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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117256
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】クラッチ配管の配設構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 23/02 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B60K23/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013850
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】前田 英明
【テーマコード(参考)】
3D036
【Fターム(参考)】
3D036EA01
3D036EB21
3D036EC11
3D036GH02
(57)【要約】
【課題】L字継手を用いずに、車室内とダッシュパネルを挟んだ反対側の車室外に配設される別の配管との干渉を回避できる、クラッチ配管の配設構造を提供する。
【解決手段】インパネ側チューブ23とエンコパ側チューブ22とを連結する継手24は、その両端のエンコパ側接続部25とインパネ側接続部26とが同一の中心線を有する円筒状に形成されることにより、その中心線上を延びる直管状をなしている。直管状の継手24は、ダッシュパネル7の連通口21と中心線方向に対向する位置に配置され、継手24のエンコパ側の端は、ダッシュパネル7よりもインパネ側に位置している。また、エンコパ側チューブ22の一端部を継手24に対して固定するフレアナット32は、その操作部34がエンジンコンパートメント7内に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧クラッチの作動油が流通するクラッチ配管をダッシュパネルで仕切られる車室内と車室外との間に跨がって配設する構造であって、
前記クラッチ配管は、車室内配管と、車室外配管と、前記車室内配管と前記車室外配管とを連結する継手とを有し、
前記ダッシュパネルには、前記車室内と前記車室外とを連通させる連通口が貫通して形成されており、
前記継手は、両端部が同一の中心線を有する円筒状に形成されて、前記中心線の方向に前記連通口と対向し、かつ、前記車室外側の端が前記ダッシュパネルよりも前記車室内側に位置するように配置され、
前記車室外配管の一端部は、フレア加工が施されており、前記継手の前記車室外側の端部に当接されて、フレアナットにより前記継手に対して固定され、
前記フレアナットは、前記フレアナットを回転操作するための操作部を有し、
前記操作部は、前記車室外に配置されている、クラッチ配管の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ配管の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアルトランスミッション(MT:Manual Transmission)を搭載した車両では、エンジンとマニュアルトランスミッションとの間に、クラッチが介装されている。運転席の前方に配置されたクラッチペダルが踏まれていないときには、クラッチが繋がっており、クラッチペダルが踏み込まれると、クラッチが切れる。クラッチが繋がっているときには、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションで変速されて駆動輪に伝達される。クラッチが切れた状態で、変速段を切り替えることができ、また、エンジンストールを発生させずに車両を停止させることができる。
【0003】
エンジンコンパートメントが前部に配置された車両では、エンジンコンパートメントとその後側の車室との間に、ダッシュパネルが設けられている。クラッチペダルは、ペダルブラケットに揺動可能に支持されている。ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられて、クラッチペダルは、運転席に着席した運転者の左脚の前方に配置される。油圧式のクラッチでは、クラッチペダルの踏み込みにより油圧を発生するマスタシリンダが設けられる。エンジンコンパートメント内には、エンジン本体の他に各種の補器類も配設されるため、マスタシリンダがエンジンコンパートメントに配設される構成では、レイアウト上の制約がある。そこで、本願出願人は、マスタシリンダをペダルブラケットに取り付けて車室内に配設する構成を先に提案している(特許文献1参照)。
【0004】
