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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117212
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013792
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 一聖
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA14
2E025AA26
(57)【要約】
【課題】上階から、吹抜けを介して下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所を、吹抜け開放的な雰囲気を損なわずに合理的な構造に創出する。
【解決手段】下階のパブリックゾーンの上方に吹抜けが設けられ、上階にはプライベートゾーンが設けられて、階段3と上階との接続箇所からプライベートゾーンに行き来するための廊下231、232、233が吹抜けに面して設けられ、プライベートゾーンの一つの個室(主寝室211)には、廊下231、232、233とは直接、接続しない出入口511を介して、パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床4が、吹抜けを囲む壁面51、53の入隅部に沿うように設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階とが吹抜けを介して連通し、前記吹抜けに面して下階と上階とを往来するための階段が設置された住宅において、
下階にはリビングとダイニングとが連続するパブリックゾーンが設けられて、その上方に前記吹抜けが設けられ、
上階には寝室、子供室その他の個室を含むプライベートゾーンが設けられて、
前記階段と上階との接続箇所から前記プライベートゾーンに行き来するための廊下が前記吹抜けに面して設けられ、
前記上階のプライベートゾーンに設けられた少なくとも一つの個室には、
前記廊下とは直接、接続しない出入口を介して、前記パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床が、前記吹抜けを囲む二つの壁面の入隅部に沿うように設けられている
ことを特徴とする住宅。
【請求項2】
請求項1に記載された住宅において、
前記階段の中間部に踊り場が設けられて、
前記張出床と前記踊り場とが前記吹抜けの平面視において相対する位置に配置されている
ことを特徴とする住宅。
【請求項3】
請求項1または2に記載された住宅において、
前記吹抜けの上方の天井面全体が、棟直下から二方向に下降傾斜する勾配天井となされ、
少なくとも一方に下降傾斜する天井面が前記吹抜けを囲む一つの壁面に接続する
ことを特徴とする住宅。
【請求項4】
請求項3に記載された住宅において、
下降傾斜する天井面が接続する前記壁面の上階部分には屋外に面する窓開口が設けられ、
前記張出床は、少なくともその一辺縁を前記窓開口が設けられた壁面に沿わせて配置されている
ことを特徴とする住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は住宅に関し、より詳細には、2階層以上の床面を有して、その下階と上階とが吹抜けを介して連通する住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
2階層以上の床面を有する戸建て住宅等において、リビングルームとダイニングルームとを連続させた広めのパブリックゾーン(家族共用空間)を下階に設け、そのパブリックゾーンから上階に上がる階段を設けるとともに、パブリックゾーンの上方を吹抜けにした空間構成が公知である。このような空間構成を採用すると、パブリックゾーンで感じられる気積が大きくなって開放感や明るさが増すとともに、上階のプライベートゾーンにいる家族の気配を感じられる緩やかな繋がり感が生まれる。本出願人も、そのような空間を有する戸建て住宅の間取りを特許文献1~4等に開示している。
【0003】
また、特許文献5、6等には、そのような吹抜けに面して配置される階段の上り口や中間部分に広めの踊り場(スキップフロア)を設けて、その踊り場を寛ぎのためのスペースとしたり、子供の遊びや学習のためのスペースとしたりする構成も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-311316号公報
【特許文献2】特開2001-336294号公報
【特許文献3】特開2002-147035号公報
【特許文献4】特開2002-194899号公報
【特許文献5】特開2009-046925号公報
