IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーユー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117214
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】酸化剤含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20220803BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20220803BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q5/08
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013795
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】和田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山口 真吾
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB272
4C083AB282
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC552
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD162
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD642
4C083BB05
4C083BB13
4C083BB43
4C083BB53
4C083CC35
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】
【課題】油性成分を高配合する酸化剤含有組成物において、乳化安定性を維持しながら、振とう方式による混合性を向上できる酸化剤含有組成物を提供する。
【解決手段】本発明の酸化剤含有組成物は、(a)25℃で液体の油性成分が4質量%以上、(b)アニオン性界面活性剤、(c)グリセリン脂肪酸エステル、及び(d)酸化剤を含有し、25℃における粘度が100mPa・s以上8000mPa・s以下である酸化剤含有組成物であって、振とう方式により他の剤と混合して毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として使用されることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)成分を含有し、25℃における粘度が100mPa・s以上8000mPa・s以下である酸化剤含有組成物であって、振とう方式により他の剤と混合して毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として使用されることを特徴とする酸化剤含有組成物。
(a)25℃で液体の油性成分が4質量%以上
(b)アニオン性界面活性剤
(c)グリセリン脂肪酸エステル
(d)酸化剤
【請求項2】
前記(c)グリセリン脂肪酸エステルは、親油型モノグリセリン脂肪酸エステルである請求項1に記載の酸化剤含有組成物。
【請求項3】
さらに、(e)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル(前記(c)成分に該当する場合を除く)、ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテル、及びポリオキシアルキレンステロールエーテルのうちのいずれか1つ以上を含む請求項1又は2に記載の酸化剤含有組成物。
【請求項4】
前記(b)アニオン性界面活性剤が、N-アシルタウリン塩を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化剤含有組成物。
【請求項5】
前記他の剤が、アルカリ剤を含有する剤であり、使用時におけるアルカリ剤を含有する剤と前記酸化剤含有組成物との混合比が質量比として1:0.5~3である請求項1~4のいずれか一項に記載の酸化剤含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振とう方式により他の剤と混合して毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として使用される酸化剤含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する毛髪処理剤が知られている。そのような毛髪処理剤としては、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤が知られている。酸化剤は、毛髪中のメラニンを脱色する。アルカリ剤は、酸化剤の作用を促進することにより脱色後の毛髪の明度を向上させる。また、アルカリ剤は、毛髪処理剤中に染料を含有する場合、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。
【0003】
従来より、油性成分を高配合することにより染毛性能又は明度を向上させる技術が知られている。特許文献1は、流動パラフィン等の油性成分を10質量%、所定のHLBを有する非イオン性界面活性剤、高級アルコール等を配合した酸化剤含有組成物としての第2剤について開示する。特許文献1は、所定のHLBを有する非イオン性界面活性剤及び高級アルコール等により第2剤の製剤安定性及び刷毛を用いた第1剤との混合性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-11291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の酸化剤含有組成物は、油性成分を高配合するため、比較的粘度が高く、別剤である第1剤と振とう方式により混合した場合、混合性に劣るという問題があった。その一方、粘度を低下させた場合、乳化安定性に劣るという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、油性成分を高配合する酸化剤含有組成物において、アニオン性界面活性剤及びグリセリン脂肪酸エステルを配合し、粘度を所定の範囲に規定することにより、乳化安定性を維持しながら、振とう方式による混合性を向上できることを見出したことに基づくものである。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、下記(a)~(d)成分を含有し、25℃における粘度が100mPa・s以上8000mPa・s以下である酸化剤含有組成物であって、振とう方式により他の剤と混合して毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として使用されることを特徴とする酸化剤含有組成物が提供される。
【0008】
(a)25℃で液体の油性成分が4質量%以上
