(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117271
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】給水装置及び該給水装置の異常検出方法
(51)【国際特許分類】
F04D 15/02 20060101AFI20220803BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F04D15/02
F04D15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013879
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(71)【出願人】
【識別番号】509044109
【氏名又は名称】ウイングレット・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】加代 将士
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西野 憲次郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 正之
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA21
3H020BA29
3H020CA08
3H020DA04
3H020EA01
(57)【要約】
【課題】モータの回転速度ごとに異常判定用の閾値を設定することなく、ポンプユニットの構成部品の異常を検出することが可能な給水装置及び該給水装置の異常検出方法を提供する。
【解決手段】複数のポンプユニットを交互運転または交互並列運転するように制御する給水装置において、モータの回転速度が一定となる小水量停止モード、または使用水量が少ない時間帯における強制始動モードにモータが移行制御されたときの振動検出器の出力に基づいて異常判定を行う。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、
前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量に応じて回転速度を可変制御する可変回転速度モードと、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量にかかわらず回転速度を一定に制御する固定回転速度モードと、に制御する制御部と、
前記ポンプユニットに配設された振動検出器と、
前記制御部が前記電動機を前記固定回転速度モードに制御したきの前記振動検出器の出力に基づいて、前記ポンプユニットの異常を判定する異常判定部と、を有することを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記固定回転速度モードは、使用水量が所定の水量以下となったときに前記電動機の回転速度を所定の回転速度に安定させた運転状態であることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記固定回転速度モードは、前記ポンプユニットが運転を停止している状態から前記ポンプユニットを強制的に始動させ、前記電動機の回転速度の所定の回転速度に安定させた運転状態であることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項4】
前記ポンプユニットに温度検出器が配設され、
前記異常判定部は、前記制御部が前記電動機を前記可変回転速度モードに制御したときの前記温度検出器の出力に基づいて、前記ポンプユニットの温度異常を判定し、
前記制御部は、前記温度異常の判定結果に基づいて前記ポンプユニットの運転を停止するように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記振動検出器は、前記電動機に配設されて該電動機の振動を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記振動検出器は、三軸振動センサであって、
前記異常判定部は、前記三軸振動センサの軸ごとに出力される振動信号を合成して得られる合成信号に基づいて異常を判定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項7】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、
前記ポンプユニットの運転を制御する制御部と、
前記ポンプユニットに配設された振動検出器と、
前記ポンプユニットの異常を判定する異常判定部と、を有する給水装置の異常検出方法であって、
前記制御部が、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量に応じて回転速度を可変制御する可変回転速度モードに制御するステップと、
前記制御部が、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量にかかわらず回転速度を一定に制御する固定回転速度モードに制御するステップと、
前記制御部が前記電動機を固定回転速度モードに制御したときの前記振動検出器の出力に基づいて、前記異常判定部が前記ポンプユニットの異常を判定するステップと、を有することを特徴とする給水装置の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置及び給水装置の異常検出方法に係り、特に、振動センサを用いて異常を検出する給水装置とその異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、ビルまたは工場等で使用する水を供給するために、給水装置が広く利用されている。
図12に示すように、給水装置100は、2台のポンプユニット101A、101Bと、ポンプユニットを制御する制御装置(不図示)を有し、各ポンプユニット101A、101Bは制御装置によって単独で、または同時に並列運転を行うように制御される。
各ポンプユニット101A、101Bは、揚力を発生するポンプ102A、102Bと、ポンプ102A、102Bに回転動力を伝えるモータ103A、103B等から構成されており、集合住宅等で使用される水量に応じてモータ103A、103Bを回転制御し、複数のポンプユニット101A、101Bが単独で、または同時に運転制御される。これにより、給水装置100は水道管から供給される水道水を揚水して集合住宅の高架水槽等に給水する。
【0003】
ポンプユニット101A及びポンプユニット101Bの上流側には、吸込圧力センサ105が、下流側には流量センサ106A、106B、及び吐出圧力センサ107がそれぞれ接続されており、ポンプユニット101A及びポンプユニット101Bの吸込側及び吐出側の水圧及び流量を検出して制御装置に対して出力する。また、ポンプユニット101A及びポンプユニット101Bの吐出側には蓄圧タンク108が接続され、吐出側の圧力を所定の圧力で維持している。符号109は、逆止弁である。