本願出願人の先の提案に係る構成では、ダッシュパネルに貫通孔が形成されて、その貫通孔に、マスタシリンダとリザーバとを接続するリザーバホースおよびマスタシリンダで発生する油圧をレリーズフォーク(レリーズシリンダ)に伝達するクラッチチューブが挿通される。クラッチチューブは、車室側クラッチチューブとエンコパ側クラッチチューブとを有し、車室側クラッチチューブおよびエンコパ側クラッチチューブは、ダッシュパネルの貫通孔に挿通して設けられる継手にそれぞれ車室側およびエンコパ側から接続される。継手は、ダッシュパネルを貫通する部分が直管状に形成され、エンジンコンパートメント側の端部が左右方向の一方側に屈曲したL字状に形成されている。このL字継手(L字ウェイ)の採用により、クラッチチューブとは別の配管がエンジンコンパートメント内をL字継手の近傍で左右方向に延びていても、エンコパ側クラッチチューブがL字継手に左右方向の一方側から接続されるので、エンコパ側クラッチチューブと別の配管とが干渉することを回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-32950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、L字継手は、重量が比較的大きく、また、アルミ削り出しにより作製されるために高価であるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、L字継手を用いずに、車室内とダッシュパネルを挟んだ反対側の車室外に配設される別の配管との干渉を回避できる、クラッチ配管の配設構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るクラッチ配管の配設構造は、油圧クラッチの作動油が流通するクラッチ配管をダッシュパネルで仕切られる車室内と車室外との間に跨がって配設する構造であって、クラッチ配管は、車室内配管と、車室外配管と、車室内配管と車室外配管とを連結する継手とを有し、ダッシュパネルには、車室内と車室外とを連通させる連通口が貫通して形成されており、継手は、両端部が同一の中心線を有する円筒状に形成されて、中心線の方向に連通口と対向し、かつ、車室外側の端が前記ダッシュパネルよりも車室内側に位置するように配置され、車室外配管の一端部は、フレア加工が施されており、継手の車室外側の端部に当接されて、フレアナットにより継手に対して固定され、フレアナットは、フレアナットを回転操作するための操作部を有し、操作部は、車室外に配置されている。
【0009】
この構造では、車室内配管と車室外配管とを連結する継手は、その両端部が同一の中心線を有する円筒状に形成されることにより、その中心線上を延びる直管状をなしている。直管状の継手は、車室内でダッシュパネルの連通口と中心線方向に対向する位置に配置され、継手の車室外側の端は、ダッシュパネルよりも車室内側に位置している。そのため、継手の車室外側の端と車室外に配設される別の配管との間に空間を確保することができ、継手が直管状であっても、その空間で車室外配管をL字状に湾曲させて、車室外配管と別の配管との干渉を回避しつつ、車室外配管の一端部を継手の車室外側の端に接続することができる。
【0010】
また、継手が直管状をなしているので、L字継手と比較して、継手を軽量かつ安価に製作することができる。
【0011】
車室外配管の一端部を継手に対して固定するフレアナットは、その操作部が車室外に配置されている。そのため、車室外からフレアナットを操作することができ、車室外配管の一端部の継手に対する脱着作業を容易に行うことができる。
【0012】
車室内配管の一端部は、フレア加工が施されており、継手の車室内側の端部に当接されて、フレアナットにより継手に対して固定されてもよい。
【0013】
また、クラッチ配管の配設構造は、車室内でダッシュパネルに対向して配置されるリテーナと、リテーナとダッシュパネルとの間に挟まれて、クラッチ配管と連通口との間を封止するグロメットとを備えていてもよい。
【0014】
この構成では、継手がリテーナに固定されていることが好ましい。これにより、継手とリテーナとの間のがたつきをなくすことができ、車体振動時に継手とリテーナとが干渉することによる音の発生を防止することができる。
【0015】
また、継手とリテーナとが溶接により固定されている構成では、継手をリテーナに固定するためのスナップリングなどの固定部品が不要であり、その部品費および組付け工数を削減することができる。
【0016】
リテーナにボルト挿通穴が形成されて、ボルト挿通穴に挿通されるフランジボルトにより、リテーナがダッシュパネルに固定されてもよい。
【0017】
この構成では、ボルト挿通穴の周縁に、バーリング加工によるフランジが形成されていることが好ましい。これにより、フランジボルトでリテーナをダッシュパネルに締め付けるときに、フランジがダッシュパネルに当接して、それ以上の締め付けが規制されるので、締め付けトルクによりダッシュパネルが変形することを抑制できる。また、フランジがグロメットに挿通されることにより、グロメットの位置が安定するので、フランジボルトでリテーナをダッシュパネルに締め付けた際の軸力を安定させることができる。その結果、ダッシュパネルの変形や車両の走行中の振動による軸力抜けを抑制することができ、フランジボルトの緩みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、L字継手を用いずに、車室内とダッシュパネルを挟んだ反対側の車室外に配設される別の配管との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】クラッチ操作機構の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るクラッチ配管の配設構造を示す断面図である。