(b)アニオン性界面活性剤
(c)グリセリン脂肪酸エステル
(d)酸化剤
前記酸化剤含有組成物において、前記(c)グリセリン脂肪酸エステルは、親油型モノグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
【0009】
前記酸化剤含有組成物において、さらに、(e)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル(前記(c)成分に該当する場合を除く)、ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテル、及びポリオキシアルキレンステロールエーテルのうちのいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0010】
前記酸化剤含有組成物において、前記(b)アニオン性界面活性剤が、N-アシルタウリン塩を含んでもよい。
前記酸化剤含有組成物において、前記他の剤が、アルカリ剤を含有する剤であり、使用時におけるアルカリ剤を含有する剤と前記酸化剤含有組成物との混合比が質量比として1:0.5~3であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油性成分を高配合する酸化剤含有組成物において、乳化安定性を維持しながら、振とう方式による混合性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の酸化剤含有組成物を具体化した一実施形態を説明する。酸化剤含有組成物は、例えば多剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤の酸化剤含有組成物として構成される。多剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤の具体例としては、例えば2剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤、3剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤等が挙げられる。酸化剤含有組成物は、2剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤、3剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤の第2剤として構成される。
【0013】
以下、酸化剤含有組成物として構成される第2剤を含む毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤の成分について例示する。
<2剤式の毛髪脱色・脱染剤>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えば、少なくともアルカリ剤を含有する第1剤と、(d)酸化剤等を含有する第2剤とから構成される。
【0014】
(2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤)
第2剤は、(d)酸化剤の他、(a)25℃で液状の油性成分、(b)アニオン性界面活性剤、(c)グリセリン脂肪酸エステル等を含有している。
【0015】
((d)酸化剤)
(d)酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性を向上させる。酸化剤の具体例としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0016】
第2剤中における酸化剤の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上できる。また、第2剤中における酸化剤の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪のダメージ等を抑制できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0017】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、又はその塩等を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩の具体例としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
((a)25℃で液状の油性成分)
(a)25℃で液状の油性成分は、例えば25℃で液状の炭化水素、25℃で液状の動物油、植物油等の油脂、25℃で液状のロウ、25℃で液状の高級アルコール、25℃で液状の高級脂肪酸、25℃で液状のエステル、25℃で液状のシリコーン等が挙げられる。
【0019】
25℃で液状の炭化水素の具体例としては、例えばα-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。25℃で液状の動物油、植物油等の油脂の具体例としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、サザンカ油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油等が挙げられる。25℃で液状のロウの具体例としては、例えばホホバ油等が挙げられる。25℃で液状の高級アルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール等が挙げられる。
【0020】
25℃で液状の高級脂肪酸の具体例としては、例えばイソステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。25℃で液状のエステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、25℃で液状のトリグリセライド、25℃で液状のアミノ酸エステル等が挙げられる。トリグリセライドの具体例としては、例えばトリオレイン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル等が挙げられる。アミノ酸エステルの具体例としては、例えばN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)が挙げられる。25℃で液状のシリコーンの具体例としては、例えば分子量150000未満のメチルポリシロキサン及び高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等が挙げられる。
【0021】
これらの油性成分の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。(a)25℃で液状の油性成分としては、脱色性に優れる観点、又は後述する染毛剤の場合は染毛性能に優れる観点から、炭化水素、エステル、シリコーン、油脂が好ましく、炭化水素が特に好ましい。炭化水素の中でも、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、α-オレフィンオリゴマーが好ましく、流動パラフィンが特に好ましい。
