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特開2022-117248ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117248
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
H01L31/04 124
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013840
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高濱 豪
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA14
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB21
5F151CB22
5F151CB24
5F151CB27
5F151EA03
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA20
5F151FA02
5F151FA03
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F151GA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造しやすいペロブスカイト太陽電池の製造方法や,下の層の影響を受けにくいペロブスカイト太陽電池を提供する。
【解決手段】第1の可撓性基板3と,第1の電極5と,ペロブスカイト層を有する光電変換層7,9,11と,第2の電極13と,第2の可撓性基板15とをこの順に有する太陽電池の製造方法であって,第1の可撓性基板3及び第1の電極5を含む第1のフィルムと,第2の電極13及び第2の可撓性基板15を含む第2のフィルムを用意する工程と,第1のフィルム及び第2のフィルムを貼り合わせる工程を含む,太陽電池の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の可撓性基板(3)と,第1の電極(5)と,ペロブスカイト層を有する光電変換層(7,9,11)と,第2の電極(13)と,第2の可撓性基板(15)とをこの順に有する太陽電池の製造方法であって,
第1の可撓性基板(3)及び第1の電極(5)を含む第1のフィルム(21)と,
第2の電極(13)及び第2の可撓性基板(15)を含む第2のフィルム(23)を用意する工程と,
第1のフィルム(21)及び第2のフィルム(23)を貼り合わせる工程を含む,太陽電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,第2のフィルム(23)は前記光電変換層(7,9,11)をさらに含む太陽電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,第1のフィルム(21)は第1のペロブスカイト前駆体層(31)をさらに有し,第2のフィルム(23)は第2のペロブスカイト前駆体層(33)をさらに有する,太陽電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,第1のフィルム(21)は第1のペロブスカイト層(37)をさらに有し,第2のフィルム(23)は第2のペロブスカイト層(39)をさらに有し,第1のペロブスカイト層(37)及び第2のペロブスカイト層(39)が前記ペロブスカイト層を構成する,太陽電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,第2のフィルム(23)を得るために,第2の可撓性基板(15)にスパッタリングにより第2の電極(13)を形成する工程か導電性ペーストを用いて第2の可撓性基板(15)に第2の電極(13)を形成する工程をさらに含む,太陽電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,
第1の電極(5)と第2の電極(13)とは,
第1の電極(5)と第2の電極(13)の間の領域のうち前記光電変換層(7,9,11)が存在しない領域において,
第1の電極(5)上に設けられた第1の接続用電極部(25)を介して導通がとられるように接続される,太陽電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の太陽電池の製造方法であって,
第1の電極(5)と第2の電極(13)とは,
第1の電極(5)と第2の電極(13)の間の領域のうち前記光電変換層(7,9,11)が存在しない領域において,
第2の電極(13)上に設けられた第2の接続用電極部(27)を介して導通がとられるように接続される,太陽電池の製造方法。
【請求項8】
第1の可撓性基板(3)と,透明電極である第1の電極(5)と,光電変換層(7,9,11)と,第2の電極(13)と,第2の可撓性基板(15)とをこの順にする太陽電池であって,
前記光電変換層(7,9,11)は,電子輸送層(7),ペロブスカイト層(9),及び正孔輸送層(11)をこの順で有し,
前記正孔輸送層(11)又は第2の電極(13)は,ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)を含む導電性高分子を含む,太陽電池。
【請求項9】
第1の可撓性基板(3)と,透明電極である第1の電極(5)と,光電変換層(7,9,11)と,第2の電極(13)と,第2の可撓性基板(15)とをこの順にする太陽電池であって,
前記光電変換層(7,9,11)は,正孔輸送層(11)ペロブスカイト層(9),及び電子輸送層(7),をこの順で有し,
前記電子輸送層(7)は,SnO又はTiOを含む,太陽電池。
【請求項10】
第1の可撓性基板(3)と,透明電極である第1の電極(5)と,ペロブスカイト層(9)を有する光電変換層(7,9,11)と,第2の電極(13)と,第2の可撓性基板(15)とをこの順にする太陽電池であって,
第1の電極(5)と第2の電極(13)とは,
第1の電極(5)と第2の電極(13)の間の領域のうち前記光電変換層(7,9,11)が存在しない領域において,
第1の電極(5)上に設けられた第1の接続用電極部(25)を介して導通がとられるように接続された,太陽電池。
【請求項11】
