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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117230
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】間接支持具
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B60N3/02 Z
B60N3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013813
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】叶 久美子
(72)【発明者】
【氏名】扇 晴子
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088EA01
(57)【要約】
【課題】使用者が把持部材に間接的に接して自身の身体を支持可能な使用範囲の広い間接支持具を提供する。
【解決手段】間接支持具100は、つり革や手すり等の把持部材Sに対し使用者の手指Uを直接には触れずにつかまるためのものであって、把持部材Sと当接する掌側当接面111を有する掌側支持部110と、掌側支持部110とは反対の側にて把持部材Sと当接する甲側当接面121を有する甲側支持部120と、掌側支持部110と甲側支持部120との間に設けられて掌側支持部110および甲側支持部120の相互を接続するとともに使用者の手指Uで保持可能に形成された保持部130と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者がつり革や手すり等の把持部材に間接的に接して自身の身体を支える際に用いる間接支持具であって、
前記把持部材に手指の掌側で当接させる掌側当接面を有する掌側支持部と、
前記掌側支持部とは反対の手指の甲側にて前記把持部材に当接させる甲側当接面を有する甲側支持部と、
前記掌側支持部と前記甲側支持部との間に設けられて前記掌側支持部および前記甲側支持部の相互を接続するとともに使用者の手指で保持可能に形成された保持部と、
を備えることを特徴とする間接支持具。
【請求項2】
前記掌側支持部は、使用者が自身の手指で前記保持部を保持することで当該間接支持具を装着した装着姿勢において、前記掌側当接面が、使用時の指の延在方向とは交差する方向の軸を包むように曲がる凹湾曲形状を呈しており、前記掌側当接面とは反対側の面が使用者の手の掌側に接する掌側保持面とされている請求項1に記載の間接支持具。
【請求項3】
前記掌側支持部は、前記装着姿勢において、左右が指先側に向けて凸円弧状にそれぞれ形成されるとともに指先側中央部に窪みが形成されている請求項2に記載の間接支持具。
【請求項4】
前記甲側支持部は、使用者が自身の手指で前記保持部を保持することで当該間接支持具を装着した装着姿勢において、前記甲側当接面が、使用時の指の延在方向とは交差する方向の軸を包むように曲がる凹湾曲形状を呈しており、前記甲側当接面とは反対側の面が使用者の手の甲側に接する甲側保持面とされている請求項1~3のいずれか一項に記載の間接支持具。
【請求項5】
前記甲側支持部は、前記装着姿勢において、指先側の幅よりも指先とは反対側の幅が広くなっている請求項4に記載の間接支持具。
【請求項6】
前記掌側当接面および前記甲側当接面の少なくとも一方は、前記把持部材に対して当接する凹湾曲形状の当接範囲が、中心角が180°未満の円弧をもつ凹曲面から形成されている請求項2~5のいずれか一項に記載の間接支持具。
【請求項7】
前記装着姿勢において、前記掌側当接面の凹湾曲形状の中心は、前記甲側当接面の凹湾曲形状の中心よりも指先側に位置している請求項6に記載の間接支持具。
【請求項8】
前記装着姿勢において、前記保持部の下端面は、前記掌側当接面の凹湾曲形状の中心と前記甲側当接面の凹湾曲形状の中心とを結ぶ線分を水平にしたときに、前記掌側当接面の凹湾曲形状の中心の側が高く、前記甲側当接面の凹湾曲形状の中心の側が低くなるように傾斜する面になっている請求項7に記載の間接支持具。
【請求項9】
前記保持部は、使用者の手指のうち隣り合う指の間に挟持されるようにくびれている請求項1~8のいずれか一項に記載の間接支持具。
【請求項10】