【0004】
2台のポンプユニット101A、101Bを組み合わせて並列運転することによって、1台の大型のポンプ装置を運転する場合と比べて装置全体をコンパクトに、かつ省エネルギー性を向上させることが可能となる。例えば、特許文献1には、2台のポンプユニットの間の接続を切り替えることによって幅広い揚水性能と省エネルギー化を実現した給水装置が提案されている。
【0005】
一方、給水装置は、水を揚水するための揚力を生み出す羽根車や、羽根車を回転駆動するモータ等の機械部品から構成されている。このような機械的な構成部品の劣化や損傷による給水性能の低下や運転停止を防止するため、構成部品の検査や交換等のメンテナンス作業が行われている。そして、給水装置に振動センサを取り付け、振動センサの出力を異常判定用の閾値と比較することによって給水装置の異常の有無を監視し、部品交換やメンテナンスの適切な時期を判定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、振動センサの出力を異常判定用の閾値と比較することによって異常の有無を監視することができるものの、振動センサの出力は、ポンプユニットの運転状態とともに大きく変化するため、適切な閾値を設定することが難しい場合があった。具体的には、例えばモータの異常を判定するためにモータに振動センサを取り付けて振動レベルを監視する場合、振動レベルは、モータの回転速度によって大きく変動する。すなわち、水の使用量が少ない場合にはモータの回転が低速回転となり、振動レベルは小さくなる。一方、水の使用量が大きい場合にはモータの回転が高速回転となり、振動レベルは大きくなる。このように、低速回転時と高速回転時とでは、異常判定用の閾値の適切な値が大きく異なる。
ここで、モータの回転速度に応じて複数の閾値を設定することも可能であるが、予め試験運転を行い、回転速度ごとに振動レベルを測定して閾値を設定しなければならないため、試験工数が増加する。また、回転速度に応じて異常判定用の閾値を変更して設定する必要があるため異常判定処理が複雑化するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、より簡易な方法で異常検出用の閾値を用いて異常の発生を検出することができる給水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の給水装置によれば、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量に応じて回転速度を可変制御する可変回転速度モードと、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量にかかわらず回転速度を一定に制御する固定回転速度モードと、に制御する制御部と、前記ポンプユニットに配設された振動検出器と、前記制御部が前記電動機を前記固定回転速度モードに制御したきの前記振動検出器の出力に基づいて、前記ポンプユニットの異常を判定する異常判定部と、を有することにより解決される。
【0010】
上記構成によれば、異常判定部は、電動機の回転速度が一定となる固定回転速度モードに電動機が制御されたときの振動検出器の出力に基づいて異常を判定するため、振動検出器の出力と、固定回転速度モードにおける閾値とを比較することによって異常の発生を検出することができる。これにより、使用水量に応じて変化する電動機の回転速度ごとに異常判定用の閾値を測定して設定する必要がないため、閾値を設定するための試験の工数の増加を抑制することができる。
そして、回転速度ごとに異常判定用の閾値を変更して設定する必要もないため、異常判定処理の複雑化が抑制される。
【0011】
また、前記固定回転速度モードは、使用水量が所定の水量以下となったときに前記電動機の回転速度を所定の回転速度に安定させた運転状態であると好適である。これにより、給水装置の運転に影響を与えることなく異常を検出することができる。
【0012】
また、前記固定回転速度モードは、前記ポンプユニットが運転を停止している状態から前記ポンプユニットを強制的に始動させ、前記電動機の回転速度の所定の回転速度に安定させた運転状態であると好適である。これにより、集合住宅等の水の使用量が少ない時間帯であって、ポンプユニットが停止状態にあるときに異常を検出することが可能となるため、給水性能に影響を及ぼすことなく異常を検出することができる。
【0013】
また、前記ポンプユニットに温度検出器が配設され、前記異常判定部は、前記制御部が前記電動機を前記可変回転速度モードに制御したときの前記温度検出器の出力に基づいて、前記ポンプユニットの温度異常を判定し、前記制御部は、前記温度異常の判定結果に基づいて前記ポンプユニットの運転を停止するように制御すると好適である。これにより、モータの異常発熱を監視し、異常発熱が検出された場合にポンプユニットの運転を停止制御することが可能となる。
【0014】
また、前記振動検出器は、前記電動機に配設されて該電動機の振動を検出すると好適である。これにより、給水装置を構成する機械部品の中で異常の発生頻度が高い電動機の異常を検出することができる。
【0015】
また、前記振動検出器は、三軸振動センサを有し、前記異常判定部は、前記三軸振動センサの軸ごとに出力される振動信号を合成して得られる合成信号に基づいて異常を判定すると好適である。これにより、異常判定部は、横型給水装置と立型給水装置のいずれにも共通した異常判定処理によって異常を検出することが可能となる。また、振動検出器の取付け位置及び取付け方向を正確にアライメントする必要がないため、振動検出器の配設に係る作業負担を軽減することができる。
【0016】
また、前記課題は、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、前記ポンプユニットの運転を制御する制御部と、前記ポンプユニットに配設された振動検出器と、前記ポンプユニットの異常を判定する異常判定部と、を有する給水装置の異常検出方法であって、前記制御部が、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量に応じて回転速度を可変制御する可変回転速度モードに制御するステップと、前記制御部が、前記ポンプユニットの前記電動機を、使用水量にかかわらず回転速度を一定に制御する固定回転速度モードに制御するステップと、前記制御部が前記電動機を固定回転速度モードに制御したときの前記振動検出器の出力に基づいて、前記異常判定部が前記ポンプユニットの異常を判定するステップと、を有することにより解決される。
【0017】
上記構成によれば、異常判定部は、電動機の回転速度が一定となる固定回転速度モードに電動機が制御されたときの振動検出器の出力に基づいて異常を判定するため、振動検出器の出力と、固定回転速度モードにおける閾値とを比較することによって異常の発生を検出することができる。これにより、使用水量に応じて変化する電動機の回転速度ごとに異常判定用の閾値を測定して設定する必要がないため、閾値を設定するための試験の工数の増加を抑制することができる。