第1の可撓性基板(3)と,透明電極である第1の電極(5)と,ペロブスカイト層(9)を有する光電変換層(7,9,11)と,第2の電極(13)と,第2の可撓性基板(15)とをこの順にする太陽電池であって,
第1の電極(5)と第2の電極(13)とは,
第1の電極(5)と第2の電極(13)の間の領域のうち前記光電変換層(7,9,11)が存在しない領域において,
第2の電極(13)上に設けられた第2の接続用電極部(27)を介して導通がとられるように接続された,太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はペロブスカイト太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-55916号公報には,ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法が記載されている。ペロブスカイト太陽電池は,表面基板,表面電極,ペロブスカイト層,裏面電極及び裏面電極を含む積層構造を有している。そして,その製造方法は,各層を順番に形成するというものである。層を順次形成し積層構造を得ると,上の層は下の層の影響を受けやすいという問題や,各層のパターニング及びエッチング作業に手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-55916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,製造しやすいペロブスカイト太陽電池を提供すること,並びに下の層の影響を受けにくいペロブスカイト太陽電池を提供することを目的のひとつとしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は,基本的には2枚のフィルムを用意し,これらを合わせて太陽電池を作ることにより解決される。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば,初期特性だけでなく,高い耐久性を有するペロブスカイト太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は,太陽電池の基本構成を示す概念図である。
図2図2は,太陽電池の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。
図3図3は,第1のフィルム及び第2のフィルムを示す概念図である。
図4図4は,第1のフィルムが第1の接続用電極を有するとともに,第2のフィルムが第2の接続用電極を有するものを示す概念図である。
図5図5は,第2のフィルムが第2の接続用電極を有するものを示す概念図である。
図6図6は,正孔輸送層と電子輸送層の作成順が図2とは逆のものを示すフローチャートである。
図7図7は,第1のフィルムが正孔輸送層を有し,第2のフィルムが電子輸送層とペロブスカイト層を有するものを用いて太陽電池を製造する例を示すフローチャートである。
図8図8は,図7のフローチャートに従って得られる第1のフィルムと第2のフィルムを示す概念図である。
図9図9は,第1のフィルムと第2のフィルムとが,それぞれペロブスカイト前駆体層を有するものを示す概念図である。
図10図10は,第1のフィルムと第2のフィルムとが,それぞれペロブスカイト層を有するものを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0009】
太陽電池について
最初の発明は,太陽電池に関する。図1は,太陽電池の基本構成を示す概念図である。図1に示されるように,この太陽電池1は,第1の可撓性基板3と,第1の電極5と,ペロブスカイト層を有する光電変換層7,9,11と,第2の電極13と,第2の可撓性基板15とをこの順に有する。光電変換層7,9,11は,ホール(正孔)輸送層7,ペロブスカイト層9及び電子輸送層11を有してもよい。
【0010】
可撓性基板3,15
可撓性基板3,15として,有機系太陽電池や有機EL素子等における公知の基板を適宜用いることができる。基板の具体例としては,ガラス,セラミックス,樹脂フィルムを挙げることができる。樹脂フィルムの具体例としては,アイオノマーフィルム,ポリエチレンフィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリエチレンナフタレートフィルム,ポリ塩化ビニルフィルム,ポリ塩化ビニリデンフィルム,ポリビニルアルコールフィルム,ポリプロピレンフィルム,ポリエステルフィルム,ポリカーボネートフィルム,ポリスチレンフィルム,ポリアクリロニトリルフィルム,エチレン酢酸ビニル共重合フィルム,エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム,エチレン-メタクリル酸共重合フィルム,ナイロンフィルムなどを挙げることができ,単独あるいは2種以上の混合物から形成されていても構わない。また,これらのフィルムが積層されて形成されていても構わない。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板を使うこともできる。
【0011】
金属の例は,ガリウム,鉄,インジウム,アルミニウム,バナジウム,チタン,クロム,ロジウム,ニッケル,コバルト,亜鉛,マグネシウム,カルシウム,シリコン,イットリウム,ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属である。半導体膜の構成材料の例は,シリコン,ゲルマニウム等の元素単体,周期表の第3族~第5族,第13族~第15族の元素を有する化合物,金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,金属窒化物等が挙げられ,単独あるいは2種類以上含有するものである。また,前期導電性膜の構成材料の例は,スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化亜鉛(ZnO),アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),酸化スズ(SnO),酸化チタン(TiO),酸化インジウム(In),酸化タングステン(WO)を挙げることができ,単独あるいは2種類以上含有するものである。前期絶縁性膜の構成材料の例は,酸化アルミニウム(Al),酸化シリコン(SiO),窒化シリコン(Si),酸窒化シリコン(Si)が挙げられる。