【0022】
第2剤中における(a)成分の含有量の下限は、4質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。かかる含有量が4質量%以上であると、脱色性を向上させる。また、後述する染毛剤の場合は染毛性能を向上させる。また、第2剤中における(a)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。かかる含有量が20質量%以下であると、乳化安定性をより向上させる。また、第1剤との混合性を向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0023】
((b)アニオン性界面活性剤)
(b)アニオン性界面活性剤は、特に乳化安定性を向上させる。(b)アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アシルタウリン塩、及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばポリオキシエチレン(以下、「POE」ともいう)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤の具体例としては、POEオレイルエーテルリン酸等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N-アシルタウリン塩の具体例としては、例えばN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム等のN-アルキロイルメチルタウリン塩等が挙げられる。これらの(b)アニオン性界面活性剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第2剤の乳化安定性により優れる観点から、N-アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩が好ましく、N-アシルタウリン塩が特に好ましい。
【0024】
第2剤中における(b)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。(b)成分の含有量が0.01質量%以上の場合、乳化安定性をより向上させる。また、第2剤中における(b)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(b)成分の含有量が5質量%以下の場合、乳化安定性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0025】
第2剤中における(a)成分の含有量に対する(b)成分の含有量の質量比(b/a)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。かかる質量比が0.5以下の場合、油きしみ感を抑制させる。なお、油きしみ感とは、本願発明のように高配合される(a)成分が、(b)成分と共存することで生じる感触であり、(a)成分による油性感、つまりしっとり感やべたつき感と、(b)成分によるきしみ感が複合した感触を指す。以下、油きしみ感については、同様の意を示す。
【0026】
((c)グリセリン脂肪酸エステル)
(c)グリセリン脂肪酸エステルは、特に乳化安定性を向上させる。グリセリンの構造単位が1つのモノグリセリン脂肪酸エステルであっても、2つ以上のポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。これらの中で乳化安定性をより向上させる観点からモノグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。(c)グリセリン脂肪酸エステルにおいて、HLB値は、6.0以下の親油型グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。HLB値が低くなると、つまり親油型であると乳化安定性をより向上させる。
【0027】
(c)グリセリン脂肪酸エステルの具体例を以下に列挙する。また、本発明においてHLB値は、後述する実測値により求められる値を採用するが、日光ケミカルズ社カタログ(2017年)記載の数値等を参考値として記載する。(c)グリセリン脂肪酸エステルの具体例として、例えば、親油型モノオレイン酸グリセリル(HLB:2.5)、親油型モノステアリン酸グリセリル(HLB:4.0)、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル(HLB:6.0)、ミリスチン酸グリセリル(HLB:3.5)、モノステアリン酸ポリグリセリル(HLB:5.0)等が挙げられる。(c)グリセリン脂肪酸エステルの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第2剤の乳化安定性に優れる観点から、親油型モノグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、親油型モノステアリン酸グリセリルがより好ましい。
【0028】
尚、HLB(hydrophile-lipophile balance)は、W.C.Griffinによって考えられ、非イオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、非イオン性界面活性剤の親油基(アルキル基)と親水基(酸化エチレン鎖)との強さのバランスを数字で表したものである。HLB値は、乳化法から算出した実測値が用いられる(「ハンドブック-化粧品・製剤原料-」日光ケミカルズ株式会社(昭和52年2月1日改訂版発行)参照)。実測HLB値の測定には、界面活性剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL SS-10、HLB値4.7)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL TS-10、HLB値14.9)を組み合わせて使用する。被乳化物には流動パラフィンを使用する。尚、流動パラフィンは種類による又はロットによる変動が考えられる場合は、その都度測定する。流動パラフィンを上記2種類の界面活性剤で乳化し、最適な界面活性剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値(乳化されるHLB値)を求める。計算式は数式(1)に示される。
【0029】
【数1】
通常流動パラフィンの所要HLB値は、種類及びロットにもよるが10.1~10.3程度である。次に未知の界面活性剤のHLBの測定は、所要HLB値を求めた流動パラフィンを用いて測定する。未知の界面活性剤が親水性であればモノステアリン酸ソルビタンと組み合わせ、未知の界面活性剤が疎水性であればモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと組み合わせて、上記流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところの最適割合を求め、未知の界面活性剤のHLB値をxとして上記数式(1)に当てはめて算出する。
