特開 2022-117243 半田付け装置、および半田付け方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022117243

(43)【公開日】2022-08-10

(54)【発明の名称】半田付け装置、および半田付け方法

(51)【国際特許分類】

   H05K 3/34 20060101AFI20220803BHJP

   B23K 3/00 20060101ALI20220803BHJP

   B23K 3/06 20060101ALI20220803BHJP

   B23K 3/02 20060101ALI20220803BHJP

【ＦＩ】

H05K3/34 505A

B23K3/00 310B

B23K3/06 K

B23K3/02 S

H05K3/34 507M

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021013832

(22)【出願日】2021-01-29

(71)【出願人】

【識別番号】397065767

【氏名又は名称】株式会社パラット

(71)【出願人】

【識別番号】000004260

【氏名又は名称】株式会社デンソー

(74)【代理人】

【識別番号】100135781

【弁理士】

【氏名又は名称】西原 広徳

(74)【代理人】

【識別番号】100217227

【弁理士】

【氏名又は名称】野呂 亮仁

(72)【発明者】

【氏名】中 眞一郎

(72)【発明者】

【氏名】福西 篤志

【テーマコード（参考）】

5E319

【Ｆターム（参考）】

5E319AA02

5E319AB01

5E319AC01

5E319BB02

5E319CC53

5E319CD04

5E319CD26

5E319GG11

(57)【要約】

【課題】半田付け装置の半田溶融時の熱により生じ得る問題を解決できる半田付け装置と半田付け方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る半田付け装置１は、半田を供給する上部ユニットたるヘッド部３と、その下方で半田である糸半田２をカットして半田片２ｂにするカットユニットたる後述する糸半田切断機構部４０と、糸半田切断機構部４０の下方にあるノズル６０と、ノズル６０を加熱するヒータ５１とを備え、ノズル６０の外表面において半田付け対象と対向する対向面６２は、ノズル当接位置において、半田付け対象と当接する当接部６３ａと、半田付け対象から離間する基底面（離間面）６２ａとを有する。
【選択図】図９

【特許請求の範囲】

【請求項1】

半田付け対象物品における半田付け対象導体に半田付けを行う半田付け装置であって、
半田片を通過させる半田片供給通路を有するノズルと、
前記半田付け対象導体と前記ノズルとの相対位置を変化させて、ノズル当接位置において前記半田付け対象物品と前記ノズルを当接させる相対位置変化手段と、
前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、
前記ノズルを加熱することによって前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段を備え、
前記ノズルの外表面において前記半田付け対象物品と対向する対向面は、前記ノズル当接位置において、前記半田付け対象物品と当接する当接部と、前記半田付け対象物品から離間する離間面とを有する
半田付け装置。

【請求項2】

前記半田片供給通路は、通路幅方向に並ぶように複数設けられる
請求項１記載の半田付け装置。

【請求項3】

前記当接部は、前記対向面における前記通路幅方向の端部に設けられる
請求項２記載の半田付け装置。

【請求項4】

前記当接部は、前記半田付け対象物品のうち熱引きの大きい部分に対応する位置に設けられる
請求項２または３記載の半田付け装置。

【請求項5】

前記加熱手段は、前記ノズルに当接して加熱するヒータを有し、
前記当接部は、前記対向面における前記ヒータから遠い側の端部に設けられる
請求項２、３または４記載の半田付け装置。

【請求項6】

前記ヒータと、前記対向面における前記ヒータに近い部分との間に、熱抵抗部を設けた
請求項５記載の半田付け装置。

【請求項7】

前記熱抵抗部は、前記ノズルに形成された貫通孔である
請求項６記載の半田付け装置。

【請求項8】

半田片を通過させる半田片供給通路を有するノズルと、半田付け対象物品における半田付け対象導体と前記ノズルとの相対位置を変化させる相対位置変化手段と、前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、前記ノズルを加熱する加熱手段とを備え、前記ノズルの外表面において前記半田付け対象物品と対向する対向面が、ノズル当接位置において、前記半田付け対象物品と当接する当接部と、前記半田付け対象物品から離間する離間面とを有し、前記半田付け対象導体に半田付けを行う半田付け装置により半田付けを行う半田付け方法であって、
前記半田付け対象導体と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させ、前記ノズル当接位置において前記半田付け対象物品と前記ノズルの前記当接部を当接させ、
前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給し、
前記ノズルを加熱することによって前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる
半田付け方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、例えば、プリント基板やモータ等の適宜の電気製品における半田付け対象としての導体（端子、ランド、リード線等）を半田付けする半田付け装置、および半田付け方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、プリント基板に半田付け対象としての導体を機械的に半田付けする半田付け装置が提供されている。この半田付け装置には、半田の液面にプリント基板を接触させて半田付けするフロー半田付け法や、予めパターンに合わせてクリーム半田を基板に印刷しておきクリーム半田に熱を加えて溶かすことで半田付けするリフロー半田付け法等、様々な方式が提案されている。

【0003】

ここで、出願人は、半田ごてとして円筒形のノズルを用い、このノズル内にプリント基板のスルーホールに挿通された電子部品のピンを挿入し、内部で半田を溶かして半田付けする方式の半田付け装置を開発し、提供している（特許文献１参照）。

【0004】

また、様々な半田付け対象に対して複数箇所に一斉に半田付けすることができるように、複数の半田片供給通路を有するノズルを備える半田付け装置を開発し、提供している（特許文献２参照）。

【0005】

ただし、複数の半田片供給通路を有するノズルは、従来のノズルに比べ大型化し、ノズルの熱マスが大きくなる。したがって、複数の半田片供給通路を有するノズルを用いると、半田付け半田溶融時のノズルからの熱によって、半田付け対象にダメージを与えてしまうなどの種々の問題が生じてくる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開２０１３－１２０８６９号公報

【特許文献2】特開２０２０－１６７２４６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

この発明は、上述の問題に鑑みて、半田付け装置の半田溶融時の熱により生じ得る問題を解決できる半田付け装置と半田付け方法を提供し、利用者の満足度を向上させることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

この発明は、田付け対象物品における半田付け対象導体に半田付けを行う半田付け装置であって、半田片を通過させる半田片供給通路を有するノズルと、前記半田付け対象導体と前記ノズルとの相対位置を変化させて、ノズル当接位置において前記半田付け対象物品と前記ノズルを当接させる相対位置変化手段と、前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、前記ノズルを加熱することによって前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段とを備え、前記ノズルの外表面において前記半田付け対象物品と対向する対向面は、前記ノズル当接位置において、前記半田付け対象物品と当接する当接部と、前記半田付け対象物品から離間する離間面を有する半田付け装置、および半田付け方法であることを特徴とする。

【発明の効果】

【0009】

この発明により、半田付け装置の半田溶融時の熱により生じ得る問題を解決できる半田付け装置と半田付け方法を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】半田付け装置の右側面図。