【0012】
基板の形状の例は,平板や円板等の板状,繊維状,棒状,円柱状,角柱状,筒状,螺旋状,球状,リング状であり,多孔質構造体であってもよい。これらのうちでは板状の基板が好ましい。基板の厚さの例は,0.1μm~100mmが好ましく,1μm~10mmがより好ましい。
【0013】
第1の電極5,第2の電極13
電極は,電子輸送層の支持体であるとともに,ペロブスカイト層(光吸収層)より電子を取り出す機能を有する層である。電極は,基板3上に形成され,離間した第1電極5a及び第2電極5bを含む。離間したとは,物理的に接触していないことや,第1電極5a及び第2電極5bが短絡していないことを意味する。電極は,透明電極又は金属電極であることが好ましい。
【0014】
透明電極の例は,カーボン,金属,導電性金属酸化物を挙げることができる。カーボンとしては,カーボンブラック,カーボンナノチューブ,グラフェンなどが挙げられ,金属としては金,銀,銅,アルミニウム,ニッケル,インジウム,チタンなどを挙げることができる。酸化物半導体としては,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜である。金属電極は,金属を含む電極を意味する。そして,金属電極の例は,金,銀,及び銅である。金属電極は,金属のみならず,金属の表面にスズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜を有していてもよい。これらの膜は,例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。これら電極の厚みは特に制限されず,通常,シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。電極は,形成する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。
【0015】
また,第一の電極はメッシュ状やストライプ上などの光を透過できる構造にしてものでもよい。さらに,電気的な抵抗をさげるという目的として金属リード線を併用しても構わない。金属リード線としては,アルミニウム,銀,金,チタンなどを挙げることができる。
【0016】
電子輸送層11
電子輸送層11は,ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ,光電変換効率を向上させるとともに,電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でもよい。また,電子輸送層は,酸化チタン(TiO)(メソポーラスTiOを含む),酸化スズ(SnO),酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物を含む層であってもよい。電子輸送層の厚みは,特に制限されず,ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から,10~300nm程度が好ましく,10~250nm程度がより好ましい。電子輸送層11は,n型金属酸化物半導体を含むか,n型金属酸化物半導体からなるものであってもよい。特に本発明のように第1のフィルムと第2のフィルムとを貼り合わせて太陽電池を製造する場合,電子輸送層11は,n型金属酸化物半導体を含むものであることが好ましい。
【0017】
正孔輸送層7
正孔輸送層7は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層7は,ペロブスカイト層9上に形成された層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuSCN,CuInSe,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi,MoO,Cr等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuI,CuSCNがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,Spiro-OMeTADなどがより好ましい。もっとも,本発明のように第1のフィルムと第2のフィルムとを貼り合わせて太陽電池を製造する場合,正孔輸送層はポリチオフェン誘導体を含むことが好ましい。
【0018】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF,SbCl,SbF,トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド],4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t-ブチルピリジン(TBP),2-ピコリン,2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,10~1000nmが好ましく,100~500nmがより好ましい。
【0019】
ペロブスカイト層9
ペロブスカイト太陽電池におけるペロブスカイト層(光吸収層:光活性層)9は,光を吸収し,励起された電子と正孔を移動させることにより,光電変換を行う層である。
上記ペロブスカイト層は,一般式(ABX)で表される化合物を用いる。この化合物は,ペロブスカイト結晶やペロブスカイト錯体であってもよい。
Aはメチルアミン,エチルアミン,n-ブチルアミン,ジ-n-ブチルアミン,ジ-n-ヘキシルアミン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,メチル-n-ヘキシルアミン,メチルジエチルアミン,トリ-n-ヘキシルアミン,トリ-t-ブチルアミン,イミダゾール,ピロール,アジリジン,カルバゾール,ホルムアミジン,グアニジン,アニリン,ピリジン,4-t-ブチルピリジン,フェネチルアミン,5-アミノ吉草酸などの有機アミノ化合物,セシウム,カリウム,ルビジウムなどから形成される1価のカチオンを挙げることができ,単独で用いても2種類以上の混合物として用いても構わない。
Bは鉛,スズなどの2価のカチオンを挙げることができ,単独で用いても混合で用いても構わない。また,インジウム,アンチモンなどの3価のカチオンを少量混合しても構わない。
Xは塩素,臭素,ヨウ素などのハロゲン原子やアニオン源を挙げることができ,単独で用いても2種以上の混合で用いても構わない。