図3】他の実施形態に係るクラッチ配管の配設構造を示す断面図である。
図4】ダッシュパネルとリテーナとの間にカラーを設ける変形例について説明するための図である。
図5】ダッシュパネルとリテーナとの間にカラーを設ける他の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
<クラッチ操作機構>
図1は、クラッチ操作機構1の斜視図である。
【0022】
クラッチ操作機構1は、マニュアルトランスミッションを搭載した車両2に備えられて、エンジンの動力をマニュアルトランスミッションに伝達/遮断するための油圧クラッチを操作する機構である。クラッチ操作機構1には、クラッチペダル3およびマスタシリンダ4が含まれる。
【0023】
車両2には、その前部にエンジンコンパートメント5が設けられ、エンジンコンパートメント5の後側に車室6が設けられている。エンジンコンパートメント5と車室6との間には、ダッシュパネル7が設けられており、ダッシュパネル7により、車室6内と車室6外となるエンジンコンパートメント5とが仕切られている。
【0024】
車室6内には、ダッシュパネル7の後側に、計器類やマルチインフォメーションディスプレイを備えるコンビネーションメータなどが配置されるインストルメントパネルが設けられている。クラッチペダル3は、ダッシュパネル7のインストルメントパネル側(以下、「インパネ側」という。)において、運転席に着席した運転者の左脚の前方となる位置に配置されている。クラッチペダル3は、ペダルアーム11と、ペダルアーム11の先端に取り付けられたペダルパッド12とを備えている。ペダルアーム11は、上下に延び、その基端部が車幅方向に延びるペダルシャフト13を介してペダルブラケット14に、ペダルシャフト13を支点とする揺動が可能に支持されている。ペダルブラケット14は、ダッシュパネル7にインパネ側から取り付けられている。
【0025】
マスタシリンダ4は、クラッチペダル3とダッシュパネル7との間に配置されている。マスタシリンダ4は、シリンダボディ15と、シリンダボディ15の一端から進退するピストン16とを備えている。シリンダボディ15は、ペダルブラケット14に支持されて、ピストン16が進退する側の端が反対側の端よりも低い位置に位置するように後下がりに傾斜している。ピストン16の先端部は、ペダルアーム11におけるペダルシャフト13よりもペダルパッド12側の部分に、ペダルアーム11に対して回動可能に接続されている。
【0026】
マスタシリンダ4には、リザーバ(図示せず)との間でオイルを流通させるリザーバホース17の一端が接続されている。また、マスタシリンダ4には、レリーズシリンダ(図示せず)に油圧を伝達するクラッチ配管18が接続されている。
【0027】
クラッチペダル3が踏まれていない状態では、油圧クラッチが繋がっており、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションに伝達される。クラッチペダル3が踏み込まれると、クラッチペダル3によりマスタシリンダ4のピストン16が押され、マスタシリンダ4に油圧が発生する。マスタシリンダ4で発生する油圧は、クラッチ配管18を介してレリーズシリンダに伝達され、レリーズシリンダによりレリーズフォークが操作されて、油圧クラッチが切れる。
【0028】
<クラッチ配管の配設構造>
図2は、本発明の一実施形態に係るクラッチ配管18の配設構造を示す断面図である。
【0029】
ダッシュパネル7には、図2に示されるように、エンジンコンパートメント5内と車室6内とを連通させる連通口21が貫通して形成されている。リザーバホース17およびクラッチ配管18は、連通口21に通されて、エンジンコンパートメント5内と車室6内とに跨がって配設されている。
【0030】
クラッチ配管18は、エンジンコンパートメント5側(以下、「エンコパ側」という。)に設けられるエンコパ側チューブ22と、インパネ側に設けられるインパネ側チューブ23と、エンコパ側チューブ22とインパネ側チューブ23とを連結する金属製の継手24とを有している。
【0031】
継手24は、円筒状の外周面を有しており、その外周面の中心線の方向(以下、「中心線方向」という。)の一方側の端部にエンコパ側接続部25を備え、他方側の端部にインパネ側接続部26を備えている。エンコパ側接続部25およびインパネ側接続部26は、円筒状をなし、その内周面には、雌ねじが形成されている。エンコパ側接続部25内の再奥部には、エンコパ側接続部25の開口側、つまりエンコパ側に向かって先細りするように突出するテーパ面27が形成されている。インパネ側接続部26内の再奥部には、インパネ側接続部26の開口側、つまりインパネ側に向かって先細りするように突出するテーパ面28が形成されている。また、エンコパ側接続部25とインパネ側接続部26との間には、エンコパ側接続部25内とインパネ側接続部26内とを連通させる連通路29が形成されている。
【0032】
エンコパ側チューブ22の一端部は、金属からなる。エンコパ側チューブ22の一端部には、フレア加工により、ラッパ状に拡径するフレア部31が形成されている。エンコパ側チューブ22には、フレアナット32が挿通されている。フレアナット32は、外周にエンコパ側接続部25の雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成された押圧部33と、押圧部33の一端に形成された操作部34とを有している。