そして、回転速度ごとに異常判定用の閾値を変更して設定する必要もないため、異常判定処理の複雑化が抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る給水装置によれば、モータの回転速度ごとに異常判定用の閾値を設定することなく、ポンプユニットの構成部品の異常を検出することが可能となるため、試験工数の増加や異常判定処理の複雑化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の斜視図である。
【
図7】給水装置の交互運転及び交互並列運転の流れを示す図である。
【
図8】インバータの運転周波数と振動レベルの関係を示す図である。
【
図10】振動センサの取付け位置に関する変形例を示す図である。
【
図12】従来の給水装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について
図1~
図12を用いて説明する。本実施形態の給水装置10は、集合住宅やビルにおける生活用水やその他の一般水道の給水ために用いられることとして説明する。ただし、これに限定されるものではなく、例えば簡易水道や、農業用水、工業用水の給水のために利用することもできる。
そして、給水装置10を水道管に直結し、水道管から供給される水道水を直接揚水する直結方式を採用することとして説明するが、水道水をいったん受水槽にためて、受水層に接続された給水装置から揚水する貯水槽方式においても利用可能である。
また、以降ではモータ(電動機)の主軸が水平方向に配設された横型給水装置を例に説明するが、モータの主軸が垂直方向に配設された立型給水装置において本発明を適用することもできる。
【0021】
図1及び
図2は、本実施形態における給水装置10の斜視図及び平面図である。給水装置10は、基台11と、基台11上に互いに並べて設置された2台のポンプユニット(第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19B)と、2台のポンプユニット19A、19Bの運転を制御する制御装置12(不図示)を収容した制御盤13とを有している。2台のポンプユニット19A、19Bは、制御装置12によって単独で、または同時に並列運転制御される。そして、2台のポンプユニット19A、19Bは吸込口28A、28Bに連結される吸込配管から吸込まれる水道水を増圧し、2台のポンプユニット19A、19Bの吐出側に接続された合流管14において吐出水を合流し、合流吐出口15から吐出する。
【0022】
ここで、第一のポンプユニット19Aと第二のポンプユニット19Bとは同一の構成を有しているため、以下の説明において、第一のポンプユニット19Aと第二のポンプユニット19Bとを特に区別する必要がない場合には、単に「ポンプユニット19」として説明する。後述するポンプユニット19の構成部品であるモータ24及び流量センサ20、モータ24に対して電気エネルギーを供給するインバータ21(
図5を参照)についても、同様である。
【0023】
第一のポンプユニット19Aの吐出側には流量センサ20Aが、第二のポンプユニット19Bの吐出側には流量センサ20Bが取り付けられている。そして合流管14には、2台のポンプユニット19A、19Bの吐出側の水圧を検出する吐出圧力センサ17が取り付けられている。流量センサ20が出力する流量信号と、吐出圧力センサ17が出力する圧力信号は、制御盤13に収容された制御装置12に入力される。
また合流管14には、合流管14内の水圧を所定の圧力に維持するための蓄圧タンク18が接続されている。
【0024】
制御盤13は、2台のポンプユニット19A、19Bの運転を制御するための制御装置12を収容している(
図5を参照)。制御装置12は、吐出圧力センサ17、及び流量センサ20A、20Bの出力信号に基づいて、ポンプユニット19A、19Bの運転を制御する。制御装置12は、第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19Bを単独で、または同時に並列運転制御することが可能であり、詳細は後述するが、第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19Bを交互に運転するように制御する。
【0025】
制御盤13は、制御装置12の他に、第一のポンプユニット19Aに対して電気エネルギーを供給する第一のインバータ21A及び第二のポンプユニット19Bに対して電気エネルギーを供給する第二のインバータ21Bを収容している(
図5を参照)。そして制御盤13の側面には、操作パネル22が配設されており、オペレータの入力操作を受け付けるとともに給水装置10の運転状態及び異常に関する情報を出力する。
【0026】
本実施形態において、給水装置10は、2台のポンプユニット19A、19Bを有しているが、必要な揚水能力を確保するために、3台以上、例えば6台のポンプユニット19を有することとしてもよい。この場合、制御盤13の内部に収容されている制御装置12は、6台のポンプユニット19を単独で、または同時に並列運転制御することができる。
【0027】
図3は、ポンプユニット19の部分透視側面図である。ポンプユニット19は、揚力を発生するポンプ23と、ポンプ23に対して回転動力を伝達するモータ(電動機)24とを有している。そして、制御盤13の内部に収容されたインバータ21から供給される電気エネルギーをモータ24が回転動力に変換し、この回転動力によってポンプ23内に配設された羽根車29が回転する。羽根車29の回転運動は、吸込口28から吸い込まれた水に対して遠心力を与える。この遠心力が揚力となって、吸い込まれた水は増圧された状態で吐出口30から吐出される。吐出口30は、上述した合流管14に連結される。
【0028】
なお、
図3においてポンプ23は、そのケーシング25の内部に3段の羽根車29を回転軸方向に並べて配設しているが、必要な揚水性能を得ることができればよく、1段や2段、または4段以上を並設してもよい。
また、ポンプ23は、ケーシング25とケーシングカバー26とが連結した状態でその内部に羽根車29を収容し、ケーシングカバー26に形成された連結孔(図示しない)に挿入される連結ボルト27によってモータブラケット35に連結される。
【0029】
図4は、モータ24の部分透視側面図である。モータ24は、モータハウジング34と、モータブラケット35と保護カバー36によって覆われており、その内部には、第一の軸受け32及び第二の軸受け33によって支持された主軸31がモータ24の長軸方向に延びるように配設されている。第一の軸受け32及び第二の軸受け33は、その外輪がモータブラケット35及び保護カバー36に固定されるとともに、内輪が主軸31を回転可能に支持するボールベアリングである。