前記保持部は、使用者の手指のうち一の指が挿通される挿通孔を有する請求項1~8のいずれか一項に記載の間接支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者がつり革や手すり等の把持部材に間接的に接して自身の身体を支える際に用いる間接支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば公共交通機関を利用する際に、ウイルスや細菌による接触感染の防止若しくはそれらによる感染リスクを軽減するために、手すりやつり革等の把持部材に対して直に手指を触れたくないと考える人も多い。
一方、立位での乗車や、座位から立位へと姿勢を変える際には、立ち姿勢の安定性の観点から、把持部材によって自身の身体を支えることが好ましい。
そこで、例えば特許文献1には、間接支持具として、把持部材を間接的に把持するための嵌合スペースを有する携帯用グリップが提案されている。
【0003】
同文献記載の技術では、携帯用グリップの嵌合スペースによって把持部材を包むように嵌合させるとともに、嵌合スペースとは反対側の面に使用者の指の腹が接するように構成されている。
しかし、この種の間接支持具を公共交通機関で実際に使用する際には、車内の混雑により身動きが取れずに窮屈な体勢を強いられたり、車両の急な揺れによって咄嗟に立ち姿勢を支えたりする状況がある。
【0004】
このような状況下において、特許文献1に記載の携帯用グリップでは、嵌合スペースが把持部材を包むように嵌合されるとともに、使用者の指の腹が嵌合スペースとは反対側の面を把持している状態にある。そのため、把持部材とこれに嵌合する嵌合スペースとの位置関係によっては、使用者自身の姿勢の変化に対して把持状態が追従できず、使用者が自身の身体を支えるのには適さない状況が起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-137050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、使用者が把持部材に間接的に接して自身の身体を支持可能な使用範囲が広い間接支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、この種の間接支持具において、間接支持具の使用者が把持部材に間接的に接して自身の身体を支える際に可能な使用範囲を広げる上では、使用者が自身の手指の掌側とは別の方向においても把持部材で自身の身体を支えられることが好ましいという結論に至った。
すなわち、本発明の一態様に係る間接支持具は、使用者がつり革や手すり等の把持部材に間接的に接して自身の身体を支える際に用いる間接支持具であって、前記把持部材に手指の掌側で当接させる掌側当接面を有する掌側支持部と、前記掌側支持部とは反対の手指の甲側にて前記把持部材に当接させる甲側当接面を有する甲側支持部と、前記掌側支持部と前記甲側支持部との間に設けられて前記掌側支持部および前記甲側支持部の相互を接続するとともに使用者の手指で保持可能に形成された保持部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る間接支持具によれば、掌側支持部と甲側支持部とは、互いに反対の側にて把持部材と当接する当接面を有する。そのため、使用者は、掌側支持部と甲側支持部とを使い分けることで、把持部材に対して異なる2つの姿勢で自身の身体を支えることができる。よって、本発明の一態様に係る間接支持具は、使用者が把持部材で自身の身体を支えることが可能な使用範囲が広いといえる。
【0009】
つまり、本発明の一態様に係る間接支持具によれば、使用者が自身の手指で保持部を保持することで当該間接支持具を装着した装着姿勢において、使用者の手指の掌側だけでなく、手指の掌側とは反対側、すなわち、手指の甲側においても把持部材に間接的に接して身体を支えることができる。
したがって、本発明の一態様に係る間接支持具によれば、例えば公共交通機関の車両において、混雑時の窮屈な体勢や車両の揺れ等により、咄嗟に自身の身体を支えるような状況下においても、把持部材に対して当該間接支持具を介することで間接的に接して適切な姿勢を保持できる。よって、例えば公共交通機関の車両であれば、使用者の乗車姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明によれば、使用者が把持部材に間接的に接して自身の身体を支持可能な使用範囲が広い間接支持具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一態様に係る間接支持具の第一実施形態の斜視図である。
図2】第一実施形態の間接支持具の正面図である。