【特許文献6】特開2020-117941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような吹抜けを有する住宅においては、上階の間取りが、吹抜けに面する廊下と、壁や建具で区切られた個室とで構成されることが一般的であるが、このような空間では、上階から下階にいる家族の気配を感じにくい面がある。そこで、本願が開示する発明は、特に上階からも、吹抜けを介して下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所を、従来とは異なる視点から創出しようとしたものである。かかる特別な居場所を、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なわない必要最小限の面積と合理的な構造によって実現することが、この発明の解決課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するため、本願が開示する発明の住宅は、下階と上階とが吹抜けを介して連通し、前記吹抜けに面して下階と上階とを往来するための階段が設置された住宅において、下階にはリビングとダイニングとが連続するパブリックゾーンが設けられて、その上方に前記吹抜けが設けられ、上階には寝室、子供室その他の個室を含むプライベートゾーンが設けられて、前記階段と上階との接続箇所から前記プライベートゾーンに行き来するための廊下が前記吹抜けに面して設けられ、前記上階のプライベートゾーンに設けられた少なくとも一つの個室には、前記廊下とは直接、接続しない出入口を介して、前記パブリックゾーンの上方に張り出す平面視三角形状の張出床が、前記吹抜けを囲む二つの壁面の入隅部に沿うように設けられている、との構成を採用する。
【0007】
さらに、前記階段の中間部に踊り場が設けられて、前記張出床と前記踊り場とが前記吹抜けの平面視において相対する位置に配置されている、との構成を採用する。
【0008】
さらに、前記吹抜けの上方の天井面全体が、棟直下から二方向に下降傾斜する勾配天井となされ、少なくとも一方に下降傾斜する天井面が前記吹抜けを囲む一つの壁面に接続する、との構成を採用する。
【0009】
下降傾斜する天井面が接続する前記壁面の上階部分には屋外に面する窓開口が設けられ、前記張出床は、少なくともその一辺縁を前記窓開口が設けられた壁面に沿わせて配置されていると、より好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本願が開示する発明に係る住宅は、吹抜けに面してパブリックゾーンの上方に張り出す張出床を具備しているので、この張出床から下階を見下ろせば、上階から下階にいる家族の気配や様子を適度な距離感で感じることができる。この張出床は、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別な居場所になる。この張出床の平面形状を三角形にして、吹抜けを囲む壁面の入隅部に沿わせることで、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なうことなく、また、吹抜け周りの構造躯体にも無理をかけずに、特別な居場所を創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係る住宅の、外構を含む1階平面図である。
図2】前記住宅の2階平面図である。
図3】前記住宅の吹抜け周りの空間形態を示す縦断面パース図である。
図4】前記住宅の吹抜け周りの空間イメージを示す内観CGである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1図4は、本願が開示する発明の一実施形態に係る2階建ての戸建て住宅を示す。この住宅1は、敷地の南側に庭11と車庫12を設けて、建物本体が敷地の北側寄りに配置されている。建物本体は棟を東西方向に向けた切妻型の勾配屋根を有し、南側の壁面13には大きい窓開口が設けられている。
【0014】
1階(図1)は、西側に玄関101が設けられ、玄関ホール102の北側には和室103が配置されている。
1階の中央部分には、リビング111とダイニング112とキッチン113とが一体的に連続するパブリックゾーンが、南側の壁面13に面して設けられている。南側の壁面13の屋外側には、窓開口を介してパブリックゾーンから出入り可能なテラス16が設けられている。キッチン113の南側にはパントリー121が付設されており、キッチン113の北側には洗面脱衣室122および浴室123が配置されている。
【0015】
リビング111の北側には、2階との往来に利用される階段3が配置されている。この階段3は、中間部分に広めの踊り場31(スキップフロア)を有する折返し階段である。その踊り場31と和室103との間には、トイレ124に繋がる廊下131が配置されている。踊り場31は、リビング111側と和室103側とが低い手摺壁32で囲われている。手摺壁32の内側には二~三人が椅子に座って読み書きできるカウンターデスク33が備えられて、例えば子供の学習スペースとして利用できるようになっている。
【0016】
この踊り場31を含めた階段3と、リビング111と、ダイニング112の一部の上方は吹抜けになっている。図1では、上方の吹抜けを一点鎖線による対角交差線で表している。
【0017】
2階(図2)には、階段3に接続する廊下231、232、233が、吹抜けに沿って回り込むように設けられている。これらの廊下231、232、233は、西側に配置された主寝室211とトイレ221、および東側に配置された二つの子供室212、213からなるプライベートゾーンに繋がる動線になっている。主寝室211にはウォークインクローゼット214が付設されている。
【0018】
図2では、2階床面の吹抜け(床がない部分)を網点で表している。北側の廊下231は吹抜けに面する手摺壁234で囲われて、ここから1階のリビング111、ダイニング112、踊り場31等を見下ろすことができる。東側の廊下232と西側の廊下233は、天井まで立ち上がる壁面51、52によって吹抜けと区画されており、これらの廊下232、233からは吹抜けを見下ろせない。吹抜けの南側の壁面53には、1階と同様に大きい窓開口が設けられており、その窓開口の屋外側にはバルコニー56が設けられている。