【図2】半田付け装置の正面図。

【図3】ヘッド部周辺の構成を説明する斜視図。

【図4】ヘッド部周辺の構成を説明する正面図。

【図5】半田付け装置の駆動系および制御系の構成を示すブロック図。

【図6】糸半田切断機構部の構成を説明する説明図。

【図7】半田片の切断の動作の説明図。

【図8】切断した半田片のノズルへの供給動作の説明図。

【図9】ノズルの構成を説明する正面図。

【図10】ノズルの構成を説明する底面図。

【図11】半田片供給後のノズルの縦断面図。

【図12A】変形例のノズルの構成を説明する正面図。

【図12B】変形例のノズルの構成を説明する正面図。

【図13】実施例２のノズルの構成を説明する正面図。

【図14】比較例のノズルにおける温度分布を示す説明図。

【図15】実施例２のノズルにおける温度分布を示す説明図。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。

【実施例0012】

図１および図２は、半田付け装置１の外観構成の説明図であり、図１は右側面図、図２は正面図である。図３は、半田付け装置１のヘッド部３（上部ユニット）周辺の斜視図であり、図４は、半田付け装置１のヘッド部３周辺の正面図である。

【0013】

図１および図２に示すように、半田付け装置１は、プリント基板などの半田付け対象物品に半田付けを行うための装置であって、プリント基板のスルーホールなどの半田付け対象導体に半田付けを行うノズル６０（半田ごて）を下方に配したヘッド部３と、ヘッド部３およびノズル６０を半田付け対象物品Ｐに近接／離間させる方向（図１の上下方向）に移動させる近接離間方向移動ユニット６（相対距離変化手段）と、近接離間方向移動ユニット６およびノズル６０を半田付け対象物品Ｐが搬送される搬送方向（図１の奥行方向，図２の左右方向）に移動させる搬送方向移動ユニット７と、搬送方向移動ユニット７およびノズル６０を搬送方向移動ユニット７の搬送幅方向（図１の左右方向，図２の前後方向）に移動させる搬送幅方向移動ユニット８と、を有している。以下、半田付け対象物品Ｐが搬送される搬送方向を単に「搬送方向」といい、搬送方向移動ユニット７の搬送幅方向を単に「搬送幅方向」ということがある。
搬送幅方向移動ユニット８の上面は、半田付け対象物品Ｐを搬送する搬送路９の上面とほぼ同じ高さに構成されている。

【0014】

ヘッド部３の上部には、リールに巻かれた線状の糸半田２が設けられている。この糸半田２は、φ０．３～φ２．０ｍｍを用いることができ、φ０．６～φ１．６ｍｍのものを用いることが好ましい。

【0015】

ヘッド部３の下方には、ノズル６０が設けられ、ノズル６０にはヒータ５１（加熱手段）が接続されている。このノズル６０とヒータ５１は、図３に示すノズルユニット５に設けられている。

【0016】

半田付け装置１は、半田を供給するヘッド部３と、その下方で半田である糸半田２をカットして半田片２ｂにする糸半田切断機構部４０（カットユニット，半田片供給手段）と、糸半田切断機構部４０の下方にあるノズル６０と、ノズル６０を加熱するヒータ５１とを備えている。糸半田切断機構部４０は、ノズル６０の上部位置とその側方の退避位置に移動可能である。

【0017】

また、図３および図４に示すように、半田付け装置１のヘッド部３には、糸半田切断機構部４０が少なくとも退避位置にあるときにノズル６０の上部位置へ送風を行うファン８０が設けられている。

【0018】

ヘッド部３の下方側は、支持板９０（仕切り板）が設けられている。この支持板９０にサスペンションユニット４（支持手段）が下方へ突出するように設けられ、このサスペンションユニット４にノズルユニット５が支持されている。サスペンションユニット４は、ノズルユニット５における上部５０ａに対角線上に２か所に設けられている。これにより、ノズルユニット５は、サスペンションユニット４によりヘッド部３の下方の支持板９０に吊り下げるようにバランスよく安定して装着されており、ヘッド部３の半田付け対象物品Ｐへの近接離間方向の移動と平行に移動可能に支持されている。上部５０ａは、近接離間方向に垂直な板状に形成されている。

【0019】

支持板９０は、近接離間方向に垂直（上部５０ａと平行）な板状であり、糸半田供給ガイド１６や糸半田送り出し機構部１７（送り出し手段）が設けられているヘッド部３の上方領域と、ノズルユニット５が設けられているヘッド部３の下方領域を仕切る仕切り板としても機能する。

【0020】

サスペンションユニット４は、近接離間（図示上下方向）へのスライド移動を許容するスライド軸とその周囲の筒状体とを有し、スライド軸と筒状体の一方の一端が前記支持板９０の下面部に固定され、他方の他端がノズルユニット５の上面部に固定されている。スライド軸と筒状体には、つるまきバネの一端がスライド軸に固定され、当該つるまきバネの他端が筒状体に固定されている。このサスペンションユニット４により、ノズルユニット５は、支持板９０に吊り下げるように装着されるとともに、つるまきバネの弾性力（伸縮）によってヘッド部３に対して近接離間方向に移動できるように構成されている。このため、ノズルユニット５のノズル６０が下降して半田付け対象物品Ｐに接触すると、それ以上ヘッド部３が下降してもサスペンションユニット４のバネ（つるまきバネ）の弾性力によってショックが吸収され、ノズル６０による半田付け対象物品Ｐへの押圧が軽減される。

【0021】

このサスペンションユニット４により、半田付け対象物品Ｐに対するノズルユニット５（ノズル６０が含まれる）の相対的な重み（荷重）が軽くなる。この軽くなる程度は、例えば、通常の加重を１００％とするとノズルユニット５の加重が１０％となるようにするなど、適宜の構成とすることができる。

【0022】

ヘッド部３の背面側の下部（支持板９０の後端後方の下方側）には、支持板９０の下方領域、特にノズルユニット５の上方領域へ送風するファン８０が設けられている。ファン８０は、図３及び図４に示すように、本実施形態ではヘッド部３に固定された態様をなすもので、該略直方体形状をなす筐体８１と、この筐体８１の内部に回転可能に配されたフィン８２とを主な構成要素とする。このフィン８２は勿論、筐体８１、フィン８２の他に、フィン８２を回転させる駆動源や当該駆動源に電力を供給する機構、更にはフィン８２の回転を制御する機構等を有するものであるが、これらの構成、機構は既存の種々の構成を適宜利用できるので、本実施形態では詳細な説明を省略する。

【0023】

ノズルユニット５は、ノズル６０と、ノズル６０を加熱するヒータ５１（図１および図２参照）と、ノズル６０の上方に設けられて仕切りとして機能する中間体７０により主に構成されている。ノズル６０の両側方に設けられているヒータ５１は、ヒータカバー５０（図３および４参照）により囲まれている。なお、図１、図２は、ヒータカバー５０を図示省略しており、図３、図４ではヒータ５１がヒータカバー５０に覆われて隠れている。

【0024】

ヘッド部３の可動範囲は、搬送幅方向移動ユニット８の上方に位置する待機位置（図１に示すＰ１の位置）と、半田付け対象物品Ｐにおける半田付け対象導体に対して半田付けを行う半田付け領域Ｅ１，Ｅ２（図１のＥ１と図２のＥ２で囲まれる領域）との間の範囲になる。ヘッド部３は、これらの待機位置、及び半田付け領域のどの位置であっても近接離間方向移動ユニット６によって移動される。

