、成型ドラム11に対して進退する。
【0026】
また、第2シリンダ35のロッド36は成型ドラム11へ向かって斜め下に進退可能である。第2シリンダ35のロッド36の先端には押圧ローラ51が設けられている。押圧ローラ51はフリーローラで、回転している成型ドラム11に押し付けられると、成型ドラム11の回転方向とは反対方向に回転する。
【0027】
押圧ローラ51は、第1シリンダ32のロッド33の進退によって保持部材20の保持部29と一緒に進退する。それに加えて、押圧ローラ51は、第2シリンダ35のロッド36の進退により、保持部材20から独立して成型ドラム11に対して進退する。押圧ローラ51は、保持部29よりも成型ドラム11に近い位置まで進出することもできるし、保持部29よりも成型ドラム11から遠い位置まで後退することもできる。
【0028】
第1シリンダ32の後部は支軸40で支持されている。また、第1シリンダ32の前部は移動部材42に取り付けられている。移動部材42は、第4シリンダ41(
図4参照)の作用により、ベース部材31に設けられた移動ルート43に沿って移動可能である。移動部材42が移動ルート43に沿って移動すると、第1シリンダ32が支軸40を中心に若干回転し、水平方向に対する第1シリンダ32の傾斜角が変更される。第1シリンダ32の傾斜角が変更されることにより、保持部材20の成型ドラム11に対する姿勢が変更可能となっている。
【0029】
第3シリンダ38のロッド39は成型ドラム11へ向かって斜め下に進退可能である。第3シリンダ38のロッド39の先端には圧着ローラ30が設けられている。圧着ローラ30はフリーローラで、回転している成型ドラム11に押し付けられると、成型ドラム11の回転方向とは反対方向に回転する。
【0030】
図4に示すように、押し出し機13、上下一対の成形ローラ14、成型ドラム11、吸引ポンプ28、各シリンダ32、35、38、41等が、制御装置15に接続されている。制御装置15は接続されている機器等を制御する。例えば、制御装置15は、押し出し機13、成形ローラ14及び成型ドラム11の稼働や回転を同期させて行い、成型ドラム11の回転による巻き取り長さに相当するゴムストリップ12を、成形ローラ14から繰り出す。制御装置15は次に説明するゴム部材成型方法を実行する。
【0031】
ゴム部材成型方法について
図5に基づき説明する。ゴム部材成型方法の開始時には、保持部材20及び圧着ローラ30は成型ドラム11から離れた待機位置にある。
【0032】
ゴム部材成型方法では、まず、制御装置15が押し出し機13を稼働させ、上下一対の成形ローラ14の回転を開始する(S1)。それにより、押し出し機13から押し出されて上下の成形ローラ14の間を通過したゴムストリップ12が前方へ進出してくる。
【0033】
次に、成形ローラ14を通過したゴムストリップ12の先端を、作業者又は保持部材20が、成型ドラム11の所定の位置に貼り付ける(S2)。ゴム部材の1回目の成型のときは、作業者がゴムストリップ12の先端を成型ドラム11に貼り付ける。ゴム部材の2回目以降の成型のときは、後述する方法で保持部材20がゴムストリップ12の先端を成型ドラム11に貼り付ける。
【0034】
次に、制御装置15が成型ドラム11の回転を開始する(S3)。それにより、ゴムストリップ12の成型ドラム11への貼り付けが始まる。成型ドラム11が少し回転し、ゴムストリップ12の先端が圧着ローラ30による圧着位置に到達すると、制御装置15は圧着ローラ30を進出させて成型ドラム11上のゴムストリップ12に押し当てる(圧着ローラ30を進出させたときの様子は
図15参照)。それにより、圧着ローラ30によるゴムストリップ12の圧着が始まる。
【0035】
その後、制御装置15は、押し出し機13からゴムストリップ12を押し出しながら成型ドラム11を回転させることにより、ゴムストリップ12を成型ドラム11の表面に連続的に貼り付けていく。ゴムストリップ12を成型ドラム11へ螺旋状に巻き取ろうとする場合は、ゴムストリップ12が成型ドラム11へ上手く螺旋状に巻き取られるように、成型ドラム11に近接する不図示のガイド部材が使用されても良い。ガイド部材が、ゴムストリップ12をガイドしつつ成型ドラム11の軸方向に少しずつ移動することにより、ゴムストリップ12の成型ドラム11への巻き付け位置を成型ドラム11の軸方向に少しずつ移動させる。それにより、ゴムストリップ12が綺麗な螺旋状に巻き取られる。