図3】第一実施形態の間接支持具の背面図である。
図4】第一実施形態の間接支持具の側面図(a)および同図(a)でのZ-Z断面図(b)である。
図5】第一実施形態の間接支持具の保持部を用いて保持することで使用者の手指に装着した装着状態を示し、同図は手のひら側から見たイメージを示している。
図6】第一実施形態の間接支持具の保持部を用いて保持することで使用者の手指に装着した装着状態を示し、同図は手の甲側から見たイメージを示している。
図7】第一実施形態の間接支持具において、掌側支持部での使用状態のイメージ図である。
図8】第一実施形態の間接支持具において、甲側支持部での使用状態のイメージ図である。
図9】本発明の一態様に係る間接支持具の第二実施形態の斜視図である。
図10】第二実施形態の間接支持具の平面図である。
図11】第二実施形態の間接支持具の側面視方向での挿通孔の軸線に沿った断面図である。
図12】第二実施形態の間接支持具の背面図である。
図13】第二実施形態の間接支持具の保持部を用いて保持することで使用者の手指に装着した状態を示し、同図は手のひら側から見たイメージを示している。
図14】第二実施形態の間接支持具の保持部を用いて保持することで使用者の手指に装着した状態を示し、同図は手の甲側から見たイメージを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具身体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0013】
[第一実施形態の間接支持具]
以下、本発明の一態様に係る間接支持具について、第一実施形態の間接支持具を例に図面を適宜参照しつつ説明する。
図1から図4に示すように、第一実施形態の間接支持具100は、掌側支持部110および甲側支持部120、並びに、掌側支持部110と甲側支持部120とを繋ぐ保持部130を備える。この間接支持具100は、使用者の手に収まる程度の携帯可能なサイズである。各部のサイズ設定に際しては、人間工学を考慮して、小型のものであれば例えば成人女性の5パーセンタイル値、大型のものであれば例えば成人男性の95パーセンタイル値等に基づいて設定する。
【0014】
間接支持具100を構成する材料は、所期の形態が保持されていれば特に限定されず、例えば金属製、木製、プラスチック製、または、ゴムやエラストマ製とすることができる。例えば、金属であれば、抗菌性のある銅製とすることは好ましい。
また、間接支持具100を使用時に把持部材との当接音が可及的に生じないようにする上では樹脂製が好ましい。また、ゴムやエラストマ製とする場合、適度な可撓性を有することは好ましく、また、素材に抗菌剤を練りこんで抗菌性を有することは好ましい。
また、間接支持具100の製造方法は、所期の形態を形成可能であれば特に限定されず、構成する材料に応じて、例えば切削加工や、鋳造、鍛造、射出成型等で製造してもよいし、3Dプリンタによって製造してもよい。
【0015】
使用者が自身の手指に間接支持具100を装着した状態を図5および図6に示す。図5および図6に示すように、第一実施形態の保持部130は、使用者の手指のうち隣り合う指の間に挟持される。特に、この保持部130は、人間工学を考慮したエルゴノミクスデザインとされている。つまり、本実施形態の保持部130は、保持部130の幅(両側面131、132相互の対向距離)が、指を自然に軽く広げた厚さになっている。また、第一実施形態の保持部130は、使用者が自然に挟持可能なように、両側面131、132相互の対向距離は、中央部が狭く端部に向かうにつれて拡幅する「くびれ形状」とされている。そのため、保持部130は、装着状態において、手指に対するおさまりが良くなっている。さらに、保持された間接支持具100の安定感が良くなっている。
図5および図6に示す例では、保持部130の「くびれ形状」の中央部の幅は、使用者の手指Uのうち、第二指(人さし指)U2と第三指(中指)U3との間で挟持するのに自然な寸法(例えば5mm)が設定されている。
【0016】
掌側支持部110は、図5および図7に示すように、つり革の把持部や軸線が水平に設けられる手すりのように、環状若しくは把持部分の軸線が水平に設けられる横型の把持部材Shを支持対象として想定した形状である。図5および図7に示す装着状態において、第一実施形態の掌側支持部110は、掌側当接面111とは反対側の掌側保持面112が、使用者の手の掌および指の腹に接することで装着姿勢が安定するようになっている。
【0017】