【0025】

この構成により、半田付け装置１は、待機時にはノズル６０を待機ポジションＰ１の高さおよび位置に待機しておき、半田付け工程を実行するときは半田付け領域Ｅ１，Ｅ２内で待機ポジションＰ１よりも低い（半田付け対象物品Ｐに近い）半田付けポジションＰ２の高さにて半田付けを行う。

【0026】

図５は、半田付け装置１の駆動系および制御系の構成を示すブロック図である。半田付け装置１は、搬送幅方向移動ユニット８（図１参照）に固定されて搬送路９（図１参照）へ向かって真っすぐ伸びるＹ方向（搬送幅方向，図２の奥行方向）の搬送ガイド７ｆと、ステッピングモータ等の駆動機構部７ｅによりＹ方向の搬送ガイド７ｆに沿って移動するＸ方向（搬送方向，図２の左右方向）の搬送ガイド７ｃが設けられている。この駆動機構部７ｅおよびＹ方向の搬送ガイド７ｆは、搬送幅方向移動ユニット８（図１参照）内に収納されている。Ｘ方向の搬送ガイド７ｃは、搬送路９の搬送方向（Ｘ方向）へ向かって真っすぐ伸びている。

【0027】

Ｘ方向の搬送ガイド７ｃの上部には、Ｘ方向の搬送ガイド７ｃに沿ってＸ方向に移動する移動体７ａと、この移動体７ａをＸ方向の搬送ガイド７ｃに沿ってＸ方向へ移動させるステッピングモータ等で構成された駆動機構部７ｂが設けられている。この移動体７ａ、駆動機構部７ｂ、およびＸ方向の搬送ガイド７ｃは、搬送方向移動ユニット７（図１参照）内に収納されている。この移動体７ａ、駆動機構部７ｂ、Ｘ方向の搬送ガイド７ｃ、駆動機構部７ｅ、およびＹ方向の搬送ガイド７ｆは、作業させたい任意の位置へノズル６０を移動させるノズル位置移動手段として機能する。

【0028】

移動体７ａには、ノズル６０がスルーホールに近接／離間する方向に伸びるＺ方向（高さ方向）の搬送ガイド５ｃが設けられている。この搬送ガイド５ｃには、Ｚ方向に移動するヘッド固定部５ａ、およびステッピングモータ等で構成される駆動機構部５ｂが設けられている。ヘッド固定部５ａには、ヘッド部３が固定されている。ヘッド固定部５ａ、駆動機構部５ｂ、および搬送ガイド５ｃは、ノズル６０を半田付け対象物品Ｐに近接／離間させる方向へ移動させる近接離間方向移動手段として機能し、近接離間方向移動ユニット６（図１参照）内に収納されている。

【0029】

このように構成されたＹ方向の搬送ガイド７ｆとＸ方向の搬送ガイド７ｃ、および駆動機構部７ｂ，７ｅがノズル位置移動手段として機能することにより、ノズル６０の位置を半田付けする任意の位置へ移動させることができる。また、Ｚ方向の搬送ガイド５ｃおよび駆動機構部５ｂが近接離間方向移動手段として機能することにより、移動させた位置でノズル６０を近接方向へ移動させてノズル６０の孔（後述の半田片供給通路６１）内に半田付けするピンを挿通し、ノズル６０の先端を半田付け対象物品Ｐに当接させる等の半田付け位置（ノズル当接位置）にて半田付け対象物品Ｐに当接させ、半田付け後に離間させることができる。また、ノズル６０およびヒータ５１は交換可能であり、Ｚ方向の搬送ガイド５ｃおよび駆動機構部５ｂにより、ノズルステーション（図示省略）で交換用のノズル６０またはヒータ５１に近接する方向へ移動させ、ノズル６０またはヒータ５１を交換した後に離間させることができる。

【0030】

以上のように、半田付け装置１では、ノズル位置移動手段および近接離間方向移動手段によって、半田付け対象物品Ｐとノズル６０との相対位置を変化させて、ノズル当接位置において半田付け対象物品Ｐとノズル６０とを当接させることができる。

【0031】

ヘッド部３は、フローティングユニット１５に固定され、糸半田２（図１参照）を挿通する糸半田供給ガイド１６と、糸半田供給ガイド１６内の糸半田をローラで挟み込んで送り出す糸半田送り出し機構部１７が設けられ、底部に糸半田切断機構部４０（半田片供給手段）を備えている。この糸半田切断機構部４０は、ステッピングモータ等により構成される回転機構部１９（移動手段）によりノズルユニット５の上部位置からその側方の退避位置までの間で半田片の供給方向（近接離間方向）と直交する方向へ移動可能に構成されており、糸半田供給ガイド１６に供給されてきた糸半田２（図１参照）を回転機構部１９の制御に従ってカット（切断）する。

【0032】

糸半田切断機構部４０の下方には、少し離間して中間体７０（熱伝達防止体）が設けられ、その中間体７０の下方には、少し離間してノズル６０が設けられている。このように、糸半田切断機構部４０、中間体７０、およびノズル６０は、半田片２ｂの供給方向である下方へこの順で並べて配置されており、糸半田切断機構部４０により糸半田２がカットされた半田片は、中間体７０を通過してノズル６０に供給される。

【0033】

また、これらの構成要素を駆動するべく、各要素は制御部２１によって制御される。制御部２１には、駆動機構部５ｂ、駆動機構部７ｂ、駆動機構部７ｅ、フローティングユニット１５、糸半田送り出し機構部１７、回転機構部１９、ヒータユニット密着確認センサ２２、温度センサ２３、着脱用エアシリンダ２４、カメラ２５、及び記憶部２６が接続されている。

【0034】

カメラ２５は、半田付け対象導体となるプリント基板のスルーホールおよびピンの位置等を確認して位置決めする際、および、半田付アカメが発生した場合等の半田付け異常を検出する際等に用いられる。

【0035】

記憶部２６は、プリント基板等の半田付け対象物品Ｐの画像と、この半田付け対象物品Ｐに使用するツール（ノズル６０、若しくはヒータ５１）を関連づけた 半田付け対象ワーク別ツールデータ、現在装着しているツールの種類、現在装着しているツールの使用回数および使用時間等のデータを記憶している。

【0036】

図６は、糸半田切断機構部４０の構成を説明する説明図であり、図６（Ａ）は糸半田切断機構部４０の分解斜視図、図６（Ｂ）は糸半田切断機構部４０の縦断面図を示す。

【0037】

糸半田切断機構部４０は、下方へ繰り出されてきた糸半田２ａを通過させる通路を有する糸半田供給ガイド１６と、切断した半田片２ｂを複数収納する半田片収納体４４と、半田片収納体４４を移動させる回転機構部１９（図５参照）により構成されている。また、半田片収納体４４には、収納された半田片２ｂの貯留／放出を制御するシャッタ３６と、シャッタ３６を付勢する付勢体３５（付勢手段）とが設けられている。また、半田片収納体４４とは分離（独立）して、シャッタ３６を解放操作するシャッタ操作部４９（シャッタ移動規制体）が設けられている。なお、半田片収納体４４と、回転機構部１９と、シャッタ３６と、シャッタ操作部４９は、半田片２ｂをノズル６０の孔（後述の半田片供給通路６１）に供給する半田片供給手段として機能する。