【0020】
ペロブスカイト層(光吸収層)は,ペロブスカイト材料や,ペロブスカイト錯体を含む。 ペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,光吸収効率と電子及び正孔拡散長とのバランス及び電極で反射した光の吸収効率の観点から,例えば,50~1000nmが好ましく,200~800nmがより好ましい。本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定すればよい。
また,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において高低差が50nm以下(-25nm~+25nm)であるものが好ましく,高低差が40nm以下(-20nm~+20nm)であるのがより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。
【0021】
光電変換層7,9,11は,正孔輸送層7,ペロブスカイト層9,及び電子輸送層11をこの順で有してもよい。この場合,電子輸送層11又は第2の電極13は,ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリ4-スチレンスルホン酸塩を含む導電性高分子を含むものが好ましい。
【0022】
また,光電変換層7,9,11は,電子輸送層11,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層7,をこの順で有してもよい。この場合,電子輸送層11は,SnO又はTiOを含むことが好ましい。
【0023】
図2は,太陽電池の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。図2に示されるように,この方法は,第1の可撓性基板3及び第1の電極5を含む第1のフィルム21を用意する工程を含む。それと並行して,第2の電極13及び第2の可撓性基板15を含む第2のフィルム23を用意する工程を含む。可撓性基板上に電極を形成する工程は,公知である。なお,第1のフィルム21及び第2のフィルム23のいずれか又は両方は,光電変換層7,9,11や接続用電極25,27をさらに有していてもよい。これらを設ける方法も公知である。可撓性基板にスパッタリングにより電極を形成してもよい。また,導電性ペーストを用いて可撓性基板に電極を形成してもよい。
【0024】
接続用電極25,27
接続用電極は,第1の電極5と第2の電極13との導通を得るための電極である。
【0025】
第1の可撓性基板3及び第1の電極5を含む第1のフィルム21を用意する工程の例は,図2のステップ201~ステップ202に示されるものである。裏面パターン電極付きの基板を用意する(S201)。なお,この際の電極が接続用電極として用いられてもよい。次に,裏面パターン電極に接した接続用電極を形成する(S202)。このようにして得られる第2のフィルム21は,図3に示される通りである。図3は,第1のフィルム及び第2のフィルムを示す概念図である。可撓性基板上に電極を形成し,電極上に光電変換層を形成する方法は公知である。
【0026】
裏面パターン電極付きの基板を用意する工程(S201)
基板上に電極を形成する。電極は,離間した第1電極及び第2電極を含んでもよい。基板上に電極を形成する方法は公知である。公知の方法の例は,レジストパターンによるエッチングを行うものや,レーザーを用いたパターニングである。
【0027】
裏面パターン電極に接した接続用電極を形成する工程(S202)
接続用電極を形成するためには,例えばスクリーン印刷をもちいればよい。また,マスクを用いて金属を蒸着して接続用電極としてもよい。
【0028】
第2の電極13及び第2の可撓性基板15を含む第2のフィルム23を用意する工程の例は,図2のステップ101~ステップ105に示されるものである。表面パターン電極付きの基板を用意する(S101)。次に,電子輸送層を形成する(S102)。次に,ペロブスカイト層を形成する(S103)。次に,正孔輸送層を形成する(S104)。その後,光活性層(光電変換層)のパターニングを行う。このようにして得られる第2のフィルム23は,図3に示される通りである。
【0029】
表面パターン電極付きの基板を用意する工程(S101)
基板上に電極を形成する。電極は,離間した第1電極及び第2電極を含んでもよい。基板上に電極を形成する方法は公知である。公知の方法の例は,レジストパターンによるエッチングを行うものや,レーザーを用いたパターニングである。
【0030】
電子輸送層を形成する工程(S102)
電子輸送層は,形成する材料に応じた公知の成膜方法を用いて得ることができる。例えば,電極の上に,3~15質量%(特に5~10質量%)の酸化スズ微粒子の水分散液を塗布して作製することができる。酸化スズ微粒子水分散液は公知又は市販品を用いることができる。塗布の方法は,スピンコート法が好ましい。なお,塗布は例えば15~30℃程度で行うことができる。基板上に電極及び電子輸送層を形成した後に,レジストパターンによるエッチングを行うものや,レーザーを用いたパターニングを行ってもよい。
【0031】
ペロブスカイト層を形成する工程(S103)
ペロブスカイト層を形成する工程の例は,ペロブスカイト化合物を含む溶液を基板に塗布する工程と,基板に貧溶媒を塗布する工程と,基板をアニール処理する工程と,をこの順で含むものである。ペロブスカイト化合物を含む溶液を基板に塗布するためには,スピンコート,ディップコート,スクリーン印刷法,ロールコート,ダイコート法,転写印刷法,スプレー法,又はスリットコートを用いればよい。これらの中では,スピンコートにより基板上に溶液を塗布することが好ましい。スピンコートは,溶液を滴下しつつ,基板を回転させ,基板上に溶液を塗布する方法である。また,溶液を搭載した基板を回転させ,さらに基板に溶液を塗布してもよい。回転速度は,最大速度が1000~1万rpmを30秒から5分,最高速度までを2秒から15秒,最大速度から停止までを2秒から15秒とすればよい。
【0032】
次に,基板に貧溶媒を塗布する工程について説明する。