主軸31は、モータブラケット35に形成された軸穴からモータブラケット35の外側に延びるように突出し、モータ24によって生成される回転動力をポンプ23の羽根車29に伝達する。
本実施形態において、モータ24は永久磁石同期モータ(PMモータ)であるが、ポンプ23に対して必要な回転動力を伝えることができればよく、例えば誘導モータであってもよい。
【0030】
そして、モータブラケット35の表面上であって第一の軸受け32に隣接する位置には、振動検出器に相当する振動センサ37がねじ止めにより固定され、第一の軸受け32から発生する振動を検出する。
振動センサ37を
図4に示す位置に取り付ける理由を説明すると、ボールベアリングからなる第一の軸受け32の外輪と内輪との間で発生する摩擦は、主軸31の回転とともに第一の軸受け32の劣化や損傷の原因となる。このような劣化及び損傷が蓄積すると、第一の軸受け32は、主軸31の回転とともに振動を発生させる。さらに、ポンプ23の内部で主軸31に連結される羽根車29の回転とともに生じる荷重は、主軸31を介して第一の軸受け32に対して付加されるため、この荷重も第一の軸受け32の劣化や損傷の原因となる。このような劣化と損傷が蓄積した場合も、第一の軸受け32は主軸31の回転とともに振動を発生させる。したがって、振動センサ37を第一の軸受け32に隣接する位置に取り付けることによってその振動を正確に測定することができる。後述するように、本実施形態の給水装置10は、振動センサ37の出力に基づいて異常判定を行う。
【0031】
振動センサ37は、圧電型の加速度検出器を用いることができるが、所望の振動検出性能を得ることができればよく、例えば静電容量型の振動センサ37であってもよい。
本実施形態において、振動センサ37は、モータブラケット35に対してねじ止めにより固定されているが、第一の軸受け32から発生する振動を正確に測定することができればよく、ねじ以外の固定部材や磁力を利用して固定してもよい。
【0032】
振動センサ37は、三軸方向(垂直方向、モータ24の主軸31方向、及び垂直方向及び主軸31方向に直交する水平方向)の振動を検出可能な位置及び向きにアライメントしてモータブラケット35に取り付けることが望ましい。これにより、後述する異常判定部41が実行する異常判定処理において、三軸方向それぞれの振動信号の振幅レベルに基づいて異常の有無を判定することができる。
【0033】
また、振動センサ37(三軸振動センサ)の軸ごとの振動信号を合成して得られる合成信号を用いて異常の有無を判定してもよい。合成信号Vは、次の式によって求めることができる。ここで、V1、V2、V3は、それぞれ振動センサ37が出力する軸ごとの振動信号の振幅レベルである。このような合成信号を用いることによって、振動センサ37を、垂直方向、主軸31方向及び垂直方向及び主軸方向に直交する水平方向に対して正確にアライメントする必要がなくなるため、振動センサ37の取付けに係る作業負担を軽減することができる。
【0034】
【0035】
図5は、給水装置10の機能ブロックを示している。
図5に示すように、制御盤13は、内部に制御装置12と、第一のインバータ21Aと、第二のインバータ21Bとを収容しており、制御装置12から第一のインバータ21A及び第二のインバータ21Bに対して制御信号を出力することによって、第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19Bの運転制御を行う。
また、制御盤13の側面には操作パネル22が配設されており、制御装置12に対する操作入力を受け付けるとともに、給水装置10の運転状態や異常に関する情報を出力する。給水装置10の運転状態や異常に関する情報は、有線または無線により外部と通信を行うことができる通信装置38に対して出力してもよい。
【0036】
制御装置12は、ポンプユニット制御部39と、センサ信号取得部40と、異常判定部41と、計時部42とを有している。
センサ信号取得部40は、吐出圧力センサ17、流量センサ20、振動センサ37の出力信号を取得して、その圧力信号、流量信号及び振動信号をポンプユニット制御部39及び異常判定部41に出力する。センサ信号取得部40は、A/D変換器、LPF(低域通過フィルタ)、BPF(帯域通過フィルタ)を有しており、必要に応じてアナログ信号をディジタル信号に変換するとともに、不要な周波数帯域のノイズを除去し、所望の周波数成分を有する信号を出力することができる。
【0037】
ポンプユニット制御部39は、後述するように、センサ信号取得部40が取得した信号に基づいて第一のポンプユニット19A、第二のポンプユニット19Bに対する制御信号を第一のインバータ21A及び第二のインバータ21Bを介して出力する。
第一のインバータ21A及び第二のインバータ21Bは、単相又は三相交流の商用電源に接続され、ポンプユニット制御部39の制御信号に基づいて交流信号の周波数変換を行って、第一のポンプユニット19Aと、第二のポンプユニット19Bの運転を制御する。
【0038】
異常判定部41は、センサ信号取得部40が取得した振動センサ37の振動信号の振幅レベルに基づいて、異常の有無を判定する。異常判定部41の異常判定方法については後述する。
計時部42は、水晶発振器が用いられており、後述する小水量停止モードの運転時間や、強制始動モードの開始タイミングの計時を行う。計時部42は、計時に必要な精度を得ることができればよく、セラミック発振器を用いてもよい。
【0039】
制御装置12には、図示しないCPU、不揮発性メモリ、及び揮発性メモリが搭載されており、不揮発性メモリには、予めポンプユニット制御部39及び異常判定部41の機能を実現するためのプログラムが格納されている。CPUは、これらのプログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリにロードして実行する。これにより、制御装置12は、ポンプユニット制御部39及び異常判定部41として機能する。
【0040】
図6は、ポンプユニット制御部39によるポンプユニット19の制御方法を示す図である。給水装置10が始動すると、ポンプユニット制御部39は、センサ信号取得部40を介して取得する吐出圧力センサ17の出力が、予め設定された目標圧力値と一致するように制御する。具体的には、ポンプユニット制御部39は、予め設定された目標圧力値と、センサ信号取得部40が取得した吐出圧力センサ17の出力とに基づいてPID演算を行い、インバータ21の運転周波数を算出する。インバータ21の運転周波数によって、モータ24の回転速度が制御される。モータ24の回転動力をポンプ23の羽根車29に伝達することで吸込口28から吸い込まれた水は増圧される。このとき、吐出圧力センサ17の出力は、フィードバックされ、再度PID演算に対する入力信号として利用される。以上の制御方法によってポンプユニット制御部39は、ポンプユニット19の運転を制御する。
なお、吐出し圧力一定制御方式と、推定末端圧力一定制御方式のいずれの方式を採用してもよい。