詳しくは、本実施形態の掌側支持部110は、略鞍形状を呈しており、掌側当接面111と、掌側当接面111とは反対側の掌側保持面112と、を有する。掌側支持部110は、図5の装着状態を基準として見たときに、左右対称に形成される一方、上下方向(本明細書において、指の延在方向にて指先を上とし手首を下とした方向)には非対称の形状である。
つまり、本実施形態の掌側支持部110は、使用者が自身の手に装着した装着姿勢において、図2に示すように、下側縁部114が、手首側に凸の円弧形状に形成され、上側縁部が、中央部が凹の円弧状の窪み115を有するとともに、窪み115の両側の部分が、指先側の左右両端の位置にて指先側に凸の円弧状に張り出す二つの延出部113とされている。
【0018】
また、本実施形態の掌側支持部110では、使用者が自身の手指に間接支持具100を装着した装着姿勢において、図4(a)に側面図を示すように、掌側当接面111の当接対象は、横型の把持部材Shが使用時の指の延在方向とは交差する方向の軸となる。掌側当接面111は、この把持部材Shの外周面を掌側に包むように曲がる凹湾曲形状を有している。
【0019】
さらに、本実施形態の掌側当接面111の凹湾曲形状は、円筒状の把持部材Shに対して当接する凹湾曲形状の当接範囲が、中心角αが180°未満の円弧をもつ凹曲面から形成されている。中心角αは、好ましくは60°~120°、より好ましくは90°~100°の円弧をもつ凹曲面から形成するとよい。
また、凹湾曲形状の曲率半径は、想定される把持部材Shの曲率半径よりも大きいことが好ましい。例えばスタンションポール(パイプ外径Φ40-50mm)が把持部材Shであれば、凹湾曲形状の曲率半径をそれよりも大きく設定する。
【0020】
これにより、本実施形態の掌側当接面111は、横型の把持部材Shの外面に対し、把持部材Shの軸線に沿った断面形状が凹の円弧をなす凹曲面形状とされているので、掌側当接面111は、軸線が横型の把持部材Shの外面に対して広い面で安定して当接可能であり、また、その当接状態からの脱着もとても容易になっている。なお、同図での把持部材Shとして示す二点鎖線は、円筒状の把持部材Sの横断面のイメージである。
【0021】
特に、この掌側支持部110は、人間工学を考慮したエルゴノミクスデザインとされている。つまり、本実施形態の掌側支持部110は、掌側支持部110の下端部が指の付け根部分に当たるように形成されるとともに、掌側支持部110の上端部が、指の第二関節の凹部に丁度当たるように形成されている。そのため、掌側支持部110は、実際の使用時に、指の過度の曲がりを抑制して把持部材Sと指との接触を生じ難くするとともに、指を自然に握るような形にした支持状態において、手指に対するおさまりが良くなっている。
【0022】
一方、甲側支持部120は、図4に示すように、把持部材Svに当接させる甲側当接面121と、甲側当接面121とは反対側の甲側保持面122と、を有する。
詳しくは、図1から図4に示すように、甲側支持部120は上下非対称の略引金形状である。甲側支持部120は、装着時において、指先側の上端部124に比べてその反対側となる指の付け根側の下端部123の幅が広くなっている。甲側支持部120の上端部124および下端部123は手の甲側に突設されている。
【0023】
甲側支持部120は、図8に示すように、軸線が垂直に設けられる手すり等、把持部軸線が縦型の把持部材Svに当接させる使用態様を想定した形状である。本実施形態の甲側当接面121は、図6に示すように、使用者が自身の手に間接支持具100を装着した装着姿勢において、図4に示すように、縦型の把持部材Svの外面に対して凹曲面形状とされ、甲側支持部120の全身体が略引金形状を呈している。甲側当接面121とは反対側の甲側保持面122が使用者の手の甲に接する面になっている。
【0024】
特に、この甲側支持部120は、人間工学を考慮したエルゴノミクスデザインとされている。つまり、本実施形態の甲側支持部120は、甲側支持部120の下端部123が指の付け根部分に当たるように形成されるとともに、甲側保持面122が、手指の股部UTの傾斜面および指U2,U3の付け根付近の手の甲Bに丁度当たるように形成されている。そのため、甲側支持部120は、装着状態において、手指に対するおさまりが良くなっている。さらに、保持された間接支持具100の安定感が良くなっている。
【0025】
このように、本実施形態の間接支持具100においては、掌側支持部110、保持部130、甲側支持部120をエルゴノミクスデザインとすることにより、図4(a)に示すように、側面視において、掌側当接面111の凹湾曲形状の中心は、甲側当接面121の凹湾曲形状の中心よりも指先側に位置している。