貧溶媒とは,溶質を溶かす能力はあるものの,溶質の溶解度が高くない溶媒を意味する。貧溶媒の例は,ジクロロメタン,クロロホルム等の置換脂肪族炭化水素;トルエン,ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン,オルトジクロロベンゼン,ニトロベンゼン等の置換芳香族炭化水素;酢酸,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール,オクタノール等のアルコール;ヘキサン等の長鎖炭化水素(特にC4-10炭化水素);アセトニトリル等が挙げられる。これら貧溶媒は,単独で使用することもできるし,2種以上を組合せて使用することもできる。これらの中では,クロロベンゼン又はトルエンが好ましい。
【0033】
次に,基板をアニール処理する工程について説明する。アニール処理とは,基板を加熱等する工程を意味する。アニール工程は,貧溶媒の滴下後,又はスピンコートが終了した後に基板が停止した後,速やかに行うことが好ましい。アニール処理する工程は,後述する実施例により示された通り,溶媒蒸気を含む密閉系にて,段階的に基板加熱する工程を含むものが好ましい。そして,密閉系では,Sn系ペロブスカイト化合物を含む溶液に含まれる溶媒の蒸気が存在することが好ましく,密閉系内ではその溶媒が飽和蒸気圧又は飽和蒸気圧の90%以上の分圧となっていることが好ましい。
【0034】
正孔輸送層を形成する工程(S104)
正孔輸送層を成膜する方法は,公知の方法を適宜採用すればよい。例えば,有機正孔輸送材料を含む溶液を,乾燥雰囲気下,ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート,インクジェット,ダイコータ等)し,30~150℃(特に50~100℃)で加熱することにより正孔輸送層11を成膜することが好ましい。正孔輸送層を形成することにより素子材料21を得ることができる。
【0035】
その後に,第1のフィルム21及び第2のフィルム23を貼り合わせる(S301)。すると図1に示す太陽電池を得ることができる。第1のフィルム21及び第2のフィルム23を重ねて加圧することで,2つのフィルムを貼り合張り合わせてもよい。この際に,加温してもよい。
【0036】
第1のフィルム21は光電変換層7,9,11をさらに含むものであってもよい。つまり,第1のフィルム25は,第2の電極13及び第2の可撓性基板15に加えて,光電変換層7,9,11を含んでもよい。
【0037】
図4は,第1のフィルムが第1の接続用電極を有するとともに,第2のフィルムが第2の接続用電極を有するものを示す概念図である。図4に示される2枚のフィルムを貼り合わせることで太陽電池が得られる。この太陽電池の第1の電極5と第2の電極13とは,第1の接続用電極部25と第2の接続用電極部27とを介して導通がとられる。このように,2つのフィルムがそれぞれ接続用電極を有するものであってもよい。
【0038】
図5は,第2のフィルムが第2の接続用電極を有するものを示す概念図である。図5に示される2枚のフィルムを貼り合わせることで太陽電池が得られる。この太陽電池の第1の電極5と第2の電極13とは,第2の接続用電極部27を介して導通がとられる。このように,第2のフィルム23が2つのフィルムがそれぞれ接続用電極を有するものであってもよい。
【0039】
図6は,正孔輸送層と電子輸送層の作成順が図2とは逆のものを示すフローチャートである。このように正孔輸送層と電子輸送層は,図1のものと逆にとなるようにしてもよい。
【0040】
上記の方法において,第1のフィルム21は,光電変換層のうち一部を有し,第2のフィルム23は光電変換層のうち残りを有してもよい。すると,第1のフィルム21と,第2のフィルム23とが貼り合わさった後に,光電変換層が完成することとなる。
【0041】
図7は,第1のフィルムが正孔輸送層を有し,第2のフィルムが電子輸送層とペロブスカイト層を有するものを用いて太陽電池を製造する例を示すフローチャートである。図7のフローチャートに従って得られる第1のフィルムと第2のフィルムの概要は図8に示される。図8は,図7のフローチャートに従って得られる第1のフィルムと第2のフィルムをしめす概念図である。図8に示されるように,この例では,第1のフィルム21が正孔輸送層7を有し,第2のフィルム23が電子輸送層11とペロブスカイト層9を有する。この例では,第1のフィルムと第2のフィルムとが貼り合わさった後に,光電変換層7.9.11が完成することとなる。
【0042】
上記の方法において,第1のフィルム21は第1のペロブスカイト前駆体層31をさらに有し,第2のフィルム23は第2のペロブスカイト前駆体層33をさらに有するものであってもよい。図9は,第1のフィルムと第2のフィルムとが,それぞれペロブスカイト前駆体層を有するものを示す概念図である。この場合,第1のペロブスカイト前駆体層31及び第2のペロブスカイト前駆体層33は,第1のフィルム21及び第2のフィルム23が貼り合わられせた後に,ペロブスカイト層9を形成することとなる。
【0043】
ペロブスカイト前駆体層
ペロブスカイト前駆体層は,所定の処理を行うことでペロブスカイト層となる層を意味する。例えば,第1のペロブスカイト前駆体層31及び第2のペロブスカイト前駆体層33には,それぞれの組成が合わされるとペロブスカイト層を構成する要素を含み,第1のフィルム21及び第2のフィルム23が貼り合わらせられるとペロブスカイト層9を形成することとなる組成を有すればよい。ペロブスカイトの前駆体は,例えば特開2019-055916号公報に記載される通り,公知である。ペロブスカイト前駆体層は,公知のペロブスカイトの前駆体を適宜含めばよい。例えば,錯体は,式(AMn1m1)で示される化合物と, (1)1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(「DMTHP」と略記), (2)スルホラン(テトラヒドロチオフェン1,1-オキシド:「SU」と略記), (3)テトラメチレンスルホキシド(「TS」と略記),又は (4)N,N-ジメチルアセトアミド(「DMA」と略記)を含む錯体が,ペロブスカイトの前駆体である。
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH ),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH ),又はセシウムカチオン(Cs)であり,
Mは,Pb2+,Ge2+,又はSn2+であり,
Xは,F,Cl,Br,又はIであり,
n1は,0.8~1.2であり,
m1は,2.8~3.2である。