【0041】
例えば集合住宅やビルのように使用水量が時間帯によって変化する環境では、ポンプユニット制御部39は、吐出圧力センサ17の出力を一定に保つために、使用水量に応じて常にモータ24の回転速度を可変制御する必要がある。すなわちポンプユニット制御部39は、ポンプユニット19の運転を開始するとともに、可変回転速度モードでポンプユニット19の運転を制御する。そしてポンプユニット制御部39は、後述する小水量停止モード及び強制始動モード時を除き、可変回転速度モードでポンプユニット19の運転を制御する。
【0042】
次に、第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19Bの交互運転及び交互並列運転について説明する。
本実施形態における給水装置10は、2台のポンプユニット19A、19Bを有しており、これらを運転制御することにより、使用される水を供給する。具体的には、使用水量が1台のポンプユニット19によって供給可能な場合には、第一のポンプユニット19A及び第二のポンプユニット19Bのいずれか一方を交互に運転することによって使用水量を供給する。これを交互運転と呼ぶ。一方、使用水量が1台のポンプユニット19によって供給可能な水量を超える場合には、2台のポンプユニット19A、19Bを同時に並列運転するとともに、運転開始と運転停止の順番を交互に入れ替えて使用水量を供給する。これを交互並列運転と呼ぶ。
【0043】
図7は、ポンプユニット制御部39によって実行される交互運転及び交互並列運転の流れを示している。具体的には、
図7のステップS10からステップS17は交互運転の流れを示し、ステップS10からステップS12及びステップS18からステップS23は交互並列運転の流れを示している。
運転制御の一例として、ポンプユニット制御部39は、所定の設定圧力P1を目標圧力Hとして、吐出し圧力一定制御を行う。あるいは、通常運転制御の他の一例として、推定末端圧力P2と、予め定められた設定圧力P1との間の変動値を目標圧力Hとして、推定末端圧力一定制御を行う。
【0044】
集合住宅等の住民によって水が使用されると、吐出圧力センサ17が出力する圧力値Pは低下する。したがって、ポンプユニット制御部39は、ステップS10において、吐出圧力センサ17が出力する圧力値Pが、予め設定された始動圧力P3を下回ったか否かを判定する。吐出圧力センサ17の圧力値Pが始動圧力P3を下回っていなければ(ステップS10;No)、ポンプユニット制御部39は、圧力値Pが始動圧力P3を下回るまで待機する。
【0045】
一方、始動圧力P3を下回った場合(ステップS10;Yes)、ポンプユニット制御部39は、第一のインバータ21Aに対して制御信号を出力し、第一のポンプユニット19Aのモータ24Aの回転を開始させる(ステップS11)。ここでは、第一のポンプユニット19Aを第二のポンプユニット19Bよりも先に運転開始することとして説明するが、第二のポンプユニット19Bを第一のポンプユニット19Aよりも先に運転開始してもよい。
上述したように、ポンプユニット制御部39は、吐出圧力センサ17の圧力値Pが予め定められた目標圧力Hと一致するように第一のインバータ21Aに制御信号を出力する。
【0046】
そして、ポンプユニット制御部39は、水の使用量が減少し、停止流量Q1以下となったか否かを判定する(ステップS12)。水の使用量が停止流量Q1を下回った場合には(ステップS12;Yes)、ポンプユニット制御部39は、ステップS13で第一のポンプユニット19Aの運転を停止するように制御する。
【0047】
ここで、ポンプユニット制御部39は、第一のポンプユニット19Aの運転を停止する直前に、第一のポンプユニット19Aを小水量停止モードに移行制御する。小水量停止モードとは、モータ24の回転を完全に停止する直前の運転状態であって、使用水量にかかわらずモータ24の回転速度を所定の回転速度に安定させた状態で所定時間(例えば2秒間)運転を継続した後に、ポンプユニット19の運転を停止する動作である。小水量停止モード中においてモータ24の回転速度を一定にするため、第一のポンプユニット19Aは第一のインバータ21Aの運転周波数を一定の周波数(例えば最低周波数)に制御する。ここで一定の回転速度、及び一定の周波数とは、厳密に一定の回転速度(周波数)である必要はなく、使用水量にかかわらず、ある程度の変動幅の中で安定した値を維持した状態を含むこととする。
後述するように、ポンプユニット制御部39が第一のポンプユニット19Aを小水量停止モードに移行したときに、異常判定部41が振動センサ37の出力に基づいてポンプユニット19Aの異常の有無を判定する。小水量停止モードは、固定回転速度モードの一例である。
【0048】
そして、ポンプユニット制御部39は、吐出圧力センサ17が出力する圧力値Pが、再び始動圧力P3を下回ったか否かを判定する(ステップS14)。吐出圧力センサ17の圧力値Pが始動圧力P3を下回っていなければ(ステップS14;No)、ポンプユニット制御部39は、圧力値Pが始動圧力P3を下回るまで待機する。
一方、始動圧力P3を下回った場合(ステップS14;Yes)、ポンプユニット制御部39は、第二のインバータ21Bに対して制御信号を出力し、第二のポンプユニット19Bのモータ24Bの回転を開始させる(ステップS15)。
このように使用水量が減少してポンプユニット19を停止させる度に、次に始動するポンプユニット19を、第一のポンプユニット19Aと第二のポンプユニット19Bとの間で交互に切替制御しながら運転を行う。これを、交互運転と呼ぶ。
【0049】
そして、ポンプユニット制御部39は、再び水の使用量が減少し、停止流量Q1以下となったか否かを判定する(ステップS16)。停止流量Q1を下回っていない場合には(ステップS16;No)、そのまま運転を継続する。一方、水の使用量が停止流量Q1を下回った場合には(ステップS16;Yes)、ポンプユニット制御部39は、第二のポンプユニット19Bの運転を停止するように制御する(ステップS17)。具体的には、ポンプユニット制御部39は、第二のポンプユニット19Bを小水量停止モードで運転してから第二のポンプユニット19Bの運転を停止する。
【0050】
単独運転中に給水量が増加して、圧力値Pが目標圧力H以下と判定された場合には、ステップS18に進む。
ポンプユニット制御部39は、第一のポンプユニット19Aの第一のモータ24Aの回転速度を高速回転に変化するように第一のインバータ21Aの運転周波数を上昇させる。
【0051】
そして、水の使用量がさらに増加し、圧力値Pが1台のポンプユニット19によって目標圧力Hと一致するように制御することができない場合について説明する。
このとき、吐出圧力センサ17の圧力値Pは、目標圧力Hより低下する。したがって、ポンプユニット制御部39は、ステップS18において、圧力値Pが、目標圧力Hを下回ったか否かを判定する。圧力値Pが目標圧力Hを下回っていなければ(ステップS18;No)、そのまま運転を継続する。
【0052】