換言すると、掌側当接面111の凹湾曲形状の中心と甲側当接面121の凹湾曲形状の中心とを結ぶ線分を水平にしたときに、手指の股部UTの傾斜面に沿うように、保持部130の下端面133が、掌側当接面111の凹湾曲形状の中心の側が高く、甲側当接面121の凹湾曲形状の中心の側が低くなるように傾斜する面になっている。
【0026】
これにより、手指に対するおさまりが非常に良くなっている。つまり、同図に二点鎖線で実際の使用時における使用者の手指Uのイメージを示すように、間接支持具100を保持時の指の位置(U2)は、手指の股部UTの傾斜面に下端面133がピタリと当接して、下端面133の傾斜した面によって保持されるため装着状態での安定感が大幅に増す。また、指を自然に握るような形にした支持状態において、装着時の指(U2)が甲側保持面122に沿って自然と曲がる形になる。そのため、手指Uから手首Nにかけて自然な姿勢で使用できる。また、使用時に、使用者の手首Nに無理のない楽な姿勢となる。
【0027】
本実施形態の甲側支持部120では、図6の装着状態において、甲側当接面121の当接対象は、図4に示すように、縦型の把持部材Svが使用時の指の延在方向に沿った方向の軸とは交差する方向の軸となる。甲側当接面121は、この把持部材Svの外周面を甲側に包むように曲がる凹湾曲形状を有している。
【0028】
甲側当接面121の凹湾曲形状は、円筒状の把持部材Svに対して当接する凹湾曲形状の当接範囲が、中心角βが180°未満の円弧をもつ凹曲面から形成されている。中心角βは、好ましくは60°~120°、より好ましくは90°~100°の円弧をもつ凹曲面から形成するとよい。
また、凹湾曲形状の曲率半径は、想定される把持部材Svの曲率半径よりも大きいことが好ましい。例えばスタンションポール(パイプ外径Φ40-50mm)が把持部材Svであれば、凹湾曲形状の曲率半径をそれよりも大きく設定する。
【0029】
これにより、甲側当接面121は、縦型の把持部材Svの外面に対し、把持部材Svの軸線に沿った断面形状が凹の円弧をなす凹曲面形状とされているので、甲側当接面121は、軸線が縦の把持部材Svの外面に対して広い面で安定して当接可能であり、また、その当接状態の脱着もとても容易になっている。なお、同図の把持部材Svとして示す二点鎖線は、円筒状の把持部材Sの横断面のイメージである。
【0030】
[第一実施形態の間接支持具の使用方法]
次に、第一実施形態の間接支持具100の使用方法および作用効果について説明する。なお、横型の把持部材Shと縦型の把持部材Svとを特に区別しないときは、把持部材Sと呼称する。
第一実施形態の間接支持具100を使用する際、使用者は、図5および図6に示すように、掌側支持部110を手指の掌Pの側に位置させるとともに、保持部130に対して掌側支持部110の下側縁部114の側から、保持部130の両側に人差し指(第二指)U2と中指(第三指)U3とを差し込み、人差し指U2と中指U3の間に保持部130を挟んで間接支持具100を保持する。
【0031】
これにより、掌側支持部110は手指の掌Pの側に配置され、甲側支持部120は手指の甲Bの側に配置される。なお、間接支持具100の保持部130を挟む指は、人差し指(第二指)U2と中指(第三指)U3に限らず、他の指の間の位置であっても構わない。また、右手に限定されず左手に装着してもよい。
【0032】
第一実施形態の間接支持具100は、使用時には、掌側支持部110、および指の付け根側に向かって拡幅する甲側支持部120の円弧端面がストッパとして機能して、間接支持具100の装着姿勢が安定する。
そのため、使用者は、間接支持具100を手指に装着した状態で、仮に、手の掌若しくは手の甲を地面に対して水平に向けても、保持部130を挟持している二本の指の間を大きく広げない限りは、間接支持具100が手指から外れて落下することが防止される。
【0033】
間接支持具100の掌側支持部110は、図7に示すように、主に、横型の把持部材Shを握って保持する際に使用する。具体的には、公共交通機関等に立位で乗車の際、つり革や顔の高さにあって水平方向に設けられた手すりのような横型の把持部材Shに間接的に接して自身の身体を支える場合が想定される。
【0034】