【0038】

糸半田供給ガイド１６は、金属部材によって円筒形に形成されており、内側の孔（通路）に糸半田２ａを長手方向へ通過させる。また、糸半田供給ガイド１６は、糸半田２ａの通過方向と直角の方向（糸半田２ａの半径方向）へは移動しないように固定されている。付勢体３５は、適宜のバネで構成することができ、本実施形態では金属製の鶴巻ばねにて構成されている。

【0039】

シャッタ３６は、Ｌ字型に屈曲させた金属板により構成されており、Ｌ字の底面部が水平状態（近接離間方向に垂直な状態）の貯留／放出制御板部３８であり、Ｌ字の鉛直面部が付勢体３５に押圧される押圧操作部３７である。貯留／放出制御板部３８は、複数の解放孔３８ａ（貫通孔または貫通溝）が並んで設けられている。この解放孔３８ａの隣接部分（解放孔３８ａと解放孔３８ａの間部分を含む）は、半田片２ｂの落下を防止する閉鎖部として機能する。なお、シャッタ３６に複数の解放孔３８ａを設けているが、これに限らず、複数の解放溝を設けて、シャッタ３６の貯留／放出制御板部３８が平面視櫛状に見える構成としてもよい。この場合も同じ機能を確保できる。

【0040】

半田片収納体４４は、横長の立方体形状のブロック部４３の下面に当該ブロック部４３の短手方向の幅よりも幅広で長手方向に同じ長さのガイド部４８が一体形成されている。ガイド部４８には、長手方向に貫通するシャッタ挿入孔４７が設けられている。このシャッタ挿入孔４７は、高さと幅がシャッタ３６の貯留／放出制御板部３８の高さと幅よりわずかに大きく形成され、シャッタ３６がブレなくスムーズに長手方向へスライド移動できるように構成されている。ブロック部４３とガイド部４８には、上下方向（近接離間方向）に貫通する半田片収納部４５が複数設けられている。半田片収納部４５は、シャッタ３６の解放孔３８ａと同じ大きさで同じ間隔で設けられている。

【0041】

なお、シャッタ３６の解放孔３８ａは、半田片収納部４５よりも大きく形成されていてもよい。これにより、確実に開放状態のときに半田片２ｂを落下させることができる。また、半田片収納部４５は、孔によって形成されているが、これに限らず、複数部材で周囲を囲まれて半田片２ｂを囲み内に収容できる囲み形状とするなど、半田片２ｂを落下可能に収納する適宜の形状とすることができる。

【0042】

半田片収納体４４の長手方向の一端上部には、半田片収納体４４の長手方向に長いガイド板４２の一端が連結されている。ガイド板４２の他端には、ネジ止め用の孔４１が設けられ、係止板３２がネジ３１によって孔４１にネジ止めされている。

【0043】

係止板３２は、上部にネジ３１を挿通するネジ孔３３が設けられている。係止板３２のネジ孔３３より下方部分には、シャッタ３６の押圧操作部３７に対向する押圧対抗面３４が設けられている。この押圧対抗面３４に付勢体３５の一端が当接し、シャッタ３６の押圧操作部３７に付勢体３５の他端が当接することで、押圧対抗面３４から押圧操作部３７までの距離よりも長く伸びた状態が通常状態である付勢体３５は、押圧対抗面３４と押圧操作部３７が離れる方向へ付勢する。これによって、シャッタ３６は、押圧操作部３７が半田片収納体４４の一端面に当接した状態に維持される。このとき、図６（Ｂ）に示すように、半田片収納体４４の半田片収納部４５とシャッタ３６の解放孔３８ａは位置がずれており、半田片収納体４４の半田片収納部４５がシャッタ３６の貯留／放出制御板部３８で閉じられた状態となっている。従って、半田片収納部４５に存在する半田片２ｂは、シャッタ３６の貯留／放出制御板部３８によって下方へ落下しないように半田片収納部４５の内部に貯留されている。

【0044】

シャッタ操作部４９は、シャッタ３６の貯留／放出制御板部３８の押圧操作部３７とは逆側の端面に対向して配置されている。従って、回転機構部１９（図５参照）の回転駆動によって半田片収納体４４がシャッタ３６と共にシャッタ操作部４９側へ移動されていくと、シャッタ３６の端面がシャッタ操作部４９に当接する。そして、回転機構部１９（図５参照）の回転駆動によって半田片収納体４４がさらに移動されると、シャッタ操作部４９によってシャッタ３６がそれ以上移動しないために半田片収納体４４とシャッタ３６の相対位置が変化していき、半田片収納体４４の半田片収納部４５とシャッタ３６の解放孔３８ａの位置が同じ位置になって解放状態となり、半田片２ｂが下方へ落下する。

【0045】

半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６は、互いの対向面が当接または近接して配置され、供給される糸半田２ａの半径方向へ相対的に移動できるように構成されている。この実施では、糸半田供給ガイド１６が固定され、半田片収納体４４が糸半田２ａの半径方向へスライド移動できる。従って、糸半田供給ガイド１６から繰り出された糸半田２ａの一部が半田片収納体４４の半田片収納部４５に供給されている状態で、半田片収納体４４を糸半田２ａの半径方向に移動させると、糸半田２ａは、半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６の相対移動によって半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６の互いの当接面で切断（せん断）される。従って、半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６が半田片２ｂを切断する半田片切断手段となる。切断された半田片２ｂは、半田片収納体４４の半田片収納部４５に収納される。

【0046】

また、半田片収納体４４の上面と糸半田供給ガイド１６の下面、シャッタ３６の貯留／放出制御板部３８は、全て半田片収納体４４の移動方向と平行（特に本実施形態では水平方向）に構成されている。また、半田片収納部４５の長手方向（半田片通過方向）とノズル６０の半田片供給通路６１（半田片供給通路，図８参照）の長手方向（半田片通過方向）は、全て半田片収納体４４の移動方向と垂直（特に本実施形態では鉛直方向）に構成されている。

【0047】

図７および図８は、半田片収納体４４によって糸半田２を切断して半田片２ｂを複数貯留し、その後にシャッタ３６を開状態にして複数の半田片２ｂを落下させて中間体７０を通過してノズル６０に供給する動作を断面図により説明する説明図である。この動作は、制御部２１（図５参照）が糸半田送り出し機構部１７および回転機構部１９の駆動を制御して実行される。

【0048】

図７（Ａ）の断面図に示すように、回転機構部１９（図５参照）の回転駆動によって、半田片収納体４４は、シャッタ操作部４９に最も近い半田片収納部４５が糸半田供給ガイド１６の下方位置で上下に連通する状態で停止する。この状態で、巻かれていた糸半田２（図１参照）の先端側から引き出されて棒状となっている糸半田２ａが糸半田送り出し機構部１７（図５参照）によって送り出され、図７（Ｂ）に示すように糸半田２ａの先端が半田片収納部４５内に収納される。そして、半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６の対向面部（接触面部）から糸半田２ａの先端までの長さが必要な半田片２ｂの長さとなる状態まで糸半田２ａを繰り出すと、糸半田送り出し機構部１７（図５参照）は糸半田２ａの供給（繰り出し）を停止する。