一方、圧力値Pが目標圧力Hを下回った場合(ステップS18;Yes)、ポンプユニット制御部39は、休止中の状態にある第二のポンプユニット19Bの運転を開始するように制御する(ステップS19)。これにより、2台のポンプユニット19A、19Bが並列運転する状態となる。
【0053】
この後、ポンプユニット制御部39は、圧力値Pが目標圧力Hを上回り、並列運転するポンプユニット19のモータ24が所定の回転速度で安定しているか、すなわちインバータ21が所定の運転周波数(例えば最低周波数)で安定しているか否かを判定する(ステップS20)。所定の回転速度に安定していなければ(ステップS20;No)、そのまま並列運転を継続する。
一方、所定の回転速度で安定している場合(ステップS20;Yes)、使用されている水量を1台のポンプユニット19によって供給することができるため、ポンプユニット制御部39は、第一のポンプユニット19Aの運転を停止するように制御する(ステップS21)。このとき、今まで運転状態にあった第一のポンプユニット19Aが休止状態となる一方、第二のポンプユニット19Bは、運転状態を継続する。
【0054】
続いて、ポンプユニット制御部39は、さらに水の使用量が減少し、停止流量Q1以下となったか否かを判定する(ステップS22)。停止流量Q1を下回っていない場合には(ステップS22;No)、そのまま運転を継続する。
一方、停止流量Q1を下回った場合(ステップS22;Yes)、ポンプユニット制御部39は、第二のポンプユニット19Bを、小水量停止モードに移行してから運転を停止するように制御する(ステップS23)。
【0055】
以上のように、先に運転を開始したポンプユニット19は、並列運転を行った後で使用水量が減少すると、先に運転を停止して休止状態となる。後に運転を開始したポンプユニット19は、先に運転を開始したポンプユニット19が運転を停止した後も運転を継続してから停止する。このように、2台のポンプユニット19A、19Bを同時に並列運転するとともに、運転開始と運転停止の順番を交互に入れ替えて給水する。これを交互並列運転と呼ぶ。
【0056】
以上のようにポンプユニット制御部39は、使用水量に応じてモータ24の回転速度を可変制御するとともに、2台のポンプユニット19A、19Bが交互運転及び交互並列運転を行うように制御する。そして、使用水量が停止流量Q1を下回った場合には、ポンプユニット19の運転を停止する直前に、使用水量にかかわらずモータ24を一定の回転速度で回転させる小水量停止モードに移行するように制御する。
【0057】
後述するように、異常判定部41は、ポンプユニット制御部39がモータ24を小水量停止モードに移行したときの振動センサ37の出力に基づいてポンプユニット19の異常の判定を行う。これにより、給水装置10の運転に影響を与えることなく異常を検出することができる。
【0058】
次に、異常判定部41による異常判定処理について説明する。
図8は、第一の軸受け32に異常がない場合と異常がある場合のそれぞれについて、インバータ21の運転周波数と、振動センサ37が出力する振動信号の振幅レベルの関係を示す図である。本実施形態に係る異常判定部41は、振幅レベルが予め設定された閾値を上回る場合に、第一の軸受け32に異常が有ると判定する。
しかし、振動信号の振幅レベルは、インバータ21の運転周波数に応じて変動する。例えば
図8に示すように、インバータ21を第一の運転周波数F1で運転した場合と、第二の運転周波数F2で運転した場合とでは、振動センサ37が出力する振動信号の振幅レベルが著しく異なる。
図8に示すように、第一の運転周波数F1で運転した場合の異常有りの時よりも、第二の運転周波数F2で運転した場合の異常無しの時のほうが、振動信号の振幅レベルが大きい。したがって、インバータ21を第一の運転周波数F1で運転した場合と第二の運転周波数F2で運転した場合とで、共通の閾値を設定することができない。
【0059】
ここで、インバータ21の運転周波数ごとに閾値を複数設定する(例えばth1及びth2)ことも考えられる。しかし、その場合には運転周波数毎の閾値を設定するためにあらかじめ試験運転を行い、運転周波数を変更しながら振動センサ37の出力を取得する作業が必要となる。そして、集合住宅のように、水の使用量が大きく変化する環境において給水装置10を用いる場合には、使用水量に応じて頻繁にインバータ21の運転周波数が変化し、その都度、閾値を変更する必要が生じ、後述する異常判定処理が複雑化する。
【0060】
そこで、本実施形態の異常判定部41は、ポンプユニット19のモータ24が小水量停止モードに移行され、モータ24の回転速度が使用水量にかかわらず一定の回転速度に固定されているときの振動センサ37の振動信号の振幅レベルを用いて異常の判定を行う。
これにより、運転周波数ごとに複数の閾値を設定することなく、第一の軸受け32の異常を検出することが可能となる。
【0061】
図9は、異常判定部41によって実行される異常判定処理の流れを示している。
最初に、異常判定部41は、第一のポンプユニット19Aまたは第二のポンプユニット19Bのモータ24が小水量停止モードに制御されたか否かを判定する(ステップS30)。ポンプユニット制御部39は、第一のポンプユニット19Aのモータ24Aを小水量停止モードに制御すると、第一のポンプユニット19Aに関する小水量停止フラグを制御装置12の揮発性メモリに記憶する。そして第一のポンプユニット19Aが完全に停止すると、ポンプユニット制御部39は、小水量停止フラグを揮発性メモリから消去する処理を行う。したがって、異常判定部41は、揮発性メモリに小水量停止フラグが記憶されているか否かを確認することによって、第一のポンプユニット19Aが小水量停止モードに制御されたことを判定することができる。第二のポンプユニット19Bについても同様である。
【0062】
小水量停止モードに制御されていないと判定された場合(ステップS30;No)、異常判定部41は、小水量停止モードに制御されるまで待機する。
一方、小水量停止モードに制御されたと判定された場合(ステップS30;Yes)、異常判定部41は、センサ信号取得部40を介して振動センサ37の振動信号を取得する(ステップS31)。具体的には、異常判定部41は、モータ24が小水量停止モードに制御され、一定の回転速度で回転している期間中であって、所定の計測時間分の振動信号を取得する。
【0063】
続いて異常判定部41は、取得した振動信号の合成信号を算出する(ステップS32)。すなわち、三軸に対応した3つの振動信号から上述した数式1によって合成信号を算出する。これにより、本実施形態で説明する横型給水装置の他に、立型給水装置であっても共通の異常判定処理を実行することできる。また、振動センサ37の取付け位置及び取付け方向をモータブラケット35に対して正確にアライメントする必要がないため、振動センサ37の固定に係る作業負担を軽減することができる。
【0064】