【0030】
第2剤中における(c)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。(c)成分の含有量が0.01質量%以上の場合、乳化安定性をより向上させる。また、第2剤中における(c)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(c)成分の含有量が5質量%以下の場合、乳化安定性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0031】
((e)成分)
第2剤は、さらに(e)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル(前記(c)成分に該当する場合を除く)、ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテル、及びポリオキシアルキレンステロールエーテルのうちのいずれか1つ以上を含んでもよい。(e)成分により第2剤の第1剤との混合性をより向上させる。(e)成分は、親水基の占める体積が比較的大きい非イオン性界面活性剤である。このような非イオン性界面活性剤が油滴-連続層の界面に配列すると、油滴の周囲に親水基の厚い層が形成されると考えられる。この厚い親水基層の存在により、油滴同士の相互作用が弱められ、連続層の流動性が高まると推測される。その結果として、混合性が向上すると考えられる。ここでいう流動性とは粘度と異なる概念であり、乳化構造中の連続層の動きやすさを意味する。そのため、(e)成分を配合することで粘度を下げることなく混合性を向上できる。
【0032】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを構成するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、それぞれ好ましくは60モル以下、より好ましくは50モル以下、さらに好ましくは40モル以下である。かかる数値範囲により、乳化安定性及び混合性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール類1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0033】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコールが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを形成するアルキル基としては、炭素数8~24のアルキル基が好ましく、炭素数12~18のアルキル基がより好ましい。
【0034】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの具体例としては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O.(エチレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))、4P.O.(プロピレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ)))HLB16.5、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(1E.O., 4P.O.)HLB9.5、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.O., 4P.O.)HLB10.5、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O., 8P.O.)HLB12.5、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル(30E.O., 6P.O.)HLB12.0等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルのHLB値は、適宜設定されるが、好ましくは8以上、より好ましくは13以上である。HLB値が8以上であると、第2剤の第1剤との混合性をより向上させる。
【0036】
尚、HLB(hydrophile-lipophile balance)は、W.C.Griffinによって考えられ、非イオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、非イオン性界面活性剤の親油基(アルキル基)と親水基(酸化エチレン鎖)との強さのバランスを数字で表したものである。HLB値は、上記(b)成分欄で述べた乳化法から算出した実測値が用いられる(「ハンドブック-化粧品・製剤原料-」日光ケミカルズ株式会社(昭和52年2月1日改訂版発行)参照)。
【0037】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコール脂肪酸エステルを構成する多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0038】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数8~24の脂肪酸が好ましい。炭素数8~24の脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。飽和脂肪酸の具体例としては、例えばオクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。上記不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキサイド鎖を構成するアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下、さらに好ましくは100モル以下である。かかる数値範囲により、乳化安定性及び混合性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における多価アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0040】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリル、モノミリスチン酸POEグリセリル、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン、POE還元ラノリン等が挙げられる。
【0041】
ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテルを構成するヒドロキシ脂肪酸の具体例としては、例えば12-ヒドロキシドデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9,10-ジヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。また、ヒドロキシ脂肪酸を含む脂肪酸類、例えばヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸等が適用されてもよい。ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテルの具体例としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。
【0042】
ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテルを構成するアルキレンオキサイド鎖としては、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル欄で述べたアルキレンオキサイドの具体例及び付加モル数を採用できる。
【0043】
ポリオキシアルキレンステロールエーテルを構成するステロールの具体例としては、例えばフィトステロール、コレステロール等が挙げられる。ポリオキシアルキレンステロールエーテルを構成するアルキレンオキサイド鎖としては、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル欄で述べたアルキレンオキサイドの具体例及び付加モル数を採用できる。ポリオキシアルキレンステロールエーテルの具体例としては、例えばポリオキシエチレンフィトステロール(PEG-30フィトステロール)等が挙げられる。
【0044】
これらの(e)成分の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第2剤の乳化安定性に優れる観点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが好ましい。
【0045】
第2剤中における(e)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。(e)成分の含有量が0.01質量%以上の場合、乳化安定性及び混合性をより向上させる。また、第2剤中における(e)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(e)成分の含有量が5質量%以下の場合、乳化安定性をより向上させる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0046】
(その他)
毛髪脱色・脱染剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、水溶性ポリマー、無機物系高分子、上記以外の油性成分、多価アルコール、上記以外の界面活性剤、pH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0047】
可溶化剤は、例えば、第2剤を液状にするために配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第2剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、第2剤中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0048】
水溶性ポリマーは、毛髪脱色・脱染剤に適度な粘度を与える。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子等が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばデンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
【0049】
半合成高分子の具体例としては、例えば結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0050】
合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム)(ポリクオタニウム-6)(マーコート100:メルク社製)、イタコン酸とPOEアルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0051】
無機物系高分子の具体例としては、例えばベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。これらの無機物系高分子の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0052】
25℃で固形の油性成分は、毛髪にうるおい感を付与したり、毛髪脱色・脱染剤を乳化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりするために、本発明の効果を阻害しない範囲内で配合してもよい。25℃で固形の油性成分としては、例えば25℃で固形の炭化水素、25℃で固形の動植物油脂、25℃で固形のロウ、25℃で固形の高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、25℃で固形の高級脂肪酸、25℃で固形のエステル、及び25℃で固形のシリコーンが挙げられる。
【0053】
25℃で固形の炭化水素の具体例としては、例えば25℃で固体のパラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。25℃で固形の動植物油脂の具体例としては、例えばカカオ脂、シア脂、パーム脂、水素添加パーム核油、水素添加ヒマシ油等が挙げられる。
【0054】
25℃で固形のロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、コメヌカロウ等が挙げられる。25℃で固形の高級アルコールの具体例としては、例えばミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0055】