【0033】
エンコパ側チューブ22の一端部は、フレアナット32により、エンコパ側接続部25に接続される。すなわち、その接続の際には、エンコパ側チューブ22の一端部がエンコパ側接続部25内に挿入されて、エンコパ側チューブ22のフレア部31がエンコパ側接続部25内のテーパ面27に当接した状態で、操作部34が工具で回される。操作部34は、ダッシュパネル7よりもエンコパ側に配置されており、操作部34には、工具をエンコパ側からアクセスさせることができる。操作部34が回されることにより、フレアナット32の雄ねじがエンコパ側接続部25の雌ねじに螺合し、フレアナット32の押圧部33の先端がフレア部31を押圧して、フレア部31がテーパ面27に密着することにより、エンコパ側チューブ22がエンコパ側接続部25に接続される。
【0034】
インパネ側チューブ23の一端部は、金属からなる。インパネ側チューブ23の一端部には、フレア加工により、ラッパ状に拡径するフレア部35が形成されている。インパネ側チューブ23には、フレアナット36が挿通されている。フレアナット36は、外周にインパネ側接続部26の雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成された押圧部37と、押圧部37の一端に形成された操作部38とを有している。
【0035】
インパネ側チューブ23の一端部は、フレアナット36により、インパネ側接続部26に接続される。すなわち、その接続の際には、インパネ側チューブ23の一端部がインパネ側接続部26内に挿入されて、インパネ側チューブ23のフレア部35がインパネ側接続部26内のテーパ面28に当接した状態で、操作部38が工具で回される。そして、フレアナット36の雄ねじがインパネ側接続部26の雌ねじに螺合し、フレアナット36の押圧部37の先端がフレア部35を押圧して、フレア部35がテーパ面28に密着することにより、インパネ側チューブ23がインパネ側接続部26に接続される。
【0036】
ダッシュパネル7のインパネ側には、ダッシュパネル7の連通口21をインパネ側から閉塞するように、リテーナ41が設けられている。リテーナ41は、金属板を加工して作製されている。リテーナ41の周縁部は、エンコパ側に湾曲している。リテーナ41の周縁部よりも内側の部分は、平板状をなし、その平板状の部分には、ホース挿通穴42、継手挿通穴43およびボルト挿通穴44が横並びで形成されている。ホース挿通穴42および継手挿通穴43は、ダッシュパネル7の連通口21に臨み、ボルト挿通穴44は、連通口21に臨まず、ダッシュパネル7と対向している。
【0037】
ホース挿通穴42は、円形穴であり、リザーバホース17の外径よりも大きい径を有している。ホース挿通穴42には、リザーバホース17が挿通される。
【0038】
継手挿通穴43は、円形穴であり、継手24の外径とほぼ同じ径を有している。継手挿通穴43には、継手24のエンコパ側接続部25が挿通されている。継手24は、エンコパ側接続部25の外周面とリテーナ41の継手挿通穴43の周縁部のインパネ側の面とが溶接されることによりリテーナ41に固定されている。これにより、継手24は、中心線方向に連通口21と対向し、継手24のエンコパ側の端は、ダッシュパネル7よりもインパネ側に位置している。
【0039】
ボルト挿通穴44は、フランジボルト45の軸部46を挿通可能な円形穴である。ボルト挿通穴44の周縁には、バーリング加工により、エンコパ側に突出する円筒状のフランジ47が形成されている。ダッシュパネル7には、ボルト挿通穴44(フランジ)44と中心線方向に重なる位置に、ボルト挿通穴44と略同径の貫通穴48が貫通して形成されている。ダッシュパネル7のエンコパ側の面には、貫通穴48と中心線方向に重なる位置に、ウエルドナット49が溶着されている。
【0040】
また、ダッシュパネル7とリテーナ41との間には、グロメット51が介在される。グロメット51は、樹脂またはゴムからなり、リテーナ41の周縁部の内側に配置されている。グロメット51には、リザーバホース17が挿通されるホース挿通部52と、継手24のエンコパ側接続部25が挿通される継手挿通部53と、フランジ47が挿通されるフランジ挿通部54とがそれぞれ貫通穴として形成されている。グロメット51には、複数の封止突起55が形成されており、グロメット51とダッシュパネル7、リザーバホース17および継手24との各間は、封止突起55により、エンコパ側から車室6内への水などの浸入を防止するために液密的に封止されている。
【0041】
リテーナ41のボルト挿通穴44にインパネ側からフランジボルト45の軸部46が挿入されて、そのフランジボルト45の軸部46がダッシュパネル7の貫通穴48に挿通され、ウエルドナット49に螺合されることにより、リテーナ41がダッシュパネル7に固定される。このとき、フランジ47がダッシュパネル7に当接して、それ以上の締め付けが規制されるので、締め付けトルクによりダッシュパネル7が変形することを抑制できる。また、フランジ47がグロメット51に挿通されることにより、グロメット51の位置が安定するので、フランジボルト45でリテーナ41をダッシュパネル7に締め付けた際の軸力を安定させることができる。その結果、ダッシュパネル7の変形や車両2の走行中の振動による軸力抜けを抑制することができ、フランジボルト45の緩みを抑制することができる。