次に異常判定部41は、ピークレベルと実効値を求める(ステップS33)。本実施形態におけるピークレベルとは、計測時間中の全ての合成信号の中で最も大きな信号レベルである。また、本実施形態における実効値とは、合成信号を2乗した値の平均値である。平均値の算出において、計測時間中の全ての2乗値の平均値を求めてもよいが、平均値算出の対象区間を順次シフトさせながらその対象区間ごとに得られる平均値、すなわち移動平均値を求めてもよい。
【0065】
続いて異常判定部41は、ステップS34で異常の有無を判定する。具体的には、ピークレベルが第一の閾値TH1より大きいか否かを判定するとともに、実効値が第二の閾値TH2より大きいか否かを判定する。ここで第一の閾値TH1は、ピークレベルに基づいて第一の軸受け32の異常を判定するために予め設定された閾値である。また、第二の閾値TH2は、実効値に基づいて第一の軸受け32の異常を判定するために予め設定された閾値である。
本実施形態において、異常判定部41は、ピークレベルが第一の閾値TH1より大きいと判定され、かつ実効値が第二の閾値TH2より大きいと判定された場合に異常有りと判定する。このように、ピークレベル及び実効値の双方を、それぞれ第一の閾値TH1及び第二の閾値TH2と比較することによって、異常検出の信頼性を高めることができる。ここで、ピークレベルが第一の閾値TH1より大きいと判定されなかった場合には実効値の算出を行わないこととしてもよい。逆に、実効値が第二の閾値TH2より大きいと判定されなかった場合にピークレベルの算出を行わないこととしてもよい。
【0066】
異常有りと判定された場合(ステップS34;Yes)、異常判定部41は、操作パネル22に対して警告信号を出力し(ステップS35)、操作パネル22には警告が表示される。また、異常判定部41は、有線または無線通信によって外部の監視装置に通信可能な通信装置38に対して警告信号を出力して、異常判定処理を終了する。
一方、異常有りと判定されなかった場合(ステップS34;No)、異常判定部41は、警告を出力することなく、異常判定処理を終了する。
【0067】
このように、本実施形態に係る異常判定部41は、小水量停止モードに対して予め設定された閾値を使って異常の有無を判定するため、モータ24の回転速度ごとに複数の閾値を切り替える必要がなく、異常検出処理の複雑化を抑制することができる。
また、異常判定部41は、集合住宅等において使用水量が減少し、ポンプユニット19が運転を停止する直前に移行制御される小水量停止モードにおいて異常判定を行うため、給水装置10の給水性能に影響を及ぼすことなく異常の有無を判定することができる。
【0068】
なお、異常の判定方法は、上述した方法に限定されない。例えば、次の多項式によって求められるF(E)を判定値とし、判定値を閾値と比較することによって異常を判定してもよい。ここで、Eは実効値、a0、a1、a2、a3は、それぞれ所定の係数である。実効値を閾値と比較するのではなく、次の多項式によって求められる判定値を閾値と比較することによって、異常の判定精度を高めることができる。
【0069】
【0070】
図10は、振動センサ37の取付け位置に関する変形例を示す。上述した実施形態においては、振動センサ37は、モータブラケット35の表面上であって第一の軸受け32に隣接する位置に取り付けられることとして説明した。これに対して、本変形例に係る振動センサ37a、37b、37cは、これとは異なる位置に取り付けられ、第一の軸受け32とは異なる原因で発生する振動を測定する。
【0071】
振動センサ37aは、保護カバー36の表面上であって第二の軸受け33に隣接する位置に取り付けられ、第二の軸受け33が発生する振動を測定する。第二の軸受け33は、第一の軸受け32と同様にボールベアリングであり、外輪と内輪の間で発生する摩擦は、第二の軸受け33の劣化や損傷の原因となる。このような劣化や損傷が蓄積すると、主軸31の回転とともに、第二の軸受け33から発生する振動が大きくなる。これを振動センサ37aが測定する。
そして異常判定部41は、上述した異常判定処理を実行することにより、第二の軸受け33の異常を判定する。ここで、第二の軸受け33の異常判定用の閾値として、第一の軸受け32の異常判定用の閾値と異なる閾値を設定してもよい。
【0072】
振動センサ37bは、ポンプ23の円盤形状を有する吸込口28の環状面上に取り付けられる。また、振動センサ37cは、吸込口28に対して連結された吸込配管の上に取り付けられる。そして、振動センサ37bと振動センサ37cは、吸込口28の付近で発生するキャビテーションによる振動を測定する。
ここでキャビテーションについて説明すると、ポンプユニット19の運転状態において、高速に回転する羽根車29によって、吸込口28付近の水圧が低下する。水圧の低下によって沸点が低下することで、吸込み水が気化して気泡が発生する現象が生じることがある。このように、吸込み水が気化する現象をキャビテーションと呼ぶ。キャビテーションが発生すると、吸込口28の周辺から振動や音が発生するとともに、ポンプ23の揚水性能の低下と、ポンプ23や吸込配管の損傷を招く。
【0073】
そのため、振動センサ37b、37cを吸込口28及び吸込み配管に対して配設することによって、キャビテーションの発生を確実に検出することができる。
なお、上述したように、キャビテーションは、モータ24が高速回転し、吸込口28付近の水圧が低下したときに発生し、小水量停止モードの時には発生しない。
【0074】
このように、複数の振動センサ37、37a、37b、37cを給水装置10に取り付けることによって、給水装置10の構成部品の異常や、キャビテーションの発生を検出することが可能となる。
ここで振動センサ37の取付けは、上述した数と位置に限定されない。例えば、振動センサ37、37a、37b、37cに加えて、振動センサ37dを給水装置10の基台11(
図1を参照)の上面に配設し、給水装置10における振動発生の原因を特定するために、基台11の振動を測定することとしてもよい。上述した給水装置10の構成部品である第一の軸受け32や第二の軸受け33の異常、またはキャビテーションの発生といった振動発生の原因を特定することにより、部品交換等の迅速な対応が可能となる。
【0075】
図11は、異常判定部41の変形例であって、異常判定部41が実行する温度異常判定処理を示す。上述した実施形態においては、異常判定部41は、振動センサ37の出力に基づいて第一の軸受け32の異常を検出することとして説明した。これに対して、本変形例に係る異常判定部41は、振動センサ37の出力に基づいて第一の軸受け32の異常を検出することに加えて、温度検出器に相当する温度センサ43の出力に基づいてモータ24の異常発熱(温度異常)を検出し、ポンプユニット19の運転停止の要否を判定する。これにより、異常判定部41は、第一の軸受け32で発生する異常を検出するとともに、モータ24の異常発熱を検出し、異常発熱が検出された場合にはポンプユニット19の運転を停止する。
【0076】