【0049】

この状態で回転機構部１９（図５参照）の回転駆動によって、半田片収納体４４をスライド移動させると、半田片収納体４４と糸半田供給ガイド１６の対向面部（接触面部）によって糸半田２ａが切断されて半田片２ｂとなり、図７（Ｃ）に示すように半田片２ｂが半田片収納部４５に収納（貯留）される。図７（Ｃ）は、この切断を半田片収納部４５の数だけ（必要な数だけ）繰り返して切断完了した状態を示している。

【0050】

回転機構部１９（図５参照）の回転駆動によって半田片収納体４４をスライド移動させると、図８に示すようにシャッタ３６の先端がシャッタ操作部４９に当接して押圧され、付勢体３５が圧縮され、半田片収納体４４の半田片収納部４５とシャッタ３６の解放孔３８ａが全て連通して複数の半田片２ｂが一斉に落下して下方の中間体７０の貫通孔７３を通過し、さらに下方のノズル６０の半田片供給通路６１へ供給される。なお、半田片２ｂを落下させる際に、押し込みロッド１８（図３参照）を全ての半田片収納部４５に上方から下方へ挿入し、半田片２ｂを下方へ押し出して、半田片２ｂを下方のノズル６０（図５参照）に強制的に供給する構成としてもよい。

【0051】

中間体７０は、図８の縦断面図に示すように、糸半田切断機構部４０の半田片収納体４４とノズル６０の間に配置されている。また、中間体７０と半田片収納体４４の間には隙間Ｓ１が形成され、中間体７０とノズル６０の間には隙間Ｓ２が形成される。この中間体７０は、アルミニウムにより一体成型されている。なお、中間体７０の素材は、これに限らず、ステンレスや断熱セラミック等、他の素材とすることもできる。

【0052】

中間体７０は、半田片２ｂが通過する複数の貫通孔７３が、ノズル６０の半田片供給通路６１と同じ数だけ同じ間隔でそれぞれ半田片供給通路６１に対向させて形成されている。この複数の貫通孔７３は、半田片収納体４４に対しても、半田片収納部４５と同じ数だけ同じ間隔でそれぞれ半田片収納部４５に対応する位置に配置されている。

【0053】

図９および図１０は、ノズル６０とヒータ５１の構成を説明する説明図であり、図９はノズル６０の構成を説明する正面図、図１０はノズル６０の構成を説明する底面図を示す。

【0054】

ノズル６０は、板状をなし、セラミックにより一体的に形成されている。ヒータ５１は、板状に形成される加熱部材を有し、ノズル６０の正面および裏面のそれぞれに設けられ、ノズル６０を前後から加熱部材で挟むように構成される。ヒータ５１（加熱部材）は、ノズル６０の正面および裏面のうち、搬送方向の中央であって、かつ、上下方向（近接離間方向）の中央から上端部にわたって設けられる。

【0055】

ノズル６０には、供給された半田片２ｂを端子Ｔに当接させる位置まで誘導する半田片供給通路６１が形成される。この半田片供給通路６１は、上下方向（近接離間方向）に延びるように形成され、かつ、複数（本実施形態では１２個）配置されている。また、複数の半田片供給通路６１は、その通路幅方向（本実施例では搬送方向）に並ぶように配置される。

【0056】

本実施例では、複数の半田片供給通路６１は、搬送方向（図９の左右方向）の一方側にその半分が配置され、搬送方向の他方側に残りの半分が配置されており、ノズル６０の搬送方向の中央部には、半田片供給通路６１が配置されない。すなわち、複数の半田片供給通路６１は、搬送方向の一方側と搬送方向の他方側とのそれぞれに分けて配置されている。

【0057】

具体的には、搬送方向の一方側に６個の半田片供給通路６１が配置され、搬送方向の他方側に６個の半田片供給通路６１が配置されている。複数の半田片供給通路６１のそれぞれは、ノズル６０における搬送方向の中央を中心に、搬送方向において対称（正面から見た場合に左右対称）に配置されている。

【0058】

また、本実施例では、複数の半田片供給通路６１のそれぞれは、互いに平行であり、すべて同じ太さで同じ長さの断面円形の直線状の孔である。なお、半田片供給通路６１は、断面円形に限らず、断面多角形、断面楕円形、断面正方形など、適宜の形状とすることができるが、断面円形とすることが好適である。

【0059】

さらに、各半田片供給通路６１は、半田片収納体４４（図８参照）の各半田片収納部４５および中間体７０の各貫通孔７３と同じ大きさで同じ間隔に形成されている。すなわち、各半田片供給通路６１は、半田片収納体４４（図８参照）の各半田片収納部４５および中間体７０の各貫通孔７３に対応する位置に配置されている。

【0060】

従って、図８に示したように一斉に（ほぼ同時に）落下する半田片２ｂは、その下方位置にて半田片収納部４５と貫通孔７３と半田片供給通路６１が鉛直方向において一直線に連通するように配置された状態で、中間体７０の貫通孔７３を通過して、ノズル６０の半田片供給通路６１に、図１０に示すように一斉に（ほぼ同時に）供給される。

【0061】

また、ノズル６０の外表面の任意の位置には穴が設けられており、この孔に熱電対が挿入されている。熱電対は、温度センサ２３（図５参照）の一部として機能し、ノズル６０の温度を測定する。

【0062】

さらに、ノズル６０の外表面のうち、半田付け対象物品Ｐに対向する面が対向面６２となる。本実施例では、半田付け対象物品Ｐにおける半田付け対象導体は、プリント基板Ｐないしプリント基板ＰのランドＲであり、ノズル６０の下方に配置されている。したがって、対向面６２は、ノズル６０の下面となる。また、上述したように、本実施例では複数の半田片供給通路６１が搬送方向の一方側と搬送方向の他方側とのそれぞれに分けて配置されているので、これに合わせて、搬送方向の一方側の対向面６２と、搬送方向の他方側の対向面６２とが存在する。

【0063】

ノズル６０の対向面６２には、段差が設けられている。具体的には、ノズル６０の対向面６２の一部には、半田付け対象物品Ｐ（下方）に向かって突出する突出部６３が設けられる。すなわち、対向面６２は、突出部６３の外表面のうち半田付け対象物品Ｐに向かって突出する部分（後述する当接面６３ａ）と、突出部６３よりも上方に位置する突出部６３以外の面（以下、「基底面」という。）６２ａを有する。

【0064】

また、本実施例では、突出部６３は、対向面６２における通路幅方向の端部のそれぞれに設けられる。たとえば、本実施例の対向面６２が矩形状であるので、突出部６３は、搬送方向の一方側と他方側のそれぞれの対向面６２の四隅に設けられる。