25℃で固形の高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。25℃で固形のエステルの具体例としては、例えばステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸オレイル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジエトキシエチル等が挙げられる。25℃で固形のシリコーンの具体例としては、例えば分子量150000以上の高重合メチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの油性成分の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0056】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンの具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0057】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり、粘度安定性を向上させたりする。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において下記に示される界面活性剤をさらに含有してもよい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0059】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0060】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば(e)成分以外のエーテル型非イオン性界面活性剤、(c)成分及び(e)成分以外のエステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0061】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0062】
pH調整剤は、毛髪脱色・脱染剤のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤としては、無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸等が挙げられる。塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類、亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
【0063】
第2剤の使用時における剤型は特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。また、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。これらの中で振とう方式により混合性を向上させる観点から液状が好ましい。
【0064】
第2剤の保存時における25℃における粘度の下限は、100mPa・s以上、好ましくは300mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上である。粘度が100mPa・s以上であると、乳化安定性を向上できる。特に、所定容量の密閉容器内に各剤を所定量投入し、振とう混合する場合の混合性を向上できる。第2剤の25℃における粘度の上限は、8000mPa・s以下、好ましくは7000mPa・s以下、より好ましくは6000mPa・s以下である。粘度が8000mPa・s以下であると、第1剤との混合性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0065】
なお、粘度は、例えばB型粘度計を用い、25℃及び1分間の測定条件で求めることができる。B型粘度計の具体例としては、例えばBL型粘度計VISCOMETER(東機産業社製)を挙げることができる。使用するロータ及び回転速度は、測定機器の測定可能な粘度範囲に従い適宜選択される。例えば、粘度100~250mPa・sの場合は1号ロータ、粘度250~2500mPa・sの場合は2号ロータ、2500mPa・s以上の場合は3号ロータを使用し、いずれも回転数12rpmの条件で求めることができる。第2剤の粘度は、上述した可溶化剤、水溶性高分子、油性成分、界面活性剤等の配合割合を変化させることによって適宜調節できる。
【0066】
(2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤)
第1剤は、アルカリ剤を含有する。第1剤に含有されるアルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進させ、毛髪の脱色効果及び/又は脱染効果を向上する働きをする。なお、後述する染毛剤においては、染毛性を向上させる。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、カルバミン酸塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。カルバミン酸塩の具体例としては、例えばカルバミン酸アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。これらのアルカリ剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、毛髪の明度を向上させる効果に優れる観点からアンモニア、アンモニウム塩、アルカノールアミン、炭酸塩が好ましく適用される。
【0067】
使用時における毛髪脱色・脱染剤、すなわち第1剤と第2剤との混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、毛髪脱色・脱染剤が通常の脱色・脱染処理に適用される場合、pHが7~12の範囲となる量で配合されることが好ましく、pH9~12の範囲となる量で配合されることがより好ましい。混合物のpHを7以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤の作用を促進できる。混合物のpHを12以下とすることにより、毛髪脱色・脱染剤の塗布による毛髪のダメージを抑制できる。尚、混合物のpHは、各剤の混合物を水で10倍希釈し、10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0068】
第1剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第2剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0069】
第1剤の使用時又は保存時における剤型は特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。固形状としては、粉末状、粒状、タブレット状等が挙げられる。また、固形状の剤型の場合、分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、硫酸ナトリウム、タルク、乳糖、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合してもよい。これらの分散剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で第2剤との混合性を向上させる観点から使用時における剤型は液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状が好ましく、液状、クリーム状が特に好ましい。
【0070】
<2剤式の染毛剤>
2剤式の染毛剤は、例えば、少なくともアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、(d)酸化剤等を含有する第2剤とから構成される。以下、上述した毛髪脱色・脱染剤との相違点を中心に説明する。