【0019】
吹抜けと北側の廊下231とを含む平面視矩形の領域(壁面51、52、53、54によって囲まれた領域)の上方の天井は、図3に示すように、東西方向に配された棟の直下から北側および南側に屋根なりで下降傾斜する船底形の勾配天井6になっている。図2では、上方の勾配天井6を一点鎖線による対角交差線で表している。このように、下階から勾配天井6まで吹抜けになった大空間の下に様々な性格の居場所を設けることで、それぞれの場所にいる家族が、一体に包まれるような安心感が生まれる。
【0020】
本願が開示する発明の要部は、プライベートゾーンの個室に付設されて下階のパブリックゾーンの上方に張り出す張出床にある。例示形態における張出床4は平面視直角二等辺三角形状をなし、主寝室211と吹抜けとを区画する壁面51と、南側の壁面53との入隅部に沿うように設けられている。広さは椅子1脚と小テーブルを置ける程度で、吹抜けに対して斜めに配置された辺縁部41には手摺が取り付けられている。この張出床4は、廊下231、232、233とは直接、接続しておらず、主寝室211と吹抜けとを区画する壁面51に設けられた出入口511から出入りするようになっている。ただし、例示形態では、南側の壁面53に設けられた窓開口(掃出し窓)を通じてバルコニー56側からの出入りも可能になっている。
【0021】
図4は、階段3と廊下232との接続箇所付近から張出床4の方向を見た内観イメージである。張出床4への動線を、日常的な動線から分離して壁面51の裏側に隠したことで、張出床4が、日常の生活空間からは心理的に遠い位置にある「離れ」のような居場所となる。吹抜けの反対側や下階から見ると、壁面51から吹抜けの上方に張り出す張出床4は、例えばオペラ座の舞台側方に設けられるボックス席のような特別感を醸し出す。
【0022】
この張出床4からは、下階のリビング111、ダイニング112、階段3の踊り場31等にいる家族の様子を見下ろすことができる。日中であれば、南側の窓開口を背にして明るい吹抜け空間を見ることができるので、家族全体の気配を感じることで得られる安心感も一層、増幅される。
【0023】
さらに、吹抜けの平面視において階段3の踊り場31と張出床4とが相対する位置に配置されているため、張出床4からは、踊り場31の床面とリビング111、ダイニング112の床面との高低差が強調されて、パブリックゾーン全体が一層、立体的に見える。そして、踊り場31にいる家族とは、かなり近い距離感で様子を見たり会話したりすることができる。
【0024】
ただし、家族といえども互いに真正面から視線を向き合わせると、しっかりと見られている緊張感や気恥ずかしさが強まって、あまり寛げなくなることもある。その点、この張出床4は、手摺が取り付けられる辺縁部41が、吹抜けを囲む壁面51、52、53や、階段3、廊下231、232、233の移動方向に対して斜めになっているので、空間を共有していながらも互いの視線が真正面から向き合わず、適度にすれ違って、緊張感や気恥ずかしさが緩和される。このように、あえて正面性を外した位置関係を採用することで、家族が互いの気配は感じながらも、それに邪魔されずに、それぞれの世界に浸ることができやすくなる。
【0025】
また、この張出床4は、入隅部を形成する二つの壁面51、53の構造躯体に対して、三角形の辺縁部41を支持する斜め方向の床梁を接続することにより、構造躯体に構造的な負担をかけず、また、余計な柱等を必要とせずに、簡素な構造で設置することができる。
【0026】
以上に述べた構成により、上階から下階にいる家族の気配や様子を感じることができて、家族との間に柔らかい繋がり感を生み出せるような特別感のある居場所を、吹抜け自体の開放的な雰囲気を損なわない必要最小限の面積と合理的な構造によって実現することができる。
【0027】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素(空間要素)の形状、構造、大きさ、用途、相対的な位置関係、方位方角等を、例示形態と実質的に同等程度またはそれ以上の作用効果が得られる範囲内で改変してもよい。例えば、下階と上階は1階と2階に限定されず、地階と1階、あるいは2階と3階であってもよい。パブリックゾーンには和室の広間、応接室等が含まれてもよいし、プライベートゾーンには書斎や仕事部屋、客間等が含まれてもよい。吹抜けに面して設けられる上階の廊下は、吹抜けの中を通り抜ける渡り廊下のような形態であってもよい。その他、住宅の規模や形態に応じて、発明の要旨を逸脱しない程度の改変は適宜、可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願が開示する発明は、2階層以上の床面を有する住宅の空間構成として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 住宅
11 庭
12 車庫
13 壁面
16 テラス
101 玄関
102 玄関ホール
103 和室
111 リビング
112 ダイニング
113 キッチン
121 パントリー
122 洗面脱衣室
123 浴室
124 トイレ
131 廊下
211 主寝室
212 子供室
213 子供室
214 ウォークインクローゼット
221 トイレ
231 廊下
232 廊下
233 廊下
234 手摺壁
3 階段
31 踊り場
32 手摺壁
33 カウンターデスク
4 張出床
41 辺縁部
51 壁面
511 出入口
52 壁面
53 壁面
54 壁面
56 バルコニー
6 勾配天井
図1
図2
図3
図4