【0042】
<作用効果>
以上のように、インパネ側チューブ23とエンコパ側チューブ22とを連結する継手24は、その両端のエンコパ側接続部25とインパネ側接続部26とが同一の中心線を有する円筒状に形成されることにより、その中心線上を延びる直管状をなしている。直管状の継手24は、ダッシュパネル7の連通口21と中心線方向に対向する位置に配置され、継手24のエンコパ側の端は、ダッシュパネル7よりもインパネ側に位置している。そのため、継手24のエンコパ側の端と車室6外に配設される別の配管61との間に空間を確保することができ、継手24が直管状であっても、その空間でエンコパ側チューブ22をL字状に湾曲させて、エンコパ側チューブ22と別の配管61との干渉を回避しつつ、エンコパ側チューブ22の一端部を継手24のエンコパ側の端に接続することができる。
【0043】
また、継手24が直管状をなしているので、L字継手と比較して、継手24を軽量かつ安価に製作することができる。
【0044】
エンコパ側チューブ22の一端部を継手24に対して固定するフレアナット32は、その操作部34がエンジンコンパートメント5内に配置されている。そのため、エンコパ側から操作部34に工具をアクセスさせて、フレアナット32を操作することができるので、エンコパ側チューブ22の一端部の継手24に対する脱着作業を容易に行うことができる。
【0045】
継手24は、リテーナ41に固定されている。これにより、継手24とリテーナ41との間のがたつきをなくすことができ、車体振動時に継手24とリテーナ41とが干渉することによる音の発生を防止することができる。
【0046】
また、継手24とリテーナ41とが溶接により固定されているので、継手24をリテーナ41に固定するためのスナップリングなどの固定部品が不要であり、その部品費および組付け工数を削減することができる。
【0047】
<他の実施形態>
図3は、他の実施形態に係るクラッチ配管18の配設構造を示す断面図である。図3において、図2に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略する。
【0048】
図3に示される配設構造では、図2に示される配設構造から、リテーナ41のボルト挿通穴44、フランジボルト45、貫通穴48およびウエルドナット49が省略されている。そして、ダッシュパネル7には、エンジンコンパートメント5内と車室6内とを連通させる連通口として、リザーバホース17が挿通される第1連通口71と、エンコパ側チューブ22が挿通される第2連通口72とが互いに独立して形成されている。
【0049】
継手24は、エンコパ側接続部25内が第2連通口72に臨む位置に配置されている。エンコパ側チューブ22の一端部をエンコパ側接続部25に接続するためのフレアナット32には、押圧部33と操作部34との境界の位置に、それらの周囲に張り出す鍔状のフランジ部73が形成されている。
【0050】
この配設構造では、フレアナット32の雄ねじがエンコパ側接続部25の雌ねじに螺合されると、フレアナット32の押圧部33の先端がフレア部31を押圧して、エンコパ側チューブ22がエンコパ側接続部25に接続されるとともに、フランジ部73と継手24とにダッシュパネル7が挟まれることにより、継手24がダッシュパネル7に対して固定される。
【0051】
図3に示される配設構造によっても、図2に示される配設構造と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0053】
たとえば、ボルト挿通穴44にバーリング加工によるフランジ47が形成されず、そのフランジ47に代えて、図4に示されるように、リテーナ41のエンコパ側の面に、円筒状のカラー81がボルト挿通穴44と位置合わせして設けられてもよい。グロメット51には、カラー81を挿通するカラー挿通部82が形成される。この構成では、フランジボルト45の軸部46がインパネ側からボルト挿通穴44、カラー81、ダッシュパネル7の貫通穴48およびウエルドナット49にこの順に挿通される。カラー81は、プロジェクション溶接またはアーク溶接により、リテーナ41のエンコパ側の面に固定されるとよい。
【0054】
また、図5に示されるように、カラー81の外周面のインパネ側の端部にフランジ83が形成されて、そのフランジ83がカラー挿通部82に形成された段差84に受け持たれてもよい。この構成では、カラー81をリテーナ41に対して固定する必要がないので、その固定のためのプロジェクション溶接またはアーク溶接を行う工程を省略することができる。
【0055】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0056】
5:エンジンコンパートメント(車室外)
6:車室
7:ダッシュパネル
18:クラッチ配管
21:連通口
22:エンコパ側チューブ(車室外配管)
23:インパネ側チューブ(車室内配管)
24:継手
25:エンコパ側接続部(両端部の一方)
26:インパネ側接続部(両端部の他方)
32:フレアナット
34:操作部
図1
図2
図3
図4
図5