【0036】
予め定められた所定長さのゴムストリップ12が成型ドラム11に貼り付けられると(S4のYes)、制御装置15が押し出し機13からのゴムストリップ12の押し出し並びに成型ドラム11及び成形ローラ14の回転を停止させる(S5)。成型ドラム11の回転が停止したときの様子を
図6に示す。
【0037】
次に、制御装置15が、
図7に示すように保持部材20でゴムストリップ12を保持する(S6)。詳細には、まず制御装置15が、保持部材20を成型ドラム11へ向かって進出させてゴムストリップ12に吸着面23を当てる。このとき、制御装置15は、保持部材20の前端部20aをゴムストリップ12の切断しようとする位置に当てる。次に、制御装置15が、吸引ポンプ28による吸引を開始して保持部材20にゴムストリップ12を吸着させる。
【0038】
次に、制御装置15が、第4シリンダ41を制御して移動部材42を移動させ、第1シリンダ32の傾斜角を若干変更する。制御装置15は、第1シリンダ32の傾斜角を変更することにより、
図8に示すように、保持部材20を、成型ドラム11の接線方向に対して立ち上がった姿勢とする(S7)。保持部材20がこのような姿勢になると、保持部材20の角部である前端部20aがゴムストリップ12に押し当てられ、ゴムストリップ12に傷又は折り目が付く。なお、このように立ち上がった姿勢においても、保持部材20の吸着面23の全面にゴムストリップ12が吸着されている。
【0039】
次に、制御装置15は、保持部材20の姿勢を保ったまま、かつ保持部材20でゴムストリップ12を保持したまま、
図9に示すように成型ドラム11の回転を再開する。すると、保持部材20の前端部20aによって付けられた傷又は折り目を起点にゴムストリップ12が引きちぎられるようにして切断される(S8)。ゴムストリップ12の切断された部分近傍の、成型ドラム11に巻き取られた方の部分は、圧着ローラ30によって成型ドラム11側に圧着される。これにより、成型ドラム11におけるゴム部材の成型が完了する。
【0040】
次に、制御装置15は、保持部材20を成型ドラム11から後退させる(S9)。制御装置15は、成型ドラム11の回転を再開させてから所定時間(ゴムストリップ12が切断されるのに要する時間)後に保持部材20を後退させても良いし、ゴムストリップ12が切断されたことをセンサで検出して保持部材20を後退させても良い。後退した後も、保持部材20はゴムストリップ12を保持し続けている。制御装置15は、保持部材20を後退させた後、圧着ローラ30も後退させる。次に、成型ドラム11からゴム部材が取り外される(S9)。
【0041】
必要な数のゴム部材の成型が終わっていない場合(S10のNo)は、2個目のゴム部材の成型が行われる。
【0042】
2個目のゴム部材の成型を開始する時、保持部材20は既にゴムストリップ12を保持している。そこで、制御装置15は、保持部材20を前進させて、成型ドラム11の所定位置にゴムストリップ12の先端を貼り付ける(S2)。このときの貼り付け方法については後述する。そして、制御装置15はS3~S9のステップを再び行う。
【0043】
制御装置15は、S2~S10のステップを繰り返し行い、必要な数のゴム部材の成型が終わると(S10のYes)、制御を終了する。成型されたゴム部材は後工程へ運ばれタイヤの一部として使用される。
【0044】
ここで、2個目以降のゴム部材の成型のときの、成型ドラム11へのゴムストリップ12の貼り付け方法について、
図10に基づき説明する。
【0045】
2個目のゴム部材の成型の開始時、
図11に示すように、保持部材20及び圧着ローラ30は、成型ドラム11から離れた待機位置にある。この時、押圧ローラ51は保持部材20の貫通部分50の内側に収納されている。またこの時、成型ドラム11の回転は停止している。
【0046】
2個目のゴム部材の成型の開始のとき、まず、
図12に示すように、制御装置15は、保持部材20を成型ドラム11に向かって進出させ、保持部材20でゴムストリップ12を押し、ゴムストリップ12の先端を成型ドラム11の表面に密着させる(S2-1)。このとき、保持部材20のウレタンスポンジ22のうち押圧ローラ51よりも成型ドラム11の回転方向側の部分が、ゴムストリップ12を成型ドラム11の表面に押し付ける。またこのとき、押圧ローラ51はゴムストリップ12に接触していない。
【0047】
次に、