【0065】

複数の突出部６３の突出高さ（当接面６３ａと基底面６２ａとの鉛直方向の距離）は、互いに同じ高さであり、たとえば、０．０５ｍｍ～１．０ｍｍであり、好ましくは、０．１ｍｍ～０．５ｍｍであり、より好ましくは０．２ｍｍ～０．３ｍｍである。複数の突出部６３の突出高さが同じであることにより、半田付け対象に対してノズル６０の対向面６２が平行となり、複数の半田付け対象とノズル６０の各半田片供給通路６１周囲の対向面６２との距離が同一となる。したがって、複数の半田片供給通路６１から供給される半田片を半田付け対象に対して同一条件で一斉に半田付けすることが可能になる。

【0066】

図１０の断面図に示すように、半田付けをするとき、ノズル６０は、下端がプリント基板ＰまたはランドＲに接触（当接）する位置（ノズル当接位置）まで下げられる。ただし、ノズル６０がノズル当接位置に位置する場合、プリント基板Ｐの絶縁体板またはランドＲに当接するのは、当接面６３ａ（突出部６３）であり、基底面６２ａはプリント基板ＰおよびランドＲに当接しない。本実施例では、ノズル６０がノズル当接位置に位置する場合、プリント基板ＰにおけるランドＲ周辺の絶縁体板またはランドＲに当接面６３ａが当接する。

【0067】

すなわち、ノズル６０の対向面６２のうち、突出部６３の下端面である当接面６３ａが、半田付け対象物品Ｐと当接する当接部となり、突出部６３以外の部分（たとえば基底面６２ａ）が、半田付け対象物品Ｐから離間する離間面となる。つまり、ノズル６０がノズル当接位置に位置する場合であっても、ノズル６０の対向面６２の少なくとも一部は、突出部６３の突出高さに応じた距離で半田付け対象物品Ｐから離間している（浮いている）。なお、ノズル６０における半田付け対象物品Ｐと当接する当接部は、当接面６３ａのような面に限らず、逆円錐の先端などの点であったり、刃のように長さを有して突出する先端辺などの線であっても良い。

【0068】

ノズル６０がノズル当接位置に位置するときに、半田片供給通路６１に半田片２ｂが供給される。このとき、半田片２ｂは、プリント基板Ｐの電子部品Ｃの端子Ｔの先端（若しくは半田片供給通路６１の半田片誘導方向（図１０の下方）に対して最も凸となる端部（図１０の上端））に接触して停止する。図示の例では端子Ｔの上に半田片２ｂが乗った状態で停止する。

【0069】

そして、ノズル６０の半田片供給通路６１に供給された半田片２ｂは、ヒータ５１からの熱をうけて溶融する。このとき、ヒータ５１によって加熱されたノズル６０の熱が半田片２ｂから端子Ｔに伝達され、この伝達熱によって端子Ｔも徐々に加熱されていく。また、ノズル６０に接触しているランドＲについては、ノズル６０から直接熱（伝達熱）を受け、端子Ｔよりも先に加熱（予熱）されている。

【0070】

そうして、半田片２ｂが溶融温度に達すると、半田片２ｂが溶融するが、まだ端子Ｔの上に略球状となって載った状態となる。この間も端子Ｔは伝達熱で加熱されている。そして、さらに端子Ｔの加熱が進むと、半田片２ｂが溶融した複数の溶融半田が端子Ｔに沿って流れ出し、複数の端子ＴとランドＲを一斉に（同時に）半付けして電気的に接続する。以上のように、半田付け装置１では、ノズル６０を加熱することによって半田片供給通路６１内の半田片２ｂを加熱して溶融する。その後、ノズル６０を上方へ移動させて離間させ、溶融半田が冷えて固化することで、複数箇所の半田付けが一斉に（同時に）完了する。
次に、半田付けの動作について詳細に説明する。
＜半田付けの動作＞

【0071】

半田付けの母材として、ランドＲが形成されたプリント基板Ｐに、当該プリント基板Ｐのスルーホールにプリント基板Ｐの表面側から裏面側（図１０では下面側から上面側）に向けて電子部品Ｃの端子Ｔが挿入されたものが準備されている。
＜位置合わせ工程＞

【0072】

制御部２１は、Ｙ方向の搬送ガイド７ｆとＸ方向の搬送ガイド７ｃ、および駆動機構部７ｂ，７ｅにより、ノズル６０の複数の半田片供給通路６１の位置をＸＹ平面上で移動させて半田付けする複数のランドＲに対向させる。このときの位置は、プリント基板Ｐの裏面側のランドＲの中心と半田片供給通路６１の中心がほぼ一致する位置とする、または、端子Ｔの先端中心と半田片供給通路６１の中心がほぼ一致する位置とする。
＜半田片切断収納工程＞

【0073】

制御部２１は、糸半田送り出し機構部１７によって半田片収納体４４内の１つの半田片収納部４５に糸半田２ａを必要長さまで供給し、回転機構部１９を駆動させて半田片収納体４４を糸半田２ａの半径方向（太さ方向）へ移動させ、糸半田切断機構部４０（糸半田切断手段）により糸半田２をカットして半田片２ｂを得て半田片収納部４５に収納する。このとき、シャッタ３６は閉鎖状態となっているため、半田片収納部４５から半田片２ｂが落下することは無い。この動作を繰り返すことで、全ての半田片収納部４５に１つずつ必要長さの半田片２ｂを収納する。なお、この半田片切断収納工程は、位置合わせ工程よりも前に実行する、あるいは、位置合わせ工程と並行して実行するなど、適宜のタイミングとすることができる。
＜ノズル当接工程＞

【0074】

制御部２１は、駆動機構部５ｂにより搬送ガイド５ｃに沿ってフローティング状態のヘッド部３をランドＲとの近接方向へ移動させて、ノズル６０の当接面６３ａをプリント基板Ｐの裏面側のランドＲの表面に当接させる。これにより、ノズル６０の半田片供給通路６１の内側に端子Ｔの先端が挿入された状態となる。

【0075】

このとき、端子Ｔはノズル６０の半田片供給通路６１の内壁から等距離だけ離れており、端子Ｔとノズル６０が非接触で離間した状態が保たれている。これにより、ノズル６０から端子Ｔに直接熱が伝達されることを防止しており、端子Ｔは、輻射熱伝達および対流熱伝達により徐々に加熱される。また、ノズル６０に当接しないランドＲも、輻射熱伝達および対流熱伝達により徐々に加熱される。一方で、ノズル６０に当接するランドＲは、接触するノズル６０からの直接の熱伝導と、対流熱伝達による伝熱で急速に加熱される。
＜半田片供給工程＞

【0076】

制御部２１は、回転機構部１９を駆動させて半田片収納体４４をさらに移動させ、シャッタ３６がシャッタ操作部４９に当接して押圧されるまで移動させる。これにより、シャッタ３６の複数の解放孔３８ａが複数の半田片収納部４５とそれぞれ連通し、複数の半田片２ｂが一斉に落下し、中間体７０の貫通孔７３を通過し、さらに、ノズル６０の複数の半田片供給通路６１に半田片２ｂが１つずつ供給される。このとき、シャッタ３６を開いた半田片収納体４４は、支持板９０と、ノズル６０及び中間体７０の間のスペースをほぼ埋める状態となる。またこのとき、押し込みロッド１８（図３参照）により半田片２ｂを上方から押し込むことで、仮に自由落下しない半田片２ｂが存在しても半田片２ｂが端子Ｔの先端に当接するまで確実に下降する。