ここで、温度センサ43は、モータブラケット35の表面上であって、第一の軸受け32及び振動センサ37に隣接する位置に取り付けられている。温度センサ43は、モータハウジング34の内部に収容された電機子巻線(固定子)の発熱を監視することができる。そして本変形例では、異常発熱が検出された場合には、ポンプユニット制御部39がポンプユニット19の運転を停止する。
【0077】
図11において、異常判定部41は、ステップS40で、温度センサ43が出力する温度信号を、センサ信号取得部40を介して取得する。次に、異常判定部41は、異常発熱の有無を判定する(ステップS41)。すなわち、温度信号が第三の閾値TH3より大きいか否かを判定する。第三の閾値TH3は、モータ24の運転可能温度に基づいて予め設定することができる温度である。モータ24の運転可能温度とは、電機子巻線の絶縁性を確保することができる温度等に基づいて定められたモータ24の許容運転温度である。
【0078】
異常有りと判定された場合(ステップS41;Yes)、異常判定部41は、操作パネル22及び通信装置38に対して警告信号を出力する(ステップS42)。続いて異常判定部41は、ポンプユニット制御部39に対してポンプユニット19の運転停止信号を出力して(ステップS43)、異常判定処理を終了する。
一方、異常有りと判定されなかった場合(ステップS41;No)、警告信号及び運転停止信号を出力することなく異常判定処理を終了する。
【0079】
本変形例によれば、モータ24の異常発熱を監視し、異常発熱の判定結果に基づいてポンプユニット19の運転を停止制御することが可能となる。そして、第一の軸受け32の異常を検出した場合には警告を出力しつつポンプユニット19の運転を継続し、モータ24の温度異常を検出した場合にのみポンプユニット19の運転を停止制御する。つまり、異常の原因に応じてポンプユニット19を適切に運転制御することが可能となる。
なお、温度異常判定処理は、モータ24の運転モードにかかわらず実行することとして説明したが、上述した可変回転速度モードの時にのみ、温度異常を検出することとしてもよい。
【0080】
また、温度異常判定処理をポンプユニット19の運転を開始する直前に実行し、温度異常を検出した場合にはポンプユニット19の運転を開始しないようにしてもよい。すなわち、異常判定部41は、ポンプユニット制御部39がポンプユニット19の運転を開始する制御を行う直前に温度異常判定処理を行い、温度異常有りと判定された場合にはポンプユニット制御部39に対してポンプユニット19の運転停止信号を出力する。これにより、ポンプユニット19は運転を開始しない。
【0081】
次に、異常判定部41が実行する異常判定処理の第二の変形例について説明する。上述した実施形態において、異常判定部41は、モータ24が小水量停止モードに制御されたときの振動センサ37の出力に基づいて異常を検出するとして説明した。これに対して、本変形例では、集合住宅等において水の使用量が少ない時間帯(例えば午前2時から午前5時)であって、2台のポンプユニット19A、19Bが停止状態にあるときに、ポンプユニット制御部39が2台のポンプユニット19A、19Bを、順次強制的に始動する強制始動モードにおいて異常を検出する。強制始動モードとは、モータ24が停止した状態から、所定の短い時間だけポンプユニット19のモータ24を一定の回転速度で回転させる運転モードである。強制始動モードは、固定回転速度モードの一例である。
【0082】
ポンプユニット制御部39は、計時部42が出力する時刻情報、及び2台のポンプユニット19A、19Bの運転状態に基づいて、強制始動モードへの移行タイミングになったか否かを判定する。
そして、強制始動モードへ移行する時刻(例えば午前2時)となり、2台のポンプユニット19A、19Bがともに停止状態にあると判定した場合、第一のポンプユニット19Aを強制始動し、モータ24を一定の回転速度で回転させる。所定の時間が経過すると第一のポンプユニット19Aを停止制御し、同様の制御を第二のポンプユニット19Bに対して行う。
【0083】
異常判定部41は、モータ24がポンプユニット制御部39によって強制始動モードに制御されたか否かを判定する。この判定方法について説明すると、ポンプユニット制御部39は、モータ24を強制始動モードに制御すると、強制始動フラグを制御装置12の揮発性メモリに記憶する。そしてモータ24の強制始動モードが終了して停止すると、強制始動フラグを揮発性メモリから消去する処理を行う。したがって、異常判定部41は、揮発性メモリに強制始動フラグが記憶されているか否かを確認することによって、ポンプユニット19が強制始動モードに制御されたか否かを判定することができる。
【0084】
ポンプユニット19が強制始動モードに制御された場合、異常判定部41は、センサ信号取得部40を介して振動センサ37が出力する振動信号を取得して、上述した実施形態の異常判定処理により、異常の有無を判定する。
これにより、水の使用量が少ない時間帯であって、ポンプユニット19が停止状態にあるときに異常を検出することが可能となるため、給水性能に影響を与えることなく異常を検出することができる。
【0085】
なお、強制始動モード中に集合住宅等の住民によって水が使用され、吐出圧力センサ17が出力する圧力値Pが低下し、始動圧力P3を下回った場合には、直ちに強制始動モードを終了する。そしてポンプユニット制御部39は、可変回転速度モードでポンプユニット19の運転制御を開始する。可変回転速度モードによる運転が終了して後に、再度強制始動モードに移行して異常を検出することができる。
【0086】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、この実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0087】
10 給水装置
11 基台
12 制御装置
13 制御盤
14 合流管
15 合流吐出口
17 吐出圧力センサ
18 蓄圧タンク
19 ポンプユニット
19A 第一のポンプユニット
19B 第二のポンプユニット
20 流量センサ
20A 第一の流量センサ
20B 第二の流量センサ
21 インバータ
21A 第一のインバータ
21B 第二のインバータ
22 操作パネル
23 ポンプ
24 モータ
24A 第一のモータ
24B 第二のモータ
25 ケーシング
26 ケーシングカバー
27 連結ボルト
28 吸込口
29 羽根車
30 吐出口
31 主軸
32 第一の軸受け
33 第二の軸受け
34 モータハウジング
35 モータブラケット
36 保護カバー
37 振動センサ
38 通信装置
39 ポンプユニット制御部
40 センサ信号取得部
41 異常判定部
42 計時部
43 温度センサ
100 給水装置
101A 第一のポンプユニット
101B 第二のポンプユニット
102A 第一のポンプ
102B 第二のポンプ
103A 第一のモータ
103B 第二のモータ
105 吸込圧力センサ
106A、106B 流量センサ
107 吐出圧力センサ
108 蓄圧タンク
109 逆止弁