図13に示すように、制御装置15は、押圧ローラ51を成型ドラム11に向かって進出させ、押圧ローラ51でゴムストリップ12の一部を成型ドラム11の表面に押し付ける(S2-2)。
【0048】
押圧ローラ51でゴムストリップ12を成型ドラム11に押し付けると同時に、又は、押圧ローラ51でゴムストリップ12を成型ドラム11に押し付けた後、制御装置15は、吸引ポンプ28による吸引を停止して吸着面23へのゴムストリップ12の吸着を解除する(S2-3)。さらに、
図14に示すように、制御装置15は、押圧ローラ51でゴムストリップ12を成型ドラム11へ押圧したまま、保持部材20の保持部29を成型ドラム11から離す(S2-4)。これにより、ゴムストリップ12が保持部29の吸着面23から離れる。
【0049】
次に、制御装置15は、成型ドラム11の回転を開始する(S2-5)。それにより、ゴムストリップ12の成型ドラム11への巻き付け(貼り付け)が始まる。成型ドラム11が少し回転し、ゴムストリップ12の先端が圧着ローラ30による圧着位置に到達すると、
図15に示すように、制御装置15は圧着ローラ30を進出させて成型ドラム11上のゴムストリップ12に押し当てる。それにより、圧着ローラ30によるゴムストリップ12の圧着が始まる。
【0050】
圧着ローラ30による圧着の開始と同時に、又は圧着ローラ30による圧着の開始後、
図16に示すように、制御装置15は、押圧ローラ51を後退させて成型ドラム11から離す(S2-6)。
【0051】
以上のS2-1からS2-6までのステップで、2個目以降のゴム部材の成型のときの、成型ドラム11へのゴムストリップ12の先端の貼り付けが終了する。3個目以降のゴム部材の成型のときも、S2-1からS2-6までのステップにより、成型ドラム11へのゴムストリップ12の先端の貼り付けが行われる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、押し出し機13から押し出され一対の成形ローラ14の間を通ったゴムストリップ12の先端を、保持部材20で保持して成型ドラム11の表面に貼り付ける。このように保持部材20を用いることにより、ゴムストリップ12の先端を成型ドラム11の表面に貼り付けることができる。
【0053】
ここで、この方法の実施のためには成形ローラ14と成型ドラム11との間に保持部材20があれば良く、成形ローラ14と成型ドラム11との間に大きな装置を配置したり複数の装置を配置したりする必要がない。そのため、設備の大型化や複雑化を伴うことなく、一対の成形ローラ14の間を通ったゴムストリップ12の先端を成型ドラム11の表面に貼り付けることができる。
【0054】
また、保持部材20が、吸着面23を有するウレタンスポンジ22と、ウレタンスポンジ22の裏面25側で空気を吸引する吸引孔26とを有する。そして、吸引孔26から空気が吸引されることにより吸着面23にゴムストリップ12を吸着させる。そのため、容易な構造で確実に吸着面23でゴムストリップ12を保持することができる。また、吸引孔26からの空気の吸引を開始したり止めたりすることにより、ゴムストリップ12を吸着面23で保持することも吸着面23から離すことも自在に行うことができる。
【0055】
また、吸着面23に隣接して押圧ローラ51が設けられている。そして、吸着面23によりゴムストリップ12の先端を成型ドラム11の表面に貼り付けるステップと、押圧ローラ51によりゴムストリップ12を成型ドラム11に向かって押さえるステップと、押圧ローラ51によりゴムストリップ12を押さえた状態のまま吸着面23をゴムストリップ12から離すステップと、が実行される。それにより、吸着面23からゴムストリップ12を確実に引き離すことができる。
【0056】
さらにその後、押圧ローラ51によりゴムストリップ12を成型ドラム11に向かって押さえた状態のまま、押し出し機13からのゴムストリップ12の押し出し及び成型ドラム11の回転を開始するステップが実行される。このように、吸着面23からゴムストリップ12を引き離した時の状態のまま、成型ドラム11の回転を開始してゴムストリップ12の成型ドラム11への表面への貼り付けを開始するので、効率が良い。
【0057】