【0077】

上方から落下するように供給された半田片２ｂは、半田片供給通路６１を通過中に予熱され、端部が端子Ｔに当接して当接位置で停止し、位置および落下が規制される。このとき、半田片供給通路６１の内壁は、半田片２ｂが端子Ｔの先端の上で垂直または斜めに立っている状態から落下しないように規制する落下規制部としても機能する。
＜溶融工程＞

【0078】

当接位置に案内された溶融前の半田片２ｂは、その位置から落下することなく、端子Ｔと反対側の端部などの少なくとも一部が、ヒータ５１の加熱部５２の近くに位置して半田片供給通路６１の内壁に当接する。このため、当接位置にある溶融前の複数の半田片２ｂは、半田片供給通路６１の内壁に当接した半田片２ｂの一端部、両端部、又は側部を介した熱伝導により一斉に溶融される。なお、この半田片２ｂの溶融のとき、ノズル６０と接触しての直接熱伝導に加えて、ノズル６０からの輻射熱伝達、およびノズル６０内を対流する熱風による対流熱伝達などの間接熱伝導も行われる。

【0079】

複数の半田片２ｂは、溶融すると表面張力によりそれぞれ丸まって略球状になろうとするが、ノズル６０の半田片供給通路６１の内壁と端子Ｔの先端に規制されるため真球になれず、端子Ｔの先端に接触している状態（端子Ｔの上に載っている状態）で太く短い形状に変形する。この形状は、短い円柱の両端が球面になった形状となっている。

【0080】

こうして溶融すると、ノズル６０から複数の半田片２ｂに熱が伝わり、さらに、複数の半田片２ｂから複数の端子Ｔにそれぞれ熱が伝わることで、複数の端子Ｔは以前にも増して急速に加熱される。この加熱中、溶融した半田片２ｂは端子Ｔに接触した状態、すなわち端子Ｔの上に載った状態で半田片供給方向（下方向）へ移動せずに停止している。尚、半田片２ｂが溶融するのは、２１７℃以上である。

【0081】

溶融した半田片２ｂを介して適正温度にまで端子Ｔが加熱されると、溶融した複数の半田片２ｂは、ぬれ始め、端子Ｔの先端から端子Ｔの側面を伝って一斉に下方に流れ出す。ここで、溶融しはじめてから流れ出す前の半田片２ｂは、位置が停止したままで熱の影響等によって形状が変化し続けていても良い。また、半田は、温度が高いほうに流れる性質があるため、半田片２ｂが溶融しはじめて下方に流れ出す際に、半田片２ｂの一部がノズル６０の対向面６２（基底面６２ａ）に回り込むような状態となる。このとき、半田片２ｂは、ノズル６０の対向面６２からも直接熱（伝達熱）を受け、さらに加熱される。

【0082】

そして、端子Ｔの側面を伝って流れ出した溶融した半田片２ｂは、裏面側のランドＲに広がり、さらに、毛細管現象により、端子Ｔの側面とスルーホールに面するランドＲとの隙間にも流入する。そして、表面側のランドＲにも広がっていく。

【0083】

また、溶融半田から出てくるヒュームは、半田片供給通路６１を通過して中間体７０の貫通孔７３に流れ込み、通気孔７１や排気孔７２や貫通孔７３から排出される。したがって、中間体７０は、ヒューム排出機能を兼ねることができる。
＜ノズル離間工程＞

【0084】

その後、制御部２１は、駆動機構部５ｂにより搬送ガイド５ｃに沿ってフローティング状態のヘッド部３をランドＲとの離間する方向へ移動させ、ノズル６０の先端面をプリント基板Ｐの裏面側のランドＲの表面から離隔する。これにより、ランドＲ、端子Ｔ、及び溶融した半田片２ｂは急速に冷却され、溶融した半田片２ｂが固化して半田付け動作は終了する。

【0085】

溶融した半田片２ｂのこのような動きにより、複数の端子Ｔは複数のランドＲにそれぞれ確実に半田付けされる。こうして一斉に（ほぼ同時に）半田付けされた複数箇所の半田の仕上がり外観は美しく、バックフィレット形状も綺麗に形成される。

【0086】

また、このようにノズル６０を離間させた後、通気孔７１に冷却用空気を流し込み、排気孔７２や貫通孔７３から排出することで、ノズル６０に近接していて加熱された中間体７０が効率よく冷却される。これにより、糸半田切断機構部４０にまで熱が伝わって糸半田切断機構部４０の下部が熱くなって半田片収納部４５に収納されシャッタ３６の上に載っている半田片２ｂが熱で溶融してしまうことを防止できる。

【0087】

なお、半田片供給通路６１は、複数とすることが好ましいが、１つとしてもよい。この場合、糸半田切断機構部４０の半田片収納部４５も１つとし、中間体７０の貫通孔７３も１つとすることが好ましい。このように構成した場合には、１か所ずつ半田づけできるノズル６０を形成することができる。

【0088】

以上の構成及び動作により、半田付け装置１の半田溶融時の熱により生じ得る問題を解決できる。すなわち、ノズル当接工程からノズル離間工程までの間、ノズル６０と半田付け対象物品Ｐとが当接（接触）するものの、ノズル６０の外表面のうち、半田付け対象物品Ｐに当接するのは半田付け対象物品Ｐに対向する対向面の一部（当接面６３ａ）に限られるので、半田溶融時にノズル６０から半田付け対象物品Ｐに直接伝達される熱を少なくすることができる。これにより、半田付け対象物品Ｐに与えるダメージを軽減することができる。特に、突出部６３により、複数の半田付け対象導体に対して同時に半田付けを行うノズル６０の対向面６２の大部分がランドＲもしくはプリント基板Ｐに接触してその熱量でプリント基板Ｐに不具合が生じることを防止しつつ、かつ、複数の半田付け対象導体に対して不良のない安定した半田付けを実施することができる。このプリント基板Ｐに生じる不具合とは、熱量による焦げつき、あるいは、積層構造のプリント基板Ｐの内部の水分が膨張することによって層がはがれてくる白化現象等があり、これらの不具合を防止できる。

【0089】

特に本実施形態では、半田付け対象物品Ｐに当接する当接面６３ａがノズル６０の対向面６２における通路幅方向の両方の端部、特に４方向の端部（４隅）に設けられる。このため、ノズル６０の対向面６２においてバランスよく当接面６３ａが配置されることになり、ノズル６０を半田付け対象物品Ｐに当接させるときのノズル６０の姿勢を正しく保つことができる。なお、ノズル６０は、当接面６３ａを有する突出部６３を少なくとも２つ備える構成であり、この２つ（３つ以上ある場合は両端の２つ）が少なくともノズル６０の対向面６２の長手方向長さの４分の１以上離間させることができ、３分の１以上離間させることが好ましく、２分の１以上離間させることがより好ましい。これにより、ノズル６０の対向面６２を半田付け対象に対して平行な状態で安定させることができる。