上記の錯体を含む膜を加熱すると,分子(L)が分離し,ペロブスカイト化合物が形成される。例えば,第1のフィルム21及び第2のフィルム23が貼り合わられせた後に,加熱することで,ペロブスカイト層9を得ることができる。
【0044】
上記の方法において,第1のフィルム21は第1のペロブスカイト層37をさらに有し,第2のフィルム23は第2のペロブスカイト層39をさらに有し,第1のペロブスカイト層37及び第2のペロブスカイト層39が合わさって,ペロブスカイト層を構成するものであってもよい。図10は,第1のフィルムと第2のフィルムとが,それぞれペロブスカイト層を有するものを示す概念図である。例えば,第1のフィルム21の表面には第1のペロブスカイト層が形成される。そして,第2のフィルム23の表面には,第1のペロブスカイト層と同じ組成を有する第2のペロブスカイト層が形成される。これら2つのフィルムを圧着すると,例えば同じ組成を有するペロブスカイト層が溶着され,ひとつのペロブスカイト層を構成する。このようにすれば,容易に2つのフィルムを圧着できる。
【0045】
上記の方法において,第1の電極5と第2の電極13とは,第1の電極5と第2の電極13の間の領域のうち光電変換層7,9,11が存在しない領域において,第1の電極5上に設けられた第1の接続用電極部25を介して導通がとられるように接続されてもよい。第1の接続用電極部25は,突起状の形状を有していてもよい。第1の接続用電極部25が突起状の形状を有していれば,第2の電極13上に薄層が形成されていても,それを突き抜けて,第2の電極13と導通を確保できるので好ましい。
【0046】
この例では,例えば,第2の可撓性基板15上に第2の電極(表面電極)13が設けられ,表面電極13上に光電変換層7,9,11が設けられている。一方,この例では,光電変換層7,9,11が,表面電極13の全面に設けられているのではなく,表面電極13の表面であって,光電変換層7,9,11が存在しない領域(この領域を領域Aとする)が存在する。一方,第1の可撓性基板3上には,第1の電極(裏面電極)5が設けられる。そして,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15とは対応する形状を有しており,貼り合わさって太陽電池を構成する。裏面電極5上であって,領域Aに対応する領域に,接続用電極部25が存在する。すると,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15とが貼り合わさった後に,第1の接続用電極部25が表面電極13と接する。これにより,第1の電極5と第2の電極13とは,第1の接続用電極部25を介して導通がとられるようになる。
【0047】
上記のようにして製造された太陽電池は,以下の構成を有する。つまり,この太陽電池は,第1の可撓性基板3と,透明電極である第1の電極5と,ペロブスカイト層9を有する光電変換層7,9,11と,第2の電極13と,第2の可撓性基板15とをこの順にする。そして,第1の電極5と第2の電極13とは,第1の電極5と第2の電極13の間の領域のうち光電変換層7,9,11が存在しない領域において,第1の電極5上に設けられた第1の接続用電極部25を介して導通がとられるように接続されている。
【0048】
この太陽電池は,図1に示されるように,例えば,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15との間に,光電変換層7,9,11が存在しない領域が存在する。特に,この太陽電池は,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15との間に,正孔輸送層7とペロブスカイト層9が存在しない領域があるものが好ましい。
【0049】
この太陽電池は,図1に示されるように,正孔輸送層7がペロブスカイト層9を覆うものが好ましい。また,正孔輸送層7がペロブスカイト層9よりも広く存在していてもよい。第1のフィルム21と第2のフィルムとを貼り合わせた際に,正孔輸送層7は,第1の電極との接着面となる。この接着面となる正孔輸送層7がペロブスカイト層9を覆うことにより,正孔輸送層7がペロブスカイト層9を酸素や水分から保護し,耐久性を向上させる。
【0050】
上記の方法において,第1の電極5と第2の電極13とは,第1の電極5と第2の電極13の間の領域のうち光電変換層7,9,11が存在しない領域(領域A)において,第2の電極13上に設けられた第2の接続用電極部27を介して導通がとられるように接続されてもよい。この場合領域Aに,第2の接続用電極部27が設けられ,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15とが貼り合わさった後に,第2の接続用電極部27が第1の電極(裏面電極)5と接触してもよい。一方,裏面電極5上であって,領域Aに対応する領域に,第1の接続用電極部25が存在してもよい。この場合,第1の可撓性基板3と,第2の可撓性基板15とが貼り合わさった後に,第2の接続用電極部27が第1の接続用電極部25と接触してもよい。いずれにせよ,このようにして,第1の電極5と第2の電極13とは,第2の接続用電極部27(又は第2の接続用電極部27と第1の接続用電極部25)を介して導通がとられるようになる。
【0051】
このようにして製造された太陽電池は,以下の構成を有する。この太陽電池は,第1の可撓性基板3と,透明電極である第1の電極5と,ペロブスカイト層9を有する光電変換層7,9,11と,第2の電極13と,第2の可撓性基板15とをこの順にする。そして,第1の電極5と第2の電極13とは,第1の電極5と第2の電極13の間の領域のうち光電変換層7,9,11が存在しない領域において,第2の電極13上に設けられた第2の接続用電極部27を介して導通がとられるように接続される。
【実施例0052】
以下の装置及び器具を用いて太陽電池を作成した。
PTFEフィルター:Agilent Technologies, 5190-5266, 0.45 μm
ITO/PENフィルム:Oike & Co., Itd., CX13G-125N-U0, 16 Ω/□
ラミネータ:Nishinbo Mechatronics Inc., PVL0202S
試薬
SnO2水分散液:Alfer Acer, 044592
PEDOT:PSS分散液:Heraeus, Clevios P VP. Al 4083.