詳しくは、同図に示すように、掌側支持部110は、主に、横型の把持部材Shの外周面を上方から握るように保持する際に使用する。掌側支持部110の掌側当接面111が、横型の把持部材Shの周面に接触し、使用者の指の腹が掌側支持部110の掌側保持面112に接触する。よって、本実施形態の間接支持具100によって、使用者の指の腹が把持部材Shに直接触れ難くなっている。
【0035】
間接支持具100を横型の把持部材Shから外す場合、使用者は、甲側支持部120に把持部材Shから間接支持具100を外す向きの力を伝える。これにより、間接支持具100を把持部材Shから容易に外すことができる。そのため、例えば、車両に急な揺れが生じて使用者の体勢が大きく変化した場合であっても、使用者は、保持している把持部材Shを咄嗟に把持部材Shの他の部分や、他の把持部材ShないしSvに変更することが容易である。
【0036】
特に、本実施形態の間接支持具100であれば、掌側支持部110は、掌側当接面111が、水平方向での断面形状が凹の円弧をなす凹曲面形状とされているので、横型の把持部材Shの外面に対する当接状態が安定する。さらに、掌側支持部110の全体が略鞍型形状を呈しているため、手指で保持する際の自然な形状とする上で好適である。
さらにまた、掌側支持部110は、その全体が略鞍型形状を呈することにより、図4(b)に断面を示すように、掌側当接面111は、把持部材Shの外面側に向けて凸となる緩やかな凸曲面形状111Rとなる。そのため、例えば把持部材Shが、円環状保持部を有するつり革のような場合であっても、円環状保持部との馴染みが良く、使い勝手に優れている。
【0037】
また、使用者が間接支持具100を把持部材Shに対して使用するときは、図7に示すように、使用者の手指は把持部材Shを包み込むような形となる。そのため、間接支持具100の使用状態では、掌側支持部110および保持部130が使用者の指や手のひらの陰に隠れる。そのため、他人からは使用状態にある間接支持具100をほとんど目視できないため、間接支持具100の使用に際し、使用者が恥ずかしいと感じる抵抗感を少なくする上で好適である。
【0038】
特に、本実施形態の間接支持具100であれば、掌側支持部110の全体が略鞍型形状を呈しているため、手指で自然に保持している状態において、掌側支持部110のほとんどの部分が手指によって覆われる。そのため、間接支持具100の使用に際し、使用者が恥ずかしいと感じる抵抗感を少なくする上でより好適である。
【0039】
また、間接支持具100の使用時は、保持部130を挟持している二本の指の第二関節よりも指先の部分が、掌側支持部110の指先側両端の二つの延出部113の手指側のふちにそれぞれ当接する。これにより、間接支持具100の掌側支持部110に対して使用者の力が伝わりやすくなる。そのため、使用者は、間接支持具100の掌側支持部110を介して把持部材Shをより安定して間接的に保持することができる。よって、車両での使用者の乗車姿勢をより安定させることができる。
【0040】
また、第一実施形態の間接支持具100であれば、掌側支持部110の使用態様としては、図7に示したような、水平に設置された手すりのような横型の把持部材Shに対して使用するだけでなく、例えば、つり革の内側部や鉛直に設置された手すりのように、図8にしたような縦型の把持部材Svに対しても使用できる。
【0041】
甲側支持部120の使用態様としては、公共交通機関の車両内にて立位で乗車する際や、座位から立位へと姿勢を変える際などに、自身の身体のバランスを保つために手すり等の縦型の把持部材Svに手を押し当てる状況などを想定できる。甲側支持部120の使用態様では、使用者は、把持部材Svを握る動作が不要であり、掌側支持部110を使用する使用態様に比べて、把持部材Svを用いた自身の姿勢保持がより手軽に可能である。
【0042】
詳しくは、図8に示すように、間接支持具100の甲側支持部120は、指の背側で甲側当接面121を把持部材Svに押し当てて使用する。これにより、甲側支持部120によっても、車両での使用者の乗車姿勢を安定させることができる。甲側当接面121が把持部材Svに接触し、甲側支持部120の甲側保持面122に指の背が接触する。よって、使用者の指の背は把持部材Svには直接触れ難い。
【0043】
間接支持具100を縦型の把持部材Svから外す場合、使用者は、掌側支持部110に把持部材Svから間接支持具100を外す向きの力を伝える。これにより、間接支持具100を把持部材Svから容易に外すことができる。そのため、例えば、車両に急な揺れが生じて使用者の身体勢が大きく変化した場合であっても、使用者は、保持している把持部材Svを咄嗟に把持部材Svの他の部分や、他の把持部材ShないしSvに変更することが極めて容易である。