【0090】

また、複数の半田片供給通路６１を有するノズル６０を用いることにより、１つずつ半田付けするノズルよりも半田付け時におけるノズル６０の温度低下を抑制することができ、さらに、半田付け対象との対向面６２における当接面積を突出部６３によって減らすことでノズル６０の半田付けによる温度低下をさらに抑制できる。

【0091】

さらに、ノズル６０がノズル当接位置に位置する場合に、ノズル６０の対向面６２の少なくとも一部が半田付け対象物品Ｐから離間しているので、ノズル６０の対向面６２と半田付け対象物品Ｐとの間に隙間が形成される。このノズル６０の対向面６２と半田付け対象物品Ｐとの間の隙間から、半田溶融時の煙等の排出を促進できる。すなわち、排煙効果を得ることができる。

【0092】

なお、上述の実施例１では、突出部６３がノズル６０の対向面６２における通路幅方向の端部に設けられるようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、図１２Ａに示すように、突出部６３（当接面６３ａ）がノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１から遠い側の端部に設けられてもよい。図９に示すように、ノズル６０の対向面６２のうち、搬送方向の端部は、搬送方向の中央部よりもヒータ５１から離れているので、搬送方向の中央部よりも温度が低くなる。このように、比較的低温となるヒータ５１から遠い側の端部に突出部６３（当接面６３ａ）を設けることによって、半田溶融時に、ノズル６０から半田付け対象物品Ｐに直接伝達される熱（伝達熱）を少なくし、半田付け対象物品Ｐが過熱されることを防止できる。また、当接面６３ａがランドＲに当接する場合には、比較的低温となるヒータ５１から遠い側の端部において、ランドＲを直接熱（伝達熱）で予熱ないし加熱することができるので、温度不足を防止することもできる。

【0093】

また、図１２Ｂに示すように、突出部６３（当接面６３ａ）がノズル６０の対向面６２の任意の位置に設けられていてもよい。たとえば、半田付け対象物品Ｐに熱引きの大きい部分が存在する場合に、半田付け対象物品Ｐのうち熱引きの大きい部分に対応する位置に突出部６３（当接面６３ａ）が設けられてもよい。また、半田付け対象導体としての複数の端子Ｔに熱引きの大きい端子Ｔが含まれる場合には、熱引きの大きい端子Ｔに対応する半田片供給通路６１の周囲に突出部６３（当接面６３ａ）が設けられてもよい。たとえば、半田片供給通路６１の外側に、半田片供給通路６１の断面形状の相似形となる突出部６３（当接面６３ａ）が設けられてもよい。このように、半田付け対象物品Ｐにおける熱引きの大きい部位に突出部６３を設けることで、半田を溶融して半田付けするために他の部位よりも熱量が必要な部位に対してノズル６０の突出部６３から直接熱を伝達して早く加熱し、それ以外の部位にはノズル６０が接触せずに複写熱や対流熱でゆっくり加熱して、一度に半田付けする複数の半田付け対象導体全体の半田付けを良好に行うことができる。なお、熱引きの大きい部分とは、例えば、同時に半田付けする半田付け対象導体の中で、大きな部品の端子、太いまたは長いリード線、大きいランド、厚いランド、あるいはグランドパターンのランドなど、他よりも熱が早く伝達する部分をいう。

【実施例0094】

図１３は、実施例２のノズル６０の構成を説明する正面図である。実施例２の半田付け装置１は、ノズル６０の構成が実施例１と異なる。

【0095】

図１３に示すように、実施例２のノズル６０には、熱抵抗部６４が設けられる。熱抵抗部６４は、ヒータ５１からノズル６０の対向面６２までの熱の伝達効率が均一になるように配置される。具体的には、熱抵抗部６４は、ヒータ５１と、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１に近い部分との間に設けられる。本実施例では、ヒータ５１がノズル６０の搬送方向の中央に設けられるので、熱抵抗部６４は、ノズル６０の対向面６２における搬送方向の中央部との間に設けられる。

【0096】

また、本実施例では、熱抵抗部６４は、ノズル６０の正面から裏面に貫通する断面円形の貫通孔によって構成される。このため、本実施例の熱抵抗部６４は、半田片供給通路６１を避けた位置（半田片供給通路６１と重ならない位置）に設けられる。なお、熱抵抗部６４を構成する貫通孔は、断面円形に限らず、断面多角形、断面楕円形、断面正方形など、適宜の形状とすることができる。

【0097】

なお、熱抵抗部６４は、貫通孔によって構成される例に限定される必要はない。たとえば、熱抵抗部６４は、ノズル６０の正面または裏面に形成される非貫通穴（溝、窪み）によって構成されてもよいし、ノズル６０の正面または裏面に形成される突起によって構成されてもよいし、ノズル６０の熱抵抗を変化させるノズル６０とは別の部材によって構成されてもよい。これらのようにすれば、熱抵抗部６４を半田片供給通路６１の位置を避けて設ける必要が無くなる。したがって、熱抵抗部６４の配置の自由度が増す。たとえば、ヒータの加熱部がノズル６０の端部に設けられる場合や、ノズル６０の内部に挿入される場合などであっても、ヒータから対向面６２までの熱の伝達効率が均一になるように自由に配置することができる。

【0098】

その他の構成および動作については、実施例１と同一であるため、同一要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。この実施例２においても、実施例１と同一の作用効果を奏することができる。

【0099】

また、図１４に示すように、熱抵抗部６４を設けないとすると、ノズル６０の対向面６２における搬送方向の中央部は、ヒータ５１との距離が短いので、温度が高くなり、ノズル６０の対向面６２における搬送方向の端部に向かうにつれて、温度が低くなる。すなわち、複数の半田片供給通路６１のそれぞれの温度にばらつきが生じる。

【0100】

これに対し、熱抵抗部６４を設けると、ヒータ５１から、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１に近い部分までの熱の伝達効率が低くなり、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１に近い部分の温度が低くなる。一方、熱抵抗部６４は、ヒータ５１から、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１から遠い部分までの熱の伝達効率にはあまり影響を与えないため、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１から遠い部分の温度は熱抵抗部６４を設けない場合とほぼ同じである。したがって、図１５に示すように、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１に近い部分の温度と、ノズル６０の対向面６２におけるヒータ５１から遠い部分の温度との差が小さくなり、ノズル６０の対向面６２の温度が均一化される。このため、各半田片供給通路６１における加熱条件を均一化することができ、複数の半田付け対象導体に対して安定して半田付けすることができる。
なお、この発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、様々な実施形態とすることができる。

【0101】

また、半田付け対象導体は、プリント基板Ｐの端子ＴとランドＲに限らず、例えば、モータの端子とリード線とする、プリント基板の配線上に寝かした状態で置いた端子と当該配線とする、など、適宜の半田付け対象とすることができる。これらの場合も同様にノズルを半田付け対象に当接させた状態で半田付けすることができる。

【0102】

さらに、半田付け対象物品Ｐにおいて、ノズル６０がノズル当接位置に位置するときに、ノズル６０の当接部と当接する部分は、半田付け対象導体の一部であってもよいし、それ以外の部分、たとえば絶縁体板などであってもよい。