PbI2:Tokyo Chemical Industry Co., Ltd., L0279
FAI:Tokyo Chemical Industry Co., Ltd., F1263
MABr:Tokyo Chemical Industry Co., Ltd., M2589
MACl:Tokyo Chemical Industry Co., Ltd., M0138
超脱水DMF:Kanto Chemical Co., Inc., 11339-85
超脱水DMSO:Wako Pure Chemical Industries, Ltd., 049-07213
超脱水アセトン:Wako Pure Chemical Industries, Ltd., 013-00356
【0053】
透明電極であるITO付き PENフィルムをプラズマ処理し,電子輸送層として水溶性SnO2,正孔輸送層として水溶性PEDOT:PSSをそれぞれ塗布した.SnO2層は15 % SnO2水分散液を純水で1:1に薄めた分散液を基板上に300 μL滴下し,スピンコート(ramp 2 秒, 3000 rpm 20 秒間)し,150 °Cで30分間加熱処理することで得た.PEDOT:PSS層も同様に基板上に300 μLのPEDOT:PSS分散液を滴下し,スピンコートにより塗布(ramp 1 秒,500 rpmで9 秒間し,ramp 1秒,4000 rpmで30秒間)し,140 °Cで30分間加熱処理することで得た.SnO2およびPEDOT:PSSの製膜は大気下で行った.以降の工程は全てグローブボックス内で行った(N2ガス,H2O < 0.1 ppm, O2 <0.1 ppm).
【0054】
グローブボックス内でPbI2(1798 mg, 3.9 mmol)を超脱水DMF/DMSO混合液(2.85 mL/0.15 mL)に溶解させた.70 °C で30分間攪拌し,PTFEフィルターを用いて濾過し,1.3 MのPbI2溶液を調整した.SnO2およびPEDOT:PSSを塗布した基板上にPbI2溶液(200 μL)をスピンコート法により塗布(ramp 2秒,1500 rpmで30秒間)し,70 °Cで1分間加熱処理し,PbI2層を得た.アセトン:DMSO(10 : 1)溶液を用いてSnO2層,PEDOT:PSS層,PbI2層の一部を取り除き,取り出し電極用のCuテープを取り付けた.
【0055】
固定化のためのフィルム基板および封止剤はSnO2,PEDOT:PSSを塗布した基板よりも大きい物を用いた.フィルム基板上に封止剤をのせ,120 °C で10分間加熱処理したのち,SnO2およびPEDOT:PSSを塗布した基板をのせて固定した.
【0056】
FAI (60 mg, 0.35 mmol),MABr (6.0 mg, 0.05 mmol),MACl (6.0 mg, 0.09 mmol) を超脱水i-PrOH (10 mL) に溶解させた.40 °Cで30分間攪拌し,PTFEフィルターを用いて濾過し,有機カチオン溶液を調整した.それぞれの基板上に,有機カチオン溶液を50 μL滴下後,素早く重ね合わせた.温度150 °Cに設定したラミネータに移し,10分間減圧下で圧着させペロブスカイト層を形成した.以上のプロセスを得て,貼り合わせセルを作製した.得た太陽電池の断面積を測定すると,ペロブスカイト層よりもPEDOT:PSSの方が大きな面積を示していることが分かった。これは,貼り合わせ時の圧力によって柔らかい膜であるPEDOT:PSSが広がったためだと推測される。
【0057】
大気下,1 Sunでの太陽電池特性評価を行った。SnO2層側からの光入射時の特性は,開放電圧が0.70 V,短絡電流密度が17.8mA/cm2,形状因子が0.64,変換効率が8.0%を示した。また,PEDOT:PSS層側からの光入射時には開放電圧が0.58 V,短絡電流密度が15.4mA/cm2,形状因子が0.61,変換効率が5.45%を示した。
【0058】
更に,上記1Sunでの光耐久性として,連続100時間照射後の太陽電池特性を評価した。その結果,SnO2層側からの光入射時の特性は,開放電圧が0.67 V,短絡電流密度が16.1mA/cm2,形状因子が0.63,変換効率が6.8%であり,耐久性試験前の特性と比較した
維持率は85%であった。
【0059】
[比較例1]
ペロブスカイト層を形成するまでの工程は実施例1と同様の工程でデバイスを作製し,その上に,PEDOT:PSS層を形成した。このようにして得た電極と,ITO月PENフィルムwを実施例1と同様にして貼り合わせてセルを作製した。
このセルの太陽電池特性を,大気下,1 Sunで行った。SnO2層側からの光入射時の特性は,開放電圧が0.41 V,短絡電流密度が10.3mA/cm2,形状因子が0.33,変換効率が1.4%を示した。また,PEDOT:PSS層側からの光入射時には開放電圧が0.33 V,短絡電流密度が7.6mA/cm2,形状因子が0.33,変換効率が0.8%を示した。実施例1と比較すると太陽電池性能に劣っていることが明確である。
【0060】
更に,上記1Sunでの光耐久性として,連続100時間照射後の太陽電池特性を評価した。その結果,SnO2層側からの光入射時の特性は,開放電圧が0.16 V,短絡電流密度が6.8mA/cm2,形状因子が0.31,変換効率が0.3%であり,耐久性試験前の特性と比較した
維持率は37.5%であった。実施例1に比較すると維持率が低いことが明確である。
【0061】
以上明らかなように,本発明の太陽電池は高い初期特性を示すだけでなく,高い光耐久性を有することが明らかである。