【0071】
(2剤式の染毛剤の第2剤)
染毛剤の第2剤は、例えば、上述した毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する。
(2剤式の染毛剤の第1剤)
染毛剤の第1剤は、例えばアルカリ剤、及び酸化染料を含有する。第1剤に含有されるアルカリ剤の例としては、上述した毛髪脱色・脱染剤において使用されるアルカリ剤の具体例として先に説明したのと同じである。酸化染料は、酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、酸化染料は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
【0072】
染料中間体としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0073】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
【0074】
染毛剤中における酸化染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。酸化染料の含有量が0.01質量%以上であると、特に色味をより向上できる。染毛剤中における酸化染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。酸化染料の含有量が10質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0075】
また、第1剤は必要に応じて前述した成分以外の成分、例えば上述した毛髪脱色・脱染剤の第1,2剤に含まれる成分をさらに含有してもよい。
次に、本実施形態の酸化剤含有組成物の使用方法を以下に説明する。
【0076】
上述した各剤を使用時に混合して混合物が調製される。混合物の調製は、液密に閉塞可能な所定容量の密閉容器内に各剤を所定量投入し、振とう混合することにより調製される。混合操作のしやすさから、好ましくは100~300mLの筒状の密閉可能な容器を用いた振とう混合が好ましい。また、容器内における混合物の総量は、混合性向上の観点から密閉容器の内容量に対して20~80容量%であることが好ましい。各剤が投入された密閉容器による振とう混合は、手動で上下・左右の往復運動や回転運動等により行ってもよく、加振機等を用いて機械的に行ってもよい。
【0077】
2剤式の組成物の第1剤と第2剤の混合比は、適宜設定されるが、第1剤の質量を1とした場合、第2剤の質量の下限値は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上である。第1剤の質量を1とした場合、第2剤の質量の上限値は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる範囲に規定することにより混合性をより向上できる。
【0078】
混合物の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、具体例として25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。刷毛又は櫛での取り易さや毛髪への伸び及び密着性が向上して、塗布操作性に優れるという観点から、クリーム状、ペースト状、乳液状、ゲル状とすることが好ましい。得られた混合物は、必要量だけ薄手の手袋をした手、コーム(櫛)、ブラシ、刷毛、アプリケーター等の塗布具、吐出口を有する蓋又は櫛付き容器等により毛髪に塗布される。
【0079】
混合物が毛髪に塗布された後、所定時間経過後、常法に従い毛髪に塗布した混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いシャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。シャンプー用組成物は、毛髪の洗浄用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のシャンプー用組成物を適用できる。次に、好ましくは常法に従いリンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。リンス用組成物は、毛髪のリンス用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のリンス用組成物を適用できる。リンス用組成物を用いた処理工程は、公知のリンス用組成物を適用できる。次に、好ましくは常法に従い毛髪を乾燥する工程が行われる。
【0080】
上記実施形態の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として使用される酸化剤含有組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の酸化剤含有組成物は、(d)酸化剤の他、所定量の(a)成分、(b)成分、(c)成分を含有する。したがって、酸化剤含有組成物の乳化安定性を維持しながら、他の剤との振とう方式による混合性を向上できる。特に脱色力、脱染力、又は染毛力向上を目的として(a)成分を高配合した場合であっても、乳化安定性の低下を抑制できる。
【0081】
(2)本実施形態において、(e)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル(前記(c)成分に該当する場合を除く)、ポリオキシアルキレンヒドロキシ脂肪酸エーテル、及びポリオキシアルキレンステロールエーテルのうちのいずれか1つ以上を含む場合、酸化剤含有組成物の乳化安定性及び他の剤との混合性をより向上させる。特に、酸化剤含有組成物の粘度低下を伴わなくても、他の剤との混合性を向上させる。
【0082】
(3)本実施形態において、(b)成分としてN-アシルタウリン塩を含む場合、乳化安定性をより向上させる。
(4)一般に、毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤が第1剤と第2剤とから構成される場合、第1剤と第2剤の混合比率を2剤過多、例えば第1剤:第2剤=1:3超(質量比)にすることで混合性を向上できる。しかしながら、この場合、混合物中における第1剤由来の成分、例えば染料、コンディショニング成分等が相対的に少なくなる。そのため、白髪をしっかり染める色番が作り難くなる場合があり、また感触の向上効果が効率的に得られない場合があった。
【0083】
本実施形態において、毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤が第1剤と第2剤との混合比が、質量比として1:0.5~3である場合であっても混合性を低下させることがなく、また混合物中における第1剤に配合される成分の含有量を必要以上に低下させることがない。そのため、第1剤中の成分によって発揮される効能を有効に発揮できる。
【0084】