【0044】
特に、物との接触が多い指の腹で把持部材Sを触りたくないと感じる人にとっては、たとえ間接支持具を介していたとしても、把持部材Sを握るような動作には抵抗があると考えられる。その点、第一実施形態の間接支持具100であれば、甲側支持部120を用いることにより、物との接触の少ない、手指の甲側で把持部材Svを保持できることは利点である。
【0045】
また、第一実施形態の間接支持具100であれば、甲側支持部120の使用態様としては、図8に示したような、鉛直に設置された手すりのような縦型の把持部材Svに対して使用するだけでなく、図7に示したような水平に設置された手すりのような横型の把持部材Shに対しても使用できる。
【0046】
甲側支持部120を横型の把持部材Shから下方に外す場合、保持部130を挟持する使用者の指が前後の掌側支持部110と甲側支持部120との間に挟まれた状態にあるため、使用者は、掌側支持部110に対して横型の把持部材Shから間接支持具100を外す向きに容易に力を伝えるだけでよい。これにより、使用者は、甲側支持部120を把持部材Shから容易に外すことができる。
【0047】
このように、本実施形態の間接支持具100であれば、掌側支持部110と甲側支持部120とは、互いに反対の側にて把持部材Sと当接する当接面111、121を有するため、使用者は、掌側支持部110と甲側支持部120とを使い分けることで、把持部材Sに対して異なる2つの姿勢で自身の身体を支えることができる。よって、本実施形態の間接支持具100は、把持部材Sにつかまることが可能な使用範囲が広いといえる。
【0048】
これにより、本実施形態の間接支持具100であれば、車両に急な揺れが起こり、使用者の体勢が大きく変化した場合にも、使用者は、保持する把持部材Sv若しくは把持部材Shを迅速に変更できる。
また、使用者は、例えば間接支持具100を手に予め装着しておき、車両に急な揺れが起こって、どうしても把持部材Sで自身のバランスを取らなければならない事態に陥った際に、咄嗟に間接支持具100を使うことも可能である。
【0049】
特に、本実施形態の間接支持具100では、掌側支持部110または甲側支持部120は、把持部材Sに対して当接する凹湾曲形状の当接範囲が、中心角が180°未満の円弧をもつ凹曲面から形成されているため、把持部材Sからの間接支持具100の脱着をより容易に行えるようにする上で好適である。
これにより、使用者は、可及的に把持部材Sとの直接の接触を避けたいところ、把持部材Sからの間接支持具100の脱着のために他方の手指を把持部材S若しくは間接支持具100自体に触れることなく容易に脱着できる。
【0050】
また、本実施形態の間接支持具100では、掌側支持部110は、指を握るような自然な鞍型形状にすることで、手指に対するおさまりが良い上、他人からはほとんど見ることができないようにコンパクトに形成され、また、間接支持具100の使用状態において、引金形状の甲側支持部120は、使用者の手指の外側(つまり甲側)に位置するものの、図6に示したように、掌側支持部110よりも投影面積が小さいため目立ちにくい形態とされているので、この種の間接支持具としての利便性に優れる上、使用者の感じる羞恥心への十分な配慮がなされている。
【0051】
つまり、この間接支持具100によれば、手指を自然に握るような形にした際に、掌側支持部110の端部が指の付け根および第二関節より先の指の腹部分に当たるため、間接支持具100による支持状態での手指に対するおさまりが良い。特に、この間接支持具100によれば、側面視において、掌側当接面111の凹湾曲形状の中心は、甲側当接面121の凹湾曲形状の中心よりも指先側に位置しているので、手指に対するおさまりがより良くなっており、間接支持具100を使用した時の安定感から起因する心地よさが得られる。
【0052】
さらに、掌側支持部110の掌側当接面111は、把持部材Shの外面に沿うように凹の丸みを帯びており、掌側保持面112も掌側当接面111に沿った湾曲面になっているため、間接支持具100を、掌側支持部110の掌側保持面および甲側支持部120の甲側保持面の両面で保持することで、保持部130の保持面131、132を保持するだけの場合に比べ、手から伝わる力が増し、結果として、体を支える力を効果的に増すことができる。また、間接支持具100を長い時間握っていても指が痛くなることが防止または抑制される。
【0053】