【実施例0062】
第1及び第2の可撓性基板にPETフィルム50μmを使用し,その上の電極にあらかじめITOを150nm程度成膜し,パターンを形成しておく。その後のプロセスを通しやすくするために,ガラス基板にその可撓性基板を張り付けることもある。
第1の可撓性基板の上に,まず,水溶性のSnO2溶剤をスピンコートで塗布し,150℃程度の加熱で乾燥させる。その上に,ペロブスカイト溶液のスピンコート,乾燥,ホール層のスピンコート,乾燥を行う。ホール層はSpiro-MeOTADにLiTFSiをクロロベンゼンに溶かした溶液を使用した。必要に応じて,ホール層,ペロブスカイト層の一部を除去する。除去する方法としては,レーザー加工で行ったが,他にはメタルマスクによるリアクティブイオンエッチング(RIE)がある。
【0063】
一方の第2の可撓性基板には,スクリーン印刷で,第1第2基板の電気的接続用として銀ペーストを所望の箇所に印刷しておく。仕上がり厚さは5~20μm程度になるよう濃度厚さを調整した。貼り合わせは両方のフィルムの位置を合わせ,ローラーで圧力をかけるとよい。圧力はローラーのサイズにもよるが,0.1kg/cm程度の圧力をかけた。貼り合わせる際には少しホール層の表面を柔らかくするためにクロロベンゼンを第2の可撓性基板に吹き付けておき張り合わせると効果的に貼り合わせができた。また,ローラーを70℃程度の一定の温度に加熱しておくことでより効果的に貼り合わせができた。
【0064】
フィルムは,PETに限らず可撓性フィルムであればよい。また,透湿を防ぐために,あらかじめバリア層を形成した可撓性フィルムが望ましい。また,接続用材料としては,銀ペースト以外にカーボンペースト,銅ペースト,ニッケルペースト,カーボンナノチューブ等がある。
【実施例0065】
第1及び第2の可撓性基板にPETフィルム50μmを使用しその上の電極にあらかじめITOを150nm程度成膜し,パターンを形成しておく((実施例2と同様)。その後のプロセスを通しやすくするために,ガラス基板にその可撓性基板を張り付けることもある。
第1の可撓性基板の上に,まず,水溶性のSnO溶剤をスピンコートで塗布し,150℃程度の加熱で乾燥させる。その上に,ペロブスカイト溶液のスピンコート,乾燥を行う。必要に応じて,ホール層,ペロブスカイト層の一部を除去する。除去する方法としては,レーザー加工,メタルマスクによるリアクティブイオンエッチング(RIE)がある。
【0066】
一方の第2の可撓性基板には,スクリーン印刷などで,第1及び第2基板の電気的接続用として銀ペーストを所望の箇所に印刷しておく。仕上がり厚さは5~20μm程度になるよう調整する。その後,ホール層をインクジェット法で所望のパターン形状に塗布をした。電気的接続用の材料による凹凸があるため,スピンコート法による塗布は必ずしも適さない。
【0067】
貼り合わせは両方のフィルムの位置をあらかじめ合わせ,ローラーで圧力をかけるとよい。圧力はローラーサイズにもよるが,0.1kg/cm程度の圧力をかけた。貼り合わせる際にはホール層の表面を柔らかくするために,第1の可撓性基板にクロロベンゼンを吹き付けておき貼り合わせると効果的に貼り合わせができた。また,ローラーを70℃程度の一定の温度に加熱しておくことでより効果的に貼り合わせができた。(材料については実施例2と同じ)
【0068】
上記の実施例では,スピンコートによる塗布を主としたが,インクジェット法により各層を形成してもよい。その場合,第1の可撓性基板にも接続用電極をあらかじめ形成しておき,接続用電極の抵抗を低減することが容易に安定してできるようになる。第1の可撓性基板に形成する接続用電極はITOの上に,Pt, Au, Cu, Ag, Ni, Ti, 等の単一金属,あるいは,それらの合金の金属薄膜を蒸着などで成膜,あるいはそれらの金属ペーストを使ってもよい。
【実施例0069】
第1及び第2の可撓性基板に例えばPETフィルム50μmを使用し,その上の電極にあらかじめITOを150nm程度成膜し,パターンを形成しておく。その後のプロセスを通しやすくするために,ガラス基板にその可撓性基板を張り付けることもある。
第1の可撓性基板上のITOの上にSnO2をスピンコート法で塗布後,その一部に接続用Cu/Ptを付けるために,メタルマスクをセットし,スパッタで成膜した。その上に実施例2と同様にペロブスカイト層,ホール層を順次塗布した。薄膜で接続用電極を形成した場合には,スピンコート法でも大きな塗布厚ムラができないが,スクリーン印刷で形成する場合は,段差が激しいためにスピンコート法では膜厚ムラが大きくなってしまう。その場合は,インクジェット法で塗布することで膜厚ムラの発生は抑えることができる。一方の第2の可撓性基板のプロセス,および貼り合わせは実施例2と同様の処理でよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は,太陽電池などの分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0071】
1 太陽電池
3 第1の可撓性基板
5 第1の電極
7 電子輸送層
9 ペロブスカイト層
11 正孔輸送層
13 第2の電極
15 第2の可撓性基板
21 第1のフィルム
23 第2のフィルム
31 第1のペロブスカイト前駆体層
33 第2のペロブスカイト前駆体層
37 第1のペロブスカイト層
39 第2のペロブスカイト層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10