また、本実施形態のゴム部材成型装置では、制御装置15が、押し出し機13から押し出されたゴムストリップ12を一対の成形ローラ14の間を通すため、ゴムストリップ12の厚みが均一になりやすい、さらに、本実施形態のゴム部材成型装置では、制御装置15が、一対の成形ローラ14の間を通過したゴムストリップ12の先端を保持部材20で保持して成型ドラム11の表面に貼り付ける制御を実行する。それにより、押し出し機13から押し出され一対の成形ローラ14の間を通ったゴムストリップ12の先端を成型ドラム11に貼り付けることができる。
【0058】
以上の実施形態に対し様々な変更を行うことができる。以下では実施形態の変更例について説明する。
【0059】
<変更例1>
図17に示す変更例では、貼り付け装置10が、成型ドラム11ではなく平面状の円盤111にゴムストリップ12を貼り付ける。円盤111はゴムストリップ12の押し出し方向に対して垂直に立っている。円盤111は回転可能であるが、その回転軸112は、ゴムストリップ12の押し出し方向に平行である。
【0060】
このような円盤111にゴムストリップ12を貼り付けるときも、貼り付け装置10は上記実施形態のときと同様に動作する。ただし、保持部材20がゴムストリップ12の先端を円盤111に貼り付ける時は、保持部材20が円盤111に対して平行になることが好ましい。
【0061】
<変更例2>
図18に示す変更例では、貼り付け装置10が、サイドウォールゴムが貼り付けられる前のグリーンタイヤ211の側面に、ゴムストリップ12を貼り付ける。それによって、グリーンタイヤ211の側面にサイドウォールゴムを成型する。
【0062】
サイドウォールゴムの成型中、グリーンタイヤ211は保持装置によって内径側から保持されている。保持装置としては、グリーンタイヤ211の内面形状もしくは完成品タイヤの目標内面形状をしたコア部材、エアー供給により膨張する風船、成型ドラム、シェーピングドラム等が使用可能である。
【0063】
<変更例3>
保持部材20に設ける通気性のある弾性部材として、ウレタンスポンジ22以外のスポンジや、厚みのある繊維素材等が適用可能である。
【0064】
<変更例4>
図19に変更例の保持部材120を示す。この保持部材120は、中空で成型ドラム11の方へ開口した長方形の箱形部121を有している。箱形部121の開口部には、通気性のある弾性部材としてウレタンスポンジ122が嵌まっている。
【0065】
ウレタンスポンジ122の一部が箱形部121の開口部から外へ出ている。ウレタンスポンジ122の表面のうち、箱形部121の外に出て成型ドラム11に対向する1つの面が、ゴムストリップ12を吸着する吸着面123である。吸着面123と、吸着面123の反対側の面(裏面125)とは、同等の通気性が確保されている、しかし、ウレタンスポンジ122の表面のうち、吸着面123及び裏面125以外の面は、目潰し等の処理によって通気性が悪い面となっている。
【0066】
箱形部121の開口部と反対側には、箱形部121の壁部を貫通する吸引孔126が形成されている。吸引孔126には吸引ホース127が接続され、吸引ホース127の先には吸引ポンプが接続されている。吸引ポンプが稼働すると、ウレタンスポンジ122の吸着面123から吸引された空気が、ウレタンスポンジ122の裏面125、箱形部121の内部、吸引孔126及び吸引ホース127を通過して吸引ポンプに吸引される。このような仕組みのため、吸引ポンプの稼働によりウレタンスポンジ122の吸着面123にゴムストリップ12を吸着することができる。
【0067】
図20に示すように、押し出し機13(不図示)から押し出され上下の成形ローラ14の間を通過したゴムストリップの先端を、この保持部材120で吸着保持して成型ドラム11に貼り付けても良い。
【符号の説明】
【0068】
10…貼り付け装置、11…成型ドラム、12…ゴムストリップ、13…押し出し機、14…成形ローラ、15…制御装置、20…保持部材、20a…前端部、21…箱形部、22…ウレタンスポンジ、23…吸着面、24…側面、25…裏面、26…吸引孔、27…吸引ホース、28…吸引ポンプ、29…保持部、30…圧着ローラ、31…ベース部材、32…第1シリンダ、33…ロッド、35…第2シリンダ、36…ロッド、38…第3シリンダ、39…ロッド、40…支軸、41…第4シリンダ、42…移動部材、43…移動ルート、50…貫通部分、51…押圧ローラ、111…円盤、112…回転軸、120…保持部材、121…箱形部、122…ウレタンスポンジ、123…吸着面、125…裏面、126…吸引孔、127…吸引ホース、211…グリーンタイヤ