そして、本実施形態の間接支持具100であれば、その使用時は、図8に示したように、掌側支持部110および保持部130は、使用者の指や手のひらに隠れて、他人からはほとんど視認できないため、使用者のうち、間接支持具100を使用している姿を他人に見られるのが恥ずかしいと感じる人にとっても、この間接支持具100によれば、使用時に間接支持具100が目立たないのは大きな利点であるといえる。
【0054】
さらに、上述したように、掌側支持部110および甲側支持部120は上下非対称な形状のため、使用者は手指で触った感触のみで間接支持具100の向きを判断できる。そのため、使用時にカバンやポケットから取り出す際に、使用者は、間接支持具100の向きを目視で確認することなく装着可能である。
つまり、本実施形態の間接支持具100であれば、掌側支持部110と甲側支持部120とが使用者の手指に対して前後で非対称形状を呈しているので、カバンやポケットの中での手指の感触だけで間接支持具100の使用方向を認識できる。そのため、間接支持具100の使い勝手をより良くする上で好適である。
【0055】
[第二実施形態の間接支持具]
次に、本発明の一態様に係る間接支持具として、第二実施形態の間接支持具200について説明する。
図9から図12に示すように、第二実施形態の間接支持具200は、掌側支持部210および甲側支持部220、並びに、リング状の保持部230を備える。第二実施形態の間接支持具200では、保持部230の中心部分に、使用者の手指Uのうち、一の指が挿通される挿通孔を有する点が上記第一実施形態と相違する。第二実施形態の間接支持具200では、例えば第三指(中指)U3を挿通可能な挿通孔231が貫通形成されている。
【0056】
間接支持具200の保持部230に挿通する指は、第三指(中指)U3に限らず、他の指でも構わない。挿通孔231の口径は、人間工学を考慮して、例えば、小型のものであれば例えば成人女性の5パーセンタイル値、大型のものであれば例えば成人男性の95パーセンタイル値等に基づいて設定する。
その他、第二実施形態の間接支持具200のリング状の保持部230以外の掌側支持部210および甲側支持部220の構成は、第一実施形態の間接支持具100とほぼ同様なので説明を省略する。なお、第二実施形態での符号は、200番台とするとともにその下2桁を第一実施形態の対応する構成の符号と同一にして示している。
【0057】
次に、第二実施形態の間接支持具200の使用方法について説明する。
図13および図14に示すように、第二実施形態の間接支持具200を使用する際は、保持部230の挿通孔231に、例えば第三指(中指)U3を通して装着する。第二実施形態の間接支持具200は、保持部230の挿通孔231に使用者の指が挿通される。この装着状態において、掌側支持部210は、使用者の手指Uの掌P側、甲側支持部220は手指Uの甲B側に配置される。
そのため、保持部230の挿通孔231に装着した指先を地面に対し真っすぐ向けない限りは間接支持具200の落下が防止される。その他、第二実施形態の間接支持具200の使用方法は、第一実施形態の間接支持具100とほぼ同様なので説明を省略する。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る間接支持具の態様や使用方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上述した第一若しくは第二実施形態の間接支持具100、200の副次的な使用方法としては、例えば、甲側支持部120の上端部124および下端部123は手の甲側に突設されているので、エレベータ等のボタンやスイッチなどを押す際に、手指Uの甲B側に配置される甲側支持部120,220の端部123、124を、適宜に指の代わりに使用することなどが想定できる。
【符号の説明】
【0059】
100 間接支持具(第一実施形態の間接支持具)
110 掌側支持部(指の腹側)
111 掌側当接面
112 掌側保持面
113 延出部
120 甲側支持部(指の背側)
121 甲側当接面
122 甲側保持面
130 保持部
131 挟持面
132 挟持面
200 間接支持具(第二実施形態の間接支持具)
210 掌側支持部(指の腹側)
220 甲側支持部(指の背側)
230 保持部
231 挿通孔
Sh (横型の)把持部材
Sv (縦型の)把持部材
U 使用者の手指
U1 第一指(親指)
U2 第二指(人さし指)
U3 第三指(中指)
U4 第四指(薬指)
U5 第五指(小指)
P 掌
B 甲
N 手首
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14