尚、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記染毛剤において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。
【0085】
・上記実施形態の酸化剤含有組成物において(a)~(e)の各成分は、保存時に酸化剤含有組成物中に配合されていればよく、各剤を構成するその他の各成分の一部を別剤として構成し、剤型の数をさらに増やしてもよい。かかる構成においても、乳化安定性及び混合性を向上できる。
【0086】
・上記実施形態の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤は、本発明の効果が奏する限りにおいて、上述した毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤を構成する各剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、剤型の数を増やしてもよい。
【0087】
例えば、上述した毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤の第1剤において、アルカリ剤とアルカリ剤以外の組成とを分けて別剤として構成されてもよい。また、さらに過硫酸塩、過炭酸塩、過硼酸塩等の酸化助剤を含む剤を組み合わせた多剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤として構成されてもよい。
【実施例0088】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
表1~3に示す各成分を含有する、酸化染毛剤の第1剤、酸化剤含有組成物としての第2剤をそれぞれ調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。尚、表中「a」~「d」の表記は、本願請求項記載の各(a)~(d)成分に対応する化合物を示す。「b/a」は、(a)成分の含有量に対する(b)成分の含有量の質量比を示す。化合物名中におけるE.O.の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を示す。P.O.の数値は、プロピレンオキサイドの付加モル数を示す。
【0089】
第2剤の25℃における粘度は、B型粘度計としてBL型粘度計VISCOMETER(東機産業社製)を使用し、粘度100~250mPa・sの場合は1号ロータ、粘度250~2500mPa・sの場合は2号ロータ、2500mPa・s以上の場合は3号ロータを使用し、いずれも回転数12rpmの条件で求めた。第2剤の粘度を表中における「粘度」欄に示す。
【0090】
第2剤の乳化安定性及び第1剤との混合性について、下記に示す方法により評価した。
(乳化安定性)
液状である第2剤の乳化安定性について、ガラス製透明容器に入れ、60℃で1日放置した後、第2剤の分離状態をパネラー5名が目視にて評価することにより判断した。分離が全くないものを、優れる(5点)、分離がほとんどないものを、良好(4点)、分離がごくわずかに見られるものを、可(3点)、分離がやや多く見られるものを、やや不良(2点)、分離が多く見られるものを、不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0091】
(混合性)
円筒形状の樹脂製の密閉容器(内径40mm×高さ140mm)に上記第1剤及び第2剤を質量比として1:1.5で投入し、30cm程度のふり幅で上下に30往復の手動で振とう操作を行った。
【0092】
ガラス板に0.2g量り取り、もう1枚のガラス板で混合物を挟み込み、パネラー5名が目視にて溶け残りがないかを以下の基準で評価することにより、混合性を判断した。不均一な部分及び溶け残りが全くないものを、優れる(5点)、不均一な部分及び溶け残りがほとんどないものを、良好(4点)、不均一な部分又は溶け残りがごくわずかに存在するものを、可(3点)、不均一な部分又は溶け残りがやや多いものを、やや不良(2点)、不均一な部分又は溶け残りが多いものを、不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0093】
さらに、明度及び油きしみ感について、下記に示す方法により評価した。
混合性の評価において得られた酸化染毛剤の混合物を、調製直後に吐出口付櫛を装着し、容器を押圧しながら黒毛ウィッグ(ビューラックス社製クィーンカットNo.775S)を櫛で梳かしながら混合物を塗布した。30℃にて15分間放置した。次に、ウィッグに付着した酸化染毛剤を40℃の水で30秒間すすいだ後、ウィッグにシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、それぞれ処理毎に水で洗い流している。続いて、ウィッグを温風で乾燥した後、一日間放置した。
【0094】
(明度)
上記各例の染毛処理後のウィッグの明度について、パネラー5名が標準光源下で目視にて、以下の基準で評価することにより、明度が優れるか否かについて判断した。優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)、及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0095】
(油きしみ感)
油きしみ感について、ウィッグに付着した各混合液を40℃の水で30秒間すすいだ直後からシャンプーで洗浄する前の間において、パネラー5名が以下の基準で評価することにより、油きしみ感の評価が優れるか否かについて判断した。油きしみ感を全く感じない場合を、優れる(5点)、油きしみ感をほとんど感じない場合を、良好(4点)、油きしみ感をごくわずかに感じる場合を、可(3点)、油きしみ感を感じる場合を、やや不良(2点)、及び油きしみ感を強く感じる場合を、不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
表2,3に示されるように、各実施例は、各評価項目について可以上の結果であることが確認された。また、(e)成分を配合することで粘度を下げることなく混合性を向上できることが確認された。表3に示されるように、(b)成分を含有しない比較例1は、各実施例に対して、特に乳化安定性の評価が劣ることが確認された。(c)成分を含有しない比較例2は、各実施例に対して、特に乳化安定性の評価が劣ることが確認された。第2剤の粘度が9000mPa・sである比較例3は、各実施例に対して、混合性の評価が劣ることが確認された。第2剤の粘度が4mPa・sである比較例4は、各実施例に対して、特に乳化安定性の評価が劣ることが確認された。(a)成分が第2剤中において4質量%未満である比較例5,6は、各実施例に対して、特に明度の評価が劣ることが確認された。
【0099】
(処方例)
以下に、本発明の酸化染毛剤の処方例を示す。
処方例1,2は、表4に示される酸化染毛剤の第2剤を構成した。実施例1と同様に評価を行った結果、処方例1,2の第2剤は、実施例1と同様に乳化安定性、混合性、明度、及び油きしみ感に優れることが確認された。
【0100】
【表4】